弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 弁護人出野泰男上告趣意第一点について。
 原判決は、第一審判決と同一の犯罪事実を認定し、その判示として第一審判決に
示した事実全部を引用し、その証拠説明として、故ら犯意継続の点を除外しその他
の事実についてのみ証拠によりこれを認めた理由を説明しながら、犯意継続の点に
ついては、特に、証拠によりこれを認めた理由を説明していないことは所論のとお
りである。そして、「犯意継続」が「罪となるべき事実」に属するか否かの法律見
解の当否は別として、かような証拠説明の方法は、訴訟経済上格別の実益ないのみ
ならず、従来の慣例に反し、なるべく無用の争いを回避すべき実務家として執るべ
き万全の措置ではない。しかし、原判決は、第一審判決の示した第一事実、すなわ
ち、「被告人が、昭和二二年六月一八日頃より同月下旬頃に至る迄の間前後八回に
亘り同判示のごとく被害者の身体に危害を加えるような態度を示して脅迫し鶏合計
六羽現金計千五百円を交付せしめた」事実を証拠により認定したものである。そし
て、その証拠によつて認めた犯罪行為を反覆累行した判示事実に徴すれば右八回の
連続行為が犯意継続の意思に出たものであることを極めて容易に推測し得られるか
ら、かような場合には、特に、証拠により犯意の継続せることを説明しなくとも原
判決を破棄するに足る欠点とすることができないものと解するを相当とする。それ
故、本論旨は、結局その理由なきものといわねばならぬ。
 同第二点について。
 原判決は、その引用した第一審判決の第二事実、すなわち、「被告人が昭和二二
年六月八日判示踏切小屋C方で、Dに対し、同踏切番の娘に悪戯を為したと詰問し、
同人が弁解するも聞き入れないで、A外一名と共同して、同人の顔面等を殴打して、
同人に対し鼓膜破裂傷を加え、慢性中耳加答児を増進せしめ難聴恢復不可能の傷害
を与えた」事実を認定し、この事実に対し刑法第二〇四条のみを適用していること
は所論のとおりである。そして、刑法第六〇条に「二人以上共同して犯罪を実行し
たる者」とある「共同」又は同法第二〇七条にいわゆる「共同者」とあるは、すべ
て二人以上の者の間に意思連絡のある場合を指すものである。されば右判示に被告
人がA外一名と共同して殴打成傷した旨の「共同」が右刑法の法条にいわゆる「共
同」の趣旨であるとすれば右三名の間に意思連続あることを証拠によりこれを認定
判示し且つ刑法第六〇条をも適用すべきである。また、若し、その三名の間に意思
連絡のない場合には、各自の暴行とその各自の暴行に因り加えたる傷害の部位又は
程度とを証拠により明確に認定判示して、各自の現に加えた傷害の個数又は程度に
対してのみそれぞれ刑法第二〇四条の責を問うべきである。また、若し、右三名の
者が暴行を為し人を傷害したこと明白であるが、その各自の間に意思連絡がなく且
つ各自の加えた傷害若しくはその程度を知り得ないときは、その旨を明瞭に判示し
て同法第二〇四条の外同第二〇七条をも適用して各自に対しそれぞれ全部の個数程
度の傷害の責任を負担せしむべきものである。
 然るに原判決の認定判示した事実は、右の三つの場合の何れであるかを知り得な
い。従つて、原判決は、判決の理由を具備しない違法あるものというべく、論旨は
結局その理由あるに帰し、第二事実に関する原判決の部分は破棄を免れない。
 同第三点について。
 しかし、医師は、その診断を為すには、或は被診断者の自訴を聴き或は自ら検査
又は治療その他必要な処分を為しその見聞実験した結果に基きその判断を為し得る
ものであつて、診断書には、その結果たる判断のみならずその判断に至る経過をも
記載することを得るものであることは旧刑訴第二二一条第一項に徴し明らかなとこ
ろである。されば、診断書のかかる経過的記載を単なる被診断者の供述を録取した
聴取書の記載と混同してはならない。そして医師Bの本件診断書中の所論摘示の記
載は同医師の判断と共にその判断に至る経過をも記載したものであること明らかで
あつて、これによれば同医師は、所論のごとく、単に被害者の言のみを聴取り若し
くはこれのみを信用したものではなく、被害者の自訴と自らの検査とによる見聞実
験の結果に基き原判決が証拠として採用した趣旨の傷害の部位程度の判断を為した
ものであることを看取することができる。されば同医師の措置は正当であるのみな
らず同診断書にかかる経過的記載あるの故を以てその証拠としての能力乃至価値を
否定すべき何等の理由も存しない。従つて原判決がこれを採つて証拠としたからと
言つて所論の違法ありとはいえない。本所論は、結局原審の自由裁量に属する証拠
の取捨判断を非難するに帰し上告適法の理由として採るを得ない。
 以上の理由により原判決の第二事実に関する部分は違法たるを免れない。そして、
右第二事実は、その第一事実と併合罪の関係にあつて原判決はその両事実につき併
合加重による単一刑を以て処断したものであるから、右第二事実の違法は第一事実
にも影響を及ぼすこと明白で、結局原判決全部は破毀を免れない。
 よつて旧刑訴第四四七条第四四八条の二に従い主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官全員の一致した意見である。
 検察官 宮本増蔵関与
  昭和二四年一月二七日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    岩   松   三   郎

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