弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
○ 事実
控訴人は「原判決を取消す。被控訴人が昭和四九年一〇月七日にした控訴人の昭和
三五年五月一日から昭和三六年四月三〇日まで、同年五月一日から昭和三七年四月
三〇日まで、同年五月一日から昭和三八年四月三〇日まで、同年五月一日から昭和
三九年四月三〇日まで、同年五月一日から昭和四〇年四月三〇日まで、同年五月一
日から昭和四一年四月三〇日まで、同年五月一日から昭和四二年四月三〇日までの
各事業年度分の法人県民税及び事業税にかかる過誤納金還付処分を取消す。被控訴
人が昭和四九年一二月一〇日にした控訴人の昭和四二年五月一日から昭和四三年四
月三〇日までの事業年度分の法人県民税及び事業税にかかる過誤納金還付処分を取
消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控
訴人は主文同旨の判決を求めた。
当事者双方の主張並びに証拠関係は、次のとおり付加するほかは原判決の事実摘示
と同一であるからこれを引用する。
(控訴人の主張)
一 地方税法一七条は、地方団体の長は過誤納金に係る地方団体の徴収金があると
きは遅滞なく還付すべきものとして、同還付にあたつては同法一七条の二ないし四
にしたがい、過誤納金及び還付加算金の額を算出してその支出を決定し、他の徴収
金で充当すべきものがあれば充当し、残余を現に還付すべきものとし、過誤納金等
還付充当通知書によりその旨納税者に通知して右還付手続を履行すべきものとして
いる。
二 右地方団体の長の処置は、過誤納金及び還付加算金についての行政機関として
の事実及び法律上の一部の判断を前提にしていずれの法条を適用して還付すべきか
を決定し、具体的な還付額、還付加算金額等を算出してその支出、還付等を決定す
る性質のもので、単なる行政事務的な手続とはみられないものである。
三 右行政機関の処置は、現実に還付された金額を上回る金額については還付しな
い旨の意思を公にするもので、還付を受けるべき者の法的な地位(権利義務)を確
定する行為にあたる。
四 過誤納金の還付は行政機関の還付行為があつてはじめてその効果が生ずるので
あつて、還付の要件が充足されたとき還付の効果が生ずるのでなく、現実の還付行
為に対しては地方税法及び行政不服審査法に基づく不服申立も認められていること
からみると還付処分は行政処分として抗告訴訟の対象となるものと解すべきであ
る。
(被控訴人の主張)
一 控訴人主張の本件還付行為自体が抗告訴訟の対象となる点は争う。
二 控訴人は還付行為に対して地方税法及び行政不服審査法に基づく不服申立が認
められていることを理由に抗告訴訟の対象となると主張するが、不服申立制度にお
いては、抗告訴訟の対象となる処分のみでなく、それ以外についても幅広く審査の
対象となることが認められているのであつて、不服申立が認められているからとい
つて当然に抗告訴訟の対象となるものではない。例えば、納税の督促については地
方税法一九条二号、一九条の四、国税徴収法一七一条によつて不服申立が認められ
ているが、抗告訴訟の対象とはならないものである。
○ 理由
一 当裁判所も本訴は不適法として却下すべきものと判断し、その理由は次のとお
り付加するほかは原判決が説示するところと同一であるからこれを引用する。
地方税法一七条の過納金の還付については、同法一九条九号、同法施行規則一条の
七、四号によつて行政不服審査法に基づく不服申立が認められているが、これは行
政上の手続によつて関係者の不服を簡易迅速に解決しようとする趣旨のものに過ぎ
ず、右規定の存在をもつて本件還付が抗告訴訟の対象となる理由とすることはでき
ない。
二 そうすると、控訴人の本件訴を却下した原判決は相当であつて、本件控訴は理
由がないから棄却することとし、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条
を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 辻川利正 梶本俊明 出嵜正清)

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