弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
本件即時抗告を棄却する。
理由
本件即時抗告の趣意は,弁護人C(主任),同D,同E共同作成の即時
抗告申立書及び即時抗告申立理由補充書記載のとおりであるから,これら
を引用する。
1Aを含む13名の警察官調書及び検察官調書(以下「開示請求調書」と
いう)について
論旨は,検察官が取調べを請求したAを含む13名の供述調書(以下「取
調請求調書」という)の証明力を判断するためには,当該供述調書と同一
の供述者の他に作成された供述調書全部を検討する必要があるにもかかわ
らず,開示請求調書には,取調請求調書が不同意とされた場合に,その供
述調書の供述者が公判廷において証言すると予想される事項とは関連性を
有しない事項の記載があるに過ぎないから,当該供述調書は,検察官が取
調べを請求している同供述者の証明力を判断する上で重要な証拠であると
は認められないとして,重要性を否定し,かつ,開示することによる弊害
を認めた原決定は誤っているというのである。
そこで検討するに,弁護人は,開示請求調書が刑事訴訟法316条の15第1
項5号の類型に該当するとして,その開示を請求しているものであり,取調
請求調書の証明力を判断するためには,当該供述調書と同一の供述者の他
に作成された供述調書が存するのであれば,その内容が,取調請求調書が
不同意とされた場合に,その供述調書の供述者が公判廷において証言する
と予想される事項との関連性の有無にかかわらず,同一の供述者の供述調
書全部を検討する必要がある旨主張する。
しかし,同法条第1項本文(いわゆる柱書)によれば,上記類型に該当す
る証拠は,当然に開示されるというものではなく,特定の検察官請求証拠
の証明力を判断するために重要であると認められ,かつ,その重要性の程
度その他の被告人の防御の準備のために開示をすることの必要性の程度並
びに開示によって生じるおそれのある弊害の内容及び程度を考慮して,相
当と認められるとき開示されるものである。
原決定は,開示請求調書を検察官から提示させて,その内容を検討した
上で開示請求調書に記載された事項は,その供述者が公判廷において供述
すると予想される事項とは関連性を有しないとして,重要性がないと判断
したものであるところ,当裁判所も,開示請求調書を検察官から提示させ
て,その内容を検討した結果,開示請求調書に記載された事項は,その供
述者が公判廷において供述すると予想される事項とは関連性を有しないと
認める。
所論は,供述者が公判廷で供述すると予想される事項との関連性の有無
にかかわらず,当該供述者の供述調書は全部,証明力を判断するために必
要であり重要である旨主張するが,その重要性を判断するために,公判廷
で供述すると予想される事項との関連性の有無を考慮するのは当然であっ
て,そのような関連性の有無を考慮すべきでないという所論は採用できな
い。
そして,開示請求調書に記載された事項と取調請求調書に記載された事
項との間に関連性がないことに照らすと,開示請求調書が,取調請求証拠
の証明力を判断するために重要な証拠であるとは認められないとした原決
定の判断は相当である。
その他,所論が縷々主張する点を検討しても,開示請求調書を開示する
ことが相当であるとは認められない。論旨は理由がない。
2取調べ状況報告書中の不開示希望調書の有無及び通数欄について
論旨は,弁護人に開示された検察官B作成の平成18年3月22日付捜査報告
書添付の取調べ状況報告書中の不開示希望調書の有無及び通数欄の開示を
認めなかった原決定は,同欄の開示は一般的に弊害があるとしているに等
しく,不当であるというのである。
そこで検討するに,上記捜査報告書添付の取調べ状況報告書は,刑事訴
訟法316条の15第1項8号に該当する書面であり,取調べ状況報告書自体は,
被告人について被疑者として身柄を拘束して取り調べた際,その取調べ時
間や調書作成の有無等の取調べの過程や状況を記録したものであるから,
検察官が取調べを請求している被告人の供述調書の証明力を判断するため
に重要であると認められる。
しかし,取調べ状況報告書が,被告人の供述調書の証明力を判断するた
めに重要であるとしても,そのことから直ちに,取調べ状況報告書のすべ
ての欄を開示すべきであるということにはならない。その開示すべき範囲
については,同法条第1項に掲げられた類型に該当する他の証拠と同様,証
明力の判断をする上での必要性の観点から,その重要性の程度その他の被
告人の防御の準備のために開示をすることの必要性の程度並びに開示によ
って生じるおそれのある弊害の内容及び程度を考慮して,相当と認められ
る部分を開示すべきであると解される。
そして,一般的に考えて,不開示希望調書の有無及び通数の点は,原決
定が説示するとおり,不開示希望調書の作成をめぐって,取調官と被疑者
との間で取引が存在したなどの特段の事情があり,具体的にその主張がさ
れている場合には,証明力を判断する上での重要性は相当高いといえるが,
そのような特段の事情がない場合には,弁護人において,不開示希望調書
の有無及び通数を被告人に確認することができることも考えると,その重
要性は相対的にみて高いとはいえず,本件においては,特段の事情の存在
について弁護人から具体的な主張はない。また本件においては,取調べ状
況報告書のうち不開示希望調書の有無及び通数欄以外のすべてが開示され
ているのであるから,不開示希望調書の有無等を被告人に確認することは
容易であることにかんがみると,不開示希望調書の有無及び通数欄を被告
人の防御の準備のために開示することの必要性は,それほど高くないとい
うべきある。
他方,不開示希望調書の有無及び通数欄が開示された場合,原決定が指
摘するような一般的な弊害があるといわざるを得ない。
そうすると,不開示希望調書の有無及び通数欄の記載と,被告人の供述
調書の証明力との関わりについて,具体的な事情が明らかにされていない
本件において,同欄を開示することが相当でないとした原決定の判断は相
当である。論旨は理由がない。
よって,刑事訴訟法426条1項により,本件即時抗告を棄却することとし,
主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官・仲宗根一郎,裁判官・楢崎康英,裁判官・中桐圭一)

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