弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を罰金二千円に処する。
     右罰金を完納出来ない時は金二百円を一日に換算した期間被告人を労役
場に留置する。
         理    由
 本件控訴趣意及びこれに対する答弁の趣意は記録中の検察官伊藤勝名義の控訴趣
意書及び弁護人河西善太郎の答弁書各記載の通りであるからいずれもこれを引用す
る。
 検察官の所論は外国人登録法の趣旨目的より考えて公訴事実記載の高知県香美郡
a村は被告人にとつては単なる一時的出稼地でなく、より以上日常生活に密接なる
関係を有する同法所定の居住地と認むべき土地であり、又斯く認定するに足る客観
的事実関係有するに拘らず原審がこれを一時的出稼地と認め、被告人には居住地の
変更なしとして無罪の言渡をしたのは判決に影響を及ぼすこと明な法令の解釈適用
を誤ると共に事実の誤認があるというのであり、これに対する弁護人の答弁の趣意
は結局原審の認定が相当であり、控訴趣意は理由がなく、被告人は無罪たるべきで
あるというのである。
 よつて記録を精査し、又当審に於て取調べた各証拠を検討するに、記録中の外国
人登録原票の写の記載、原審に於ける証人Aの証人訊問調書、被告人の検察官及司
法警察員に対する各供述調書によれば被告人は朝鮮人で高知市b町c番地B方を居
住地とする外国人登録証明書の交付を受けていたものであり、昭和三十年十月十五
日から同三十一年四月初旬迄周知県香美郡a村のC飯場で起居し、林道改修工事に
従事していたがその間同村村長に対し外国人登録証明書の居住地の記載の書換申請
をしなかつえ事実が認められる。
 ところが被告人は前記の期間前記a村の林道改修工事に従事する為同村に赴き前
記Cの飯場で起居してはいたが右は単なる出稼で自己の居住地は依然として高知市
b町c番地にあり、a村に居住地を変更してはいないと主張し、その根拠として
 (1) 高知市b町c番地には被告人の米穀配給籍かある。
 (2) 被告人の内縁の妻D及長男Eは高知市b町d番地に居住している。
 (3) 被告人はその間月に三、四回は高知市に帰つていた。
 事実を挙けている
 然し原審に於ける証人A、同F及び当審に於ける証人D、同G、同B、同Hの各
証人訊問調書によれば被告人は前記a村に起居していた当時高知市には月に一、二
回出て来る程度で、時に前記B方を訪れたこともあるがその時も右B方は四帖半の
部屋一室のみで、同室に同人等家族六名が起居している有様で同所に寝泊りしたこ
とはなく、又被告人の布団、炊事道具等一切の荷物は被告人の友人、同市e町I方
に保管を托して居り、B方には鞄一個を置いてあるのみで事実上被告人は同家を立
去つたものと認められる。唯被告人の米穀の配給籍はその主張の如くB方に残して
あつたがそれも単に同所に籍があるというに過ぎず、もとより被告人は同所で現実
に米穀の配給を受けたこともなくBか同人の家族の分と共に一括配給を受けて居た
ことが記録上窺われる。更に被告人は昭和二十九年九月頃から高知県土佐郡f村D
と内縁関係を結び同人はその後昭和三十一年二月十一日頃から被告人のはからいで
子供と共に前記Bの近隣である高知市b町d番地に居住することになつたがそれま
では工事現場の飯場或は前記f村の同女の実家等で寝泊りし、又妻子が高知市b町
d番地に居住するようになつて後も被告人は同家に殆んど帰宅した事もなく、その
間殆んど生活上の扶助も与えず、為に昭和三十一年五月には夫婦別れをした事実も
前記各証拠によつて認められる。
 この反面a村については原審に於ける証人A、当審に於ける証人Jの各証人訊問
調書によれば被告人は同村に於てCの土工として働き、生活の糧たる賃銀も同地で
得、同村の飯場で寝食し、その期間も最初から四ケ月の長期間を予定せられていた
へ現実に被告人が同村で働いた期間は昭和三十年十月十五日から同三十一年四月初
旬迄約六ヶ月)ものであつてその間前記の如く月に一、二回高知市に行くことがあ
っても前記の諸事情からみて右Cの土工として働いていた間の被告人の生活の総て
は同村を中心として行われていたものと認められ、単なる一時的な滞在とは認め難
い。
 ところで外国人登録法はその第一条に明記する如く外国人の居住関係及身分関係
を明確ならしめ在留外国人<要旨>の公正な管理に資することを目的として立法せら
れたものであつてその立法の趣旨からいつても同法第八条に所謂居住地の変
更とは本邦に在留する外国人が単なる旅行又は一時的な滞在の為にでなく、相当の
期間に亘つて現実にその主たる日常生活を営む場所を他に変更移転する場合をいう
のであつて、たとえ出稼の為であつても当初から相当期間に亘る滞在が予想せら
れ、従来営んでいた日常生活をこれに移したと認められる客観的事実の存する以上
同条に所謂居住地の変更のあつたものと認めるのが相当である。そして本件の場合
高知市b町c番地の従来の住居は前記事情によつて昭和三十年十月十五日以降は最
早被告人にとつて生活の本拠でなく代つて前記a村は被告人にとつて出稼の為とは
いえ爾後四ケ月以上に亘つてその日常起居することが予想せられていたのであるか
ら他に生活の本拠と認むべき場所もない被告人にとつては昭和三十年十月十五日に
a村にその居住地を変更したと認むべきであり従つて法定の期間内に同村村長に対
し外国人登録証明書の居住地の記載の書換申請をしなければならないものであると
いわなければならない。しかるに原審がa村を単なる出稼地とし、高知市b町をよ
り以上日常生活に密接な関係を有する居住地と認め居住地に変更なしとして被告人
に対し無罪の言渡をしたのは明に判決に影響を及ぼす事実の誤認であり、原判決は
此の点に於て破棄を免れない。検察官の論旨は結局理由がある。
 よつて刑事訴訟法第三九七条、第三八二条に則り原判決を破棄し、同法第四〇〇
条但書に従い直に判決する。
 (罪となるべき事実)
 被告人は朝鮮人で高知市b町c番地に居住し同所を居任地とする外国人登録証明
書の交付を受けているものであるが昭和三十年十月十五日居住地を高知県香美郡a
村に変更したのに十四日以内に新居住地の村長に対し登録証明書の居住地の記載の
書換申請をしなかつたものである
 (証拠の標目)(省略)
 一、 原審証人Aに対する証人訊問調書
 一、 当審証人D、同B、同J、同Hに対する各証人訊問調書
 一、 被告人の検察官に対する供述調書
 一、 外国人登録原票の写の記載
 (法令の適用)
 被告人の判示所為は外国人登録法(昭和二九年法第一六三号)第八条第二項・第
一八条第一項第一号に該当するので所定刑中罰金刑を選択しその金額の範囲内で被
告人を罰金二千円に処し、右罰金を完納出来ない時は刑法第一八条に則り金二百円
を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
 尚訴訟費用については刑事訴訟法第一八一条第一項但書を適用して被告人にはこ
れを負担させないこととする。
 よつて主文の通り判決する。
 (裁判長判事 谷弓雄 判事 小川豪 判事 松本恒雄)

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