弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     請求人に対し金四万円を交付する。
         理    由
 本件刑事補償請求の理由は、請求人は、同人に対する窃盗被告事件につき、昭和
五〇年二月二四日東京高等裁判所において無罪の言渡を受け該判決が確定したの
で、請求人の受けた逮捕、勾留の日数計二〇日につき、法律の定める最高額の拘置
による補償を求める、というのである。
 そこで検討すると、本件記録および右窃盗被告事件記録によると、請求人は、昭
和四八年一月二三日勤務先であるABホテル従業員室において現金一〇六〇円を窃
取したという事実により、同月二五日小田原簡易裁判所裁判官の発布した逮捕状に
より同月二七日逮捕され、同月二九日同簡易裁判所裁判官の発布した勾留状により
代用監獄小田原警察署留置場および小田原拘置支所に拘禁され、同年二月一二日付
保釈許可決定により同月一三日釈放されるまで前後一八日間引き続き拘禁されたこ
と、その間被告人は、同月五日小田原区検察庁検察官より右事実につき小田原簡易
裁判所に公訴を提起され、ついで同月二一日同ホテルにおける他の三件の窃盗事件
につき公訴を提起され、同裁判所において併合審理を受けた結果、同四九年三月一
三日公訴事実全部につき有罪の判決を受け、これに対し控訴の申立をした結果、昭
和五〇年二月二四日東京高等裁判所において公訴事実全部につき無罪の言渡を受
け、該判決は上告期間の経過により同年三月一一日確定したこと、請求人は右第一
審判決の言渡を受けた直後小田原拘置支所に収監されたが、翌三月一四日保釈によ
り釈放されたことが明らかである。したがつて、請求人は、国に対し、刑事補償法
第三条所定の事由のない限り、右拘禁による補償を請求することができるといわな
ければならない。
 <要旨>ところで、記録によると、請求人は、捜査の段階で警察官や検察官の取調
べに対して公訴事実全部を認める旨の供述をしていることが認められるの
で、同法第三条第一号所定の「本人が、捜査又は審判を誤まらせる目的で、虚偽の
自白をすることにより、起訴、未決の抑留若しくは拘禁を受けるに至つたものと認
められる場合」にあたるかどうかにつき考察するに、記録によると、請求人は、前
記のように逮捕、勾留を受けた後、請求人が前記ホテルの従業員室において金を盗
むところを目撃したという者がいて、捜査官が右証言を信用して請求人の弁解を聞
き入れないため、請求人は、当時胃がんに罹り胃全部の摘出手術を受け退院して間
がなく目の離せない状態にある妻Cのことが心配なうえ、請求人が次男の通学して
いる中学校の次期PTA会長に推せんされてこれを受諾したばかりで、近く事務引
継や副会長の選出に立会うことになつていたので、関係人に事情を話し諒解を得て
辞任しなければならず、また自己の無実を立証するにも、周りの人の協力を仰がな
ければならず、それらのことをするには釈放してもらうことが必要であり、いつま
でも否認していては保釈を許されないと考え、心ならずも警察官の誘導するままに
身に覚えのない自白をしたという疑が濃厚であつて、右のような事情のもとで、か
つ右のような意図でなされた請求人の自白は、たとえその内容が虚偽のものであつ
たとしても、右の「捜査又は審判を誤まらせる目的」でなされたものということは
できないのみならず、請求人の右自白が起訴の一因となつていることは否定できな
いとしても、これがため未決の拘禁を受けるに至つたものといえないことは明らか
であり、その他請求人が他の有罪の証拠を作為したことを認むべき証拠もないか
ら、同号所定の場合にはあたらないというべきである。それ故、請求人に対し、同
条に基づき、右未決の拘禁による補償の一部又は全部をしないことはできないとい
わなければならない。
 よつて、進んで補償すべき金額につき案ずるに、請求人の年令、職業、地位、拘
束の種類、前記の如き社会的立場、家庭の事情、請求人が受けた精神的、物質的損
害ことに妻Cが請求人の起訴された後間も無く死亡したこと等諸般の事情を考慮す
ると、請求人に対し、右拘禁による補償として、一日二、〇〇〇円の割合による額
の金員を交付するのを相当と認めるので、右拘禁日数に応じて、請求人に対して、
二〇日分計四万円の補償金を交付することとし主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 瀬下貞吉 裁判官 金子仙太郎 裁判官 小林真夫)

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