弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人小野清一郎、同竹内誠の上告理由第一点、第三点一について。
 学校教育法九八条は、従前の規定(同法九四条により廃止された法令)による学
校を一挙に学校教育法による学校に切替えることから生ずる混乱を避けるため、従
前の規定による学校をその儘存続させつつ、他方順次新制の学校を設けてゆこうと
する新学制えの切替方針に基づく経過規定であつて、決して、所論のように従前の
規定による学校をその儘将来に向つて恒久的に存続せしめようとするものではない
から、同法施行規則九〇条の三をもつて法律の委任の範囲を超えるものとはいえな
い。論旨は、右に反する独自の見解を述べるものであるか、または、これを前提と
する議論であつて、理由がない。
 同第二点について。
 被上告人が、本件組織変更の無効確認並びに組織変更の登記、上告人A1、同A
2の各理事就任の登記及び被上告人の理事辞任の登記の各抹消登記手続の各請求を、
当初、財団法人D高等女学校の理事の資格でしていたのを、後に、右法人が解散し
たものとして、その清算人の資格ですることに変更したからといつて、訴訟当事者
の変更を来たすものでないことは勿論、何ら請求そのものの変更を来たすものでは
なく、また、被上告人は、本訴請求原因事実として主張する事実関係のもとに、右
財団法人の解散後の清算人として、本件組織変更の無効確認を求める利益を有しな
いとはいえないことも、原判決の説示するとおりである。論旨は理由がない。
 同第三点二について。
 被上告人が、所論のように、調停に応じ、また、忌避申立をする等の事実があつ
たとしても、そのことから直ちに、被上告人の本訴請求をもつて、信義誠実の原則
に反し、権利の濫用であるともなし難い。論旨は理由がない。
 同第四点について。
 私立学校法附則三項の認可の性質は、他人の法律的行為を補充してその効力を完
成せしめるものであつて、講学上に所謂補充行為に該り、それのみでは、決して、
完成された法律上の効果を発生せしめるものではない。従つて、被上告人の主張す
るとおり、上告人A1において、その事実がないのに、財団法人D高等女学校の理
事に就任した旨の書類を偽造して、その登記をし、本件組織変更の認可申請に及ん
だものであるとすれば、これに対し所轄庁により右の認可がなされたとしても、そ
の効力を生ずるに由ないのであるから、組織変更の無効を主張するのに何ら妨げな
く、右の無効の確認を求める訴の提起に当り、まず、所論訴願の裁決を経なければ
ならないとすべき法令上の根拠は毫もない。論旨は理由がない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外

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