弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
一、被告は、その営業上の施設または活動につき「積水開発株式会社」の商号を使
用してはならない。
二、被告は、大阪法務局昭和四五年四月一七日受付をもつてなした被告の設立登記
のうち「積水開発株式会社」の商号の抹消登記手続をせよ。
三、訴訟費用は被告の負担とする。
       事   実
 原告訴訟代理人は、主文と同旨の判決並びに主文第二項の請求の予備的請求とし
て「被告は、大阪法務局昭和四五年四月一七日受付をもつてなした被告の設立登記
のうち『積水開発株式会社』の商号を他の商号に変更登記手続をせよ。」との判決
を求め、請求の原因として次のとおり述べた。
一、原告は、昭和二二年三月三日設立された株式会社であつて、商号を当初から
「積水化学工業株式会社」と称し、資本金を五四億五五五九万四〇〇円とし、全国
八証券取引所に株式上場し、事業場として全国にわたり支社・研究所各一、工場
九、営業所二三、出張所六を有し、系列会社として株式上場会社たる積水ハウス株
式会社及び積水化成品工業株式会社をはじめ、すべて「積水」の二字を商号に含む
合計二四の株式会社をもち、かつ、左記(1)ないし(9)の事業を目的として現
に営業活動を行なつているものであり、原告の商号は国内において広く認識せられ
ている。
(1) 合成樹脂製品の製造並びに売買
(2) 化学工業製品の製造加工並びに売買
(3) 医薬品の製造並びに売買
(4) 計量器の製作並びに売買
(5) 建築材料の製造並びに売買
(6) 建設工事の施工並びに請負
(7) 不動産の売買、賃貸借及び管理並びに宅地の造成
(8) 前各号に付帯する諸般事業をなすこと。
二、被告は、商号を「積水開発株式会社」、本店を大阪市<以下略>、資本金を五
〇万円、目的を宅地建物取引業、金融業、土木建築業、観光レジヤー産業及び以上
に付帯関連する一切の事業として、昭和四五年四月一七日大阪法務局において設立
登記をした株式会社であり、右本店所在地の中谷ビルに事務所をもち、現に右商号
を使用して営業活動をなしている。
三、被告が、その営業上の施設・活動について使用する「積水開発株式会社」の商
号は、「積水」二字を要部とする原告の「積水化学工業株式会社」の商号と類似
し、営業目的の如何を問わず、その使用は原告の営業上の施設・活動と混同を生ぜ
しめるものであり、かつ、これによつて原告は営業上の利益を害される虞れがあ
る。
四、よつて原告は、不正競争防止法第一条第一項第二号に基づき、被告に対し「積
水開発株式会社」の商号の使用禁止並びに右商号の登記の抹消を求め、もし右商号
の登記抹消の請求が認められないときは、前記法条により右商号につき「積水開発
株式会社」以外の商号への変更登記手続を求める。被告代表者は、「原告の請求を
棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、請求原因に対する答
弁として次のとおり述べた。
一、原告主張一の事実中、原告の現商号が「積水化学工業株式会社」であることは
認めるが、その余は知らない。同二の事実は認める。同三の事実は否認する。
二、被告は設立以来大阪府知事の宅地建物取引業免許を受けて不動産仲介業を営ん
でいるものであるが、被告の「積水開発株式会社」の商号は、法務局に対する会社
設立登記申請並びに知事に対する宅地建物取引業の登録免許申請に際し、なんら類
似商号として否認されることなくそれぞれ登記・登録されており、法的にも社会的
にも公認された商号である。
三、不正競争防止法第一条第一項第二号にいう「営業上の施設又は活動との混同」
は具体的かつ現存するものであることを要するが、被告の現に営む不動産仲介業は
原告の事業目的の範囲内に属せず、原被告双方の営業間に共通部分はないので、被
告がその営業につき「積水開発株式会社」の商号を使用しても、これによつて原告
の営業上の施設又は活動と混同を生ずる余地はない。また被告がかかる不正競争の
目的をもつて右商号を使用しているのでないことは、以上に述べたところからも明
らかである。
四、原被告双方の営業は全く業種を異にし、両者の間に競業関係はないのであるか
ら、原告は被告の前記商号の使用により何ら営業上の不利益を蒙る虞れはない。な
お、不正競争防止法は、いわゆる積水系列会社というが如き社会経済体を保護する
ことを目的とするものではなく、不正競争が成立するか否かは先ず当事者双方の営
業内容に共通性があるか否かによつて決せられるべきであり、それ以上の事項を考
慮にいれるべきものではない。
証拠(省略)
       理   由
一、いずれも成立に争いのない甲第三ないし第六号証によれば、原告は昭和二二年
三月三日「積水産業株式会社」の商号をもつて設立され、その後昭和二三年一月に
現在の商号「積水化学工業株式会社」に改称した株式会社であつて、現在の資本金
は五四億五五五九万四〇〇円、原告主張(1)ないし(9)の諸事業を営むことを
目的とし、現にこれらの諸事業を営んでいることが認められる。
 他方、被告が、商号を「積水開発株式会社」、本店を大阪市<以下略>資本金を
五〇万円、事業目的を宅地建物取引業、金融業、土木建築業、観光レジヤー産業及
び以上に付帯関連する一切の事業として、昭和四五年四月一七日大阪法務局におい
て会社設立の登記をした株式会社であり、右本店所在地の中谷ビルに事務所を設
け、「積水開発株式会社」の商号を用いて営業活動をしていることは当事者間に争
いがなく、被告代表者の供述並びに弁論の全趣旨に徴すると、被告の現に営んでい
る事業は不動産取引の仲介斡旋業のみであることが認められる。
二、前掲甲第三号証、成立に争いのない甲第七号証の一ないし五と証人Aの証言を
総合すれば、原告は全国に支社・研究所各一、工場九、営業所二三、出張所六を有
し、昭和四四年四月から昭和四五年三月までの年間売上高は約七〇〇億円に上る有
数の大企業であつて、原告の株式は全国八証券取引所に上場され、「積水化学工業
株式会社」という原告の商号は国内において広く認識されている事実が明らかであ
る。のみならず、右各証拠によると、原告の営業規模の拡大に伴ない逐次原告から
分離して独立の企業となつた原告の系列会社は国内に二四社を算え、これらの会社
はいずれも商号中に「積水」の二字を用いて営業活動を行なつており、そのうち、
積水ハウス株式会社は原告に劣らず全国的に知名度の高い企業であり、原告及びそ
の系列会社以外に、商号中に「積水」の二字を用いている会社は、被告を別とすれ
ば他に見当らないことが認められ、右の事実に徴すると、「積水」という語を冠す
る表示は、原告ならびにその系列会社のみが使用している共通の営業表示として、
国内の取引者・需要者の間に広く認識されていることが推認される。以上の認定を
覆えすに足りる証拠はない。
三、そこで被告の「積水開発株式会社」という商号の使用が不正競争防止法第一条
第一項第二号に該当し、且つ原告がこれによつて営業上の利益を害せられる虞れが
あるかどうかについて考える。
(一) 右法条同号の法意は、第三者が檀に国内において周知となつた他人の営業
表示と同一又は類似のものを使用して同人の営業上の施設又は活動と混同を生ぜし
める行為は、行為者の目的あるいは意思いかんに拘らず。他人が永年に亘り多額の
費用を投じ不断の努力によつて築き上げた取引上の名声を何等の対価を払うことな
く自己のため利用するものであるとともに、右他人に対し、その意思に出でずまた
支配の及ばない無関係の営業活動について不当に関係づけられる迷惑を蒙らしめ、
また引いては周知表示の取引通用性の稀釈化その他営業上の利益を害する結果をも
たらす虞れのあるものであるから、営業上許される自由競争の範囲を逸脱し、取引
上の信義則に違反するものとしてこれを禁ぜんとするにあると解せられる。この見
地よりすれば、同号にいう「他人の営業たることを示す表示」とは、周知表示の担
い手か単一の営業主体である場合に限るべき理由はない。利益共通関係にある複数
の会社の団体あるいはこれに属する各社が均しく周知表示をもつて表現される場合
には右各社が周知表示の担い手であり、この場合の周知表示も同号にいう他人の営
業たることを示す表示というを妨げないと解するのが相当である。前段認定の事実
関係よりすれば、「積水」という表示は、積水系列会社の一員の営業たることを意
味する表示であり、同号にいう他人の営業たることを示す表示であると認めるべき
である。
(二) 被告の商号は、原告と同様に「積水」の二字を冠した商号であり、ただ、
商号中の業種を示す部分が、原告の商号においては「化学工業」であるのに対し被
告の商号においては「開発」である点に差異がみられる。しかし、「積水」の二字
は原告を中心とする積水系の諸会社の周知営業表示であり、積水系の諸会社はいず
れも右周知営業表示を商号の一部としていることは前叙のとおりであつて、「積
水」の二字に付加された業種を示す部分は、単に積水系会社相互間における彼此識
別の標識としての機能を有するにすぎないものとみるべきである。そうすると、原
告とは何らの関係もない被告が用いている「積水開発株式会社」の商号は、「積
水」の語を冠しているため、原告を中心とする積水系会社の一員であるかのような
誤つた印象を公衆に与えることは容易に推認できるところである。この事実を考慮
すると被告の右商号は畢竟「他人の商号に類似する商号」に該当するものと判断せ
ざるをえない。「積水開発株式会社」の商号をもつてした被告の会社設立登記申請
及び宅地建物取引業者登録免許申請が拒絶されることなく受理せられ、右商号をも
つて登記・登録がなされたとの被告主張事実は、何ら右認定・判断の妨げとなるも
のではない。
(三) しかして、原告自身「不動産の売買、賃貸借及び管理並びに宅地の造成」
を事業目的とし、現に右事業を営んでいることは前述のとおりであるほか、成立に
争いのない甲第三号証及び証人Aの証言によれば、原告の系列会社中、積水ハウス
株式会社はセキスイハウスの売買並びに宅地の造成売買を、積水興産株式会社は不
動産の売買をそれぞれ営業としていることが認められるので、不動産取引の仲介斡
旋業につき被告が積水系の諸会社の一員であるかの如き外観を呈する「積水開発株
式会社」の商号を使用する行為は、一般世人をして被告の営業上の施設又は活動を
原告もしくはその系列会社の営業上の施設又は活動と混同させる虞れがあるものと
いわねばならない。
 被告は、不動産取引の仲介斡旋業は原告の事業目的の範囲に属せず、原被告相互
の営業間に共通部分はないから、営業の混同を生ずる余地はない旨主張するけれど
も、不正競争防止法にいう「混同を生ぜしめる」とは、一般世人をして誤認する危
険を生ぜしめることをいい、現実に誤認の事態が発生したことを必要としないもの
と解すべきであり、不動産の売買業と不動産の売買、貸借等の仲介斡旋業とは宅地
建物についてみればひとしく宅地建物取引業の中に包含されて宅地建物取引業法の
規制を受け、右両業務は極めて密接な関連性があるものといえるから、原告及びそ
の系列会社が不動産取引の仲介斡旋業を営んでいないからといつて、そのため被告
の営業が積水系の諸会社の営業と混同される虞れがないということはできない。従
つて、被告の右主張は採用することができない。
(四) 右認定の営業上の混同により、被告は原告を中心とする積水系の諸会社の
有する営業上の名声を無償利用して利益を収めることとなるだけでなく、積水系の
諸会社の営業を表徴する「積水」の表示の取引通用性を稀釈化する危険を生ぜしめ
ていることは否定できないところであるから、積水系の諸会社の中心的存在である
原告は、被告の前記行為により営業上の利益を害される虞れのある者に該当するの
は勿論であり、被告の本件商号の使用につき差止請求権を有するものといわねばな
らない。
 被告主張の如く、原告と被告とが営業範囲を異にし、双方の間に取引上の競業関
係はないとしても、営業混同による不正競争行為の本質を前記(一)に説示した如
く把握する限り、当事者相互間に現実に取引上の競業関係の存在することは必ずし
も差止請求権の成立に不可欠の要件ではないといわざるをえないので、この点に関
する被告の主張は採用できない。
 なお、被告は本件商号の使用につき不正競争の目的がない旨主張するが、不正競
争防止法第一条による行為の差止請求をするには、当該行為につき不正競争の目的
または不正の目的があることを要するものではないから、右主張もまた失当であ
る。
四、してみると、被告に対し同法第一条により「積水開発株式会社」の商号の使用
禁止を求める原告の請求は理由があるものというべく、かつ、同条に基づく差止の
効果を実効あらしめるためには、原告は右商号の登記の抹消を求めうるものと解す
べきである。被告の商号は会社設立登記により登記された原始商号であり、商号は
会社の唯一の名称であるから、これを抹消するときは名称のない会社が出現するこ
ととなるが、かかる事態の生ずることは商業登記法第二四条第一五号の予想してい
るところであり、会社の原始商号といえども法律上その登記抹消請求が許されない
わけではない。よつて、被告に対する前記商号の登記の抹消を求める原告の請求も
理由がある。
五、以上説示の次第で、原告の本訴各請求(商号変更登記手続を求める予備的請求
を除く)をいずれも正当として認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条
を適用し、主文のとおり判決する。
(裁判官 大江健次郎 近藤浩武 庵前重和)

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