弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人奥田福敏の上告趣意及び同村上信金の上告趣意第三点について。
 所論は事実誤認、単なる法令違反の主張を出でないものであつて、刑訴四〇五条
の上告理由に当らない。(本件犯行と、本件犯行の前日岡山県において行われた所
論強盗の行為とは、その時期、場所、態様からいつて、別個のもので、本件犯行は
上記強盗による賍物を舟で運搬し来り神戸で陸揚しようとする際に即ち右強盗とは
別個の機会になされたものである。それ故、本件犯行に対し、刑法二三八条を問擬
して準強盗傷人と一所為数法の関係にあるものとし、先に確定判決を経た、強盗傷
人の所為と連続犯の関係にあるとして第一審において免訴となつた強盗罪と同じく、
これを免訴すべきであるとの所論の採るを得ないことは、原判示のとおりである。
弁護人村上信金の論旨に引用する判例は、本件に適切でない。)
 弁護人村上信金の上告趣意第一点について。
 原判示は、事実については一審判決を引用し、証拠については公判廷の自白を採
用したものであると解することができる。それ故、原判決には所論の違法はなく、
引用の判例に反する判断をした点も認められない。
 同第二点について。
 本件前科の事実は、単なる量刑上の事柄ではなく、刑罰法令適用上必要とせられ
る事項である。そして原審は、前科の事実について第一審判決の判示事実を引用し、
これに刑法四五条後段等を適用した上自ら量刑をしているのであるから、原判決に
は所論の違法は認められない。引用の判例は本件に適切でない。
 同第四点について。
 牽連犯は元来数罪の成立があるのであるが、法律がこれを処断上一罪として取り
扱うこととした所以は、その数罪間にその罪質上通例その一方が他方の手段又は結
果となるという関係があり、しかも具体的にも犯人がかかる関係においてその数罪
を実行したような場合にあつては、これを一罪としてその最も重き罪につき定めた
刑をもつて処断すれば、それによつて軽き罪に対する処罰をも充し得るのを通例と
するから、犯行目的の単一性をも考慮して、もはや数罪としてこれを処断するの必
要なきものと認めたことによるものである。従つて数罪が牽連犯となるためには、
犯人が主観的にその一方を他方の手段又は結果の関係において実行したというだけ
では足りず、その数罪間にその罪質上通例手段結果の関係が存在すべきものたるこ
とを必要とするのである(昭和二四年(れ)二〇六三号、同年一二月二一日大法廷
判決、集三巻一二号、二〇五三頁参照)。然るに、本件においては、所論免訴とな
つた強盗罪と本件犯行とは、その罪質上通常手段又は結果の関係にあるものとは認
め得ないものであるから、両者を牽連犯とみることは出来ない。従つて原判決には
所論の違法はなく、引用の判例に反する点も認められない。
 よつて刑訴施行法三条ノ二、刑訴四〇八条により、裁判官全員一致の意見で主文
のとおり判決する。
  昭和三二年七月一八日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫

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