弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を取消す。
     被控訴人は控訴人に対し大阪市a区b町c丁目d番地被控訴会社工場内
所在パープレス二、〇〇〇貫付一台を引渡すことを命ずる。
     訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする。
     此の判決は第二項に限り、控訴人において金七万円の担保を供するとき
は、仮に執行することができる。
         事    実
 控訴代理人は主文第一ないし第三項同旨の判決並に仮執行の宣言を求め、被控訴
代理人は「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする」との判決を求め
た。
 当事者双方の事実上の陳述並に証拠の提出援用認否は、控訴代理人において「控
訴人は原審で被控訴会社が訴外三英工業株式会社の債権債務を実質上承継したもの
であり、控訴人が本件信託譲渡契約に基いて支出した五〇万円は右訴外会社により
費消され、又被控訴会社の代表取締役Aは本訴請求原因において主張の信託譲渡契
約に関与し、且つその債務につき連帯保証をしたのであるから、このような関係に
おいて被控訴会社が本件係争機械がBの所有でなく、右訴外会社の所有であると称
してその責任を回避することは、著しく信義に反し、且ついわゆる禁反言の原則に
反し許されないとの主張をしたに拘らず、原判決はその判断をしていない。次に仮
に右機械が訴外Bの所有でなく、訴外三英工業株式会社の所有に属したとしても、
次の(イ)(ロ)(ハ)の各事情から考えると被控訴会社は同訴外会社から之を譲
受けた承継人として、先にBが控訴人との間に結んだ信託譲渡契約を追認したと見
なければならない。(イ)Bが個人名義で控訴人から五〇万円を借入れたのは右訴
外会社の事業目的に使用する為であつて、且実際にもその目的に使用されたのであ
り、(ロ)被控訴会社は右訴外会社の解散の二日後である昭和三四年一二月二三日
設立され、翌年一月一四日右会社より営業譲渡を受けると共に、本件機械の譲渡を
受け、(ハ)被控訴会社の設立後も金融面においては右訴外会社名義の小切手、手
形等を発行若くは裏書しており、控訴人に対し弁済の猶予を求める為にBの持参し
た小切手の振出及び約束手形の裏書もすべて被控訴会社ではなく、右訴外会社の名
義を使用していた。
 尚控訴人は昭和三五年七月二日大阪地方裁判所同年(ヨ)第一、六三九号仮処分
決定に基いて被控人の本店である大阪市e区f町gh丁目i番地の工場内で本件機
械につき仮処分を執行したところ、被控訴人の訴訟代理人なる佐野実弁護士の事務
員C名義の架空の債権を以て差押の形式が作為されており被控訴会社が同年八月三
一日、同市a区b町c丁目d番地に住所移転に伴う保管場所変更の届出があつたの
で、控訴人は右訴外人の執行に対する異議の訴を大阪地方裁判所に提起し、昭和三
七年九月一七日勝訴の判決を受けて確定した。」と述べ、甲第三〇ないし第三三号
証を提出し、当審における証人D、Eの各証言、控訴人本人の供述(第一回)を援
用し、
 被控訴代理人において「控訴人の右主張事実中訴外Cが現在被控訴代理人の事務
員であることのみ認める。控訴人とBの間で信託譲渡に付ての公正証書の作成され
る際には現在の被控訴会社代表者Aは立会つていないのであつて、同人は本件機械
が会社所有の物件として担保に入れられるものと信じていたのであるから、何等悪
意は無く、禁反言の原則の適用は解除されねばならない。又占有改定が即時取得の
要件を充さないことは判例の示すところであり、現実の引渡を受けることによつて
初めて確定的に所有権を取得するものと解すべきであるから、被控訴会社が現実の
引渡を受けたことにより即時取得を生じその反面控訴人の所有権取得は確定的に消
滅したと謂わなければならない。尚控訴人の金五〇万円の債権が弁済されているこ
とは当初支払方法として交付された約束手形四通が回収されたことからも明らかで
あり、又その後割賦弁済のため商業手形を差入れた際之と引換に当初の約束手形が
返還されたことも右商業手形の支払に代えて交付されたことの証左である」と述
べ、当審における被控訴会社代表者A本人の供述(第一回)を援用し、甲第三〇号
証第三三号証の成立は不知、同第三一、三二号証の成立を認めると述べたほか
 いずれも原判決事実摘示と同一であるから之を引用する。
 当裁判所は職権により控訴人及び被控訴会社代表者A各本人の再尋問をした。
         理    由
 当裁判所は次の(一)乃至(三)の判断については原判決の理由冒頭より同三枚
目表七行目迄の記載と同一であるから、之を引用する。
 (一) 控訴人は昭和三四年二月二〇日訴外Bに対し金五〇万円をA(現在被控
訴会社代表取締役)外一名の連帯保証の下に貸与し、月一分五厘の利息は毎月末日
持参払、元金は同年五月より毎月二〇日限り金一〇万円宛分割持参払、右元利金の
支払を一回にても怠れば残債務に付期限の利益を失うとの約定を結び、その担保と
して主文第二項記載の機械一台の信託譲渡を受け占有改定による引渡を了えた上右
債務の履行期限迄は債務者に貸与し、債務不履行の場合にはこの機械を処分して弁
済に充当し、過不足を生じたときは適宜清算することとした。
 (二) 右機械は右債務者と連帯保証人二名とが先に訴外Fから贈与を受けたも
のであり、この三名が昭和三三年一月三一日三英工業株式会社(以下に単に旧会社
と略称する)を設立した後同会社に譲渡したもので、右(一)の貸借の頃は同会社
が使用していたが同会社は昭和三四年一二月二一日解散し、その二日後に設立され
た被控訴会社は昭和三五年一月一四日右物件を旧会社から譲受け現に占有使用中で
ある。
 (三) 従つて右物件が右B個人の所有物であつて之に付担保権を取得したとの
控訴人の主張は失当である。
 次に控訴人は民法第一九二条により本件機械に対する担保権を取得したと主張
し、原判決はこの点に付単に占有改定により占有を取得したに止まるときは、民法
第一九二条の適用は無いとの最高裁判所判例(昭和三二年<要旨>一二月二七日附)
を引用して控訴人の請求を却けている。しかしながら当裁判所はこの判例の理論が
取引の安全保護に基くものであることから考えると、この理論は右の目的を
達成するのに必要な限度においてのみ適用されるものであつて、このことを考慮す
る必要のないような例外的事由のある場合には別個に考察する余地があるものと解
する。即ち恰も物権変動の対抗要件に付ての第三者の範囲を定める上において、当
該物件に付有効な取引関係に立たない第三者は、登記の欠缺を主張する正当の利益
が無いとして民法第一七七条第一七八条の第三者に包含されないと解されないと軌
を一にして、本間においても、当該物件に付有効な取引関係に立たない第三者は取
引の安全の見地からの保護に値しないし、一方占有改定は兎も角法律上占有権の移
転の一つの方法として認められているには相違ないのであるから、かかる例外の場
合には民法第一九二条の適用を受けて控訴人は右権利を取得し、且之を以て被控訴
人に対抗することを許すべきであると解するのである。
 以上の見地に立つて事実認定をすると次のとおりである。先ず控訴人が本件機械
に付担保権を取得する上においては民法第一八六条第一項により善意平穏公然の推
定を受け、之を覆えすに足る何等の証拠も無く、又無過失の点に付ては右に認定し
た(一)の事実関係その他本件口頭弁論の全趣旨から認定せられるので、控訴人の
担保権取得に付民法第一九二条の要件が一応満されているものと見るべきである。
 仍て進んで被控訴会社が本件機械に付如何なる権利関係にあるかを考察してみる
と成立に争のない甲第一乃至第三号証、原審証人B(第一、二回)F、D、当審証
人D、Eの各証言、原審及び当審(夫々第一、二回)における控訴人及び被控訴会
社代表者A各本人の供述(但しA本人の各供述中次の認定に反する部分は信用でき
ないから之を除く)、及び右控訴人本人の供述(各第一回)により成立を認められ
る甲第六乃至第二三号証を総合すると次のとおり認定することができる(被控訴人
提出援用の全証拠によるもこの認定を覆えすことはできない)。
 冒頭に認定した消費貸借契約において、Bが主債務者A外一名が連帯保証人とな
つたのは別段同人等個人と旧会社との相違を意識したものではなく借受金は全部旧
会社の事業のために使用され、Aももとより右借受及び担保差入を了承していた
(その後Aの連帯保証を解除する書面が取交わされた事実はあるが、之は同人の近
親の重病との理由に基いたものにすぎない)。右借受後現金の支払は殆ど無く、期
限の来る度に別の手形が差入れられたが、全部不渡となり、その内には偽造手形或
は振出日の記載のないもの、若くは支払場所欄記載の銀行の存在しないものさえも
含まれ、日を追つて手形額面が多くなるのみであつて、控訴人の被つた実損は二〇
〇万円を越えた。一方旧会社の実権はその解散の前月頃Aの手に移り、次で被控訴
会社も同人を代表取締役として設立されたけれども、旧会社の営業上の債権債務は
全部被控訴会社に引継がれ、本件機械以外の工場機械設備もすべて訴外F所有のも
のを引続き借用しているのであつて、被控訴会社の設立後も控訴人に対しては依然
として旧会社名義の表示のある手形のみを差入れている程であつて、同会社の実態
は全く旧会社の延長にすぎないものと見るのが至当である。
 以上のとおり認定されるのであるから、控訴人に対する債務はすべて弁済ずみで
あるとし、又仮りにそうでないとしても借受金の支払に代えて各手形が振出された
から、当初の債務はすでに消滅し、担保権も消滅したとの被控訴人の原審における
主張はいずれも到底採用の限りでないのと共に、B、A個人と旧会社の関係及び旧
会社と被控訴会社との関係が以上のごとくである限り、被控訴会社に対しては、単
に占有改定により占有権を得たにすぎない控訴人が民法第一九二条により担保権を
取得したとして之に対抗することを許しても、別段取引の安全を害するものと見る
には当らない(被控訴人の即時取得の主張の採用できないことも自から明かであ
る)。
 このようなわけであるから、控訴人が前示消費貸借契約の債務不履行を理由に被
控訴会社に対し、主文第二項記載の機械に対する担保権に基いてその引渡を求める
本訴請求は其の余の控訴人の主張に付考察するまでもなく正当として認容すべく、
之を棄却した原判決は不当であるから、取消を免れない。仍て民事訴訟法第三八六
条第九六条第八九条第一九六条を適用し主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 加納実 裁判官 沢井種雄 裁判官 加藤孝之)

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