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       主   文
一 被告は原告に対し、金一三万〇、〇〇〇円及びこれに対する昭和五四年一月二
三日から支払ずみまで年六分の割合による金員を支払え。
二 訴訟費用は被告の負担とする。
三 この判決は、仮に執行することができる。
       事   実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 主文第一、二項と同旨
2 仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 被告は、印刷等を業とする株式会社(以下被告会社という。)である。
2 原告は、被告に、昭和五三年一二月一日、版下製作業務に従事する、給料は手
取一ケ月金一三万円とする約定で雇用された。
3 しかるに被告は、昭和五三年一二月一五日、原告が被告会社にそぐわないとの
理由で、三〇日前にその予告しないで原告を解雇し、解雇予告手当として原告の一
ケ月の平均賃金に相当する金一三万円の支払いをしない。
4 よつて原告は被告に対し、右解雇予告手当金一三万円及びこれに対する支払命
令送達の翌日である昭和五四年一月二三日から完済まで、商事法定利率年六分の割
合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因第1、2項は認める。
 被告は原告を、昭和五三年一二月一日、試用期間二ケ月、給料は日給月給(休業
日を除く就業日数で算出する)とし、一ケ月の基本給(保障額)を一三万円とする
約定で雇用したのである。
2 同第3項は否認する。
3 同第4項は争う。
三 被告の主張
1 積極否認
原告は被告から解雇されたのではなく、任意に退職したのである。すなわち、
(一) 原告は、昭和五三年一二月一日被告会社に就労したが、就業一〇日目位か
ら就業時間中に無断で外出したり、仕事を命じても返答をしないという極めて好ま
しくない勤務状態を示すに至つたので、被告会社代表者A(以下被告会社A社長と
いう。)は、このような原告の勤務態度は他の従業員に対してよくないので、版下
製作部門の責任者であるB(以下Bという。)に原告が真面目に勤務するよう説得
させていた。
(二) 同月一五日朝九時ころ被告会社で、原告はBから勤務状態が悪いことを示
唆されたことから、Bから原告に解雇通告をしたのではないのに、「結局辞めてく
れということでしよう。」といつて、自ら辞める旨申し出たものである。
(三) 被告会社A社長は、Bから原告が辞めると言つている旨の報告を受け、原
告の日給月給という雇用条件からいつて、原告が現実に就業した日数(二回の休養
日を除く一二日分)の給料を支給すれば足りるのであるが、原告の半月分支給の申
出を了承して、好意的に一ケ月分の基本給の半分である金六万五、〇〇〇円と通勤
定期代金三、五〇〇円を支払うことに合意が成立し、原告は右金額の原告宛送金を
依頼して、当日なんらの業務に従事することなく退社した。
 そして同月末ころ、被告は原告に対し、右金額を送金した。
(四) しかるに原告は、前記(二)の数日後B宛に、給料を一ケ月分支給しろと
か、引続き使用させて欲しいという電話をしてきたが、被告はこれをすべて拒絶し
た。
 以上の事由により原告は被告会社を自発的に退職したものであるから、被告の原
告に対する解雇予告手当支払義務はない。
2 抗弁
(一) 仮りに、原告が任意退職でなく、被告に解雇されたものであるとしても、
原告は試用期間中であり、その実働日数は休業日を除けば一二日間であるから労働
基準法第二一条但書にいうところの一四日を超えて引き続き使用されていたという
要件に該らない。
(二) また仮りに、休業日も使用された日数に算入されるとした場合でも、原告
は同月一五日はBと話をしただけで、全く仕事に従事することなく帰宅してしまつ
ており、一四日を超えて引き続き使用されたものとは実質上いえない。
(三) また仮りに、右主張のいづれも理由がないとしても、労働基準法第二一条
但書の「一四日を超えて引き続き使用されるに至つた場合」という日数の計算につ
いて民法第一四〇条の初日不算入の原則が適用される。労働基準法がこの原則の適
用を排除する特別の規定はなく、またその理由もない。
 原告は、昭和五三年一二月一日に二ケ月の試用期間で雇用され、被告会社の就業
時間は午前九時である。原告が就業した一二月一日は、社会通念上出勤時刻の午前
九時が期間の起算点となるべきもので、すでに二四時間のうち九時間が経過してお
り、一日として計算すべき筋合ではないから、初日不算入の原則が適用されてしか
るべきである。
 したがつて、一四日間の計算は昭和五三年一二月二日が起算日であり、同月一五
日の満了をもつて一四日間となる。労働基準法第二一条但書にいう一四日を超える
というのは、同月一六日に至つた場合にはじめて妥当する。しかるに原告は、同月
一五日にBと話をしたのみで帰つているが、この日が被告に使用されたと解釈して
も、一四日を超える場合に該らない。
(四) よつて右記いづれの場合でも、被告に解雇予告手当の支払義務はなく、原
告の請求は失当である。
四 被告の主張に対する原告の答弁
1 「積極否認第1項」の主文は否認する。
原告は被告から解雇予告手当を支給されることなく即時解雇されたものである。
(一) 同第(一)項のうち、原告が昭和五三年一二月一日被告会社に就労したこ
とは認めるが、その余の事実は全部否認する。
 原告は、被告会社の就業時間中無断で外出したことはなく、仕事を命じられたと
き返事をしなかつたことが一、二度あるかも知れないが、それは被告会社社長の部
下に対する呼び方が「おい、お前」など非常識で不愉快に感じていたからである。
又一度もBから説得されたことはないし、説得されるほど不真面目な勤務状態でい
たことはない。
(二) 同第(二)項の事実については否認する。
 昭和五三年一二月一五日定刻前出勤後、午前一〇時ころ、被告側Bの呼出しに応
じて話合い中、Bが原告に協調性がないと発言したことに原告が怒つて反論した
後、「では結局辞めてくれということですか。」と問うと直ぐにBはうなづいたの
で、原告はさらに「ではいつまでですか。」と問うと、「二〇日までだ。」という
Bの返答であつた。原告はこのことからすでに被告は原告を解雇する意思を表明し
たものと認め、残り五日間居ても仕事が全くない状態であつたので、原告は「では
今日やめましよう。」といつたのである。
(三) 同第(三)項のうち、原告は被告に対し、就労した半月分の給料六万五、
〇〇〇円と通勤定期代三、五〇〇円合計六万八、五〇〇円の支払いとその送金を要
求したところ被告はこれを認め、同月末に原告方へ右金額を送金してきたことは認
めるが、その余は否認する。
 原告は、昭和五三年一一月二八日付の求人雑紙の被告会社正社員募集広告を見て
応募、翌二九日被告会社に行き面接で即日採用決定したもので、その際月額手取金
一三万円という約束のあつたことは認めるが、試用期間二ケ月、給料は日給月給
(休業日を除き、就業した日数で一ケ月の給料を算出する)とするといつた具体的
提示や就業規則などの提示もなかつた。そして約定どおり一二月一日から正式に定
刻前に出勤したのであり、同月一五日も就業後午前一〇時ころBから解雇を通告さ
れたので、原告はBに「帰つてもよいか」と問うとBが承諾したので帰つたのであ
つて、就業もせず勝手に退社したものではない。
(四) 同第(四)項のうち、給料一ケ月分支給してほしいとの電話をしたことは
認めるが、その余の事実は否認する。
2 抗弁に対する認否
抗弁第(一)項ないし第(三)項の各仮定抗弁及び第(四)項は争う。
五 原告の主張
1 前述のとおり、原告が被告会社の社員募集に応募して即日採用決定したのは昭
和五三年一一月二九日であつて、約束に従つて同年一二月一日定刻に被告会社に出
勤就業したのであるから、勤務日数について民法第一四〇条の初日不算入の原則を
適用するのは該らない。
2 又、同年一二月一五日についても、前述のとおり、原告は定刻の午前九時五分
前に出社就業しており、Bの呼出しに応じてロビーに話合いに行つたのは同日午前
一〇時ころである。そして原告は右Bから黙示的に解雇を告げられ、Bの承諾を得
て退社したのであるから、右同日は就労したことになる。
3 よつて、原告が被告会社に雇用された期間日数は一五日間であるが、その間休
日が二度あり、実働日数は一三日となる。しかしながら社会通念上も労働基準法解
釈上も、期間の計算は実働日数のみならず、休日も含む暦によるとされている。し
たがつて、原告の雇用日数は休日二日も含め一五日間ということになる。
4 よつて原告の就業日数は一四日間を超えることになり、原告が被告に解雇され
たものとしても、就業日数は一四日を超えないから解雇予告手当の支払義務はない
とする被告の各仮定抗弁はいづれも失当である。
第三 証拠(省略)
       理   由
一 原告は、昭和五三年一二月一日 被告に給料一ケ月の基本給一三万円の約定で
雇用され、版下製作業務に従事してきたものであるが、同月一五日、原告は一たん
定刻に出勤就業後、被告側のBと話合いの結果、任意か解雇かの点を除き、退職す
ることになり、同日被告会社を退社したが、同月末ころ、被告から約束どおり半月
分の給料金六万五、〇〇〇円と通勤定期代金三、五〇〇円を送金受領したことは当
事者間に争いがない。
二 被告の積極否認について
1 原、被告間の雇用契約の終了原因について、原告は被告が昭和五三年一二月一
五日解雇の意思表示を黙示的にしたと主張するのに対し、被告はこれを否認し、原
告は解雇通告を受けたわけではないのに自ら辞める旨申し出で、当日は就労しない
まま退社したものであると主張するので、任意退職か解雇か一五日は就業したこと
になるか否かについて判断する。
 成立について争いのない甲第一ないし第四号証及び乙第一号証並びに証人Bの証
言及び原告本人尋問の結果(第一、二回)を総合すると、原告は昭和五三年一二月
一五日午前九時前に出社、就業していたところ(もつとも当時仕事が暇のため作業
中破れた上着のつくろいをしていた)、被告会社営業部長Bから「あとで来てく
れ」といわれ、つくろいを終つて、Bと一緒に階下のロビーに行つたのが午前一〇
時ころで、両者話合いの結果辞めることになり、Bの承諾を得て退社(Bの供述に
よれば午前九時半ころというが明確でない)したのであるから、一五日は就業した
ものとみなすのが相当というべく、証人Bの証言中右認定に反する部分は措信でき
ない。
 次に原告とBがロビーで話合いの際、Bは被告会社A社長の意を受けて原告の勤
務態度が悪い点を指摘とくに「協調性がない」といつたところ原告が怒り、「協調
性のないのは会社の方だ」と反論、その場合の雰囲気から察し、原告が「結局辞め
ろということですか」と問うたところ、言葉はなかつたがBがうなずいたので、
「いつまでですか」と更に聞いたところ、「二〇日までいてよい」ということであ
つた。そこで原告は以上の経緯から被告が原告を解雇すると受けとれる意思表示を
表明したものと認め、当時会社では仕事がない状態であつたので、二〇日まであと
五日しかなく、辞めろという状態の中で出勤をしても不愉快なので、原告から「じ
や今日辞めます」といつて、半月分の給料と交通費の支給送金(合計金六万八、五
〇〇円)の約束もとりつけ、「帰つていい」とのBの承諾を得て退社したことを認
めることができるものというべく、証人Bの証言は右と正面から対立するが、その
部分は採用しえないし、他に右認定を左右するに足る証拠はない。
 なお、原告の被告会社における勤務状態について、原告本人も自認するように社
長の言動に反感を抱き、呼んでも返事をしないことがあつたようであるが、証人B
の証言にもあるとおり、常に定刻に出勤退社しており、就業中に無断で外出したこ
ともないことが認められる。右の認定に反する被告の主張中には虚偽が窺われるも
のがある。
 以上の事実に照らせば、被告は原告に対し結果において一二月一五日解雇の意思
表示をしたことに帰し、原告はこれを即時解雇として承認(当日は就業したので、
労務の不提供は翌日から)したものと認むべきである。なお、右解雇に際し被告が
原告に対し解雇予告手当を支払わなかつたことは、被告において争わないところで
ある。
三 被告の抗告について
1 仮定抗弁(一)において被告は、原告は試用期間中でありその実働日数は休業
日(休日の意と解する)を除けば一二日間であるから、労働基準法第二一条但書に
いう一四日間を超えて引き続き使用されたという要件に該らないと主張する。
 成立に争いのない甲第二号証、証人Bの証言及び原告本人尋問の結果(第一、二
回)によれば、被告の主張する原告の雇用条件のうち、日給月給(休業日を除き、
就業した日数で一ケ月の給料を算出する)は認めがたい(甲第二号証や原告本人の
供述によれば認めがたく、これに反する証人Bの証言のみでは採用できない)が、
試用期間中である点は新規採用直後であるから推認できよう。
 前記第二項において認定したとおり、原告の雇用期間日数は一五日間であり、そ
の間に休日が二度あり、実働日数は一三日になるが、社会通念上も労働基準法解釈
上も、雇用期間日数は、労働日のみならず休日も含む暦によると解するのが相当で
ある。したがつて労働基準法第二一条但書にいう一四日を超えて引続き使用された
という要件に該当すると解され、この要件に該らないという被告の抗弁は失当であ
る。
2 同抗弁(二)において被告は、仮りに休業日も使用された日数に算入されると
しても、原告は一二月一五日はBと話をしただけで全く仕事をしていないまま帰宅
したのであるから、同日は実質上算入できないことになり、一四日を超えて引続き
使用されたことにはならないと主張する。
 前記第二項1において認定したとおり、一二月一五日は原告が就業したものとみ
なすのが相当というべきであるから、この点に関する被告の抗弁も失当である。
3 同抗弁(三)について
 成立に争いのない甲第二号証及び原告本人尋問の結果(第一回)によれば、原告
は、昭和五三年一一月二八日の求人雑紙の被告会社社員募集広告を見て、翌二九日
面接に行き被告会社に即決採用決定したので、約束に従つて一二月一日から定刻に
出勤することになつたのである。したがつて原告は一二月一日に被告会社に出頭面
接して即日採用になり、同日就業したのではない。原告は同日完全就業したことに
なるわけであるから、原告の就業状況の場合民法第一四〇条の初日不算入の原則は
適用されないと解するのが相当である。
 したがつて、その余の点を論ずるまでもなく、被告の本抗弁は妥当でない。
四 以上認定した事実によれば、被告は昭和五三年一二月一五日、被告に対して予
告なくして解雇の意思表示をしたことになり、原告は同日これを承認して辞職の意
を表し、被告もこれを認め、使用者である被告は結果において即時解雇の状態を実
現したことになり、原告の雇用期間は一四日間を超えることになる。したがつて被
告は、右の状態のもとに雇用契約が終了した時点において、原告に対し解雇予告手
当として労働基準法第二〇条一項に基づく一ケ月の平均給与である金一三万円の支
払義務がある。
 右に反する被告の積極否認や各抗弁の主張はいづれも失当であり採用できない。
五 結論
 以上のとおりであるから、原告の本訴請求は理由があるからこれを認容し、訴訟
費用の負担につき民事訴訟法第八九条を、仮執行の宣言につき同法第一九六条をそ
れぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 重光武徳)

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