弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は、原告の負担とする。
       事   実
第一 当事者の求めた裁判
 原告訴訟代理人は、「特許庁が、昭和四五年九月九日、同庁昭和四四年審判第
三、三五一号事件についてした審決を取り消す。訴訟費用は、被告の負担とす
る。」との判決を求め、被告指定代理人は主文同旨の判決を求めた。
第二 請求の原因
原告訴訟代理人は、請求の原因として、次のとおり述べた。
一 特許庁における手続の経緯
 【A】昭和四二年五月一七日、特許庁に対し、別紙記載のとおり、ゴシツク体で
「セフロン」の片仮名文字を左横書きしてなる構成の商標について、商標法施行令
別表第四類せつけん類(薬剤に属するものを除く。)歯みがき、化粧品(薬剤に属
するものを除く。)、香料類を指定商品として商標登録出願(昭和四二年商標登録
願第二八、七七六号)をし、原告は、昭和四四年二月一日、右【A】より本件商標
登録出願により生じた権利を譲り受け、特許庁長官にその旨の届出をしたが、同年
二月一〇日拒絶査定を受けた。原告は、同年五月一日、これを不服として、審判の
請求をし、昭和四四年審判第三、三五一号事件として審理されたが、昭和四五年九
月九日、「本件審判の請求は成り立たない。」旨の審決があり、その謄本は同年一
〇月二九日原告に送達された。
二 本件審決理由の要旨
 本件審決は、本願商標の構成および指定商品を前記のとおりであるとし、次い
で、原査定において引用の登録第四五三、七八七号商標は、ゴシツク体で「SEF
LOR」の欧文字を横書きしてなる構成で、旧商標法施行規則(「大正一〇年農商
務省令第三六号」をいう。以下同じ。)第一五条第三類香料および他類に属しない
化粧品を指定商品として昭和二九年一〇月二一日登録されたものであり、同じく引
用の登録第五〇四、〇二一号商標は、ゴシツク体で「SEFLOR」の欧文字を横
書きしてなる構成で、旧商標法施行規則第一五条第四項類石鹸を指定商品として、
昭和三一年六月二五日登録出願し、昭和三二年六月一七日登録されたものであり、
また、同じく引用の登録第五〇四、〇二二号商標は、ゴシツク体で「SEFLO
R」の欧文字を横書きしてなる構成で、旧商標法施行規則第一五条第五類歯磨およ
び他類に属しない洗料を指定商品として昭和三一年六月二五日登録出願し、昭和三
二年六月一七日登録されたものであると認定したうえ、本願商標と引用各商標を対
比し、その構成は外観上互いに区別しうる差異を有するが、称呼上からみた場合
に、本願商標からは「セフロン」の称呼を生ずるのに対し、引用各商標はいずれも
「SEFLOR」の文字を書してなるものであるが、この語は辞典にも記載されて
いないものであるから造語と認められ、それに一定の発音(称呼)が明示されてい
ないために、この商標に接する者(需要者)は語学知識の程度に応じ、各自が適当
(自然)と思う称呼をもつて取引するのが普通であり、したがつて、「SEFL
R」の文字からは、「セフラー」の称呼のほかに「セフロー」の称呼をも生ずるも
のとするのが取引の実際に徴し相当である。そして、引用各商標を「セフロー」と
称呼した場合には、本願商標と引用各商標とは称呼上「セフロ」の三音を共通に
し、両者その語尾において、「ン」と「ロ」の長音の差異があるけれども、「セフ
ロン」の称呼は、語尾の「ン」音が弱い発音であるために、アクセントを有する前
者の「ロ」に吸収されて明確に聴取し難い関係にあるから、両者、それぞれ一連に
称呼するときは全体的な語感、語調が著しく近似し、彼此きわめて相紛らわしく、
取引上誤認混同を生ずるおそれがあることが十分に認められる。したがつて、両者
は、称呼上類似する商標といわなければならない。また、その指定商品において、
本願商標の指定商品は、引用各商標の指定商品と同一または類似の商品を包含し、
互いに牴触するものであることは明らかであるから、本願商標は商標法第四条第一
項第一一号の規定に該当し、登録は許されるべきでない、としている。
三 本件審決を取り消すべき事由
 本願商標および引用各商標の構成および指定商品ならびに引用各商標の登録出願
または登録の各年月日についての本件審決の認定は争わないが、本件審決は、次の
理由から違法であり、取り消されるべきである。
1 本件審決は、引用各商標からは、「セフラー」の称呼のほかに、「セフロー」
の呼称をも生ずるものとするのが取引の実際に徴し相当であるというのが、引用各
商標の「SEFLOR」の構成態様からは、「セフラー」とのみ称呼されるのが自
然であり、これと異なる審決の認定は誤つている。わが国では、外国語として英語
が最も普及し、取引上欧文字からなる商標の称呼は英語の発音の原則によつて行な
われるのが一般であるところ、引用各商標の「SEFLOR」の語尾に相当する
「LOR」は、通常、英語では「ラー」(発音記号で示せば、「ler」となる。
なお、「r」の発音は舌先を上歯の裏に近づけて起す摩擦音で、日本語で「ア」の
発音に近い発音であり、日本人は一般に「アー」と発音している。)と称呼するを
自然とし、ほかの称呼が生ずるとしても、それは「ラア」である。語学知識が相当
程度向上した現今において、「SEFLOR」をあえて「セフロー」と称呼し、引
用商標から、「セフロー」の称呼が生ずるとする論理必然性はない。したがつて、
引用各商標に接する者(需要者)が、この引用各商標に一定の発音(称呼)が明示
されていないために、語学の知識の程度に応じ、各自が適当(自然)と思う称呼を
もつて取引するとしても、引用各商標から「セフラー」との称呼を生ずるとするの
が自然であり、たとえ、他に称呼されるとしても、「セフラア」の称呼をもつて取
引されるとするのがむしろ取引の実際に徴し相当である。
2 商標は、現実の取引市場においてのみその機能を発揮し、法はその機能に着目
して流通秩序の維持と取引上の安全を図ることを期待したものであるから、この意
味から商標の類否判断は取引の実際を考慮したものでなければならず、単なる対比
観察は客観的合理性を欠くものであるところ、引用各商標の商標権者であるセフラ
株式会社は、登録第四五三、七八七号引用商標の連合商標として、片仮名の「セフ
ラー……」の態様で「セフラー」の称呼を生ずる登録第五一五、五二五号商標「セ
フラー」、登録第五一二、五二九号商標「セフラースーパー」、登録五一二、七四
九号商標「SefCorfセフラアロマオイル」、登録第五六〇、一八四号商標
「セフラーフツト」、登録第五三六、五九五号商標「SeflorGoldセフラ
ーゴールド」、登録第四七八、三一二号商標「SEFLORDRESSYセフラー
ドレツシイ」および登録第四七八、三一四号商標「SEFLORHAIRDRES
SYセフラーヘアードレツシイ」の各登録商標を有しており、この事実からして、
引用各商標の商標権者は、引用各商標を「セフロー」としてより「セフラー」とし
て称呼される商標として選択したものと認められるのみならず、使用においても、
「セフラー」の称呼で使用しているとともに市場においても「セフラー」の称呼で
需要者間において取引され認識されるものと認められる。ことに、商標権者として
は、自己の業務に係る商品に使用する商標は取引上自己の商号と同一の呼称で指称
されることが業務上の信用を図るうえで、好ましいものであるから、引用各商標は
「セフラー」なる称呼で取引されているのが自然で合理的というべきであり、「セ
フロー」、「セフロール」と称呼する合理性はない。
 以上の理由により、引用各商標は「セフラー」とのみ称呼されるところ、一方、
本願商標は、「セフロン」と一連かつ明確に称呼され、その末尾語の「ロン」は称
呼全体の語路、語調からみて重要な語韻をなしているから、両商標は時と所を異に
して全体的に称呼した場合、語路、語調、語韻が著しく相違し、非類似であり、取
引上誤認混同のおそれは全くない。したがつて、これと異なる判断をした審決は違
法というべきである。
第三 被告の答弁
被告指定代理人は、答弁として、次のとおり述べた。
一 請求の原因第一項および第二項の事実は、認める。
二 同第三項の主張は、争う。本件審決は、正当であり、原告の主張は理由がな
い。
1 同項1について
 引用各商標のように、特定の意味を有しない造語と認められる欧文字のみからな
る商標にあつては、商標使用者の採択の意図如何にかかわらず、看者(引取者また
は需要者)各自の語学知識に応じた適当と思う称呼(たとえば、「セフラー」、
「セフロー」または「セフロール」等)をもつて取引されるのが普通である。英語
において、その語間または語尾に「OR」の文字があるときは、必ずしも「アー」
とのみ発音するものではなく、「オー」とも発音して、その前音に接続させて称呼
する場合があることは決して少なくない。このことは、英和辞典におけるこの種英
語の発音記号に徴し明らかである。ちなみに、君主を意味する「LORD」は「ロ
ード」、豚肉の「PORK」は「ポーク」、孤独を意味する「FORLORN」は
「フオーローン」と発音されているし、海港等に通ずる細長い土地を指して「コリ
ード地帯」と称されているが、この語源は英語の「CORRIDOR」に由来し、
また、「闘牛士」を意味し、「マタドー」の語で一般に親しまれている英語のスペ
ルも「MATADOR」であり、さらに、接続詞の「NOR」を「ノー」と発音す
る等この種発音の類例は少なくない。
 したがつて、引用各商標の「SEFLOR」の文字から、「セフロー」の称呼を
も生ずるとすることは妥当性を欠くものではない。
2 同項2について
 原告は、登録第四五三、七八七号引用商標に連合する各商標を挙示し、この事実
から、「SEFLOR」の文字を「セフラー」と称呼して取引されている証左とし
て主張するが、商標の類否を判断するに当たつては、本願商標と引用商標の商標自
体を対比観察してなされるべきものであり、この観点に立つて、本願商標と引用各
商標とを対比した場合は、両者は称呼上類似するものというべきであるし、また、
取引の実際において、引用各商標から「セフラー」の称呼のみが生ずるということ
は認めることができない。
第四 証拠関係(省略)
       理   由
(争いのない事実)
一 本件に関する特許庁における手続の経緯、本題商標および引用各商標の構成お
よび指定商品、引用各商標の登録出題または登録の各年月日ならびに本件審決理由
の要旨が原告主張のとおりであることは、当事者間に争いがない。
(本件審決を取り消すべき事由の有無について)
二 原告は、引用各商標の文字構成からは、「セフラー」の称呼のみを生じ、ほか
の称呼が生ずるとしても「セフラア」である旨主張する。しかし、前記認定の引用
各商標の構成「SEFLOR」の文字は、特定の意味を有しない造語であることは
明らかであり、かつ、その欧文字とならべて、その発音を表現したとみられるべき
仮名文字の記載もないから、引用各商標に接する取引者ないし需要者は、その語学
知識に応じ、それぞれの読み方をするものとみるのを相当とするところ、英語風の
発音による場合、引用各商標からは、「セフラー」の称呼のほか「セフロー」の称
呼をも生ずるであろうことは、この種スペルの英語の発音例に徴し明らかである。
原告は、英語風の発音では「セフロー」とは読みえない旨主張するが、採用するに
由ない主張というほかない。
 次に、原告は引用各商標の商標権者の商号が「セフラ株式会社」であり、また、
登録第四五三、七八七号引用商標の連合商標例を種々挙示し、これらの事実から、
取引の実際において、引用各商標は「セフラー」とのみ称呼される旨主張するが、
右原告の挙示する各事実をもつてしても、いまだ、取引の実際において、引用各商
標が「セフラー」のみの称呼で指称されていることを認めるに足りないし、また、
引用各商標から「セフラー」という特定の称呼のみが生ずるものと認めることもで
きず、この認定を覆すに足りる証拠はない。
 してみれば、引用各商標からは、「セフロー」の称呼を生ずるものというべく、
本題商標の「セフロン」の称呼(本題商標から右の称呼を生ずることは原告のみず
から認めるところである。)と引用各商標の「セフロー」の称呼を対比するに、両
者は前三音の「セフロ」を共通にし、語尾において前者は「ン」、後者は「ロ」の
長音という差異はあるけれども、本題商標の語尾の「ン」は弱い発音であつて、そ
の前音の「ロ」に吸収されて明確に聴取し難い関係にあるから、これを一連に称呼
するときは、全体の語調、語感において、両者きわめて近似し彼此相紛らわしく、
称呼上類似するものといわなければならない。しかも、前記認定のとおり、本題商
標は引用各商標の登録出願の日の後の商標登録出願に係り、かつ、両者はその指定
商品において相牴触するから、本願商標は引用各商標と類似し、商標法第四条第一
項第一一号の規定により登録を許されないものというべきである。
(むすび)
三 以上説示したとおりであるから、その主張のような違法のあることを理由に本
件審決の取消しを求める原告の本訴請求は理由がないものというほかない。よつ
て、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法第七条、民
事訴訟法第八九条の規定を適用し、主文のとおり判決する。
(裁判官 三宅正雄 武居二郎 楠賢二)
別紙
本願商標
<11663-001>

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