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平成25年2月15日判決言渡
平成22年(行ウ)第135号開発許可処分取消請求事件(甲事件)
平成24年(行ウ)第21号開発行為変更許可処分取消請求事件(乙事件)
主文
1原告らの請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1請求
1甲事件
豊中市長が,別紙1記載の各土地について平成21年10月19日付けでし
た開発行為許可処分(豊中市指令ま開第○-○-○号)を取り消す。
2乙事件
(1)豊中市長が,平成23年6月10日付けでした開発行為変更許可処分(豊
中市指令都開第○-○-○号)を取り消す。
(2)豊中市長が,平成23年8月10日付けでした開発行為変更許可処分(豊
中市指令都開第○-○-○号)を取り消す。
(3)豊中市長が,平成23年12月6日付けでした開発行為変更許可処分(豊
中市指令都開第○-○-○号)を取り消す。
第2事案の概要
1事案の骨子
本件は,大阪府豊中市α所在の土地(別紙1記載の各土地。以下「本件開発
区域」という。)における開発事業(以下「本件開発事業」という。)に関し,
豊中市長が,平成21年10月19日付けで,株式会社A(以下「A」という。)
に対して開発行為許可処分(以下「本件許可」という。)を行い,その後に平
成23年6月10日付け,同年8月10日付け及び同年12月6日付けでそれ
ぞれ開発行為変更許可処分(以下,同年6月10日付けでなされた開発行為変
更許可処分を「本件第一次変更許可」,同年8月10日付けでなされた開発行
為変更許可処分を「本件第二次変更許可」,同年12月6日付けでなされた開
発行為変更許可処分を「本件第三次変更許可」とそれぞれいい,これらと本件
許可をあわせて「本件許可等」という。)をしたところ,本件開発区域の周辺
に土地建物を所有し,居住する原告らが,本件許可等には都市計画法(ただし,
平成23年法律第124号による改正前のもの。以下「法」という。)に違反
する違法があるなどと主張して,本件許可等の各取消しを求めた事案である。
2法令の定め
(1)開発行為の許可及び申請等
ア法29条
都市計画区域又は準都市計画区域内において開発行為をしようとする者
は,あらかじめ,国土交通省令で定めるところにより,都道府県知事(地
方自治法252条の19第1項の指定都市,同法252条の22第1項の
中核市又は同法252条の26の3第1項の特例市(以下「指定都市等」
という。)の区域内にあっては,当該指定都市等の長。以下同じ。)の許
可を受けなければならない(1項本文)。
イ法35条の2
開発行為の許可(以下「開発許可」という。)を受けた者は,法30条1
項各号に掲げる事項の変更をしようとする場合においては,都道府県知事
の許可を受けなければならない。ただし,変更の許可の申請に係る開発行
為が,法29条1項の許可に係るものにあっては同項各号に掲げる開発行
為,同条2項の許可に係るものにあっては同項の政令で定める規模未満の
開発行為若しくは同項各号に掲げる開発行為に該当するとき,又は国土交
通省令で定める軽微な変更をしようとするときは,この限りでない(1項)。
(2)道路に関する基準について
ア法33条
(ア)1項
都道府県知事は,開発許可の申請があった場合において,当該申請に
係る開発行為が,次に掲げる基準(4項及び5項の条例が定められてい
るときは,当該条例で定める制限を含む。)に適合しており,かつ,その
申請の手続が法又は法に基づく命令の規定に違反していないと認めると
きは,開発許可をしなければならない。
一(略)
二主として,自己の居住の用に供する住宅の建築の用に供する目的で
行う開発行為以外の開発行為にあっては,道路,公園,広場その他の
公共の用に供する空地(消防に必要な水利が十分でない場合に設置す
る消防の用に供する貯水施設を含む。)が,次に掲げる事項を勘案し
て,環境の保全上,災害の防止上,通行の安全上又は事業活動の効率
上支障がないような規模及び構造で適当に配置され,かつ,開発区域
内の主要な道路が,開発区域外の相当規模の道路に接続するように設
計が定められていること。この場合において,当該空地に関する都市
計画が定められているときは,設計がこれに適合していること。
イ開発区域の規模,形状及び周辺の状況
ロ開発区域内の土地の地形及び地盤の性質
ハ予定建築物等(開発区域内において予定される建築物又は特定
工作物をいう。法30条1項2号)の用途
ニ予定建築物等の敷地の規模及び配置
三から十四まで(略)
(イ)2項
前項に規定する基準を適用するについて必要な技術的細目は,政令で
定める。
イ都市計画法施行令(以下「法施行令」という。)25条
法33条2項に規定する技術的細目のうち,同条1項2号に関するも
のは,次に掲げるものとする。
一道路は,都市計画において定められた道路及び開発区域外の道路の
機能を阻害することなく,かつ,開発区域外にある道路と接続する必
要があるときは,当該道路と接続してこれらの道路の機能が有効に発
揮されるように設計されていること。
二予定建築物等の用途,予定建築物等の敷地の規模等に応じて,6メ
ートル以上12メートル以下で国土交通省令で定める幅員(小区間で
通行上支障がない場合は,4メートル)以上の幅員の道路が当該予定
建築物等の敷地に接するように配置されていること。ただし,開発区
域の規模及び形状,開発区域の周辺の土地の地形及び利用の態様等に
照らして,これによることが著しく困難と認められる場合であって,
環境の保全上,災害の防止上,通行の安全上及び事業活動の効率上支
障がないと認められる規模及び構造の道路で国土交通省令で定める
ものが配置されているときは,この限りでない。
三(略)
四開発区域内の主要な道路は,開発区域外の幅員9メートル(主とし
て住宅の建築の用に供する目的で行う開発行為にあっては,6.5メ
ートル)以上の道路(開発区域の周辺の道路の状況によりやむを得な
いと認められるときは,車両の通行に支障がない道路)に接続してい
ること。
五から八まで(略)
ウ都市計画法施行規則(以下「法施行規則」という。)20条
法施行令25条2号の国土交通省令で定める道路の幅員は,住宅の敷
地又は住宅以外の建築物若しくは第一種特定工作物の敷地でその規模
が1000平方メートル未満のものにあっては6メートル(多雪地域で,
積雪時における交通の確保のため必要があると認められる場合にあっ
ては,8メートル),その他のものにあっては9メートルとする。
(3)地盤に関する基準について
ア法33条1項7号
地盤の沈下,崖崩れ,出水その他による災害を防止するため,開発区域
内の土地について,地盤の改良,擁壁又は排水施設の設置その他安全上必
要な措置が講ぜられるように設計が定められていること。この場合におい
て,開発区域内の土地の全部又は一部が宅地造成等規制法3条1項の宅地
造成工事規制区域内の土地であるときは,当該土地における開発行為に関
する工事の計画が,同法9条の規定に適合していること。
イ法施行令28条
法33条2項に規定する技術的細目のうち,同条1項7号に関するも
のは,次に掲げるものとする。
一から五まで(略)
六開発行為によって生じた崖面は,崩壊しないように,国土交通省令
で定める基準により,擁壁の設置,石張り,芝張り,モルタルの吹付
けその他の措置が講ぜられていること。
七(略)
ウ法施行規則23条1項
切土をした土地の部分に生ずる高さが2メートルをこえるがけ,盛土
をした土地の部分に生ずる高さが1メートルをこえるがけ又は切土と
盛土とを同時にした土地の部分に生ずる高さが2メートルをこえるが
けのがけ面は,擁壁でおおわなければならない(本文)。
エ法施行規則27条1項
法施行規則23条1項の規定により設置される擁壁については,次に
定めるところによらなければならない。
一擁壁の構造は,構造計算,実験等によって次のイからニまでに該当
することが確かめられたものであること。
イ土圧,水圧及び自重(以下この号において「土圧等」という。)
によって擁壁が破壊されないこと。
ロ土圧等によって擁壁が転倒しないこと。
ハ土圧等によって擁壁の基礎がすべらないこと。
ニ土圧等によって擁壁が沈下しないこと。
二(略)
オ宅地造成等規制法9条1項
宅地造成工事規制区域内において行われる宅地造成に関する工事は,政
令(その政令で都道府県の規則に委任した事項に関しては,その規則を含
む。)で定める技術的基準に従い,擁壁,排水施設その他の政令で定める施
設(以下「擁壁等」という。)の設置その他宅地造成に伴う災害を防止する
ため必要な措置が講ぜられたものでなければならない。
3前提事実(当事者間に争いのない事実のほか,各項掲記の証拠(枝番号を含
む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により容易に認定することのできる事実等)
(1)当事者
原告らは,いずれも本件開発区域の近隣(本件開発区域の南西側。別紙2
参照)に土地建物を所有し,居住している者らである(甲12ないし15)。
被告は,本件許可等の当時,地方自治法252条の26の3第1項の特例
市であった(平成22年政令第213号による改正前の地方自治法第252
条の26の3第1項の特例市の指定に関する政令(平成12年政令第417
号))。
(2)本件許可に関する事実経過等
アAは,本件開発区域に地上12階地下2階建の共同住宅(分譲マンショ
ン。以下「本件予定建築物」という。)の建設を計画した(甲8)。
イAは,平成21年10月13日,豊中市長に対し,法29条1項の規定
に基づき,本件開発区域について,面積を6392.65平方メートル,
予定建築物の用途を共同住宅(分譲)とする本件開発事業に係る開発行為
(以下「本件開発行為」という。)の許可を申請し,豊中市長は,同月1
9日付けで,本件開発行為を許可する旨の開発許可(本件許可)を行った
(甲1,2)。
なお,本件開発区域は,宅地造成等規制法3条1項の宅地造成工事規制
区域内にある。
ウAは,平成23年6月3日,豊中市長に対し,法35条の2の規定に基
づき,道路形状の変更(敷地北側に9メートル道路を設置)や建物形状の
変更,擁壁の追加,擁壁形状の変更等を理由とする本件開発行為の変更の
許可を申請し,豊中市長は,同月10日付けで,上記申請を許可した(本
件第一次変更許可。甲36,37,乙18,19)。
エAは,平成23年8月1日,豊中市長に対し,法35条の2の規定に基
づき擁壁の杭基礎の打設工法の変更を理由とする本件開発行為の変更の許
可を申請し,豊中市長は,同月10日付けで,上記申請を許可した(本件
第二次変更許可。甲38,39,乙20,21)。
オAは,平成23年11月28日,豊中市長に対し,法35条の2の規定
に基づき,公園擁壁形状の変更を理由とする本件開発行為の変更の許可を
申請し,豊中市長は,同年12月6日付けで,上記申請を許可した(本件
第三次変更許可。甲40,41,乙24,25)。
(3)本件許可等に関する審査請求
ア原告らは,本件許可を不服として,平成21年12月7日,豊中市開発
審査会に対して審査請求を行った。
イ原告らは,本件第一次変更許可を不服として,平成23年8月5日,豊
中市開発審査会に対して審査請求を行った(甲26)。
ウ原告らは,本件第二次変更許可を不服として,平成23年9月29日,
豊中市開発審査会に対して審査請求を行った(甲27)。
エ原告らは,本件第三次変更許可を不服として,平成24年1月12日,
豊中市開発審査会に対して審査請求を行った(甲42)。
オ上記アないしエに係る審査請求は,併合されて審理されることとなった
(甲43)。
カ豊中市開発審査会は,平成24年10月10日,原告Bの上記アないし
エに係る審査請求をいずれも却下し,原告Cの上記アないしエに係る審査
請求をいずれも棄却する旨の裁決をした(乙48)。
(4)本件訴えの提起
原告らは,平成22年7月29日,甲事件に係る訴えを提起し,平成24
年1月30日,行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)19条1項に基
づき,乙事件に係る訴えを甲事件に併合して提起した(顕著な事実)。
第3争点
1本案前の争点(甲事件,乙事件)
原告らに原告適格が認められるか
2本案の争点
(1)甲事件
ア原告らの主張する違法事由は自己の法律上の利益に関係のない違法
を主張するものとして,その主張が制限されるか
イ本件許可につき取消事由はあるか
(2)乙事件
ア原告らの主張する違法事由は自己の法律上の利益に関係のない違法
を主張するものとして,その主張が制限されるか
イ(ア)本件第一次変更許可につき取消事由はあるか
(イ)本件第二次変更許可につき取消事由はあるか
(ウ)本件第三次変更許可につき取消事由はあるか
第4争点に対する当事者の主張
1本案前の争点(原告らに原告適格が認められるか)
【原告らの主張】
(1)都市計画事業に関して,最高裁判所は,法が個々人の個別的利益を保護
すべきものとする趣旨を含む解釈を示し,都市計画事業に係る周辺住民の原
告適格を認めた(最高裁平成16年(行ヒ)第114号同17年12月7日
大法廷判決・民集59巻10号2645頁)。したがって,都市計画事業と
趣旨目的を共通にする開発許可においても,周辺住民について原告適格が認
められるべきである。
(2)開発許可に係る個別の規定をみても,以下のとおり,法33条1項2号
及び7号は,開発区域内だけではなく,周囲の地域における環境等を考慮し
て許可の判断を行うことを求めているから,開発区域の周辺住民に原告適格
が認められるべきである。
ア(ア)法33条1項2号は,開発区域が相当規模の道路に接続しないまま
に開発行為を行うときは,その結果,消防活動や通勤・通学の安全又は
事業活動の効率等に危険ないし支障が生じることを防止するために,法
施行令25条,法施行規則20条の各規定によって,接続道路の道路幅
員等について具体的かつ詳細に審査すべきこととしていると解される。
このような法33条1項2号の趣旨・目的や,同号が保護しようとして
いる利益の内容・性質等にかんがみると,同号は,市街地の機能及び良
好な環境の確保等の公共の利益を増進することを目的とするにとどまら
ず,当該開発区域の周辺住民の平穏な生活を営む権利を個別具体的に保
護しているものと解されることに加え,開発区域が相当規模の道路に接
続しないままに開発行為が行われると,その結果,消防活動や通勤・通
学の安全や事業の効率等に危険ないし支障が生じて,人の生命・身体の
安全や財産権が脅かされるおそれがあるから,人の生命・身体の安全や
財産権についても,個々人の利益として個別具体的に保護しているもの
と解される。したがって,本件開発区域の接続道路の不備により災害や
交通事故等の危険性が増加することが予想され,これによって直接的な
被害を受けることが予想される周辺の一定範囲の地域に存する他の建築
物に居住し又はこれを所有する者は,本件許可等の取消しを求めるにつ
き法律上の利益を有するものとして,その取消訴訟における原告適格を
有するものと解すべきである。
(イ)原告らは本件開発区域周辺の土地を所有し,同土地上の建物に居住
している住民であり,本件開発区域と原告Cの自宅との間には幅員4メ
ートル弱の道路しかなく,原告Bの自宅は本件開発区域から約30メー
トルの位置にある。このような位置関係にかんがみると,原告らは,接
続道路の不備によって,災害や交通事故等の危険にさらされ,その生命・
身体の安全や財産権が脅かされる被害が直接的に及ぶ者であるといえる。
また,本件開発行為は,開発面積約6393平方メートルで,戸数1
40戸,130台分の駐車場数,254台分の駐輪場,26台分のバイ
ク置場を備えたマンション(本件予定建築物)を建設するという大規模
開発である。原告らの自宅前の幅員4メートル程度の道路では,大型普
通自動車がすれ違うことは困難であり,原告らが通行したり自動車を出
し入れしたりすることも困難となるため,交通事故の危険も現実のもの
となるというべきであるから,原告らには,上記危険が及ぶ蓋然性があ
るといえる。
したがって,原告らには原告適格が認められる。
イ(ア)法33条1項7号は,崖崩れ等のおそれのない良好な都市環境の保
持・形成を図るとともに,崖崩れ等による被害が直接的に及ぶことが想
定される開発区域内外の一定範囲の地域の住民の生命,身体の安全等を,
個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解
すべきであり,開発区域内の土地が,地盤の軟弱な土地,崖崩れ又は出
水のおそれが多い土地等に当たる場合には,崖崩れ等による直接的な被
害を受けることが予想される範囲の地域に居住する者は,開発許可の取
消しを求めるにつき原告適格を有する。
(イ)原告らの自宅と本件開発区域との位置関係は上記ア(イ)のとおりで
あるところ,本件開発区域は宅地造成工事規制区域に指定されており,
周辺には断層が存在し,本件開発区域は原告らの住居に向けて下り坂と
なっており,その地盤はN値が10以下であることも明らかになってい
る。本件地盤が軟弱であることをあわせ考えれば,原告ら自宅北側に位
置する本件開発区域内の土砂が崩れることや,マンション群の重みで原
告らの自宅が不同沈下したり,原告らが本件建築物の倒壊・炎上等によ
り直接的な被害を受けることが予想され,原告らの生命,身体,財産の
安全が脅かされることになるといえるから,原告らは原告適格を有する
というべきである。
【被告の主張】
(1)原告適格が認められる「法律上の利益を有する者」(行訴法9条1項)
とは,取消しを求める処分により自己の権利又は法律上保護された利益を
侵害され又は必然的に侵害されるおそれのあるものをいう。
そして,開発許可について周辺住民の原告適格が認められるか否かにつ
いては,開発許可の基準を定める法33条1項各号並びに技術的細目を定
める法施行令及び法施行規則の各規定の趣旨・目的,考慮されるべき利益
の内容・性質等にかんがみて個別具体的に判断されるべきである。
(2)法33条1項2号の規定については,①規定の文言及び内容からすると,
同規定は,開発区域内に道路,公園,広場その他の公共の用に供する空地
を確保し,開発区域内の主要な道路を開発区域外の相当規模の道路に接続
させることによる開発区域内の環境の保全,災害の防止,通行の安全及び
事業の効率化を目的とした規定であると解するのが相当であり,開発区域
外の住民の利益をも保護しているとは解することができないこと,②同条
2項は,同条1項2号に規定する基準を適用するについて必要な技術的細
目を政令で定めることとしているが,これに基づいて定められた法施行令
25条2号,法施行規則20条,20条の2,24条等の各規定をみても,
開発区域外の住民個々人の具体的な利益に配慮すべきことをうかがわせる
ような規定は存在しないこと,③法33条1項2号は自己の居住用の住宅
の建築の用に供する目的で行う開発行為については適用を除外していると
ころ,仮に開発区域外への影響をも保護している規定であるとすれば,自
己の居住用の場合について除外する必要はないこと,④開発行為が実施さ
れると,開発区域外に居住する周辺住民の生活に影響を及ぼすことはあり
得るとしても,同号違反の開発行為により周辺住民に及ぼす影響は一般的
にはいわゆる生活利益にとどまり,その利益を享受する者の範囲も不明確
であって,それは一般的な公益の中で扱われるものとして,周辺住民の個
別的利益としてまでは保護していないと解するのが相当であること等から
すると,同号の規定は,開発区域外に居住する周辺住民の利益を個別具体
的に保護する趣旨とは解されないものである。
したがって,同号を根拠として,原告らの原告適格を認めることはでき
ない。
(3)法33条1項7号の規定については,同号が規制している内容は開発行
為の過程ではなく,開発行為の結果,すなわち土地の区画形質を変更した
後の状況であると解すべきであるから,原告適格の有無も,開発行為後の
状況にかんがみて判断するべきである。
そして,本件開発行為の結果により変更された後の本件開発区域の形質
状況をみると,本件開発区域の南側の幅員4.7メートル(開発行為によ
る拡幅後)の市道β線(以下「本件開発区域南側道路」という。)に接する
付近の東側においては,駐車場が計画されており,道路境界線から約5メ
ートル程度の内側の部分に,最大で高さ約1メートル程度の切土と盛土を
行って地上高さ約3.5メートルから約50センチメートル程度の擁壁を
設置し,建築物の設置地盤として水平地となることとなっている。また本
件開発区域南側部分には,本件開発区域に含まれない間口約19メートル,
奥行約15メートル程度の土地があり,同土地の北側に本件開発区域南側
道路から出入りする公園が計画されており,道路境界線から約6メートル
程度内側の部分に,最大で高さ3メートル程度の切土と最大で高さ約2メ
ートル程度の盛土を行って地上高さ約4.5メートルから50センチメー
トル程度の擁壁を設置し,建築物の設置地盤として水平地とすることとな
っている。さらに公園の西側には駐車場が計画されており,道路境界線か
ら最短でも約80センチメートル程度内側の部分に,最大で高さ約2メー
トル程度の切土と盛土を行って地上高さ約5.7メートルから3.2メー
トル程度の擁壁を設置し,建築物の設置地盤として水平地とすることとな
っている。
そして,これらの水平地部分に引き続いて北側敷地境界及び東側敷地境
界まで30度以下の緩やかな傾斜面地とすることとなっている。
以上のような変更後の開発区域の状況に照らせば,本件開発区域の周辺
の住民は,崖崩れ等による直接的な被害を受けることが予想される範囲の
地域に居住する者とはいえない。
2本案の争点
(1)甲事件
ア原告らの主張する違法事由は自己の法律上の利益に関係のない違法を主
張するものとして,その主張が制限されるか
【被告の主張】
原告らは,本件許可につき法33条1項2号に違反する違法がある旨主
張するが,上記1(本案前の争点)で主張したとおり,同号は原告らの個
別的利益を保護する趣旨を含む規定ではないから,原告らが同号に違反す
ることを理由として本件許可の取消しを求めることは,行訴法10条1項
に反し,許されない。
【原告らの主張】
上記1(本案前の争点)で主張したとおり,法33条1項2号は原告ら
の個別的利益の保護を趣旨とする規定であるから,同号に違反することを
理由として本件許可の取消しを求めることは,行訴法10条1項に反しな
い。
また,原告適格を肯定する根拠となった法令と全く同じ違法事由しか主
張し得ないとすることは狭きに失するというべきであり,行訴法10条1
項の解釈においても,同法9条2項の解釈基準を援用し,当該処分によっ
て害される利益の内容及び性質並びに侵害の態様又は程度を勘案して「自
己の法律上の利益に関係のない違法」なのか否かを判断すべきである。
イ本件許可につき取消事由はあるか
【原告らの主張】
本件許可には,以下のとおり法及び法に基づく命令に違反しているとと
もに,豊中市長が認められた裁量の範囲を逸脱して本件許可をなした違法
がある。
(ア)道路に関する基準違反の有無
a法33条1項2号,法施行令25条2号及び法施行規則20条は,
道路の幅員に関する基準を定めており,開発許可を行う際には,予定
建築物等の敷地に接する全ての道路について上記各規定に定める幅員
を有することが必要であるから,本件予定建築物の敷地に接する全て
の区域外道路は6メートルの幅員を有することが必要である。しかし
ながら,本件開発区域南側道路は,これを満たしていない。
bまた,本件開発区域に係る道路は,法施行令25条2号ただし書に
も反する。すなわち,「開発許可制度運用指針」によれば,法33条
1項2号の規定する「環境の保全上,災害の防止上,通行の安全上又
は事業活動の効率上支障がない」との要件については,「災害の防止」
について消火活動上の支障がないこと,「通行の安全」について1日
当たりの車両の交通量が少ないこと,歩行者の数が多くないこと等の
要件を満たしている必要があるとされているところ,本件開発区域に
係る道路は,これらの条件を満たしていない。とりわけ,本件開発区
域南側道路は住宅地に面しており,通勤,通学路となっていることか
ら,上記要件を満たさず,法施行令25条2号ただし書に違反する。
また,同号の適用に当たっては,開発道路の幅員実測及び交通量の調
査がなされるべきであるのに本件ではこれがなされていないことか
らしても,本件開発区域南側道路は,同号ただし書に違反する。
また,仮に,本件開発区域に係る道路が法施行令25条2号ただし
書の要件を満たすとしても,本件開発区域南側道路は有効幅員(経宅
発第38号・昭和61年4月11日建設省建設経済局長通達に定める
実質幅員4メートルの要件)を満たしていないから,本件許可は違法
である。
c本件予定建築物の規模に照らせば,火災の際に必要となる大型消防
車等がスムーズに通れるとはいえず,本件開発区域の北西端部に設置
される開発区域内道路(別紙3の赤斜線部分。以下「本件開発区域内
道路」という。)は,法33条1項2号,法施行令25条2号に該当す
るものとはいえず,これに反する違法があるというべきである。
d豊中市土地利用の調整に関する条例施行規則(以下「本件条例施行
規則」という。)10条1項(1)別表第1は,開発行為等区域に接する
道路について6.35メートルの幅員を有することを要求していると
ころ,本件開発区域南側道路は,これに反する違法がある。
(イ)地盤に関する基準違反の有無
以下のとおり,本件許可は法33条1項7号に違反する違法がある。
a法33条1項7号は,開発許可の基準として「地盤の沈下,崖崩れ,
出水その他による災害を防止するため,開発区域内の土地について,
地盤の改良,擁壁又は排水施設の設置その他安全上必要な措置が講ぜ
られるように設計が定められていること」を規定している。活断層の
有無は,「その他による災害」に係るものとして開発許可にあたって考
慮されるべきであるにもかかわらず,本件許可の申請手続において,
本件開発区域に活断層が存在することに対する指導・対策はされてい
ない。
b国土交通省の「宅地防災マニュアル」は,地震時に液状化するおそ
れのある砂質地盤については一種の軟弱地盤と考えられるとし,さら
に,①有機質土・高有機質土,②粘性土でN値が2以下,砂質土でN
値が10以下のものを軟弱地盤とするとしているところ,本件におい
て,開発業者が行った地盤調査においても,砂質土でN値が1の箇所
が複数あることから,本件開発区域は軟弱地盤と判定し得る。そうで
あるにもかかわらず,何ら有効な対策が講じられていない。
また,本件開発区域内は地層が縦縞状になっており,土砂崩れ,崖
崩れの危険性が極めて高い地域であるにもかかわらず,本件許可がな
されている。
c「大阪府自然災害総合防災検討(地震被害想定)報告書」(甲25)
によると,本件開発区域には大阪層群と呼ばれる堆積層の上を軟弱な
地盤である沖積層が覆っており,また,盛土・切土を行うと地震時に
崩壊や地割れなどの被害が発生する危険性がある。そして,上町断層
帯の活動により,30年以内に2パーセントから3パーセントの確率
で震度7以上の地震が予測されているところ,本件許可にあたっては
かかる事実も考慮されていない。
d「逆T型擁壁8-2(h5.0m)」の一部は基礎を改良体で設計
しており,改良体の底部は粘性土であるが,設計者は改良体底部の支
持層の土質を砂質土層と誤って判断して設計している。
【被告の主張】
(ア)道路に関する基準違反の有無
a原告らは,本件予定建築物等の敷地に接する道路は全て6メートル
道路に接しなければならないと主張するようであるが,開発許可を行
う際の接道要件はそのようなことまで要求するものではない。
b本件開発区域においては,本件開発区域内道路を設け,この開発区
域内道路を開発区域に接する既存の市道(別紙3の黄斜線部分。以下
「本件接続道路」という。)に接続させるものであるから,本件開発区
域内道路について法施行令25条2号本文が問題となるとともに,本
件接続道路について4号の適用の可否が問題になるのであって,開発
区域内道路を設けずに開発区域に接する既存道路に接して行われる一
敷地の単体的な開発行為に適用される法施行令25条2号ただし書は
問題とならない。したがって,法施行令25条2号ただし書が適用さ
れることを前提とした原告らの主張は主張自体失当である。
cまた,原告らは本件開発区域南側道路が本件条例施行規則10条に
違反する旨も主張するが,本件開発区域内道路及び本件許可に係る開
発行為等区域内道路に接続する道路は本件条例施行規則10条1項
(1)別表第1の基準を満たしているから,この点についても違反はない。
(イ)地盤に関する基準違反の有無
a本件のように,開発区域内の土地の全部または一部が宅地造成等規
制法3条1項の宅地造成規制区域内の土地であるときは,法33条1
項7号の基準の適用に関しては,同号の基準についての技術的細目を
定める法施行令28条,宅地造成等規制法9条,同条の基準について
の技術的細目を定めた宅地造成等規制法施行令4条ないし15条の各
規定を充足する必要がある。そして,これら各規定の基準を満たして
いるか否かについては,現況の地盤を前提にした上で,開発行為の内
容が,上記法令の基準を満たしているか否かを判断すれば足り,これ
らの基準を満たしていれば,その他法令に違反していることをうかが
わせる特段の事情がない限り,法33条1項7号の基準を満たしてい
るものと認められるべきである。
本件開発区域においては,地盤の改良,擁壁又は排水施設の設置等
が予定されており,擁壁について,各擁壁の底盤地盤の地耐力(地盤
が擁壁の加重に耐える強さ)の検討を行い,現況地盤の地耐力が不足
する部分については攪拌改良による地耐力の強化を検討し,それでも
地耐力が不足する部分については柱列改良による地耐力の強化を行
う設計となっているし,柱列改良を行う擁壁については,改良地盤の
許容支持力が擁壁底面における最大接地圧を上回ることが確認され
ている。
したがって,本件では上記基準を全て満たしているといえるところ,
以下のとおり,原告らの主張する事由は,法33条1項7号の基準に
違反していることをうかがわせる特段の事情とはいえない。
b原告らは,本件許可の申請手続において,本件開発区域に活断層が
存在することを考慮していない旨主張する。
しかし,本件開発区域内における活断層の存在の有無や位置は何ら
確認されていない。また,法33条1項7号及び同号の基準について
の技術的な細目を定めている政令には,活断層に対する特別の定めは
置かれていないところ,市長は,当該申請に係る開発行為が法33条
1項各号に掲げる基準に適合しており,かつ,その申請の手続が法及
び法に基づく命令の規定に違反していないと認めるときは,開発許可
をしなければならないとされており,市長は,法33条1項各号その
他法及び法に基づく命令に定めのない事項についても審査した上で
開発許可の判断をすべきものではなく,法及び法に基づく命令に規定
された事項以外の事情を考慮して,開発許可の申請に対して不許可処
分を行うことは許されないから,法及び法に基づく命令に定めのない
活断層に係る審査を求める原告らの主張は,理由がないことは明らか
である。
cまた,原告らは,「宅地防災マニュアル」の記述及び開発事業者が行
った地盤調査の結果によれば本件開発区域は軟弱地盤と判定し得るこ
とに加え,本件開発区域内は地層が縦縞状になっており,土砂崩れ,
崖崩れの危険性が極めて高い地域であるにもかかわらず,これが考慮
されずに本件許可がなされている旨主張する。
しかしながら,「宅地防災マニュアル」は開発事業を審査するにあた
っての審査基準ではないし,原告らが指摘する砂質土でN値1の地盤
は,ボーリング調査された10箇所のうちNo.5の深度約1.5メ
ートルの部分とNo.7の深度約2.3メートルの部分のみと,ごく
一部に過ぎないのであるから,これをもって軟弱地盤であると判定す
ることはできない。また,これ以外の砂質土でN値10以下とされて
いる部分については,ほとんどの部分が切土によって除去されること
になっているから,本件開発区域が形質の変更された状況で軟弱地盤
と判定されるものではない。
仮に本件開発区域の地盤が軟弱地盤であったとしても,本件開発行
為においては,擁壁が設置され,各擁壁の底盤部分の地盤につき,地
耐力の検討を行い,支持力が不足する部分については地盤改良がおこ
なわれる設計となっているから,法33条1項7号の基準を適用する
についての技術的細目を定めた法施行令28条,法施行規則23条及
び27条,宅地造成等規制法9条,宅地造成等規制法施行令4条ない
し15条の規定に適合しているものであるから,本件開発行為は法及
び法に基づく命令の基準を満たしているものであって,何ら違法な点
はない。
また,本件開発区域内は地層が縦縞状であるとの原告らの主張につ
いても,これが直ちに本件開発区域内の地盤が軟弱である等の評価に
つながるものではない。
d原告らは,本件開発区域には大阪層群と呼ばれる堆積層を軟弱な地
盤である沖積層が覆っている旨主張する。
しかしながら,原告らが上記主張の根拠とする「大阪府自然災害総
合防災対策検討(地震被害想定)報告書」の記載をみれば,上記主張
の内容は,大阪府域のうち平野部について当てはまるものであって,
丘陵部である本件開発区域には当てはまらない。
e原告らは,「逆T型擁壁8-2(h5.0m)」改良体底部の土層
に係る設計に誤りがある旨主張する。
しかしながら,同擁壁下部の土質については,ボーリング調査結果
によって,砂質土及び硬い粘性土の薄層の互層であって,改良体の底
部はほぼ層の境目に位置することから,総合的に判断して砂質土とし
て計算しているところ,これは合理的な判断方法であって,設計に誤
りがあるとはいえない。
(ウ)なお,原告らは,本件許可について豊中市長に裁量が認められるこ
とを前提とした主張をしているが,法は,市街化区域及び市街化調整区
域において,主として建築物の建築の用に供する目的で行う土地の区画
形質の変更を指定都市等の市長の許可にかからしめて開発行為に対して
一定の水準を保たせるとともに,市街化調整区域内にあっては一定のも
のを除き開発行為を行わせないこととして,無秩序な市街化を防止しよ
うとしているものである。そして,開発許可を受けようとする者は,開
発許可申請書を市長に対して提出し(法30条1項),市長の許可を受け
なければならず(法29条1項),市長は,当該申請に係る開発行為が法
33条1項各号に掲げる基準に適合しており,かつ,法及び法に基づく
命令に違反していないと認めるときは,開発許可をしなければならない
とされている(法33条1項柱書)。したがって,市長は,当該申請に係
る開発行為が法33条1項各号に掲げる基準に適合している場合におい
て同申請を却下する裁量権を有していないから,原告らの主張は理由が
ない。
(2)乙事件
ア原告らの主張する違法事由は自己の法律上の利益に関係のない違法を主
張するものとして,その主張が制限されるか
【被告の主張】
上記(1)アの主張と同様,法33条1項2号は開発区域外に居住する住民
の個別的な利益を保護する趣旨を含むものと解することはできないし,同
号に基づく法施行規則24条1項3号の道路勾配に関する規定も同様に,
開発区域外に居住する住民の個別的な利益を保護する趣旨を含むものと解
することはできないから,原告らがこれらの規定の違反を本件第一次変更
許可の違法事由として主張することは行訴法10条1項に反する。
【原告らの主張】
上記(1)アの主張と同様,法33条1項2号は原告らの権利利益を個別具
体的に保護する趣旨の規定であり,同号に基づく法施行規則24条1項3
号も同様の趣旨であると解されるから,原告らがこれらの規定の違反を本
件第一次変更許可の違法事由として主張することは行訴法10条1項に反
しない。
イ(ア)本件第一次変更許可につき取消事由はあるか
【原告らの主張】
a本件許可に係る違法事由に加え,本件第一次変更許可において関連
区域とされている1108.87平方メートルの区域は,開発区域面
積に含めるべきであるが,これを含めていない違法がある。
また,本件開発区域の北側に新たに設置される幅員9メートルの道
路(以下「本件新設道路」という。)は,縦断勾配が11パーセントに
計画されていることから,法33条1項2号,法施行規則24条1項
3号に定める縦断勾配9パーセントの原則に違反する違法がある。
b本件第一次変更許可においては,「逆T型擁壁8-2(h=5.7
m,5.0m)」の設計条件に変更があるのに構造検討がされていな
い。すなわち,本件マンションの西棟の基礎杭は「逆T型擁壁8-2
(h=5.7m,5.0m)」に非常に近接することになり,荷重が
かかることとなるが,当該荷重については何ら考慮されていない。
c「逆T型擁壁8-2(h=5.7m)」の支持地盤は粘土層に挟ま
れた2.3メートルの厚さしかない薄い砂層である。
d本件開発区域内には活断層ないし活断層由来の撓曲構造が存在する
が,この点を考慮していない。
【被告の主張】
a上記(1)イで主張したとおり,本件許可に係る違法事由については,
原告らの主張にはいずれも理由がない。
b本件第一次変更許可に係る申請がなされた経緯は,本件許可の後,
本件新設道路を設置することになったというものであるところ,本件
新設道路は,その東西に存する既存の道路を結ぶものであり,開発区
域内の住民に限らず開発区域内外の一般公衆が広く利用する一般道路
として計画されている道路であること,及び本件許可において開発区
域内道路として整備した道路によって開発許可上必要な道路が設置さ
れていることから,本件新設道路は建築の用に供する目的で行う土地
の区画形質の変更をする土地とはいえず,「開発区域」(法4条12項,
13項)には当たらないことから,開発関連区域とされているもので
ある。したがって,「関連区域」として開発区域には含めなかったこと
について,何ら違法な点はない。
また,本件新設道路は,その東西に既存道路があり,これを結ぶ地
形に設置されるものであるところ,地形の形状からして,道路勾配を
11パーセントにせざるを得なかったものであり,道路構造令20条
に規定する例外的場面に該当する。
c原告らは本件予定建築物の西棟の基礎杭が「逆T型擁壁8-2(h
=5.7m,5.0m)」に非常に近接することになる旨主張するが,
そもそも開発許可の段階において予定建築物に関して特定されるのは,
予定建築物の用途とその敷地の規模及び配置のみであるし,開発行為
申請書の添付図書にも,予定建築物についての図面は含まれておらず,
これらにより判明する以上に,予定建築物の内容を特定し,その内容
を考慮して開発許可の審査を行うことは予定されていない。したがっ
て,予定建築物と擁壁の荷重に係る事項は開発許可の審査対象外であ
って,原告らの主張は理由がない。
d原告らは,「逆T型擁壁8-2(h=5.7m)」の支持地盤につ
いて指摘する。
当該擁壁の支持地盤は粘土層に挟まれた2.3メートルの厚さの砂
層であり,その下層は粘性土であるものの,N値は少なくとも17以
上あり(乙35の1),地盤調査における評価は「非常に硬い」とさ
れているものであるから,到底軟弱地盤とはいえないものであり,支
持層としては問題が無いから,原告らの主張は理由がない。
e活断層ないし活断層由来の撓曲構造の存在を考慮する必要がないと
いうのは,既に上記(1)イで主張したとおりである。
(イ)本件第二次変更許可につき取消事由はあるか
【原告らの主張】
本件許可に係る違法事由に加え,本件第二次変更許可において関連区
域と称している1108.87平方メートルの区域は,開発区域面積に
含めるべきであるが,これを含めていない違法がある。
また,本件第二次変更許可によって「逆T型擁壁8-2(h=5.7
m)」の中掘工法をプレボーリング工法に変更することによって,擁壁
地盤の安全性が害されることから,法33条1項7号に違反する。
【被告の主張】
a上記(1)イで主張したとおり,本件許可に係る違法事由については,
原告らの主張にはいずれも理由がない。
b開発区域の範囲に関する主張は,本件第一次変更許可に係る主張と
同様である。また,そもそも本件第二次変更許可においては,関連区
域に関しての変更は行われていないため,この点からも原告らの主張
は主張自体失当である。
c中掘工法とプレボーリング工法の違いは杭の打設方法の違いに過
ぎず,いずれも法33条1項7号の技術基準を満足しているから,何
ら違法な点はなく,原告らの主張は理由がない。
(ウ)本件第三次変更許可につき取消事由はあるか
【原告らの主張】
本件第三次変更許可においては,地盤高の変更に伴う擁壁形状の変更
について,擁壁地盤の安全性が十分確保されていないから,法33条1
項7号に違反する。
【被告の主張】
本件第三次変更許可によって形状が変更された擁壁についてはいずれ
も法施行規則27条に規定する基準に該当することが確かめられ,法3
3条1項7号の技術基準を満足しているものである。
第5当裁判所の判断
1原告らに原告適格が認められるか(本案前の争点)
(1)判断枠組み
行訴法9条は取消訴訟の原告適格について規定するが,同条1項にいう
処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは,当該処分
により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的
に侵害されるおそれのある者をいうのであり,当該処分を定めた行政法規
が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるに
とどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべき
ものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益もここにいう
法律上保護された利益に当たり,当該処分によりこれを侵害され,又は必
然的に侵害されるおそれのある者は,当該処分の取消訴訟における原告適
格を有するものというべきである。そして,処分の相手方以外の者につい
て上記の法律上保護された利益の有無を判断するに当たっては,当該処分
の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく,当該法令の趣旨及び
目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮す
べきであり,この場合において,当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当
たっては,当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及
び目的をも参酌し,当該利益の内容及び性質を考慮するに当たっては,当
該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる
利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案すべきも
のである(同条2項参照)。
この観点から,本件許可等の各取消しを求める原告らの原告適格につい
て,以下,検討する。
(2)法33条1項2号について
ア法33条1項2号は,主として,自己の居住の用に供する住宅の建築の
用に供する目的で行う開発行為以外の開発行為について,道路,公園,広
場その他の公共の用に供する空地が,開発区域の規模,形状及び周辺の状
況等の同号イないしニに掲げる事項を勘案して,環境の保全上,災害の防
止上,通行の安全上又は事業活動の効率上支障がないような規模及び構造
で適当に配置され,かつ,開発区域内の主要な道路が,開発区域外の相当
規模の道路に接続するように設計が定められていることを開発許可の基準
とする旨規定しているところ,同号が条文上,「開発区域の・・・周辺の状
況」を勘案して「災害の防止上・・・支障がない」ことを開発許可の要件
として定めていることからすれば,同号は,予定建築物の用途,敷地の規
模,配置等に応じて公共の用に供する空地等を確保しようとするのみなら
ず,予定建築物等に火災その他の災害が発生した場合に予定建築物等が倒
壊する等し,あるいは予定建築物等の開発区域内の火災が開発区域外に延
焼する等して隣接する建築物に居住する住民の生命・身体等に被害が及ぶ
ことを防止することをもその目的に含むものと解するのが相当である。
上記のような法33条1項2号の文言及び内容,同号が保護しようとし
ている利益の内容・性質に鑑みれば,同号は,開発区域内の住民の利益を
保護する趣旨にとどまらず,当該開発許可に係る開発区域内における予定
建築物等の火災等の災害による被害が直接的に及ぶことが想定される周
辺の一定範囲の地域に居住する者の生命・身体の安全を,個々人の個別的
利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解するのが相当で
ある。
したがって,当該開発許可に係る開発区域内における予定建築物等の火
災等の災害により直接的な被害が及ぶことが予想される範囲の地域に存す
る建築物に居住する者は,法33条1項2号に基づき,当該開発許可の取
消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として,原告適格を有すると
解するのが相当である。
また,この理は,開発変更許可の取消訴訟における原告適格にも妥当す
るものと解される。
なお,法33条1項2号は,自己の居住の用に供する住宅の建築の用に
供する目的で行う開発行為については同号に定める基準の適用を除外し
ているところ,その理由は,自己の居住の用に供する住宅の建築の用に供
する目的で行う開発行為については,規模が比較的小さいものにとどまる
のが通常であり,建築基準法等による規制要件を課すことで,環境の保全,
災害の防止,交通の安全等の面で特段の支障は生じないものと考えられる
ことから適用を除外したものであると解される。したがって,自己の居住
の用に供する住宅の建築の用に供する目的で行う開発行為について,同号
に定める基準の適用が除外されていることは,上記原告適格に係る判断を
左右するものではない。
イ法33条1項7号について
法33条1項7号の規定は,開発区域内の土地が,地盤の軟弱な土地,
崖崩れ又は出水のおそれが多い土地その他これらに類する土地であるとき
は,地盤の改良,擁壁の設置等安全上必要な措置が講ぜられるように設計
が定められていることを開発許可の基準としているところ,かかる規定は,
上記のような土地において安全上必要な措置を講じないままに開発行為を
行えば,崖崩れ等の災害が発生して,人の生命,身体の安全等が脅かされ
るおそれがあることにかんがみ,そのような災害を防止するため,開発許
可の段階で,開発行為の設計内容を十分審査し,安全上必要な措置が講ぜ
られるように設計が定められている場合にのみ許可をすることとしている
ものである。そして,崖崩れ等が起きた場合における被害は,開発区域内
のみならず開発区域に近接する一定範囲の地域に居住する住民に直接的に
及ぶことが予想され,また,同条2項は,同条1項7号の基準を適用する
について必要な技術的細目を政令で定めることとしており,その委任に基
づき定められた法施行令28条,法施行規則23条,27条の各規定をみ
ると,法33条1項7号は,開発許可に際し,崖崩れ等を防止するために
崖面,擁壁等に施すべき措置について具体的かつ詳細に審査すべきことと
しているものと解される。
以上のような同号の趣旨・目的,同号が開発許可を通して保護しようと
している利益の内容・性質等にかんがみれば,同号は,崖崩れ等のおそれ
のない良好な都市環境の保持・形成を図るとともに,崖崩れ等による被害
が直接的に及ぶことが想定される開発区域内外の一定範囲の地域に存する
他の建築物に居住する者の生命,身体の安全等を,個々人の個別的利益と
しても保護すべきものとする趣旨を含むものと解すべきである。そうする
と,開発区域内の土地が同号にいう崖崩れのおそれがある土地等に当たる
場合には,崖崩れ等による直接的な被害を受けることが予想される範囲の
地域に存する建築物に居住する者は,開発許可の取消しを求めるにつき法
律上の利益を有する者として,その取消訴訟における原告適格を有すると
解するのが相当である。(最高裁平成6年(行ツ)第189号同9年1月2
8日第三小法廷判決・民集51巻1号250頁参照)
また,この理は,開発変更許可の取消訴訟における原告適格にも妥当す
るものと解される。
(3)そこで,本件の原告らに原告適格が認められるか否か,以下検討する。
ア前記前提事実に加え,各項掲記の証拠等によれば,以下の事実が認めら
れる。
(ア)原告Cは,本件開発区域とは水平距離で約4メートル隔てた場所に,
原告Bは,本件開発区域とは水平距離で約30メートル隔てた場所に,
それぞれ自宅を所有し居住している(別紙2参照)。
(イ)本件開発区域は,宅地造成等規制法3条1項の宅地造成工事規制区
域内にある(前記前提事実(2)イ)。
(ウ)本件開発区域のうち,原告らが自宅を所有し居住する敷地付近では,
開発区域境界線から内側約5メートルにかけて高さ約3メートル程度の
切土を行い,同所に高さ約5メートル程度の擁壁(逆T型擁壁8-2)
を設置し,擁壁の内側に約2メートル程度の盛土を行うこととなってい
る(乙30,31)。
(エ)本件予定建築物は,地上12階,地下2階建て,戸数140戸の鉄
筋コンクリート造の共同住宅である(乙26)。
イ(ア)法33条1項2号について
上記アのとおり,本件予定建築物は地上12階建ての比較的規模の大
きなものであることに鑑みると,本件開発区域から水平距離で約4メー
トル隔てた場所に居住している原告C及び本件開発区域から水平距離
で約30メートル隔てた場所に居住している原告Bは,いずれも本件予
定建築物等に火災等の災害が発生した場合,同建築物の倒壊等により,
直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に
居住する者であると認められる。
(イ)法33条1項7号について
前記前提事実(2)イのとおり,本件開発区域は宅地造成等規制法3条
1項の宅地造成工事規制区域内にあり,本件開発区域は,原告Cが自宅
を所有し居住する敷地付近との間に水平距離で最短約9メートル程度
の場所に高さ約5メートルの崖(地表面が水平面に対し30度を超える
角度を成す土地で硬岩盤(風化の著しいものを除く。)以外のものをい
う。法施行規則16条4項参照)を生じさせる盛土を行うこととなって
いる。そうすると,原告らが自宅を所有し居住する敷地付近に係る本件
開発区域は,崖崩れのおそれがある土地に当たるということができる。
そして,原告Cは,本件開発区域から水平距離で約4メートル隔てた
場所に,原告Bは同約30メートル隔てた場所に,それぞれ居住してい
るところ,上記のような原告らの自宅と本件開発区域との関係や,擁壁
等の存在,さらに,本件開発区域内に建築される本件予定建築物の規模
等に照らすと,原告らは,いずれも本件開発区域内の崖崩れ等により直
接的な被害を受ける蓋然性がある範囲内の建築物に居住しているとい
うことができる。
(4)したがって,原告らはいずれも,法33条1項2号及び同項7号を根拠
として,本件許可等の取消しを求める訴えの原告適格を有すると認められる。
2甲事件について
(1)原告らの主張する違法事由は自己の法律上の利益に関係のない違法を主
張するものとして,その主張が制限されるか(本案の争点ア)
被告は,原告らの法33条1項2号違反の主張は行訴法10条1項に違
反し,許されない旨主張するが,上記1で説示したとおり,法33条1項
2号は原告らの個別的利益をも保護する趣旨の規定であると解されるから,
被告の主張はその前提を欠き,失当である。
(2)本件許可につき取消事由はあるか(本案の争点イ)
ア本件では本件許可後に本件第一次変更許可,本件第二次変更許可及び本
件第三次変更許可がなされていることから,これら各処分の関係をいかに
解するべきか,すなわち本件許可等に係る取消事由の審理範囲をどのよう
に考えるべきか,まず検討する。
法及び法施行規則等の規定をみると,変更許可申請書の記載事項は,変
更に係る事項,変更の理由,開発許可の許可番号とされ(法35条の2第
2項,法施行規則28条の2),添付書類としては,法30条2項に規定す
る図書のうち開発行為の変更に伴いその内容が変更されるものを添付しな
ければならないとされ(法施行規則28条の3),工事完了検査,建築制限,
公共施設の管理,公共施設の用に供する土地の帰属等の規定の適用につい
ては,変更許可に係る変更後の内容を開発許可の内容とみなすこととされ
(法35条の2第5項),開発行為変更許可処分について,開発審査会に審
査請求をすることを認め(法50条1項),当該開発行為変更許可処分の取
消しの訴えを提起する場合には審査請求に対する開発審査会の裁決を経な
ければならないこととされている(法52条)。
このように,開発行為変更許可申請書の記載内容及び添付図書は変更に
係る部分のみであり,当該開発行為全体についての記載及び添付図書の提
出は予定されていないこと,当該開発行為変更許可について独自に審査請
求及び取消訴訟を行うことが予定されていること等からすると,開発行為
変更許可処分は,当初の開発許可処分の一部取消しと開発行為の一部につ
いての新たな開発許可処分という性質を有し,当初の開発許可処分と併存
して効力を有するものと解するのが相当である。
したがって,本件許可に係る取消事由としては,本件第一次変更許可,
本件第二次変更許可及び本件第三次変更許可で変更されていない部分に限
定して違法性を検討すべきこととなる。
イ道路に関する基準違反の有無
(ア)原告らは,法33条1項2号,法施行令25条2号,法施行規則2
0条は,道路の幅員に関する基準を定めており,開発許可を行う際には,
予定建築物の敷地に接する全ての道路が上記各規定に定める幅員を有す
ることが必要であるから,本件予定建築物の敷地に接する全ての区域外
道路は6メートルの幅員を有することが必要であるのに,本件開発区域
南側道路は同要件を満たしていない旨主張する。
しかしながら,上記各規定が,その文言上,予定建築物等の敷地に接
する全ての区域外道路について6メートルの幅員を有することまでを要
求しているものとは到底解されず,原告らの主張は独自の見解を述べる
ものであって理由がない(本件条例施行規則に係る原告らの主張も,同
様に理由がない。)。
(イ)また,原告らは,本件開発区域南側道路は法施行令25条2号ただ
し書に違反する旨主張する。
しかしながら,法施行令25条2号ただし書は,開発区域外の既存道
路に直接接して行われる一敷地の単体的な開発行為に適用されるところ,
本件開発区域においては,本件開発区域内道路を設け,この開発区域内
道路を本件接続道路に接続させることとなっているから,本件開発区域
南側道路について法施行令25条2号ただし書の適用は問題とならず,
原告らの主張は理由がない。
(ウ)そして,本件開発区域内道路及び本件接続道路の概要は別紙3のと
おりであって,法施行令25条2号及び4号の各要件を満たすものと認
められる。
以上から,本件許可について,法33条1項2号に違反する事由があ
るとは認められない。
ウ地盤に関する基準違反の有無
(ア)法33条1項7号は,開発区域内の土地について,地盤の改良,擁
壁又は排水施設の設置その他安全上必要な措置が講ぜられるように設
計が定められており(その技術的細目については,同条2項,法施行令
28条,29条),かつ,宅地造成工事規制区域内の土地については,
開発行為に関する工事の計画が宅地造成等規制法9条の規定に適合し
ていることという許可基準を定め,宅地造成等規制法9条は,宅地造成
工事は擁壁等の設置その他宅地造成に伴う災害を防止するため必要な
措置が講ぜられたものでなければならない旨規定している。同法9条1
項の政令で定める技術的基準のうち擁壁の設置に関する基準として,宅
地造成等規制法施行令6条ないし11条が定められている。
そして,証拠(乙34ないし38)によれば,本件開発区域において
は,地盤の改良や擁壁の設置等がされ,その内容も上記各規定の基準に
適合しているものと認められる。
(イ)原告らは,本件開発区域内には活断層が存在するところ,活断層の
有無は「その他による災害」(法33条1項7号)に係るものとして,
開発許可にあたって考慮されるべきであるのに,本件許可はその有無を
考慮していない旨主張する。
しかしながら,法は,都市計画区域又は準都市計画区域内における開
発行為については原則として許可を要することとし(法29条1項),
もって無秩序な市街化を防止しようとしているものであるところ,その
開発許可の基準(法33条)は,上記目的を達成するために最低限必要
な水準を確保するための基準を定めたものであり,都道府県知事は,開
発許可の申請に係る開発行為が同条1項各号に掲げる基準に適合して
おり,かつ,その申請の手続が法及び法に基づく命令の規定に違反して
いないと認めるときは,開発許可をしなければならない(同項柱書)。
したがって,法29条に定める開発行為の許可に係る審査にあたっては,
法33条1項各号及び法に基づく命令に規定する事項について審査を
し,申請内容が同規定に適合していれば,開発許可処分が行われなけれ
ばならないこととなる。この点,原告らは活断層の有無を裁量によって
考慮すべきである旨主張するが,同項の文言に照らし,採用できない。
そうであるところ,法33条1項7号はもとより,法施行令28条,
法施行規則23条,27条等,法33条1項7号の基準を適用するにつ
いて必要な技術的細目の規定及び宅地造成等規制法9条,宅地造成等規
制法施行令6条ないし11条の規定をみても,開発許可をするにあたっ
て活断層の有無を考慮すべき旨を定めた規定はないから(なお,活断層
の有無が法33条1項7号の「その他の災害」に当たるものということ
はできない。),開発許可の判断にあたって活断層の有無を考慮すべきで
あるとの原告らの主張は理由がない。
(ウ)原告らは,本件開発区域は軟弱地盤であるのにこれが考慮されてい
ないため,本件許可は法33条1項7号に違反する旨主張する。
「宅地防災マニュアルの解説」(乙45)によれば,軟弱地盤の判定の
目安として,地表面下10メートルまでの地盤に,粘性土でN値が2以
下の土層の存在が認められる場合や,砂質土でN値が10以下の土層の
存在が認められる場合等が挙げられているところ,本件開発区域のうち
一部はこれにあたるため,当該部分は軟弱地盤と評価し得る。
もっとも,本件開発区域内において,地表面下10メートルまでの地
盤に粘性土でN値が2以下の土層又は砂質土でN値が10以下の土層の
存在が認められる部分については切土が行われるとともに(乙12,3
0,31),切土が行われる部分以外の部分も含めて地盤の地耐力の検討
が行われ(乙15),地耐力が不足する場合には地耐力の強化を行い,そ
れでも地耐力が不足する場合には,柱列改良を行い,地耐力の強化を行
う設計とされているものと認められ(乙36),その他,本件証拠上,本
件開発行為が法33条1項7号に違反していることをうかがわせる事情
は認められない(原告らからも,この点についての具体的な指摘はなさ
れていない。)。
なお,地盤が斜縦縞状であることは,直ちに当該地盤が軟弱であると
の評価につながるものではない。
したがって,原告らの主張は理由がない。
(エ)原告らは,「大阪府自然災害総合防災対策検討(地震被害想定)報告
書」(甲25)を根拠に,本件開発区域は大阪層群と呼ばれる堆積層の上
を軟弱な地盤である沖積層が覆っており,盛土・切土を行うと地震時に
崩壊や地割れなどの被害が発生する危険性がある旨等を指摘する。
しかしながら,同報告書は大阪府下における一般的な地盤の傾向を記
載したものにすぎず,本件開発区域内の地盤に係る検討は上記(ウ)のと
おりであるから,原告らの主張は理由がない。
(オ)原告らは,「逆T型擁壁8-2(h5.0m)」の基礎の改良体底部
の支持層の土質を誤って設計している旨主張する。
これに対して被告は,同擁壁の基礎の改良体底部の支持層の土質は,
ボーリング調査結果によって,砂質土及び硬い粘性土の薄層の互層とな
っていることが判明しており,改良体の底部は,砂質土及び硬い粘性土
のほぼ境目に位置すること等から総合的に判断して砂質土として計算し
ている旨主張するところ,同擁壁の基礎の改良体底部の支持層は層厚0.
5メートルの砂質土と層厚1.35メートルの粘性土のほぼ境目である
こと,同粘性土層の相対密度及びコンステンシーは「硬い」とされてい
ること(乙12)からすると,同擁壁の改良体底部の支持層が総合的な
判断の下に砂質土としてなされた点について,法33条1項7号に違反
する違法があるとは認められない。
(カ)その他の原告らの主張をみても,本件許可が法33条1項7号に違
反する事由があるとは認められない。
エ以上からすれば,本件許可は適法であると認められる。
3乙事件について
(1)原告らが主張する違法事由は自己の法律上の利益に関係のない違法を主
張するものとして,その主張が制限されるか(本案の争点ア)
上記2(1)の判示と同様,法33条1項2号の規定は原告らの個別具体的利
益をも保護する趣旨の規定であると解されるから,行訴法10条1項により
主張が制限される旨の被告の主張はその前提を欠き失当である。
(2)本件第一次変更許可ないし本件第三次変更許可の取消事由(本案の争点
イ)
上記2(2)で判示したとおり,本件第一次変更許可ないし本件第三次変更許
可の取消訴訟において審理の対象となるのは,本件第一次変更許可ないし本
件第三次変更許可によって変更された部分に係る違法事由に限られる。以上
の前提で,以下,検討する。
ア本件第一次変更許可につき取消事由はあるか(本案の争点イ(ア))
(ア)原告らは,本件第一次変更許可申請において関連区域とされている
1108.87平方メートルの区域は開発区域面積に含めるべきである
のに,これを含めていない違法がある旨主張する。
しかしながら,本件第一次変更許可申請において関連区域とされた1
108.87平方メートルの区域は,本件許可後に本件開発区域の北側
に設置することとなった幅員9メートルの道路(本件新設道路)に係る
区域であるところ,本件新設道路は,その東西に存する既存の道路を結
ぶものであり,開発区域内外の公衆が広く利用する道路と認められるか
ら,建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の
区画形質の変更をする土地とはいえず,「開発区域」(法4条12項,1
3項)には当たらない(甲36,37,乙18,19,20の2)。
したがって,本件新設道路に係る区域を「関連区域」として開発区域
には含めなかったことについて違法はないから,原告らの主張は理由が
ない。
(イ)原告らは,本件第一次変更許可によって設置される本件新設道路は,
縦断勾配が11パーセントに計画されていることから,法33条1項2
号,法施行規則24条1項3号に定める縦断勾配9パーセントの原則に
違反する違法がある旨主張する。
しかしながら,本件新設道路は,その東西に既存道路があり,これを
結ぶものとして設置されるものであるところ(乙18,19,20の2),
東西の道路の高低差からして,本件新設道路の道路勾配を11パーセン
トにせざるを得なかったものであると認められるから,地形の状況その
他の特別の理由によりやむを得ない場合について規定する道路構造令2
0条ただし書が適用されると解され,道路勾配を11パーセントとする
ことが認められるから(同条に定める表の第四種,普通道路,設計速度
毎時20キロメートルの欄参照),原告らの主張は理由がない。
(ウ)原告らは,予定建築物西棟の基礎杭が「逆T型擁壁8-2(h=5.
7m,5.0m)」に非常に近接することになり,荷重がかかることと
なるが,当該荷重については何ら考慮されていない旨主張する。
しかしながら,開発許可の段階において予定建築物に関して特定され
るのは,予定建築物の用途のみであり(法33条1項1号),開発許可
の申請において,予定建築物に関して記載されるのはその用途(法30
条1項2号),予定建築物の敷地の形状,敷地に係る予定建築物の用途
(法30条1項3号,法施行規則16条2項,4項,法施行規則15条)
のみであり,開発許可申請書の添付図書にも,予定建築物について上記
事項以外の事項を特定するに足りる図面は含まれていない(法30条2
項,法施行規則17条1項)ことからすれば,開発許可の段階で,これ
ら以上に予定建築物の内容を特定し,その内容を考慮して開発許可の審
査を行うことは法が予定するところではなく,審査の必要性はないから,
原告らの主張は理由がない。
(エ)原告らは,「逆T型擁壁8-2(h=5.7m)」の支持地盤は粘
性土に挟まれた2.3メートルの厚さしかない砂層であるところ,その
厚さは当該擁壁の支持層としては薄い旨主張する。
しかしながら,原告らの上記主張のみでは,上記事由が具体的にいか
なる違法事由を主張するものであるのか明らかではない。
仮に,原告らの上記主張の趣旨が,「逆T型擁壁8-2(h=5.7
m)」の下に軟弱な地盤がある点を考慮した検討がなされていない旨を
いうものと解したとしても,同擁壁の基礎杭に係る支持地盤のN値は,
粘性土で平均13以上,砂質土で平均18以上であり,軟弱地盤と評価
されるものではないし(乙12,35の1,45),同擁壁の安全性に
ついても検討がなされているから(乙34の9,36の1),原告らの
主張は理由がない。
イ本件第二次変更許可につき取消事由はあるか(本案の争点イ(イ))
(ア)原告らは,本件第二次変更許可について上記ア(ア)と同内容の主張
をしているが,関連区域である1108.87平方メートルの区域に係
る変更は,本件第一次変更許可によって変更済であり,本件第二次変更
許可においては変更されていないから,原告らの主張は主張自体失当で
ある。
(イ)また,原告らは,第二次変更許可処分によって「逆T型擁壁8-2
(h=5.7m)」の中掘工法をプレボーリング工法に変更することに
よって地盤の安全性が害され,法33条1項7号に違反する旨主張する
が,プレボーリング工法も中堀工法も既製杭の埋込み工法として一般的
に用いられるものであって(乙29),中堀工法からプレボーリング工
法へ変更することによって地盤の安全性が害されることを認めるに足り
る証拠はない。したがって,原告らの主張は理由がない。
ウ本件第三次変更許可につき取消事由はあるか(本案の争点イ(ウ))
原告らは,本件第三次変更許可においては,地盤高の変更に伴う擁壁形
状の変更について,擁壁地盤の安全性が十分確保されていない旨主張する。
しかしながら,本件第三次変更許可によって変更された擁壁については,
擁壁地盤の地耐力等が検討され,いずれも安全性が確認されているから(乙
34,36の1),原告らの主張は理由がない。
エ小括
以上によれば,本件第一次変更許可ないし本件第三次変更許可はいずれ
も適法であると認められる。
4結論
よって,原告らの本訴請求はいずれも理由がないから棄却することとし,訴
訟費用の負担について行訴法7条,民事訴訟法65条1項本文,61条を適用
して,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第7民事部
裁判長裁判官田中健治
裁判官尾河吉久
裁判官板東恵里

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