弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成28年11月28日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成28年(ワ)第2363号不正競争行為差止等請求事件
口頭弁論終結日平成28年11月14日
判決
原告ヨネツボ行政書士法人
同訴訟代理人弁護士桝實秀幸
同野澤政伸
同鮫嶋良子
被告Aⅰ
主文
1被告は,「yonetsubo-k.com」のドメイン名を使用してはな
らない。
2被告は,ドメイン名「yonetsubo-k.com」のドメインの抹消
登録手続をせよ。
3被告は,原告に対し,14万2018円及びこれに対する平成28年1月2
5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4原告のその余の請求を棄却する。
5訴訟費用はこれを10分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担
とする。
6この判決は,第1項,第3項及び第5項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
1主文第1項及び第2項と同旨
2被告は,原告に対し,142万0282円及びこれに対する平成28年1月
25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2当事者の主張等
1原告は,請求原因として,次のとおり述べた。
(1)当事者
原告は,自賠責保険法に関する手続の代行業務(以下「本件業務」という。)を
主たる目的とする法人であり,全国に姉妹事務所を展開し,同業務等を行っている。
被告は,熊本県にて,Aⅰ交通事故行政書士事務所(以下「被告事務所」という。)
の代表として,本件業務等を行う者である。
(2)被告の行為
ア他人の特定商品等表示
原告は,平成18年5月8日に設立されており,平成28年1月18日時点で,
Googleのウェブ検索において「後遺障害行政書士」「自賠責行政書士」
というワードで検索した場合,それぞれ,原告のホームページは表示順位上位から
2番目に表示される(甲8の1・2)。
また,原告は,平成18年5月8日から現在まで,「yonetsubo」等の
標章を使用して,本件業務を行っている。
したがって,「yonetsubo」は,原告の業務にかかる標章を表示するも
のとして,原告の特定商品等表示にあたる。
イ特定商品等表示と類似するドメイン名の使用
(ア)被告は,遅くとも平成25年1月21日から現在まで,「http://以
下省略」というアドレス(以下「本件ウェブアドレス」という。)を用いて被告事
務所のホームページを管理運営し,また,遅くとも同月30日から現在まで,被告
事務所のホームページ及び被告事務所を紹介するウェブページ上で,「●(省略)
●」というメールアドレス(以下「本件メールアドレス」という。)を電子メール
での問合せ先として掲載している(甲2,3及び7の1ないし3)。
(イ)本件ウェブアドレス及び本件メールアドレスには,「yonetsubo-
k.com」というドメイン名(以下「本件ドメイン名」という。)が含まれてお
り,被告は,本件ドメイン名を,インターネット上で,自己が管理するサーバーを
識別するために用い,本件ドメイン名を使用している。
(ウ)特定商品等表示との類似
本件ドメイン名について,その要部である第二レベルドメイン「yonetsu
bo-k」のうち,「yonetsubo」部分は,原告の特定商品等表示と同一
である。他方,「-k」部分は,被告が本件業務等を行う拠点である熊本県を示す
ものとして付け加えられているもので,この「-k」部分のみでは,本件業務との
関係性を見いだすことはできない。したがって,原告の業務にかかる標章を示して
いる「yonetsubo」部分が本件ドメイン名の主たる部分であるといえる。
よって,本件ドメイン名は,主たる部分において原告の特定商品等表示と同一で
あるから,原告の特定商品等表示と類似するといえる。
ウ不正の利益を得る目的
(ア)原告と被告は,平成23年10月26日,被告が原告の「ヨネツボ」ののれ
んを用いて熊本県において本件業務を行うものとして,ヨネツボ熊本姉妹事務所基
本契約(以下「本件契約」といい,同契約に係る契約書を「本件契約書」という。)
を締結した(甲4)。
被告は,同日から,ヨネツボ熊本行政書士Aⅰ法務事務所という事務所名で本件
業務を行うこととし,その後,遅くとも平成25年1月21日には,本件ウェブア
ドレスを用いて被告事務所のホームページを管理運営し,また,遅くとも同月30
日には,被告事務所のホームページ及び被告事務所を紹介するウェブページ上で,
本件メールアドレスをメールでの問合先として掲載した(甲2,3)。
(イ)原告は,被告が本件契約に違反する行為(①同意なき事務所名の変更,②承
認なき報酬表の設定,③のれん代及び指導料の未払,④業務テリトリー違反及びそ
の広告,⑤(原告の姉妹事務所以外の)協力行政書士との連携行為,及び⑥不当な
業務の外注行為。以下,上記①ないし⑥の行為をまとめて「本件違反行為」という。)
を行ったことから,平成25年2月15日,書面により是正を求め,併せて,同書
面到達後14日以内に,本件違反行為の是正がなされない場合には,本件契約を解
除する旨の通知(以下「本件通知」という。)をした(甲5)。本件通知は,遅く
とも,同年3月1日には,被告に到達した(甲6)。
その後,本件違反行為が是正されなかったため,本件契約は,同月15日の経過
により解除された。
(ウ)本件契約書(甲4)31条3項では,契約終了後の処理として,「乙(判決
注:被告)は,本件契約が終了した以降,「ヨネツボ」の名称・商標を使用するな
ど,第三者から甲(判決注:原告)と誤認されるような行為をしてはならない」と
定められている。
それにもかかわらず,被告は,現在においても,「yonetsubo」の表記
を含む,本件ドメイン名を用いて,被告事務所のホームページを管理・運営し,ま
た,メールでの問合せ先として,被告事務所のホームページ及び被告事務所を紹介
するウェブページ上に,本件メールアドレスを掲載している(甲7の1ないし甲7
の3)。
被告は,本件契約が解除され,原告と誤認されるような行為をしてはならないと
された時点以降も,原告の特定商品等表示である「yonetsubo」に類似す
る本件ドメイン名を保有,使用し,本件業務を継続して行っており,本件契約が終
了した翌日である平成25年3月16日以降,原告の特定商品等表示である「yo
netsubo」の顧客吸引力にフリーライドして不当に自己の利益を図る目的で
本件ドメイン名を保有,使用しており,被告は,不正の利益を得る目的で本件ドメ
インを使用しているといえる。
(エ)したがって,被告の本件ドメイン名の使用は,不正競争防止法(以下「不競
法」という。)2条1項13号(ただし,平成27年12月31日以前の被告の行
為は,平成27年法律第54号による改正前の不競法2条1項12号)の不正競争
行為に該当する。
エ営業上の利益の侵害
被告は,平成25年3月15日以降も,熊本県を拠点として,本件ドメイン名を
用いて本件業務を継続してきた。そして,被告は,本件契約が解除された後も本件
ドメイン名を使用していることから,今後も本件ドメイン名を用いて本件業務を継
続するおそれはある。他方,原告は,全国に姉妹事務所を展開して本件業務を行う
法人であることから,被告が本件ドメイン名を用いて本件業務を継続していること
により,一般顧客において,被告が原告の関連事務所であるかのような誤認が生じ,
原告の事業活動における信用が毀損されている。また,原告が本来獲得することが
できたはずの顧客が獲得できなくなっている。さらに,被告が,今後も本件ドメイ
ン名を用いて本件業務を継続すれば,原告は,将来にわたって,原告の事業活動に
おける信用が毀損され,また,原告が本来獲得することができるはずの顧客が獲得
できなくなる相当の可能性がある。
したがって,原告の営業上の利益が現に侵害され,又は侵害されるおそれがある。
オ被告は,平成25年3月15日の経過により本件契約が解除され,原告と誤
認されるような行為をしてはならないとされた時点以降も,原告の業務にかかる標
章である「yonetsubo」を含む本件ドメイン名を用いて本件業務を継続し
ていることからすると,原告の営業上の利益を侵害することを認識しながら,あえ
て本件ドメイン名を用いて本件業務を継続していたものといえる。
したがって,被告は,故意により,上記不正競争行為を行ったものといえる。
(3)損害の発生
被告は,本件ドメイン名を用いて,被告事務所のホームページを管理・運営し,
また,電子メールでの問合先として,被告事務所のホームページ及び被告事務所を
紹介するウェブページ上に,本件メールアドレスを掲載することで,少なくとも年
額501万2800円の売上を得ていた(甲9の1ないし5)。
〈売上の内訳〉
平成24年4月分21万5000円(甲9の1)
9月分24万9000円(甲9の2)
10月分147万6350円(甲9の3)
11月分196万7200円(甲9の4・5)
12月分110万5250円(甲9の5)
平成24年分合計501万2800円
そうすると,本件ドメイン名の使用によって受ける金銭は,上記売上の10%に
相当する年額50万1280円(月額4万1773円)を下らない。
したがって,原告には,平成25年3月16日から平成28年1月15日までの
間に,少なくとも142万0282円の損害(月額4万1773円に34か月を乗
じた額)が発生した。
(4)よって,原告は,被告に対し,不競法3条1項に基づき,本件ドメイン名の
使用の差止めを,同条2項に基づき,本件ドメイン名の登録の抹消登録手続を,同
法4条に基づき,損害賠償金142万282円及びこれに対する不法行為後の日で
ある平成28年1月25日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害
金の支払を求める。
2被告は,公示送達による呼出しを受けたが,本件口頭弁論期日に出頭しない。
第3当裁判所の判断
1証拠(甲1ないし7,7の1ないし3,8の1・2,10)及び弁論の全趣
旨(①被告の戸籍の附票に被告の最後の住所につき平成28年4月19日職権消除
通知の記載があること,②被告が同年6月26日の時点においても本件メールアド
レスを連絡先の一つとしていたこと,及び③被告の同年8月15日の時点における
日本行政書士会連合会に登録された事務所所在地が最後の住所と一致することを含
む。)によれば,前記第2の1(1)及び(2)の事実を認めることができる。
2原告は,平成25年3月16日から平成28年1月15日までの間(以下「本
件対象期間」という。)の被告の本件ドメイン名の使用により,142万0282
円(月額4万1773円に34か月を乗じた額)の損害を受けた旨主張する。
そこで検討するに,証拠(甲9の1ないし5,10)によれば,被告の平成24
年の売上高(税込)が501万2800円(1か月平均41万7733円)であっ
たことが認められ,これと証拠(甲6)及び弁論の全趣旨を総合すれば,本件対象
期間の被告の1か月当たりの売上高も平成24年と同程度であったと推認するのが
相当である。
そして,証拠(甲7の1ないし3,8の1・2)及び弁論の全趣旨によれば,イ
ンターネット上のgoogleの検索サイトにおいて,「後遺障害行政書士」,
「自賠責行政書士」をキーワードとして検索すると,原告のホームページが上位
に表示される(ただし,本件ドメイン名自体が表示されるものではない。)こと,
被告が,本件対象期間の34か月を含め,本件契約終了後,現在に至るまで本件ド
メイン名を使用し続けているのは,同ドメイン名の使用が顧客獲得にある程度資す
るものである可能性があるからであると推認されること,他方,本件ウェブサイト
を含む被告の管理するウェブサイト上において,本件ドメイン名がことさら強調さ
れておらず,本件ドメイン名自体の顧客吸引力はそれほど大きなものとは認められ
ないことなどからすると,本件ドメイン名の使用によって受けるべき金銭の額(不
競法5条3項5号)は,被告の本件対象期間の売上の1%と認めるのが相当である
(原告が主張するように,売上高の10%と認めるに足りる他の証拠はない。)。
したがって,原告の損害額は,14万2018円(1か月当たり4177円に本
件対象期間34か月を乗じたもの)と認めるのが相当というべきである。
3結論
以上によれば,原告の請求は,被告に対し,本件ドメイン名の使用の差止め,本
件ドメイン名のドメインの抹消登録手続,並びに損害賠償金14万2018円及び
これに対する不法行為(不正競争行為)後の日である平成28年1月25日から支
払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由が
あるから認容し,その余は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決す
る。
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官
嶋末和秀
裁判官
鈴木千帆
裁判官
天野研司

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛