弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人満園勝美の上告趣意第一点は「原判決には理由齟齬の違法がある。原判決
は『被告人は……大阪府河内郡a村大字b A方で同人妻Bに対し……同人から現
金二百五十円及び衣類十数点を強奪した』との事実を認め、その証拠として、Bに
対する司法警察官の聴取書中この事実に対応する被害状況の供述記載を採用してい
る。然しながら、判示聴取書のいづこを見ても、現金二百五十円及び衣類十数点を
強奪せられたという供述記載はなく、却つて現金三百五十円衣類二十点余りを強奪
せられたという供述記載がある。従つてこの証拠によつて現金三百五十円及び衣類
二十点余りを強奪したとの事実を認定するならば格別現金二百五十円衣類十数点を
強奪したと認定した原判決には理由齟齬の違法があり破毀を免れないものと信ずる。」
というのである。
 しかし、所論原判決認定の事実は、原判決挙示の証拠を綜合すれば認定すること
ができる。論旨は結局、原審の自由裁量に属する証拠の判断、事実の認定を非難す
るものであつて理由がない。
 同第二点は「原判決は不当に長く拘禁せられた後の自白を証拠としている違法が
ある。被告人は昭和二十一年七月三十日勾引状の執行を受けてから原審の公判の日
即ち昭和二十二年十月十八日まで約一年三月の久しい間拘禁せられたものであり、
しかも原審が証拠として採用した『当公廷における被告人の判示同旨の供述』は不
当に長く拘禁せられた後の自白である。従つて被告人のこのような自白を証拠とし
た原判決は違法である。或る拘禁が不当に長いかどうかは、事件の大小難易、共犯
の多少によつて一概に決することができないことは勿論であるが、本件における一
年三月の拘禁は不当に長いということができる。拘禁中の取調回数被告人の健康状
態等を考慮すれば、数ケ月の勾留をもつて十分である。原審が未決勾留日数中三百
日を本刑期に通算したことは自らその不当に長かつたことを認めたものである。次
に不当に長く拘禁せられた後の自白とは、不当に長く拘禁せられた後においてはじ
めてなした自白は勿論はじめからの自白が不当に長く拘禁せられた後まで維持せら
れた場合をも意味することは、立法の精神から明らかである。果して然らば、本件
の自白は不当に長く拘禁せられた後の自白であり、これを証拠とした(唯一の証拠
ではないとしても)原判決は破毀を免れないものと信ずる。」というのである。
 しかし、本件は最初共同被告人十名という多数人に対する予審請求をもつて開始
された事件で、犯罪の態様も相当に複雑多岐に亘つているので、被告人に対する所
論拘禁の期間も、直ちに不当に長いものと即断することはできないのであるが、か
りに原判決が証拠とした原審公判における被告人の自白前の拘禁が不当に長いもの
であるとしても、被告人は本件犯行については、拘禁後四十余日を経た予審の取調
べにおいて、すでに自白をしているのであり、更にその後七十余日を経た第一審公
判においても同様自白をしているのであつて、この程度の期間の拘禁は、前述の事
情等からみて不当に長い拘禁ということのできないは勿論であり、要するに、被告
人は当初から本件については、予審、第一審公判、原審公判を通じて、終始同様の
自白をしているのであつて、原審が証拠とした原審公判における自白も、長い拘禁
がもととなつて、若しくは、その拘禁に影響せられて自白をするに至つたものとは、
とうてい考へられない。たとい不当に長い拘禁後の自白であつても、その拘禁が、
その自白に対して、因果の関係をもたぬこと明瞭である場合は、刑訴応急措置法第
十条第二項にいわゆる不当に長く拘禁された後の自白」にあたらないものと解すべ
きことは当裁判所の判例とするところである。(昭和二三年六月二三日言渡当裁判
所昭和二二年(れ)第二七一号大法廷事件参照)従つて右自白を証拠とした原判決
に、所論のような違法があるとはいえない。論旨は理由がない。
 被告人の上告趣意は「第一、犯罪事実中窃盗ノ部分ニ付テハ原判決ニ承服致シマ
ス 第二、強盗ノ事実ニ付テハ原判決ハ其認定ヲ誤ツテ居リマス 被告ハC、Dト
三人デ昭和二十一年六月二日夜被害者A方ニ盗ミニ行ツタ事ハ相違アリマセヌガ同
日正午頃大阪市c区動物園前デCト偶然邂ツタ時ニ同人ハ被告ニ対シa村(北河内
郡)へ行ケバ自分ノ近クニ金持チノ家ガアル故盗ミニ行コウト誘ハレタノデ紀州へ
帰ヘル旅費モナカツタノデ遂ヒ其気ニナリ同調スルコトニナツタノデアリマスが被
告トシテハ「強盗」ニ行クノデアルト云フ様ナコトハ毛頭考ヘテモ居ラズ、又全然
其積リデ行ツタノデハアリマセヌ、タヾ金持ノ家へ窃盗ニ行クノダトバカリ信ジテ
コノ二人ト行動ヲ共ニシ目的地へ行ツタノデアリマス 夫レ故被告ハCガピストル
ヲ持ツテ居ル事モ知ラズ又Dガ途中附近ノ知人トカノ家ニ一寸立チ寄ツタ事ハ知ツ
テ居リマスガ其家カラ小刀ヲ持チ出シテ来タコトモ全ク知ラナカツタノデアリマス
(時ハ夜更ケデアリ其上田舎道ノ事トテ非常ニ暗カツタノデアリマス)三人ハ間モ
ナク(夜半過頃)被害者宅ニ行キ其家ノ中ニ這ツテカラ被害者ノ妻女ニ対シCハ隠
クシ持ツテ居ツタピストルヲ突キ付ケDモ亦タ日本刀ヲ出シテ脅カタシタノデ初メ
テ二人ガ兇器ヲ持ツテ居ルコトヲ知リ被告ハ強盗ダナアト感ジ驚ロイタノデアリマ
スガ逃ゲ出サウニモ其時ノ状況ハ被告ニソノ余裕ヲ与ヘナイ切迫シタ場面デアリマ
シテ他ノ者カラ命セラルルマヽニ被告ハ其妻女ヲ見張リシテ居ツタノデアリマス 
以上ハ事実ノ真相デアリマス、ケレ共此事件ヲ一ト掴ミニ判断サレマスト結果カラ
見テ被告ハ強盗行為ニ加担シタ事ニナルノカモ知レマセヌガ被告ノ心持トシテハ飽
ク迄モ窃盗ニ行ツタノデアツテ強盗ニ行ツタノデハ無イノデアリマス、ケレドモ予
審ナリ又公判デモ右ノ事実ヲ申述ベマシタケレドモ此真実ノ事実ヲ徹底的ニ調査ヲ
シテ戴ケマセンデシタ タヾ単ニ形式的ニ不透明ナル証拠ヲ基本トシテ被告ヲ強盗
罪ニ処シタノデアリマス、被告トシテハ割リ切レナイ心持チデ承服出来マセン、コ
ノ判決ハ挙証ノ立テ方ト採証ノ真ヲ誤ツタト申スノデアリマシヨウカ、即チ之レハ
憲法違反ト申スノカ、法令ノ違背ト申シマスノカ又ハ採証ノ法則ニ反スルト云フノ
カ、兎ニモ角ニモ原判決ハ不当デアリマスカラ之ヲ取消シ今一度真相ヲ抉グツテ戴
キ度イノデアリマス ソウシテ被告ノ践ミ来ツタ真実ノ犯罪行為ニ対シ被告ノ負ハ
ネバナラヌ法律上ノ責任ヲ宣言サレマス様切ニ御願ヒ申上ゲマス」というのである。
 しかし、論旨は要するに、原審の専権に属する事実の認定を非難するものであつ
て、上告適法の理由とはならない。
 以上の理由により刑事訴訟法第四四六条に従い、主文のごとく、判決する。
 右は、全裁判官一致の意見である。
 検察官 福尾彌太郎関与
  昭和二三年九月一八日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    塚   崎   直   義
            裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

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