弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中被上告人の上告人に対する請求に関する部分を破棄し、右部分
についての被上告人の控訴を棄却する。
     前項の部分に係る控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人増井和男、同鈴木健太、同河村吉晃、同佐村浩之、同福原申子、同吉
野孝義、同菊川秀子、同青木康博、同坂中英徳、同黒田一博、同沖貴文、同清水洋
樹、同井上淳、同永住優二、同大野和則の上告理由第一点について
 再入国の許可申請に対する不許可処分を受けた者が再入国の許可を受けないまま
本邦から出国した場合には、右不許可処分の取消しを求める訴えの利益は失われる
ものと解するのが相当である。その理由は、次のとおりである。
 本邦に在留する外国人が再入国の許可を受けないまま本邦から出国した場合には、
同人がそれまで有していた在留資格は消滅するところ、出入国管理及び難民認定法
二六条一項に基づく再入国の許可は、本邦に在留する外国人に対し、新たな在留資
格を付与するものではなく、同人が有していた在留資格を出国にもかかわらず存続
させ、右在留資格のままで本邦に再び入国することを認める処分であると解される。
そうすると、再入国の許可申請に対する不許可処分を受けた者が再入国の許可を受
けないまま本邦から出国した場合には、同人がそれまで有していた在留資格が消滅
することにより、右不許可処分が取り消されても、同人に対して右在留資格のまま
で再入国することを認める余地はなくなるから、同人は、右不許可処分の取消しに
よって回復すべき法律上の利益を失うに至るものと解すべきである。そして、右の
理は、右不許可処分を受けた者が日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待
遇に関する日本国と大韓民国との間の協定の実施に伴う出入国管理特別法(以下「
出入国管理特別法」という。)一条の許可を受けて本邦に永住していた場合であっ
ても、異なるところがないというべきである。
 これを本件についてみると、原審の適法に確定したところによれば、被上告人は、
昭和四四年一〇月一日付けで出入国管理特別法一条の許可を受けて本邦に永住して
いたものであるが、昭和六元年五月三〇日付けでした再入国の許可申請に対して上
告人が同年六月二四日付けで不許可処分(以下「本件不許可処分」という。)をし
たにもかかわらず、再入国の許可を受けないまま、同年八月一四日に本邦から出国
したというのであるから、本件不許可処分の取消しを求める訴えの利益は失われた
ものというべきである。右と異なり本件不許可処分取消しの訴えを適法とし本案に
つき判断した原判決には、法令の解釈適用を誤った違法があり、右違法は判決に影
響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は理由があり、その余の点について判断
するまでもなく、原判決中被上告人の上告人に対する請求に関する部分は破棄を免
れない。そして、以上によれば、右請求に係る被上告人の訴えを却下した第一審判
決の結論は正当であるから、右部分については被上告人の控訴を棄却すべきである。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    根   岸   重   治
            裁判官    大   西   勝   也
            裁判官    河   合   伸   一
            裁判官    福   田       博

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