弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人A同B弁護人林徹、同松山一忠、同中内二郎並に被告人A弁護人花井忠、
同角田幸吉同伊藤利夫の各上告趣意及び弁護人林徹の上告趣意書訂正書は末尾に添
附した別紙記載の通りである。
 被告人A、同Bの弁護人林徹の上告趣意第一点について。
 原判決は、第一審判決が認定した、「被告人Aは元徳島県名東郡a町長であつた
もので今次戦争当時翼賛政治体制協議会徳島県支部構成員及び大政翼賛会徳島県名
東郡a町支部長であつた為内閣総理大臣並徳島県知事より夫々昭和二二年一一月一
八日公職追放仮指定書の送達を受け異議申立期間満了に依り同年一二月一七日公職
追放該当者と決定したものであり、被告人Bは、昭和二二年四月下旬施行された徳
島県名東郡a町議会議員選挙に当選して今日に至るものであるが、被告人Aは右公
職追放確定後もa町内に於て隠然たる勢力を有し常に現a町長Cの反対派である被
告人B外約一〇名の同町議会議員等と親交を重ね自己の勢力の温存を図りつつあつ
たが偶々同町議会において議決を経た同町民、Dに対する昭和二二年度町民税及県
民税につき町長Cがその賦課額の計算上の過誤を認め之を任意減額決定した事から
同町議会は二派に分れ反町長派である被告人B及び同町議会議員Eの両名は、右b
町長の行為は違法な行政処分であるという理由の下に、その取消を求めるため昭和
二三年九月一日a町を相手取り徳島地方裁判所に行政処分変更請求訴訟を起提した
事実をめぐり該訴訟提起の是非を論ずるための町民大会が開かれる等してa町政は
粉糾し町民の之に関する関心も漸く昂まつて来たので被告人Bは自己の政治的立場
を表明して一般町民の諒解支持を得んとして同年一〇月頃前記Eとの連名を以つて
その頃『再町民各位の御銘鑑に訴えます』と題する町当局の措置を弾劾する趣旨の
ビラを印刷して同町民に配付した」との趣旨の事実について被告人Bの右所為は昭
和二二年勅令第一号(以下公職追放令と称す)第一五条第一一条第一二条等にいわ
ゆる「政治上の活動」にあたると判断したものであることは、原判決判文上明らか
である。そして右被告人Bの行為は、第一審判決記載の経緯と照し合せて見るとき
は所論の如き単なる社会活動ではなく現町長Cの施策又は活動に反対することに当
ると見るを相当とするから、これを政治活動であると判断することは政治活動に関
する所論当裁判所の判例と反するものではない。従つて論旨は理由がない。
 同第二点(訂正したもの)及び第四点について。
 論旨は、被告人Bが第一審判決判示の如き経緯のもとに同判示ビラを作成しこれ
を町民に配布したことは被告人Bの政治上の活動にあたらないという前提のもとに、
被告人Bが判示ビラを作成配布することは、憲法第一九条にいう、「思想及び良心
の自由に属し」憲法第二一条にいう「言論出版その他一切の表現の自由」に属する
ものと主張し従つて第一審判決がその判示の如き被告人等の所為を公職追放令第一
一条第一二条に違反するものとして処罰したこと、これを是認した原判決は憲法第
三九条に違反し実行の時に適法な行為につき被告人等の刑事上の責任を問いたる違
法があり又憲法第三二条の保障する裁判所において裁判を受ける権利を侵害した違
法があるというに帰する。
 しかし、被告人Bが第一審判決判示の如き経緯のもとに同判示の如きビラを作成
しこれを町民に配布することは、同被告人の政治上の活動にあたることは第一点に
おいて説明した通りであるから、右が政治上の活動にあたらないことを前提とする
所論違憲論はいずれもその前提を欠き上告適法な理由とならない(第一審判決並に
原判決は、被告人Bが所論行政訴訟を提起したことを処罰するものではなく訴訟上
の行為でないのは勿論訴訟遂行に必要でもない所論のビラを作成配布した行為が被
告人Bの政治活動となるとして、被告人等に夫々公職追放令第一一条第一二条の責
任を問うために過ぎないことは第一審判決自体に徴し明らかである)
 其の余の論旨は公職追放令第一一条、第一二条の解釈問題であつて、何等刑訴法
第四〇五条に規定する事由にあたらないから上告適法の理由にならない。
 第三点について。
 本件起訴状に記載された、所論の各記載は、何れも公訴事実を起訴状に記載する
にあたり、その訴因を明示するため犯罪構成要件にあたる事実自体若しくは、これ
を密接不其分の事実を記載したものであつて、被告人等の行為が罪名として記載さ
れた公職追放令第一一条若しくは第一二条にあたる以所を明にする為必要なもので
あるから起訴状に所論の如き記載があるからといつて、右起訴状は刑訴法第二六五
条第六項に違反するものではない、従つて、右違反することを前提とする所論もま
たその前提を欠きその実質は刑訴法の解釈問題であり違憲の主張ではないから上告
適法の理由とならない。
 同第五点について。
 以上第一点乃至第四点について説示したとおりであつて原判決には刑訴法第四一
一条を適用しこれを破棄しなければ著しく正義に反するものありとは認められない
から論旨は理由がない。
 被告人A同B弁護人松山一忠同中内二郎の上告趣意第一点について。
 本件起訴状の記載が刑訴法第二五六条第六項に違反しないことは弁護人林徹の上
告趣意第三点において説明したとおりである、そして憲法第三七条にいわゆる公平
な裁判所の裁判とは、組織構成において偏頗のおそれのない裁判所の裁判という意
であことは当裁判所の屡々判例とするところであつて、仮りに原判決に刑事訴訟法
の解釈に誤があつたからといつて公平な裁判所の裁判ではないということはできな
いから論旨は採用できない。
 同第二点について。
 所論は被告人等の行為を公職追放令第一一条第一二条違反に問擬したことを罪と
ならない事実を処罰したもので罪刑法定主義に反し憲法第三一条第三七条に違反す
るというのであるがその実質は要するに公職追放令第一一条第一二条に関する原判
決の解釈又は第一審判決の事実認定並にこれを是認した原判決を非難するに帰し、
上告適法の理由とならない又公職追放令第一一条第一二条所定の行為を厳格に禁止
し、従つてこれに違反する行為を処罰すべきことは連合国最高司令官の要求である
ことは公職追放令の根拠となつた、昭和二一年一月四月附連合国最高司令官の「公
務従事に適しない者の公職からの除去に関する覚書」第五項第六項に徴し明らかで
あるから右第一一条第一二条が最高司令官の要求でないことを前提とし、公職追放
令第一六条第一項第六号は違憲であるとの主張はその前提を欠き上告適法の理由と
ならない。
 被告人Aの弁護人花井忠上告趣意について。
 その論旨中第一点は、原判決は憲法第三一条に違反するというけれども所論はそ
の実質においては実体法たる公職追放令第一一条第一二条適用の適否に関する同趣
であつて何等憲法問題ではなく、第二点及び第三点は、要するに第一審判決の事実
認定を是認した原判決の判断を攻撃するもので、その事実は事実認定の問題であつ
て憲法問題ではない、その第四点は、明らかに刑訴法第四〇五条に規定する事由に
あたらず、その第五点については、本件起訴状の所論記載が刑訴法第二五六条、第
六項に違反しないこと弁護人林徹の上告趣意第三点において説明したとおりである
のみならず所論も亦刑訴法の解釈問題であつて憲法問題ではないから論旨は何れも
上告適法の理由とならない。
 被告人Aの弁護人角田幸吉、同伊藤利夫上告趣意第一点について。
 論旨は原判決は、公職追放令第一二条の解釈を誤り罪とならない行為を罪となる
ものと判断しひいては憲法第二一条第一九条第一四条第一項に違反する違法がある
と主張するけれどもその実質は公職追放令第一二条に関し独自の見解を立て、被告
人Aの所為は右第一二条の要件に該当せず罪とならないと主張するに帰し、公職追
放令第一二条の解釈問題に過ぎず憲法問題ではないから上告適法の理由とならない。
 同第二点第三点について。
 論旨第二点は、事実認定の問題について、原判決のした判断を非難するものであ
り、同第三点は第一審判決の被告人Aに対する量刑の不当を主張するもので何れも
刑訴法第四〇五条に規定する事由にあたらないこと明らかであつて上告適法の理由
とならない。
 以上各弁護人の論旨は何れも採用することはできないものであるのみならず本件
については刑訴法第四一一条を適用すべきものとも認められないから、刑訴法第四
〇八条により主文のとおり判決する。この裁判は裁判官全員一致の意見によるもの
である。
 検察官 橋本乾三関与
  昭和二六年四月一〇日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
 裁判官穂積重遠は差支えのため署名押印することができない。
            裁判官    長 谷 川   太 一 郎

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