弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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(別紙1,3ないし5は添付省略)
主文
1被告は,別紙2一覧表の「相手方」欄記載の各被告補助参加人(ただし,同
表の「認容額」欄記載の認容額が0円の被告補助参加人を除く。以下,この項
において同じ。)に対し,各被告補助参加人に対応する同表の「認容額」欄記
載の各金員を北海道に支払うよう請求せよ。
2原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3訴訟費用は,これを20分し,その11を原告の負担とし,その余を被告の
負担とする。別紙2一覧表の「相手方」欄記載の各被告補助参加人の補助参加
によって生じた訴訟費用は,これを各被告補助参加人に対応する同表の「原告
負担の補助参加費用」欄記載の各割合で原告の負担とし,その余を同各被告補
助参加人の負担とする。
事実及び理由
第1請求
被告は,別紙2一覧表の「相手方」欄記載の各被告補助参加人に対し,各
被告補助参加人に対応する同表の「請求額」欄記載の各金員を北海道に支払う
よう請求せよ。
第2事案の概要
1本件は,地方自治法100条14項(平成23年法律第35号による改正前
のもの。以下,特に断らない限り,同じ。)の規定により定められた北海道議
会の会派及び議員の政務調査費に関する条例(平成13年北海道条例第41
号。平成23年北海道条例第44号による改正前のもの。以下「本件条例」と
いう。)に基づいて,その議会の議員の調査研究に資するため必要な経費の一
部としてその議会における会派又は議員である被告補助参加人ら(以下,単に
「補助参加人ら」という。)に対し被告から交付された平成22年度政務調査
費(以下,単に「政務調査費」という。)について,北海道の住民を構成員と
する権利能力なき社団である原告が,北海道議会の会派及び議員の政務調査費
に関する規程(平成13年北海道議会告示第1号。平成24年北海道議会告示
第1号による改正前のもの。以下「本件規程」という。)4条並びに別表第1
及び第2に定める使途基準に従って使用されておらず,その政務調査費の使用
は本件条例8条に違反する違法なものであって,補助参加人らは交付された政
務調査費の全部又は一部について法律上の原因なく利得をしているにもかかわ
らず,北海道の執行機関である被告が補助参加人らに対して不当利得返還請求
権の行使を違法に怠っていると主張して,被告に対し,地方自治法242条の
2第1項4号の規定に基づいて,被告が別紙2一覧表の「相手方」欄記載の各
被告補助参加人に対して各被告補助参加人に対応する同表の「請求額」欄記載
の各金員を北海道に支払うよう請求をすることを求める事案である。
2関係法令等の定めと手引
関係法令の定めは,別紙3「関係法令等の定め」記載のとおりである。
なお,北海道議会議長が平成21年7月17日に本件規程4条2項に基づい
て決定した本件運用方針の内容は,平成22年4月に発行された北海道議会作
成に係る「政務調査費の手引~実務・留意事項等~」に記載されているほか,
同月に発行された「政務調査費の手引(様式編)」には,本件運用方針及び本
件規程の定めを踏まえ,必要な書類の様式及び記載例が記載されている(以
下,これらの手引を総称して「本件各手引」という。)(甲3,甲4,弁論の
全趣旨)。
3前提事実(当事者間に争いがない事実は証拠原因を掲記しない。)
当事者及び補助参加人ら
ア原告は,北海道の住民を構成員とし,その事務局を札幌市に置いて活動
している権利能力なき社団である。
イ被告は,普通地方公共団体である北海道の執行機関である。
ウ被告補助参加人自由民主党・道民会議北海道議会議員会(以下,単に
「自民党議員会」という。)は,北海道議会内で同一の行動をとるため
に,自由民主党に所属する北海道議会議員を中心に構成された会派であ
る。
エ被告補助参加人北海道議会民進党・道民連合議員会(旧名称は「北海道
議会民主党・道民連合議員会」。以下,単に「民主党議員会」といい,自
民党議員会と併せて「本件各会派」という。)は,北海道議会内で同一の
行動をとるために,民進党(旧名称は,民主党。以下「民主党」とい
う。)に所属する北海道議会議員を中心に構成された会派である。
オ別紙1「当事者目録」の補助参加人らのうち各住所の左に番号(整理番
号)が付されている各個人は,平成22年4月1日から平成23年3月3
1日までの間(以下,当該期間を「平成22年度」とする。),北海道議
会の議員であった者であり(以下「本件各議員」といい,特定の個人の呼
称については,氏名の後に「議員」を付けることとする。),会派である
自民党議員会,民主党議員会,北海道議会公明党議員団,北海道議会フロ
ンティア議員会又は日本共産党北海道議会議員団のいずれかに所属してい
た(なお,本件各議員の個別の表示は,戸籍上の氏名ではなく,北海道議
会における通称のみを用いることとする。)。
補助参加人らに対する政務調査費の交付
被告は,平成22年度中,本件条例7条1項及び2項に基づいて,補助参
加人らに対する政務調査費の交付を決定し,本件条例3条1項及び4条1項
に基づいて,自民党議員会に対して合計6000万円,民主党議員会に対し
て合計4680万円,本件各議員に対して1人当たり合計516万円の政務
調査費を交付した。
補助参加人らによる政務調査費の使用
ア自民党議員会
自民党議員会は,平成22年度中,自由民主党北海道支部連合会(以
下「自民党道連」という。)に対し,道政調査委託業務の処理を委託し
て(以下,この契約を「本件委託契約1」といい,同契約に基づく受託
業務を「本件受託業務1」という。),これに基づいて委託料4510
万円を支払い(以下,この支払を「本件会派支出1」という。),本件
会派支出1の全額に対して政務調査費を充当した(丙A自共1,
2,)。
自民党議員会は,平成22年度中,交付を受けた政務調査費から,本
件会派支出1を含め,合計6001万0159円を支出した(丙A自共
1,9)。
イ民主党議員会
民主党議員会は,平成22年度中,民進党北海道総支部連合会(旧名
称は「民主党北海道総支部連合会」。以下「民主党北海道」という。)
に対し,道政調査に係る事務等補助業務の処理を委託して(以下,この
契約を「本件委託契約2」といい,同契約に基づく受託業務を「本件受
託業務2」という。),これに基づいて委託料2960万円を支払い
(以下,この支払を「本件会派支出2」という。),本件会派支出2の
全額に対して政務調査費を充当した(丙A民共2,12の1ないし1
9)。
民主党議員会は,平成22年度中,日本労働組合総連合会北海道連合
会(以下「連合北海道」という。)に対し,道政調査に係る事務等補助
業務の処理を委託して(以下,この契約を「本件委託契約3」といい,
同契約に基づく受託業務を「本件受託業務3」という。),これに基づ
いて委託料117万円を支払い(以下,この支払を「本件会派支出3」
という。),本件会派支出3の全額に対して政務調査費を充当した(丙
A民共8)。
民主党議員会は,平成22年度中,北海道季節労働組合(以下「季節
労組」という。)に対し,道政調査に係る事務等補助業務の処理を委託
して(以下,この契約を「本件委託契約4」といい,同契約に基づく受
託業務を「本件受託業務4」といい,本件委託契約1ないし3と併せて
「本件各委託契約」という。),これに基づいて委託料39万円を支払
い(以下,この支払を「本件会派支出4」といい,本件会派支出1ない
し3と併せて「本件各会派支出」という。),本件会派支出4の全額に
対して政務調査費を充当した(丙A民共10)。
民主党議員会は,平成22年度中,交付を受けた政務調査費から,本
件会派支出2ないし4を含め,合計4595万5065円を支出し,残
額の84万4935円を北海道に返納した(丙A民共1,弁論の全趣
旨)。
ウ本件各議員
本件各議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し(以下,この支出を「本件各議員支出」といい,本件各会派支出と併
せて「本件各支出」という。),本件各議員支出に対して同表の「充当
額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
なお,本件各議員が平成22年度中に政務調査費を充当した経費の支出
合計額は,別紙4主張整理表の「支出合計」欄記載のとおりであるとこ
ろ,本件各議員のうち,G2議員,G4議員,G5議員,G7議員,G1
0議員,G12議員,G15議員,G17議員,G18議員,G23議
員,G25議員,G29議員,G32議員,G33議員,G34議員,G
35議員,G38議員,G40議員,G42議員,G43議員,G44議
員,G45議員,G48議員,G50議員,G52議員,G54議員,G
55議員,G57議員,G58議員,G59議員,G60議員,G62議
員,G65議員,G67議員,G68議員,G70議員,G72議員,G
77議員,G79議員,G80議員,G81議員,G84議員,G87議
員,G88議員,G91議員及びG92議員は,いずれも同表の「支出合
計」欄記載の額が,交付を受けた政務調査費の総額(516万円)よりも
下回ったことから,被告に対し,本件条例11条に基づいて,その差額で
ある残余の政務調査費を返納した。
(以上につき,甲6の1から4まで,甲8の1から3まで,甲10の1か
ら4まで,甲12の1から4まで,甲16の1から3まで,甲18の1,
2,甲22の1から3まで,甲24の1から甲25の4まで,甲31の1
4まで,甲33の1から5まで,甲37の1,2,甲40の1から甲43
の4まで,甲46の1から4まで,甲48の1から3まで,甲50の1か
ら甲53の3まで,甲56の1から3まで,甲58の1から3まで,甲6
0の1から3まで,甲62の1から甲63の3まで,甲65の1から68
の3まで,甲71の1から3まで,甲75の1から3まで,甲77の1か
ら甲78の3まで,甲80の1から3まで,甲82の1から4まで,甲8
6の1から3まで,甲88の1から甲90の4まで,甲93の1から3ま
で,甲96の1から甲97の2まで,甲100の1から101の4まで,
乙9,12,13,弁論の全趣旨)
住民監査請求
原告は,平成23年10月20日付けで,北海道監査委員に対し,地方自
治法242条1項に基づいて,本件各支出が違法又は不当な公金の支出であ
ると主張して,本件各支出相当額の金員の返還を求めるなどの損害を填補す
るために必要な措置を講ずるよう請求をしたが,同監査委員から同年12月
26日付けで同監査請求を棄却する旨の通知を受けた(甲1,2)。
本件訴えの提起
原告は,平成24年1月25日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。
4争点
政務調査費の使途基準適合性判断基準とその主張立証責任の所在
本件各会派による政務調査費の本件各会派支出への使用の違法性
本件各議員による政務調査費の使用の違法性
ア本件各議員による政務調査費の事務所費への使用の違法性
イ本件各議員による政務調査費の人件費への使用の違法性
本件各会派及び本件各議員による政務調査費の支出に違法な部分があると
した場合,本件各会派及び本件各議員が北海道に返還すべき不当利得の金額

について
(原告の主張)
地方自治法100条14項は「普通地方公共団体は,条例の定めるところ
により,その議会の議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として,
その議会における会派又は議員に対し,政務調査費を交付することができ
る。」と規定し,また,この規定を受けた本件条例1条も,「北海道議会議
員(以下「議員という。)の調査研究に資するため必要な経費の一部とし
て,北海道議会(以下「議会」という。)における会派及び議員に対する政
務調査費の交付に関し必要な事項を定める」と規定している。したがって,
政務調査費は,調査研究に資するために必要な経費の一部としてのみ支出さ
れるべきものである。そして,政務調査費の使途基準は,本件規程によって
定められている上,北海道議会が本件各手引を作成していることを踏まえる
と,政務調査費の適法性については,本件各手引を基準に判断されるべきで
ある。
政務調査費が基本的に地方公共団体の住民の税金であり公金であることに
鑑みれば,その使途については透明性や公平性が求められていることからす
ると,本件各会派ないし本件各議員による政務調査費の具体的使途の適法
性,すなわち,本件各手引の基準を満たした支出であるかどうかについての
主張立証責任は,本件各会派及び本件各議員にあるというべきである。そう
とすれば,政務調査費が議員の調査研究に資するために必要な経費に支出さ
れたことについて本件各会派及び本件各議員による立証がされず,使途が不
明なものについては,違法な支出であると判断されるべきであり,本件各会
派及び本件各議員は,使途不明部分について法律上の原因なく利得したとい
うべきである。
また,仮に本件各会派や本件各議員が政務調査費の使途を明らかにするこ
とができたとしても,地方議員の活動は多面性を有するものであり,1つの
活動の中に,調査研究活動としての要素のほか,政党活動や後援会活動,私
的活動などの他の活動の要素が混在することがあり得る。したがって,複数
の要素が混在する議員の活動によって生じた費用については,社会通念上相
当な割合によって按分し,調査研究活動に関して生じた費用といえる部分に
ついてのみ政務調査費の支出が許されるものと解するのが相当であり,それ
を超えてされた政務調査費の支出は,やはり違法と判断されるべきである。
具体的には,本件各手引の記載内容を参考として,調査研究活動としての
要素と後援会活動及び政党活動の要素が混在するような場合においては,当
該活動に関して生じた費用のうち3分の1についてのみ政務調査費の支出が
許されるべきであり,調査研究活動としての要素と後援会活動及び私的活動
の要素が混在するような場合においては,当該活動に関して生じた費用のう
ち4分の1についてのみ政務調査費の支出が許されるべきものと判断される
べきである。
(被告及び補助参加人らの主張)
原告の主張は争う。
政務調査費制度は,地方自治における地方議会の役割の重要性に鑑み,議
会の審議能力を強化し,議員の調査活動基盤の充実を図るためのものであ
る。そして,会派及び議員の政務調査活動が極めて多岐にわたるものである
ことからすれば,政務調査費の使途については,会派又は議員の合理的な裁
量に委ねられ,自主的・自律的に運用されるべきものである。したがって,
政務調査費の使途は,会派又は議員の合理的な裁量に委ねられているものと
解すべきであるから,政務調査費の支出が違法となるのは,個々の事実関係
の下で実質的に見て会派又は議員に与えられた裁量権の範囲を逸脱し,又は
濫用したといえる場合に限定されるというべきである。
なお,原告が,被告が行使を怠っていると主張する請求権が不当利得返還
請求権である以上,会派又は議員の利得について法律上の原因がないこと,
すなわち,会派又は議員の政務調査費の支出が違法であることについては,
原告が主張立証すべきである。

について
(原告の主張)
北海道議会における政務調査費は,本件条例及び本件規程において規定さ
れている使途基準に従って使用しなければならないこととされており,本件
規程別表第1においては,使途の項目別に支出が許される費目の内容が規定
されている上,実際の使途については,本件規程に定められた様式に従って
収支報告書を作成し,これを北海道議会議長に提出しなければならないこと
とされている。
また,本件条例及び本件規程において,北海道議会議長は,政務調査費の
適正な運用を期すために収支報告書が提出されたときには,必要に応じて調
査を行うこととされ,また,収支報告書については何人であっても同議長に
対してその閲覧を請求することができるとされているところ,その趣旨は,
政務調査費の実際の使途について,北海道議会議長及び一般市民が事後
的に検証することを可能にするという点にあると解される。
上記の本件条例及び本件規程の内容並びにその趣旨に加えて,本件各
手引において,活動記録の整理,活動記録簿,契約書の作成,成果物の確認
等が求められていることを踏まえると,政務調査費の支出内容について
は,本件規程に定める使途基準への適合性や使途の透明性が厳格に要求
されていると解すべきである。
したがって,北海道議会の会派が調査業務を委託する場合にも,事後
的な検証が可能となるように,当該委託業務は個別具体的なものである
必要があり,一般的・抽象的で,包括的な業務委託の方法によって生じ
た費用に対する政務調査費の支出は,本件条例や本件規程で定められた
使途基準を潜脱するものというほかないから,その全額が違法となると
いうべきである。
しかるところ,本件各委託契約に係る業務は,いずれも一般的・抽象
的で,包括的な業務委託の方法によるものであるから,それによって生
じた費用に対してされた政務調査費の支出はその全額が違法となる。
仮に,本件各委託契約に係る委託の方法のみをもってその業務によって生
じた費用に対してされた政務調査費の支出の全額が違法となると直ちにいう
ことができない場合でも,政務調査活動としての性質を有しない活動に対す
る政務調査費の支出が違法であることはいうまでもない。また,地方議員の
活動は多面性を有することから,1つの活動の中に,調査研究活動としての
要素,政党活動や後援会活動,私的活動などの他の活動の要素が混在するこ
とがあり得る。そして,政務調査費がこのような要素が混在する事項に関す
る経費のために使用された場合には,社会通念上相当な割合によって支出し
た費用を按分した上で政務調査費を支出することができる範囲を確定すべき
であることは前述のとおりである。これを前提とした本件各会派の支出の違
法性については,以下のとおりである。
ア本件会派支出1について
自民党議員会は,政務調査業務に係る委託金額について,過去の実
績を踏まえて人件費を基本に調査活動に要する経費を積算の上,算出し
ているなどと主張するから,本件委託契約1に係る業務費の実態の相当
部分は人件費であると考えられる。
そして,本件委託契約1の相手方たる自民党道連においては,本件委
託契約1の収支について独立した会計処理がされておらず,また,自民
党議員会と自民党道連が一体となった会議等の行事における自民党道連
負担分と本件委託契約1の業務費との負担割合についての基準も設けら
れていない。また,自民党議員会と自民党道連とは,両者にとって必要
となる活動を共同で実施するなどしており,北海道議会議員の集まりと
してはほぼ同じものであり,各種会合等において地域や団体から出る要
望の中には北海道と国の両方にまたぐ案件も多い。さらに,自民党道連
の職員のうち本件受託業務1に関与していたとされる職員の中には,国
政の小選挙区ごとにその選挙区を地元とする国会議員を中心として行わ
れる移動政調会や,自民党道連が主催者となって衆参両院議員が出席し
て国政に関する要望聴取をも行う団体政策懇談会の準備に携わっている
上,本件受託業務1として自民党道連が管理する自民党議員会のホーム
ページ上には「打倒民主政権を誓い合った集会の実施を報告する」とい
った完全に政党活動でしかない活動についての内容も掲載されている。
したがって,本件受託業務1の中には,政党活動と評価すべきものが
混在していたということができる。
また,自民党議員会の控室は,自民党議員会の政務調査活動のみに使
用されているわけではない。このことからすれば,同室内において勤務
する職員の日常業務については,政務調査活動ではなく,自民党議員会
の議会活動や自民党議員会の維持管理等にのみ関連する業務が多々存在
していたということができる。
以上のとおり,本件受託業務1の中には,政務調査活動とそれ以外
の活動の要素が混在していたといえるが,その要素を明確に区分するこ
とは困難である。そして,本件受託業務1に混在していた要素には政務
調査活動と政党活動以外のものが含まれていることからすると,本件委
託契約1に関して生じた費用のうち政務調査費の充当が許される部分
は,少なくともその2分の1を超えることはない。
イ本件会派支出2について
民主党議員会の主張からすれば,本件委託契約2の委託金額は,実質
的には人件費に該当するものと考えられる。
そして,民主党北海道が本件受託業務2の履行として開催を補助した政
策懇談会(市町村長等や企業団体の代表者等との間で道政課題について意
見交換を行う会議)は,衆議院比例代表の選挙区割りごとに実施され,民
主党所属の国会議員,道議会議員及び市町村議会議員の多くが出席してい
た上,一部の地域における政策懇談会は,前年に民主党と統一会派を結成
した新党大地と共催する形式が採用されていた。このように,民主党北海
道が開催を補助した政策懇談会は,民主党ないし新党大地の支持基盤の拡
大強化を図るという実態を有していたということができる。
また,本件受託業務2に従事していたとされる職員の中には,議員との
面会を求める一般市民への対応や市民からの陳情・要望の対応等にも従事
した者がいる上,統一地方選挙準備のために業務量が増えたと考えられる
職員も存在している。
そうすると,本件受託業務2に従事したとされる職員については,政務
調査業務への専従を肯定することができず,上記職員らが従事している業
務には,政党活動などの政務調査活動以外の活動を有するものが多分に含
まれているといえるから,本件委託契約2に関して生じた費用のうち,政
務調査費の充当が許される部分は,少なくともその2分の1を超えること
はない。
ウ本件会派支出3について
連合北海道が履行した本件受託業務3の成果物は,いずれも連合北海道
の要求や陳情を集約したものであって,民主党議員会による政策形成を目
的として作成されたものではなく,また,民主党議員会において委託料を
支払わなくても容易に入手することが可能なものや,民主党議員会による
委託がなかったとしても制作されることが予定されていたりするものであ
った。
そうすると,連合北海道が履行した本件受託業務3の内容は,民主党議
員会「が行う道の事務及び地方行財政に関する調査研究並びに調査委託」
(本件規程4条及び同別表第1)に当たらないから,民主党議員会は,本
件受託業務3に係る委託料として支払った本件会派支出3について,政務
調査費を充当することは許されず,民主党議員会がした本件会派支出3に
対する政務調査費の支出は全額が違法である。
エ本件会派支出4について
本件会派支出4については,「調査研究に資するため必要な経費」では
なく,政務調査費を政務調査以外の用途に用いるための方便として利用さ
れた可能性が高く,その全額が違法である。
(被告,被告補助参加人自民党議員会及び同民主党議員会の主張)
調査委託費について政務調査費による支出が認められるためには,当該委
託に係る調査が会派の議会活動の基礎となるものであること,及び当該委託
費が調査委託のため支出する必要があるものであることを要する。
そして,政務調査費の趣旨目的が,議員及び会派の審議能力を高め,地方
議会の活性化を図り,議員の調査研究費の基盤を充実強化することにあるこ
とに照らせば,被告から政務調査費の交付を受けた会派が特定の目的のため
に政務調査費を支出するか否かの判断は,使途基準に従ってするという制約
の下で,当該会派の裁量に委ねられているといえる。したがって,本件各会
派がした政務調査費の支出が違法であるとして不当利得の問題が生じるの
は,本件各会派が与えられた裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用した場
合に限られる。
また,会派が行う政務調査活動の中に所属する議員の政治活動を支援する
活動や政党支部の政党活動という性格を兼ね備えたものがある場合には,当
該活動それ自体について「会派が行う道の事務及び地方行財政に関する調査
研究並びに調査委託に要する経費」(本件規程4条及び同別表第1)といえ
るかどうかによって決すべきであり,当該活動が政務調査活動以外の活動と
しての性格を兼ね備えているからといって,政務調査費による支出が許され
なくなるということはない。したがって,このような場合であっても,費用
の按分の問題が生じることはない。
そして,以下のとおり,本件各会派に上記裁量権の逸脱や濫用はなく,本
件各会派支出は,いずれもその全額が適法である。
ア本件会派支出1について
自民党議員会は,道政に関する市町村や各種団体の要望等をとりまと
め,道民のニーズを的確に把握するとともに,道政に反映させることな
どを目的として,様々な政務調査活動をしているが,そのような活動の
すべてについて,自民党議員会に所属する北海道議会議員が分担して行
うことは非効率かつ不経済であり,自民党議員会の政務調査活動に関わ
る事務全般の運営,連絡調整に携わる人員等の確保が不可欠である。
そして,自民党議員会としての効率的かつ経済的な政務調査活動を実
施するための上記人員等は,自民党議員会の目指す道政の方向性を熟知
している者がその担い手となる必要があり,また,執行機関や他の会派
からの干渉を防ぎ,会派としての政務調査活動の独立性を保障するため
には,活動内容の秘匿性を保つことのできる者である必要がある。
このような観点を踏まえ,自民党議員会は,市町村等の要望集約や道
民のニーズ把握などについて専門的なノウハウを有するとともに自民党
議員会の目指す道政の方向性を熟知している自民党道連を本件委託業務
1の委託先とし,道の行財政に係る諸問題及びその対応と国及び市町村
における動向並びに各種団体の要望とこれに係る道の対応等に関する事
務等補助業務を本件受託業務1の内容とし,過去の人件費の実績を基本
に調査活動に要する経費を積算の上,本件委託契約1に係る委託金額を
算出したのである。
また,自民党道連は,実際に,職員4名を本件受託業務1に専属さ
せ,職員5名を本件受託業務1の補助に従事させ,地域や団体の要望把
握,代表質問の作成補助,政策集の作成補助,地方自治法99条に基づ
く意見書の作成補助,ホームページの運営・管理といった自民党議員会
が道政を通じて主義・主張を実現するための準備活動を行っており,自
民党道連その他の政党の利益を目的とした業務は行っていない。
このことは,会派が,各議員の主義・主張を同じくする議員が自らそ
の政策を実現するための組織であり,特定の政党の党員のみで結成され
る団体ではなく,複数の政党の党員で結成されることを予定した組織で
あることも踏まえれば,自明の理であるということができる。
なお,原告は,自民党道連の職員のうち本件受託業務1に関与してい
たとされる職員の中に移動政調会や団体政策懇談会の準備に携わってい
た者がいることを問題視するが,当該職員がその業務に従事した日数は
ごくわずかであり,本件受託業務1が政務調査のためのものであったと
する被告,被告補助参加人自民党議員会及び同民主党議員会の主張に影
響を与えるような事実ではない。
したがって,本件委託契約1に基づいてされた本件受託業務1は,す
べて政務調査活動であり,本件委託契約1に基づいてされた本件会派支
出1に裁量権の逸脱・濫用はないから,同支出の全額が適法である。
イ本件会派支出2について
民主党議員会の活動内容,道政調査業務委託の必要性については,本
件会派支出1に関する自民党議員会の主張と同旨である。
そして,そのような観点から,民主党議員会は,市町村等の要望集約
や道民のニーズの把握などについて専門的なノウハウを有するとともに
民主党議員会の目指す道政の方向性を熟知している民主党北海道を本件
受託業務2の委託先とし,データの収集・整理,地域における調査,調
査結果の集計及び分析,その他,連絡調整を含め,道政調査活動に必要
なあらゆる業務を本件受託業務2の内容とした上で,過去の人件費の実
績を基本に調査活動に要する経費を積算の上,本件委託契約2に係る委
託金額を算出したのである。
また,民主党北海道は,実際に,職員4名を本件受託業務2に従事さ
せ,地域や団体の要望把握,代表質問の作成補助,地方自治法99条に
基づく意見書の作成補助,民主党議員会内の各プロジェクトチーム補助
業務といった民主党議員会が道政を通じて主義・主張を実現するための
準備活動を行っており,民主党北海道その他の政党の利益を目的とした
業務は行っていない。
特に,政策懇談会は,民主党議員会が地域の要望等を把握して,これ
を道政に実現することを目的として開催されたものであり,民主党議員
会と新党大地釧根連合とで共催した政策懇談会については,地域住民か
らより多くの意見を集めるため,釧路・根室地域に多くの支持者を有す
る新党大地の関係者に出席を求めて形式上共催としたにすぎず,実質的
な準備や運営等は民主党議員会において行われたものであるから,政党
活動としての性質を有しない。
したがって,本件委託契約2に基づいてされた本件受託業務2は,す
べて政務調査活動であり,本件委託契約2に基づいてされた本件会派支
出2に裁量権の逸脱・濫用はないから,同支出の全額が適法である。
ウ本件会派支出3について
民主党議員会が本件委託契約3を締結した連合北海道は,労働組合の
日本最大の連合組織である日本労働組合総連合会の地方組織であり,そ
の参加者は,44の産業別労働組合を中心に約26万人である。また,
北海道内には,その地域組織として,振興局(支庁)ごとに地域協議会
があるほか,市町村ごとに地区連合会が置かれている。
連合北海道は,こうした組織体制を活かして様々な情報を得ることが
可能であり,また,連合北海道自身も,雇用問題をはじめ,産業政策,
勤労者全体の生活に関する政策や制度の改善策などについて地方自治体
などへの政策提言,道民的な課題について労働者の視点からの意見表明
や運動,雇用や福祉の場における実態調査など,多岐にわたる活動をし
ている。
連合北海道のこうした諸活動を通じて得られた優れた識見は,民主党
議員会が求める資料や情報の提供元として最も適切であり,他にこれと
同等の役割を果たし得る団体はないと考えられた。
このような観点から,民主党議員会は,連合北海道を本件受託業務3
の委託先とし,データの収集・整理,関連資料の整理,地域における調
査,調査結果の集計及び分析,調査結果に基づく研究報告書(提言)な
どの策定補助,その他連絡調整を含め,道政調査活動に必要なあらゆる
業務を本件受託業務3の内容とした上,その業務内容や過去の実績に加
え,政務調査費の収支見積を勘案して,民主党議員会に所属する北海道
議会議員1人当たり3万円程度の支出が相当であると判断し,本件委託
契約3締結当時の民主党議員会所属の北海道議会議員39名分合計11
7万円を本件委託契約3の委託金額としたのである。
また,連合北海道は,実際に,労働政策のほか,地域の厳しい状況を
踏まえた医療や福祉の維持確保に関わる諸課題への対応について活発な
検討をしており,民主党議員会に対し,本件委託契約3に基づいて,そ
れらの政策課題についての資料や情報を提供し,民主党議員会所属の北
海道議会議員が各定例会において代表質問や意見書の文案を作成する際
などには,必要に応じて,当該代表質問や意見書に係る政策課題に関す
る資料や情報をも提供した。そして,これらは,いずれも「道の事務及
び地方行財政に関する調査研究並びに調査委託」(本件規程4条及び同
別表第1)に該当するものである。
したがって,本件委託契約3に基づいてされた本件受託業務3は,す
べて政務調査活動であり,本件委託契約3に基づいてされた本件会派支
出3に裁量権の逸脱・濫用はないから,同支出の全額が適法である。
エ本件会派支出4について
民主党議員会は,季節労働者問題の調査研究について季節労組が専門
的なノウハウを有していることから,本件委託契約4を締結し,季節労
働者問題に関するデータの収集・整理,関連資料の整理,地域における
調査,調査結果の集計・分析,調査結果に基づく研究報告書(提言)な
どの策定補助,その他連絡調整を含め,季節労働者問題に係る道政調査
活動に必要なあらゆる業務を本件受託業務4の内容とし,その業務内容
や過去の実績に加え,政務調査費の収支見積を勘案して,民主党議員会
に所属する北海道議会議員1人当たり1万円程度の支出が相当であると
判断し,本件委託契約4締結当時の民主党議員会所属の北海道議会議員
39名分合計39万円を本件委託契約4の委託金額としたのである。
また,季節労組は,実際に,本件委託契約4に基づき,平成22年7
月20日から同月31日までにかけて,北海道内5地域の季節労働者2
800人を対象として,季節労働者の職種,雇用形態などについての実
態調査を行い,回答を得られた1381人についての回答を集計し,分
析を行った上で,民主党議員会に報告している。そして,これらは,い
ずれも「道の事務及び地方行財政に関する調査研究並びに調査委託」
(本件規程4条及び同別表第1)に該当するものである。
したがって,本件委託契約4に基づいてされた本件受託業務4は,す
べて政務調査活動であり,本件委託契約4に基づいてされた本件会派支
出4に裁量権の逸脱・濫用はないから,同支出の全額が適法である。

(原告の主張)
本件各議員による政務調査費の事務所費への支出の違法性
ア議員の事務所費については,事務所としての要件を備えており,かつ,
その事務所が政務調査活動に使用されている場合には,政務調査費を当該
事務所の費用に充当することができるとされているが,本件運用方針上,
自宅兼用の事務所,道議会議員選挙に使用される期間(公示期間)の事務
所,議員所有又は議員と生計を一にする親族所有の事務所については,政
務調査費を充当することは許されないこととされている。
イまた,本件運用方針において,議員の事務所が議員と生計を一にする親
族が所有する建物である場合に当該事務所の賃借料に対して政務調査費を
支出することができない旨を定めている趣旨は,政務調査費が議員の政務
調査活動に要した経費の一部に対する実費弁償として支出されることを目
的として交付されるものであるところ,議員と生計を一にする親族が所有
する建物の賃借料に対して政務調査費が使用されると,当該親族と生計を
一にする議員の収益となって議員の資産形成につながることとなり,上記
目的に反するから,このような事態を防ぐために支出の対象を制限したも
のと解される。そうすると,議員が代表取締役ないし取締役を務める会社
が所有する建物の事務所費に対して政務調査費が充当される場合にも,社
会通念上,議員の収益となって議員の資産形成につながることとなり,上
記目的に反するものといえる。したがって,本件運用方針の趣旨に鑑みる
と,議員が代表取締役ないし取締役を務める会社が所有する建物の事務所
費に対して政務調査費を充当することは,特段の事情のない限り違法であ
る。
ウさらに,本件運用方針は,札幌以外の選挙区から選出された議員が札幌
市内にある建物を宿舎として使用する場合について,当該建物の賃借料に
対する政務調査費の充当が認められるための基準として,当該建物が「現
に政務調査活動の拠点として継続的に使用していることが明らかであれ
ば,使用した実績(使用日数)に応じた額を充当することができる。ただ
し,当該マンションが政務調査活動の拠点となっているか否か,という実
態的判断を伴う。なお,定例会等開会中にあっては,その日数分は控除す
る。」と定めている。
したがって,札幌以外の選挙区から選出された者であって,札幌市内に
ある建物を宿舎として使用している議員のうち,使用実態が不明な者につ
いては,その事務所費に充てられた政務調査費の全額が違法となる。
エ以上のような問題のある議員以外についても,議員の活動については少
なくとも政務調査活動以外に政党活動及び後援会活動の要素が存在してい
る以上,客観的な資料によって事務所における議員の活動内容が明らかに
されない限り,政党に属している議員については,事務所に係る経費の3
分の1を超える部分について政務調査費を充当することは許されず,ま
た,政党に属していない議員については,同経費の2分の1を超える部分
について政務調査費を充当することは許されないというべきである。
本件各議員による政務調査費の人件費への支出の違法性
ア議員の行う調査研究活動を補助する職員を雇用する経費については,人
件費として政務調査費から支出することが許されている。
しかし,本件運用方針上,配偶者,扶養関係にある者,同居し生計を一
にする者のいずれかに該当する者の人件費に政務調査費を充当すること
は,明確に禁止されている。
イ議員から領収書及び雇用契約書が未開示であるなど,職員の氏名や住所
が不明である場合には,そもそも職員の実在性や同人に関する支出が「人
件費」としての支出であったか否かを判断することができない上,上記ア
のとおり政務調査費を充当することが明確に禁止される者かどうかも判断
できないことになる。
したがって,職員に関する情報が不明である場合には,人件費としての
適法性は何ら裏付けられていないため,その支出の全額が違法となる。
ウまた,開示された証拠(雇用契約書等)によっても,職員が政務調査活
動に従事していたかどうかが裏付けられない場合,すなわち,開示された
証拠上,雇用目的や職務内容の記載が政務調査活動以外の活動のみの記載
となっている場合や,特に目的や職務内容が特定されておらず,あるいは
雇用主が「後援会」,「政党」及びそれらの肩書が付記された議員となっ
ている場合には,その職員は,そもそも政務調査活動に従事することが予
定されていない者であるということができるから,その支出の全額が違法
となる。
エさらに,証拠上,政務調査活動が雇用の目的であるとされていたとして
も,当該職員が現実に政務調査活動に従事していたことが立証されなけれ
ば,その支出の全額が違法になるといえる。
なお,仮に当該職員が政務調査活動に従事していたとしても,議員の活
動の多様性に鑑みれば,政務調査活動に従事していた割合が客観的な資料
によって裏付けられない限り,政務調査費の支出が適法となる範囲は,当
該議員の活動に占める要素の数によって按分するべきであり,政党に属し
ている議員については,事務所に係る経費の3分の1を超える部分につい
て政務調査費を充当することは許されず,また,政党に属していない議員
については,同経費の2分の1を超える部分について政務調査費を充当す
ることは許されないというべきである。
以上の諸点を踏まえ,本件各議員による証拠の提出状況を考慮すると,事
務所費及び人件費に関し,政党に所属している議員についてはその3分の1
を超えて,政党に所属していない議員についてはその2分の1を超えて,政
務調査費を充当することが許されると認めるに足りるだけの事情を立証する
ことができている議員はおらず,本件各議員に生じた事務所費及び人件費の
うち政務調査費を充当することが許される割合,適法な充当額及び違法な充
当額は,別紙4主張整理表の「原告の主張」欄記載のとおりとなる。
なお,政党に所属している議員のうち,適法な按分割合を3分の1としな
かった議員については,以下の理由によるものである。
アG5議員(整理番号6(自3))
同議員は,札幌市内所在の事務所を定例会開催時等の宿舎として利用し
ているが,その利用実態に鑑みれば,仮にその期間中同所において何らか
の政務調査活動を行ったとしても,その活動時間がごくわずかなものにと
どまることは明らかである。
そうすると,同議員による上記事務所の使用は,「自宅」としてのもの
であったと評価すべきであり,事務所費のうち札幌市内に所在するものに
対する政務調査費の充当は,その全額が違法である。
イG7議員(整理番号9(自4))
同議員は札幌市内に事務所及び駐車場を賃借しているが,その賃貸人
は,同議員が代表取締役を務めるJ1株式会社である。この場合,政務調
査費を事務所費に充てることが許されないことは,前述のとおりである。
ウG9議員(整理番号12(自5))
同議員が雇用した職員のうちH1,H2及びH3については,雇用契約
書上,雇用主として「G9後援会事務所代表H4」,仕事の内容として
「後援会事務」と明記されており,これら3名の職員については,いずれ
も後援会活動のみに従事していたと考えざるを得ない。
したがって,これらの各職員のために支出された政務調査費は,その全
額が違法となる。
エG15議員(整理番号19(自10))
同議員はI1町内に事務所を賃借しているが,事務所の賃借人は,
「G15十勝連合後援会会長H5」であり,議員本人ではなく後援会会
長である。
したがって,同事務所は,専ら後援会活動を目的として使用されてい
たものと考えざるを得ず,同事務所の経費のために支出された政務調査
費は,その全額が違法となる。
また,同議員は,札幌市内の事務所を「宿舎」として利用していたこ
とを自認しているが,同事務所が定例会開催時の宿舎として利用されて
いたことに照らすと,仮に同議員が同事務所において何らかの政務調査
活動をしたとしても,その活動時間がごくわずかなものにとどまること
は明らかである。
したがって,同事務所の管理運営費のうち政務調査費から支出された
部分は,その全額が違法となる。
オG16議員(整理番号20(民7))
事務所費
同議員は,I2町内の建物を賃借し,事務所として使用しているが,
同建物は,同議員が自宅として賃借した物件であり,実際に当該建物に
は妻及び娘1名と共に居住していたから,当該建物は自宅兼用の物件で
あったといえる。また,当該事務所の建物の所有者及び賃貸人は,同議
員の父であるH6であり,かつ,同人と同議員との生計が別個であった
ことを示す客観的な証拠もない。そうすると,同議員が同事務所の費用
のうち政務調査費から支出された部分は,その全額が違法となる。仮
に同建物を事務所部分と自宅部分とに明確に区分することができるとし
ても,事務所部分と自宅部分の面積比率は1:2くらいであり,同議員
の家族も含めて24時間使用していた自宅部分は,日中のみ使用される
事務所部分と比べて,使用時間の上でも2倍以上であると考えられる。
また,議員の活動の多様性に鑑みれば,同事務所においては政務調査活
動のみならず,政党活動や後援会活動も行われていると考えられる上,
同議員が同事務所において政務調査活動に従事していた割合については
客観的な資料によって裏付けられていない。そうすると,仮に同建物を
事務所部分と自宅部分とに明確に区別することができるとしても,政務
調査費を充当することが許されるのは,同建物に生じた費用のうち9分
の1(建物に占める事務所部分の割合3分の1に同議員の活動に占める
政務調査活動の割合を乗じた割合)を超えない部分についてであり,こ
れを超える支出は違法である。
人件費
同議員が雇用した職員のうち,H7は,同議員の実子であるが,①同
議員がH7を雇用するに至った理由について,平成22年度は同人が建
築会社の営業の非常勤として勤務しており,雇用状況が不安定であった
ことを挙げていること,②H7が平成22年4月1日時点で妻と離婚し
ており,1歳の子の親権者であったことから,時間的にも金銭的にも援
助を必要とする状態であったこと,③同議員が平成22年度中の一時
期,釧路市内に所有する住宅にH7を居住させており,同人から賃料や
水道光熱費等の金銭の支払を受けていたことを示す客観的な証拠もない
ことといった事情を考慮すれば,同議員によるH7の雇用は,同人に対
する援助であり,配偶者,扶養関係にある者,同居し生計を一にする者
のいずれかに該当する者の人件費の支出と同様の性質を持つものといえ
る。
したがって,同議員の人件費のうちH7に関して生じた費用への政務
調査費の支出は,その全額が違法となる。
カG18議員(整理番号22番(民9))
同議員は札幌市内に事務所を賃借しているが,同議員は,同事務所を宿
舎として利用していたことを自認しており,同事務所の賃貸借契約書上
も,「居住のみを目的として本物件を使用しなければならない」と記載さ
れている。また,同事務所が定例会開催時の宿舎として利用されていたこ
とからすると,そこで何らかの政務調査活動がされたとしても,その活動
時間がごくわずかなものにとどまることは明らかであり,利用としての実
態は,宿舎としてのものであったと言わざるを得ない。
したがって,上記事務所の賃料のうち政務調査費から支出された部分
は,その全額が違法である。
キG20議員(整理番号25(自12))
同議員は,事務所として札幌市内の住宅を賃借しているが,同賃借に係
る賃貸借契約書上,同住宅が家具付きであり,その使用目的が居住に限定
されていることは明らかである。
そうすると,同住宅は政務調査活動に利用されていないと考えられるか
ら,同住宅の費用への政務調査費の支出は,その全額が違法となる。
クG21議員(整理番号26(自13))
同議員は美唄市内に事務所を賃借しているが,同事務所の賃貸人は,同
議員の父親であるH8である。そして,同議員とH8との平成22年当時
における住民票上の住所は別であるが,生計まで別にしていたことを証す
る客観的証拠はない。
したがって,同事務所の費用への政務調査費の支出は,その全額が違法
となる。
ケG22議員(整理番号27(民10))
同議員が雇用した職員のうちH9については,その勤務場所が選挙事務
所であるから,選挙活動・政党活動への専従者であると考えられるし,選
挙後においては後援会事務所に勤務していたことになるから,そもそも政
務調査活動のための職務をしていない。したがって,同人の人件費への政
務調査費の支出は,その全額が違法となる。
コG23議員(整理番号28(自14))
同議員は札幌市内に事務所を賃借しているが,同事務所の賃貸人は,同
議員の実子であるH10である。そして,同議員は,同議員とH10の生
計が別である点について,客観的証拠を提出していない。
したがって,同事務所の費用への政務調査費の支出は,その全額が違法
となる。
サG25議員(整理番号30(自15))
事務所費
同議員は札幌市内に事務所を賃借しているが,同議員は,同事務所を
宿舎として利用していることを自認している上,証人尋問において同事
務所において政務調査活動をしていたことを明確に否定する証言をして
いる。
そうすると,同議員が札幌市内に賃借している事務所の費用のために
支出された政務調査費は,その全額が違法となる。
人件費
a同議員はH11を職員として雇用しているが,同議員は,H11
が,同議員が代表取締役を務めていた有限会社J2を中心とする企業
グループの事業において右腕以上の存在として事業を補佐していたこ
とを認めており,実際に,H11は,同企業グループに属する有限会
社J3の取締役や有限会社J4の代表取締役も務めている。また,同
議員は,H11が後援会活動や政党活動にも広く携わっていたことを
認めている。
このように,H11の活動が,同議員の私的活動,後援会活動及び
政党活動にも及んでいたことや,本件運用方針において,「政務調査
活動と後援会活動及び私的活動とが混在する場合」における政務調査
費の按分割合が4分の1であると定められていることを踏まえると,
H11の人件費のうち政務調査費を支出することが許される部分は,
6分の1の範囲にとどまるというべきであって,H11の人件費のう
ち6分の1を超える部分に対して支出された部分は,その全額が違法
となる。
b同議員は,雇用しているH12について,有限会社J3の業務に従
事していたほか,政党活動にも従事していたことを認めている。
そうすると,H12の活動には,政務調査活動のほか少なくとも私
的活動と政党活動が混在していたことが明らかであるが,「政務調査
活動と後援会活動及び私的活動とが混在する場合」における政務調査
費の按分割合が4分の1であることは前述のとおりである。
したがって,H12の人件費のうち政務調査費の支出が許されるの
は,その4分の1を超えない部分に限られ,これを超えて支出された
部分は,その全額が違法となる。
シG26議員(整理番号31(自16))
同議員が使用する旭川市内の事務所の賃借人は,同議員の後援会会長H
13である。
このように,同議員本人ではなく,同議員の後援会会長が事務所の賃借
人である以上,同事務所の費用のために支出された政務調査費は,その全
額が違法となる。
スG27議員(整理番号32(自17))
同議員は札幌市内に事務所を賃借しているが,その賃貸人は,同議員が
代表取締役を務める有限会社J5である。そして,このような場合に事務
所費への政務調査費の支出が許されないことは前述のとおりである。
したがって,同事務所の費用のために支出された政務調査費は,その全
額が違法となる。
セG34議員(整理番号39(自20))
事務所費
同議員は札幌市内に事務所を賃借しているが,同事務所の賃貸人は,
親族であるH14であるが,同人が同議員と生計を同一にしていないこ
とが明らかではない。また,同事務所の契約書上,その利用目的は居住
とされており,同議員は,実際に同事務所を宿舎として使用している。
そうすると,同事務所の費用のために支出された政務調査費は,その
全額が違法となる。
人件費
同議員は,H15及びH16のほかに2名の職員を雇用し,同2名の
職員らについて生じた人件費については,いずれもその全額について政
務調査費から支出している。しかし,これらの職員については,雇用実
態が十分に明らかにされているとはいえない。
したがって,同政務調査費の支出は,その全額が違法となる。
ソG35議員(整理番号40(民14))
同議員は士別市に事務所を賃借しているが,同事務所の賃貸人は,同議
員が取締役を務める株式会社J6である。そして,このような場合に事務
所費への政務調査費の支出が許されないことは前述のとおりである。
したがって,同事務所の費用のために支出された政務調査費は,その全
額が違法となる。
タG37議員(整理番号42(民15))
同議員は札幌市内に事務所を賃借しているが,同事務所は,同居してい
る妻の所有物件であり,かつ,同議員は,同事務所を宿舎として使用して
いたことを自認している。また,同事務所が定例会開催時の宿舎として利
用されていたことに照らすと,仮に同議員が同事務所において何らかの政
務調査活動をしていたとしても,その活動時間はごくわずかなものにすぎ
ない。
したがって,同事務所に生じた費用(同議員については管理運営費)の
ために支出された政務調査費は,その全額が違法となる。
チG39議員(整理番号44(自22))
同議員は,札幌市内に事務所を賃借しているが,同事務所を主に宿泊
に利用する目的で賃借したことを認めている。
また,同議員は,I3町内に別紙4主張整理表「整理番号44」欄に
対応する枝番2ないし4記載の各事務所を平成22年度中に順次賃借し
た(枝番2の事務所については平成22年7月31日まで,枝番3の事
務所については同年8月1日から平成23年1月14日まで,枝番4の
事務所については同月15日以降)が,同議員がそれぞれの事務所にお
いて政務調査活動をしたことを裏付ける客観的な証拠はない。
以上によれば,同議員が前記各事務所の費用のために支出された政務
調査費は,その全額が違法となる。
ツG42議員(整理番号47(自23))
同議員は札幌市内に事務所を賃借しているが,同事務所は,宿舎として
用いられていたものであり,仮に同議員が同所において何らかの政務調査
活動をしていたとしても,その時間はごくわずかなものにとどまる。
したがって,同事務所のために支出された政務調査費は,その全額が違
法となる。
テG43議員(整理番号48(民19))
同議員は札幌市内に事務所を賃借しているが,同事務所は,自宅兼用で
あったと考えられるから,同事務所のために支出された政務調査費は,そ
の全額が違法となる。
トG44議員(整理番号49(民20))
同議員は,I4町内に事務所の駐車場を,札幌市内に事務所をそれぞれ
賃借しているが,上記駐車場及び札幌市内の事務所の賃借人は,いずれも
同議員の親族であり,同議員と同親族とが生計を異にするとの客観的な証
拠も提出されていない。
したがって,上記駐車場及び札幌市内の事務所のために支出された政務
調査費は,その全額が違法となる。
ナG46議員(整理番号51(民21))
同議員は札幌市内に事務所を賃借しているが,同事務所は,宿舎として
利用されており,同議員が同事務所において何らかの政務調査活動がされ
ていたとしても,その活動時間はごくわずかなものにとどまる。
したがって,同事務所のために支出された政務調査費は,その全額が違
法となる。
ニG51議員(整理番号56(自26))
同議員は札幌市内に別紙4主張整理表「整理番号56」欄に対応する
「事務所費」「枝番」「1」欄記載の事務所を賃借したが,同事務所の賃
貸人は,同議員の父親であるH17であり,同議員とH17とが生計を異
にすることについての客観的な証拠はない。
したがって,同事務所のために支出された政務調査費は,その全額が違
法となる。
ヌG55議員(整理番号60(自28))
同議員は,札幌市内に所有する建物を議員事務所として使用し,その管
理運営費のために政務調査費を支出しているが,当該事務所において政務
調査活動がされた旨の主張や従事した政務調査活動の具体的内容,その比
重等に関する客観的な立証はされていない。また,上記管理運営費の中に
は同事務所の駐車場使用料も含まれているが,かかる駐車場の使用実態に
ついても何ら立証されておらず,本件運用方針で支出が禁じられている議
員専用駐車場の賃借料に該当する可能性も払しょくされていない。
したがって,同建物の管理運営費のために支出された政務調査費は,そ
の全額が違法となる。
ネG56議員(整理番号61(民27))
同議員はI5町内に事務所を賃借しているが,同事務所の賃貸借契約書
上,その種類は「店舗兼居宅」とされている上,同議員が別件訴訟におい
て提出した陳述書の住所地も同事務所所在地であった。このような事情を
踏まえれば,同事務所は自宅兼事務所であるということができ,その区別
等を明らかにするだけの主張立証もされていないから,同事務所のために
支出された政務調査費は,その全額が違法となる。
ノG61議員(整理番号67(自32))
同議員は,H18及びH19を雇用し,その人件費及び社会保険料のた
めに政務調査費を支出した。しかし,H18の雇用契約書によると,その
雇用主は,「G61後援会」(会長H20)であり,その業務内容は後援
会事務とされている。また,H19の雇用契約書によると,その雇用主
は,「自由民主党北海道支部札幌北区第4支部」(代表同議員)であり,
その業務内容は同支部職員としての立場で行う党勢拡大と組織強化とされ
ている。そうすると,H18は後援会活動の専従者であり,H19は政党
活動専従者であると言わざるを得ず,これらの職員の人件費ないし社会保
険料のために政務調査費を充てることは許されないといえる。
したがって,これらの職員の人件費ないし社会保険料のために支出され
た政務調査費は,その全額が違法となる。
ハG63議員(整理番号69(民30))
同議員は,事務所として賃借している札幌市内の居宅について,宿舎と
して利用していることを自認している。そして,このような場合に,その
賃料について政務調査費を充当することは許されない。
したがって,同事務所のために支出された政務調査費は,その全額が違
法となる。
ヒG64議員(整理番号71(自34))
同議員は,I6町内に賃借する事務所を自宅として利用していること
を自認しており,別件訴訟における同議員の陳述書に記載された住所も
同事務所の所在地であった。そうすると,同事務所は同議員の自宅であ
るから,同事務所の管理運営費のために支出された政務調査費は,その
全額が違法となる。
また,同議員は札幌市内にも事務所を賃借しているが,同事務所は宿
舎として使用されているにすぎないから,その使用実態は,「居住用」
と何ら変わるところがないといえる。そうすると,同事務所のために支
出された政務調査費も,その全額が違法となる。
フG66議員(整理番号73(民31))
同議員は伊達市内に事務所を賃借しているが,別件訴訟における同議員
の陳述書に同事務所の住所が現住所であるとの記載があることからする
と,同事務所は,自宅兼事務所であることが疑われ,これに対する的確な
反証もない。
したがって,同事務所のために支出された政務調査費は,その全額が違
法となる。
ヘG72議員(整理番号79(民34))
同議員は札幌市内に事務所を賃借しているが,同事務所は自宅兼事務所
となっており,使用実態も宿舎としてのものであったから,同事務所のた
めに支出された政務調査費は,その全額が違法となる。
ホG76議員(整理番号83(自39))
同議員は,北見市内に事務所及び付属の駐車場を,札幌市内に事務所を
それぞれ賃借しているほか,同事務所の通信機器を借り上げている。しか
し,上記各事務所の賃貸借契約書上の使用目的は,いずれも後援会事務所
である上,賃貸人の書面による承諾を得ないで使用目的を変更することが
できないことが明記されているから,上記各事務所は,いずれも後援会活
動のみに使用されていたといえる。
したがって,上記各事務所のために支出された政務調査費は,北見市内
の事務所に付属する駐車場の費用及び札幌市内の事務所の通信機器の費用
に充てられた分も含め,その全額が違法となる。
マG81議員(整理番号88(自42))
同議員は,札幌市内に賃借している事務所について自ら自宅兼用である
旨を報告しているから,同事務所のために支出された政務調査費は,その
全額が違法となる。
ミG85議員(整理番号92(民40))
同議員は札幌市内に事務所を賃借しているが,同事務所の賃貸人は,同
議員の姉であるH21であり,同議員とH21が生計を異にしていること
を示す客観的な証拠はない。
したがって,同事務所のために支出された政務調査費は,その全額が違
法となる。
ムG89議員(整理番号96(自46))
同議員は室蘭市内に事務所を賃借しているが,同事務所の賃貸人は,同
議員が代表取締役を務める株式会社J7である。そして,このような場合
にその事務所の費用のために政務調査費を支出することが許されないこと
は前述したとおりである。
したがって,同事務所のために支出された政務調査費は,その全額が違
法となる。
メG92議員(整理番号99(自49))
事務所費
同議員は札幌市内に事務所を賃借しているが,同事務所の賃貸人は,
同議員が取締役を務める株式会社J8である。そして,このような場合
にその事務所の費用のために政務調査費を支出することが許されないこ
とは前述したとおりである。
したがって,同事務所のために支出された政務調査費は,その全額が
違法となる。
人件費
同議員は,雇用していた職員のうち,H22,H23及びH24につ
いて,政務調査活動のみならず,政党活動や後援会活動にも従事させた
とする一方,証人尋問においては,政党活動に対する対価についての支
払はしたが,後援会活動に対する対価の支払をしていないと証言してい
る。したがって,これらの職員らに関して生じた費用の2分の1につい
て政党活動の対価が支払われたと考えた場合,残りの2分の1の部分に
は後援会活動の対価も含まれていると考えるべきであるから,政務調査
費を支出することが許されるのは,多くとも職員らに関して生じた費用
の4分の1の部分に限られ,これを超えて支出された部分は,その全額
が違法となる。
(被告及び本件各議員の主張)
原告は,議員が取締役を務める会社その他の議員の関連会社が所有する物
件について,政務調査費からの支出が禁じられると主張する。しかし,地方
自治法,本件条例,本件規程及び本件各手引において,原告主張の場合に政
務調査費を支出することは禁止されていないし,原告の主張は会社の法人格
を無視するものである。また,恣意的に事務所の賃借料を高額に設定し,そ
の賃借料に政務調査費を支出したというのであれば別であるが,適切な賃借
料であれば,賃借人が第三者であろうが議員であろうが,会社の利益に差異
はないはずである。
本件各議員は,いずれも,事務所における活動実態や雇用した職員の活動
実態に合わせて,その費用のうち政務調査費を充てるべき按分割合を定め,
政務調査費を支出しており,何ら違法な点はない。なお,本件各議員が定め
た按分割合とその理由については,別紙4主張整理表「補助参加人らの主
張」欄記載のとおりである。また,「補助参加人らの主張」欄のうち「後援
活動」欄,「政党活動」欄については,事務所の使用状況又は職員の業務内
容の中にそれらの活動に関わる使用や業務が混在していたことを明確に認め
る場合には○印が,それらの活動に関わる使用や業務が混在していたことを
明確に否認する場合には×印が,それぞれ付されている。
8本件各会派及び本件各議員による政務調査費の支出に違法な部分があるとし
た場合,本件各会派及び本件各議員が北海道に返還すべき不当利得の金額(争
(原告の主張)
以上のとおりであり,本件各会派及び本件各議員が不当利得として被告に対
して返還しなければならない政務調査費の金額は,別紙2一覧表の各被告補助
参加人に対応する同表「請求額」欄記載のとおりとなる。
(被告の主張)
原告の主張は争う。
会派又は議員が交付を受けた政務調査費から返納すべき額について,本件条
例11条は,「会派の代表者又は議員は,その年度において交付を受けた政務
調査費の総額から,当該会派又は議員がその年度において行った政務調査費に
よる支出(中略)の総額を控除して残余がある場合,当該残余の額に相当する
額の政務調査費を返納しなければならない」と規定している。
また,収支報告書の記載内容と返納額の関係等については,本件各手引のう
ち実務編において,収支報告書の収入欄記入額から支出の合計欄記入額を差し
引いた残余の額が返納額となることや,議長に提出した収支報告書等の内容に
誤りがあった場合の修正報告の方法が定められている。そして,実際に提出後
に収支報告書の内容について誤りが判明した場合には,当該会派又は議員は,
これらの規定に基づいて,修正した収支報告書を議長に提出し,修正によって
新たに生じた残余の額を返納している。
したがって,補助参加人らのうち,収支報告書における支出の合計額が収入
額を上回る会派ないし議員については,原告が主張する額の支出が違法なもの
であったとしても,被告が補助参加人らに対して返還の請求をすべき金額は,
違法と認められる政務調査費の支出から収支報告書における支出の合計額と収
入額の差額を控除した金額と考えるべきである。
第3
1地方自治法100条14項は,政務調査費の交付につき,普通地方公共
団体は,条例の定めるところにより,その議会の議員の調査研究に資する
ため必要な経費の一部として,その議会における会派又は議員に対し,政
務調査費を交付することができると定めており,その趣旨は,議員の審議
能力を強化し,議員の調査研究活動の基盤の充実を図るため,議会におけ
る会派又は議員に対する調査研究の費用等の助成を制度化したものである
と解される。そうすると,同項の規定に基づいて定められた本件条例の施
行に関して必要な事項を定める本件規程4条1項が会派に係る政務調査費
に関する使途基準として別表第1に定める「会派が行う道の事務及び地方
行財政に関する調査研究並びに調査委託に要する経費(調査委託費,交通
費,宿泊費等)」,同項が議員に係る政務調査費に関する使途基準として
別表第2に定める「議員が行う調査研究活動のために必要な事務所の設
置,管理に要する経費(事務所の賃借料,管理運営費等)」,「議員が行
う調査研究を補助する職員を雇用する経費(給料,手当,社会保険料,賃
金等)」とは,会派については議員の議会活動の基礎となる調査研究に要
する経費及び調査の委託に要する経費をいい,議員についてはその議会活
動の基礎となる調査研究に要する経費をいうものであり,議員としての議
会活動を離れた活動に関する経費ないし当該行為の客観的な目的や性質に
照らして議員の議会活動の基礎となる調査研究活動との間に合理的関連性
が認められない行為に関する経費は,これに該当しないものというべきで
ある(最高裁平成25年1月25日第二小法廷判決・集民243号11頁
参照)。
そして,北海道議会議長が平成21年7月に本件条例の委任を受けた本
件規程4条2項に基づいて本件運用方針を決定し,その内容を踏まえた本
件各手引が平成22年4月に作成された経緯や,本件運用方針の内容が地
方自治法100条14項の制度趣旨に適合的なものであると認められるこ
とからすれば,本件運用方針に従った政務調査費の支出がされていない場
合には,その政務調査費の支出は,議員としての議会活動を離れた活動に
対する経費ないし議員の議会活動の基礎となる調査研究活動との間に合理
的関連性が認められない行為に関する経費に対してされたものであって,
違法なものと評価するのが相当である。
また,一般に地方公共団体の議会の議員の活動は,政務調査活動以外に
も,政治活動,後援会活動,選挙活動,政党活動等のほか,議員としての立場
を離れた私的な活動もあり,多面性を有するものであって,それらの要素を
明確に区分することができない場合が生じることは避けられない。本件運
用方針が活動の実態により明確に区分することができない場合に按分率を
定めているのもこのような実態を踏まえたものであるということができ
る。しかし,本件運用方針が,当該議員ないし会派の活動に議員としての
議会活動を離れた活動や議員の議会活動の基礎となる調査研究活動との間
に合理的関連性が認められない行為としての要素が混在している場合の取
扱いをすべて網羅することができているわけではなく,本件運用方針に具
体的な類型が定められていない場合であっても,前記の政務調査費の交付
の趣旨に鑑みれば,当該議員ないし会派の活動のうち,議員としての議会
活動を離れた活動や議員の議会活動の基礎となる調査研究活動との間に合
理的関連性が認められない行為に関する部分に生じた経費について,政務
調査費を支出することが許されないことはいうまでもない。
したがって,議員又は会派がした支出に政務調査活動以外による経費が
含まれている場合やその活動が本件運用方針に定める類型に該当しない場
合には,本件運用方針の定めを踏まえ,社会通念に従って相当な按分率を
認定の上,当該活動に係る経費のうち政務調査活動に関して生じたといえ
る部分を超える経費に充てられた政務調査費の支出については,違法なも
のであると評価するのが相当である。
2ところで,会派又は議員による政務調査費の支出が本来政務調査費に充
てることができない経費の支出であったときは,当該会派又は議員は,政
務調査費を交付した普通地方公共団体に対し,その支出相当額を不当利得
として返還すべき義務を負うものというべきである。本件においても,こ
れまで説示したところによれば,補助参加人らがした本件各支出が本件運
用方針に反する違法な支出である場合には,補助参加人らは,被告に対
し,その支出額に相当する金員を不当利得として返還すべき義務があると
いうべきである。
しかして,一般に不当利得返還請求訴訟においては,不当利得の返還を請求
する者において,利得者が法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益
を受けた者であることについての主張・立証をすべきであると解される(最高
裁昭和59年12月21日第二小法廷判決・集民143号503頁参照)とこ
ろ,この理は,怠る事実に係る相手方に不当利得の返還請求をすべき措置を当
該普通地方公共団体の執行機関に対して求める住民訴訟においても当てはまる
というべきである。したがって,原告は,補助参加人らによる政務調査費の
支出が本件運用方針に反する違法なものであり,補助参加人らが法律上の
原因なく利得していることについて立証責任があるというべきである。
もっとも,本件規程が,会派又は議員が自らの政務調査費の使用が使途
基準を満たして適正であったことについて,第三者による事後的な検証が
可能となるように,会計帳簿を調製し,その内訳を明確にするとともに,
証拠書類を整理し,保管しなければならない義務を負うと定めているこ
と,会派又は議員が政務調査費の使途等に関する資料をすべて保有してい
ることといった事情を考慮すれば,原告において,補助参加人らによる政
務調査費の支出の全部又は一部が本件運用方針ないしその趣旨に合致した
ものでないことを推認させる一般的,外形的な事実の存在を立証した場合
には,補助参加人らにおいて適切な反証をする必要が生じると解すべきで
あり,その反証がない限り,補助参加人らがした政務調査費の支出の全部
又は一部は,本件運用方針ないしその趣旨に合致しない違法な支出である
と推認されると考えるのが相当である。
以上を前提として,以下,本件各会派支出の違法性及び本件各議員によ
る政務調査費の使用の違法性について検討を加えるが,本件各議員による政務
調査費の使用の違法性に関する共通の問題として,以下の点を指摘しておく。
本件で問題とされた議員の中には,第三者から賃借した政務調査事務所を,政
務調査活動のみならず,後援会事務所や政党活動の拠点としても使用し,ま
た,雇用した職員をそれらの活動に従事させ,その賃借した事務所に係る事務
所費や人件費について,事務所の使用実態や職員の業務実態について特段の裏
付け資料を証拠として提出していないにもかかわらず,自らが算定した政務調
査活動が占める割合に政務調査費を充当したとしても本件運用方針に反する違
法なものではないと主張している議員が少なからずいる。しかし,本件運用方
針によれば,議員の活動が政務調査活動とその他の活動(後援会活動,政党活
動等)の要素が混在している場合において,議員がその活動に要した経費に政
務調査費を充当するに当たっては,事務所の使用実態や職員の業務実態に応じ
た合理的な割合で按分することとされているところ,使用実態や業務実態に関
してその按分割合が合理的であることを示す特段の資料も論拠もなく,本件運
用方針が定める上限を超えて,議員が自ら適切であると判断した按分割合で政
務調査費を充当することは,政務調査費の使用について第三者による事後的な
検証はできず,議員による恣意的な政務調査費の支出を許すものであって,前
記で説示した本件規程の趣旨に反するものであるといわなければならず,もと
より政務調査費から充当する合理的な按分割合であることについての反証があ
ったとはいえない。そもそも,政務調査活動とそれ以外の活動の要素が混在
し,その使用実態や業務実態により明確に区分することができない経費(事務
所費,人件費)に本件運用方針で定められた上限を超えて政務調査費を支出す
ることは,議員の政務調査活動との間に合理的な関連性がない活動に関する経
費に政務調査費を充当したことを推認させる一般的,外形的な事情があるとい
うことができるのであるから,事務所費や人件費について使用実態や業務実態
に関して合理的な割合であることを示す具体的な資料を提出しない議員につい
ては,按分による政務調査費の充当において合理的に区分することが困難であ
る場合に当たるものとして,本件運用方針が定める按分率を上限として政務調
査費からの充当が許されるものというべきである。
第4
1原告は,本件各委託契約に係る委託業務の内容が,一般的,抽象的,包
括的なものであり,本件各委託契約に係る経費が記載された収支報告書等
においても,委託業務の具体的内容やこれに要する具体的な支出の内訳の
記載がないことから,本件各会派支出に対して政務調査費を充当すること
は許されない旨主張する。
しかし,本件条例,本件規程及び本件運用方針には,会派が第三者に調
査研究業務を委託するに当たり,会派に対してその委託業務の内容を個別
具体的に特定し,支出の内訳を記載することを義務付ける旨の定めは存在
しない。また,一般に,会派が議会活動の基礎として行う地方行財政に関
する調査研究は,その性質上多岐にわたるものであることからすると,会
派がその調査研究に係る業務を第三者に委託するに当たり,会派に対して
その委託業務の内容を個別具体的に特定することを要求することが現実的
であるとも言い難い。のみならず,本件条例及び本件規程は,会派の代表
者に対し,年度終了の翌日から起算して30日以内に議長に対し領収書そ
の他の支出の事実を証する書類の写しを添付して収支報告書を提出しなけ
ればならない旨を定めているものの,収支報告書の記載例をみると,調査
委託費の支出額を記載するのみで,個々の支出に係る政務調査活動の目的や
内容等を具体的に記載する様式になっていない(甲4)。その趣旨は,政
務調査費は議会の執行機関に対する監視の機能を果たすための政務調査活
動に充てられることも多いと考えられるところ,執行機関と議会ないしこ
れを構成する議員又は会派との抑制と均衡の理念に鑑み,議会において独
立性を有する団体として自主的に活動すべき会派の性質及び役割を前提と
して,政務調査費の適正な使用についての各会派の自律を促すとともに,
政務調査活動に対する執行機関や他の会派からの干渉を防止しようとする
ところにあるものと解される(最高裁平成21年12月17日第一小法廷
判決・集民232号649頁参照)。
そうすると,本件条例,本件規程及び本件運用方針において,会派が調
査研究に係る業務を第三者に委託するに当たり委託業務の内容を個別具体
的に特定することが要求されているとか,その契約に係る経費が記載され
た収支報告書等に委託業務の具体的内容やこれに要する具体的な支出の内
訳の記載がされることが要求されていると解釈することはできないから,
本件各委託業務の内容が個別具体的でなく,収支報告書等にもその具体的
内容や内訳等について記載がないからといって,本件各会派支出に対して
された政務調査費の支出が全額違法なものであるということはできない。
しかるところ,原告は,本件会派支出4に対してされた政務調査費の支
出の違法性について,政務調査費を政務調査活動以外の用途に用いる方便
として利用された可能性が高いと概括的に主張するのみで,それ以上の主
張・立証をしないから,本件会派支出4に対してされた政務調査費の支出
が違法であるということはできない。他方,原告は,本件会派支出1ない
し本件会派支出3の違法性について別途主張するので,以下,項を改めて
検討する。
2本件会派支出1について
前記前提事実に加え,後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が
認められる。
ア自民党道連及び自民党議員会の概要(甲105の1,2,丙A自共3
7,証人H25)
自民党道連は,国政政党である自由民主党の地方組織であり,道内に
ある自由民主党の支部の連合体として,国政に関する政策立案,宣伝,
選挙等の政治活動を主として行う団体である。道内にある自由民主党の
支部は,国会議員及び地方公共団体の議会議員のほか一般党員で組織さ
れ,道内の12の衆議院議員小選挙区にそれぞれ設置された選挙区支
部,各市町村及び札幌市の各行政区にそれぞれ設置された市区町村支
部,一定の職域ごとに設置された職域支部があるほか,衆議院比例区支
部,参議院選挙区支部,参議院比例区支部などがある。そして,上記各
支部のうち12の衆議院議員小選挙区にそれぞれ設置された選挙区支部
を中心として自由民主党の政党活動が行われ,市区町村支部及び職域支
部は,選挙区支部の傘下組織として活動している。
自民党議員会は,北海道議会内部の議員団体として組織された会派で
あり,道政に関する政策立案等の政治活動を主として行う団体である。
自民党議員会の構成員は北海道議会議員のみであるが,必ずしも自由民
主党の党員を構成員とするものではない。
自民党道連と自民党議員会は,それぞれ別個に独立して活動すること
を基本としながらも,政策立案に係る地域ないし団体の要望把握等の活
動については共同して行っていた。
イ本件受託業務1の内容(丙A自共2)
本件受託業務1の内容は,調査対象を「国,道,市町村他府県の行財政
執行機関に
務の実施」とするものであった。
ウ本件受託業務1の履行補助者(甲105の1,2,丙A自共37,3
8,証人H25)
自民党道連は,自民党道連の職員9名を本件受託業務1に従事させた。
このうち,自民党道連の参事であるH25(以下「H25」という。)
は,自民党議員会における事実上の事務局長の地位に就いて本件受託業務
1を統括し,その他の職員3名と共に,北海道議会の庁舎内の自民党議員
会に割り当てられた部屋において常時活動をした。また,本件受託業務1
に従事した職員らのうち残りの5名の職員は,自民党道連の事務所におい
て,自民党道連の業務全般を本務としながら,本件受託業務1の活動をも
行った。
エ本件受託業務1の履行内容(甲105の1,2,丙A自共3から8ま
で,10の1から33の2まで,36の1から38まで,証人H25,弁
論の全趣旨)
自民党道連は,自民党議員会に対し,本件受託業務1の履行として,
北海道内の各地域や諸団体が有する要望の把握,道議会の定例会で行わ
れる代表質問の作成補助,北海道民に配布される政策集の作成補助,国
会又は関係行政庁に提出される意見書の作成補助,自民党議員会の広報
活動としてホームページの運営及び管理等を行った。
上記履行に係る業務のうち自民党道連が行った北海道内の各地域や諸
団体が有する要望の把握の活動は,移動政調会及び団体政策懇談会とい
う各会議の開催並びにアンケート調査の実施等をすることによって行わ
れた。
移動政調会は,年に10日程度(準備期間を含めると20日程度),
北海道内12の各衆議院議員小選挙区支部の地域において,当該地域の
市町村や団体との間で,政策に関する要望の聴取や意見交換を行うとい
うものであり,団体政策懇談会は,年に1回(準備期間は5日程度),
北海道議会庁舎内において,札幌を拠点として北海道全体を活動範囲と
する各種団体との間で,政策に関する要望の聴取や意見交換を行うとい
うものであったが,いずれも自民党道連と自民党議員会との共同で開催
され,配付資料上の主催者は自民党道連ないし自由民主党選挙区支部で
あり,自民党議員会の議員のみならず,自由民主党所属の国会議員も出
席して,国政に関する要望聴取も行われたほか,自民党道連の職員も開
催準備に従事した。
また,上記履行に係る業務のうち,自民党道連がその作成補助に携わ
った政策集には自由民主党への支持を呼びかける旨の表現が含まれてい
たり,代表質問の文案やホームページの掲載文には他の政党を批判する
表現が含まれていたりすることがあった。
さらに,本件委託業務1に係る業務に従事していたH25
のほかにも,議会の開議中にテレビ中継等を介して質疑を傍聴するなど
して,議会対応に従事したほか,自民党議員会の総会運営や自民党議員
会と他の会派との間の政策調整にも従事した。
検討
自民党道連は,自由民主党の地方組織として,国政に関する政策立案,宣
伝,選挙等の政治活動を主として行う団体であるから,政党活動を主として
行う団体であるということができるところ,自民党道連が履行した本件受託
業務1の内容は,いずれも会派が行う議会活動の基礎となる北海道の事務及
び地方行財政に関する調査研究ないしこれと客観的な合理的関連性を有しな
いものであるとまではいえないものの,本件受託業務1の履行内容のうち,
少なくとも移動政調会及び団体政策懇談会については,いずれも配付資料に
おいて対外的には自民党道連ないし自民党選挙区支部が主催者であることを
示した上で,自由民主党所属の国会議員が出席して,国政に関する要望聴取
も行われたほか,自民党道連の職員も開催準備に従事したことが認められる
から,このような実態に鑑みれば,自民党道連ないし自由民主党選挙区支部
が固有の業務として行う政党活動の側面も有していたということができる。
そして,自民党道連が,本件受託業務1の履行において,会派に所属する議
員の議会活動の基礎となる調査研究に係る活動と政党活動の側面を有する活
動とを明確に区分して活動時間や活動経費を分別管理したと認めるに足りる
証拠もない。加えて,自民党道連は,本件受託業務1に常時従事するH25
その他3名の職員を北海道議会庁舎内に配置していたものの,自民党道連の
事務所においても自民党道連の業務全般を本務とする5名の職員にも本件受
託業務1に従事させていたことからすると,本件受託業務1には,政党活動
と政務調査活動が混在し,これを明確に区分することも困難であるから,本
件受託業務1に政務調査費全額を支出することは,議員としての議会活動の
基礎となる調査研究活動との間に合理的な関連性がない経費にも充てられた
ものと評価すべき一般的,外形的な事情が存在するということができる。
これに対して,H25は,移動政調会ないし団体政策懇談会の開催につい
て,自民党道連,自由民主党支部及び自民党議員会のそれぞれの職員ごとに
職務を分担することができていた旨の証言及び陳述(丙A自共38,丙A自
共105の1。なお,別件訴訟における証人尋問における証言(丙A自共1
05の2)にも同旨の部分がある。)をするが,本件受託業務1の内容とし
て履行された移動政調会ないし団体政策懇談会の開催,運営それ自体が,政
党活動の側面を有すること,それぞれの職員ごとの活動時間や活動経費を分
別管理したと認めるに足りる証拠はないことは前記のとおりであって,H2
5の上記証言等は,議員としての議会活動の基礎となる調査研究活動と合理
的な関連性が認められない活動に対しても政務調査費が支出されたという上
記評価を左右する的確な反証であるということはできず,他に上記評価を妨
げる事情を認めるに足りる証拠もない。
小括
本件受託業務1には政務調査活動と政党活動が混在し,また,両者を活動
実態に応じて明確に区分することができないから,自民党議員会がした本件
会派支出1には政務調査費を充当することができない部分が存在していたこ
とになり,本件会派支出1のうちその部分に対してされた政務調査費の支出
は違法なものと推認すべきこととなる。そして,本件会派支出1のうち政務
調査活動と政務調査費を充てることができない政党活動に関する費用の按分
割合は,本件運用方針の定めの趣旨を踏まえ,それぞれ2分の1とするのが
相当である。
3本件会派支出2について
前記前提事実に加え,後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認
められる。
ア民主党北海道及び民主党議員会の概要(甲106の1,丙A民共30)
民主党北海道は,北海道内12の衆議院議員選挙の小選挙区を単位と
して設置されている総支部等で構成された民主党の地方組織であり,そ
れぞれの総支部は,市町村や札幌市の行政区を活動区域とする行政区支
部を設置している。
民主党議員会は,北海道議会内部の議員団体として組織された会派で
あり,民主党所属及び主義・主張を同じくする無所属の北海道議会議員
を構成員として,道政に関する政策立案等の政治活動を主として行う団
体である。
イ本件受託業務2の内容(丙A民共2)
本件受託業務2の内容は,目的を「道政調査に係る事務等補助業務」と
し,委
とするものであった。
ウ本件受託業務2の履行補助者(甲106の1から3まで,丙A民共3
0,31)
民主党議員会の政策審議会事務局長であり本件受託業務2を統括したH
26(以下「H26」という。)を始めとする民主党北海道の職員5名
は,いずれも北海道議会の庁舎内の民主党議員会に割り当てられた部屋に
おいて本件受託業務2に従事し,民主党北海道の固有の業務を行うことは
なかった。また,民主党北海道の固有の業務を担当していた職員が本件受
託業務2の履行に従事することはなかった。
エ本件受託業務2の履行内容(甲106の1から3まで,丙A民共3から
7まで,13の1から25まで,27から31まで,弁論の全趣旨)
民主党北海道は,民主党議員会に対し,本件受託業務2の履行とし
て,地域政策懇談会(旧名称は「道政懇話会」。)の開催等による北海
道内の各地域や諸団体が有する要望の把握,道議会の定例会で行われる
代表質問の作成補助,国会又は関係行政庁に提出される意見書の作成補
助,民主党議員会の議員が広報活動をする際に用いられる「道議会活動
の報告」と題する冊子の作成及び民主党議員会の内部に設置された政策
立案のプロジェクトに関する事務運営等を行った。
上記履行に係る業務のうち地域政策懇談会は,平成22年度中は合計
18日程度,北海道内の13の各支庁を単位とした17の地域におい
て,当該地域の市町村や団体との間で,政策に関する要望や意見交換を
行うというものであり,民主党議員会を主催者として対外的に表示され
た懇談会もあるが,後志地域の地域政策懇談会については民主党北海道
及び民主党支部が共催として対外的に表示され,釧根地区の地域政策懇
談会については新党大地が共催として対外的に表示された。また,地域
政策懇談会には,民主党議員会所属の議員のほかに,民主党所属の国会
議員も出席して,国政に関する要望把握や情報提供も行われ,その開催
準備には民主党北海道の地元支部の職員も協力した。
検討
民主党北海道は,民主党の地方組織として,国政に関する政策立案,宣
伝,選挙等の政治活動を主として行う団体であるから,政党活動を主として
行う団体であるということができるところ,民主党北海道が履行した本件受
託業務2の内容は,いずれも会派が行う議会活動の基礎となる北海道の事務
及び地方行財政に関する調査研究ないしこれと客観的な合理的関連性を有し
ないものであるとまではいえないものの,本件受託業務2の履行内容のう
ち,地域政策懇談会については,その一部において対外的には民主党北海道
ないし民主党支部が共催であることを示した上で,民主党所属の国会議員が
出席して,国政に関する要望聴取や情報提供も行われたほか,民主党支部の
職員も開催準備に従事したことが認められるから,このような実態に鑑みれ
ば,民主党北海道ないし民主党支部が固有の業務として行う政党活動の側面
も有していたということができる。そして,民主党北海道が,本件受託業務
2の履行において,会派に所属する議員の議会活動の基礎となる調査研究に
係る活動と政党活動の側面を有する地域政策懇談会の活動とを明確に区分し
て活動時間や活動経費を分別管理したと認めるに足りる証拠もない。
そうすると,本件受託業務2を履行するに当たり,これに専従するH26
その他5名の職員を北海道議会庁舎内に配置して,民主党北海道の固有の業
務に従事する職員に本件受託業務2を担当させなかったという事情を踏まえ
ても,本件受託業務2には,政党活動と政務調査活動が混在し,これを明確
に区分することも困難であるから,本件受託業務2に政務調査費全額を支出
することは,議員としての議会活動の基礎となる調査研究活動との間に合理
的な関連性がない経費にも充てられたものと評価すべき一般的,外形的な事
情が存在するということができ,他にこの評価を妨げるような事情の存在を
認めるに足りる的確な反証もない。
小括
本件受託業務2には政務調査活動と政党活動が混在し,また,両者を活動
実態に応じて明確に区分することができないから,民主党議員会がした本件
会派支出2には,政務調査費を充当することができない部分が存在していた
ことになり,本件会派支出2のうちその部分に対してされた政務調査費の支
出は違法なものと推認すべきこととなる。そして,本件会派支出2のうち政
務調査活動と政務調査費を充てることができない政党活動に関する費用の按
分割合は,本件運用方針の定めの趣旨を踏まえ,それぞれ2分の1とするの
が相当である。
4本件会派支出3について
証拠(丙A民共8)によれば,民主党議員会は,平成22年4月1日,連
合北海道に対し,委託調査の目的を「道政調査に係る事務等補助業務」と
し,委託調査の事項を「①データの収集・整理,関連資料の整理,②地域に
おける調査,③調査結果の集計及び分析,④調査結果に基づく研究報告書
(提言)などの策定補助,⑤その他,連絡調整を含め,道政調査活動に必要
なあらゆる業務」と定めて,委託料合計117万円で委託する旨の本件委託
契約3を約したことが認められる。
しかし,証拠(丙A民共9の1から4まで)によれば,連合北海道が議会
の定例会が開会する前に民主党議員会に対して書面で提供した政策課題に関
する情報資料は,その多くは連合北海道の国又は北海道に対する要望であっ
たり,連合北海道が取り組む政治活動の紹介であったりするものであること
が認められ,これらは本件委託業務3の委託調査の目的である「道政調査に
係る事務等補助業務」とは無関係のものであると指摘せざるを得ない。ま
た,民主党議員会の事務局長であるH26の陳述(甲106の2,丙A民共
30,31)及び別件訴訟の証人尋問における証言(甲106の3)によっ
ても,連合北海道が民主党議員会に対して口頭で提供した政策課題に関する
調査及び報告の具体的内容は明らかでない。これらの事情は,本件委託契約
3が,民主党議員会「が行う道の事務及び地方行財政に関する調査研究並び
に調査委託」(本件規程4条及び同別表第1)に該当しない業務の委託であ
ったことを推認させるものであって,本件受託業務3に政務調査費全額を支
出することは,議員としての議会活動の基礎となる調査研究活動との間に合
理的な関連性がない経費に充てられたものと推認させる一般的,外形的な事
情があるということができ,これに対する的確な反証はない。
小括
以上によれば,本件会派支出3は,本件運用方針に反する違法な支出であ
ると認められる。
第5
1G1議員(整理番号1(自1))
前記前提事実に加え,証拠(甲5の1から4まで,丙A自1の1の
1,丙A自1の2の1から丙A自1の2の20まで,丙A自1の3)及
び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
アG1議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イG1議員は,別紙4主張整理表「整理番号1」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載の
ある個人2名を上記事務所において職員として雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動のみならず,政党活動及び後
援会活動が行われており,前記各職員もこれらの活動に従事してい
た。
ウG1議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
上記認定事実によれば,前記事務所においては,政務調査活動のみならず
政党活動や後援会活動が行われ,前記各職員もこれらの活動に従事したこと
が認められるから,同事務所に係る事務所費及び人件費として支出されたも
のには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない経費や対価が含ま
れているものと推認される一般的,外形的な事情があるということがで
き,事務所の使用実態や職員の業務実態により政務調査活動に係る経費
や対価とそれ以外の活動に係る経費や対価とを明確に区分することも困
難である。したがって,的確な反証がされない限り,支出された経費や
対価のうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運
用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当であ
る。
これに対して,G1議員は,前記事務所における政党活動の内容は会
計事務などに限られた形式的なものであり,実質的な政党活動はしてい
なかったから,事務所費及び人件費のうち2分の1に相当する部分につ
いて政務調査費を支出することが許される旨主張し,これに沿う陳述
(丙A自1の3)をするが,同議員が陳述するところの前記事務所にお
ける使用実態や各職員の政務調査活動以外の関与の度合いについて客観
的な裏付けを欠くから,同議員の上記陳述はたやすく採用することがで
きず,他に事務所費及び人件費の按分割合に関する的確な反証はない。
以上によれば,前記事務所に係る事務所費及び前記職員に係る人件費とし
て支出したもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件
運用方針に反するものであるから違法であるというべきである。
2G2議員(整理番号2(公1))
前記前提事実に加え,証拠(甲6の1から4まで,丙B1の1から丙
B1の10まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ
る。
アG2議員は公明党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された北海
道議会議員である。
イG2議員は,別紙4主張整理表「整理番号2」欄に対応する「摘
要」欄記載の各住所地に所在する各事務所(本項においては,以下,
各事務所の所在地に応じて,それぞれ「札幌市内の事務所」,「旭川
市内の事務所」という。)を賃借し,また,同欄に記載のある個人2
名を旭川市内の事務所において職員として雇用した。
なお,G2議員が作成した事務所状況報告書のうち旭川市内の事務
所に関するものには,「他用途との兼用の有無」の項目中「政党事務
所」の部分に丸印が付されている。
ウ旭川市内の事務所においては,少なくとも政務調査活動のみならず
後援会活動も行われており,また,前記事務所で稼働していた職員の
うちH27は,政務調査活動のみならず後援会活動にも従事した。
他方,札幌市内の事務所は,宿舎としても利用された。
エG2議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
旭川市内の事務所に係る事務所費及び人件費について
上記認定事実によれば,旭川市内の事務所では政務調査活動のみならず後
援会活動が行われていたことが認められることに加え,同事務所に関する事
務所状況報告書には,「他用途との兼用の有無」の項目中「政党事務
所」の部分に丸印が付されていることからすると,同事務所において
は,政務調査活動及び後援会活動のほかに,政党活動も行われていたこ
とを推認することができるから,同事務所に係る事務所費として支出さ
れた経費には,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しないものが
含まれていると推認させる一般的,外形的な事情があるといえる。ま
た,同事務所における使用実態からすると,同事務所で雇用されていた
前記各職員も,政務調査活動のみならず,後援会活動及び政党活動にも従
事していたものと推認されるから,前記各職員に係る人件費として支出され
たものには,議員の議会活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したこ
とによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があ
るといえる。そして,これらの事務所費及び人件費については,事務所
の使用実態や職員の業務実態により政務調査活動に係る経費や対価とそ
れ以外の活動に係る経費や対価とを明確に区分することも困難である。
そうすると,的確な反証がない限り,支出された経費や対価のうち3分
の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する
違法な支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G2議員は,同事務所で雇用したH28について,政
務調査活動以外の業務を行わせなかった旨主張するが,これを裏付ける
的確な証拠はなく,また,証拠(丙B1の1から丙B1の10まで)を
精査しても,上記推認を妨げるような的確な反証がされているというこ
とはできない。
したがって,同事務所に係る事務所費及び前記各職員に係る人件費として
支出したもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運
用方針に反するものであるから違法であるというべきである。
札幌市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区の議員
であるG2議員が宿舎としても利用したものであると認められるが,同
事務所が政務調査活動の拠点としての実態を有しないものであったこと
をうかがわせる客観的な証拠はない。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている
札幌市内の賃貸マンションの賃借料については,政務調査活動の拠点として
継続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に
応じた額を充当することができるとされているところ,同議員による札幌市
内の事務所を政務調査活動の拠点として使用した日数は証拠上明らかではな
く,また,同事務所を政党活動にも使用していたことを同議員も自認してい
ることからすると,札幌市内の事務所に係る事務所費として政務調査費から
支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない部分
があることを推認させる一般的,外形的な事情があり,また,政務調査活動
とそれ以外の活動(同事務所が宿舎としても使用されていたことからする
と,私的活動も含まれる。)を明確に区分することができない。そして,①
平成22年度中の休日(行政機関の休日に関する法律1条参照)の合計が1
18日であり(公知の事実),②本件運用方針において使用日数から控除さ
れるべきであるとされる当該年度中の議会の定例会及び委員会の開催日数が
158日である(弁論の全趣旨)ことに加え,③平成25年3月までに本件
運用方針が改訂され,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札幌市内の
マンションの賃借料及びその管理運営費に関し,使用した実績により明確に
区分することができない場合の按分率の上限を3分の1にする旨の規定が設
けられた(乙16)ことを踏まえると,この場合における政務調査費を充当
することができる按分割合は3分の1とするのが相当である。なお,G2
議員は,同事務所における活動内容について,政務調査活動が2分の1
を占めていたと主張するが,これを裏付ける客観的な証拠はない。
したがって,同事務所の事務所費として支出したもののうち3分の1
を超えて政務調査費を充当をすることは,本件運用方針に反するもので
あって違法であるというべきである。
3G3議員(整理番号3(民1))
前記前提事実に加え,証拠(甲7の1から3まで,丙A民1の1の1
から丙A民1の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認め
られる。
アG3議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イG3議員は,別紙4主張整理表「整理番号3」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する事務所及びこれに付随する駐車場を賃
借し,また,同欄に記載のある個人2名を上記事務所において職員と
して雇用した。上記事務所は,民主党北海道小樽支部が賃貸人から賃
借を受けた事務所の一部を同議員が転借しているものである。同議員
は,同支部との間で,事務所費について,同支部が賃貸人に支払う賃
料15万円のうち7万円,光熱水費のうち前年度総額の約2分の1に
当たる12万円,駐車場料金の半額を同議員が負担し,残額は同支部
が負担する旨の覚書を交わした。また,同議員は,同支部との間で,
上記職員2名の給与月額合計24万円のうち9万円,賞与合計年65
万円のうち30万円を同議員が負担し,残額は同支部が負担する旨の
覚書を交わした。
ウ前記事務所においては,政務調査活動及び政党活動が行われてお
り,また,前記各職員も政務調査活動及び政党活動に従事した。
エG3議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
以上を前提に検討すると,G3議員が,前記事務所において,後援会活動
を実施したことをうかがわせる証拠はない。また,同議員は,平成22年度
中,後援会の役員会や総会,集会などの会合を開催することもなく,選挙活
動については,事務所の3階を借りており,また,前記各職員を後援会活動
やその補助業務に従事させなかった旨陳述(丙A民1の3)しており,これ
に反する的確な証拠もない。
そうすると,前記事務所においては,政務調査活動及び政党活動が行われ
ており,前記各職員もこれらの活動に従事し,これらの活動のために事務所
費及び人件費が支出されたものと認められるから,同事務所に係る事務所費
及び人件費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連
性を有しない経費や対価が含まれているものと推認される一般的,外形的な
事情があり,その事務所の使用実態及び職員の業務実態により政務調査活動
に係る経費や対価とそれ以外の活動に係る経費や対価とを明確に区分するこ
とも困難である。もっとも,このような場合には,本件運用方針によれば,
支出された経費や対価のうち2分の1を上限として政務調査費を充当するこ
とができるとされているところ,G3議員が事務所費及び人件費について政
務調査費から充当した割合は,いずれも上記の範囲内であると認められるか
ら,同議員が事務所費及び人件費について政務調査費から支出した部分につ
いては,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
4G4議員(整理番号4(民2))
前記前提事実に加え,証拠(甲8の1から3まで,丙A民2の1の1
から丙A民2の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認め
られる。
アG4議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イG4議員は,別紙4主張整理表「整理番号4」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載の
ある個人1名を職員として上記事務所において雇用した。
前記職員の雇用契約書(丙A民2の2の1)には,仕事内容として
「G4道議の政治活動の補佐全般」との記載がある。
ウ前記事務所においては,政務調査活動のほか,後援会活動も行われ
ていた。なお,政党活動は,民主党北海道第11区総支部で行われた。
エG4議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を
支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調
査費を充当した。
事務所費について
上記認定事実によれば,前記事務所においては,政務調査活動及び後援会
活動が行われていたこと,政党活動は民主党北海道第11区総支部において
行われていたことが認められる。そうすると,同事務所に係る事務所費とし
て支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後
援会活動に関する経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事
情があり,事務所の使用実態により政務調査活動に係る経費と後援会活動に
係る経費とを明確に区分することは困難であるが,本件運用方針によれば,
支出された経費の2分の1を上限として政務調査費を充当することができる
とされている。しかるところ,G4議員が事務所費として政務調査費から支
出した割合は,上記の範囲内のものであると認められるから,同議員が政務
調査費から支出した部分について,本件運用方針に反する違法なものである
とはいえない。
人件費について
前記事務所で雇用された職員の職務内容についてみると,同職員の雇用契
約書には,仕事内容として「G4道議の政治活動の補佐全般」との記載があ
ることは前記認定のとおりである。しかし,G4議員は,前記職員とは別に
後援会活動に従事する者としてH29を雇用しているから前記職員には後援
会活動をさせていない旨主張し,これに沿う陳述(丙A民2の3)をすると
ともに,後援会が管理するH29の賃金台帳であるとする書面(丙A2の2
の14)を提出している。同書面は,電子データを印刷したものであり,責
任者の押印等はないものの,それのみで直ちにその信用性を否定することは
困難であり,他にこの書面の信用性を否定すべき事情もうかがわれないこと
からすると,前記職員が政務調査活動以外の活動に従事し,そのための対価
として政務調査費が支出されたことを推認させる一般的,外形的な事情があ
るということはできない。
したがって,前記職員に係る人件費の全額について,政務調査費から充当
したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
5G5議員(整理番号6(自3))
前記前提事実に加え,証拠(甲10の1から4まで,丙A自3の1の1か
ら丙A自3の4まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ
る。
アG5議員は,自由民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された北
海道議会議員である。
イG5議員は,別紙4主張整理表「整理番号6」欄に対応する「摘
要」欄記載の各住所地に所在する各事務所(本項においては,以下,
各事務所の所在地に応じて,それぞれ「札幌市内の事務所」,「留萌
市内の事務所」という。)を賃借し,また,同欄に記載のある個人を
留萌市内の事務所において職員として雇用した。
ウ留萌市内の事務所においては,政務調査活動のほか,政党活動及び
後援会活動が行われ,前記職員もこれらの活動に従事した。
他方,札幌市内の事務所は,宿舎としても利用された。
エG5議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
留萌市内の事務所に係る事務所費及び人件費について
上記認定事実によれば,留萌市内の事務所では,政務調査活動に加えて政
党活動及び後援会活動が行われており,前記職員もこれらの活動に従事して
いたことが認められるから,同事務所に係る事務所費及び人件費として支出
されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない経費や対
価が含まれているものと推認される一般的,外形的な事情があるということ
ができる。
これに対して,G5議員は,留萌市内の事務所に係る事務所費及び人件費
について,平成21年4月から同年6月までの政務調査活動(①調査研究活
動,②意見聴取,意見交換,各種会議,③①及び②に関する移動,調査)の
実績をもとにして,政務調査費に充当することができる按分割合を算出し,
事務所費及び人件費の一部に政務調査費を充当した旨の主張をし,これに沿
う陳述(丙A自3の4)をしているところ,同議員の陳述する按分割合は,
算出根拠となる前年度の政務調査活動の実績に関する資料(丙A自3の3の
1から丙A自3の3の3まで)を提出した上で詳細な計算根拠を示したもの
であることに照らすと,一定の合理性のあるものであると認められる。
したがって,同議員がその算出した按分割合で留萌市内の事務所に係る事
務所費及び人件費の一部に政務調査費を充当したことについて,本件運用方
針に反する違法なものであるとはいえない。
札幌市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区の議員で
あるG5議員が宿舎としても利用したものであると認められるが,同事務所
が政務調査活動のための拠点としての実態を有しないものであったことをう
かがわせる客観的な証拠はない。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札
幌市内の賃貸マンションの賃借料については,政務調査活動の拠点として継
続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応
じた額を充当することができると定められているところ,G5議員は,手帳
などから札幌市内の事務所の使用日数を173日であると把握していたと陳
述する(丙A自3の4)。同陳述は,使用日数を算出したもととなる手帳等
の具体的な資料が証拠として提出されていないため客観的な裏付けを欠くも
おり,宿舎としての事務所の使用の実態が政務調査活動とそれ以外の活動に
明確に区分することができない場合であっても,改訂された本件運用方針の
内容等を踏まえて,政務調査費を充当することができる按分割合は3分の1
とするのが相当であるから,結局のところ,同議員が札幌市内の事務所の事
務所費に関してその3分の1を政務調査費から充当したことについて,本件
運用方針に反する違法なものであるとまでは認められない。
6G6議員(整理番号8(民3))
前記前提事実に加え,証拠(甲11の1から6まで,乙6,丙A民3の1
から丙A民3の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ
る。
アG6議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イG6議員は,別紙4主張整理表「整理番号8」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載の
ある個人5名を上記事務所において職員として雇用した。
ウ前記事務所は,政務調査活動に利用されたほか,平成22年7月中
の夜間,参議院議員選挙のための民主党の会議場として使用された。
また,前記各職員は,いずれも政務調査活動に従事した。
なお,G6議員の後援会活動は,前記事務所とは別に設けられた後援会
事務所で行われ,また,政党活動については,倶知安町労働福祉センター
内の北海道教職員組合後志支部で行われた。
エG6議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
上記認定事実によれば,前記事務所では,平成22年7月の一時期に
前参議院議員選挙のための会議場として使用されたことはあるが,後援
会活動及び政党活動は前記事務所とは別の場所で行われたものと認めら
れる。
そうすると,前記事務所における活動には,平成22年7月の一時期
に政党活動が混在していたということはでき,その時期に事務所費とし
て支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しな
い経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があると
いうことはできるが,他方で,同事務所で雇用された各職員が政務調査
活動以外の活動に従事し,その人件費に政務調査費が充当されたと推認さ
せる一般的,外形的な事情があると認めることはできない。
したがって,前記事務所に係る事務所費のうち,平成22年7月分に関
しては,本件運用方針に従いその2分の1の限度で,それ以外の月に関し
ては全額を政務調査費から充当することができ,人件費については,そ
の全額を政務調査費から充当することができる。しかるところ,G6議
員が事務所費の一部として政務調査費から充当した割合は,上記の範囲を超
えるものではなく,また,人件費の全額について政務調査費を充当したとし
ても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
7G7議員(整理番号9(自4))
前記前提事実に加え,証拠(甲12の1から4まで,丙A自4の1の
1から丙A自4の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認
められる。
アG7議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イG7議員は,別紙4主張整理表「整理番号9」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する事務所及びこれに付随する駐車場を賃
借し,また,同欄に記載のある個人3名を上記事務所において職員と
して雇用した。
なお,上記事務所及び駐車場の賃貸人は,G7議員が代表取締役を
務めるJ1株式会社である。
ウ前記事務所においては,政務調査活動のほか,政党活動及び後援会
活動も行われた。また,前記各職員のうちH30を除く職員らについ
ては,いずれも,政務調査活動のほか政党活動及び後援会活動にも従
事した(なお,H30の職務内容については後記のとおりであ
る。)。
エG7議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を
支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調
査費を充当した。
上記認定事実によれば,前記事務所の賃貸人は,G7議員が代表取締役を
務めるJ1株式会社であると認められるが,本件運用方針においてそのこと
を禁ずる定めはないから,本件運用方針において政務調査費を充当すること
ができない例として定める「議員所有又は議員と生計を一にする親族所有の
場合の事務所賃借料」を潜脱する目的で当該法人が設立されたなどの特段の
事情がない限り,事務所の賃貸人が当該議員が役員を務める法人であるから
といって,その事務所の賃借料に対して支出された政務調査費の全額が違法
であることを推認させる一般的,外形的な事情が存在するということはでき
ないというべきである。そして,G7議員について提出された証拠(丙A
自4の1の1から丙A自4の3まで)を精査しても,J1株式会社が本
件運用方針を潜脱する目的で設立されたなどの特段の事情は見当たらな
いから,同議員が代表取締役を務める同会社が賃貸人であることを理由
として,前記事務所及び駐車場の事務所費に政務調査費を充当すること
が違法である旨の原告の主張は採用することができない。
ところで,前記事務所においては政務調査活動以外にも政党活動及び
後援会活動が行われており,前記各職員のうち少なくともH30以外の
職員がこれらの活動に従事していたことは前記認定のとおりである。前
記事務所の使用実態及びこれに従事していた少なくともH30を除く職
員らの業務実態からすると,前記事務所及び駐車場に係る事務所費及び
人件費については,政務調査活動に加えて,政党活動及び後援会活動に
関わる経費や対価が含まれているものと推認される一般的,外形的な事
情があるということができ,また,事務所の使用実態や職員の業務実態
により政務調査活動に係る経費や対価とそれ以外の活動に係る経費や対
価とを明確に区分することもできない。したがって,的確な反証がされ
ない限り,支出された経費や対価のうち3分の1を超えて充当された政
務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出で
あると評価するのが相当である。
これに対して,G7議員は,前記事務所における活動及び前記各職員
のうちH30以外の職員らの職務内容については,政務調査活動の割合
が2分の1であり,政党活動及び後援会活動の合計が2分の1であった
と主張し,これに沿う陳述(丙A自4の3)をするが,客観的な裏付け
を欠いており,他に同議員が主張する政務調査活動とそれ以外の活動の
割合を裏付ける的確な反証はない。
また,G7議員は,H30については同議員の政務調査活動における
運転業務等に専従したと主張し,これに沿う陳述(丙A自4の3)をす
るが,客観的な裏付けを欠いている。
かえって,証拠(丙A自4の2の2)によれば,H30は,平成22
年4月1日から平成23年3月31日までを雇用期間とし,午前8時3
0分から午後5時まで(ただし休憩時間は午後0時から午後1時まで)
を就業時間とし,前記事務所を就業場所として,日給8000円を毎月
25日払の約定でG7議員に雇用されていたことが認められることから
すると,政務調査活動として移動する際に自動車運転業務にH30が専
従していたとは認めがたい。のみならず,H30の就業場所である前記
事務所においては,政務調査活動のみならず,政党活動及び後援会活動
も行われていたことからすると,H30は,政務調査活動に加えて,政
党活動及び後援会活動にも従事し,その人件費に政務調査費が充当され
たものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができ,ま
た,業務実態により政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対
価とを明確に区分することもできないから,同人に係る人件費として支
出されたもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件
運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
8G8議員(整理番号11(民5))
前記前提事実に加え,証拠(甲14の1から3まで,丙A民5の1の
1ないし丙A民5の3)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認め
られる。
アG8議員は,民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された北
海道議会議員である。
イG8議員は,別紙4主張整理表「整理番号11」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する事務所(本項においては,以下,この
事務所のことを「札幌市内の事務所」という。)を賃借した。
ウG8議員は,北海道砂川市a条b丁目c番d号所在の事務所(本項にお
いては,以下,「地元事務所」という。)において,別紙4主張整理表
「整理番号11」欄に対応する「摘要」欄に記載のある個人2名を職員と
して雇用した。
なお,同議員の後援会活動については,全日本自治団体労働組合で行わ
れ,また,政党活動については,民主党北海道第10区総支部で行われ
た。
エG8議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
札幌市内の事務所に係る事務所費について
G8議員は,札幌以外の選挙区から選出された議員であり,証拠(丙A
民5の3)によれば,同議員は,札幌市内の事務所を宿舎として利用してい
たことを認めるが,同事務所が政務調査活動の拠点としての実態を有しない
ものであったことをうかがわせる客観的な証拠はない。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札
幌市内の賃貸マンションの賃借料については,政務調査活動の拠点として継
続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応
じた額を充当することができると定められているところ,G8議員が陳述す
る(丙A民5の3)ところによっても,その具体的な使用日数は明らかでは
調査活動とそれ以外の活動に明確に区分することができない場合であって
も,改訂された本件運用方針の内容等を踏まえて,政務調査費を充当するこ
とができる按分割合は3分の1とするのが相当である。そうすると,G8議
員が,札幌市内の事務所に係る事務所費のうち3分の1を超える部分につい
て政務調査費を充当したことについては違法であるというべきである。
人件費について
前記認定事実によれば,後援会活動については全日本自治団体労働組合が
行い,政党活動については民主党北海道10区総支部で行われたものと認め
られるところ,地元事務所で雇用された前記職員2名が同議員の政務調査活
動補助業務以外に従事したことを認めるに足りる的確な証拠はない。
そうすると,前記事務所における各職員の人件費には,議員の政務調
査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したことによる対価が含
まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということは
できないから,前記事務所における人件費について,その全額を政務調査
費から充当したことについて違法であるとはいえない。
9G9議員(整理番号12(自5))
前記前提事実に加え,証拠(甲15の1から3まで,丙A自5の1の1
から丙A自5の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ
る。
アG9議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イG9議員は,別紙4主張整理表「整理番号12」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に事務所を設け,同欄記載のある個人4名をそれ
ぞれ上記事務所において職員として雇用した。
ウ前記事務所の賃借人は,G9議員の後援会の代表者である。同人と
G9議員は,前記事務所を後援会事務所と共同で使用するに際して生
じる賃料,共益費,電気料金及び灯油代をそれぞれ2分の1とする旨
の覚書を交わした。
エ前記各職員のうちH31以外の職員らに係る各雇用契約書の「仕事
の内容」欄には,いずれも「後援会事務」と記載されている(なお,
H31の雇用契約書は証拠として提出されていない。)。
オG9議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
事務所費について
上記認定事実によれば,前記事務所の賃借人は,G9議員の後援会の代
表者であると認められるが,同人とG9議員との間では,前記事務所使
用に係る覚書が交わされ,前記事務所を後援会事務所と共同で使用する
旨の合意がされていること,前記事務所以外で政務調査用の事務所が設
けられていたなどの事情もうかがわれないことからすれば,前記事務所
で政務調査活動が一切行われていないにもかかわらず,前記事務所の事
務所費に政務調査費が充当されたものと推認させる一般的,外形的な事
情があるとまではいうことができない。
しかし他方で,前記事務所が後援会事務所との共同使用であることに
加え,G9議員は,前記事務所では政務調査活動のみならず政党活動も
していた旨の陳述(丙A自5の3)をしていることからすると,前記事
務所においては,政務調査活動のみならず,政党活動及び後援会活動が
行われており,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない経費に
政務調査費が充当されたものと推認させる一般的,外形的な事情がある
ということができ,また,政務調査活動に係る経費とそれ以外の活動に
係る経費とを明確に区分することもできない。したがって,的確な反証
がされない限り,支出された経費のうち3分の1を超えて充当された政
務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出で
あると評価するのが相当である。
これに対し,G9議員は,前記事務所においては実質的な政党活動は
されておらず,前記事務所の事務所費の按分割合は政務調査活動を2分の
1,後援会活動と政党活動を合計2分の1としたと主張し,これに沿う同
旨の陳述(丙A自5の3)をするが,前記事務所における政務調査活動と
それ以外の使用実態に関する客観的な裏付けはなく,他に同議員が主張する
政務調査活動とそれ以外の活動割合を裏付ける的確な証拠はない。
そうすると,前記事務所に係る事務所費として支出したもののうち3
分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するも
のであって違法であるというべきである。
人件費について
前記認定事実によれば,前記事務所で雇用された前記各職員のうち,
H31以外の職員らに係る各雇用契約書の「仕事の内容」欄には,いず
れも「後援会事務」と記載されていることが認められるが,同人らの就
業場所が前記事務所であり,G9議員の後援会の代表者とG9議員との
間では,前記事務所使用に係る覚書が交わされ,前記事務所を後援会事務所
と共同で使用する旨の合意がされていること,前記事務所以外で政務調査用
の事務所が設けられていたなどの事情もうかがわれないことからすれば,
上記各雇用契約書に「後援会事務」と記載があるからといって,同人ら
が後援会活動に専従し,政務調査活動に従事していないにもかかわら
ず,その人件費に政務調査費が充当されたと推認させる一般的,外形的
な事情があるとまではいうことができない。また,H31については,
雇用契約書が提出されていないことは前記認定のとおりであるが,雇用
契約書が作成されていないとしても,同人が政務調査活動と何ら関連性
を有しない活動に従事し,その人件費に政務調査費が充当されたと推認さ
せる一般的,外形的な事情があるとまではいうこともできない。
しかし他方で,前記各職員の就業場所は前記事務所であり,前記事務
所では政務調査活動のみならず政党活動及び後援会活動が行われていた
ことは前記のとおりであって,同人らの職務内容にも,政務調査活動の
みならず,政党活動及び後援会活動も含まれていたものと認められる。
そして,前記事務所における政務調査活動とそれ以外の活動について明
確に区分することは困難であるから,前記事務所でこれらの活動に従事
した前記各職員に係る人件費についても,それぞれの業務実態を明確に
区分することは困難である。したがって,的確な反証がない限り,人件
費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当された政務調査費
については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であるとい
うべきところ,的確な反証がないことは前記事務所費で指摘したところと
同旨である。
10G10議員(整理番号13(自6))
前記前提事実に加え,証拠(甲16の1から3まで,丙A自6の1の1
から丙A自6の2の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認め
られる。
アG10議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イG10議員は,別紙4主張整理表「整理番号13」欄に対応する
「摘要」欄記載の住所地に事務所及び駐車場を賃借し,同欄記載の個
人3名を上記事務所において職員として雇用した。なお,上記各職員
に係る雇用契約書の「仕事の内容」欄には,「書類整理,資料作成
他」,「議員活動補佐」,「事務所雑用他」と記載されている。
ウG10議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を
支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調
査費を充当した。
エG10議員は,平成23年4月19日,北海道議会議員の任期を満了し
た。
G10議員は,平成23年4月19日の任期満了をもって北海道議会議員
を引退することを表明していたから,後援会活動はほとんど行っておらず,
平成21年12月31日,上記事務所における政党活動を廃止したため,平
成22年度中は政党活動を行わなかった旨主張する。G10議員が平成23
年4月19日,北海道議会議員の任期を満了したことは前記認定のとおりで
あるが,引退する議員が,党勢の拡大に努め,また,後援会に所属する支援
者に,後継者として指名した議員の支援を依頼するなどの後援会活動をする
ことも当然考えられるところである。しかるところ,G10議員は,前記事
務所における使用実態及び前記各職員の職務内容に関して陳述書を提出する
などの具体的な説明をしておらず,他に前記事務所において政務調査活動以
外の活動がほとんど行われなかったと認めるに足りる証拠もない。そうとす
れば,前記事務所における活動内容及び前記各職員の職務内容には,政務調
査活動のみならず,後援会活動及び政党活動も混在しており,政務調査活動
と合理的な関連性を有しない経費や対価に政務調査費が支出されたものと推
認される一般的,外形的な事情があるということができ,本件全証拠を検討
してみても,政務調査活動とそれ以外の活動の割合を裏付ける的確な証拠は
ない。
そして,前記事務所に係る事務所費及び人件費については,政務調査活動
に係る経費や対価とそれ以外の活動に係る経費や対価ついて,事務所の使用
実態や職員の業務実態により明確に区分することができないから,本件運用
方針によれば,政務調査活動に充当することができる按分割合は3分の1で
あり,それを超えて政務調査費を充当することは違法であるというべきであ
る。
11G11議員(整理番号14(自7))
前記前提事実に加え,証拠(甲17の1から3まで,丙A自7の1の1か
ら丙A自7の4まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ
る。
アG11議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イG11議員は,別紙4主張整理表「整理番号14」欄に対応する
「摘要」欄記載の住所地に事務所(本項においては,以下「石狩市内
の事務所」という。)を設けたほか,北海道石狩郡I8町内に所在す
る事務所(本項においては,以下「I8町内の事務所」という。)を
設け,その駐車場として同欄記載の駐車場を賃借した。
石狩市内の事務所の賃借人は,G11議員の後援会の代表者であ
る。I8町内の事務所は,自由民主党当別支部が賃借人となり,同支
部のほか,G11議員及びその後援会,当別ライオンズクラブによっ
て共同使用されていた。なお,I8町内の事務所の駐車場の賃借人
は,G11議員である。
ウG11議員は,別紙4主張整理表「整理番号14」欄に対応する
「摘要」欄記載の個人7名をそれぞれ職員として雇用したが,このう
ちH32,H33及び氏名不詳者A(以下「石狩事務所の職員ら」と
いう。)はいずれも石狩市内の事務所において勤務し,その余の者ら
(以下「I8事務所の職員ら」という。)はいずれもI8町内の事務
所において勤務した。
エG11議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
石狩市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,石狩市内の事務所の賃借人は,G11議員の後援
会の代表者であると認められるところ,G11議員は,本件各手引が作成さ
れる前の平成19年4月に同事務所の賃貸借契約に係る契約書(丙A自7の
1の2)を作成し,特段不都合がなかったため,平成22年当時もこの契約
書に基づいて事務所を使用していた旨陳述(丙A自7の4)しており,その
内容もあながち不合理とまではいえないことからすると,同事務所の賃借人
が後援会代表者であるからといって,同事務所が政務調査活動のために使用
されておらず,政務調査活動と合理的な関連性を全く有しない経費に政務調
査費が充当されたものと推認させる一般的,外形的な事情があるとまでいう
ことはできない。また,同事務所において,政党活動がされていたことをう
かがわせる的確な証拠もない。
そうすると,石狩市内の事務所においては,政務調査活動及び後援会活動
が行われているものと認められるところ,その使用実態により政務調査活動
に係る経費とそれ以外の活動に係る経費とを明確に区分することは困難であ
るから,本件運用方針によれば,石狩市内の事務所の費用については,その
2分の1を上限として政務調査費からの充当が許されることになる。そし
て,同議員が事務所費について政務調査費から支出した割合は,本件運用方
針の範囲内であるから,同議員が同事務所費について政務調査費から支出し
た部分について違法であるとはいえない(ただし,上記按分割合によって石
狩市内の事務所費を按分すると違算があり,その限度で違法であるというべ
きである。)。
I8町内の事務所の駐車場について
前記認定事実によれば,I8町内の事務所は,G11議員及びその後援
会,自由民主党当別支部,当別ライオンズクラブによって共同使用されてい
ると認められるが,同事務所の駐車場の賃借人は,G11議員であると認め
られること,G11議員がI8町内の事務所において政務調査活動をしてい
なかったことをうかがわせる的確な証拠もないことからすると,I8町内の
事務所の駐車場が上記4者で共同使用されていたと認めることは困難であ
る。
しかるところ,G11議員は,事務所状況報告書(甲17の2)におい
て,前記駐車場が後援会との共同使用であった旨報告していることからする
と,前記駐車場の使用実態は,政務調査活動及び後援会活動のために来客兼
用のものとして使用していたものと推認することができるところ,前記駐車
場の賃借料については,その使用実態により,政務調査活動に係るものと後
援会活動に係るものとに明確に区分することができないが,本件運用方針に
よれば,駐車場費の2分の1に相当する部分に政務調査費を充当することは
許容されているから,G11議員が,前記駐車場の費用の2分の1に相当す
る部分に政務調査費を充当したことは違法であるとはいえない。
人件費について
アG11議員に生じた人件費について検討すると,石狩市内の事務所にお
いては,政務調査活動のみならず後援会活動も行われていたことは前記の
とおりであるから,同事務所において勤務していた石狩事務所の職員ら
は,政務調査活動及び後援会活動に従事しており,その人件費として支出
されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会
活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,
外形的な事情があるということができ,業務実態において政務調査活動に
係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分することができない
から,石狩事務所の職員らに生じた人件費については,本件運用方針に従
い,その2分の1を上限として政務調査費を充当することが許されること
になる。
もっとも,氏名不詳者Aについては,雇用契約書が証拠として提出され
ておらず,G11議員は,親族ではなく第三者であると陳述するが,これ
を裏付ける証拠も提出されていない。本件運用方針によれば,仮に親族で
あれば,当該親族が政務調査活動に関して国家資格等の専門的知識を有し
ている場合であって,社会通念上妥当と判断される雇用形態を有している
場合に限り,政務調査費を充当することができるとしているところ,結局
のところ,氏名不詳者Aが具体的に明らかとなっておらず,その雇用実態
も明らかではない以上,本件運用方針に従った支出であると認めることは
できないから,氏名不詳者Aの人件費の2分の1に相当する部分について
政務調査費を充当することは許されないことになる。
そうすると,石狩市内の事務所に勤務していたH32及びH33に関す
る人件費として政務調査費から充当された部分は,本件運用方針で定める
範囲内であるから,本件運用方針に反する違法なものであるとまではいえ
ない(ただし,上記按分割合によって上記2名の人件費を按分すると違算
があり,その限度で違法であるというべきである。)が,氏名不詳者Aの
人件費として政務調査費から充当した部分については,その全額が本件運
用方針に反するものであって違法であるというべきである。
イ他方,前記認定事実によれば,I8町内の事務所の賃借人は自由民主党
当別支部であり,同支部及び後援会事務所他の共同使用であったことが認
められることからすると,I8町内の事務所に勤務する職員らは,その業
務実態として,政務調査活動のみならず,後援会活動及び政党活動にも従
事し,その人件費として支出されたものには議員の政務調査活動と合理的
な関連性を有しない活動に従事したことによる対価が含まれているものと
推認される一般的,外形的な事情があるということができ,その業務実態
により政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区
分することも困難である。したがって,的確な反証がされない限り,人件
費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当された政務調査費に
ついては,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価す
るのが相当である。
これに対し,G11議員は,政党活動については自由民主党当別支部の
被用者が従事しており,同議員が雇用したI8町内の事務所の職員らは政
党活動に従事しなかった旨陳述(丙A自7の4)し,同被用者に関して同
支部から人件費が支出されていたことを裏付ける預金通帳(丙A自7の
3)を提出する。しかし,前記で指摘したI8町内の事務所の使用形態に
照らすと,I8町内の事務所の職員らが一切の政党活動に関与していなか
ったとまで認めるに足りず,他に上記推認を妨げるような的確な反証もな
い。
したがって,I8事務所の職員らの人件費として支出されたもののうち
3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するも
のであって違法であるというべきである。
12G12議員(整理番号15(民6))
前記前提事実に加え,証拠(甲18の1,2,丙A民6の1の1から丙A
民6の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
アG12議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イG12議員は,別紙4主張整理表「整理番号15」欄に対応する
「摘要」欄記載の住所地の事務所を民主党北海道第二区総支部北区か
ら転借し,また,同欄記載の住所地の駐車場を賃借した。
前記事務所においては,政務調査活動のみならず政党活動も行われ
ていた。
ウG12議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を
支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調
査費を充当した。
事務所費について
上記認定事実によれば,前記事務所においては,政務調査活動以外に政党
活動がされていたものと認められる。他方,G12議員は,後援会活動は同
議員の自宅で行っていた旨陳述(丙A民6の3)しており,これに反する的
確な証拠はないから,前記事務所で後援会活動が行われていたと認めるのは
困難である。そうすると,前記事務所の事務所費については,政務調査活動
に関するものと政党活動に関するものが混在しており,議員の政務調査活動
と合理的な関連性を有しない経費が含まれているものと推認させる一般的,
外形的な事情が存在するということができ,事務所の使用実態により政務調
査活動に係る経費と政党活動に係る経費とを明確に区分することも困難であ
る。したがって,的確な反証がされない限り,事務所費として支出されたも
ののうち2分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針
に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G12議員は,前記事務所の事務所費について,業務内容
や使用面積に応じて,民主党北海道第二区総支部北区が賃貸人に支払ってい
た賃料と電気料金のうち4万円を同議員が負担し,その全額を政務調査活動
に要した費用として政務調査費から充当した主張し,それに沿う陳述(丙A
民6の3)をする。上記陳述に係る按分割合は,前記事務所における使用実
態を客観的に検証することができる根拠を示した上での積算であるとは認め
られないが,前記事務所の事務所費として政務調査費から充当された額は,
上記の範囲内であると認められるから,結局のところ,違法な政務調査費の
支出であるとはいえない。
なお,G12議員は,政務調査費から,街頭に設置されている前記事務所
付近の地図に「G12事務所」の案内を掲載するための費用(3500円)
を支出していることが認められるが,同費用は,市町村や関係諸団体の関係
者が同議員に要請するために前記事務所を訪問する際の便宜となるものであ
り,政務調査活動によって生じたものと認められるから,この費用を政務調
査費から支出したことについて違法であるとまではいえない。
駐車場に関する費用について
G12議員は,前記駐車場とは別に民主党北海道第2区総支部北区が借り
た駐車場を専用として使用していた旨陳述し,これに沿う証拠(丙A民6の
1の28から40まで)を提出していることからすると,前記駐車場は,前
記事務所の来客専用として使用されていたものと認められる。
もっとも,前記駐車場は,前記事務所における活動のために賃借されたも
のであると認められるところ,前記事務所においては,政務調査活動のみな
らず政党活動も行われていたことは前記のとおりである。そうとすれば,前
記駐車場は,政務調査活動に関する来客のためのみに使用されていたと認め
ることはできず,前記駐車場に係る賃借料については,議員の政務調査活動
と合理的な関連性を有しない政党活動に係る経費が含まれているものと推認
させる一般的,外形的な事情があるということができ,また,その使用実態
により政務調査活動に係る経費と政党活動に係る経費とを明確に区分するこ
とはできない。
そうすると,的確な反証がされない限り,支出された経費のうち2分の1
を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政
務調査費の支出であると評価するのが相当であるところ,これに反する的確
な反証はない。
13G13議員(整理番号16(自8))
前記前提事実に加え,証拠(甲19の1から3まで,丙A自8の1の1か
ら丙A自8の4まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ
る。
アG13議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イG13議員は,別紙4主張整理表「整理番号16」欄に対応する
「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記
載のある個人1名(H34)のほか,H35を上記事務所において職
員として雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動のみならず,後援会活動及び
政党活動も行われていた。
ウG13議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を
支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調
査費を充当した。
事務所費について
上記認定事実によれば,前記事務所においては,政務調査活動とともに,
政党活動及び後援会活動も行われていたと認められるところ,G13議員
は,前記事務所の1階部分において政務調査活動を,2階部分において政党
活動と後援会活動をそれぞれ行っていたこと,1階部分が79.5㎡,2階
部分が31.5㎡であるが,1階部分にトイレや台所などの共用設備があ
り,後援会活動及び政党活動でもこれらの共用部分を使用することから,事
務所費の按分割合について政務調査活動を65%,後援会活動及び政党活動
を35%と算出した旨主張し,同旨の陳述(丙A自8の4)をするととも
に,前記事務所の1階部分と2階部分の面積が示された平面図(丙A自8の
1の1)を提出している。そして,上記陳述は,具体的なものであってこれ
に反する的確な証拠も見当たらないから,前記事務所における政務調査活動
とそれ以外の活動は,明確に区分することができるだけの事情があるという
ことができ,また,G13議員が算出した按分割合についても不合理なもの
と言い難い。
そうすると,事務所費について,G13議員がその算出した按分割合で政
務調査費を充当することは,本件運用方針に反する違法なものであるとはい
えない(ただし,上記按分割合によって前記事務所に係る事務所費を按分す
ると違算があり,その限度で違法であるというべきである。)。
人件費について
前記事務所ではH34のほか,H35が雇用されていたところ,証拠(丙
A自8の2の1,丙A自8の2の2)によれば,H34の勤務形態は午後5
時から午後7時までのパートタイムであるのに対して,H35の勤務形態は
午前9時から午後5時までであると認められる。前記事務所では,政務調査
活動のほか,後援会活動及び政党活動も行われていたことは前記のとおりで
あるが,G13議員は,H35には政務調査活動のほか後援会活動及び政党
活動にも従事してもらっており,その人件費については本件運用方針に従っ
てその3分の1を政務調査費から充当し,他方,H34にはパートタイムで
1階の政務調査活動の事務所で資料の収集等をしてもらっていた旨陳述して
いるところ,その勤務形態や前記事務所の使用区分に鑑みると,同議員の上
記陳述が一概に不合理なものであるとは言い難い。
そうすると,H34に関する人件費については,政務調査活動以外の活動
によって生じた部分が混在しており,議員の政務調査活動と合理的な関連性
を有しない活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる
一般的,外形的な事情があるということはできないから,H34に関する人
件費の全額を政務調査費から支出したことについて,本件運用方針に反する
違法なものであるとはいえない。
14G14議員(整理番号18(自9))
前記前提事実に加え,証拠(甲21の1から3まで,丙A自9の1の1か
ら丙A自9の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ
る。
アG14議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イG14議員は,別紙4主張整理表「整理番号18」欄に対応する
「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記
載のある個人4名を前記事務所において職員として雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動のみならず,後援会活動及び
政党活動が行われていた。
また,少なくとも前記各職員のうちH36は,政務調査活動ととも
に政党活動及び後援会活動にも従事した。
ウG14議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
事務所費について
上記認定事実によれば,前記事務所は,政務調査活動のみならず,政党活
動や後援会活動のためにも利用されていたと認められるから,同事務所に係
る事務所費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連
性を有しない経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情が
あるということができ,事務所の使用実態により政務調査活動に係る経費と
それ以外の活動に係る経費とを明確に区分することも困難である。したがっ
て,的確な反証がされない限り,支出された経費のうち3分の1を超えて充
当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の
支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G14議員は,前記事務所では,基本的に政務調査活動が
行われ,必要に応じて年に数日程度の後援会活動及び政党活動が行われてい
たから,事務所費の按分割合としては政務調査活動を2分の1,政党活動及
び後援会活動を合計2分の1とした旨主張し,これに沿う陳述(丙A自9の
3)をするが,同議員が陳述するところの前記事務所における使用実態に関
する具体的な裏付けを欠いており,上記陳述をたやすく採用することができ
ず,他に事務所費の按分割合に関する的確な反証はない。
そうすると,前記事務所に係る事務所費として支出したもののうち3分の
1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反する違法なもの
であるというべきである。
人件費について
前記事務所で雇用された前記各職員のうち,H37及びH38について
は,「資料整理」に従事したことを示す領収証(丙A自9の2の3から丙A
自9の2の6まで)が提出されているのみで雇用契約書が証拠として提出さ
れていないが,H37及びH38が前記事務所で政務調査活動に従事してい
なかったと認めるに足りる証拠はない。もっとも,前記で認定した前記事務
所における使用実態に鑑みれば,同事務所で勤務していた前記各職員は,い
ずれも政務調査活動のみならず後援会活動及び政党活動にも従事しており,
その人件費については,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活
動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形
的な事情があるということができ,その業務実態により,政務調査活動に係
る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分することは困難であるか
ら,的確な反証がない限り,人件費として支出されたもののうち3分の1を
超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務
調査費の支出であると評価するのが相当である。
しかるところ,G14議員は,前記各職員のうちH36については,前記
事務所の使用実態からして,政務調査活動に関する按分割合が2分の1であ
ったと主張し,これに沿う陳述をするが,同議員の陳述するところの前記事
務所の使用実態については具体的な裏付けを欠くものであって採用すること
ができないことは前記のとおりである。また,G14議員は,前記各職員の
うちH39については,同人が政務調査活動における自動車運転業務に従事
していた旨主張し,これに沿う陳述をする。しかし,その雇用契約書(丙A
自9の2の2)の「従事すべき業務の内容」欄には「政務調査資料整理
等」と記載されている上,同契約書によれば,同人は常勤の職員であったと
認められるから,同議員が政務調査活動として移動する際に自動車運転業務
に専属していたとは認めがたく,H39に関する人件費について,政務調査
活動のみならず政党活動や後援会活動に従事していたことによる対価が含ま
れているとの上記推認を妨げるものではない。
他方,前記各職員のうちH37及びH38については,証拠(丙A自9の
2の3から丙A自9の2の6まで)によれば,平成22年9月から同年11
月までの間,「資料整理」のために短期間雇用されたものであると認められ
るから,H37及びH38の職務内容については,道政報告会実施の準備や
当日の手伝い,アンケート作成であった旨のG14議員の陳述の信用性をあ
ながち排斥することはできず,上記推認を妨げる事情が存在するということ
ができる。
したがって,前記各職員のうちH36及びH39の人件費として支出した
もののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に
反する違法なものというべきであるが,前記各職員のうちH37及びH38
の人件費の全額を政務調査費から充当したことは違法なものであるとはいえ
ないというべきである。
15G15議員(整理番号19(自10))
前記前提事実に加え,証拠(甲22の1から3まで,乙12,丙A自10
の1の1から丙A自10の4まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実
が認められる。
アG15議員は,自由民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された
北海道議会議員である。
イG15議員は,別紙4主張整理表「整理番号19」欄に対応する
「摘要」欄記載の住所地に所在する各事務所(本項においては,以
下,各事務所の所在地に応じて,それぞれ「札幌市内の事務所」,
「I1町内の事務所」という。)を設け,また,同欄に記載のある個
人2名をI1町内の事務所において職員として雇用した。
I1町内の事務所の賃借人は,G15議員の後援会会長であった。
また,I1町内の事務所においては,政務調査活動のほか,後援会活
動及び政党活動が行われていた。他方,札幌市内の事務所は,宿舎と
しても利用された。
ウG15議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を
支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調
査費を充当した。
札幌市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区であるG
15議員が宿舎としても利用したものであると認められるが,同事務所が政
務調査活動の拠点としての実態を有しないものであったことをうかがわせる
客観的な証拠はない。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札
幌市内の賃貸マンションの賃借料については,政務調査活動の拠点として継
続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応
じた額を充当することができるとされているところ,同議員による札幌市内
の事務所を政務調査活動の拠点として使用した日数は証拠上明らかではない
が,宿舎としての事務所の使用の実態が政務調査活動とそれ以外の活動に明
確に区分することができない場合であっても,改訂された本件運用方針の内
容等を踏まえて,政務調査費を充当することができる按分割合は3分の1と
G15
議員は,札幌市内の事務所に係る事務所費については,賃料については政務
調査費から充当せず,水道光熱費及び管理費のうち4分の1の限度で政務調
査費を充当したにとどまるから,同費用について政務調査費から充当したこ
とについて,本件運用方針に反する違法なものであるとまではいえない。
I1町内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,I1町内の事務所においては,政務調査活動のみ
ならず政党活動及び後援会活動が行われていたことが認められるから,同事
務所に係る事務所費については,政務調査活動と関連性を有しない部分が混
在しており,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない経費が含まれ
ているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができ,ま
た,事務所の使用実態により政務調査活動に係る経費とそれ以外に係る経費
とを明確に区分することは困難である。したがって,的確な反証がされない
限り,支出された経費のうち3分の1を超えて充当された政務調査費は,本
件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当であ
る。
これに対して,G15議員は,I1町内の事務所における政務調査活動の
割合が4割であったと主張し,それに沿う陳述(丙A自10の4)をする
が,その使用実態に関して具体的な裏付けを欠いているからたやすく採用す
ることができず,他に政務調査活動とそれ以外の活動の割合を裏付ける的確
な反証もない。
そうすると,I1町内の事務所に係る事務所費として支出したもののうち
3分の1を超えて政務調査費を支出することは,本件運用方針に反する違法
なものであるというべきである。
人件費について
前記で認定したI1町内の事務所の使用実態を踏まえると,同事務所にお
いて雇用されていた前記各職員の職務内容にも政務調査活動のみならず,後
援会活動及び政党活動が含まれていたと認められるから,同事務所に係る人
件費については,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従
事したことによる対価が含まれているものと推認される一般的,外形的な事
情があるということができ,業務実態により政務調査活動に係る対価とそれ
以外の活動に係る対価とを明確に区分することは困難である。したがって,
的確な反証がされない限り,人件費として支出されたもののうち3分の1を
超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務
調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対し,G15議員は,前記各職員のうち,H40についてはその活
動の4割が政務調査活動であり,また,H41についてはその活動の6割が
政務調査活動であった旨主張し,これに沿う陳述をするが,いずれもその業
務実態に関して具体的な裏付けを欠いているから採用することができず,他
に政務調査活動とそれ以外の活動の割合を裏付ける的確な反証もない。
そうすると,前記各職員に係る人件費として支出したもののうち3分の1
を超えて政務調査費を支出することは,本件運用方針に反する違法なもので
あるというべきである。
16G16議員(整理番号20(民7))
前記前提事実に加え,証拠(甲23の1から4まで,丙A民7の1の1か
ら丙A民7の3まで,証人G16)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実
が認められる。
アG16議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イG16議員は,別紙4主張整理表「整理番号20」欄に対応する
「摘要」欄記載の住所地に所在する建物を賃借して事務所を設け,ま
た,同欄に記載のある個人2名を上記事務所において職員として雇用
した。
前記事務所の所在する建物の賃貸人は,G16議員の実父であるH
6であり,また,同建物は,前記事務所のほか,同議員の住居として
も利用されていた。なお,前記各職員のうちH7は,G16議員の実
子である。
前記事務所においては政務調査活動が行われ,前記各職員もこれに
従事した。なお,G16議員の後援会活動は北海道釧路郡I2町I9
e-f所在の後援会事務所で,政党活動は民主党北海道第7区総支部
で行われた。
ウG16議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した(事務所費のうち事務所管理運営費については,灯油代金の2
分の1のみ政務調査費から充当した。)。
事務所費について
上記認定事実によれば,前記事務所の所在する建物の賃貸人は,G16議
員の実父であると認められるが,同議員は,実父は北海道釧路市I10に居
住して同居しておらず,年金生活をしている旨証言及び陳述(丙A民7の
3。以下,この項において同議員の証言及び陳述を併せて「証言等」とい
う。)をしており,これに沿う実父の住民票(丙A民7の1の3)を提出し
ているところ,同証言等に反する的確な証拠はないから,本件運用方針で政
務調査費を充当することができない一例である「議員と生計を一にする親族
所有の場合の事務所賃料」に当たらない。
もっとも,前記事務所の所在する建物がG16議員の住居としても利用さ
れていたことは前記認定のとおりであるところ,G16議員は,前記事務所
の所在する建物を実父から賃借するに当たり,事務所部分と住居部分の賃料
を3万5000円ずつとしたこと,上記建物の事務所部分と住居部分は物理
的にも機能的にも分離していたことから,事務所部分の賃料全額に政務調査
費を充当したと主張し,これに沿う証言等(丙A民7の3)をする。
検討するに,証拠(丙A民7の1の16)によれば,前記事務所は,住居
部分とは別々の玄関が設けられており,物理的にも機能的にも分離している
ことが認められる。また,住居部分に関する賃貸借契約書は提出されていな
いが,住居部分に関する領収証(丙A民7の1の4から15まで)が提出さ
れており,事務所部分に関しては,事務所状況報告書(甲23の2)の添付
資料(甲23の3)として平成22年4月分の事務所費3万5000円を実
父が領収した旨の領収証が添付されていることからすると,事務所部分と住
居部分に分けてそれぞれ実父から月額3万5000円で賃借した旨のG16
議員の証言等を排斥することは困難である。そして,前記事務所部分におい
ては,政務調査活動のみが行われ,政党活動及び後援会活動については別の
場所で行われていたことは前記認定のとおりである。
そうすると,前記事務所に係る事務所費全額及び事務所管理運営費のうち
灯油代金2分の1について政務調査費から充当したことについて,本件運用
方針に反する違法なものであるとはいえない。
人件費について
上記認定事実によれば,前記各職員のうちH7は,G16議員の実子で
あると認められるところ,同人は,北海道釧路市I10g丁目h番i号に
居住しており(丙A民7の2の14),本件全証拠を検討してみても,G
16議員がH7を扶養しているとか,生計を同一にしていると認めるに
足りる的確な証拠はない。
そして,前記事務所においては,政務調査活動のみが行われていたこ
とは前記認定のとおりである。
そうすると,前記事務所に係る職員2名の人件費全部について,政務調査
費から充当したことについて,本件運用方針に反する違法なものとはいえな
い。
17G17議員(整理番号21(民8))
前記前提事実に加え,証拠(甲24の1から3まで,丙A民8の1の1
から丙A民8の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG17議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イG17議員は,別紙4主張整理表「整理番号21」欄に対応する
「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所及び駐車場を賃借し,ま
た,同欄に記載のある個人1名を上記事務所において職員として雇用
した。
前記事務所においては,政務調査活動のみならず,政党活動及び後
援会活動が行われ,前記職員もこれらの活動に従事した。また,前記
駐車場は来客専用のものと来客兼用のものがあった。
ウG17議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
上記認定事実によれば,前記事務所においては,政務調査活動のみな
らず政党活動及び後援会活動が行われており,前記職員もこれらの活動
に従事したことが認められるから,同事務所に係る事務所費及び人件費
として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有
しない活動に係る経費や対価が含まれているものと推認される一般的,
外形的な事情があるということができ,また,事務所に付随する駐車場
についても同様のことがいえる。そして,事務所費(駐車場に係る賃借
料を含む。)及び人件費について,政務調査活動に係る経費や対価とそ
れ以外の活動に係る経費や対価とを明確に区分することができないか
ら,的確な反証がされない限り,事務所費及び人件費として支出された
もののうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運
用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当であ
る。
これに対して,G17議員は,後援会活動及び政党活動が全体の業務
に占める割合は10%であり,前記事務所における政務調査活動の割合
が9割であったと主張し,これに沿う陳述(丙A民8の3)をするが,
その業務実態に関して具体的な裏付けを欠くから,同議員の上記陳述は
たやすく採用することができず,他に前記事務所における政務調査活動
とそれ以外の活動の割合に関する的確な反証はない。
そうすると,前記事務所に係る事務所費及び人件費として支出された
もののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針
に反するものであるから違法であるというべきである。
18G18議員(整理番号22(民9))
前記前提事実に加え,証拠(甲25の1から4まで,丙A民9の1の1
から丙A民9の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG18議員は,民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された北
海道議会議員である。
イG18議員は,別紙4主張整理表「整理番号22」欄に対応する
「摘要」欄記載の住所地に所在する各事務所(本項においては,以
下,各事務所の所在地に応じて,それぞれ「札幌市内の事務所」,
「苫小牧市内の事務所」という。)を賃借し,また,同欄に記載のあ
る個人1名を,苫小牧市内の事務所において職員として雇用した。
ウ苫小牧市内の事務所においては,政務調査活動のみならず,後援会
活動が行われていた。なお,政党活動については,民主党北海道苫小
牧支部で行われていた。他方,札幌市内の事務所は,宿舎としても利用
された。
前記職員の雇用主は,G18議員の後援会の代表者であったが,同
人とG18議員の間には,前記職員を政務調査活動に使用し,その経
費を等分する旨の覚書が交わされている。
エG18議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を
支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調
査費を充当した。
札幌市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区の議員で
あるG18議員が宿舎としても利用したものであると認められるが,同事務
所が政務調査活動の拠点としての実態を有しないものであったことをうかが
わせる客観的な証拠はない。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札
幌市内の賃貸マンションの賃借料については,政務調査活動の拠点として継
続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応
じた額を充当することができるとされているところ,同議員による札幌市内
の事務所を政務調査活動の拠点として使用した日数は証拠上明らかではない
が,宿舎としての事務所の使用の実態が政務調査活動とそれ以外の活動に明
確に区分することができない場合であっても,改訂された本件運用方針の内
容等を踏まえて,政務調査費を充当することができる按分割合は3分の1と
は,札幌市内の事務所に係る事務所費に関してその3分の1を政務調査費を
充当したにとどまるから,同事務所費の支出の一部を政務調査費から充当し
たことについて,本件運用方針に反する違法なものであるとまでは認められ
ない。
苫小牧市内の事務所に係る事務所費及び人件費について
上記認定事実によれば,苫小牧市内の事務所においては,政務調査活動及
び後援会活動が行われ,政党活動は民主党北海道苫小牧支部で行われていた
ものと認められ,これに反する客観的な証拠はない。
また,前記職員の雇用主は,G18議員の後援会の代表者であるが,同人
とG18議員他との間で交わされた覚書の存在を考慮すると,前記職員が後
援会活動のみに従事していたと認めるに足りる的確な証拠はない。
そうすると,苫小牧市内の事務所における事務所費及び人件費について
は,政務調査活動と後援会活動に係る経費や対価が含まれており,その使用
実態や業務実態について政務調査活動に係る経費や対価と後援会活動に係る
経費や対価とを明確に区分することができないが,本件運用方針によると,
それぞれ2分の1を上限として政務調査費から支出されることが許されてい
るところ,同議員が事務所費及び人件費として支出したもののうち政務調査
費から充当した割合は上記の範囲内であるから,同議員が事務所費及び人件
費として政務調査費を充当したことについて本件運用方針に反する違法なも
のであるとはいえない(ただし,上記按分割合によって苫小牧市内の事務所
に係る事務所費及び人件費を按分すると違算があり,その限度で違法である
というべきである。)。
19G19議員(整理番号24(自11))
前記前提事実に加え,証拠(甲27の1から3まで,丙A自11の1の1
から丙A自11の4まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG19議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イG19議員は,別紙4主張整理表「整理番号24」欄に対応する
「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記
載のある個人3名を職員として雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動のみならず,政党活動及び後
援会活動も行われ,また,前記各職員も,政務調査活動のみならず,
政党活動及び後援会活動にも従事した。
ウG19議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を
支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調
査費を充当した。
上記認定事実によれば,前記事務所においては,政務調査活動のみならず
政党活動や後援会活動が行われており,前記各職員もこれらの活動に従事し
たことが認められるから,同事務所に係る事務所費及び人件費として支出さ
れたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に関す
る経費や対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情がある
ということができる。
ところで,事務所費については,本件運用方針によれば,政務調査事務
所と後援会等の事務所とを兼ねている場合には,使用領域(面積)によっ
て按分することができるとされているところ,G19議員は,前記事務所
の内部を仕切って,政務調査活動のための場所として約35㎡使用し,後
援会活動及び政党活動のための場所として約35㎡を使用したので,政務
調査活動による事務所費の按分割合は2分の1である旨陳述(丙A自11
の4)をしているところ,前記事務所の使用状況に関する客観的な証拠は
提出されていないが,同陳述が事務所の面積(21.97坪。丙A自12の
3)と整合する具体的なものであることに照らし,上記陳述の信用性をあ
ながち排斥することは困難である。そうすると,同議員が事務所費として
その使用実態に照らして算出した按分割合で政務調査費から充当したこと
について,本件運用方針に反する違法なものとまではいえない。
他方で,G19議員は,前記事務所における前記各職員の業務実態につい
て,政務調査活動は2分の1以上であり,後援会活動及び政党活動は2分の
1未満であった旨陳述するが,その具体的な裏付けはなく,たやすく採用す
ることはできない。そして,前記各職員の人件費(社会保険料を含む。以
下,この項において同じ。)については,その業務実態により政務調査活動
に係る経費や対価とそれ以外の活動に係る経費や対価とを明確に区分するこ
とができないから,的確な反証がされない限り,人件費として支出されたも
ののうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針
に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当であるところ,
前記で説示したところによれば,その按分割合に関する的確な反証がないか
ら,前記各職員に係る人件費として支出したもののうち3分の1を超えて政
務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法である
というべきである。
20G20議員(整理番号25(自12))
前記前提事実に加え,証拠(甲28の1,2,丙A自12の1の1から丙
A自12の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
アG20議員は,自由民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出され
た北海道議会議員である。
イG20議員は,別紙4主張整理表「整理番号25」欄に対応する
「摘要」欄記載の住所地に所在する各事務所(本項においては,以
下,各事務所の所在地に応じて,それぞれ「札幌市内の事務所」,
「釧路市内の事務所」という。)を賃借し,また,同欄に記載のある
個人6名を釧路市内の事務所において職員として雇用した。
札幌市内の事務所は,家具付きの賃貸住宅であり,宿舎としても利
用された。
ウ釧路市内の事務所においては,政務調査活動のみならず,政党活動
及び後援会活動が行われていた。
前記各職員の各雇用契約書には,いずれも就業場所の欄に釧路市内
の事務所の住所とともに「G20後援会事務所」との記載があるが,
仕事内容欄には「政務調査に係る調査補助及び後援会関係事務」との
記載がある。
エG20議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
札幌市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区の議員で
あるG20議員が宿舎としても利用したものと認められるが,同事務所が政
務調査活動の拠点として実態を有しないものであったことをうかがわせる客
観的な証拠はない(同事務所が家具付きの賃貸住宅であり,また,賃貸の目
的が居住用のみとされている(丙A自12の1の2)からといって,政務調
査活動の拠点として実態がなく,議員の政務調査活動と関連性を全く有しな
い経費に政務調査費を支出したことを推認させる一般的,外形的な事情であ
るとまではいうことができない。)。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札
幌市内の賃貸マンションの賃借料については,政務調査活動の拠点として継
続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応
じた額を充当することができるとされているところ,同議員による札幌市内
の事務所を政務調査活動の拠点として使用した日数は証拠上明らかでない
が,宿舎としての事務所の使用の実態が政務調査活動とそれ以外の活動に明
確に区分することができない場合であっても,改訂された本件運用方針の内
容等を踏まえて,政務調査活動を充当することができる按分割合は3分の1
同議員が札幌市内の事務所費に関してその3分の1を政務調査費から充当し
たことについて,本件運用方針に反する違法なものであるとまでは認められ
ない。
釧路市内の事務所に係る事務所費及び人件費について
上記認定事実によれば,釧路市内の事務所においては,政務調査活動のみ
ならず,政党活動及び後援会活動も行われ,前記各職員もこれらの活動に従
事したものと認められるから,同事務所に係る事務所費及び人件費として支
出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に
係る経費や対価が含まれているものと推認される一般的,外形的な事情があ
るということができ,事務所の使用実態や職員の業務実態により政務調査活
動に係る経費や対価とそれ以外の活動に係る経費や対価とを明確に区分する
ことも困難である。したがって,的確な反証がされない限り,事務所費及び
人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当された政務調査費
については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価す
るのが相当である。
これに対して,G20議員は,釧路市内の事務所における活動や前記各職
員の職務内容の割合について政務調査活動が2分の1であった旨主張し,こ
れに沿う陳述(丙A自12の3)をするが,同議員が陳述するところの前記
事務所における使用実態や職員の政務調査活動以外の関与の度合いに関する
具体的な裏付けを欠くからたやすく採用することができず,他に事務所費及
び人件費の按分割合に関する的確な証拠はない。
そうすると,釧路市内の事務所に係る事務所費及び人件費として支出した
もののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に
反する違法なものであるというべきである。
21G21議員(整理番号26(自13))
前記前提事実に加え,証拠(甲29の1から4まで,丙A自13の1の1
から丙A自13の4まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG21議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イG21議員は,別紙4主張整理表「整理番号26」欄に対応する
「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記
載のある個人2名を上記事務所において職員として雇用していた。
前記事務所の賃貸人は,G21議員の実父であるH8であった。
前記事務所においては,政務調査活動のみならず,政党活動及び後
援会活動も行われており,前記各職員もこれらの活動に従事した。
ウG21議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を
支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調
査費を充当した。
事務所費について
上記認定事実によれば,前記事務所の賃貸人は,G21議員の実父である
と認められるが,同議員は,実父の住所は北海道美唄市j条k丁目l番m号
に居住して同居しておらず,生計も別であった旨陳述し(丙A自13の
4),これに沿う住民票(丙A自13の3の1,丙A自13の3の2)を提
出しているところ,上記陳述に反する的確な証拠はないから,本件運用方針
で政務調査費を充当することができない一例である「議員と生計を一にする
親族所有の場合の事務所賃料」に当たらない。
もっとも,前記認定事実によれば,前記事務所では,政務調査活動のみな
らず政党活動及び後援会活動が行われていたものと認められるから,事務所
費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有し
ない活動に係る経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情
があり,また,事務所の使用実態により,政務調査活動に係る経費とそれ以
外の活動に係る経費とを明確に区分することができない。したがって,的確
な反証がされない限り,支出された経費のうち3分の1を超えて充当された
政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であ
ると評価するのが相当である。
これに対して,G21議員は,後援会活動は年10回程度の役員会,新春
の集いなどの行事の開催などであって準備期間等を含めて年間48日間程度
の作業であり,政党活動についても年2,3回程度の党支部役員会やポスタ
ーの配布等が主たる活動であって年間15日程度であったから,前記事務所
における政務調査活動とそれ以外の活動をそれぞれ2分の1として政務調査
費を支出した旨主張し,これに沿う陳述(丙A自13の4)をするが,同議
員の陳述するところの前記事務所における使用実態を裏付ける具体的な証拠
はないから,上記陳述はたやすく採用することができず,他に前記事務所に
おける事務所費の按分割合に関する的確な反証はない。
そうすると,前記事務所に係る事務所費として支出されたもののうち3分
の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであ
って違法であるというべきである。
人件費について
前記事務所で雇用されていたH42及びH43の雇用契約書が提出されて
おらず,また,H42の領収書(丙A13の2の1から丙A13の2の12
まで)の宛名には「G21と進む会」との記載があることが認められるが,
前記事務所では政務調査活動も行われていたことからすると,H42及びH
43が政務調査活動に従事しておらず,議員の政務調査活動と関連性を有し
ない活動に従事したことによる対価に政務調査費が充当されたことを推認さ
せる一般的,外形的な事情があるとまでいうことはできない。
もっとも,これらの職員は,政務調査活動のみならず,政党活動及び後援
会活動に従事していたことは前記認定のとおりであるから,前記各職員の人
件費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有
しない活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認される一般
的,外形的な事情があるということができ,また,その業務実態により政務
調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分することも
困難である。したがって,的確な反証がない限り,人件費として支出された
もののうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方
針に反する違法な政務調査費の支出であるということができるところ,G2
1議員は,前記事務所における前記各職員の業務実態について前記のとおり
陳述の上,政務調査活動に従事した割合が2分の1であった旨主張及び陳述
をするが,その業務実態に関して具体的な裏付けを欠いていることは前記の
とおりであってたやすく採用することはできず,他に人件費の按分割合に関
する的確な反証はない。
したがって,前記各職員に係る人件費として支出されたもののうち3分の
1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであっ
て違法であるというべきである。
22G22議員(整理番号27(民10))
前記前提事実に加え,証拠(甲30の1から5まで,丙A民10の1の1
から丙A民10の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG22議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イG22議員は,別紙4主張整理表「整理番号27」欄に対応する
「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記
載のあるH9を,平成23年1月から同年3月頃までH44を,いず
れも職員として上記事務所において雇用した。なお,上記事務所の使
用実態及び職員の業務実態については当事者間に争いがある。
ウ前記事務所の平成19年4月における賃貸借契約書の使用目的欄に
は「選挙事務所」と記載されている。また,G22議員が北海道議会
議長に提出した事務所状況報告書には,前記事務所が後援会活動と兼
用である旨の記載があり,平成23年9月時点において前記事務所の
入口には「後援会事務所」と表示した看板が設置されていた。
H9の雇用契約書には,就業場所について「G22議員事務所」,
仕事内容について「政務調査活動及び後援会活動の事務補助につい
て」との記載がある。
エG22議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
事務所費について
前記事務所の賃貸借契約書には,事務所の使用目的として「選挙事務所」
と記載があることが認められるが,同契約書は平成19年4月に作成された
ものであり,以後更新されているものと認められるから,契約書の使用目的
欄の記載をもって平成22年度においても前記事務所が選挙活動のみに使用
されており,政務調査活動と何ら関連性を有しない経費に政務調査費が充当
されたものと推認させる一般的,外形的な事情があるとまではいえない。
ところで,G22議員は,前記事務所において,政務調査活動及び政党活
動の拠点として使用していたと主張し,同旨の陳述(丙A民10の3)をす
る。しかし,H9の雇用契約書の仕事内容欄に「政務調査活動及び後援会活
動の事務補助」と記載されていること,G22議員が北海道議会議長に対し
て提出した事務所状況報告書には後援会事務所と併用している旨の記載があ
ること,平成22年度の終了から半年程度後の時点で前記事務所に後援会事
務所の看板が掲示されていたことからすると,前記事務所では後援会活動が
行われていたものと認められ,この認定に反する上記陳述はたやすく採用す
ることができない。そうすると,前記事務所では,政務調査活動のほか,後
援会活動及び政党活動が行われていたものと認められ,これらの活動に係る
経費として事務所費が支出されたものと認められる。
これに対して,G22議員は,後援会活動が行われていなかったことを前
提として,前記事務所における使用実態について,事務所の使用日数平均2
3日のうち政党活動が行われるのは5日以内であったので,政務調査活動を
10分の7の割合で按分して政務調査費を支出した旨主張し,これに沿う陳
述をする。しかしながら,上記陳述は,具体的な裏付けを欠いておりたやす
く採用することができない。
しかして,これまで説示したところによれば,前記事務所に係る事務所費
として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しな
い活動に係る経費が含まれているものと推認される一般的,外形的な事情が
あり,また,事務所の使用実態により政務調査活動に係る経費とそれ以外に
係る経費とに明確に区分することができないから,的確な反証がされない限
り,支出された経費のうち3分の1を超えて充当された政務調査費について
は,本件運用方針に反する違法なものであると評価するのが相当であるとこ
ろ,事務所費に関する按分割合に関して的確な反証はない。
したがって,前記事務所の事務所費として支出されたもののうち3分の
1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであっ
て違法であるというべきである。
人件費について
アH9の人件費について
前記事務所では,政務調査活動のほか,政党活動及び後援会活動が行わ
れていたことは前記で説示したとおりであり,H9は,その就業時間が午
前9時から午後5時までとされている(丙A民10の2の1)ことからす
ると,H9は,前記事務所の職員としてこれらの活動に従事していたもの
と認められる。そうすると,H9に対する人件費については,議員の政務
調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したことによる対価が含
まれているものと推認される一般的,外形的な事情があるといえる。
しかるところ,G22議員は,前記事務所では後援会活動が行われてい
なかったことを前提として,民主党北海道第三区総支部との間で,H9の
業務量に応じて,月額21万円の給与のうち5万円を同支部が支払う旨の
取決めをし,これに応じた按分割合で政務調査費を充当した旨主張し,こ
れに沿う陳述をする。確かに,H9の雇用契約書(丙A民10の2の1)
には「政務調査費充当分」として16万円と記載されていることが認めら
れるが,前記事務所における使用実態及びH9の職務の遂行状況に関する
具体的な裏付けがなく,同人の人件費については,上記契約書の記載に拠
って政務調査活動とそれ以外の活動に係る按分割合を認定することはでき
ず(なお,前記事務所で後援会活動が行われたと認められることは前記で
説示したとおりである。),他に同人の人件費の按分割合に関する的確な
証拠もない。
そうすると,H9の人件費に関しては,その業務実態を踏まえて政務調
査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分することが
できないから,人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて政務
調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法である
というべきである。
イH44の人件費について
前記認定事実によれば,H44の雇用期間は短期間であり,また,領収
書(丙A民10の2の2)によれば,月額報酬2万円が支払われているこ
とからすると,同人がパートで道政報告の配布及び発送業務などの政務調
査活動補助業務に専従した旨のG22議員の陳述の信用性を排斥すること
は困難であり,同人に関する人件費について,議員の政務調査活動と合理
的な関連性を有しない活動に従事したことによる対価が含まれているもの
と推認させる一般的,外形的な事情があるとはいえない。
そうすると,H44の人件費について,政務調査費から全額を充当した
ことについては,本件運用方針に反する違法なものとまではいえない。
23G23議員(整理番号28(自14))
前記前提事実に加え,証拠(甲31の1から4まで,丙A自14の1の1
から丙A自14の4まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG23議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イG23議員は,別紙4主張整理表「整理番号28」欄に対応する
「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記
載のある個人1名を職員として上記事務所において雇用した。
前記事務所の賃貸人は,G23議員の実子であるH10であった。
また,前記事務所においては,政務調査活動及び後援会活動が行わ
れ,前記職員もこれらの活動に従事した。なお,政党活動については自
民党札幌支部連合会西区連で行われた。
ウG23議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を
支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調
査費を充当した。
上記認定事実によれば,前記事務所の賃貸人は,G23議員の実子である
と認められるが,同議員は,実子は札幌市I11区内の別の場所に居住して
おり,同人と生計も同じではない旨の陳述(丙A自14の4)をし,これに
沿う住民票(丙A自14の2の1,丙A14の2の2)を提出しているとこ
ろ,この陳述に反する的確な証拠はないから,本件運用方針で政務調査費を
充当することができない一例である「議員と生計を一にする親族所有の場合
の事務所賃料」に当たらない。
ところで,前記事務所においては,政務調査活動及び後援会活動が行わ
れ,前記職員もこれらの活動に従事していたこと,政党活動については自民
党札幌支部連合会西区連で行われたことは前記認定のとおりである。
そうすると,前記事務所に係る事務所費及び人件費として支出されたもの
には,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に係る経費や対
価が含まれているものと推認される一般的,外形的な事情があり,また,政
務調査活動に係る経費や対価と後援会活動に係る経費や対価とを明確に区分
することは困難であるが,本件運用方針によれば,その2分の1を上限とし
て政務調査費を充当することが許される。しかるところ,同議員がした政務
調査費の支出は,いずれもこの範囲内であるから,事務所費及び人件費とし
て支出したもののうち政務調査費から充当した部分について,本件運用方針
に反する違法なものであるとはいえない。
24G24議員(整理番号29(民11))
前記前提事実に加え,証拠(甲32の1から3まで,丙A民11の1の1
から丙A民11の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG24議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イG24議員は,別紙4主張整理表「整理番号29」欄に対応する
「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記
載のある個人2名を職員として上記事務所において雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動とともに,政党活動及び後援
会活動が行われていた。
ウG24議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を
支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調
査費を充当した。
上記認定事実によれば,前記事務所においては,政務調査活動のみなら
ず,政党活動及び後援会活動が行われていたものと認められるから,同事務
所に係る事務所費及び人件費として支出されたものには,議員の政務調査活
動と合理的な関連性を有しない活動に係る経費や対価が含まれているものと
推認させる一般的,外形的な事情があるということができる。
この点について,G24議員は,前記事務所における活動のうち平成22
年4月から平成23年2月までは政務調査活動が2分の1を占め,同年3月
については後援会活動による事務所の使用が多かったため政務調査活動が3
分の1を占めており,また,前記各職員はいずれも政党活動に従事しておら
ず,業務実態からして政務調査活動に従事していた割合が4分の3であった
旨主張し,これに沿う陳述(丙A民11の3)をするが,同議員の陳述する
ところの事務所の使用実態や職員の業務実態を裏付ける具体的な証拠は提出
されておらず,たやすく採用することができない。
そして,前記事務所に係る事務所費及び前記各職員の人件費については,
事務所の使用実態や職員の業務実態により政務調査活動に係る経費や対価と
それ以外の活動に係る経費や対価とを明確に区分することは困難である。し
たがって,的確な反証がされない限り,事務所費及び人件費として支出され
たもののうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用
方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当であるとこ
ろ,事務所費及び人件費の按分割合に関する的確は反証はない。
したがって,事務所費及び人件費として支出されたもののうち3分の1を
超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違
法であるというべきである。
25G25議員(整理番号30(自15))
前記前提事実に加え,証拠(甲33の1から8まで,丙A自15の1の1
から丙A自15の4まで,証人G25)及び弁論の全趣旨によれば,以下の
事実が認められる。
アG25議員は,自由民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された
北海道議会議員である。
イG25議員は,別紙4主張整理表「整理番号30」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する各事務所(本項においては,以下,事務所
の所在地に応じて,それぞれ「札幌市内の事務所」,「名寄市内の事務
所」という。)を賃借し,また,同欄に記載のある個人2名を名寄市内の
事務所において職員として雇用した。
ウ前記各職員のうちH11は,G25議員が代表取締役を務めていた有限
会社J2を中心とする企業グループの事業を補佐する立場にもあり,同企
業グループに属する有限会社J3の取締役や有限会社J4の代表取締役も
務めている。前記各職員のうちH12は,前記有限会社J3の業務にも従
事していた。なお,前記企業グループの所在地は,名寄市内の事務所が入
居していた建物とは別である。
また,名寄市内の事務所が入居していた建物の別フロアには,自由民主
党の支部が入居していた。
エG25議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
オG25議員は,平成23年4月19日,北海道議会議員として任期満了
となった。
札幌市内の事務所に係る事務所費について
G25議員は,札幌市内の事務所についてはほとんど寝泊まりのみに利用
していた旨の証言をしているから,札幌市内の事務所を政務調査活動の拠点
として利用していたと認めることは困難である。これと異なる同議員の陳述
(丙A自15の4)は採用することができない。なお,証拠(丙A自15の
6)によれば,G25議員は,平成28年1月13日,多発性脳梗塞を発症
し,軽度の認知・記名能の低下を後遺している旨の診断を受けたことが認め
られるが,上記陳述に係る陳述書の作成及び上記証言は,いずれも脳梗塞発
症後にされたものであるから,同議員が上記の診断を受けたからといって陳
述と証言が異なる理由とはならない。また,H11は,G25議員の上記陳
述に沿う陳述書(丙A自15の5)を提出するが,同陳述はG25議員に対
する証人尋問実施後に提出されたものであり,反対尋問を経ていないもので
あるから,たやすく採用することができない。
したがって,札幌市内の事務所の費用の一部に対してされた政務調査費の
支出は,本件運用方針に反するものであり,その全額が違法となるというべ
きである。
名寄市内の事務所に係る事務所費について
G25議員は,前記各職員のうちH11が政党活動や後援会活動にも従事
し,H12が後援会活動に従事していた旨の証言をしているが,前記認定事
実によれば,政党支部が名寄市内の事務所が入居する建物の別のフロアにあ
ったことが認められるから,名寄市内の事務所の使用実態として政党活動が
行われ,同事務所の事務所費として,政務調査活動と合理的な関連性を有し
ない政党活動に係る経費にも政務調査費が支出されたものと推認される一般
的,外形的な事情があるとまではいえない。また,G25議員が平成23年
4月19日に北海道議会議員を任期満了となったことは前記認定のとおりで
あるが,同議員は,後援会事務所は名寄市内の事務所とは別の場所にあり,
北海道議会議員を引退するので後援会活動はほとんど行っていなかった旨の
証言をしており,この証言の信用性を排斥する的確な証拠はないから,名寄
市内の事務所において後援会活動が行われ,同事務所の事務所費として,政
務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に係る経費にも政務調査
費が支出されたものと推認させる一般的,外形的な事情があるとまではいえ
ない。
のみならず,H11及びH12が勤務していた企業が名寄市内の事務所と
は別の場所に存在している(甲33の6から8まで,証人G25)ことが認
められることからすると,名寄市内の事務所において企業活動が行われ,同
事務所費の事務所費として,政務調査活動と合理的な関連性を有しない企業
活動に係る経費にも政務調査費が支出されたものと推認させる一般的,外形
的事情があるとまではいえない。
そうすると,名寄市内の事務所では,政務調査活動のみが行われていたも
のと認められるから,同事務所の事務所費全額について政務調査費から支出
したことは,本件運用方針に反するものとまではいえない。
人件費について
前記各職員がG25議員の政務調査活動等を補佐する業務に従事した以外
に企業活動にも従事していたことは前記認定のとおりである。また,G25
議員は,前記各職員のうちH11は政党活動や後援会活動にも従事し,H1
2は後援会活動に従事したほか,H11については,名寄市内の事務所とは
別に設けられた後援会事務所において,G25議員の実子が立候補した名寄
市長選挙を支援する活動を行った旨の証言をする。そうすると,H11の職
務内容には,政務調査活動以外に,政党活動,後援会活動及び企業活動が混
在し,H12の職務内容には,政務調査活動以外に,政党活動及び企業活動
が混在しており,前記各職員の人件費には,議員の政務調査活動と合理的な
関連性を有しない活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認
させる一般的,外形的な事情があるということができる。
この点について,G25議員は,H12については名寄市内の事務所とは
別の場所で法人の業務に従事しており,H11については政務調査活動以外
の報酬として別途役員報酬を受け取っていたと主張する。確かに,証拠(丙
A15の3の3)によれば,H12は,有限会社J3から報酬を受領したこ
とが認められるから,H12に関する人件費に企業活動に関する報酬が含ま
れていたことを否定するだけの反証がされているということはできる。しか
し他方で,H11に関しては,上記主張を裏付ける証拠は提出されておら
ず,G25議員の陳述及び証言によっても,同人に関する具体的な業務実態
は明らかではなく(なお,H11の上記陳述は,同議員の尋問後に提出さ
れ,反対尋問を経ないものであるから,たやすく採用することはできないこ
とは前記のとおりである。),その人件費について企業活動に関する報酬が
含まれていることを否定するだけの反証はない。
そうすると,H12については,政務調査活動以外に後援会活動に関する
活動に従事しており,その人件費については,政務調査活動に係る対価と後
援会活動に係る対価とを明確に区分することができないから,本件運用方針
によれば,支出された人件費の2分の1を上限として政務調査費を充当する
ことが許されるところ,政務調査費から充当された割合は,上記の範囲内で
あるから,同議員が同人の人件費について政務調査費から支出した部分につ
いて本件運用方針に反する違法なものであるということはできない。他方,
H11については,政務調査活動以外にも,政党活動,後援会活動及び企業
活動に従事しており,その人件費については,政務調査活動に係る対価とそ
れ以外の活動に係る対価とを明確に区分することができないから,本件運用
方針の趣旨を踏まえると,その6分の1を超えて政務調査費から支出したこ
とについては違法であるというべきである。
26G26議員(整理番号31(自16))
前記前提事実に加え,証拠(甲34の1から3まで,丙A自16の1の1
から丙A自16の4まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG26議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イG26議員は,別紙4主張整理表「整理番号31」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に事務所を賃借し,また,同欄に記載のある個人5名
を上記事務所において職員として雇用した。
前記事務所の賃貸借契約書の賃借人欄には,「G26連合後援会会長H
13」の記載がある。
また,前記各職員のうちH45及びH46の給与に関する全ての領収証
並びにH47の領収証の一部には,G26議員の後援会が宛名ないし名宛
人として記載されている。
ウG26議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
事務所費について
上記認定事実によれば,前記事務所の賃貸借契約書には,G26議員の後
援会会長が賃借人である旨記載されていることが認められるところ,同議員
は,その経緯として,前記事務所は従前民間企業の旭川支店が置かれていた
物件であり,3分の2に相当する事務所と3分の1に相当する支店長室に仕
切られていたが,前者を後援会事務所及び政党事務所とする予定であったの
で,対外的には広いスペースを利用している後援会事務所の関係者を賃借人
とすることとした旨陳述(丙A自16の4)している。上記陳述は,前記事
務所の間取り図(丙A自16の3)により裏付けられた具体的なものであっ
て,その信用性を排斥することは困難であるから,上記賃貸借契約書の記載
をもって前記事務所で後援会活動のみが行われており,議員の政務調査活動
と合理的な関連性を有しない後援会活動のみに政務調査費が支出されたもの
と推認する一般的,外形的な事情があるとまではいえない。
そして,上記陳述及び間取り図によれば,前記事務所は賃借した一室が後
援会事務所及び政党事務所と政務調査活動の事務所に分けられていることが
認められるところ,本件運用方針によれば,政務調査事務所が後援会事務所
等を兼ねている場合には,その使用領域により事務所費を按分することとさ
れている。しかるところ,前記事務所は,間取り図によると全体の3分の1
であると認められるから,前記事務所の事務所費として3分の1を政務調査
費から支出したことについて,本件運用方針に反する違法なものであるとは
いえない。
人件費について
G26議員は,前記各職員が政務調査活動のみならず政党活動及び後援会
活動に従事していた旨陳述するところ,前記各職員のうち一部の者の給与に
関する領収証の宛名ないし名宛人がG26議員の後援会となっていることは
前記認定のとおりである。この点に関して,同議員からその経緯について具
体的な陳述等はないが,H45,H46及びH47が後援会活動のみに専従
していたと認めるに足りず,上記3名の職員が後援会活動のみに従事してお
り,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない経費に政務調査費が支
出されたと推認させる一般的,外形的な事情があるとまでいうことはできな
い。
そして,前記各職員が,政務調査活動のみならず政党活動及び後援会活動
にも従事していたものと認められるから,前記各職員に係る人件費として支
出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に
従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な
事情があり,その業務実態により,政務調査活動に係る対価とそれ以外の活
動に係る対価とを明確に区分することは困難であるから,的確な反証がされ
ない限り,人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当された
政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であ
ると評価するのが相当である。
これに対し,G26議員は,前記各職員の職務内容について,後援会活動
の補助は行事を行う際の案内状の発送などであり,政党活動の補助は年に3
日程度であったから,政務調査活動が占める割合が2分の1であったと主張
し,これに沿う陳述(丙A自16の4)をするが,その業務実態について具
体的な裏付けを欠くから,上記陳述をたやすく採用することができず,他に
前記各職員の人件費の按分割合に関する的確な反証はない。
そうすると,前記各職員の人件費として支出したもののうち3分の1を超
えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法
であるというべきである。
27G27議員(整理番号32(自17))
前記前提事実に加え,証拠(甲35の1から4まで,丙A自17の1の1
から丙A自17の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG27議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イG27議員は,別紙4主張整理表「整理番号32」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に事務所を賃借し,また,同欄に記載のある個人2名
を前記事務所において職員として雇用した。
前記事務所の賃貸人は,G27議員が代表取締役を務める有限会社J5
であった。
前記事務所においては,政務調査活動のみならず,政党活動及び後援会
活動も行われていた。
ウG27議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
上記認定事実によれば,前記事務所の賃貸人は,G27議員が代表取締役
を務める有限会社J5であると認められるが,本件運用方針においてそのこ
とを禁ずる定めはないから,本件運用方針において政務調査費を充当するこ
とができない例として定める「議員所有又は議員と生計を一にする親族所有
の場合の事務所賃料」を潜脱する目的で当該法人が設立されたなどの特段の
事情がない限り,事務所の賃貸人が当該議員が役員を務める法人であるから
といってその事務所の賃借料に対して支出された政務調査費の全額が違法で
あることを推認させる一般的,外形的な事情が存在するとまではいうことが
討してみても,有限会社J5が本件運用方針を潜脱する目的で設立されたな
どの特段の事情は見当たらないから,同議員が代表取締役を務める同会社が
賃貸人であることを理由として,前記事務所の事務所費を政務調査費から充
当することが違法である旨の原告の主張は採用することができない。
ところで,前記事務所においては,政務調査活動以外にも政党活動及び後
援会活動が行われていたことは前記認定のとおりであるところ,前記各職員
もこれらの活動に従事していたと認められるから,前記事務所に係る事務所
費及び人件費については,政務調査活動に加えて,政党活動及び後援会活動
に関わるものが混在し,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活
動に関する経費や対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事
情があるということができ,また,事務所の使用実態や職員の業務実態によ
り政務調査活動に係る経費や対価とそれ以外の活動に係る経費や対価とを明
確に区分することはできない。したがって,的確な反証がされない限り,事
務所費及び人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当された
政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であ
ると評価するのが相当である。
これに対し,G27議員は,前記事務所における後援会活動及び政党活動
はいずれも集会の企画,運営,後援会便りの作成配布などの一時的なもので
あったから,前記事務所における活動の割合は政務調査活動がその2分の1
を占めており,前記各職員は政務調査活動のみに従事しており,後援会活動
や政党活動は議員の親族やボランティアが行った旨主張し,これに沿う陳述
(丙A自17の3)をするが,上記陳述に係る前記事務所の使用実態や職員
の業務実態に関する具体的な裏付けを欠いており,たやすく採用することは
できず,他に事務所費及び人件費の按分割合に関する的確な証拠はない。
そうすると,前記事務所に係る事務所費及び前記各職員に係る人件費とし
て支出したもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件
運用方針に反する違法なものであるというべきである。
28G28議員(整理番号33(フ3))
前記前提事実に加え,証拠(甲36の1から5まで,丙Aフ3の1の1か
ら丙Aフ3の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ
る。
アG28議員は,無所属の北海道議会議員である。
イG28議員は,別紙4主張整理表「整理番号33」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に事務所(本項においては,以下「札幌市内の事務
所」という。)を設けたほか,北海道浦河郡I12町内及び北海道日高郡
I13町内にも自身の事務所(以下,本項においては,順に「I12町内
の事務所」,「I13町内の事務所」という。)を設けた。
G28議員は,同欄記載の各個人のうちH48をI13町内の事務所に
おいて,H49及びH50を札幌市内の事務所において,H51,H52
及びH53をI12町内の事務所において,職員として雇用した。
ウG28議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
札幌市内の事務所に係る事務所費について
G28議員は,無所属の議員であるところ,証拠(丙Aフ3の1の4)に
よれば,札幌市内の事務所は宿舎として利用されていないことが認められる
ほか,同所で後援会活動が行われたと認めるに足りる的確な証拠はない。そ
うすると,札幌市内の事務所において,政務調査活動以外の活動がされてお
り,その事務所費として支出したものに議員の政務調査活動と合理的な関連
性を有しない経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情は
見当たらないから,同事務所に係る事務所費全額を政務調査費から支出する
ことは,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
人件費について
ア札幌市内の事務所では,専ら政務調査活動が行われていたことは前記の
とおりであるから,同事務所で勤務していたH49及びH50の人件費に
ついて,その全額を政務調査費から充当することは,本件運用方針に反す
る違法なものであるとはいえない。
イまた,G28議員は,I12町内の事務所は主として後援会活動を行っ
ていたが,H51,H52及びH53については,臨時職員として,同議
員が地域の視察や意見交換,意見聴取等の際の運転業務などに従事した旨
陳述(丙Aフ3の3)するところ,H51については平成22年11月分
及び同年12月分の領収証(丙Aフ3の2の41,丙Aフ3の2の4
2),H52については平成22年7月分及び同年8月分の領収証(丙A
フ3の2の43,丙Aフ3の2の44。ただし書には「アルバイト代とし
て」との記載がある。),H53については平成23年1月分から同年3
月分までの領収証(丙Aフ3の2の45から丙Aフ3の2の47まで)が
提出されていること,I12町内の事務所の事務所費については政務調査
費から支出されていないことに照らすと,これらの職員が政務調査活動の
補助業務として臨時で雇用された者である旨の上記陳述の信用性を排斥す
ることは困難である。したがって,これらの職員についての人件費につい
て,政務調査費から全額を支出したことについては,本件運用方針に反す
る違法なものであるとはいえない。
ウ他方,H48は,I13町内の事務所において,政務調査活動以外に後
援会活動にも従事していたことが認められる(丙Aフ3の3,弁論の全趣
旨)から,同人の人件費については,議員の政務調査活動と合理的な関連
性を有しない活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認さ
せる一般的,外形的な事情があるということができ,また,その業務実態
により政務調査活動に係る対価と後援会活動に係る対価とを明確に区分す
ることは困難である。したがって,的確な反証がされない限り,人件費と
して支出されたもののうち2分の1を超えて充当された政務調査費につい
ては,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するの
が相当である。
これに対し,G28議員は,H48の職務内容のうち政務調査活動が7
割を占めていた旨主張し,これに沿う陳述(丙Aフ3の3)をするが,そ
の陳述に係るH48の業務実態に関する具体的な裏付けを欠いているか
ら,たやすく採用することができず,他に同人に関する人件費についての
按分割合に関する的確な反証はない。
したがって,H48の人件費として支出したもののうち2分の1を超え
て政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであるから違
法であるというべきである。
29G29議員(整理番号34(公2))
前記前提事実に加え,証拠(甲37の1,2,丙B2の1から丙B2の4
まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
アG29議員は,公明党に所属する北海道議会議員である。
イG29議員は,別紙4主張整理表「整理番号34」欄に対応する「摘
要」欄記載の個人を職員として雇用した。
ウG29議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
以上を前提に検討すると,前記職員の雇用契約書(丙B2の4)によれ
ば,仕事内容として,パソコン入力,調査研究補助,図書検索と記載されて
いることが認められるから,同職員が政務調査活動に従事していたことがう
かがわれるが,他方で,G29議員は,政党活動の補助者の賃金は政党支部
から支払われ,後援会活動の補助者は都度臨時で雇い入れており,前記職員
は政務調査活動に専従していたと主張しながら,これを裏付ける証拠や陳述
書を提出するなど具体的な説明をしていない。このような事情に加え,G2
9議員が公明党に所属する北海道議会議員であることをも踏まえれば,前記
職員が,政務調査活動以外にも,政党活動や後援会活動に従事し,議員の政
務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したことによる対価に政
務調査費から充当されたことを推認させる一般的,外形的な事情があるとい
うことができ,この推認を妨げるような反証もない。
そして,前記職員の業務実態として,政務調査活動に係る対価とそれ以外
の活動に係る対価とを明確に区分することは困難であるから,人件費として
支出されたもののうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,
本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当で
あり,他にこの認定を覆す的確な反証はない。
30G30議員(整理番号35(民12))
前記前提事実に加え,証拠(甲38の1から3まで,丙A民12の1の1
から丙A民12の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG30議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イG30議員は,別紙4主張整理表「整理番号35」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に事務所及び駐車場を賃借し,また,同欄に記載のあ
る個人3名を上記事務所において職員として雇用した。
G30議員は,平成22年4月1日,後援会活動業務については,前記
事務所とは別の事務所で行う旨の異動届を提出した。
ウG30議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
以上を前提として検討すると,G30議員は,後援会活動は自宅で行って
おり,政党活動については民主党北海道第10区総支部で行っているため,
前記事務所では政務調査活動のみが行われており,また,前記事務所の職員
も政務調査活動のみに専従していた旨陳述する(丙A民12の3)ところ,
上記陳述は,「資金管理団体届出事項の異動届」(丙A民12の1の5)に
より裏付けられており,また,前記事務所で政党活動が行われ,政務調査活
動と合理的な関連性を有しない政党活動に係る経費が前記事務所の事務所費
に含まれていることを推認させる一般的,外形的な事情を認めるに足りる証
拠はない。
また,前記各職員の就業場所が前記事務所であったことからすると,前記
各職員が政務調査活動以外の活動に従事していたと認めるに足りる的確な証
拠もない。
そうすると,G30議員が前記事務所に係る事務所費及び前記各職員の人
件費の全額について政務調査費から支出したことについては,本件運用方針
に反する違法なものであるとはいえない。
31G31議員(整理番号36(自18))
前記前提事実に加え,証拠(甲39の1から3まで,丙A自18の1の1
から丙A自18の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG31議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イG31議員は,別紙4主張整理表「整理番号36」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に事務所を賃借し,また,同欄に記載のある個人2名
を上記事務所において職員として雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動のみならず政党活動及び後援会活
動が行われ,前記各職員もこれらの活動に従事した。
ウG31議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
上記認定事実によれば,前記事務所においては,政務調査活動のみならず
政党活動や後援会活動も行われており,前記各職員もこれらの活動に従事し
たことが認められるから,同事務所に係る事務所費及び前記各職員の人件費
として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しな
い活動に関する経費や対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的
な事情があるということができ,また,事務所の使用実態や職員の業務実態
により,政務調査活動に係る経費や対価とそれ以外の活動に係る経費や対価
とを明確に区分することは困難である。したがって,的確な反証がされない
限り,事務所費及び人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充
当された政務調査費は,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であ
ると評価するのが相当である。
これに対してG31議員は,後援会活動及び政党活動は必要に応じて年に
数日程度しか行われず,特に政党活動は1年のうち数日程度の事務しか行わ
れなかったから,前記事務所における政務調査活動の割合が75%であり,
また,後援会活動の補助が行事に関する案内状の作成程度であり,後援会活
動が行われるのは選挙活動が行われる3か月程度であったから,前記各職員
の職務における政務調査活動の割合はいずれも40%であったと陳述する
(丙A自18の3)が,いずれも事務所の使用実態及び職員の業務実態に関
して具体的な裏付けを欠いており,たやすく採用することができず,他に事
務所費及び人件費の按分割合に関する的確な反証はない。
したがって,前記事務所に係る事務所費及び前記各職員の人件費として支
出されたもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運
用方針に反するものであるから違法であるというべきである。
32G32議員(整理番号37(自19))
前記前提事実に加え,証拠(甲40の1から3まで,丙A自19の1の1
から丙A自19の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG32議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イG32議員は,別紙4主張整理表「整理番号37」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に事務所を賃借し,また,同欄に記載のある個人2名
を同事務所において職員として雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動のみならず後援会活動も行われて
いた。政党活動については,自由民主党北海道支部連合会及び自由民主党
白老支部支部長宅で行われた。
ウ前記各職員のうちH54は,常勤の職員であり,政務調査活動とともに
少なくとも後援会活動に従事したが,H54の雇用契約書には,雇用者と
して「自由民主党北海道胆振総合振興局第一支部支部長G32」,従事す
る職務として「議員の政務調査活動に関する業務及び政党活動に関する補
助」との記載がある。
前記各職員のうちH55の雇用契約書には,勤務時間の記載がなく,賃
金欄には日額5000円との記載があるほか,雇用者として「北海道議会
議員G32事務所代表G32」との記載や,従事する職務として「議員の
政務調査活動に関する運転業務」との記載がある。
エG32議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
事務所費について
上記認定事実によれば,前記事務所では政務調査活動のみならず後援会活
動が行われていたと認められる(なお,G32議員は,政党活動については
自由民主党北海道支部連合会及び自由民主党白老支部支部長宅で行っていた
旨陳述しており(丙A自19の3。なお,同陳述書では,前記事務所では年
に数日程度政党活動も行われたかのような部分もあるが,その直後に「この
事務所を政党活動に使用することはありませんでした。」との記載があるか
ら,上記部分は誤記と認める。),これに反する的確な証拠はない。)か
ら,前記事務所費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的
な関連性を有しない後援会活動に関する経費も含まれているものと推認され
る一般的,外形的な事情があるということができ,また,事務所の使用実態
により政務調査活動に係る経費と後援会活動に係る経費とを明確に区分する
ことは困難であるから,的確な反証がされない限り,支出された経費のうち
2分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する
違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対し,G32議員は,前記事務所では政務調査活動のほか年に数日
程度の後援会活動を行っていたので,前記事務所の使用実態としては政務調
査活動が3分の2を占めていた旨陳述するが,前記事務所における使用実態
に関する具体的な裏付けを欠いており,たやすく採用することができず,他
に前記事務所の按分割合に関する的確な反証はない。
そうすると,前記事務所の事務所費として支出したもののうち2分の1を
超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違
法であるというべきである。
人件費について
ア前記事務所では常勤職員としてH54が雇用されていたが,同人の雇用
契約書には,政務調査活動以外にも政党活動に関する補助業務が含まれる
旨記載され,また,「自由民主党北海道胆振総合振興局第一支部支部長」
の肩書きでG32議員がH54を雇用していると認められるから,H54
は,前記事務所で行われていた政務調査活動及び後援会活動のみならず,
政党支部等で政党活動の補佐にも従事しており,その人件費には政務調査
活動と合理的な関連性を有しない活動に係る対価が含まれているものと推
認される一般的,外形的な事情があるということができる。
これに対し,G32議員は,H54は政党活動の補助業務には従事して
いない旨陳述するが,上記で指摘した雇用契約書の記載に照らしてたやす
く採用することができない。
そして,H54に係る人件費については,その業務実態を踏まえて政務
調査活動に係る経費とそれ以外の活動に係る経費とを明確に区分すること
ができないから,人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充
当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費
の支出であるというべきところ,これに反する的確な反証はない。
イ他方,H55に関して,G32議員は,政務調査活動のための運転手と
して臨時に雇用した者である旨陳述しているところ,雇用契約書の従事す
る職種の記載,勤務時間の記載はなく,賃金が日額で記載されていること
からすると,上記陳述の信用性を排斥することはできない。
そうすると,H55の人件費について政務調査費から全額充当したこと
は,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
33G33議員(整理番号38(民13))
前記前提事実に加え,証拠(甲41の1から3まで,丙A民13の1の1
から丙A民13の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG33議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イG33議員は,別紙4主張整理表「整理番号38」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に事務所を賃借した。
前記事務所においては,政務調査活動及び後援会活動が行われた。な
お,政党活動については,民主党北海道第10区総支部で行われた。
ウG33議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
上記認定事実によれば,前記事務所では,政務調査活動及び後援会活動が
行われていたものと認められる(なお,政党活動については民主党北海道第
10区総支部で行われたものと認められ,これに反する的確な証拠はな
い。)から,前記事務所に係る事務所費には,議員の政務調査活動と合理的
な関連性を有しない後援会活動に係る経費が含まれているものと推認させる
一般的,外形的な事情があり,また,事務所の使用実態により,政務調査活
動に係る経費と後援会活動に係る経費とを明確に区分することが困難である
から,支出された経費のうち2分の1を超えて充当された政務調査費は,本
件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当であ
る。
これに対して,G33議員は,後援会活動については空知農民政治力結集
連絡会議で行っており,前記事務所で行われることは少なかったので,前記
事務所では政務調査活動が5分の4を占めていた旨主張し,これに沿う陳述
(丙A民13の3)をするが,前記事務所における後援会活動の実態に関す
る具体的な裏付けを欠いているから,たやすく採用することができず,他に
事務所費の按分割合に関する的確な反証はない。
したがって,前記事務所の事務所費として支出したもののうち2分の1を
超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違
法であるというべきである。
34G34議員(整理番号39(自20))
前記前提事実に加え,証拠(甲42の1から4まで,丙A自20の1の1
から丙A自20の5まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG34議員は,自由民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された
北海道議会議員である。
イG34議員は,別紙4主張整理表「整理番号39」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する事務所(本項においては,以下「札幌市内
の事務所」という。)を賃借したほか,北海道中川郡I14町内に事務所
を設けた(本項においては,以下「I14町内の事務所」という。)。ま
た,G34議員は,I14町内の事務所において同欄記載の各個人のうち
H15及びH16を職員として雇用した(なお,同欄記載の各個人のうち
H56及びH57の雇用実態の有無については後に検討する。)。
札幌市内の事務所の賃貸人は,G34議員の親族である。
H15及びH16は,I14町内の事務所で政務調査活動以外に政党活
動及び後援会活動にも従事した。
ウG34議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
札幌市内の事務所費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区の議員で
あるG34議員が宿舎としても利用したものと認められるが,同事務所が政
務調査活動の拠点としての実態を有しないものであったことをうかがわせる
客観的証拠はない。なお,原告は,札幌市内の事務所の賃貸人が同議員の親
族であることを問題視するようであるが,同議員が同事務所の賃貸人と生計
を一にするものとは認められないから,本件運用方針に反するものとはいえ
ない。
しかるところ,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としてい
る札幌市内の賃貸マンションの賃料については,政務調査活動の拠点として
使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応じた額
を充当することができるものとされているところ,同議員による札幌市内の
事務所を政務調査活動の拠点として使用した日数は証拠上明らかではない
が,宿舎としての事務所の使用実態が政務調査活動とそれ以外の活動に明確
に区分することができない場合であっても,改訂された本件運用方針の内容
等を踏まえて,政務調査費を充当することができる按分割合は3分の1とす
幌市内の事務所に係る事務所費に関してその3分の1を政務調査費から支出
したことについて,本件運用方針に反する違法なものであるとは認められな
い。
人件費について
アH15及びH16の人件費(同人らについて生じたと考えられる社会保
険料及び労働保険料(別紙4主張整理表「整理番号39」欄に対応する
「摘要」欄記載のもの)を含む。)
上記認定事実によれば,H15及びH16は,I14町内の事務所で政
務調査活動以外に後援会活動及び政党活動に従事していたことが認められ
ることからすると,同人らの人件費については,政務調査活動に係る対価
とそれ以外の活動に係る対価が混在しており,議員の政務調査活動と合理
的な関連性を有しない対価が含まれているものと推認させる一般的,外形
的な事情があるということができ,その業務実態により政務調査活動に係
る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分することはできないか
ら,人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当された政務
調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出である
と評価するのが相当である。
これに対して,G34議員は,上記2名の職員について,後援会活動の
補助として,新年交礼会や親睦のためのパークゴルフ大会の運営などに従
事し,政党活動の補助として,ポスターや広報誌の配布,政党支部にかか
る党員名簿の整理や会計事務などに従事したのであるから,上記2名の活
動実態として政務調査活動が2分の1であった旨主張し,これに沿う陳述
(丙A自20の5)をするが,前記各職員の業務実態に関する具体的な裏
付けを欠いており,たやすく採用することができず,他に人件費の按分割
合に関する的確な反証はない。
したがって,上記2名の職員の人件費として支出されたもののうち3分
の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するもので
あって違法であるというべきである。
イH56及びH57の人件費について
原告は,上記2名の職員について雇用実態が明らかではない旨主張する
ので,以下検討する。
確かに,証拠(甲42の4)によれば,G34議員が北海道議会議長に
対して提出した雇用状況報告書には,上記2名に関する記載がないことが
認められる。しかし,証拠(丙A自20の2の3から丙A自20の2の6
まで)によれば,上記2名の職員は,資料整理や自動車運転業務などの短
期間の業務に対する対価として,平成22年9月と同年12月の2回にわ
たって,それぞれ月額3万円ないし5万円が支払われていると認められる
ところ,G34議員は,これらの職員について,忙しい時に臨時に雇用し
た者であり,政務調査活動の補助のみに従事してもらった旨の陳述をして
おり,支払われた賃金額や領収証に記載された業務内容に照らすと,上記
陳述の信用性を排斥することは困難である。
そうすると,上記2名の職員について雇用実態がなく,議員の政務調査
活動と合理的な関連性を有しない人件費に政務調査費を充当したことを推
認させる一般的,外形的な事情があるということはできないし,また,同
人らが政務調査活動以外の活動にも従事しており,政務調査活動以外の活
動に係る対価に政務調査費を充当したことを推認させる一般的,外形的な
事情があるとも認め難いから,同人らの人件費に対して政務調査費から全
額が支出されたことについて,本件運用方針に反する違法なものであると
はいえない。
35G35議員(整理番号40(民14))
前記前提事実に加え,証拠(甲43の1から4まで,丙A民14の1の1
から丙A民14の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG35議員は,民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された北海
道議会議員である。
イG35議員は,別紙4主張整理表「整理番号40」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に各事務所(本項においては,その所在地に応じて,
それぞれ「札幌市内の事務所」,「士別市内の事務所」という。)を賃借
し(なお,士別市内の事務所は,同議員のほか,H58士別後援会,民主
党北海道第6区総支部が共同して賃借した。),また,同欄に記載のある
個人1名を士別市内の事務所において職員として雇用した。
ウ士別市内の事務所の賃貸人は,G35議員が取締役を務める株式会社J
6であった。士別市内の事務所は,H58衆議院議員の後援会事務所,民
主党北海道第6区総支部の事務所との兼用であり,政務調査活動のみなら
ず,政党活動及び後援会活動が行われた(なお,前記職員が政務調査活動
及び後援会活動以外に政党活動にも従事したことについては当事者間に争
いがある。)。
他方,札幌市内の事務所は,宿舎としても利用された。
エG35議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
札幌市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区の議員で
あるG35議員が宿舎としても利用したものと認められるが,同事務所が政
務調査活動の拠点としての実態を有しないものであったことをうかがわせる
客観的証拠はない。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札
幌市内の賃貸マンションの賃借料については,政務調査活動の拠点として継
続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応
じた額を充当することができるとされているところ,同議員による札幌市内
の事務所を政務調査活動の拠点として使用した日数は証拠上明らかではない
が,宿舎としての事務所の使用の実態が政務調査活動とそれ以外の活動に明
確に区分することができない場合であっても,改訂された本件運用方針の内
容等を踏まえて,政務調査費を充当することができる按分割合は3分の1と
しかるところ,同議員は,札幌市内の事務所に係る事務所費のうち2分の
1について政務調査費から支出している。したがって,同事務所の事務所費
として支出したもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,
本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
士別市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,士別市内の事務所の賃貸人は,G35議員が取締
役を務める株式会社J6であると認められるが,本件運用方針においてその
ことを禁ずる定めはないから,本件運用方針において政務調査費を充当する
ことができない例として定める「議員所有又は議員と生計を一にする親族所
有の場合の事務所賃借料」を潜脱する目的で当該法人が設立されたなどの特
段の事情がない限り,事務所の賃貸人が当該議員が役員を務める法人である
からといって,その事務所の賃借料に対して支出された政務調査費の全額が
違法であることを推認させる一般的,外形的な事情が存在するということが
討してみても,株式会社J6が本件運用方針を潜脱する目的で設立されたな
どの特段の事情は見当たらないから,同議員が取締役を務める会社が賃貸人
であることを理由として,前記事務所の事務所費に政務調査費を充当するこ
とが違法である旨の原告の主張は採用することができない。
ところで,上記認定事実によれば,士別市内の事務所は,衆議院議員の後
援会事務所及び民主党北海道第6区総支部の事務所として兼用されたことが
認められるところ,G35議員は,それぞれの各業務の量やスペース等を考
慮し,H58衆議院議員,民主党北海道第6区総支部及びG35議員との間
で,1室の賃料月額5万円のうち2万円を同議員が支払うことを約したが,
同議員が負担する2分の1を同議員の後援会が負担することとして,残額を
政務調査費に充当した旨の陳述をする。G35議員が陳述するところによっ
ても,H58衆議院議員の後援会事務所,民主党北海道第6区総支部及びG
35議員の政務調査事務所のそれぞれの使用実態に関して裏付けを欠いてい
ると指摘せざるを得ないが,それぞれの使用実態を明確に区分することがで
きない場合であっても,本件運用方針の趣旨に照らせば,事務所全体の賃料
のうち4分の1を上限として政務調査費を充当することは違法であるとまで
はいえない。しかるところ,G35議員は,士別市内の事務所に係る事務所
費のうち20%を政務調査費から支出したから,結局のところ,その支出が
本件運用方針に反するものであるとまではいえない。
人件費について
士別市内の事務所では,政務調査活動のみならず,H58衆議院議員の後
援会活動,政党活動及び後援会活動が行われていたことは前記のとおりであ
るから,同事務所に勤務していた前記職員がH58衆議院議員の後援会活動
を除くこれらの活動に従事しており,前記職員の人件費として支出されたも
のには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したこ
とによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情がある
ということができ,また,業務実態により政務調査活動に係る対価とそれ以
外の活動に係る対価とを明確に区分することができないから,的確な反証が
されない限り,人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当さ
れた政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出
であると評価するのが相当である。
これに対して,G35議員は,前記職員は政務調査活動以外に後援会活動
に従事し,その業務実態として政務調査活動が5分の3を占めていた旨主張
し,これに沿う陳述をするが,政務調査活動に従事する事務所の一室の一区
画で同議員が所属する民主党の政党支部があることからすると,同職員が政
党活動に関する業務に従事しておらず,そのための対価が前記職員の人件費
に含まれることについて的確な反証があるとはいえず,また,それぞれの業
務実態に関して具体的な裏付けを欠くから,上記陳述はたやすく採用するこ
とができず,他に前記職員の人件費の按分割合に関する的確は反証はない。
したがって,前記職員に関する人件費として支出されたもののうち3分の
1を超えて政務調査費から充当することは,本件運用方針に反するものであ
って違法であるというべきである。
36G36議員(整理番号41(自21))
前記前提事実に加え,証拠(甲44の1から3まで,丙A自21の1の1
から丙A自21の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG36議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イG36議員は,別紙4主張整理表「整理番号41」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に事務所(以下,便宜上,本項において「政務調査事
務所」という。)を賃借し,同欄に記載のある個人8名を前記事務所にお
いて職員として雇用した。
後援会活動は,北海道紋別市I15町n丁目o番p号所在の事務所で行
われ,政党活動については,同市I16町q丁目r番s号所在の自由民主
党紋別支部で行われた。
ウ前記各職員のうちH59及びH60は,常勤の職員であったが,H59
の雇用契約書には,仕事内容として「政務調査に係る調査補助及び後援会
関係事務」と記載され,H60の雇用契約書には,仕事内容として「政務
調査に係る調査補助及び関係書類の作成」と記載されている。
前記各職員のうちH59は,政務調査活動のみならず後援会活動にも従
事した。
なお,同議員は,上記職員2名を除く6名の職員に関して政務調査業務
に関する実績表(勤務時間数,うち政務調査業務に従事した時間数,政務
調査業務内容が記載されている。)を作成した上,勤務実績に時給800
円で換算した金額を人件費として上記6名の職員に支給した。
エG36議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
上記認定事実によれば,G36議員が雇用したH59及びH60を除く6
名の職員のうち,H61以外の5名については,臨時の職員であり,また,
それぞれの職員が従事した政務調査活動に関する実績表が作成され,それに
応じた人件費が支払われていること,上記実績表には,勤務時間数,政務調
査活動に従事した時間数,政策調査業務内容が記載されていることが認めら
れる。そして,G36議員は,これらの臨時職員について,H61を除く5
名の臨時職員については政務調査活動に従事してもらい,H61については
1か月の勤務時間合計49時間のうち36時間は政務調査活動に,13時間
については個人的な用事のために送迎してもらった旨陳述する。上記陳述
は,実績表に基づいた具体的なものであり,その信用性を排斥することはで
きない。
また,上記認定事実によれば,常勤職員であるH59の雇用契約書の仕事
内容欄には「政務調査に係る調査補助及び後援会関係事務」と,同じく常勤
職員であるH60の雇用契約書の仕事内容欄には「政務調査に係る調査補助
及び関係書類の作成」と記載されている。そして,G36議員は,H59に
ついては政務調査活動のほか必要に応じて後援会事務所で後援会活動の補助
を行っており,H60については政務調査活動の補助に専従した旨陳述する
ところ,上記陳述は,上記の雇用契約書の仕事内容欄の記載と整合する具体
的なものである。そして,上記認定事実によれば,同議員については,政務
調査事務所とは別に同議員に係る後援会事務所及び政党活動に係る民主党紋
別支部の事務所がそれぞれ設けられていることが認められることからする
と,政務調査事務所で後援会活動や政党活動が行われ,事務所費として支出
されたものには政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に係る経費が
含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるとはいえない。
しかるところ,G36議員は,H59については後援会活動を行っていた
ことを踏まえてその人件費として支出されたもののうち2分の1について政
務調査費を充当し,H61は勤務実績に基づいて政務調査活動に係る割合を
按分し,その余の職員及び政務調査事務所の事務所費についてはその全額を
政務調査費から支出しているところ,これらの支出は,上記で説示したとこ
ろによれば,本件運用方針に反する違法なものであるとは認められない。
37G37議員(整理番号42(民15))
前記前提事実に加え,証拠(甲45の1から3まで,丙A民15の1の1
から丙A民15の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG37議員は,民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された北海
道議会議員である。
イG37議員は,別紙4主張整理表「整理番号42」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に各事務所(本項においては,各事務所の所在地に応
じて,以下,それぞれ「札幌市内の事務所」,「旭川市内の事務所」とい
う。)を設け,また,同欄に記載のある個人6名を旭川市内の事務所にお
いて職員として雇用した。
札幌市内の事務所の所有者は,G37議員と生計を一にするG37議員
の妻であり,同議員は,同事務所を宿舎としても利用していた。他方,旭
川市内の事務所には「G37政務事務所」の看板が掲げられており,同事
務所では,政務調査活動及び後援会活動が行われた。なお,政党活動につ
いては,民主党北海道第6区総支部で行われた。
ウG37議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
札幌市内の事務所に係る管理運営費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区の議員で
あるG37議員が宿舎としても利用していることが認められるが,同事務所
が政務調査活動の拠点として実態を有しないものであったことをうかがわせ
る客観的な証拠はない。
原告は,札幌市内の事務所の所有者がG37議員の妻であることを理由と
して,同事務所の管理運営費に政務調査費を充当することは違法である旨主
張するが,本件運用方針においては,生計を一にする親族所有の場合の事務
所賃料に政務調査費を充当することはできないが,管理運営費については政
務調査費を充当することができる旨定めているから,宿舎としても利用され
ている札幌市内の事務所の管理運営費に政務調査費を充当したとしても,本
件運用方針に反するものであるとまではいえない。
そして,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札幌
市内の賃貸マンションの賃借料については,政務調査活動の拠点として使用
していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応じた額を充
当することができるとされているところ,G37議員の陳述(丙A民15の
3)するところによっても,札幌市内の事務所を政務調査活動の拠点として
使用した日数は明らかではないが,宿舎としての使用実態が政務活動とそれ
以外の活動に明確に区分することができない場合であっても,改訂された本
件運用方針の内容等を踏まえて,政務調査費を充当することができる按分割
る。
しかるところ,同議員は,札幌市内の事務所に係る管理運営費のうち4
0%について政務調査費から支出している。したがって,札幌市内の事務所
に係る管理運営費として支出したもののうち3分の1を超えて政務調査費を
充当することは,本件運用方針に反するものであって違法というべきであ
る。
旭川市内の事務所に係る事務所費及び人件費について
前記認定事実によれば,旭川市内の事務所では,政務調査活動のみならず
後援会活動が行われていたことが認められる(なお,政党活動については,
民主党北海道第6区総支部で行われており,これに反する的確な証拠はな
い。)から,同事務所に勤務する6名の職員もこれらの活動に従事している
ものと推認することができ,同事務所に係る事務所費及び前記各職員の人件
費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有し
ない後援会活動に係る経費や対価が含まれているものと推認させる一般的,
外形的な事情があり,また,事務所の使用実態や職員の業務実態により政務
調査活動に係る経費や対価と後援会活動に係る経費や対価とを明確に区分す
ることができない。したがって,的確な反証がない限り,事務所費及び人件
費として支出されたもののうち2分の1を超えて充当された政務調査費につ
いては,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するの
が相当である。
これに対して,G37議員は,後援会活動はほとんど自宅においてされて
いたが,「G37政務事務所」の看板が設置されていたことに鑑みて政務調
査活動の按分割合を5分の4とした旨主張し,これに沿う陳述をするが,事
務所における使用実態に関する具体的な裏付けを欠いており,上記陳述をた
やすく採用することができない。
したがって,旭川市内の事務所に係る事務所費及び人件費として支出され
たもののうち2分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針
に反するものであって違法であるというべきである。
38G38議員(整理番号43(民16))
前記前提事実に加え,証拠(甲46の1から4まで,丙A民16の1の1
から丙A民16の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG38議員は,民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された北海
道議会議員である。
イG38議員は,別紙4主張整理表「整理番号43」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に各事務所(本項においては,各事務所の所在地に応
じて,それぞれ「札幌市内の事務所」,「I17町内の事務所」とい
う。)を賃借し,また,同欄に記載のある各個人のうちH62を札幌市内
の事務所において,H63及びH64をI17町内の事務所において,そ
れぞれ職員として雇用した。
I17町内の事務所においては,政務調査活動及び後援会活動が行わ
れ,同事務所に勤務するH63及びH64は,これらの活動に従事した。
他方,札幌市内の事務所は,宿舎としても利用されたほか,後援会活動に
も利用された。なお,政党活動については,民主党北海道12区総支部で
行われた。
ウG38議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
札幌市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区の議員で
あるG38議員が宿舎としても利用したものと認められるが,同事務所が政
務調査活動としての拠点としての実態を有しないものであったことをうかが
わせる客観的証拠はない。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札
幌市内の賃貸マンションの賃借料については,政務調査活動の拠点として継
続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応
じた額を充当することができるとされているところ,同議員は,各月ごとに
その日数に対する定例会等開催日数を控除した後の日数を按分した上でその
政務調査活動の割合を約64%とした旨陳述する(丙A民16の3)が,具
体的な裏付けを欠いており,採用することは困難である。そうすると,同議
員による札幌市内の事務所を政務調査活動として使用した日数は明らかでは
ないことになるが,宿舎としての事務所の使用の実態が政務調査活動とそれ
以外の活動に明確に区分することができない場合であっても,改訂された本
件運用方針の内容等を踏まえて,政務調査費を充当することができる按分割
る。
しかるところ,G38議員は,札幌市内の事務所に係る事務所費のうち約
64%について政務調査費から支出している。したがって,同事務所費のう
ち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するも
のであって,違法であるというべきである。
H62の人件費について
前記認定事実によれば,宿舎としても利用された札幌市内の事務所では,
政務調査活動及び後援会活動にも利用されたことが認められる。そうする
と,同事務所に勤務するH62の人件費については,政務調査活動と合理的
な関連性を有しない後援会活動に係るものが含まれているものと推認される
一般的,外形的な事情があると認められる(なお,政党活動が同事務所で行
われたとうかがわせる的確な証拠はない。)。そして,職員の業務実態にお
いて,政務調査活動に係る対価と後援会活動に係る対価とを明確に区分する
ことができないから,的確な反証がされない限り,人件費として支出された
もののうち2分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方
針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G38議員は,札幌市内の事務所における後援会活動はご
くわずかな時間であり,H62は政務調査活動に専従していた旨陳述する
が,その陳述するところの業務実態に関する具体的な裏付けを欠いているの
でたやすく採用することができず,他に人件費の按分割合に関する的確な反
証はない。
そうすると,H62に係る人件費として支出されたもののうち2分の1を
超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違
法であるというべきである。
I17町内の事務所に係る事務所費及び人件費について
前記認定事実によれば,I17町内の事務所では,政務調査活動及び後援
会活動が行われており,同事務所に勤務するH63及びH64も,これらの
活動に従事していたものと認められる(なお,政党活動については,民主党
北海道12区総支部で行われていたものと認められ,同事務所で政党活動が
行われたことをうかがわせる的確な証拠はない。)。
そうすると,I17町内の事務所費及び前記2名の職員の人件費として支
出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会
活動に関する経費や対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な
事情があり,また,事務所の使用実態や職員の業務実態により,政務調査活
動に係る経費や対価と後援会活動に係る経費や対価とを明確に区分すること
ができないものと認められるが,本件運用方針によれば,事務所費及び人件
費として支出されたもののうち2分の1を上限として政務調査費を充当する
ことができるとされているところ,G38議員がした政務調査費の支出は,
いずれもこの範囲内のものであるから,I17町内の事務所費及び前記2名
の職員の人件費として政務調査費から充当したことについて,本件運用方針
に反する違法なものであるとはいえない。
39G39議員(整理番号44(自22))
前記前提事実に加え,証拠(甲47の1から6まで,丙A自22の1の1
から丙A自22の3まで,証人G39)及び弁論の全趣旨によれば,以下の
事実が認められる。
アG39議員は,自由民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された
北海道議会議員である。
イG39議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表「整理番号44」欄
に対応する「摘要」記載の住所地に所在する各事務所(本項においては,
それぞれ,枝番1を「札幌市内の事務所」,枝番2を「I3町内の事務所
1」,枝番3を「I3町内の事務所2」,枝番4を「I3町内の事務所
3」という。)を賃借した。
また,G39議員は,政党活動については同議員の自宅に,後援会活動
については後援会会長の自宅に,それぞれ拠点を置いて活動し,政務調査
事務所として,平成22年7月31日までI3町内の事務所1を賃借した
が,同事務所が手狭であったため,同年8月1日から平成23年1月14
日までI3町内の事務所2を賃借した。しかし,I3町内の事務所2は利
便性が悪く,また,平成23年4月の統一地方選挙を控えており,後援会
活動も行う事務所として,同年1月15日以降,I3町内の事務所3を賃
借した。そして,I3町内の事務所3においては,政務調査活動及び後援
会活動が行われた。
ウG39議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表「整理番号44」欄
に対応する「摘要」欄に記載のある個人3名を職員として雇用したが,前
記各職員のうちH65及びH66は,I3町内の事務所1ないし同3で勤
務し,H67は,I3町内の事務所2及び同3で勤務した。なお,H67
の勤務時間は1日3時間とされており,同人は,午前中は政務調査に係る
補助業務に従事し,午後は後援会活動に従事することがあった。
エG39議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
札幌市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区から選出
された議員であるG39議員が宿舎としても利用したものと認められるが,
同事務所が政務調査活動の拠点としての実態を有しないものであったことを
うかがわせる客観的な証拠はない。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札
幌市内の賃貸マンションについては,政務調査活動の拠点として継続的に使
用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応じた額を
充当することができるとされているところ,同議員が陳述する(丙A自22
の3)ところによっても,同議員による札幌市内の事務所を政務調査活動の
拠点として使用した日数は明らかではないが,宿舎としての事務所の使用の
実態が政務調査活動とそれ以外の活動に明確に区分することができない場合
であっても,改訂された本件運用方針の内容等を踏まえて,政務調査費を充
当することができる按分割合は3分の1とするのが相当である。しかるとこ
ろ,同議員が札幌市内の事務所に係る事務所費として政務調査費から支出し
た額は,上記の範囲内であるから,その支出は本件運用方針に反するもので
あるとはいえない。
I3町内の事務所1ないし同3に係る事務所費について
アI3町内の事務所1及び同2の事務所費について
前記認定事実によれば,政党活動及び後援会活動はI3町内の事務所1
及び同2とは別の場所をそれぞれ拠点として行われていたことが認められ
ることに加え,I3町内の事務所2からI3町内の事務所3に移転した経
緯について,G39議員が具体的に証言及び陳述(以下,この項において
「証言等」という。)していることからすると,I3町内の事務所1及び
同2において政党活動及び後援会活動が行われており,議員の政務調査活
動と合理的な関連性のない上記各事務所の事務所費に政務調査費が充当さ
れたものと推認させる一般的,外形的な事情の存在を認めることはできな
い。したがって,これら2つの事務所に係る事務所費全額について政務調
査費を充当することは,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえ
ない。
イI3町内の事務所3に係る事務所費について
前記認定事実によれば,I3町内の事務所3において政務調査活動及び
後援会活動が行われていたと認められるから,同事務所に係る事務所費と
して支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しな
い活動に係る経費が含まれているものと推認される一般的,外形的な事情
があるというべきところ,事務所費について,その使用実態により政務調
査活動に係る経費とそれ以外の活動に係る経費とを明確に区分することが
できない場合であっても,本件運用方針によれば2分の1を上限として政
務調査費を充当することができるとされており,同議員がI3町内の事務
所3に係る事務所費として政務調査費から支出した額は,上記の範囲内で
あるから,その支出は本件運用方針に反する違法なものであるとはいえな
い。
人件費について
前記各職員は,G39議員の事務所がI3町内の事務所3に移転する前か
ら雇用されていたものであるが,移転前のI3町内の事務所1及び同2にお
いては政務調査活動以外の活動が行われていなかったことは前記認定のとお
りである。もっとも,I3町内の事務所3では,政務調査活動に加えて後援
会活動が行われることになったことは前記認定のとおりである。しかるとこ
ろ,H67を除く他2名の職員が事務所の移転に伴って職務内容に後援会活
動の業務が当然に加わったとまで推認することができず,また,G39議員
は,H67は午前中の3時間は政務調査業務に専従し,午後は後援会活動の
手伝いをしてもらったことがあるが,それ以外の職員2名は政務調査業務に
専従し,後援会活動は後援会の役員が行っていた旨の具体的な証言等をして
おり,この証言等の信用性を排斥するに足りる的確な証拠もない。
そうとすれば,これらの職員に係る人件費の全額を政務調査費から充当し
たことは,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
40G40議員(整理番号45(民17))
前記前提事実に加え,証拠(甲48の1から3まで,丙A民17の1の1
から丙A民17の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG40議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イG40議員は,別紙4主張整理表「整理番号45」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある
個人1名を前記事務所において職員として雇用した。
前記事務所の賃貸借契約書には,賃借人欄に「G40後援会連合会代表
G40」との記載があるが,一方,G40議員とG40後援会連合会会計
責任者との間には,「G40後援会事務所に関する協定書」が作成されて
おり,同書には,前記事務所を政務調査活動にも使用する旨の記載があ
る。
前記事務所では政務調査活動及び後援会活動が行われ,前記職員もこれ
に従事した。なお,政党活動については,北海道電力労働組合政治連盟の
事務所で行われた。
ウG40議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
上記認定事実によれば,前記事務所の賃貸借契約書の賃借人の肩書は,G
40議員の後援会の代表であることが認められるが,G40議員と同後援会
の会計責任者との間で交わされた覚書の内容によれば,前記事務所が後援会
活動のみに利用されていたと認めることはできない。
そして,前記事務所では,政務調査活動及び後援会活動が行われたことは
前記認定のとおりであるところ,G40議員は,前記事務所の床面積のうち
約7割を政務調査事務所部分が占めていたことを根拠として,事務所費及び
人件費の7割に政務調査費を支出した旨主張し,後援会事務所の使用区分が
示された平面図を添付して,同旨の陳述(丙A民17の3)をする。しかし
て,上記陳述及び平面図によると,前記事務所では,政務調査事務所と後援
会事務所の使用区分が明確に区分されているから,政務調査事務所に係る部
分を全体で按分して政務調査費を充当したとしても,本件運用方針に反する
ものではなく,その按分割合は,前記平面図によると全体の7割が政務調査
事務所であると認められるから,事務所費として支出したもののうち7割に
ついて政務調査費を支出したとしても,違法であるとまではいえない(ただ
し,上記按分割合によって前記事務所に係る事務所費を按分すると違算があ
り,その限度で違法であるというべきである。)。
他方,人件費については,使用区分に応じて政務調査に係る業務量が定ま
るものではなく,政務調査活動に係る対価と後援会活動に係る対価とをその
業務実態により明確に区分することができないから,人件費として支出され
たもののうち2分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用
方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当であり,他
にこれに反する的確な反証はない。
41G41議員(整理番号46(民18))
前記前提事実に加え,証拠(甲49の1から3まで,丙A民18の1の1
から丙A民18の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG41議員は,民主党から推薦を受け,選出された北海道議会議員であ
る。
イG41議員は,別紙4主張整理表「整理番号46」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある
個人1名を上記事務所において職員として雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動及び後援会活動が行われ,前記職
員もこれらの活動に従事した。
ウG41議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
上記認定事実によれば,G41議員は,政党に所属しない北海道議会議員
であると認められるから,前記事務所で政党活動が行われていたと認めるこ
とはできず,他にこの認定に反する的確な証拠はない。
しかるところ,前記事務所では政務調査活動及び後援会活動が行われてい
たところ,同議員は,活動実態により明確に区分することができない按分割
合率に従って,事務所費及び人件費として支出したもののうち2分の1を政
務調査費から充当した旨陳述しており,この取扱いは,本件運用方針に反す
るものとはいえないから,G41議員のした政務調査費の支出は違法ではな
いというべきである。
42G42議員(整理番号47(自23))
前記前提事実に加え,証拠(甲50の1から4まで,丙A自23の1の1
から丙A自23の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG42議員は,自由民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された
北海道議会議員である。
イG42議員は,別紙4主張整理表「整理番号47」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する各事務所(本項においては,各事務所の所
在地に応じて,それぞれ「札幌市内の事務所」,「I2町内の事務所」と
いう。)を賃借し,また,同欄に記載のある個人3名をI2町内の事務所
において職員として雇用した。前記各職員のうち,H68及びH69は,
常勤職員であり,雇用契約書の仕事の内容欄には「政務調査に係る活動補
助及び後援会活動の補助」と記載されている。他方,H70は,非常勤の
職員であり,雇用契約書の仕事の内容欄には「政務調査に係る運転業務及
び活動の補助」と記載されている。
ウ札幌市内の事務所は宿舎としても利用された。
I2町内の事務所には駐車場が付属されており,6台分の駐車場のうち
4台分が来客専用,2台分が来客兼用であり,同事務所の賃料の内訳は,
建物の賃料が月額8万円,駐車場の賃料が月額3万円であった。I2町内
の事務所においては,政務調査活動のみならず,政党活動及び後援会活動
が行われた。
エG42議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
札幌市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区の議員で
あるG42議員が宿舎としても利用したものと認められるが,同事務所が政
務調査活動の拠点としての実態を有しないものであったことをうかがわせる
客観的な証拠はない。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札
幌市内の賃貸マンションの賃料については,政務調査活動の拠点として継続
的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応じ
た額を充当することができるとされているところ,G42議員の陳述(丙A
自23の3)するところによっても,同事務所が政務調査活動の拠点として
使用された日数は明らかではないが,宿舎としての事務所の使用実態が政務
調査活動とそれ以外の活動に明確に区分することができない場合であって
も,改訂された本件運用方針の内容等を踏まえて,政務調査費を充当するこ
したとおりである。
しかるところ,同議員は,札幌市内の事務所に係る事務所費のうち3分の
1を政務調査費から支出したにとどまるから,同議員による支出は,本件運
用方針に反する違法なものであるとはいえない(ただし,上記按分割合によ
って札幌市内の事務所に係る事務所費を按分すると違算があり,その限度で
違法であるというべきである。)。
I2町内の事務所に係る事務所費及び駐車場の賃借料について
前記認定事実によれば,I2町内の事務所では,政務調査活動以外にも政
党活動及び後援会活動が行われたことが認められるから,同事務所に係る事
務所費及び駐車場の賃借料として支出されたものには,議員の政務調査活動
と合理的な関連性を有しない活動に係る経費が含まれているものと推認され
る一般的,外形的な事情があるということができ,また,その使用実態によ
り政務調査活動に係る経費とそれ以外の活動に係る経費とを明確に区分する
ことが困難である。したがって,的確な反証がされない限り,支出された経
費のうち事務所費及び来客専用の駐車場の賃借料については3分の1を超え
て,来客兼用の駐車場については6分の1を超えて充当された政務調査費に
ついては,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価する
のが相当である。
これに対して,G42議員は,I2町内の事務所における使用実態とし
て,政務調査活動が2分の1,後援会活動及び政党活動がそれぞれ4分の1
であったから,同事務所に係る事務所費及び来客専用の駐車場に係る賃借料
として支出したもののうち2分の1,来客兼用の駐車場の賃借料として支出
したもののうち4分の1にそれぞれ政務調査費を支出した旨主張し,これに
沿う陳述をするが,同議員が陳述するところの同事務所の使用実態に関する
具体的な裏付けはなく,たやすく採用することができず,他に事務所費及び
駐車場の賃借料の按分割合に関する的確な反証はない。
したがって,事務所費及び来客専用の駐車場の賃借料として支出したもの
のうち3分の1を超えて,来客兼用の駐車場の賃借料として支出したものの
のうち6分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反す
るものであって違法であるというべきである。
人件費について
前記認定事実によれば,前記各職員は,I2町内の事務所において,政務
調査活動のみならず後援会活動及び政党活動に従事していたものと認められ
るから,これらの職員に係る人件費として支出されたものには,議員の政務
調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したことによる対価が含ま
れているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができ
る。
この点について,G42議員は,H68は後援会活動及び政党活動の補助
にも従事し,政務調査活動の割合が2分の1であった,H70は非常勤の職
員で政務調査活動の補助に専従した,H69は非常勤の職員であったが後援
会活動及び政党活動の補助にも従事し,政務調査活動の割合が3分の1であ
った旨主張し,これに沿う陳述をする。G42議員の陳述する各職員の業務
実態については具体的な裏付けに乏しいと指摘せざるを得ないが,H70に
ついては,非常勤の職員であり,雇用契約書の仕事の内容欄にも政務調査活
動に係る運転業務等が記載されていることから,上記陳述の信用性を排斥す
ることはできない。
そうすると,H70については,政務調査活動の補助に専従していたもの
と認められるから,同人に関する人件費全額について政務調査費を充当する
ことは,本件運用方針に反するものであるとまではいえない。他方,H68
の人件費(社会保険料を含む。)及びH69の人件費については,その業務
実態を踏まえて政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明
確に区分することができないから,的確な反証がされない限り,人件費とし
て支出されたもののうち3分の1を超えて充当された政務調査費について
は,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相
当であるところ,G42議員の上記陳述はたやすく採用することはできず,
他に上記2名の人件費の按分割合に関する的確な反証はない。
43G43議員(整理番号48(民19))
前記前提事実に加え,証拠(甲51の1から4まで,乙12,乙17,丙
A民19の1の1から丙A民19の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以
下の事実が認められる。
アG43議員は,民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された北海
道議会議員である。
イG43議員は,別紙4主張整理表「整理番号48」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する各事務所(本項においては,各事務所の所
在地に応じて,それぞれ「札幌市内の事務所」,「函館市内の事務所」と
いう。)を賃借し,また,同欄に記載のある個人1名を函館市内の事務所
において職員として雇用した。前記職員は,統一地方選挙を迎えて,平成
23年1月から同年3月までの間は後援会活動にも従事した。
ウ札幌市内の事務所は,宿舎としても利用された。また,政党活動につい
ては,民主党函館支部事務所を拠点として行われた(なお,函館市内の事
務所における使用実態及び活動実態については後記のとおりである。)。
エG43議員は,函館市内の事務所の近隣に駐車場を賃借し,これを函館
市内の事務所の来客兼用の駐車場として利用した。
エG43議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出(事務所の支出については,前記駐車場に関する費用を含む。)し,こ
の支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当し
た。
札幌市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区の議員で
あるG43議員が宿舎としても利用したものと認められるが,同事務所が政
務調査活動の拠点としての実態を有しないものであったことをうかがわせる
客観的な証拠はない。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札
幌市内の賃貸マンションの賃借料については,政務調査活動の拠点として継
続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応
じた額を充当することができるとされているところ,同議員の陳述する(丙
A民19の3)ところによっても,使用した実績については明らかではない
が,宿舎としての事務所の使用の実態が政務調査活動とそれ以外の活動に明
確に区分することができない場合であっても,改訂された本件運用方針の内
容等を踏まえて,政務調査費を充当することができる按分割合は3分の1と
ろ,G43議員が札幌市内の事務所に係る事務所費としてした政務調査費の
支出はこの範囲内のものであるから,上記支出は違法ではないというべきで
ある(ただし,上記按分割合によって札幌市内の事務所に係る事務所費を按
分すると違算があり,その限度で違法であるというべきである。)。
函館市内の事務所に係る事務所費について
前記認定事実によれば,政党活動については,民主党函館支部事務所で行
われていたものと認められるから,函館市内の事務所に係る事務所費に議員
の政務調査活動と合理的な関連性を有しない政党活動による経費が含まれて
いるものと推認させる一般的,外形的な事情があるとはいえない。また,後
援会活動については,G43議員の陳述(丙A民19の3)によれば,平成
22年4月から同年12月までは同議員の自宅で支援団体の関係者等の手伝
いにより後援会活動を行っていたが,平成23年4月の統一地方選挙を迎え
るに当たり,後援会活動が増えたため,同年1月から函館市内に後援会事務
所を賃借した旨陳述するところ,同陳述は具体的でその信用性を排斥するこ
とは困難であるから,函館市内の事務所に係る事務所費に議員の政務調査活
動と合理的な関連性を有しない後援会活動による経費が含まれているものと
推認させる一般的,外形的な事情の存在を認めることはできない。
そうすると,函館市内の事務所に係る事務所費の全額について政務調査費
から充当することは本件運用方針に反するものとはいえず,また,同事務所
の来客兼用の駐車場の賃借料についても,本件運用方針によれば2分の1を
上限として政務調査費を充当することが許されるから,同議員が上記駐車場
の賃借料の2分の1に政務調査費を充当したことについては,本件運用方針
に反する違法なものであるとはいえない。
人件費について
G43議員は,前記職員は,平成22年4月から同年12月までは政務調
査活動に専従したが,平成23年1月から同年3月までは選挙前のため後援
会活動業務が多忙となり,午前中1時間程度後援会事務所に出向いて後援会
活動にも従事した旨陳述しているところ,函館市内の事務所では政務調査活
動及び後援会活動が行われたと推認させる事情がないことは前記で説示した
とおりであり,また,統一地方選挙前に後援会活動が多忙となったことを理
由として政務調査活動の補助に専従していた前記職員が後援会事務所で短期
間手伝ってもらった旨の上記陳述は具体的であり,その信用性を排斥するこ
とは困難である。もっとも,上記陳述のうち,前記職員が平成23年1月か
ら同年3月までの間の午前中1時間程度後援会事務所で勤務したとする部分
については,その活動実態に関する具体的な裏付けがないため,たやすく採
用することができない。そうすると,上記期間における前記職員の人件費に
ついては,政務調査活動に係る対価と後援会活動に係る対価が混在してお
り,その業務実態により政務調査活動に係る対価と後援会活動に係る対価と
を明確に区分することは困難であるから,上記期間の按分割合については,
本件運用方針によれば2分の1を上限として政務調査費を充当することがで
きることになるところ,他にこれと異なる按分割合に関する的確な反証はな
い。したがって,前記職員に係る人件費については,8分の7を超えて政務
調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であると
いうべきである。
44G44議員(整理番号49(民20))
前記前提事実に加え,証拠(甲52の1から6まで,丙A民20の1の1
から丙A民20の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG44議員は,民主党から推薦を受け,札幌以外の選挙区から選出され
た北海道議会議員である。
イG44議員は,別紙4主張整理表「整理番号49」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する事務所(本項においては,この事務所のこ
とを「札幌市内の事務所」という。)を賃借したほか,北海道河東郡I4
町内にも事務所(本項においては,この事務所のことを「I4町内の事務
所」という。)を設け,同事務所の来客専用の駐車場として同欄記載の住
所地に駐車場(本項においては,この駐車場のことを「I4町内の駐車
場」という。)を賃借した。また,G44議員は,同欄に記載のある個人
4名をI4町内の事務所において職員として雇用した。
札幌市内の事務所の賃貸人は,G44議員の長女であり,I4町内の駐
車場の賃貸人は,同議員の義理の兄である。
ウ札幌市内の事務所は宿舎としても利用された。
I4町内の事務所においては,政務調査活動及び後援会活動が行われて
おり,前記各職員のうちH71及びH72も,これらの活動に従事した。
なお,後援会活動は,同事務所の隣地にあるG44議員の自宅でも行われ
ていた。
エG44議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出(事務所の支出については,前記駐車場に関する費用を含む。)し,こ
の支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当し
た。
札幌市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所の賃貸人は,G44議員の長女
であることが認められるが,証拠(丙A民20の1の7,丙A民20の3)
によれば,同人は夫及び子とともに台湾で居住しているものと認められ,G
44議員と長女が生計を一にする親族に当たると認めることはできないか
ら,札幌市内の事務所の賃借料に政務調査費を充当することは本件運用方針
に反するものであるとはいえない。
ところで,上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙
区の議員であるG44議員が宿舎としても利用したものと認められるが,同
事務所が政務調査活動の拠点として実態を有しないものであったことをうか
がわせる客観的な証拠はない。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札
幌市内の賃貸マンションの賃借料については,政務調査活動の拠点として継
続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応
じた額を充当することができるとされているところ,G44議員の陳述する
ところによっても,その使用した実績は明らかではないが,宿舎としての事
務所の使用の実態が政務調査活動とそれ以外の活動に明確に区分することが
できない場合であっても,改訂された本件運用方針の内容等を踏まえて,政
務調査費を充当することができる按分割合は3分の1とするのが相当である
G44議員が札幌市内
の事務所に係る事務所費として支出した政務調査費はこの範囲内のものであ
るから,上記支出は違法であるとはいえない。
I4町内の駐車場に係る賃借料について
上記認定事実によれば,I4町内の駐車場の賃貸人は,G44議員の義理
の兄であることが認められるところ,証拠(丙A民20の1の1)によれ
ば,同人は,北海道野付郡I18町内に居住していることが認められ,同人
とG44議員は生計を一にする親族に当たるものとは認められないから,I
4町内の駐車場に係る賃借料について政務調査費を充当することは,本件運
用方針に反する違法なものとはいえない。
しかして,上記認定事実によれば,I4町内の事務所においては,政務調
査活動のみならず,後援会活動も行われていたことが認められることからす
ると,同駐車場についても,政務調査活動及び後援会活動に関係する来客用
の駐車場として利用されていたものと推認されるから,上記駐車場の賃借料
については,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に係る経
費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということ
ができ,また,その使用実態により政務調査活動に係る経費と後援会活動に
係る経費とを明確に区分することは困難であるから,的確な反証がされない
限り,支出された経費のうち2分の1を超えて充当された政務調査費につい
ては,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが
相当である。
この点について,G44議員は,後援会活動は隣地にある同議員の自宅で
大半が行われていたから,前記駐車場の利用のうち政務調査活動に係るもの
が8割であった旨主張し,これに沿う陳述(丙A民20の3)をするが,使
用実態について具体的な裏付けを欠くものであって,たやすく採用すること
はできず,他に駐車場の賃借料の按分割合に関する的確な反証はない。し
たがって,前記駐車場の賃借料として支出したもののうち2分の1を超えて
政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であ
るというべきである。
人件費について
アH71及びH72の人件費(労働保険料を含む。以下,本項において同
じ。)について
上記認定事実によれば,H71及びH72は,いずれも政務調査活動及
び後援会活動に従事していたことが認められるから,同人らの人件費とし
て支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない
後援会活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認される一
般的,外形的な事情があるといえ,また,その業務実態により政務調査活
動に係る対価と後援会活動に係る対価とを明確に区分することが困難であ
るから,的確な反証がされない限り,人件費として支出されたもののうち
2分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反す
る違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G44議員は,H71については政務調査活動の事務補
助に従事したが,事務所にかかってくる後援者からの電話応対に時々応じ
たことから,同人の職務のうち政務調査活動が占める割合とし,H72に
ついては,基本的にはH71と同じ活動実態であるが,平成23年1月頃
以降は統一地方選挙のために別途賃借していた後援会事務所に出向いて後
援会活動に従事する割合が増えたため,同年2月の政務調査活動の割合を
8割,同年3月の政務調査活動の割合を5割とした旨主張し,これに沿う
陳述をしている。確かに,上記の陳述のうち,統一地方選挙を迎えるに当
たり,H72が後援会活動に従事する割合が増えた旨の陳述は具体的であ
るけれども,H71の業務実態を含めて,政務調査活動の補助業務が9割
程度を占めていた旨の業務実態に関する裏付けに乏しいことを指摘せざる
を得ず,上記陳述を採用することは困難であり,他に上記2名の人件費の
按分割合に関する的確な反証はない。
そうすると,上記2名の職員に関する人件費として支出されたもののう
ち2分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反する
ものであって違法であるというべきである。
イH73及びH74の人件費について
G44議員は,H73及びH74については,不定期に政務調査活動の
自動車運転業務に従事した旨主張し,これに沿う陳述をするところ,上記
2名の職員に係る人件費の領収書(丙A民20の2の9から丙A民20の
2の21まで)によれば,上記2名は,自動車運転業務に従事したことの
対価として人件費が支払われていることが認められるから,上記陳述の信
用性を排斥することはできない。
そうすると,上記2名の職員の人件費全額について政務調査費から支出
したことについては,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえな
い。
45G45議員(整理番号50(自24))
前記前提事実に加え,証拠(甲53の1から3まで,丙A自24の1の1
から丙A自24の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG45議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イG45議員は,別紙4主張整理表「整理番号50」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある
個人2名を上記事務所において職員として雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動及び後援会活動が行われており,
前記各職員は,いずれもこれらの活動に従事した。なお,前記事務所は,
政党支部として登録されているが,政党活動については,函館市内の自由
民主党函館支部で行われた。
ウG45議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
上記認定事実によれば,前記事務所では政務調査活動及び後援会活動が行
われ,これらの活動に前記各職員が従事したことが認められるが,政党活動
については自由民主党函館支部で行われたものと認められるから,事務所費
及び人件費として支出されたものに政党活動により生じた経費が含まれてい
るものと推認させる一般的,外形的な事情があるとまでは認めることはでき
ない。
そうすると,前記事務所の事務所費及び前記事務所で雇用された職員の人
件費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性のな
い後援会活動に係る経費や対価が含まれているものと推認させる一般的,外
形的な事情があるといえる。もっとも,本件運用方針によれば,政務調査活
動と後援会活動を事務所の使用実態や職員の業務実態により明確に区別する
ことができない場合であっても,その2分の1を上限として政務調査費を充
当することができるとされているところ,G45議員が事務所費及び人件費
として政務調査費から充当した割合は上記の範囲内であるから,その政務調
査費の支出は,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
46G46議員(整理番号51(民21))
前記前提事実に加え,証拠(甲54の1から3まで,丙A民21の1の1
から丙A民21の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG46議員は,民主党から推薦を受け,札幌以外の選挙区から選出され
た北海道議会議員である。
イG46議員は,別紙4主張整理表「整理番号51」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する各事務所(本項においては,各事務所の所
在地に応じて,それぞれ「札幌市内の事務所」,「網走市内の事務所」と
いう。)及び網走市内の事務所の駐車場を賃借し,また,同欄に記載のあ
る個人3名を網走市内の事務所において職員として雇用した。なお,札幌
市内の事務所は,G46議員の宿舎としても利用された。
ウG46議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出(なお,網走市内の事務所には駐車場の賃借料を含む。)し,この支出
に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
札幌市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区の議員で
あるG46議員が宿舎としても利用したものと認められるが,同事務所が政
務調査活動の拠点としての実態を有しないものであったことをうかがわせる
客観的な証拠はない。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札
幌市内の賃貸マンションの賃借料については,政務調査活動の拠点として継
続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応
じた額を充当することができるとされているところ,同議員の陳述する(丙
A民21の3)ところによっても,その使用した日数は明らかではないが,
宿舎としての事務所の使用の実態が政務調査活動とそれ以外の活動に明確に
区分することができない場合であっても,改訂された本件運用方針の内容等
を踏まえて,政務調査費を充当することができる按分割合は3分の1とする
G46
議員が札幌市内の事務所に係る事務所費について政務調査費から充当した金
額は上記の範囲内のものであるから,その支出は,本件運用方針に反する違
法なものとはいえない。
網走市内の事務所に係る事務所費及び人件費(労働保険料及び社会保険料
を含む。以下,本項において同じ。)について
前記認定事実によれば,G46議員は,民主党から推薦を受けて選出され
た議員であるが,民主党には所属していないから,網走市内の事務所で政党
活動が行われたと認めることは困難である。また,同議員は,平成22年1
月に当選し,網走市内の事務所では平成22年度期間中は後援会活動はほと
んど行っていなかったと主張し,同旨の陳述(丙A民21の3)をするとこ
ろ,上記陳述の信用性を排斥するに足りる具体的な証拠はないから,網走市
内の事務所に係る事務所費及び同事務所で雇用された前記各職員の人件費に
は,政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に係る経費や対価
が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情の存在を認めること
はできない。
そうすると,網走市内の事務所に係る事務所費及び人件費について,政務
調査費から全額充当したことは,本件運用方針に反する違法なものであると
はいえない。
47G47議員(整理番号52(民22))
前記前提事実に加え,証拠(甲55の1から4まで,丙A民22の1の1
から丙A民22の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG47議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イG47議員は,別紙4主張整理表「整理番号52」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する各事務所を賃借し,同欄に記載のある個人
2名を上記各事務所において職員として雇用した。
前記各事務所においては,政務調査活動のみならず,政党活動及び後援
会活動が行われていた。
ウG47議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
前記各事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,前記各事務所では,政務調査活動のみならず,政
党活動及び後援会活動がされていたことが認められるから,前記各事務所に
係る事務所費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関
連性を有しない活動に係る経費が含まれているものと推認させる一般的,外
形的な事情があるということができ,また,その使用実態により政務調査活
動に係る経費とそれ以外の活動に係る経費とを明確に区分することは困難で
ある。したがって,的確な反証がされない限り,支出された経費のうち3分
の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法
な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G47議員は,後援会活動はほぼ別に設けられた民主党北
海道会議室で行っており,政党活動は民主党豊平支部で行っており,前記各
事務所では政党活動は月1回(1時間程度)の頻度で定例幹事長会議の開催
等が行われたにすぎず,前記各事務所の政務調査活動は9割を占めていた旨
主張し,同旨の陳述(丙A民22の3)をするが,同議員の陳述するところ
の前記各事務所の使用実態に関する具体的な裏付けを欠いており,たやすく
採用することができず,他に前記各事務所の事務所費の按分割合に関する的
確な反証はない。
したがって,前記各事務所に係る事務所費として支出されたもののうち3
分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するもので
あって違法であるというべきである。
人件費について
前記各事務所では,政務調査活動のみならず,後援会活動及び政党活動も
行われていたことは前記認定のとおりであるから,前記各事務所に職員とし
て雇用されていたH75及びH76の人件費には,議員の政務調査活動と合
理的な関連性を有しない活動に従事したことによる対価が含まれているもの
と推認させる一般的,外形的な事情があるということができる。
これに対して,G47議員は,前記各事務所における政党活動について
は,民主党豊平支部の幹事長及び会計担当副幹事長などが行い,後援会活動
の補助については,後援会会長,幹事長及び庶務担当副幹事長が行い,いず
れも通常の勤務時間外に行っていたので,H75は,政務調査活動の事務の
補助に専従していたこと,また,H76については,年4回の定例議会ごと
に発行する道議会報告を配布するために自動車運転業務に従事していたと主
張し,これに沿う陳述をする。上記陳述は,後援会活動及び政党活動の補助
に従事した具体的な職員が挙げられていることに加えて,H75が月額8万
円を「アルバイト代」名目で受領した旨の領収証(丙A民22の2の1から
丙A民22の2の12まで)が作成されており,給与の額及び支払名目に照
らすと同人が短時間の業務に専従していたことがうかがわれること,また,
H76が平成22年4月,同年7月,同年10月,同年12月に「車両借上
げ料,アルバイト代」名目でそれぞれ5万円を,同年5月に「札幌~I7~
I19~札幌運転アルバイト代(ガソリン代を含む。)」の名目で1万円
を受領した旨の領収証(丙A民22の2の13から17まで)が作成されて
おり,これらの領収証の記載は,G47議員が年4回の定例議会ごとに道議
会報告を配布するためにH76を自動車運転手として雇った旨の上記陳述に
沿うものであることからして,上記陳述の信用性を排斥することはできな
い。
そうすると,H75及びH76に係る人件費については政務調査活動の補
助業務に係る対価として支払われたものと認められるから,その人件費につ
いて政務調査費を充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであ
るとはいえない。
48G48議員(整理番号53(民23))
前記前提事実に加え,証拠(甲56の1から3まで,丙A民23の1の1
から丙A民23の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG48議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。なお,同議員
は,平成23年4月19日をもって北海道議会議員の任期を満了した。
イG48議員は,別紙4主張整理表「整理番号53」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある
個人2名を前記事務所において職員として雇用した。
前記事務所の所在する建物の賃借人は,G48議員と民主党北広島であ
った。なお,前記事務所の使用に関し,G48議員と民主党北広島との間
では,前記事務所賃料月額7万2000円のうち6万円を同議員が負担す
ること,駐車場料金月額6000円のうち5000円を同議員が負担する
こと,冬期間(4月,11月から3月まで)の暖房費として,同議員は,
民主党北広島に対し,月額8000円を支払うことなどを約した「確認
書」(本項においては,以下「本件確認書」という。)が交わされた。
ウG48議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出(事務所の支出については駐車場等に関する費用を含む。)し,この支
出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
上記認定事実によれば,前記事務所は,G48議員及び民主党北広島が共
同で賃借したものと認められるから,前記事務所では政務調査活動のみなら
ず政党活動が行われており,前記事務所の賃借料として支出されたものに
は,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない政党活動に関する経費
が含まれているものと一般的,外形的に推認される事情があるとはいえる。
なお,G48議員が平成23年4月19日をもって北海道議会議員の任期満
了となったことは前記認定のとおりであるから,前記事務所の賃借料として
支出されたものには,後援会活動に関する経費が含まれているものと推認さ
せる一般的,外形的な事情があるとはいえない。
しかるところ,G48議員は,前記事務所(80㎡)のうち政務調査活動
に使用した面積は68㎡であるので,民主党北広島との間で,本件確認書に
より,経費等を含めた事務所費のうち85%を同議員が負担することを約し
た旨主張し,同旨の陳述(丙A民23の3)をする。上記陳述は,本件確認
書により裏付けられているものであるし,また,民主党北広島とG48議員
の事務所はそれぞれ異なる電話番号が用いられていることからすると,前記
事務所では政務調査活動と政党活動がその使用実態により明確に区分されて
いたものと認められる。そうすると,本件確認書に基づいて前記事務所のう
ちG48議員が負担した事務所費全額について政務調査費を充当したこと
は,本件運用方針に反する違法なものとはいえない。
また,前記事務所では,政党活動と政務調査活動がその使用実態により明
確に区分されていたことに加え,G48議員は,民主党北広島では政党活動
については同党役員が行っており,H77及びH78が政党活動に携わるこ
とはなかった旨陳述しており,これに反する的確な証拠もないから,上記2
名の職員の人件費として支出されたものには,前記職員が政党活動に従事し
たことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情が
あるということはできない。そうすると,上記2名の職員に係る人件費の全
額について政務調査費を充当したとしても,本件運用方針に反する違法なも
のであるとはいえない。
49G49議員(整理番号54(自25))
前記前提事実に加え,証拠(甲57の1から4まで,丙A自25の1の1
から丙A民25の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG49議員は,自由民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された
北海道議会議員である。
イG49議員は,別紙4主張整理表「整理番号54」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する事務所(本項においては,この事務所のこ
とを「帯広市内の事務所」という。)を賃借したほか,札幌市内にも事務
所(本項においては,この事務所のことを「札幌市内の事務所」とい
う。)を設け,帯広市内の事務所において同欄に記載のある各個人のうち
H79及びH80を,札幌市内の事務所においてH81を,それぞれ職員
として雇用した。
ウ帯広市内の事務所においては,政務調査活動のみならず,政党活動及び
後援会活動が行われ,H79及びH80も,これらの活動に従事した。
他方,札幌市内の事務所は,G49議員が所有する物件であり,宿舎と
しても利用された。
エG49議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
帯広市内の事務所に係る事務所費及び人件費について
上記認定事実によれば,帯広市内の事務所では,政務調査活動のみならず
後援会活動及び政党活動が行われ,同事務所に雇用されたH79及びH80
も,これらの活動に従事したことが認められることからすると,同事務所に
係る事務所費及び人件費として支出されたものには,議員の政務調査活動と
合理的な関連性を有しない活動に係る経費や対価が含まれていたものと推認
させる一般的,外形的な事情があるということができ,また,事務所の使用
実態や業務実態により政務調査活動に係る経費や対価とそれ以外の活動に係
る経費や対価とを明確に区分することも困難である。したがって,的確な反
証がされない限り,事務所費及び人件費として支出されたもののうち3分の
1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な
政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対し,G49議員は,同事務所における後援会活動は年に数回開催
するイベントの企画,準備であり,政党活動は自民党広報誌の管理等にすぎ
なかったから,同事務所における使用実態又は活動実態として政務調査活動
が2分の1を占めていたと主張し,これに沿う内容の陳述書を提出するが,
同事務所における使用実態及び職員の業務実態に関する具体的な裏付けを欠
いており,たやすく採用することができず,他に事務所費及び人件費の按分
割合に関する的確な反証はない。
したがって,前記事務所に係る事務所費及び前記2名の職員の人件費とし
て支出したもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件
運用方針に反する違法なものであるというべきである。
H81の人件費について
上記認定事実によれば,H81は,札幌以外の選挙区から選出されたG4
9議員が宿舎としても利用している札幌市内の事務所で職員として雇用され
たものであると認められる。
しかして,G49議員は,H81は資料の整理や作成などを行うアルバイ
トであり,政務調査活動の補助に専念してもらっていた旨陳述する。しか
し,上記陳述によっても,H81が従事していたとされる政務調査活動の補
助業務の実態は具体的なものであるとは到底いえない上,上記陳述によれ
ば,H81はアルバイトとして政務調査活動の補助業務に従事していたとい
うのであるから,その業務実態によっては支払われる賃金が定額になるとは
考えられないにもかかわらず,同人には毎月3万円の「アルバイト料」が支
払われている。むしろ,H81の職務内容には,同事務所に同議員に面会や
陳情に来た地元後援者や政党関係者の接遇業務が含まれており,同人に関す
る人件費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性
を有しない後援会活動及び政党活動に従事した対価が含まれているものと推
認させる一般的,外形的な事情があるということができ,また,その業務実
態により政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区
分することができないから,同人に関する人件費として支出されたもののう
ち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するも
のであって違法であるというべきであり,これに反する的確な反証はない。
50G50議員(整理番号55(民24))
前記前提事実に加え,証拠(甲58の1から3まで,丙A民24の1の1
から丙A民24の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG50議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イG50議員は,別紙4主張整理表「整理番号55」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある
個人1名を同事務所において職員として雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動及び後援会活動が行われ,前記職
員も,これらの活動に従事した。なお,政党活動については,民主党てい
ねで行われた。
ウG50議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出(事務所の支出については駐車場の賃借料を含む。)し,この支出に対
し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
上記認定事実によれば,前記事務所では,政務調査活動及び後援会活動が
行われ,前記職員もこれらの活動に従事したものと認められるから,同事務
所に係る事務所費及び前記職員の人件費(社会保険料及び労働保険料を含
む。以下,この項において同じ。)として支出されたものには,議員の政務
調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に係る経費や対価が含まれ
ているものと推認される一般的,外形的な事情があるということができ,ま
た,事務所の使用実態や職員の業務実態により政務調査活動に係る経費や対
価と後援会活動に係る経費や対価とを明確に区分することも困難である。し
たがって,的確な反証がされない限り,事務所費及び人件費として支出され
たもののうち2分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用
方針に反する違法な政務調査費の支出であるということができる。なお,政
党活動については,民主党ていねで行われていたものと認められ,前記事務
所に係る事務所費及び前記職員の人件費として支出されたものに政党活動に
関する経費や対価が含まれているものと推認される一般的,外形的な事情の
存在を認めることはできない。
これに対して,G50議員は,後援会活動は年間6回程度の行事の開催で
あり,行事の準備期間は2週間程度であったので,同事務所における使用実
態又は業務実態として政務調査活動が4分の3を占めていた旨主張し,同旨
の陳述を(丙A民24の3)をするが,その使用実態や業務実態に関する具
体的な裏付けを欠いており,たやすく採用することができず,他に事務所費
及び人件費の按分割合に関する的確な反証はない。
そうすると,同事務所に係る事務所費及び人件費として支出したもののう
ち2分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するも
のであって違法であるというべきである。
51G51議員(整理番号56(自26))
前記前提事実に加え,証拠(甲59の1から4まで,丙A自26の1の1
から丙A自26の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG51議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イG51議員は,別紙4主張整理表「整理番号56」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する各事務所(本項においては,各事務所の所
在地に応じて,それぞれ「I20の事務所」,「I21の事務所」とい
う。)を賃借し,同欄に記載のあるH82のほか,H83をI20の事務
所において職員として雇用した。なお,H82の雇用契約書の仕事内容欄
には「政務調査に係る調査補助及び関係書類の作成」とあり,H83の雇
用契約書の仕事内容欄には「後援会活動並びに政党関連事務」と記載され
ている。
ウI20の事務所の賃貸人は,G51議員の実父であるH17であった。
I20の事務所においては,政務調査活動のみならず,政党活動及び後
援会活動が行われた。
エG51議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
I20の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,I20の事務所の賃貸人は,G51議員の実父で
あると認められるが,証拠(丙A自26の1の3,丙A自26の1の4)に
よれば,G51議員と実父はそれぞれ住民票上の住所地は異なるものであ
り,他にG51議員と実父が生計を一にしていることを推認させるような事
情は見当たらないから,実父所有の不動産に係る事務所賃借料に政務調査費
を支出したとしても,本件運用方針に反するものであるとは認められない。
しかして,I20の事務所では,政務調査活動のみならず政党活動及び後
援会活動が行われたものと認められるから,同事務所に係る事務所費として
支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない経費
が含まれているものと推認される一般的,外形的な事情があるということが
でき,また,事務所の使用実態により政務調査活動に係る経費とそれ以外の
活動に係る経費とを明確に区分することが困難である。したがって,的確な
反証がされない限り,支出された経費のうち3分の1を超えて充当された政
務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出である
と評価するのが相当である。
これに対して,G51議員は,同事務所における政党活動は企業・団体献
金の入金口座管理のみが行われていたにすぎないから,同事務所における使
用実態としては政務調査活動と後援会活動及び政党活動の割合は概ね1対1
であった旨主張し,同旨の陳述(丙A自26の3)をするが,同事務所にお
ける使用実態について具体的な裏付けを欠いており,たやすく採用すること
ができず,他に事務所費に関する按分割合に関する的確な反証はない。
したがって,I20の事務所に係る事務所費として支出したもののうち3
分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するもので
あって違法であるというべきである。
I21の事務所に係る事務所費について
I21の事務所について,G51議員は,後援会活動及び政党活動はI2
0の事務所で行われており,同事務所では政務調査活動のみが行われていた
旨陳述するところ,この陳述の信用性を疑わしめる具体的な証拠はないか
ら,同事務所の事務所費として支出されたものには,政務調査活動以外の活
動による経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情がある
とは認められない。したがって,同事務所に係る事務所費の全額を政務調査
費から充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえ
ない。
人件費について
G51議員は,I20の事務所においては,H82とH83を雇用してお
り,H83が政党活動及び後援会活動の補助に従事し,H82は政務調査活
動に専従していた旨主張し,同旨の陳述をする。上記陳述は,前記で認定し
た雇用契約書の仕事内容欄の記載にも合致しており,その信用性を排斥する
ことはできないから,H82が政務調査活動以外の業務に従事していたもの
と推認させる一般的,外形的な事情があるとはいえない。
そうすると,H82の人件費の全額について政務調査費を充当したこと
は,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
52G52議員(整理番号57(民25))
前記前提事実に加え,証拠(甲60の1から3まで,丙A民25の2の
1,丙A民25の3)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ
る。
アG52議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イG52議員は,自宅を事務所として使用しており,別紙4主張整理表
「整理番号57」欄に対応する「摘要」欄に記載のある個人を上記事務所
において職員として雇用した。なお,同職員の雇用契約書の職種欄には
「運転業務,政務調査業務補助他」と記載され,給与は日給7230円,
勤務時間は午前8時45分から午後5時30分と記載されている。
前記事務所においては,政務調査活動のみならず,後援会活動及び政党
活動が行われていた。
ウG52議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
上記認定事実によれば,前記事務所では,政務調査活動のみならず,政党
活動及び後援会活動がされていたことが認められるから,前記事務所に職員
として雇用されていた前記職員は,これらの活動に従事しており,その人件
費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有し
ない活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般
的,外形的な事情があるということができ,また,その業務実態により政務
調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分することは
困難である。したがって,的確な反証がされない限り,人件費として支出さ
れたもののうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運
用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対し,G52議員は,後援会活動の補助業務は支援者がボランティ
アで行っており,また,政党活動の補助業務は民主党函館支部及び民主党8
区総支部専従の職員が行っており,前記職員は,これらの活動には関与して
いない旨主張し,同旨の陳述(丙A民25の3)をする。しかしながら,同
議員の陳述する前記事務所の職員の業務実態については具体的な裏付けを欠
いている上,前記職員の勤務時間や日給から推測される勤務日数(同人の人
件費には年額130万1400円が支給されているから,年間180日間勤
務したことが認められる。)からすると,前記職員が政務調査活動のみに専
従した旨の上記陳述はたやすく採用することはできず,他に上記推認を覆す
に足りる的確な証拠はない。
したがって,前記職員の人件費として支出されたもののうち3分の1を超
えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法
であるというべきである。
53G53議員(整理番号58(自27))
前記前提事実に加え,証拠(甲61の1から3まで,丙A自27の1の1
から丙A自27の3)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ
る。
アG53議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イG53議員は,別紙4主張整理表「整理番号58」欄に対応する「摘
要」欄に記載のある個人2名を北海道斜里郡I22町内に設けた事務所に
おいて職員として雇用した。
前記各職員は,いずれも政務調査活動のみならず,政党活動及び後援会
活動にも従事した。
ウG53議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
上記認定事実によれば,前記各職員は,政務調査活動以外に後援会活動及
び政党活動にも従事したと認められるから,その人件費(社会保険料及び労
働保険料を含む。以下,本項において同じ。)として支出されたものには,
議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したことによる
対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるというこ
とができ,また,その業務実態により政務調査活動に係る対価とそれ以外の
活動に係る対価とを明確に区分することも困難である。したがって,的確な
反証がされない限り,人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて
充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費
の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G53議員は,政党活動の補助は主に自民党斜里支部の職
員が行ったため,前記各職員の業務実態としては政務調査活動が2分の1を
占めていた旨主張するが,業務実態に関する具体的な裏付けを欠くからたや
すく採用することができず,他に人件費の按分割合に関する的確な反証はな
い。
したがって,前記各職員の人件費として支出されたもののうち3分の1を
超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違
法であるというべきである。
54G54議員(整理番号59(民26))
前記前提事実に加え,証拠(甲62の1から3まで,丙A民26の1の1
から丙A民26の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG54議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イG54議員は,別紙4主張整理表「整理番号59」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する事務所及び前記事務所のための駐車場を賃
借し,また,同欄に記載のある個人2名を前記事務所において職員として
雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動とともに後援会活動も行われた。
なお,政党活動は,民主党第9区総支部で行われた。
前記駐車場には3台分の駐車スペースがあり,そのうち1台分について
は来客専用,2台分については来客兼用であった。
ウG54議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
事務所費について
上記認定事実によれば,前記事務所では政務調査活動及び後援会活動が行
われていたものと認められるから,前記事務所の使用実態に照らすと,前記
事務所の事務所費には,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後
援会活動に係る経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情
があるということができる(なお,政党活動については,民主党第9区総支
部で行われていたものと認められ,前記事務所で政党活動が行われたものと
推認させる一般的,外形的な事情があるとはいえない。)。そして,前記事
務所の使用実態により政務調査活動に係る経費と後援会活動に係る経費とを
明確に区分することはできないから,的確な反証がされない限り,支出され
た経費のうち2分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用
方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G54議員は,前記事務所で後援会活動が行われた日数は
年間約80日であり,1週間当たりの事務所使用時間45時間のうち政務調
査活動に使用した時間は30時間であったから,前記事務所における活動時
間のうち政務調査活動に占める割合が3分の2であったと主張し,同旨の陳
述(丙A民26の3)をするが,その陳述するところの事務所の使用実態に
関する具体的な裏付けを欠いており,たやすく採用することができず,他に
事務所費の按分割合に関する的確な反証はない。
したがって,前記事務所に係る事務所費として支出されたもののうち2分
の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであ
って違法であるというべきである。
また,前記駐車場は,前記事務所のために利用されていたことからする
と,前記駐車場に係る賃借料についても,議員の政務調査活動と合理的な関
連性を有しない後援会活動に係る経費が含まれているものと推認される一般
的,外形的な事情があり,それぞれの使用実態により政務調査活動に係る経
費と後援会活動に係る経費とを明確に区分することができないから,来客専
用に係る駐車場の賃借料については2分の1を超えて充当された政務調査費
について,来客兼用に係る駐車場の賃借料については4分の1を超えて充当
された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支
出であると評価するのが相当であり,これに反する的確な反証はない。
人件費について
前記事務所では,政務調査活動及び後援会活動が行われていたことは前記
認定のとおりであるから,前記事務所に職員として雇用されていたH84及
びH85もこれらの活動に従事し,前記2名の職員の人件費として支出され
たものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に
従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な
事情があるということができる。
これに対し,G54議員は,H84及びH85はいずれも政務調査活動に
専従していたが,H84については稀に後援会活動に対応することがあった
ため,政務調査活動に従事していた割合を9割として政務調査費を充当した
旨主張し,同旨の陳述をする。しかし,同議員の陳述するところのH84に
関する業務実態については,具体的な裏付けを欠いており,たやすく採用す
ることができない。他方,証拠(丙A民26の2の2から丙A民26の2の
13まで)によれば,H85については,短期間の不定期な勤務であり,給
与として支払われた金額も僅少であり,政務調査補助の名目で支払われてい
ることが認められることからすると,上記陳述を排斥することは困難であ
る。
そうすると,H84に係る人件費については,政務調査活動及び後援会活
動の補助業務に対する対価として支払われたものであり,その業務実態によ
り政務調査活動に係る対価と後援会活動に係る対価とを明確に区分すること
ができないから,同人の人件費として支出されたもののうち2分の1を超え
て政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法で
あるというべきであり,これに反する的確は反証はない。他方,H85に係
る人件費については,政務調査活動の補助業務に対する対価として支払われ
たものと認められるから,その全額について政務調査費を充当したとして
も,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
55G55議員(整理番号60(自28))
前記前提事実に加え,証拠(甲63の1から3まで,乙12,丙A自28
の1から丙A自28の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認
められる。
アG55議員は,自由民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された
北海道議会議員である。
イG55議員は,別紙4主張整理表「整理番号60」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する自己の所有に係る建物を事務所(本項にお
いては,この事務所のことを「札幌市内の事務所」という。)として利用
したほか,北海道上川郡I23町内にも事務所(本項においては,この事
務所のことを「I23町内の事務所」という。)を設け,同欄に記載のあ
る個人4名をI23町内の事務所において職員として雇用した。
ウ札幌市内の事務所は,G55議員の自己所有物件であり,宿舎としても
利用された。札幌市内の事務所には駐車場が存在していた。
前記各職員のうち,H86,H87及びH88は,いずれも政務調査活
動及び後援会活動に従事した。
エG55議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。なお,事務所費の中には,駐車場の使用料金月額1万500
0円が含まれている。
札幌市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区の議員で
あるG55議員が,自己所有物件を宿舎としても利用したものと認められる
が,同事務所が政務調査活動の拠点としての実態を有しないものであったこ
とをうかがわせる客観的な証拠はない。
しかして,本件運用方針によれば,議員が所有する札幌市内の賃貸マンシ
ョンの事務所賃料には政務調査費を充当することができないが,管理運営費
については,それが政務調査活動の拠点としての実態を有している限り,使
用した実績(使用日数)に応じた額を充当することができるとされていると
ころ,同議員の陳述する(丙A自28の3)ところによっても,札幌市内の
事務所を使用した日数は明らかではないが,宿舎としての事務所の使用の実
態が政務調査活動とそれ以外の活動に明確に区分することができない場合で
あっても,改訂された本件運用方針の内容等を踏まえて,政務調査費を充当
することができる按分割合は3分の1とするのが相当であることは,前記2
運営費として支出したもののうち3分の1を政務調査費から充当すること
は,本件運用方針に反する違法なものとまではいえない。
他方,G55議員は,札幌市内の事務所に付属する駐車場(1台分)の賃
借料について,来客専用であることを前提として,その3分の1を政務調査
費から充当している。しかるところ,札幌市内の事務所は,同議員の自己所
有物件であり,同議員が宿舎としても利用していたことは前記認定のとおり
であるから,上記1台分の駐車場は,同議員専用の駐車場であり,その賃借
料は,議員の政務調査活動と合理的な関連性のない経費であることを推認さ
せる一般的,外形的な事情があるといえるが,同議員は,その陳述(丙A自
28の3)においても,来客専用の使用実態であったことについて何ら言及
していない。そうすると,札幌市内の駐車場に係る賃借料について政務調査
費から支出することは,本件運用方針に反する違法なものであるというべき
である。
人件費について
ア前記認定事実によれば,H86,H87及びH88は,I23町内の事
務所で,政務調査活動及び後援会活動に従事していたものと認められる。
なお,G55議員は,政党活動についてはI23町及びその周辺に居住す
る党員との連絡調整及びポスターの配布程度であり,同議員が1人で行っ
ていた旨主張し,同旨の陳述をしているところ,この陳述の信用性を排斥
することは困難であるから,I23町内の事務所に勤務する上記3名の職
員が政党活動にも従事し,議員の政務調査活動に合理的な関連性を有しな
い政党活動に係る対価に人件費が支出されたと推認させる一般的,外形的
な事情があるとはいえない。
しかして,前記3名の職員の人件費として支出されたものには,議員の
政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に従事したことによ
る対価が含まれるものと推認される一般的,外形的な事情があるといえる
が,職員の業務実態により政務調査活動に係る対価と後援会活動に係る対
価とを明確に困難することができない場合であっても,本件運用方針によ
ればその2分の1を上限として政務調査費から充当することができるとさ
れているところ,同議員は,上記3名の職員の人件費のうち,上記の範囲
内で政務調査費から支出しているから,その支出が本件運用方針に反する
違法なものであるとはいえない。
イ他方,G55議員は,H89の人件費については,同議員の政務調査活
動のための自動車運転業務に専従していたから,政務調査費全額を充当す
ることが許される旨主張し,同旨の陳述をする。しかし,前記事務所で
は,政務調査活動及び後援会活動が行われており,H89以外の3名の職
員がこれらの活動に従事していたから,H89も,後援会活動にも従事し
ており,同人の人件費として支出されたものには,議員の政務調査活動と
合理的な関連性を有しない後援会活動に従事していたことによる対価が含
まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるといえるとこ
ろ,同人に関する領収証(丙A自28の2の1)を見ても,自動車運転業
務に専従していたものと認めるのは困難であり,その他同人の業務実態を
裏付ける具体的な証拠もないから,上記陳述はたやすく採用することがで
きない。
そして,H89に関する人件費については,業務実態により政務調査活
動に係る対価と後援会活動に係る対価とを明確に区分することができない
から,支出された人件費のうち2分の1を超えて充当された政務調査費に
ついては,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であるというべ
きであり,他に上記推認を覆すに足りる的確な反証はない。
56G56議員(整理番号61(民27))
前記前提事実に加え,証拠(甲64の1から3まで,丙A民27の1の1
から丙A民27の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG56議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イG56議員は,別紙4主張整理表「整理番号61」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する建物の1階部分を賃借して事務所として使
用し,また,同欄に記載のある個人1名を職員として前記事務所において
雇用した。
前記建物の種類は店舗兼居宅であり,居宅部分にはG56議員が入居
し,自宅として使用していた。また,前記建物の居宅部分と店舗(事務
所)部分にはそれぞれ出入口があり,電気代も各部分ごとに請求がされて
いた。
前記事務所においては,政務調査活動及び後援会活動が行われ,前記事
務所で雇用された前記職員も,これらの活動に従事した。なお,政党活動
は,民主党北海道稚内支部及び民主党北海道第12区総支部で行われた。
ウG56議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
前記で認定した前記建物の状況からすると,前記建物においては事務所部
分と居宅部分が明確に区分されているということができるから,前記事務所
に関する費用が本件運用方針において政務調査費を充当することができない
例とされている「自宅兼用の場合の事務所費」に該当するということはでき
ない。
次に,前記事務所では,政務調査活動及び後援会活動が行われ,前記事務
所で雇用された職員もこれらの活動に従事していたものと認められるから,
前記事務所に係る事務所費及び人件費については,議員の政務調査活動と合
理的な関連性を有しない活動による経費や対価が含まれているものと推認さ
せる一般的,外形的な事情があるということができる(なお,政党活動につ
いては,民主党支部等で行われていたものと認められ,これに反する証拠は
ない。)。もっとも,前記事務所に係る事務所費及び人件費について,本件
運用方針上,その使用実態及び業務実態により政務調査活動に係る経費や対
価とそれ以外の活動に係る経費や対価とを明確に区分することができない場
合であっても,2分の1を上限として政務調査費から充当することができる
とされているから,同議員が,前記事務所に係る事務所費及び人件費として
支出したもののうち2分の1を政務調査費から充当したとしても,本件運用
方針に反する違法なものであるとはいえない。
57G57議員(整理番号62(自29))
前記前提事実に加え,証拠(甲65の1から3まで,丙A自29の1から
丙A自29の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ
る。
アG57議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イG57議員は,別紙4主張整理表「整理番号62」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある
個人1名を職員として上記事務所において雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動及び後援会活動が行われ,前記職
員も,これらの活動に従事した。なお,政党活動については,自民党恵庭
支部で行われた。
ウG57議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
上記認定事実によれば,前記事務所では,政務調査活動以外にも後援会活
動が行われており,前記事務所で雇用された前記職員もこれらの活動に従事
したと認められるから,前記事務所に係る事務所費及び人件費として支出さ
れたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動による
経費や対価が含まれているものと推認される一般的,外形的な事情があると
いえる。なお,政党活動については,自民党恵庭支部で行われていたと認め
られ,これに反する証拠はない。
しかして,G57議員は,前記事務所全体の面積(49.68㎡)のうち
37.26㎡を政務調査活動に使用したので,事務所費についてはこの床面
積の割合で按分し,また,前記職員の人件費についても,後援会活動は平成
22年7月に行われた総会及び道政報告会,同年12月に行われた拡大役員
会及び道政報告会にすぎないので,その4分の3を政務調査費から充当した
旨主張し,同旨の陳述をする。上記陳述のうち,政務調査活動に使用した区
分に関して,同議員は,その範囲を示した平面図(丙A自29の1の2)を
提出しており,それぞれの区分には出入口があるなど使用区分が明確になっ
ているものと認められるから,前記事務所の事務所費について,床面積割合
で政務調査活動の割合を算出して政務調査費を充当したとしても,本件運用
方針に反するものとはいえない(ただし,上記按分割合によって前記事務所
に係る事務所費を按分すると違算があり,その限度で違法であるというべき
である。)。
他方,その陳述に係る前記職員に係る業務実態については,具体的な裏付
けを欠いており,たやすく採用することができない。そして,前記職員に係
る人件費については,政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価
とを明確に区分することができないから,的確な反証がされない限り,人件
費として支出されたもののうち2分の1を超えて充当された政務調査費につ
いては,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するの
が相当であるところ,上記推認を覆すに足りる的確な反証はない。したがっ
て,前記職員に係る人件費として支出されたもののうち2分の1を超えて政
務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法である
というべきである。
58G58議員(整理番号63(民28))
前記前提事実に加え,証拠(甲66の1から4まで,丙A民28の1の
1,丙A民28の2の1から丙A民28の3まで)及び弁論の全趣旨によれ
ば,以下の事実が認められる。
アG58議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イG58議員は,別紙4主張整理表「整理番号63」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある
個人3名を職員として上記事務所において雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動以外に,政党活動及び後援会活動
が行われ,前記各職員のうちH90及びH91は,常勤職員であり,政務
調査活動とともに,少なくとも後援会活動に従事した。
ウG58議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
事務所費について
上記認定事実によれば,前記事務所では,政務調査活動のみならず後援会
活動及び政党活動が行われていたものと認められるから,事務所費として支
出されたものには議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動によ
る経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるという
ことができ,また,事務所の使用実態により政務調査活動に係る経費とそれ
以外の活動に係る経費とを明確に区分することができないから,的確な反証
がされない限り,支出された経費のうち3分の1を超えて充当された政務調
査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評
価するのが相当である。
これに対して,G58議員は,前記事務所で政党活動はほとんど行ってお
らず,後援会活動としては年に3,4回開催するパークゴルフ大会の開催の
程度でその準備のために年間日数のうち3割程度を後援会活動に兼用した旨
陳述する(丙A民28の3)が,その陳述に係る事務所の使用実態について
具体的な裏付けを欠いており,たやすく採用することができず,他に事務所
費の按分割合に関する的確な反証はない。
したがって,前記事務所の事務所費として支出されたもののうち3分の1
を超えて政務調査費から充当することは,本件運用方針に反するものであっ
て違法であるというべきである。
人件費について
前記事務所では,政務調査活動以外にも後援会活動及び政党活動が行われ
ていたことは前記認定のとおりであり,前記事務所で雇用されていた3名の
職員もこれらの活動に従事し,前記各職員の人件費として支出されたものに
は,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したことに
よる対価が含まれているものと推認される一般的,外形的な事情があるとい
える。
しかるところ,G58議員は,H90は年に3,4回開催する後援会主催
のパークゴルフ大会の準備作業を行うこともあったので年間日数のうち3割
程度を後援会活動に従事したことから,その人件費の7割について政務調査
活動から支出し,H91はほぼ政務調査活動の事務補助に従事したが,後援
会活動のために地方出張に同行し運転業務をすることがあったから,その人
件費の6割について政務調査費から支出し,H92は同議員が政務調査活動
のため外部に出向く際の運転業務の補助として不定期にアルバイトで雇用し
たので政務調査業務に専従した旨主張し,これに沿う陳述(丙A民28の
3)をする。
検討するに,H92については,人件費として支出された金額が僅少であ
ることから,同人が不定期のアルバイトとして運転業務に専従した旨の上記
陳述の内容も首肯できるが,H90及びH91については,その業務実態に
関する具体的な裏付けを欠いており,たやすく採用することができない。
そうすると,H90及びH91の人件費については,その業務実態により
政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分するこ
とができないから,人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充
当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の
支出であると評価するのが相当であり,他にこれを覆すに足りる的確な反証
はない。他方で,H92の人件費の全額について,政務調査費から充当した
としても,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であるということ
はできない。
59G59議員(整理番号64(民29))
前記前提事実に加え,証拠(甲67の1から3まで,丙A民29の1の1
から丙A民29の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG59議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イG59議員は,札幌市内に事務所を賃借したほか,別紙4主張整理表
「整理番号64」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する駐車場
を賃借し,前記事務所の来客兼用の駐車場として利用した。また,G59
議員は,同欄に記載のある個人2名のほか1名を職員として上記事務所に
おいて雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動のみならず,政党活動及び後援会
活動が行われていた。
ウG59議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
駐車場の賃借料について
上記認定事実によれば,前記事務所では,政務調査活動のみならず,政党
活動及び後援会活動が行われていたと認められるから,前記事務所のために
利用されていた前記駐車場の賃借料として支出されたものには,議員の政務
調査活動と合理的な関連性を有しない活動に係る経費が含まれているものと
推認させる一般的,外形的な事情があるということができる。そして,前記
駐車場が来客兼用のものであり,その使用頻度により,政務調査活動に係る
経費とそれ以外の活動による経費とを明確に区分することができないことか
らすると,的確な反証がされない限り,支出された経費のうち6分の1を超
えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調
査費の支出であると評価するのが相当であるところ,これに対する的確な反
証はない。
人件費について
前記事務所では,政務調査活動のみならず後援会活動及び政党活動も行わ
れていたことは前記認定のとおりであるから,前記事務所に勤務する前記各
職員も,これらの活動に従事し,その対価として支出された人件費には,議
員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したことによる対
価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということ
ができ,また,その業務実態により政務調査活動に係る対価とそれ以外の活
動に係る対価とを明確に区分することができないから,的確な反証がされな
い限り,人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当された政
務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出である
と評価するのが相当である。
これに対して,G59議員は,H93は政務調査活動に関わる来客,電話
対応に加えて各種団体や企業等を訪問する際の同行及び森林,環境行政に関
わる助言等に携わるなど政務調査活動の事務補助に専従し,H94は政務調
査活動に関わる来客,電話対応に加えて調査への同行等も行うなど政務調査
活動の事務補助に専従していた旨陳述(丙A自29の3)するが,上記2名
の業務実態に関する具体的な裏付けを欠いており,たやすく採用することが
できず,他に上記2名の人件費の按分割合に関する的確な反証はない。
そうすると,上記2名の職員に関する人件費として支出されたもののうち
3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するもの
であって違法であるというべきである。
60G60議員(整理番号65(自30))
前記前提事実に加え,証拠(甲68の1から3まで,丙A自30の1から
丙A自30の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ
る。
アG60議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イG60議員は,札幌市内に事務所を賃借し,別紙4主張整理表「整理番
号65」欄に対応する「摘要」欄に記載のある個人2名を職員として前記
事務所において雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動のみならず,政党活動及び後援会
活動が行われていた。
ウG60議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
上記認定事実によれば,前記事務所では,政務調査活動のみならず後援会
活動及び政党活動が行われていたものと認められるから,前記事務所に勤務
する前記各職員もこれらの活動に従事し,その対価として人件費が支出され
たものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事し
たことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情が
あるということができ,また,業務実態により政務調査活動に係る対価とそ
れ以外の活動に係る対価とを明確に区分することができないから,人件費と
して支出されたもののうち3分の1を超えて充当された政務調査費について
は,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相
当である。
これに対して,G60議員は,後援会活動の一部や政党活動は別の職員が
行ったと主張し,同旨の陳述(丙A自30の3)をするが,具体的な職員や
その業務の実態は明らかにされていないから,たやすく採用することができ
ず,他に前記各職員の人件費の按分割合に関する的確な反証はない。
したがって,前記2名の職員に関する人件費として支出されたもののうち
3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反し違法で
あるというべきである。
61G61議員(整理番号67(自32))
前記前提事実に加え,証拠(甲70の1,2,丙A自32の3)及び弁論
の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
アG61議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イG61議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
G61議員は,別紙4主張整理表「整理番号67」欄に対応する「摘要」
欄に記載のあるH18及びH19を職員として雇用し,政務調査活動に従事
させた旨主張するので,この点について検討する。
ア証拠(丙A自32の2の1,丙A自32の2の2)によれば,①H18
の雇用契約書の雇用主は「G61後援会会長H20」であると記載さ
れ,また,「G61後援会(会長H20)と(以下G61後援会)H18
は後援会事務担当としてG61後援会職員として双方確認のもと雇用契約
を締結する。」と明記されていること,②H19の雇用契約書の雇用主は
「自由民主党北海道札幌市北区第4支部」「代表G61」であると記載さ
れ,また,「自由民主党北海道札幌市北区第4支部(代表G61)と(以
下第4支部)H19は党勢拡大と組織強化を目指し第4支部職員として双
方確認のもと雇用契約を締結する。」と明記されていることがそれぞれ認
められる。
上記で認定した各雇用契約書の雇用主及び雇用の目的からすると,H1
8については後援会の専従者として,H19については政党支部の専従者
として,それぞれ業務に従事していたと推認することができる。
イこれに対し,G61議員は,前記各職員との間で政務調査活動に関する
雇用契約書は作成していないが,H18及びH19はいずれも政務調査活
動にも従事しており,それぞれの活動における政務調査活動が占める割合
について,H18については6割,H19については7割から8割であっ
た旨陳述(丙A自32の3)するが,前記2名の職員に関する業務実態に
関する具体的な裏付けを欠いているのみならず,政務調査活動に関する雇
用契約書が作成されていないにもかかわらず,H18及びH19の職務の
大半が政務調査活動に関するものであったとは認めがたいことからする
と,上記陳述は採用することができない。
ウしたがって,H18及びH19が政務調査活動に従事したとは認められ
ないから,同人らに関する人件費(社会保険料を含む。)として支出した
ものについて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反する違法な
ものであるというべきである。
62G62議員(整理番号68(公3))
前記前提事実に加え,証拠(甲71の1から3まで,丙B3の1から丙B
3の7まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
アG62議員は,公明党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された北海
道議会議員である。
イG62議員は,別紙4主張整理表「整理番号68」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する各事務所(本項においては,各事務所の所
在地に応じて,それぞれ「札幌市内の事務所」,「釧路市内の事務所」と
いう。)を賃借した。
札幌市内の事務所は,宿舎としても利用された。
ウG62議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
札幌市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区の議員で
あるG62議員が宿舎としても利用したものと認められるが,同事務所が政
務調査活動の拠点としての実態を有しないものであったことをうかがわせる
客観的証拠はない。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札
幌市内の賃貸マンションの賃借料については,政務調査活動の拠点として継
続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応
じた額を充当することができるとされているところ,同議員による札幌市内
の事務所を政務調査活動の拠点として使用した日数は証拠上明らかではない
が,宿舎としての事務所の使用の実態が政務調査活動とそれ以外の活動に明
確に区分することができない場合であっても,改訂された本件運用方針の内
容等を踏まえて政務調査費を充当することができる按分割合は3分の1とす
そうすると,札幌市内の事務所に係る事務所費として支出したもののう
ち,3分の1を政務調査費から充当することは,本件運用方針に反するもの
違法なものであるとはいえない(ただし,上記按分割合によって札幌市内の
事務所に係る事務所費を按分すると違算があり,その限度で違法であるとい
うべきである。)。
釧路市内の事務所に係る事務所費について
G62議員は,釧路市内の事務所では政務調査活動のみが行われ,後援会
活動及び政党活動については,前記事務所の所在する建物の1階で行われて
おり,政務調査活動とそれ以外の活動は明確に区分されていた旨主張する。
検討するに,証拠(丙B3の7)によれば,釧路市内の事務所の所在する
建物1階には公明党釧路総支部事務所並びに同党に所属する各市議及び道議
の後援会事務所が設けられており,釧路市内の事務所と公明党支部及び後援
会事務所の郵便受けもそれぞれ別に設けられていることが認められることか
らすると,釧路市内の事務所では政務調査活動以外の活動がされ,そのため
の活動に係る事務所費が支出されたものと推認させる一般的,外形的な事情
があるとはいえない。
したがって,釧路市内の事務所に係る事務所費全額について政務調査費か
ら支出することは,本件運用方針に反する違法なものとはいえない。
63G63議員(整理番号69(民30))
前記前提事実に加え,証拠(甲72の1から3まで,丙A民30の1の1
から丙A民30の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG63議員は,民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された北海
道議会議員である。
イG63議員は,別紙4主張整理表「整理番号69」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する各事務所(本項においては,各事務所の所
在地に応じて,それぞれ「札幌市内の事務所」,「北斗市内の事務所」と
いう。)を賃借し,また,同欄に記載のある個人4名を北斗市内の事務所
において職員として雇用した。
上記4名のうちH95の雇用契約書の仕事内容欄には「政務調査活動補
助及び後援会活動補助」と記載され,その余の3名の雇用契約書の仕事内
容欄には「政務調査」と記載されている。
ウ札幌市内の事務所は,宿舎としても利用された。
他方,北斗市内の事務所は,G63議員が賃借人として借りたものであ
るが,連合北海道北斗地区連合会と共同で使用されていた。G63議員
は,連合北海道北斗地区連合会及び同議員の後援会との間で,北斗市内の
事務所に関する覚書を交わし,賃料等の負担割合について合意をした。
エG63議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
札幌市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区の議員で
あるG63議員が宿舎としても利用したものと認められるが,同事務所が政
務調査費の拠点としての実態を有しないものであったことをうかがわせる客
観的な証拠はない。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札
幌市内の賃貸マンションの賃借料については,政務調査活動の拠点として継
続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応
じた額を充当することができるとされているところ,同議員の陳述(丙A民
30の3)によっても札幌市内の事務所を政務調査活動の拠点として使用し
た日数は明らかではないが,宿舎としての事務所の使用の実態が政務調査活
動とそれ以外の活動に明確に区分することができない場合であっても,改訂
された本件運用方針の内容等を踏まえて,政務調査費を充当することができ
おりである。
そうすると,札幌市内の事務所に係る事務所費として支出したもののうち
3分の1を政務調査費から充当したとしても,本件運用方針に反する違法な
ものであるとはいえない。
北斗市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,北斗市内の事務所は,G63議員及び連合北海道
北斗地区連合会と共同で使用されていたこと,G63議員は,連合北海道北
斗地区連合会との間で,同事務所の使用に関する覚書を交わして,同事務所
の賃借料や光熱費等に関する負担割合を合意したことが認められる。なお,
上記覚書においては,北斗市内の事務所の使用に関し,G63議員の後援会
とも合意がされているが,後援会については「使用の実態が僅少」であると
記載されていることが認められること,同議員は,後援会活動は自宅で行っ
ている旨陳述していることからすると,北斗市内の事務所における使用実態
において,その事務所費に後援会活動に係る経費が含まれているものと推認
させる一般的,外形的な事情があるとまではいえない。
もっとも,北斗市内の事務所は,連合北海道北斗地区連合会と共同使用さ
れていたから,同事務所に係る事務所費については,議員の政務調査活動と
合理的な関連性を有しない活動による経費が含まれているものと推認させる
一般的,外形的な事情があるというべきところ,G63議員は,北斗市内の
事務所に関して,連合北海道北斗地区連合会の活動にも兼用されていたこと
から,同連合会との間で取り決めをし,事務所全体面積35.17㎡のうち
政務調査活動に使用した部分は14㎡であるから,事務所賃料の按分割合を
5分の2とした旨陳述している。同議員が陳述するところの北斗市内の事務
所における政務調査活動と同連合会による政党活動に係るそれぞれの使用区
分が具体的に明示されていないが,仮に議員による政務調査活動と同連合会
の活動に係る使用実態が明確に区分することができない場合であっても,本
件運用方針によれば,2分の1を上限として政務調査費を支出することがで
きるとされていることからすると,北斗市内の事務所に係る賃料について4
0%を政務調査費から支出したことは,本件運用方針に反する違法なもので
あるとまではいえない。
人件費について
北斗市内の事務所では,G63議員による政務調査活動のほか,連合北海
道北斗地区連合会による活動が行われていたものと認められるところ,同連
合会の活動は,G63議員の所属する政党や後援会の活動とは異なり,同議
員が関与することが当然に予定されているものであるとまではいえない上,
証拠(丙A民30の2の5の1から丙A民30の2の15まで)によれば,
同連合会は別途職員を雇用していたことが認められること,北斗市内の事務
所に勤務する前記各職員の雇用契約書には同連合会による活動に従事する旨
の記載がないことが認められることからすると,北斗市内の事務所が同連合
会と共用されていたとしても,前記各職員が同連合会による活動にも従事し
ていたものとまでは認めることはできない。
そうすると,H96は平成23年2月及び同年3月にG63議員の自宅に
おいて後援会活動にも関与し,H95はG63議員の自宅において後援会活
動にも従事した旨のG63議員の陳述の信用性を排斥することはできず,他
に前記各職員が後援会活動や政党活動に関与しており,これらの活動に係る
対価として人件費が支出されたことを推認させる一般的,外形的な事情を認
めることはできない。
したがって,H97及びH98の人件費の全額について政務調査費を充当
したとしても,その支出は,本件運用方針に反する違法なものであるとはい
えない。また,H96については,政務調査活動にのみ従事していたと考え
られる期間と後援会活動をも兼務していた期間を明確に区分することがで
き,政務調査活動と後援会活動を兼務していた期間が2か月であると認めら
れることからすると,本件運用方針によれば,H96の人件費として支出さ
れたもののうち12分の11を上限として政務調査費を支出することができ
ることになるところ,同人に関する人件費として支出されたもののうち平成
22年4月分から平成23年1月分までは全額が,同年2月分及び同年3月
分についてはその2分の1が政務調査費から充当されており,その支出は,
本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。他方,H95は,政
務調査活動及び後援会活動に従事し,その人件費は,政務調査以外の活動に
よる対価が含まれていることになるが,政務調査活動に係る対価とそれ以外
の活動に係る対価とを明確に区分することができないから,本件運用方針に
よれば,2分の1を上限として政務調査費を充当することができるところ,
G63議員がした政務調査費の支出は,この範囲内のものであるから,本件
運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
64G64議員(整理番号71(自34))
前記前提事実に加え,証拠(甲74の1から3まで,乙12,丙A自34
の1から丙A自34の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認
められる。
アG64議員は,自由民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された
北海道議会議員である。
イG64議員は,別紙4主張整理表「整理番号71」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する各事務所(本項においては,各事務所の所
在地に応じて,それぞれ「札幌市内の事務所」,「I6町内の事務所」と
いう。)を賃借し,また,同欄に記載のある各個人のうちH99及びH1
00をI6町内の事務所において職員として雇用した(氏名不詳者Bにつ
いては,後述する。)。
ウ札幌市内の事務所は,宿舎としても利用された。他方,I6町内の事務
所の所在する建物には,G64議員の自宅として使用されている部分があ
るが,事務所部分と自宅部分とは,壁で区切られ,それぞれ別に出入口が
設けられている。
I6町内の事務所においては,政務調査活動以外に,政党活動及び後援
会活動がされており,H99及びH100は,いずれもこれらの活動に従
事した。
エG64議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
札幌市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区の議員で
あるG64議員が宿舎としても利用したものと認められるが,同事務所が政
務調査活動の拠点としての実態を有しないものであったことをうかがわせる
客観的な証拠はない。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札
幌市内の賃貸マンションの賃借料については,政務調査活動の拠点として継
続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応
じた額を充当することができるとされているところ,本件全証拠を検討して
みても,同議員による札幌市内の事務所を政務調査活動の拠点として使用し
た日数は明らかではないが,宿舎としての事務所の使用の実態が政務調査活
動とそれ以外の活動に明確に区分することができない場合であっても,改訂
された本件運用方針の内容等を踏まえて,政務調査費を充当することができ
りである。そうすると,札幌市内の事務所費として支出したもののうち3分
の1を政務調査費から充当したとしても,本件運用方針に反する違法なもの
とはいえない(ただし,上記按分割合によって札幌市内の事務所に係る事務
所費を按分すると違算があり,その限度で違法であるというべきであ
る。)。
I6町内の事務所に係る事務所費(ただし,管理運営費に限る。以下この
項において同じ。)及び人件費について
ア上記認定事実によれば,I6町内の事務所の所在する建物には,G64
議員の自宅部分が存在するが,事務所部分と自宅部分は明確に区切られて
いると認められるから,I6町内の事務所が本件運用方針において政務調
査費から充当することができないこととされる議員の自宅兼用の事務所に
当たるということはできない。
イ上記認定事実によれば,I6町内の事務所では,政務調査活動のみなら
ず,後援会活動及び政党活動が行われており,同事務所で雇用されたH9
9及びH100も,これらの活動に従事していたものと認められるから,
I6町内の事務所に係る事務所費並びにH99及びH100の人件費につ
いては,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に係る経費
や対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるとい
うことができ,また,事務所の使用実態や職員の業務実態により,政務調
査活動に係る経費や対価とそれ以外の活動に係る経費や対価とを明確に区
分することが困難である。したがって,的確な反証がされない限り,事務
所費及び人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当された
政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出で
あると評価するのが相当である。
これに対して,G64議員は,後援会活動は年に数回の役員会,総会の
開催案内,後援会通信の作成,名簿整理などであり,政党活動は党員との
日程調整を行う程度であり,事務所の使用実態において1週間の事務所使
用時間40時間のうち20時間が政務調査活動であり,職員の活動実態と
ともに政務調査活動の按分割合を2分の1とした旨主張し,同旨の陳述
(丙A自34の3)をするが,その陳述に係る事務所の使用実態や職員の
業務実態に関する具体的な裏付けがなく,たやすく採用することができ
ず,他に事務所費及び人件費の按分割合に関する的確な反証はない。
したがって,I6町内の事務所に係る事務所費並びにH99及びH10
0の人件費として支出したもののうち3分の1を超えて政務調査費から充
当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべき
である。
なお,G64議員は,氏名不詳者Bを雇用し,平成22年9月から同年1
0月までの間は政務調査活動の補助業務に専従させ,同年11月から平成2
3年3月までの間は政務調査活動,政党活動及び後援会活動の補助業務に従
事させた旨主張する。
しかし,氏名不詳者Bに係る雇用契約書も氏名不詳者Bが人件費を受領し
たことを裏付ける領収書の提出もなく,また,氏名不詳者Bが本件運用方針
において人件費を政務調査費から充当することができないとされている配偶
者,扶養関係にある者又は同居し生計を一にする者のいずれかに該当する者
であるか否かも明らかではない。
そうすると,氏名不詳者Bに関する人件費については,政務調査費を充当
することができない一般的,外形的な事情があるということができ,これに
対する的確な反証もないから,同人に係る人件費について政務調査費から充
当することは,本件運用方針に反する違法なものであるというほかない。
65G65議員(整理番号72(自35))
前記前提事実に加え,証拠(甲75の1から3まで,丙A自35の1から
丙A自35の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ
る。
アG65議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イG65議員は,別紙4主張整理表「整理番号72」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある
個人2名を上記事務所において職員として雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動以外に,政党活動及び後援会活動
が行われた。
ウG65議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
事務所費について
上記認定事実によれば,前記事務所においては,政務調査活動のみならず
後援会活動及び政党活動が行われていたことが認められることからすると,
前記事務所に係る事務所費については,議員の政務調査活動と合理的な関連
性を有しない活動に係る経費が含まれていたものと推認させる一般的,外形
的な事情があるということができる。
しかるところ,G65議員は,前記事務所の床面積36.6㎡のうち18.
3㎡を政務調査活動に利用した旨主張し,同旨の陳述(丙A自35の3)を
するとともに,同事務所の平面図(丙A自35の1の2)を提出する。しか
し,上記平面図によれば,前記事務所の出入口は1か所であり,また,後援
会活動及び政党活動のために使用された部分にはトイレ,給湯室があり,こ
れらは政務調査活動に従事する職員や道政に関する陳情や議員との面会に訪
れた者らも使用するものであると認められる。そうとすれば,同事務所の使
用区分は,同議員が主張するように同事務所の床面積の半分に当たる区分が
専ら政務調査活動に使用されたとも認めがたい。
そうすると,前記事務所に係る事務所費については,政務調査活動に係る
経費と後援会活動及び政党活動に係る経費とを使用実態で明確に区分するこ
とができないということになるから,本件運用方針によれば,事務所費の3
分の1を上限として政務調査費を充当することができるとされている。した
がって,前記事務所の事務所費として支出したもののうち3分の1を超えて
政務調査費を充当することは,本件運用方針に反して違法であるというべき
である。
人件費について
前記事務所では,政務調査活動のみならず後援会活動及び政党活動も行わ
れたことは前記認定のとおりであるから,前記事務所で雇用された前記各職
員2名に係る人件費(社会保険料及び労働保険料を含む。以下,この項にお
いて同じ。)については,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない
活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外
形的な事情があるということができ,また,その業務実態により政務調査活
動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分することができな
いから,的確な反証がされない限り,人件費として支出されたもののうち3
分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違
法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G65議員は,前記各職員が政務調査活動及び後援会活動
に従事したが,政党活動については同議員及び自民党余市支部の役員らが行
ったから,前記各職員の人件費として支出したもののうち2分の1を政務調
査費から充当することができる旨主張し,自民党余市支部役員名簿(丙A3
5の2の3)を証拠として提出した上で同旨の陳述をする。しかしながら,
同議員が陳述する前記各職員の業務実態については具体的な裏付けを欠いて
いるのみならず,上記役員名簿は,自民党余市支部における役員の存在を裏
付けるにすぎず,同役員らのみで前記事務所で政党活動が行われていた旨の
裏付けとはなり得ず,上記推認を覆すに足りる的確な反証はない。
そうすると,前記各職員の人件費として支出されたもののうち3分の1を
超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違
法であるというべきである。
66G66議員(整理番号73(民31))
前記前提事実に加え,証拠(甲76の1から4まで,丙A民31の1の1
から丙A民31の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG66議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イG66議員は,別紙4主張整理表「整理番号73」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある
個人4名を上記事務所において職員として雇用した。
ウ前記事務所には,来客専用の駐車場が存在していた。
前記事務所においては,政務調査活動のみならず,後援会活動も行われ
た。なお,政党活動は,民主党北海道第9区総支部で行われた。
エG66議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
事務所費及び駐車場に係る賃料について
原告は,G66議員が,別件訴訟において,前記事務所の所在地を現住所
とする陳述書を提出しているから,前記事務所がG66議員の自宅であった
ことが疑われると主張する。しかし,陳述者が陳述書に職場の住所地を記載
することは少なからず認められるし,証拠(丙A民31の1の3)によれ
ば,平成22年当時のG66議員の住民票上の住所地は,前記事務所と異な
る場所にあったと認められることからすると,前記事務所がG66議員の自
宅兼事務所であると認めることはできない。
しかして,上記認定事実によれば,前記事務所では,政務調査活動及び後
援会活動が行われていたと認められるから,事務所費として支出されたもの
には,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に係る経費が含
まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということがで
き,また,前記駐車場は前記事務所の来客専用の駐車場であると認められる
から,前記駐車場に係る賃借料についても,同様のことを指摘することがで
きる。なお,政党活動は,民主党支部で行われていたものと認められるか
ら,前記事務所において政党活動が行われており,そのための経費に政務調
査費が支出されたものと推認される一般的,外形的な事情があると認めるに
足りる証拠はない。
しかるところ,G66議員は,後援会活動は年に2回の後援会主催で行う
親睦行事の準備のために使用した程度であり,駐車場については政務調査活
動に関わる来客専用であって後援会活動に関わる来客用としては近隣に別途
駐車場を借りていたから,事務所費についてはその2分の1に政務調査費を
充当し,前記駐車場に係る賃借料はその全額に政務調査費を充当した旨陳述
(丙A民31の3)をする。しかし,事務所費については,その陳述に係る
前記事務所の使用実態についての具体的な裏付けを欠いており,たやすく採
用することができないが,事務所費について,その使用実態により政務調査
活動に係る経費と後援会活動に係る経費とを明確に区分することができない
場合であっても,本件運用方針によれば,2分の1を上限として政務調査費
を充当することができるとされているから,前記事務所の事務所費について
その按分割合を2分の1として政務調査費を充当したとしても,本件運用方
針に反する違法なものとまではいえない。他方,前記事務所で後援会活動に
関わる来客専用の駐車場を別途賃借していたことを裏付ける証拠は提出され
ていないから,上記陳述はたやすく採用することができず,前記駐車場に係
る賃借料については,その使用頻度により政務調査活動に係る経費と後援会
活動に係る経費とを明確に区分することができないから,支出された経費の
うち2分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反
する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当であり,他にこれに
反する的確な反証はない。
人件費について
前記事務所では,政務調査活動のみならず後援会活動も行われていたこと
は前記認定のとおりであり,前記事務所における使用実態に照らすと,前記
事務所で雇用されていた前記各職員もこれらの活動に従事し,その人件費と
して支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない
活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外
形的な事情があるということができる。
しかるところ,G66議員は,後援会活動の補助はほとんど後援会の役員
がボランティアで行っており,H101は,ほぼ政務調査活動の補助に従事
し,週に数回程度後援会活動に関する郵便発送業務や電話対応に従事するこ
とがあったため,政務調査費を充当する按分割合を9割とし,H102及び
H103は,政務調査活動の事務補助,郵送物の処理等に必要となった際に
不定期で雇用し,H104は,伊達市内を巡会して行う道政報告会の運転業
務のみに従事したので,H102,H103及びH104については,その
人件費全額を政務調査費から充当した旨主張し,同旨の陳述をする。
上記陳述は,前記各職員の業務実態に関する具体的な裏付けを欠いている
が,証拠(丙A民31の2の2から丙A民31の2の14まで)によれば,
H101以外の3名の職員に関する領収証には「バイト代」として不定期に
報酬が支払われていることが認められ,上記陳述と整合するものであるか
ら,上記3名が政務調査活動の補助に従事した旨の上記陳述の信用性を排斥
することは困難である。
そうすると,H101以外の3名の職員に係る人件費の全額について政務
調査費から充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとま
ではいえないが,他方,H101に係る人件費については,その業務実態に
より政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分す
ることができないから,人件費として支出されたもののうち2分の1を超え
て充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査
費の支出であると評価するのが相当であり,他にこれと異なる按分割合に関
する的確な反証はない。
67G67議員(整理番号74(自36))
前記前提事実に加え,証拠(甲77の1から4まで,丙A自36の1から
丙A自36の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ
る。
アG67議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イG67議員は,別紙4主張整理表「整理番号74」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある
個人6名を上記事務所において職員として雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動のみならず後援会活動も行われ,
前記各職員も,これらの活動に従事した。なお,政党活動については,自
民党江別支部で行われた。
ウG67議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
上記認定事実によれば,前記事務所では政務調査活動のみならず後援会活
動が行われ,同事務所で雇用された前記各職員もこれらの活動に従事したも
のと認められるから,前記事務所に係る事務所費及び人件費として支出され
たものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に係る経
費及び対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があると
いうことができる。なお,政党活動は,自民党支部で行われていたことは前
記認定のとおりであって,これに反する証拠はない。
そして,前記事務所に係る事務所費及び前記各職員の人件費については,
事務所の使用実態や職員の業務実態により政務調査活動に係る対価とそれ以
外の活動に係る対価とを明確に区分することができないから,的確な反証が
されない限り,事務所費及び人件費として支出されたもののうち2分の1を
超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務
調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G67議員は,前記事務所の一週間の使用時間40時間の
うち25時間を政務調査活動に使用したことを踏まえ,前記事務所に係る事
務所費のうち賃借料についてはその8分の5に政務調査費を充当し,管理運
営費及び人件費についてはその2分の1に政務調査費を充当した旨主張し,
同旨の陳述(丙A自36の3)をするが,上記陳述に係る前記事務所の使用
実態及び前記各職員の業務実態に係る具体的な裏付けを欠くものであり,た
やすく採用することができない。
そうすると,前記事務所に係る賃借料については,その支出に係る2分の
1を超えて政務調査費を充当することは本件運用方針に反する違法なもので
あるというべきである。他方,前記事務所に係る管理運営費及び前記各職員
の人件費についてそれぞれ2分の1を政務調査費から充当したことは,本件
運用方針で示された範囲内であるから,本件運用方針に反する違法なもので
あるとまではいえない。
68G68議員(整理番号75(民32))
前記前提事実に加え,証拠(甲78の1から3まで,丙A民32の1の1
から丙A民32の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG68議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イG68議員は,別紙4主張整理表「整理番号75」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する事務所(本項においては,以下「釧路市I
24の事務所」という。)を賃借したほか,北海道釧路市I25町にも事
務所(本項においては,以下「釧路市I25町の事務所」という。)を設
け,また,同欄に記載のある個人3名を職員として雇用した。
釧路市I25町の事務所は,民主党北海道第7区総支部の1室であり,
同事務所においては,政務調査活動のみならず政党活動も行われていた。
前記各職員のうちH105及びH106は,釧路市I25町の事務所で勤
務した。
ウG68議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
釧路市I24の事務所に係る事務所費について
G68議員は,釧路市I24の事務所を政務調査活動のために賃借し,政
党活動については釧路市I25町の事務所で行い,また,平成22年度は釧
路市I24の事務所では後援会活動はしていない旨陳述する(丙A民32の
3)ところ,本件全証拠を検討してみても,釧路市I24の事務所で政党活
動や後援会活動が行われ,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない
これらの活動に事務所費として政務調査費が充当されたものと推認させる一
般的,外形的な事情はうかがわれない。
そうすると,釧路市I24の事務所の事務所費の全額に政務調査費を充当
したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
人件費について
上記認定事実によれば,釧路市I25町の事務所は,民主党北海道第7区
総支部の1室であり,同所においては政党活動も行われていたことが認めら
れる。そして,本件全証拠を検討してみても,釧路市I25町の事務所にお
いて,それぞれの使用区分が明確に区分されていたと認めるに足りる認める
に足りる証拠はないから,同所に勤務するH105及びH106も,政務調
査活動のみならず政党活動にも従事し,議員の政務調査活動と合理的な関連
性を有しない活動にも従事したことによる対価が支払われたものと推認させ
る一般的,外形的な事情があるということができる(なお,本件全証拠を検
討してみても,上記2名の職員が後援会活動に従事したことによる対価が支
払われたものと推認させる一般的,外形的な事情を認めることはできな
い。)。
そして,上記2名の人件費については,その業務実態により政務調査活動
に係る対価と政党活動に係る対価とを明確に区分することができないから,
的確な反証がされない限り,人件費として支出されたもののうち2分の1を
超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務
調査費の支出であると評価することができる。
これに対して,G68議員は,釧路市I25町の事務所における政党活動
は,同支部が別途雇用した職員がしていた旨主張し,同旨の陳述をするが,
同支部が政党活動のために雇用した職員に関する雇用契約書その他の証拠が
提出されていないから,上記陳述をたやすく採用することができず,他に上
記2名の職員の人件費の按分割合に関する的確な反証もない。
したがって,釧路市I25町の事務所に勤務するH105及びH106に
関する人件費として支出されたもののうち2分の1を超えて政務調査費を充
当することは,本件運用方針に反する違法なものであるというべきである。
他方で,G68議員は,H107について,炭鉱関連業務の対応のため,
平成22年5月のみ不定期に雇用された職員であり,政務調査活動に専従し
たのでその人件費の全額について政務調査費から充当した旨主張し,同旨の
陳述をする。検討すると,H107に対しては,平成22年5月20日に
「給与として」1万5000円が支払われたことを証する領収証(丙A民3
2の2の3)が証拠として提出されており,上記陳述に沿うものであるか
ら,同人が特定の政務調査活動のために臨時に雇用された職員であるとのG
68議員の陳述の信用性を排斥することは困難である。そうすると,H10
7に対する人件費の全額について政務調査費から充当したとしても,本件運
用方針に反する違法なものであるとはいえない。
69G69議員(整理番号76(自37))
前記前提事実に加え,証拠(甲79の1から3まで,丙A自37の1から
丙A自37の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ
る。
アG69議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イG69議員は,別紙4主張整理表「整理番号76」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある
個人7名のうち氏名不詳者C以外の者を上記事務所において職員として雇
用した(氏名不詳者Cについては,別途検討する。)。
前記事務所においては,政務調査活動のみならず,政党活動及び後援会
活動が行われた。
ウG69議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
前記事務所に係る事務所費及び人件費(ただし,氏名不詳者Cに係るもの
を除く。)
上記認定事実によれば,前記事務所では,政務調査活動のみならず後援会
活動及び政党活動が行われていたものと認められるから,前記事務所に係る
事務所費及び人件費については,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有
しない活動による経費や対価が含まれているものと推認させる一般的,外形
的な事情があるということができる。
これに対して,G69議員は,事務所費については,前記事務所の床面積
36.855㎡のうち24.57㎡を政務調査活動に使用しており,その使
用実態に照らして前記事務所に係る事務所費についての政務調査活動に係る
按分割合を3分の2にした旨主張していた。ところが,同議員は,前記事務
所全体の床面積36.6㎡のうち18.3㎡を政務調査活動に使用したの
で,前記事務所に係る事務所についての政務調査活動に係る按分割合を2分
の1とした旨陳述する(丙A自37の3)。上記陳述は,本件における重要
な争点である事務所費における使用実態に関して,その主張を大きく変遷さ
せており,およそ採用することはできない。そうすると,前記事務所の事務
所費に関して,上記推認を覆すに足りる的確な反証はなく,前記事務所の使
用実態において,政務調査活動に係る経費とそれ以外の活動に係る経費とを
明確に区分することができないから,本件運用方針によれば,3分の1を上
限として政務調査費を充当することができる。したがって,前記事務所の事
務所費として支出されたもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当する
ことは,本件運用方針に反する違法なものであるというべきである。
また,G69議員は,前記事務所における政党活動については,党員との
面談,自民党への意見陳述,パンフレットの配布程度であったので同議員が
行い,職員による補助を要しないものであった旨主張し,同旨の陳述をする
が,その業務実態に関して具体的な裏付けを欠いており,たやすく採用する
ことができない。そうすると,前記事務所における人件費に関して上記推認
を覆すに足りる的確な反証はなく,前記事務所における職員の活動実態にお
いて,政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動による対価とを明確に区分
することもできないところ,本件運用方針によれば,支出された人件費のう
ち3分の1を上限として政務調査費を充当することができるとされている。
したがって,前記事務所における氏名不詳者Cを除く6名の職員の人件費と
して支出したもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本
件運用方針に反する違法なものであるというべきである。
氏名不詳者Cの人件費について
G69議員は,氏名不詳者Cを雇用し,政務調査活動に従事させたと主張
し,同旨の陳述をする。
しかし,同議員が氏名不詳者Cを雇用したことを証する雇用契約書も,氏
名不詳者Cが労務に従事したことの対価を受領したことを証する領収書も提
出されていない。のみならず,氏名不詳者Cが政務調査費を充当することが
できない例とされる配偶者,扶養関係にある者,同居し生計を一にする者の
いずれかに該当するか否かも明らかではない。
そうすると,氏名不詳者Cについては,政務調査費を充当することができ
ない一般的,外形的な事情があるということができ,これに対する的確な反
証はないから,同人に係る人件費について政務調査費を充当することは,本
件運用方針に反して違法であるというべきである。
70G70議員(整理番号77(共1))
前記前提事実に加え,証拠(甲80の1から3まで,丙C1の1から丙C
1の10の12まで,丙C3の1から丙C3の6まで)及び弁論の全趣旨に
よれば,以下の事実が認められる。
アG70議員は,日本共産党に所属する北海道議会議員である。
イG70議員は,別紙4主張整理表「整理番号77」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する事務所(本項においては,以下「本件議員
事務所」という。)を賃借し,また,同欄に記載のある個人3名を本件議
員事務所において職員として雇用した。
ウ日本共産党は,個人の後援会を組織せず,議員の選挙区に対応した後援
会が議員の後援会活動を行う方針を採用しており,G70議員に係る後援
会活動は,本件議員事務所とは別に設けられた日本共産党小樽後援会で行
われた。もっとも,G70議員は,北海道選挙管理委員会に対し,本件議
員事務所の住所を所在地として同議員の個人名を冠した後援会を届け出て
いるが,その収支報告書によると,収入及び支出ともに零と記載されてい
る。
政党活動については,日本共産党小樽後援会が所在する地区委員会の事
務所及び北海道委員会事務所等で行われた。
エG70議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
上記認定事実によれば,後援会活動及び政党活動は本件議員事務所とは別
に設けられた事務所等で行われ,本件議員事務所では政務調査活動のみが行
われたものと認められる。
もっとも,G70議員は,北海道選挙管理委員会に対して,本件議員事務
所を所在地として同議員の個人名を冠した後援会を届け出ているが,それは
政治資金規正法に抵触する可能性を踏まえて念のため届け出られたものと認
められ(丙C3の2),実際のところ,同議員の個人名を冠した後援会の収
支報告書には収入も支出も零と記載されていることからすると,本件議員事
務所では後援会活動が行われていないものと認められ,これに反する証拠は
ない。
そうすると,本件議員事務所の事務所費及び同事務所に雇用された前記各
職員の人件費の全額について政務調査費を充当したとしても,本件運用方針
に反する違法なものであるとまではいえない。
71G71議員(整理番号78(民33))
前記前提事実に加え,証拠(甲81の1から3まで,乙8,丙A民33の
1の1から丙A民33の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が
認められる。
アG71議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イG71議員は,別紙4主張整理表「整理番号78」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある
個人2名を上記事務所において職員として雇用した。
前記事務所は,政務調査活動のほか,少なくとも後援会に関する郵便物
の受領先として使用されていた。
ウG71議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
事務所費について
上記認定事実によれば,前記事務所では,政務調査活動のみならず後援会
に関する郵便物の受領先としても利用されていたものと認められるから,前
記事務所の使用実態に照らすと,前記事務所の事務所費には,議員の政務調
査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に係る経費が含まれているも
のと推認させる一般的,外形的な事情があるといえる。なお,前記事務所の
事務所費に政党活動に係る経費が含まれているものと推認させる一般的,外
形的な事情はない。
そして,前記事務所の事務所費については,その使用実態により政務調査
活動に係る経費と後援会活動に係る経費とを明確に区分することができない
から,的確な反証がされない限り,支出された経費のうち2分の1を超えて
充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費
の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G71議員は,後援会活動はG71連合後援会事務局長の
自宅でされており,前記事務所は郵便物の受領先として使用されていたにす
ぎず,1週間当たりの事務所使用時間に占める割合は1割程度であった旨主
張し,同旨の陳述(丙A民33の3)をするが,上記陳述に係る事務所の使
用実態に関する具体的な裏付けがなく,たやすく採用することができず,他
に事務所費の按分割合に関する的確な反証はない。
したがって,前記事務所の事務所費として支出したもののうち2分の1を
超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違
法であるというべきである。
人件費について
前記事務所では,政務調査活動及び後援会活動が行われていたことは前記
認定のとおりであるから,前記事務所に職員として雇用されている前記各職
員の人件費には,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活
動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形
的な事情があるということができ,また,その業務実態により,政務調査活
動に係る対価と後援会活動に係る対価とを明確に区分することができないか
ら,的確な反証がされない限り,人件費として支出されたもののうち2分の
1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な
政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G71議員は,前記各職員はいずれも政務調査活動に専従
した旨主張し,同旨の陳述をするが,その活動実態に関する具体的な裏付け
を欠いており,たやすく採用することができず,他に上記推認を覆すに足り
る的確な反証はない。
したがって,前記各職員の人件費として支出したもののうち2分の1を超
えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法
であるというべきである。
72G72議員(整理番号79(民34))
前記前提事実に加え,証拠(甲82の1から4まで,乙9,乙12,丙A
民34の1の1から丙A民34の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下
の事実が認められる。
アG72議員は,民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された北海
道議会議員である。
イG72議員は,別紙4主張整理表「整理番号79」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する各事務所(本項においては,各事務所の所
在地に応じて,それぞれ「札幌市内の事務所」,「函館市内の事務所」と
いう。)を賃借し,函館市内の事務所において同欄に記載のある個人4名
を職員として雇用した。前記各職員のうちH108及びH109は,函館
市内の事務所で政務調査活動の補助業務に従事したほか,外部で行われた
後援会活動に際し,同議員に同行することがあった。
札幌市内の事務所は,宿舎としても利用された。なお,政党活動は,民
主党第8総支部で行われた。
ウG72議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
札幌市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区の議員で
あるG72議員が宿舎としても利用したものと認められるが,同事務所が政
務調査活動の拠点としての実態を有しないものであったことをうかがわせる
証拠はない。なお,原告は,同議員が事務所状況報告書(甲82の2)に札
幌市内の事務所を「自宅兼事務所」として届け出ていることから,札幌市内
の事務所は政務調査活動の拠点としての実態を有しない旨主張するが,札幌
市内の事務所については後に「専用事務所」に修正された(乙12)から,
上記事務所状況報告書の記載をもって札幌市内の事務所が政務調査活動の拠
点としての実態を有しないものであると認めることはできない。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札
幌市内の賃貸マンションの賃借料については,政務調査活動の拠点として継
続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応
じた額を充当することができるとされているところ,同議員の陳述する(丙
A民34の3)ところによっても,政務調査活動としての使用実績は明らか
ではない。しかして,宿舎としての事務所の使用の実態が政務調査活動とそ
れ以外の活動に明確に区分することができない場合であっても,改訂された
本件運用方針の内容等を踏まえて,政務調査費を充当することができる按分
る。
しかるところ,同議員は,札幌市内の事務所に係る事務所費のうち35%
について政務調査費から充当している。したがって,同事務所の事務所費と
して支出したもののうち3分の1を超えて政務調査費から充当することは,
本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
函館市内の事務所に係る事務所費について
G72議員は,後援会事務所は同議員の自宅又は後援会会長の自宅で行っ
た旨陳述しており,これに反する具体的な証拠はなく,他に函館市内の事務
所で後援会活動が行われ,そのための経費として政務調査費が充当されたと
推認させる一般的,外形的な事情はない。また,政務調査活動は,民主党支
部で行われたことは前記認定のとおりである。
そうすると,函館市内の事務所に係る事務所費については,政務調査活動
以外の活動のために利用された経費が含まれているものと推認させる一般
的,外形的な事情はないから,同事務所費の全額について政務調査費から充
当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
人件費について
アH108及びH109の人件費について
函館市内の事務所では政務調査以外の活動が行われたことを推認させる
一般的,外形的な事情があるとはいえないことは前記で説示したとおりで
あるところ,H108及びH109については,函館市内の事務所で政務
調査活動の補助業務に従事したほか,外部で行われた後援会活動に際して
議員と同行したことが認められる。なお,前記2名の職員に係る人件費に
ついて,同人らが政党活動に従事したことによる対価が含まれていると推
認させる一般的,外形的な事情はない。
そして,前記2名の職員に係る人件費について,その業務実態により政
務調査活動に係る対価と後援会活動に係る対価とを明確に区分することが
できないところ,本件運用方針によれば,人件費として支出されたものの
うち2分の1を上限として政務調査費を充当することができるとされてい
る。したがって,同議員が前記職員2名の人件費として支出したもののう
ち2分の1を政務調査費から充当したとしても,本件運用方針に反する違
法なものであるとはいえない。
イH110及びH111の人件費について
G72議員は,函館市内の事務所で雇用したH110については短期ア
ルバイトで政務調査活動の補助(原簿整理等)に従事し,同じくH111
については短期アルバイトで政務調査活動の補助(函館市内の学校グラウ
ンド整備状況の調査への同行等)に従事した旨陳述する。しかるところ,
H110に関しては,勤務した日付けが記された月額1万円から2万円を
受領したことを証する領収証(丙A民34の2の5から丙A民34の2の
11まで)が,H111については,函館市内小学校の教育環境調査に1
日5000円,2日間従事した旨の領収書(丙A民34の2の12,丙A
民34の2の13)が,それぞれ証拠として提出されている。そうする
と,前記2名の職員は,上記陳述に沿ってそれぞれ政務調査活動の補助に
従事したものと認められ,これに反する証拠はない。
そうすると,前記2名の職員の人件費の全額について政務調査費から充
当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
73G73議員(整理番号80(民35))
前記前提事実に加え,証拠(甲83の1から3まで,丙A民35の1の1
から丙A民35の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG73議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イG73議員は,別紙4主張整理表「整理番号80」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある
個人2名を上記事務所において職員として雇用した。
前記事務所には2台分の駐車場があり,1台は来客専用であり,もう1
台は来客兼用であった。
ウG73議員の後援会活動は,札幌市I26区t条u丁目v-w所在の
「広志会」又は同市I27区x条y丁目所在の「共生のネットワーク」で
行われた。また,政党活動は,民主党白石で行われた。
エG73議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出
し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充
当した。
前記認定事実によれば,後援会活動及び政党活動については,前記事務所
とは別の場所で行われたものと認められ,前記事務所の事務所費について議
員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に係る経費が含まれてい
るものと推認させる一般的,外形的な事情を認めるに足りる証拠はない。
また,G73議員は,後援会活動については別途必要な職員を都度雇用し
ており,政党活動補助については民主党支部が別途雇用する職員及びボラン
ティアが行っていた旨陳述する(丙A民35の3)ところ,上記陳述の信用
性を排斥する具体的な証拠はない。かえって,前記事務所で雇用された職員
のうち,H112については,「子育てカウンセリング」に従事した日数が
記載された月額1万5000円から2万5000円を受領した旨の領収証
(丙A民35の2の2から丙A民35の2の13まで)が証拠として提出さ
れており,同人が専ら政務調査活動に従事していたことを裏付けるものであ
る。そうすると,前記各職員の人件費について,議員の政務調査活動と合理
的な関連性を有しない活動に従事したことによる対価が含まれているものと
推認させる一般的,外形的な事情を認めるに足りる証拠はない。
したがって,前記事務所の事務所費の全額(ただし,来客兼用の駐車場に
関しては2分の1の限度で)及び前記各職員に係る人件費の全額について政
務調査費を充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとは
いえない。
74G74議員(整理番号81(民36))
前記前提事実に加え,証拠(甲84の1から3まで,丙A民36の1の1
から丙A民36の3)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ
る。
アG74議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イG74議員は,北海道檜山郡I28町に事務所を設け,別紙4主張整理
表「整理番号81」欄に対応する「摘要」欄に記載のある個人4名を上記
事務所において職員として雇用した。なお,上記職員のうち,H113の
雇用契約書には,仕事内容欄に「政務調査に係る調査補助」と記載されて
いるほか,就業時間は午前10時から午前10時30分まで,給与は月額
5000円と記載されている。
ウG74議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
G74議員は,H113は一日30分程度,月額5000円の報酬の約定
で,政務調査活動に関わる書類整理や電話対応等の事務補助のみに従事して
いた旨陳述している(丙A民36の3)ところ,上記陳述は,前記で認定し
たH113に係る雇用契約書の記載とも整合するものであり,他にH113
の人件費について議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従
事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事
情を認めるに足りる証拠はない。
また,G74議員は,H114,H115及びH116は短期アルバイト
雇用で政務調査活動に関わる広報広聴のために地方出張する際の運転業務,
道政便りの配布業務のみに従事した旨陳述するところ,上記3名が議員から
報酬を受領したことを証する領収書(丙A民36の2の2から丙A民36の
2の6まで)には,1日5000円で2日分の報酬として支払われた旨の記
載やバイト料といった記載があることが認められることに加え,上記3名に
支払われた報酬は年額にしていずれも3万円であることからしても,上記3
名の職員がアルバイトとして政務調査活動に関わる広報広聴のために地方出
張する際の運転業務等のために短時間就労した旨の上記陳述の信用性を排斥
することはできず,他に上記3名の人件費について議員の政務調査活動と合
理的な関連性を有しない活動に従事したことによる対価が含まれているもの
と推認させる一般的,外形的な事情を認めるに足りる証拠はない。
そうすると,前記事務所で雇用された4名の職員の人件費の全額について
政務調査費を充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであると
はいえない。
75G75議員(整理番号82(自38))
前記前提事実に加え,証拠(甲85の1から4まで,丙A自38の1の1
から丙A自38の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG75議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イG75議員は,平成22年4月から同年6月までの間,別紙4主張整理
表「整理番号82」欄に対応する「摘要」欄記載のうち北海道日高郡I1
3町I29町z丁目a’番地b’号の事務所(本項においては,この事務
所のことを「事務所1」という。)を賃借し,同年7月から平成23年3
月までの間,同欄のうち同町I29町c‘丁目d’番地e’号の事務所
(本項においては,この事務所のことを「事務所2」という。)を賃借
し,それぞれ事務所として使用した。なお,事務所1及び事務所2の賃借
料の振込みの名義人は,G75議員の後援会となっている。
また,G75議員は,同欄記載の駐車場を賃借し,事務所の駐車場とし
て使用したが,同駐車場は来客専用であった。
前記各事務所では,政務調査活動のみならず後援会活動及び政党活動が
行われた。
ウG75議員は,同欄に記載のある個人3名を職員として雇用し(なお,
平成23年3月からH117も雇用した。),前記各事務所において勤務
させた。上記3名の職員は,政務調査活動のみならず,後援会活動及び政
党活動にも従事した。
エG75議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
前記認定事実によれば,事務所1及び事務所2では,いずれも政務調査活
動のみならず後援会活動及び政党活動が行われ,また,上記各事務所で雇用
された前記職員3名もこれらの活動に従事したものと認められるから,事務
所1及び事務所2に係る事務所費(事務所1の塵芥収集運搬業務に係る費用
を含む。以下,この項において同じ。)及び前記職員3名の人件費(労働保
険料を含む。以下,この項において同じ。)については,議員の政務調査活
動と合理的な関連性を有しない活動に係る経費や対価が含まれているものと
推認させる一般的,外形的な事情があるということができ,また,事務所の
使用実態や職員の業務実態により政務調査活動に係る経費や対価とそれ以外
の活動に係る経費や対価とを明確に区分することはできない。したがって,
的確な反証がされない限り,事務所費及び人件費として支出されたもののう
ち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反す
る違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G75議員は,事務所1及び事務所2の1か月の使用時間
192時間のうち144時間を政務調査活動に使用したので,事務所費のう
ち4分の3を政務調査活動を充当し,また,職員として雇用した4名のう
ち,H118,H119及びH120は政務調査活動の補助と後援会活動及
び政党活動の補助に従事した割合は概ね3対1であったので,人件費のうち
4分の3を政務調査費を充当した旨主張し,同旨の陳述(丙A自38の3)
をするが,上記陳述に係る事務所の使用実態及び職員の業務実態に関する具
体的な裏付けを欠いており,たやすく採用することができず,他に事務所費
及び人件費の按分割合に関する的確な反証はない。
また,事務所の駐車場は来客専用であると認められるが,事務所1及び事
務所2では政務調査活動以外に後援会活動及び政党活動が行われていたこと
は前記で説示したとおりである。そして,駐車場の賃借料についても,その
使用頻度において政務調査活動に係る経費とそれ以外の活動に係る経費とを
明確に区分することができないから,支出された経費のうち3分の1を超え
て充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査
費の支出であると評価するのが相当であり,これに反する的確な反証はな
い。
したがって,事務所1及び事務所2に係る事務所費,駐車場に係る賃借
料,前記職員3名の人件費として支出したもののうち3分の1を超えて政務
調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であると
いうべきである。
76G76議員(整理番号83(自39))
前記前提事実に加え,証拠(甲102の1から8まで,丙A自39の1の
1から丙A自39の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認め
られる。
アG76議員は,自由民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された
北海道議会議員である。
イG76議員は,別紙4主張整理表「整理番号83」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する各事務所(本項においては,各事務所の所
在地に応じて,それぞれ「札幌市内の事務所」,「北見市内の事務所」と
いう。)を賃借し,また,北見市内の事務所において同欄に記載のある個
人2名を職員として雇用した。前記各職員の雇用契約書の仕事内容欄には
「政務調査に係る調査補助及び関係書類の作成」,「後援会活動に係る秘
書活動及び関係事務・経理事務」と記載されている。
北見市内の事務所では,政務調査活動のみならず後援会活動が行われ,
前記各職員もこれらの活動に従事した。
ウ札幌市内の事務所及び北見市内の事務所の各賃貸借契約書の使用目的の
項には,G76議員がこれらの事務所をそれぞれ後援会事務所として使用
し,賃貸人の承諾なく使用目的を変更してはならない旨の記載がある。
G76議員は,札幌市内の事務所を宿舎としても利用したほか,同事務
所において同欄記載の通信機器を賃借し,また,同欄記載の駐車場(以下
「本件駐車場」という。)を賃借して北見市内の事務所の来客専用駐車場
として利用した。
エG76議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
事務所費について
ア上記認定事実によれば,札幌市内の事務所及び北見市内の事務所の各賃
貸借契約書にはその使用目的としていずれも後援会事務所として使用する
ことが明記されていることが認められる。しかし,弁論の全趣旨によれ
ば,北見市はG76議員の地元であると認められるところ,G76議員
が,同市内又はその近郊に政務調査活動のための事務所を別途設けていた
ことをうかがわせる事情はないし,また,北海道議会が開かれている間,
政務調査活動の拠点と目すべき場所を札幌市内の事務所以外に別途設けて
いたことをうかがわせるような事情もない。そうすると,前記各賃貸借契
約書の使用目的に後援会事務所として使用することが記載されているから
といって,札幌市内の事務所及び北見市内の事務所が政務調査活動の拠点
としての実態がなく,事務所費として政務調査活動と何ら合理的な関連性
を有しない活動に支出したものと推認させる一般的,外形的な事情がある
ということはできない。
イ札幌市内の事務所に係る事務所費及び通信機器賃借料について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区の議員
であるG76議員が宿舎としても利用したものであると認められるが,同
事務所が政務調査活動の拠点として実態を有しないものと認めるに足りる
証拠はないことは前記で説示したとおりである。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている
札幌市内の賃貸マンションの賃料については,政務調査活動の拠点として
継続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)
に応じた額を充当することができるとされているところ,同議員の陳述
(丙A自39の3)するところによっても,同議員による札幌市内の事務
所を政務調査活動の拠点として使用した日数は明らかではないが,宿舎と
しての事務所の使用の実態が政務調査活動とそれ以外の活動に明確に区分
することができない場合であっても,改訂された本件運用方針の内容等を
踏まえて政務調査費を充当することができる按分割合は3分の1とするの
市内の事務所に係る事務所費として支出したもののうち3分の1について
政務調査費を充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものである
とはいえない。なお,札幌市内の事務所で賃借されていた通信機器につい
ては,政務調査活動と無関係なものであることを推認させる一般的,外形
的な事情を認めるに足りる証拠がなく,本件運用方針によれば,政務調査
活動,後援会活動及び私的活動が混在し,活動の実態により明確に区分す
ることができない場合であっても,その4分の1を上限として政務調査費
を充当することができるとされていることからすれば,札幌市内の事務所
で賃借されていた通信機器の賃借料のうち4分の1を政務調査費を充当し
たとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
ウ北見市内の事務所に係る事務所費及び本件駐車場に係る賃借料について
前記認定事実によれば,北見市内の事務所では政務調査活動及び後援会
活動が行われ,本件駐車場もこれらの活動のための来客専用の駐車場とし
て利用されたことが認められるから,北見市内の事務所に係る事務所費及
び本件駐車場の賃借料として支出された経費には,議員の政務調査活動と
合理的な関連性を有しない後援会活動に係るものも含まれているものと推
認される一般的,外形的な事情があるということができる。なお,本件全
証拠を検討してみても,北見市内の事務所で政党活動が行われ,そのため
の経費に政務調査費が支出されたものと推認させる一般的,外形的な事情
があるとは認めるに足りる的確な証拠はない。
しかして,北見市内の事務所に係る事務所費及び本件駐車場に係る賃借
料については,その使用実態において政務調査活動に係る経費と後援会活
動に経費とを明確に区分することができないから,本件運用方針によれば
支出された経費のうち2分の1を上限として政務調査費を充当することが
できるとされている。そうすると,北見市内の事務所に係る事務所費とし
て支出したもののうち3分の1,本件駐車場の賃借料として支出したもの
のうち30%を政務調査費から充当したとしても,本件運用方針に反する
違法なものであるとはいえない。
人件費(社会保険料を含む。以下,本項において同じ。)について
前記認定事実によれば,北見市内の事務所で雇用された前記各職員が政務
調査活動のみならず後援会活動に従事したことが認められるから,前記各職
員の人件費として支出された対価には,議員の政務調査活動と合理的な関連
性を有しない後援会活動に従事したことによる対価が含まれているものと推
認される一般的,外形的な事情があるということができる。なお,政党活動
について,G76議員は,別に雇い入れた「H121」が従事し,前記2名
の職員は従事していない旨主張し,同旨の陳述(丙A自39の3)をすると
ころ,北見市内の事務所では政党活動が行われたことを推認させる一般的,
外形的な事情を認めるに足りる証拠はないことからすると,上記陳述の信用
性を排斥することは困難であり,同事務所で雇用された前記各職員が政党活
動に従事し,そのための経費として政務調査費が支出されたと推認させる一
般的,外形的な事情があると認めることはできない。
そして,前記各職員に係る人件費については,その業務実態により政務調
査活動に係る対価と後援会活動による対価とを明確に区分することが困難で
あるから,本件運用方針によれば支出された人件費のうち2分の1を上限と
して政務調査費を充当することができるとされている。そうすると,前記各
職員に係る人件費として支出されたもののうち2分の1に政務調査費を充当
したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
77G77議員(整理番号84(民37))
前記前提事実に加え,証拠(甲86の1から3まで,丙A民37の1の1
から丙A民37の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG77議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イG77議員は,別紙4主張整理表「整理番号84」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある
個人8名を上記事務所において職員として雇用した。前記各職員のうちH
122,H123,H124,H125,H126及びH127は,いず
れも不定期の短期間の業務に従事した。他方,前記各職員のうちH128
及びH129は,政務調査活動のほか,前記事務所とは別に設けられた後
援会事務所に出向いて,議員の後援会活動にも従事した(なお,H128
は,就業時間外に政党活動にも従事したが,その報酬は民主党から月額2
万円が支払われた。)。
ウG77議員は,後援会活動のために前記事務所が所在する建物の203
号室を賃借した。また,政党活動については,前記事務所が所在する建物
の204号室で行われた。
エG77議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
事務所費について
上記認定事実によれば,後援会活動及び政党活動については,前記事務所
とは別の部屋で行われたものと認められるから,前記事務所の事務所費とし
て支出された経費には,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活
動が含まれるものと推認させる一般的,外形的な事情の存在を認めるに足り
る証拠はない。
したがって,前記事務所の事務所費全額について政務調査費を充当したと
しても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
人件費について
前記認定事実によれば,後援会活動及び政党活動は前記事務所とは別に設
けられた事務所でそれぞれ行われたことに加え,前記事務所で雇用されたH
122,H123,H124,H125,H126及びH127は,いずれ
も不定期の短期雇用の職員であることが認められることからすると,上記6
名の職員は道政報告書の発送作業等のために短期のアルバイト雇用として採
用した旨のG77議員の陳述(丙A民37の3)の信用性を排斥することは
できず,他に上記6名の職員に係る人件費として支出されたものについて,
政務調査活動以外の活動に従事したことによる対価が含まれているものと推
認させる一般的,外形的な事情を認めるに足りる的確な証拠はない。そうす
ると,上記6名の人件費全額について政務調査費を充当したとしても,本件
運用方針に反する違法なものとはいえない。
他方,前記認定事実によれば,H128及びH129は,政務調査活動以
外に後援会活動にも従事したことが認められる。しかして,G77議員は,
H128は平成23年1月から同年3月まで,H129は平成22年7月か
ら平成23年3月まで,それぞれ前記事務所以外に設けられた後援会事務所
で後援会活動に従事した旨陳述するところ,上記期間以外に前記2名の職員
が議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に従事したこ
とによる人件費が支出されたものと推認させる一般的,外形的な事情がある
と認めるに足りる的確な証拠はない。もっとも,G77議員は,前記2名の
職員が政務調査活動と後援会活動に従事していた期間については,その職務
内容の6割が政務調査活動であった旨陳述するが,その業務実態に関する具
体的な裏付けを欠いており,たやすく採用することができない。そうする
と,前記2名の職員が後援会活動にも従事していた期間の人件費について
は,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に従事した
ことによる対価が含まれていると推認される一般的,外形的な事情があり,
これらはその業務実態により政務調査活動に係る対価と後援会活動に係る対
価とを明確に区分することが困難であるということができるから,人件費と
して支出されたもののうち2分の1を超えて充当された政務調査費について
は,違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。したがっ
て,H128についての人件費として支出されたもののうち8分の7(平成
22年4月から同年12月までのすべての活動を政務調査活動とし,平成2
3年1月から同年3月までの活動についてはその2分の1を政務調査活動で
あるとみなした場合に算定できる平成22年度中のH128の職務内容に占
める政務調査活動の割合)を超えて,H129についての人件費として支出
されたもののうち8分の5(平成22年4月から同年6月までのすべての活
動を政務調査活動とし,同年7月から平成23年3月までの活動については
その2分の1を政務調査活動であるとみなした場合に算定できる平成22年
度中のH129の職務内容に占める政務調査活動の割合)を超えて,政務調
査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるとい
うべきである。
78G78議員(整理番号85(自40))
前記前提事実に加え,証拠(甲87の1から3まで,丙A自40の1から
丙A自40の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ
る。
アG78議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イG78議員は,別紙4主張整理表「整理番号85」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する事務所(本項においては,この事務所を
「事務所1」という。)を賃借し,また,同欄に記載のある個人5名を事
務所1において職員として雇用した。事務所1では,後記ウの事務所が賃
借されるまでの間,政務調査活動のみならず,後援会活動及び政党活動が
行われていた。
ウG78議員は,平成23年1月15日から同年4月15日までの間,後
援会活動及び政党活動を行うための事務所として,登別市内に別の事務所
(本項においては,この事務所を「事務所2」という。)も賃借した。
エG78議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
事務所費について
上記認定事実によれば,事務所1では,事務所2を賃借した平成23年1
月14日まで,政務調査活動のみならず後援会活動及び政党活動が行われて
いたものと認められるから,上記期間の事務所1に係る賃借料については,
議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動のための経費が含まれ
ているものと推認される一般的,外形的な事情があるということができる。
これに対して,G78議員は,事務所1においては,その床面積の約2分
の1に当たる約30㎡を政務調査活動のために利用し,平成23年1月から
同年3月までは,後援会活動及び政党活動を事務所2で行ったため,政務調
査活動のみに利用された旨主張し,同旨の陳述(丙A自40の3)をする。
しかし,証拠(丙A自40の1)によれば,事務所1は,2階建ての1棟の
建物(床面積57.96㎡)であると認められるところ,事務所1を政務調
査活動とそれ以外の活動に明確に区分して使用していたことを裏付ける証拠
はなく,上記陳述はたやすく採用することができない。そうすると,事務所
2が賃借されるまでの間,事務所1は,政務調査活動とそれ以外の活動のた
めに利用されており,事務所1の事務所費については,その使用実態により
政務調査活動に係る経費とそれ以外の活動に係る経費とを明確に区別するこ
とができないから,本件運用方針によれば,3分の1を上限として政務調査
費を充当することができるとされている。
したがって,事務所1の事務所費については,平成22年4月1日から平
成23年1月14日までは3分の1を超えて政務調査費を充当することは本
件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。他方,同月
15日から平成23年3月末までは,政務調査活動のみに利用されたものと
認められるから,事務所費の全額について政務調査費を充当したとしても,
本件運用方針に反するものとはいえないから,結局のところ,事務所1の年
間の事務所費については,36分の17を超えて政務調査費を充当すること
は違法であるというべきである。
人件費について
上記認定事実によれば,事務所1及び事務所2では政務調査活動のみなら
ず後援会活動及び政党活動が行われていたものと認められるから,事務所1
で雇用された前記各職員もこれらの活動に従事しており,その人件費につい
ては,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したこと
による対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があると
いうことができ,また,その業務実態により,政務調査活動に係る対価とそ
れ以外の活動に係る対価とを明確に区分することが困難である。したがっ
て,的確な反証がされない限り,人件費として支出されたもののうち3分の
1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な
政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G78議員は,前記各職員のうちH130,H131及び
H132はいずれも政務調査活動に専従し,H133及びH134は政務調
査活動とともに後援会活動に従事し,政党活動はG78議員及び自民党北海
道登別市第一支部の職員が行った旨主張し,同旨の陳述をする。しかしなが
ら,上記陳述は,その業務実態に関する具体的な裏付けを欠いているのみな
らず,かえって,H130,H131及びH132の領収書(丙A自40の
2の1から丙A自40の2の3まで)と異なり,H133及びH134の給
与に関する領収証(丙A自40の2の4,丙A自40の2の5)の宛名ない
し名宛人は「自由民主党北海道登別市第一支部支部長G78」となっている
ことが認められることからすると,H133及びH134は政党活動にも関
わっていたと推認することができ,上記陳述はたやすく採用することができ
ず,他に前記各職員の人件費の按分割合に関する的確な反証はない。
したがって,前記各職員の人件費として支出されたもののうち3分の1を
超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違
法であるというべきである。
79G79議員(整理番号86(自41))
前記前提事実に加え,証拠(甲88の1から3まで,丙A自41の2)及
び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
アG79議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イG79議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
G79議員は,別紙4主張整理表「整理番号86」欄に対応する「摘要」
欄記載の氏名不詳者D,E,Fを職員として雇用し,政務調査活動に従事さ
せた旨主張し,同旨の陳述をする(丙A自41の2)。しかし,同議員が氏
名不詳者D,E,Fを雇用したことを証する雇用契約書も,氏名不詳者D,
E,Fが労務に従事したことの対価を受領したことを証する領収書も提出さ
れていない。のみならず,氏名不詳者D,E,Fが政務調査費を充当するこ
とができない例とされる配偶者,扶養関係にある者,同居し生計を一にする
者のいずれかに該当するか否かも明らかではない。
そうすると,氏名不詳者D,E,Fの人件費については政務調査費を充当
することができない一般的,外形的な事情があるということができ,これに
対する的確な反証はないから,これら3名に係る人件費について政務調査費
を充当することは,本件運用方針に反して違法であるというべきである。
80G80議員(整理番号87(共2))
前記前提事実に加え,証拠(甲89の1から3まで,丙C2の1から丙C
2の13の34まで,丙C3の1から6まで)及び弁論の全趣旨によれば,
以下の事実が認められる。
アG80議員は,日本共産党に所属する北海道議会議員である。
イG80議員は,別紙4主張整理表「整理番号87」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する事務所(この項において「本件議員事務
所」という。)を賃借し,また,同欄に記載のある個人5名を本件議員事
務所において職員として雇用した。なお,上記職員のうち,H135の雇
用契約書の給与支払欄には「共産党勤務を兼務により1/2に按分」との
記載がある。
ウ日本共産党は,個人の後援会を組織せず,議員の選挙区に対応した後援
会が議員の後援会活動を行う方針を採用しており,G80議員に係る後援
会活動は,本件議員事務所とは別に設けられた日本共産党旭川地区後援会
で行われた。もっとも,G80議員は,北海道選挙管理委員会に対し,本
件議員事務所の住所を所在地として同議員の個人名を冠した後援会を届け
出ているが,その収支報告書によると,収入及び支出ともに零と記載され
ている。
政党活動については,日本共産党旭川後援会が所在する地区委員会の事
務所及び北海道委員会事務所等で行われた。
エG80議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
上記認定事実によれば,後援会活動及び政党活動は本件議員事務所とは別
に設けられた事務所等で行われ,本件議員事務所では政務調査活動のみが行
われたものと認められる。
もっとも,G80議員は,北海道選挙管理委員会に対して,本件議員事務
所の住所を所在地として同議員の個人名を冠した後援会を届け出ているが,
それは政治資金規正法に抵触する可能性を踏まえて念のため届け出られたも
のと認められ(丙C3の2),実際のところ,同議員の個人名を冠した後援
会の収支報告書には収入も支出も零と記載されていることからすると,本件
議員事務所では後援会活動が行われていないものと認められ,これに反する
証拠はない。
そうすると,本件議員事務所の事務所費及び同事務所に雇用されたH13
5以外の職員4名の人件費の全額について政務調査費を充当したとしても,
本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
なお,本件議員事務所で雇用されたH135については,前記で認定した
その雇用契約書の記載及び弁論の全趣旨によると,本件議員事務所で政務調
査活動の補助に従事したほか,日本共産党旭川地区委員会で政党活動にも従
事したことが認められる。そうすると,同人に係る人件費については,議員
の政務調査活動と合理的な関連性を有しない政党活動に従事したことによる
対価が含まれているものと推認される一般的,外形的な事情があるといえる
が,その業務実態により政務調査活動に係る対価と政党活動に係る対価とを
明確に区分することができない場合であっても,本件運用方針によれば2分
の1を上限として政務調査費を支出することができるとされており,同人に
係る人件費について政務調査費を充当した金額は上記の範囲内であるから,
その支出が本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
81G81議員(整理番号88(自42))
前記前提事実に加え,証拠(甲90の1から3まで,乙13,丙A自42
の1の1から丙A自42の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実
が認められる。
アG81議員は,自由民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された
北海道議会議員である。
イG81議員は,別紙4主張整理表「整理番号88」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する各事務所(本項においては,各事務所の所
在地に応じて,それぞれ「札幌市内の事務所」,「根室市内の事務所」と
いう。)を賃借し,また,根室市内の事務所において同欄に記載のある個
人2名を職員として雇用した。
同議員の後援会活動は,根室市内の別の場所に設けられた「G81を応
援する会」で行われ,また,政党活動は,根室市内の別の場所に所在する
自民党北海道根室支部で行われた。他方,札幌市内の事務所は,同議員の
宿舎としても利用された。
根室市内の事務所で雇用された前記各職員は,政務調査活動のみならず
後援会活動にも従事した。
ウG81議員は,北海道議会議長に対して提出した平成22年度事務所状
況報告書(甲90の3)において,札幌市内の事務所について自宅兼事務
所であり,他の用途との兼用はないと報告していたが,後に,同事務所が
事務所であり,宿舎として兼用しているとの内容に訂正する報告書(乙1
3)を提出した。
エG81議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
札幌市内の事務所費について
上記認定事実によれば,G81議員は,北海道議会議長に対し,当初,札
幌市内の事務所が自宅兼用である旨の報告書を提出していたが,後に,宿舎
として兼用している旨に訂正する報告書を提出していることが認められるこ
とに加え,G81議員の住民票上の住所は,平成22年度においては北海道
根室市内にあったと認められる(丙A自42の1の3)ことからすれば,札
幌市内の事務所が自宅兼用である旨の当初の報告書の記載は,単なる誤記で
ある可能性があると認められる。したがって,札幌市内の事務所に係る事務
所費については,政務調査費を充当することができない例とされる自宅兼用
の事務所費に当たると認めることはできない。
しかして,上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙
区の議員であるG81議員が宿舎としても利用したものと認められるが,同
事務所が政務調査活動の拠点としての実態を有しないものであったことをう
かがわせる客観的な証拠はない。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札
幌市内の賃貸マンションの賃借料については,政務調査活動の拠点として継
続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応
じた額を充当することができるとされているところ,同議員が主張するとこ
ろの按分割合は,政務調査活動として使用した実績に基づく試算とはいえな
いから,採用することはできないが,宿舎としての事務所の使用の実態が政
務調査活動とそれ以外の活動に明確に区分することができない場合であって
も,改訂された本件運用方針の内容等を踏まえて,政務調査費を充当するこ
したとおりである。
したがって,札幌市内の事務所に係る事務所費について3分の1を超えて
政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であ
るというべきである。
根室市内の事務所に係る事務所費について
前記認定事実によれば,G81議員の後援会活動及び政党活動について
は,根室市内の事務所とは別の事務所等で行われたものと認められ,根室市
内の事務所で政務調査活動以外の活動が行われ,その事務所費として支出さ
れたものには議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に係る経
費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があると認めるに
足りる証拠はない。
そうすると,根室市内の事務所に係る事務所費の全額について政務調査費
から充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえな
い。
人件費について
前記認定事実によれば,前記各職員は,政務調査活動のみならず後援会活
動にも従事したことが認められるから,前記各職員に係る人件費について
は,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に従事した
ことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があ
るといえ,また,その業務実態により政務調査活動に係る対価とそれ以外の
活動に係る対価とを明確に区分することは困難であるから,的確な反証がさ
れない限り,人件費として支出されたもののうち2分の1を超えて充当され
た政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出で
あると評価するのが相当である。
これに対して,G81議員は,前記各職員の活動のうち政務調査活動が8
割を占めていた旨主張し,同旨の陳述をするが,その陳述に係る業務実態に
関する具体的な裏付けを欠いており,たやすく採用することができず,他に
人件費の按分割合に関する的確な反証はない。
したがって,前記各職員の人件費として支出されたもののうち2分の1を
超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違
法であるというべきである。
82G82議員(整理番号89(自43))
前記前提事実に加え,証拠(甲91の1から3まで,丙A自43の1の1
から丙A自43の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG82議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イG82議員は,別紙4主張整理表「整理番号89」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在し,自由民主党札幌南区連合支部が所有して使
用する建物の一部を,同支部から賃借して事務所として利用したほか,同
欄に記載のある駐車場を賃借し,上記事務所の来客専用の駐車場として利
用した。また,同議員は,同欄に記載のある個人2名を上記事務所におい
て職員として雇用した。
ウ前記事務所の所在する建物内は,自由民主党札幌南区連合支部の使用区
分とG82議員が使用する事務所部分に区分されており,床面積50.8
9㎡のうち約半分を同議員が事務所として使用した。前記事務所では政務
調査活動及び後援会活動が行われ,前記各職員もこれらの活動に従事し
た。
エG82議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
事務所費及び駐車場の賃借料について
上記認定事実によれば,前記事務所が入居する建物は,自由民主党札幌南
区連合支部が使用する建物の一部であるが,G82議員の使用する前記事務
所部分と自由民主党札幌南区連合会が使用する部分に区分されていると認め
られるから,前記事務所の事務所費には議員の政務調査活動と合理的な関連
性のない政党活動による経費が含まれているものと推認させる一般的,外形
的な事情があるとは認めることはできない。
しかして,上記認定事実によれば,前記事務所では政務調査活動及び後援
会活動が行われたものと認められるから,前記事務所に係る事務所費及び駐
車場の賃借料には,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会
活動に係る経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があ
るということができるところ,その使用実態及び使用頻度により政務調査活
動に係る経費と後援会活動に係る経費とを明確に区分することができない場
合であっても,本件運用方針によれば,2分の1を上限として政務調査費を
充当することができるとされている。そうすると,前記事務所の事務所費及
び駐車場の賃借料のうち2分の1を政務調査費を充当したとしても,本件運
用方針に反する違法なものであるとはいえない。
人件費について
前記認定事実によれば,前記事務所で雇用された前記各職員は,政務調査
活動のみならず後援会活動にも従事したものと認められるから,前記各職員
の人件費には,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動
に従事したことによる対価が含まれていると推認される一般的,外形的な事
情があるといえるが,その業務実態により政務調査活動に係る対価と後援会
活動に係る対価とを明確に区分することができない場合であっても,本件運
用方針によれば,その2分の1を上限として政務調査費を充当することがで
きるとされている。
しかして,G82議員は,H136についてはその人件費の2分の1を,
H137についてはその人件費の17分の7を政務調査費から充当してお
り,いずれも本件運用方針の定める範囲内であると認められるから,前記各
職員の人件費に関する政務調査費の充当は,本件運用方針に反する違法なも
のであるとはいえない。
83G83議員(整理番号90(民38))
前記前提事実に加え,証拠(甲92の1から3まで,乙10,丙A民38
の1の1から丙A民38の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実
が認められる。
アG83議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イG83議員は,別紙4主張整理表「整理番号90」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある
個人1名を上記事務所において職員として雇用した。
ウG83議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
G83議員は,後援会活動については,前記事務所が所在する建物の4号
室を借りて行われたほか,区民センターや町内会館を使用して後援会総会や
道政報告会を開催し,政党活動については,前記事務所が所在する建物の2
号室を借りて行われた旨陳述しているところ,この陳述に反する具体的な証
拠はないから,前記事務所で政務調査活動以外の活動が行われ,その事務所
費には政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に係る経費が含まれて
いるものと推認させる一般的,外形的な事情があると認めるに足りる証拠は
ない。そうすると,前記事務所に係る事務所費の全額について政務調査費か
ら充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえな
い。
また,前記事務所では前記職員1名が雇用されたことは前記認定のとおり
であるところ,G83議員は,前記職員は政務調査補助として雇用し,後援
会活動は後援会会長,後援会事務局長及び同議員が行い,政党活動は民主党
第1区総支部の職員1名が2号室で事務補助を行っていた旨陳述する。上記
陳述には具体的な裏付けに乏しいが,上記のとおり,後援会活動や政党活動
が前記事務所とは別の場所で行われていたことからすると,前記職員が政務
調査活動以外の後援会活動や政党活動に従事し,その人件費には政務調査活
動と合理的な関連性を有しない活動に従事したことによる対価が含まれてい
るものと推認させる一般的,外形的な事情があるとまで認めるのは困難であ
る。そうすると,前記職員の人件費の全額について政務調査費を充当したと
しても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
84G84議員(整理番号91(民39))
前記前提事実に加え,証拠(甲93の1から5まで,丙A民39の1の1
から丙A民39の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG84議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イG84議員は,別紙4主張整理表「整理番号91」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある
個人3名を前記事務所において職員として雇用した。
前記事務所においては,平成23年9月当時,G84議員の後援会の看
板が掲げられていたほか,同後援会が発行した平成22年12月15日付
け文書には,同後援会の連絡先として前記事務所の所在地が記載されてい
た。
なお,政党活動は,前記事務所とは別の場所にある民主党十勝総支部で
行われた。
ウG84議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
事務所費について
上記認定事実によれば,政党活動は民主党支部で行われていたものと認め
られ,前記事務所で政党活動が行われており,前記事務所の事務所費に政党
活動に係る経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があ
ると認めるに足りる証拠はない。
G84議員は,後援会活動は同議員の自宅で行われ,前記事務所は政務調
査活動のみに使用された旨主張し,同旨の陳述(丙A民39の3)をする。
しかし,平成22年度の終了から半年程度後の時点で前記事務所にG84議
員の後援会の看板が掲示されていたこと,平成22年度中に発行された同後
援会発行に係る文書に連絡先として前記事務所の所在地が記載されているこ
とが認められることからすれば,前記事務所においては後援会活動も行われ
たものと認められ,これに反する上記陳述は採用することはできない。
そうすると,前記事務所は,政務調査活動及び後援会活動が行われていた
ものと認められるから,その事務所費については,議員の政務調査活動と合
理的な関連性を有しない活動に係る経費が含まれているものと推認される一
般的,外形的な事情があり,また,事務所の使用実態により政務調査活動に
係る経費と後援会活動に係る経費とを明確に区分することができないから,
支出された経費のうち2分の1を超えて充当された政務調査費については,
本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当で
あり,他に事務所費の按分割合に関する的確な反証はない。
人件費について
前記事務所では,政務調査活動のみならず後援会活動が行われたものと認
められることは前記認定のとおりであるから,前記各職員もこれらの政務調
査活動以外に後援会活動にも従事し,その対価として人件費が支出されたも
のと推認させる一般的,外形的な事情があるということができる。なお,政
党活動については,前記事務所とは別の場所にある民主党支部で行われたも
のと認められるから,前記各職員が政党活動にも従事し,その対価として人
件費が支出されたものと推認させる一般的,外形的な事情を認めるに足りる
証拠はない。
しかるところ,G84議員は,前記各職員はいずれも政務調査活動にのみ
従事していた旨主張し,同旨の陳述をするが,上記で指摘した前記事務所に
おける使用実態に照らし,採用することができない。
そして,前記各職員の人件費については,その業務実態により政務調査活
動に係る対価と後援会活動に係る対価とを明確に区分することができないか
ら,人件費として支出されたもののうち2分の1を超えて充当された政務調
査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評
価するのが相当であり,他に人件費の按分割合に関する的確な反証はない。
85G85議員(整理番号92(民40))
前記前提事実に加え,証拠(甲94の1から5まで,丙A民40の1の1
から丙A民40の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
アG85議員は,民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された北海
道議会議員である。
イG85議員は,別紙4主張整理表「整理番号92」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する事務所(本項においては,以下「札幌市内
の事務所」という。)を賃借したほか,北海道旭川市内にも事務所を設け
(本項においては,以下「旭川市内の事務所」という。),旭川市内の事
務所において同欄に記載のある個人2名を職員として雇用した。上記職員
のうちH138の雇用契約書の仕事内容欄には「政務調査活動の事務補助
業務」と記載されており,毎週月曜日と火曜日の午前9時から午後5時ま
で勤務し,時給850円の報酬を支払うこととなっている。また,上記職
員のうちH139の雇用契約書の仕事内容欄には「後援会活動及び政務調
査活動の事務補助業務」と記載されている。
ウ札幌市内の事務所の賃貸人は,G85議員の実姉である。札幌市内の事
務所は,宿舎としても利用された。
また,旭川市内の事務所においては,政務調査活動及び後援会活動が行
われ,H139は,これらの活動に従事した。なお,政党活動は,民主党
北海道第6区総支部で行われた。
エG85議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
札幌市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所の賃貸人は,G85議員の実姉
であるが,証拠(丙A民40の1の2)によれば,同人の平成22年度中の
住民票上の住所地が横浜市内にあったことが認められることからすると,札
幌市内の事務所の賃貸人がG85議員の実姉であるからといって,同人がG
85議員と生計を同一にしていると認めることはできない。
しかして,上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙
区の議員であるG85議員が宿舎としても利用したものと認められるが,同
事務所が政務調査活動の拠点としての実態を有しないものであったことをう
かがわせる客観的な証拠はない。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札
幌市内の賃貸マンションの賃借料については,政務調査活動の拠点として継
続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応
じた額を充当することができるとされているところ,同議員による札幌市内
の事務所を政務調査活動の拠点として使用した日数は証拠上明らかではない
が,宿舎としての事務所の使用の実態が政務調査活動とそれ以外の活動に明
確に区分することができない場合であっても,改訂された本件運用方針の内
容等を踏まえて,政務調査費を充当することができる按分割合は3分の1と
札幌市内の事務所費の3分の1について政務調査費から充当したとしても,
本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない(ただし,上記按分割
合によって札幌市内の事務所に係る事務所費を按分すると違算があり,その
限度で違法であるというべきである。)。
人件費について
旭川市内の事務所では,政務調査活動のみならず後援会活動が行われたも
のと認められるから,前記事務所で雇用されたH139のみならずH138
も,これらの活動に従事し,その対価として人件費が支払われたものと推認
させる一般的,外形的な事情があるということができる。なお,政党活動に
ついては,民主党支部で行われており,前記各職員が政党活動にも従事し,
その対価として人件費が支払われたことを推認させる一般的,外形的な事情
を認めるに足りる証拠はない。
しかるところ,G85議員は,H138がアルバイトとして政務調査活動
のための帳票整理や書類整理等に従事し,後援会活動には従事していたなか
った旨主張し,同旨の陳述(丙A民40の3)をする。検討するに,前記認
定事実によれば,H139の雇用契約書には後援会活動にも従事する旨の記
載があるのに対して,H138にはその旨の記載がないこと,H138の雇
用形態は月曜日及び火曜日の勤務時間とされ,報酬も時給850円とされて
いることからすると,H138が政務調査活動の事務補助としてアルバイト
として雇用されていた旨の上記陳述の信用性は排斥することはできない。し
たがって,H138に関する人件費の全額について政務調査費を充当したと
しても,本件運用方針に反するものとはいえない。
他方,G85議員は,H139が携わる後援会活動の事務はスケジュール
管理のみであったので,同人の人件費のうち月額3万円を後援会活動分と
し,日額9600円を政務調査活動分としたと主張し,同旨の陳述をする
が,その業務実態に関する具体的な裏付けはなく,たやすく採用することは
できない。そうすると,H139の人件費については,その業務実態により
政務調査活動に係る対価と後援会活動に係る対価とを明確に区分することが
できないから,人件費として支出されたもののうち2分の1を超えて充当さ
れた政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出
であると評価するのが相当であり,他に同人に関する人件費についての按分
割合に関する的確な反証はない。
86G86議員(整理番号93(自44))
前記前提事実に加え,証拠(甲95の1から3まで,丙A自44の1の1
から丙A自44の2の2まで,丙A自44の4,証人G86)及び弁論の全
趣旨によれば,以下の事実が認められる。
アG86議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イG86議員は,別紙4主張整理表「整理番号93」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する事務所及び来客専用の駐車場を賃借し,ま
た,同欄に記載のある個人3名を上記事務所において職員として雇用し
た。上記職員のうち,H140は,上記事務所の常勤職員であるが,H1
41及びH142は,1日ないし7日の短期のアルバイトとして報酬が支
払われた。
ウG86議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
エG86議員は,平成23年4月19日,北海道議会議員の任期を満了し
た。
事務所費について
上記認定事実によれば,G86議員は,平成23年4月19日をもって北
海道議会議員を任期満了となったものと認められるところ,同議員は,平成
21年3月に後援会を解散し,平成22年度中は自民党道連の役職には就任
していなかったため政党活動は行わなかった旨主張し,同旨の陳述及び証言
(以下,本項においては「証言等」という。)をする。
検討するに,確かに,G86議員は,選挙がある年には,前記各職員のう
ちH140が後援会の事務所へ電話を取り次いでいたことを認める旨の証言
をするが,事務所にかかってきた電話を後援会事務所に取り次いだからとい
って,前記事務所で同議員のための後援会活動が行われ,職員も後援会活動
の補助業務に従事したとまでは認めることはできない。そして,G86議員
が平成23年4月19日に北海道議会議員の任期を満了したことは前記のと
おりであって,これに先立ち後援会を解散した旨の同議員の陳述等の信用性
を疑わしめる具体的な証拠はないから,前記事務所の事務所費及び来客専用
の駐車場に係る賃借料について,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有
しない後援会活動や政党活動に係る経費が含まれているものと推認させる一
般的,外形的な事情を認めることはできない。
そうすると,前記事務所に係る事務所費の全額について政務調査費を充当
したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
人件費について
前記事務所の事務所費に政務調査活動以外の活動に係る経費が含まれてい
ると推認させる一般的,外形的な事情を認めることができないことは前記で
説示したとおりである。また,上記認定事実によれば,前記各職員のうち,
H141及びH142は,短期のアルバイトに従事して報酬が支払われてい
ることが認められるところ,G86議員は,これらの職員は運転手として臨
時で雇っていた旨証言しており,この証言に反する的確な証拠はない(な
お,証拠(丙A自44の2の2)によれば,H141には同議員の任期満了
となる直前の平成23年3月30日に7日分の人件費が支払われていること
が認められるところ,同議員は,その具体的な活動業務について尋問では明
らかにすることができなかった。しかし,議員の任期満了の直前であるから
といって政務調査活動に従事する必要性がないとまではいえないし,また,
同議員が任期満了となってから相当期間が経過した後に尋問が実施されたこ
とからすると,具体的な政務調査活動について言及することができなかった
からといって,その人件費が政務調査活動以外の業務に従事したことによる
対価であると推認することまではできない。)。
そうすると,前記各職員の人件費の全額について政務調査費を充当したと
しても,本件運用方針に反する違法なものであるとまではいえない。
87G87議員(整理番号94(自45))
前記前提事実に加え,証拠(甲96の1から4まで,丙A自45の1から
丙A自45の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ
る。
アG87議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イG87議員は,別紙4主張整理表「整理番号94」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある
個人1名を上記事務所において職員として雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動とともに後援会活動が行われ,前
記職員もこれらの活動に従事した。
ウG87議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
前記事務所における管理運営費について
上記認定事実によれば,前記事務所では,政務調査活動及び後援会活動が
行われたものと認められるところ,本件全証拠を検討してみても,前記事務
所の管理運営費について,政党活動が行われたことによる経費が含まれてい
るものと推認させる一般的,外形的な事情を認めるに足りる的確な証拠はな
い。
しかるところ,G87議員は,前記事務所の管理運営費の電気料金につい
て,平成22年5月分から平成23年3月分までの全額について政務調査費
を充当し,平成22年4月分はその28分の5を,平成23年3月8日から
同月31日まではその6分の5をそれぞれ政務調査費を充当した旨主張し,
同旨の陳述(丙A自45の3)をする。しかし,本件運用方針によれば,事
務所の管理運営費については,①後援会等の事務所と兼ねている場合には政
務調査活動の使用領域や使用頻度により按分し,②後援会等の事務所を兼ね
ない場合は政務調査従事時間により按分し,③①により明確に区分すること
ができない場合には2分の1を上限として政務調査費を充当することができ
るとされている。そして,本件全証拠を検討しても,①又は②により前記事
務所における管理運営費について按分することはできず,結局のところ,前
記事務所における管理運営費については,2分の1を上限として政務調査費
を支出することができることになる。したがって,前記事務所における管理
運営費については,その2分の1を超えて政務調査費を充当することは本件
運用方針に反する違法なものであるというべきである。
人件費について
前記認定事実によれば,前記事務所で雇用された前記職員は,政務調査活
動及び後援会活動に従事したことが認められるから,前記職員の人件費に
は,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に従事した
ことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があ
るということができる。なお,本件全証拠を検討してみても,前記職員の人
件費について,政党活動に従事したことによる対価が含まれているものと推
認させる一般的,外形的な事情を認めるに足りる証拠はない。
そして,本件全証拠を検討してみても,前記職員が政務調査活動に従事し
た時間は明らかではないが,本件運用方針によれば,その業務実態により政
務調査活動に係る対価と後援会活動に係る対価とを明確に区分することがで
きない場合であっても,人件費として支出されたもののうち2分の1を上限
として政務調査費を充当することができるとされているから,前記職員の人
件費のうち2分の1を政務調査費から充当したとしても,本件運用方針に反
する違法なものであるとまではいえない。
88G88議員(整理番号95(公4))
前記前提事実に加え,証拠(甲97の1,2,丙B4の1から丙B4の6
まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
アG88議員は,公明党に所属する北海道議会議員である。
イG88議員は,別紙4主張整理表「整理番号95」欄に対応する「摘
要」欄記載の個人1名を職員として雇用した。
ウG88議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
以上を前提に検討すると,G88議員は,前記職員が政務調査活動の補助
に専従したと主張する。確かに,前記職員の雇用契約書(丙B4の4)の仕
事の内容欄には,「議会報告ニュース作成のための取材補助ならびに発送元
データ管理,議会質問の資料収集,議会報告会の準備,企業経営懇談会や地
域懇談会等の自動車運転業務」と記載されていること,前記職員が報酬を受
領したことを証する領収証(丙B4の3)のただし書欄には上記雇用契約書
に記載された仕事の内容欄に対応する業務に従事したことが記載されている
ことからすると,前記職員がG88議員の政務調査活動の補助業務に従事し
たことはうかがわれる。しかしながら,G88議員は公明党に所属する北海
道議会議員であるから,同議員に関わる後援会活動や同議員が所属する政党
活動も行われたものと推認されるところ,同議員は,後援会活動や政党活動
の実態に関して陳述書を提出するなどして具体的な説明をしていない。そう
とすれば,前記職員の人件費には,議員の政務調査活動と合理的な関連性を
有しない活動にも従事したことによる対価が含まれているものと推認させる
一般的,外形的な事情があるということができ,この推認を妨げるような反
証もされていない。
そして,前記職員の人件費については,その業務実態により政務調査活動
に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分することができない
から,的確な反証がされない限り,人件費として支出されたもののうち3分
の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法
な政務調査費の支出であると評価するのが相当であるところ,上記按分割合
と異なる反証もない。したがって,前記職員の人件費については,その3分
の1を超えて政務調査費を充当することは本件運用方針に反する違法なもの
であるというべきである。
89G89議員(整理番号96(自46))
前記前提事実に加え,証拠(甲98の1から5まで,丙A自46の1から
丙A自46の3まで,証人G89)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実
が認められる。
アG89議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イG89議員は,別紙4主張整理表「整理番号96」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する事務所(本項においては,以下「議員事務
所」という。)を賃借し,また,同欄に記載のある個人2名を議員事務所
において職員として雇用した。
議員事務所の賃貸人は,G89議員が代表取締役を務める株式会社J7
であった。また,議員事務所の隣室にはG89議員の後援会の事務所(本
項においては,以下「後援会事務所」という。)が存在し,出入口はそれ
ぞれ別であるが,議員事務所と後援会事務所は内扉を通じて行き来するこ
とができる状態となっていた。
なお,政党活動については,議員事務所及び後援会事務所とは別に設け
られた自民党室蘭支部で行われた。
ウG89議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
議員事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,議員事務所の賃貸人は,G89議員が代表取締役
を務める株式会社J7であると認められるが,本件運用方針においてはその
ことを禁ずる定めはないから,本件運用方針において政務調査費を充当する
ことができない例として定める「議員所有又は議員と生計を一にする親族所
有の場合の事務所賃料」を潜脱する目的で当該法人が設立されたなどの特段
の事情がない限り,事務所の賃貸人が当該議員が役員を務める法人であるか
らといって,その事務所の賃借料に対して支出された政務調査費の全額が違
法であることを推認させる一般的,外形的な事情が存在するということがで
してみても,株式会社J7が本件運用方針を潜脱する目的で設立されたなど
の特段の事情は見当たらないから,同議員が代表取締役を務める会社が賃貸
人であることを理由として,議員事務所の事務所費に政務調査費を充当する
ことが違法である旨の原告の主張は採用することができない。
ところで,上記認定事実によれば,議員事務所の隣室には後援会事務所が
存在し,両事務所が内扉を通じて行き来できる状態となっていることが認め
られるが,他方で,両事務所はそれぞれ別々の出入口が設けられ,それぞれ
別の部屋に区切られていたことが認められることからすると,内扉を通じて
行き来ができる状態になっていたからといって,議員事務所で後援会活動が
行われており,その事務所費には後援会活動に係る経費が含まれているもの
と推認させる一般的,外形的な事情があるとはいえない。なお,政党活動に
ついては,議員事務所とは別に設けられた自民党室蘭支部で行われたことは
前記認定のとおりであり,議員事務所の事務所費に政党活動に係る経費が含
まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるとはいえない。
そうすると,議員事務所の事務所費全額について政務調査費から充当した
としても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
人件費について
前記各職員は,議員事務所で雇用された職員であると認められるところ,
前記認定事実によれば,議員事務所で政務調査活動以外の活動が行われ,そ
の活動に係る経費が支出されたものと推認させる一般的,外形的な事情があ
るとはいえないことは前記認定のとおりである。
そうすると,前記各職員が政務調査活動以外の活動にも従事し,そのため
の人件費が支払われたと推認させる一般的,外形的な事情があるとはいえな
いから,前記各職員の人件費の全額について政務調査費から充当したとして
も,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
90G90議員(整理番号97(自47))
前記前提事実に加え,証拠(甲99の1から4まで,丙A自47の1から
丙A自47の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ
る。
アG90議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イG90議員は,別紙4主張整理表「整理番号97」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある
個人2名を上記事務所において職員として雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動及び後援会活動が行われ,前記各
職員も,これらの活動に従事した。なお,政党活動は,前記事務所が所在
する同じ建物の2階で行われた。
ウG90議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
事務所費について
上記認定事実によれば,前記事務所では,政務調査活動及び後援会活動が
行われたが,政党活動は前記事務所が所在する同じ建物の2階で行われたこ
とが認められる。
しかるところ,G90議員も同旨の陳述(丙A自47の3)をするところ
であるが,前記事務所における政務調査活動に係る経費と後援会活動に係る
経費とはその使用実態により明確に区分することができないから,本件運用
方針によれば支出された経費の2分の1を上限として政務調査費を充当する
ことができるとされている。したがって,前記事務所における事務所費の2
分の1について政務調査費を充当したとしても,本件運用方針に反する違法
なものであるとはいえない(ただし,上記按分割合によって前記事務所に係
る事務所費を按分すると違算があり,その限度で違法であるというべきであ
る。)。
人件費について
前記認定事実によれば,前記事務所で雇用された前記各職員は,政務調査
活動及び後援会活動に従事したことが認められる。しかし,政党活動は,前
記事務所が所在する建物の2階で行われていたことは前記認定のとおりであ
り,G90議員は,政党活動については自民党稚内支部に勤務する別の職員
が行っていた旨陳述するところ,これに反する具体的な証拠はない。
しかるところ,G90議員も同旨の陳述をするところであるが,政務調査
活動は多岐にわたり,政務調査活動に係る対価と後援会活動に係る対価とを
明確に区分することは困難であるから,本件運用方針によれば,支出された
人件費のうち2分の1を上限として政務調査費を充当することができるとさ
れている。したがって,前記各職員の人件費の2分の1について政務調査費
を充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえな
い。
91G91議員(整理番号98(自48))
前記前提事実に加え,証拠(甲100の1から3まで,丙A自48の1か
ら丙A自48の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ
る。
アG91議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イG91議員は,別紙4主張整理表「整理番号98」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある
個人1名を上記事務所において職員として雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動のみならず後援会活動も行われ,
前記職員も,これらの活動に従事した。なお,政党活動は,前記事務所と
は別に所在する自民党千歳支部で行われた。
ウG91議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
事務所費について
前記認定事実によれば,前記事務所では,政務調査活動及び後援会活動が
行われたが,政党活動については,前記事務所とは別に所在する自民党千歳
支部で行われたものと認められる。そうすると,前記事務所の事務所費につ
いては,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動による
経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるというこ
とができ,また,事務所の使用実態により,政務調査活動に係る経費と後援
会活動に係る経費とを明確に区分することができないから,的確な反証がさ
れない限り,支出された経費のうち2分の1を超えて充当された政務調査費
については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価す
るのが相当である。
これに対して,G91議員は,前記事務所における使用実態において1週
間の事務所使用時間40時間のうち28時間を政務調査活動に使用したた
め,事務所費の10分の7に政務調査費を充当した旨陳述(丙A自48の
3)するが,その陳述に係る事務所の使用実態に関する具体的な裏付けを欠
いており,たやすく採用することができず,他に事務所費の按分割合に関す
る的確な反証はない。
そうすると,前記事務所の事務所費として支出されたもののうち2分の1
を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって
違法であるというべきである。
人件費について
前記事務所で雇用された前記職員は,政務調査活動及び後援会活動に従事
したものと認められる。なお,G91議員は,政党活動については自民党千
歳支部の職員が従事し,前記職員がこれに従事したことはない旨陳述すると
ころ,これに反する証拠はない。そうすると,前記職員の人件費について
は,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に従事した
ことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があ
るということができ,また,その業務実態により政務調査活動に係る対価と
それ以外の活動に係る対価とを明確に区分することができないから,的確な
反証がされない限り,人件費として支出されたもののうち2分の1を超えて
充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費
の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G91議員は,前記職員は政務調査活動と後援会活動に従
事した割合は7対3であったので,人件費を按分して10分の7に政務調査
費を充当した旨陳述するが,その陳述に係る業務実態についての具体的な裏
付けはなくたやすく採用することはできず,他に人件費の按分割合に関する
的確な反証はない。
そうすると,前記職員の人件費として支出されたもののうち2分の1を超
えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法
であるというべきである。
92G92議員(整理番号99(自49))
前記前提事実に加え,証拠(甲101の1から4まで,丙A自49の1の
1から丙A自49の3まで,証人G92)及び弁論の全趣旨によれば,以下
の事実が認められる。
アG92議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イG92議員は,別紙4主張整理表「整理番号99」欄に対応する「摘
要」欄記載の住所地に所在する事務所(本項においては,以下「議員事務
所」という。)を賃借し,同欄に記載のある個人4名を上記事務所におい
て職員として雇用した。また,G92議員は,同欄に記載のある各駐車場
を賃借したが,このうち枝番2の駐車場は議員事務所の来客専用の駐車場
として,枝番3の駐車場は議員事務所の来客兼用の駐車場として,それぞ
れ利用した。
議員事務所の賃貸人は,G92議員が代表取締役を務める株式会社J8
であった。
ウ前記各職員のうちH23及びH24は,いずれも,政務調査活動のみな
らず後援会活動及び政党活動にも従事した。
また,前記各職員のうちH22は,平成22年10月に雇用されたが,
遅くとも同年11月から平成23年3月までの間,政務調査活動のみなら
ず後援会活動及び政党活動にも従事した。
G92議員の後援会事務所(本項においては,以下「後援会事務所」と
いう。)及び自由民主党札幌市西区第2支部の事務所(本項においては,
以下「支部事務所」という。)は,いずれも議員事務所が入居する建物の
4階に入居していた。
エG92議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び
「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支
出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費
を充当した。
議員事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,議員事務所の賃貸人は,G92議員が代表取締役
を務める株式会社J8であると認められるが,本件運用方針においてそのこ
とを禁ずる定めはないから,本件運用方針において政務調査費を充当するこ
とができない例として定める「議員所有又は議員と生計を一にする親族所有
の場合の事務所賃料」を潜脱する目的で当該法人が設立されたなどの特段の
事情のない限り,事務所の賃貸人が当該議員が役員を務める法人であるから
といって,その事務所の賃借料に対して支出された政務調査費の全額が違法
であることを推認させる一般的,外形的な事情が存在するということができ
てみても,株式会社J8が本件運用方針を潜脱する目的で設立されたなどの
特段の事情は見当たらないから,同議員が代表取締役を務める会社が賃貸人
であることを理由として,議員事務所の事務所費に政務調査費を充当するこ
とが違法である旨の原告の主張は採用することはできない。
ところで,上記認定事実によれば,前記各職員のうちH23,H24及び
H22は,いずれも,政務調査活動のみならず政党活動及び後援会活動にも
従事していたことが認められる(なお,G92議員は,H22は政党活動に
は従事していない旨陳述するが,他方で,別紙4主張整理表の「補助参加人
の主張」欄のとおり,同人は政党活動にも従事していた旨主張しており,上
記陳述は採用しない。)が,他方で,議員事務所が入居する建物であるとは
いえ,別の階に後援会事務所と支部事務所が設けられていたことが認められ
ることからすると,上記職員3名が議員事務所で政務調査活動以外の活動に
従事していたとまでは認めることはできず,他に議員事務所において政党活
動や後援会活動が行われ,その活動に係る経費としても事務所費が支出され
たことを推認させる一般的,外形的な事情を認めるに足りる的確な証拠はな
い。
そうすると,議員事務所の事務所費の全額について政務調査費を充当した
としても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえず,また,議員
事務所の駐車場については,来客専用の駐車場については全額について,来
客兼用の駐車場についてはその2分の1について,それぞれ政務調査費を充
当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
人件費について
G92議員は,H23については1週間40時間のうち約20時間程度政
務調査活動に従事し,H24については1週間40時間のうち約28時間程
度政務調査活動に従事し,また,H22については,試用期間である平成2
2年10月は政務調査活動のみに従事させたが同年11月から平成23年3
月までは1週間40時間のうち約30時間程度政務調査活動に従事したとし
て,それぞれの労働時間のうち政務調査活動に従事した時間から算出した按
分割合によって政務調査費を充当した旨主張し,同旨の陳述(丙A自49の
3)及び証言(以下,本項において「証言等」という。)をする。
しかし,G92議員は,上記3名の各職員の業務実態について,客観的な
報告書を作成したり,タイムカードで管理するなどしていない旨証言してい
るのであるから,各職員の政務調査活動に従事した業務実態に関する証言等
はたやすく採用することができない。そうすると,上記3名の職員に関する
人件費については,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に
従事したことによる経費が含まれているものと推認される一般的,外形的な
事情があり,また,その業務実態により政務調査活動に係る対価とそれ以外
の活動に係る対価とを明確に区分することができないから,的確な反証がさ
れない限り,人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当され
た政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出で
あると評価するのが相当であるところ,これと異なる上記3名の職員の人件
費の按分割合に関する的確な反証はない。
他方,G92議員は,前記各職員のうちH143について,平成22年4
月1日から同年8月末日までの間,同議員の運転手やパソコン操作に従事し
たものであり,政務調査活動に専従した旨証言等をする。しかして,議員事
務所の事務所費には,政務調査活動以外の活動による経費が含まれているも
のと推認させる一般的,外形的な事情はないことは前記認定のとおりであ
り,他にH143が別の階にある後援会事務所で後援会活動に従事し,ま
た,支部事務所で政党活動に従事し,これらの活動に従事したことによる対
価として人件費が支出されたと推認させる一般的,外形的な事情を認めるに
足りる証拠はない。そうとすれば,H143の人件費の全額について政務調
査費を充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえ
ない。
第6
1本件条例11条が,「会派の代表者又は議員は,その年度において交付
を受けた政務調査費の総額から,当該会派又は議員がその年度において行
った政務調査費による支出(8条に規定する使途基準に従って行った支出
をいう。)の総額を控除して残余がある場合,当該残余の額に相当する額
の政務調査費を返納しなければならない」と定めていることからすると,
本件各会派又は本件各議員による政務調査費の支出に違法な部分がある場
合における本件各会派及び本件各議員が北海道に返還すべき不当利得の金
額については,以下のとおり計算されるべきである。すなわち,
当該会派又は議員がその年度において行った政務調査費による支出が
その年度において交付を受けた政務調査費の総額を上回る場合におい
て,①当該会派又は議員がその年度において行った政務調査費による支
出から当該会派又は議員による政務調査費の支出のうち違法な部分に相
当する額を控除し,その控除した額(以下,この項において「適法であ
ると認められた政務調査費の支出額」という。)がなお交付を受けた政
務調査費の総額を上回るときは,当該会派ないし議員には利得はなく,
北海道には損失が生じたとはいえないが,②適法であると認められた政
務調査費の支出額が交付を受けた政務調査費の総額を下回るときは,そ
の差額が当該会派ないし議員の利得であり,北海道に生じた損失である
といえる。
当該会派又は議員がその年度において行った政務調査費による支出が
その年度において交付を受けた政務調査費の総額を下回る場合において
は,当該会派又は議員による政務調査費の支出のうち違法な部分に相当
する額が当該会派又は議員による利得であり,北海道に生じた損失であ
るといえる。
2上記を踏まえて,本件各会派及び本件各議員が北海道に返還すべき不当
利得の金額について計算すると,別紙5計算結果説明書の「返還すべき
額」欄記載の金額となる(ただし,返還すべき額が請求額を超える場合は
請求額のとおりとした。)。
第7結論
以上によれば,原告の請求は,別紙2一覧表の「相手方」欄記載の各被告補
助参加人に対し,各被告補助参加人に対応する同表の「認容額」欄記載の各金
員を北海道に支払うよう請求することを求める限度で理由があるから,これを
認容し,その余の部分はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用
の負担については,地方自治法242条の2第11項,行政事件訴訟法43条
3項,7条,民事訴訟法61条,64条本文,66条の各規定を適用して,主
文のとおり判決する。
札幌地方裁判所民事第5部
裁判長裁判官岡山忠広
裁判官渡邉充昭
裁判官山田雅秋は,差し支えのため署名押印することができない。
裁判長裁判官岡山忠広

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