弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
       1 原判決を破棄し,第1審判決を取り消す。
       2 被上告人の請求を棄却する。
       3 訴訟の総費用は,被上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人岡田進,同横山昭,同平賀睦夫の上告受理申立て理由(排除されたも
のを除く。)について
 1 本件は,被上告人が,上告人に対し,廃棄物の処理及び清掃に関する法律(
平成11年法律第87号による改正前のもの。以下「廃棄物処理法」という。)7
条1項に基づき,一般廃棄物の収集及び運搬を業として行うことの許可申請(以下
「本件許可申請」という。)をしたところ,不許可処分(以下「本件不許可処分」
という。)を受けたので,その取消しを求める事案である。
 2 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
 (1) 松任市においては,一般家庭から排出される一般廃棄物については,株式
会社D公社(以下「D公社」という。)にその収集及び運搬を委託しているが,事
業活動に伴って排出される一般廃棄物(以下「事業系廃棄物」という。)の収集及
び運搬については,松任市が自ら又は委託の方法により行うのではなく,昭和54
年4月1日以降,一般廃棄物収集運搬業の許可を受けた唯一の業者であるD公社が
これを行っている。
 (2) 松任市の一般廃棄物処理計画のうち平成9年度及び平成10年度の各実施
計画においては,事業系廃棄物は排出者自らの責任において自己処理し,又は許可
業者に委託して処理することが求められる旨が定められていた。
 (3) 廃棄物処理業者である被上告人は,平成10年3月17日,上告人に対し
,廃棄物処理法7条1項に基づき,松任市内で事業系廃棄物(し尿・浄化槽汚泥を
除く。)の収集及び運搬を業として行うことについて本件許可申請をした。
 (4) これに対し,上告人は,被上告人に対し,同年4月2日,「当市において
,既存の許可業者で一般廃棄物の収集,運搬業務が円滑に遂行されており,新規の
許可申請は廃棄物処理法第7条第3項第1号及び第2号に適合しない」との理由で
,本件不許可処分をした。
 3 原審は,次のとおり判断して,本件不許可処分を取り消した第1審判決を是
認し,上告人の控訴を棄却した。
 (1) 廃棄物処理法7条3項1号にいう「当該市町村による一般廃棄物の収集又
は運搬」とは,市町村が自ら又は委託の方法により行う一般廃棄物の収集又は運搬
をいうものであり,許可を受けた業者による一般廃棄物の収集又は運搬がこれに含
まれるということはできない。
 (2) 松任市においては,事業系廃棄物の収集及び運搬は,事業者が自ら行うほ
かは,すべて一般廃棄物収集運搬業の許可を受けたD公社が行っており,松任市が
自ら又は委託の方法により事業系廃棄物の収集又は運搬を行ってはいないのである
から,それでもなお松任市が自ら又は委託の方法によりその収集及び運搬をするこ
とが困難でないというべき特段の事情の認められない本件においては,松任市によ
る事業系廃棄物の収集又は運搬が困難であるものと認められる。したがって,被上
告人の本件許可申請は廃棄物処理法7条3項1号に適合している。
 (3) 松任市の一般廃棄物処理計画は,D公社のみに事業系廃棄物の収集運搬業
の許可を与えることを内容とするものではないと解されるが,本件不許可処分は,
これとは異なる解釈を前提とし,そのことから直ちに被上告人の許可申請は同計画
に適合しないとしたものであるから,廃棄物処理法7条3項2号の適用を誤ったも
のである。
 (4) そうすると,上告人は被上告人の本件許可申請に対して許可をすべきもの
であり,本件不許可処分は,廃棄物処理法7条3項の適用を誤ったもので,違法で
ある。
 4 原審の上記3の判断のうち,(1)及び(2)は是認することができるが,(3)及
び(4)は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 (1) 市町村は,その区域内における一般廃棄物の処理に関する事業の実施をそ
の責務とするものであり,一般廃棄物処理計画を定め,これに従って,自ら又は第
三者に委託して,一般廃棄物の収集,運搬等を行うべきものである(廃棄物処理法
4条1項,6条,6条の2)。そして,廃棄物処理法7条3項1号は,当該市町村
による一般廃棄物の収集又は運搬が困難であることを同条1項の許可の要件として
定めている。そうすると,【要旨1】同条3項1号の「当該市町村による一般廃棄
物の収集又は運搬」とは,当該市町村が自ら又は委託の方法により行う一般廃棄物
の収集又は運搬をいい,一般廃棄物収集運搬業の許可を受けた業者が行う一般廃棄
物の収集又は運搬はこれに当たらないものというべきである。したがって,許可を
受けた業者が一般廃棄物の収集又は運搬をすることで区域内の一般廃棄物の収集及
び運搬が適切に実施されている場合であっても,当該市町村が自ら又は委託の方法
により区域内の一般廃棄物の収集又は運搬を行うことが困難であるときは,同号の
要件を充足するものというべきである。
 (2) ところで,廃棄物処理法は,上記のとおり,一般廃棄物の収集及び運搬は
本来市町村が自らの事業として実施すべきものであるとして,市町村は当該市町村
の区域内の一般廃棄物処理計画を定めなければならないと定めている。そして,一
般廃棄物処理計画には,一般廃棄物の発生量及び処理量の見込み,一般廃棄物の適
正な処理及びこれを実施する者に関する基本的事項等を定めるものとされている(
廃棄物処理法6条2項1号,4号)。これは,一般廃棄物の発生量及び処理量の見
込みに基づいて,これを適正に処理する実施主体を定める趣旨のものと解される。
そうすると,【要旨2】既存の許可業者等によって一般廃棄物の適正な収集及び運
搬が行われてきており,これを踏まえて一般廃棄物処理計画が作成されているよう
な場合には,市町村長は,これとは別にされた一般廃棄物収集運搬業の許可申請に
ついて審査するに当たり,一般廃棄物の適正な収集及び運搬を継続的かつ安定的に
実施させるためには,既存の許可業者等のみに引き続きこれを行わせることが相当
であるとして,当該申請の内容は一般廃棄物処理計画に適合するものであるとは認
められないという判断をすることもできるものというべきである。
 (3) これを本件についてみるに,前記事実関係によれば,松任市ではD公社に
より一般廃棄物の収集及び運搬が円滑に遂行されてきていることを踏まえて一般廃
棄物処理計画が作成されていると解されるところ,上告人は「当市において,既存
の許可業者で一般廃棄物の収集,運搬業務が円滑に遂行されており,新規の許可申
請は廃棄物処理法第7条第3項第1号及び第2号に適合しない」との理由で本件不
許可処分をしたというのであるから,その実質は,上記の点を考慮した上,一般廃
棄物の適正な収集及び運搬を継続的かつ安定的に実施させるためには,新たに被上
告人に対して許可を与えるよりも,引き続きD公社のみに一般廃棄物の収集及び運
搬を行わせる方が相当であるとして,本件許可申請は一般廃棄物処理計画に適合す
るものであるとは認められないと判断したものと解することができ,そのような上
告人の判断は許されないものとはいえないから,本件不許可処分は適法であるとい
うべきである。
 5 以上と異なる原審の前記判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令
の違反があり,この点をいう論旨は理由がある。したがって,原判決は破棄を免れ
ず,以上に述べたところからすれば,被上告人の請求は理由がないから,第1審判
決を取り消して,同請求を棄却することとする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 島田仁郎 裁判官 深澤武久 裁判官 横尾和子 裁判官 甲斐
中辰夫 裁判官 泉 徳治)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛