弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

       主   文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
       事実及び理由
第1 請求
1 被告が原告に対して平成11年11月8日付けでした、原告の別紙物件目録記
載の土地に関する不動産取得税の賦課決定を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
第2 事案の概要
 本件は、宅地転用許可を受けて農地を取得した原告が、不動産取得税の課税額が
不当に高額であると主張して、その取消しを求めた事案である。
1 争いのない事実(証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実を含
む。)
(1) 原告は、肩書住所地において不動産業を営む株式会社である。
(2) 原告は、平成11年3月16日、別紙物件目録記載の土地(以下「本件土
地」という。)を購入したが、購入に先立ち、千葉県知事から農地法5条1項の許
可を受けていた(甲6)。
(3) 千葉県は、地方自治法155条1項に基づき、千葉県行政組織条例12条
及び14条を制定し、千葉県夷隅支庁を設置して本件土地所在地をその所轄地とし
ているが(乙11)、被告は、千葉県県税条例5条により、千葉県知事から不動産
取得税の賦課権限の委任をされている(乙12)。
 被告は、本件土地に関して、平成11年11月8日付けで、課税標準額382万
8000円、税額15万3100円とする不動産取得税賦課決定を行った(甲3、
6)。
(4) 地方税法(以下「法」という。)は、固定資産課税台帳に固定資産の価格
が登録されている不動産については、原則として、当該登録価格により不動産取得
税の課税標準価格を決定するものとし(法73条の21第1項)、例外として、当
該不動産について増築、改築、損かい、地目の変換その他特別の事情がある場合に
おいて当該固定資産の価格により難いときは、法388条1項所定の固定資産評価
基準によって課税標準となるべき価格を決定するものと規定している(法73条の
21第1項ただし書、同条2項)。
 本件土地に関する不動産取得税の課税処分に当たり、被告は、「地方税法の施行
に関する取扱いについて(道府県税関係)」(平成10年4月1日自治府第51号
各部道府県知事あて自治事務次官通知)第五章第三の二〇(一)において、「農地
について農地法第5条第1項の規定による道府県知事の許可を受けた場合も(法7
3条の21第1項ただし書規定の)特別の事情に該当するものであること。」と
定められていることに従い、法73条の21第1項ただし書、同条第2項、388
条1項を適用して、固定資産評価基準に基づき、(3)の課税標準額を決定した。
(5) 原告は、平成12年1月6日、千葉県知事に対し、同課税処分に不服であ
るとして審査請求をした。
(6) 千葉県知事は、平成12年4月7日、同審査請求に対し、これを棄却する
旨の裁決をし、同裁決書謄本は、同月10日、原告に送付された。
(7) 原告は、平成12年7月7日、本件訴訟を提起した。
2 争点
 農地の転用許可を受けたことが法73条の21第1填ただし書に規定する「特別
の事情」にあたるか。
(1) 原告の主張
 法73条の21第1項ただし書は、「特別の事情」として地目の変換を明示して
いるから、たとえ転用許可を受けたとしても、地目の変換がなされない段階では、
原則どおり、同条本文の適用があることが前提とされている。加えて、農地法5条
の許可は、要件効果が明確で定型的に規定できるのに、同条ただし書はこれを明示
していないのであるから、このような場合には、同条ただし書ではなく、本文が適
用されるべきことが当然の前提とされている。
(2) 被告の主張
 本件土地のように、農地法5条1項の許可を受けた土地は、外見上農地としての
形態を留めてはいるが、実質的には宅地等としての潜在的価値を有しており、これ
を農地と同様に生産力条件に着目して評価することは不合理であるし、他の宅地と
の間に不均衡が生ずることなどからすれば、このような場合には、法73条の21
第1項ただし書にいう「特別の事情」があるものというべきである。
 よって、被告が本件土地の取得に関し、同項ただし書を適用し、固定資産評価基
準に基づく賦課処分を行ったことは適法である。
第3 当裁判所の判断
1 法73条の21第1項ただし書にいう「当該固定資産の価格により難いとき」
の意義等について
 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産について法が当該登
録価格によって不動産取得税の課税標準となるべき価格とするのを原則と定めた趣
旨は、固定資産税の課税対象となる土地及び家屋の範囲は、不動産取得税の課税対
象となる不動産とほぼ同一であり(法73条1号ないし3号、341条2号、3
号)、その価格も同じく適正な時価をいうものとされていること(法73条5号、
341条5号)などから、両税における不動産の評価の統一と徴税
事務の簡素化を図ったものと解することができる。
 すなわち、固定資産税の課税標準は、賦課期日における固定資産の価格で、固定
資産課税台帳に登録されたものとされているが(法349条)、法は、固定資産課
税台帳に登録される固定資産の価格が適正な時価であるようにするため、市町村長
等が行う固定資産の評価及び価格の決定は総務大臣により定められた評価の基準並
びに評価の実施の方法及び手続(固定資産評価基準)に基づいて行うものとし(法
388条以下参照)、決定された価格について固定資産税の納税者に不服申立ての
機会を与える(法432条以下参照)などの規定を設けている。そして、法は、固
定資産のうち不動産については、税負担の安定と行政事務の簡素化を図る見地か
ら、原則として3年ごとにその評価を行い、価格を決定した上、固定資産課税台帳
にその価格を登録し、第2年度及び第3年度については、原則として、基準年度の
登録価格をもってその登録価格とみなすこととしつつ、ただ、第2年度、第3年度
において、「地目の変換、家屋の改築又は損壊その他これらに類する特別の事情」
等が生じたため、基準年度ないし第2年度の価格によることが不適当、不均衡とな
る場合には、これによらずに当該不動産に類似する不動産の基準年度の価格に比準
ずる価格によることとしている(法349条2項、3項参照)。
 このようにして評価、決定され、固定資産課税台帳に登録された価格は、基準年
度の固定資産税の賦課期日における不動産の時価を示すものというべきであるが、
不動産取得税の課税上、不動産の評価の統一性を確保し、また、極めて多数にのぼ
る不動産の取引等ごとに当該不動産の価格を評価,決定することの煩雑さを回避
し、簡易で効率的な徴税を図るという見地からすれば、この登録価格を当該不動産
の取得時の時価として取り扱うことは課税技術的に合理性があり、それによって税
負担の公平を損なうなどの支障が生ずることは通常は考えられないことから、法
は、都道府県知事が不動産取得税の課税標準である不動産の価格を決定するについ
ては、固定資産課税台帳に当該不動産の価格が登録されている場合には、原則とし
て、同登録価格によりこれを決定することとしたものと解される。
 このような法の趣旨及び固定資産税における不動産の評価及び価格決定の仕組み
に照らすと、法73条の21第1項ただし書にいう「当該固定資産の価格
により難いとき」とは、当該不動産の評価が行われ、その価格が決定された年度の
固定資産税の賦課期日後に、当該不動産につき、増築、改築、損壊、地目の変換そ
の他特別な事情が生じ、その結果、同登録価格が当該不動産の適正な時価を示して
いるものとみて、同登録価格をもとに不動産取得税の課税標準額を決定することが
公平な税負担という観点から見て看過できない程度に不合理と認められる事態に至
った場合をいうと解するのが相当である。
2 農地の転用と「特別の事情」
 そこで、農地法5条1項の転用許可が「特別の事情」に該当するかどうかについ
て検討する。
(1) 農地法5条1項は、耕作者の地位の安定と農業生産力の増進を図ることを
目的として、農地を農地以外に転用する目的で所有権を移転する場合には、同項た
だし書に規定する場合を除いて、都道府県知事の許可を受けなければならないと規
定し、この許可を受けない以上、当該農地に関して所有権移転の効力は生じないと
されている。
 そして、同条項の許可は、所有権移転の効力を生ぜしめる一種の法定条件と解さ
れており、この許可を受けることによって、当該土地は宅地等として利用可能な状
態になるところ、農地は、耕作、すなわち土地に労費を加え、肥培管理を行って作
物を栽培するという限定された目的に供される土地であるのに対し、宅地は、居住
の用に供される土地であり、その評価は農地に比して格段に高いのが一般である。
(2) そうすると、農地法5条1項の許可を受けて、当該土地が宅地としての実
質を有するに至った後も、農地としての農業生産性に着目して算定された固定資産
課税台帳登録価格により不動産取得税の課税標準額を算定することは、他の宅地所
有者との関係において、公平な税負担の観点から見て看過できない程度の不合理を
生じさせるものといわなければならない。
(3) よって、農地法5条1項の許可は、法73条の21第1項ただし書にいう
「特別の事情」に該当する。
3 本件の検討
(1) これを本件についてみると、原告は、本件土地を取得する際、農地法5条
1項の許可を受けているのであるから、被告が法73条の21第1項ただし書、同
条2項、388条1項に基づき、固定資産評価基準によって本件土地の不動産取得
税額を算定したことに違法はない。
(2) そして、具体的な不動産取得税額の算定について検討するに、証拠(乙3
ないし9)及び弁論の全
趣旨によると、以下の事実が認められる。
ア 本件土地の概況
 本件土地は、千葉県夷隅郡αのほぼ東央部の国道128号線と太平洋岸の間に位
置し、周囲は主に農地で、家屋がまばらに点在し、東側の土地を隔てて河川江場土
川が南から北に流れている。最寄りのJR外房線三門駅から北東に約750メート
ルの位置にあり、主な公共施設である町役場から南南東に約1キロメートルの位置
にある。本件土地の形状は、ほぼ長方形で、道路に接しており、本件土地から町道
を経由して国道128号線に出ることができる。
イ 被告は、次のような経過により、本件土地の不動産取得税額を決定した。
(ア) 固定費産評価基準
 固定資産評価基準第1章第2節一「田及び畑の評価」によれば、農地法5条1項
の規定により宅地等への転用許可を受けた田及び畑等については、沿接する道路の
状況、公共施設等の接近の状況その他宅地等としての利用上の便等からみて、転用
後における当該田及び畑とその状況が類似する土地の価額を基準として求めた価額
から当該田及び畑を宅地等に転用する場合において通常必要と認められる造成費に
相当する額を控除した価額によってその価額を求める方法によるものとする、と規
定されている。
(イ) 類似土地を基準とした基本価額の算定
 被告は、本件土地とβ225番地5の宅地(以下「本件類似土地」という。)の
概要が周囲の環境、接道と幹線道路への接続、最寄り駅及び町役場への接近条件等
において高い類似性を有すること、本件類似土地は、固定資産評価額算出の際、本
件土地が存する状況類似地区番号61の標準地とされていることなどから、本件類
似土地を基準地として選定した。そして、本件類似土地の固定資産課税台帳登録価
格が1平方メートル当たり2万4500円であったことから,本件土地の基本価額
を1平方メートル当たり2万4500円と算定した。
(ウ) 造成費の算定
 被告は、本件土地が未造成で、通常必要と認められる造成費相当額の算定が困難
であったことや近傍類似宅地の売買実例価格の把握が困難であったことなどから、
盛土の高さに応じた標準的造成費相当額を算定することとし、本件土地の調査を行
い、本件土地が平坦地であること、近接宅地までの高さが約1.4メートルで、盛
土の高さは1.5メートルが妥当であると判断して、造成費を1平方メートル当た
り5500円と算定した。
(エ) 地方税法附則11条の5
第1項の適用
 原告は、平成11年3月16日に本件土地を取得し、また上記のように、近傍類
似宅地の価額を基準として本件土地の評価がなされていることから、地方税法附則
11条の5第1項により、本件土地の基本価格の2分の1の額が課税標準とされ
た。
(オ) 不動産取得税の標準税率
 法73条の15によれば、不動産取得税の課税標準税率は、100分の4であ
る。
(カ) 被告は、これらをもとに、本件土地の不動産取得税額を15万3100円
と決定した。
(3) 以上認定の事実によれば、本件不動産取得税額は、固定資産評価基準に基
づいて算出されたものであり、その決定過程及び考慮事項に不適切なものはないか
ら、適正なものと認められる。
第4 結論
 以上によれば、原告の請求は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につ
き行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条に従い、主文のとおり判決する。
千葉地方裁判所民事第三部
裁判長裁判官 園部秀穂
裁判官 今泉秀和
裁判官 向井邦生

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛