弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件非常上告を棄却する。
         理    由
 非常上告は法律命令の解釈適用を統一することを目的とするものであるから、刑
訴四五四条の「事件の審判が法令に違反したこと」とは、該事件の審判に手続法上
の違背あるか、または確定判決において認定した事実を変更することなくして、こ
れを前提として実体法の適用に違法あることをいうものである。しからば、たとえ
本件確定判決が所論の如く累犯加重の条件を具備しない前科を、被告人の供述その
他によつて、その条件を具備した前科と誤認して累犯加重の規定を適用した瑕疵が
あつたとしても、それは事実誤認を前提とするものであるから、前示非常上告の条
件たる法令違反ありということはできない。それ故本件非常上告はその理由なきも
のである。
 よつて、刑訴四五七条にしたがい、主文のとおり判決する。
 この判決は理由に対する裁判官小谷勝重の左記少数意見の外は全裁判官一致の意
見によるものである。
 裁判官小谷勝重の本判決「理由」に対する少数意見は左のとおりである。
 多数説は所論原確定判決の前科の認定をもつて、事実誤認の問題であると判断し、
したがつて本件非常上告申立の理由をも右事実誤認を前提とするものであると判断
しているのであるが、私は以下述ぶるが如く、原確定判決の本件前科の認定は或は
真実とは相異せんも、これをもつて法律上のいわゆる事実誤認の範疇に属する問題
とは考えられないのである。そして問題は多少飛躍するが、当裁判所第一第二各小
法廷の言渡した判例(昭和二三年(そ)第一号、同年一二月六日第一小法廷。昭和
二四年(れ)第一七一一号、同年一二月二四日第二小法廷。昭和二五年(れ)第三
〇二号、同年六月三〇日第二小法廷。各判決)の場合の前科の認定は何れも法令違
反の場合の問題と考えるが、本件の場合は右各判例の場合とは異なるものと思料す
るのである。
 以下本件の場合につき、私の理由とするところを述べる。
 本件非常上告申立の対象となつた、函館簡易裁判所の確定判決によれば、「被告
人は………昭和二五年三月一一日午後零時頃……A方玄関より侵入し、同人所有の
……を窃取したものである」との犯罪事実を認定した上、被告人は昭和二三年六月
一九日札幌地方裁判所において賍物故買並びに物価統制令違反の罪により懲役六月
罰金千円に処せられ、その刑は当時(右窃盗犯行時)既にその執行を受け終つたも
のである事実を認定し、もつて刑法五六条五七条を適用し累犯加重をした上、被告
人を懲役一年六月に処し、該判決は昭和二三年五月一三日控訴取下によつて確定し
たこと、そして右前科の認定証拠として(イ)被告人の同裁判所公廷における供述
(ロ)副検事田中悟に対する第二回の被告人の供述調書(ハ)被告人に対する身上
調査に関する照会書の三つを挙げていることは、一件記録に徴し明らかなところで
ある。
 しかるに、右(イ)の供述を記載された公判調書(記録一四丁裏)によれば「弁
護人問、昭和二十四年に札幌地方で賍物故買及物価統制令違反罪で懲役六月に処せ
られているが、出所してからは何をしていたのか。被告人答、懲役六月罰金千円に
処せられ之を務め、出所後はB食堂で働いていました」とあり、また右(ロ)の供
述調書(記録三九丁裏)の記載によれば「前には云いませんでしたが、昭和二十三
年賍物故買等で懲役六月罰金一千円に為り、昭和二十四年一月十四日札幌刑務所を
出た事は間違いありません」とあつて、これ等によれば正に前科の刑は当時その執
行を受け終つたものである如く認められるのである。しかるに、右(ハ)の照会書
と題する書面(記録二七丁)によれば「昭和二十三年六月十九日言渡、二十四年一
月十四日確定、札幌地方、賍物故買並物価統制令違反、懲役六月罰金壱千円」との
被告人の身上に関する札幌市長の回答が記載せられている。これによると前示(ロ)
の供述調書中の「昭和二十四年一月十四日」は前科の刑の執行終了の日ではなくて
その判決確定の日であることが窺われるから、この両証拠の間には矛盾のあること
が明認できるのである。したがつて原確定判決裁判所、その立会検察官並びに弁護
人において周到なる注意を施したらんには、或は右(イ)(ロ)の被告人の各供述
の虚構を発見し、もつて本件非常上告申立理由の如き加重条件を欠く前科であるこ
とを認むるに至りたるならんも、何分本件前科事件の判決の確定は昭和二四年一月
一四日であつて、原確定判決の審判事件の窃盗の犯行は昭和二五年三月一一日であ
るから、右前科六月の懲役刑の執行は既に被告人が前示(イ)(ロ)殊に(イ)の
「刑は務め終り出所後はB食堂で働いていた」旨の供述を信憑するは事理の普通と
するところであるといわねばならない。されば原確定判決裁判所は前示三つの証拠
の内、既に前科の刑の執行を受け終つた点は(イ)(ロ)(殊に(イ))の証拠に
よつてこれを認め、(ハ)は単に前科のある事実の証拠としてこれを挙示した関係
にあることを推認できるのである。果して然らば原確定判決裁判所の所論本件前科
の認定はすべて適法な手続によつてこれを認定したものと云うの外はないのである。
 さて、非常上告は法令の解釈適用を統一することを目的とするものであるから、
刑訴四五四条の「事件の審判が法令に違反したこと」とは、確定判決において認定
した事実を変更することなくして、これを前提として実体法の適用に違法あるか、
または該事件の審判に手続法上の違背あることを云うものである。しかるに原確定
判決の所論本件前科の認定は、前示のとおり適法になされたものであつて、実体法
上並びに手続法上何等の違反あるを認めることができないのである。しからば原確
定判決は所論前科の点に関する限り、非常上告対象の条件を具備するものと云うこ
とはできない。それ故本件非常上告はその理由なきに帰するものである。
 検察官佐藤藤佐同長部謹吾関与
  昭和二五年一一月八日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    塚   崎   直   義
            裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    澤   田   竹 治 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    島           保
            裁判官    齋   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    河   村   又   介

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