弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原決定及び大阪高等裁判所が昭和二五年七月二六日申立人に対して為し
た控訴棄却の決定はこれを取り消す。
         理    由
 弁護人妻木隆三の特別抗告理由について。
 記録を調査すると申立人は昭和二四年一二月一七日大阪簡易裁判所で窃盗罪によ
り懲役二年に処せられ同日控訴の申立をし、なお同日同簡易裁判所の保釈決定があ
り釈放中のものであるが、昭和二五年七月二六月大阪高等裁判所で控訴趣意書を提
出しないという理由で控訴棄却の決定を受けたが同年九月二五日右決定に対し異議
の申立をした。ところが同年一〇月二一日同裁判所は異議申立棄却の決定(原決定)
をしたものであることは明らかである、而して原決定の理由は右保釈決定によれば
申立人の制限住居は大阪市a区b町c丁目d番地であつてその後制限住居の変更が
許可された証拠なく、刑訴規則六二条一項によれば被告人は書類の送達を受けるた
め書面でその住居又は事務所を裁判所に届け出なければならない。若し右届出をし
ないときは同規則六三条によつて裁判所書記官は書類を書留郵便に付してその送達
をすることができ、その送達は書類を郵便に付したときにこれをしたものとみなさ
れる、然るに申立人はその届出をしていないので昭和二五年六月二日申立人に対す
る控訴趣意書提出最終日を昭和二五年七月五日と指提した催告書を書留郵便に付し
て申立人の保釈制限住居に送達したのであるから右催告書は右六月二日申立人に送
達したものとみなされるのである。それゆえ申立人の異議は理由がないというので
ある。しかし本件記録によつてみると本件保釈決定原本と申立人に送達されたその
謄本とでは、その内容に重大な相違があるのである。原本では保証金額一万円制限
住居は大阪市a区bc丁目d番地であるのに、謄本では保証金額二万円制限住居は
大阪市a区e町f丁目g番地A方となつている。そして右のような重大な相違を来
した原因の詳細は大阪簡易裁判所沢上席判事の回答書(抗告事件記録八丁)に記載
されているのであるが、要するにB書記官補の過失に基因するのである。従つて大
阪簡易裁判所のした保釈決定は被告人に適法に告知されていないのである。一方、
申立人は誤つた謄本の交付(送達)を受けこれを原本に符合した正しい決定謄本と
信じその謄本記載の如く保証金二万円を納付し謄本記載の制限住居に居住していた
のである。してみれば大阪高等裁判所が本件控訴趣意書を差し出すべき最終日指定
の通知書を申立人に送達するにあたつて、前記のとおり、保釈決定原本記載の制限
住居に宛ててこれを送達し、それが送達不能になつたため、、更に右住居に宛てて
郵便に付する送達をしたとしても、右郵便に付する送達は刑訴規則六三条の要件を
具備しない不適法のものであり、且つ申立人は前記のように謄本の制限住居に居在
しているため原本の制限住居に宛ててなされた右通知書は、申立人には現実にも到
達していないのである、しからば本件において控訴趣意書提出最終日を定めた催告
書は控訴申立人である申立人に送達されなかつたものであり、従つて大阪高等裁判
所が控訴趣意書不提出の理由で控訴棄却の決定をしたのは違法であり、また原決定
が、申立人の異議申立棄却の決定をしたことは違法である。ところが特別抗告につ
いては刑訴四〇五条に規定する事由のあることを理由とするときに限り許されるも
のであつて、申立人は憲法一一条の違反があると主張するのであるが、前記説明の
とおり原決定は刑訴規則六三条の解釈を誤つた違法はあるが、これをさして憲法違
反の問題であるということはできない。しかしながら本件における手続の誤りは結
局保釈決定原本と謄本との相違に基因するものであり従つて裁判所内部の過誤によ
るものである。それゆえ本件のような場合に原決定を破棄しなければ著しく正義に
反するものと認められるのである、そして最高裁判所が正義を維持するため発動す
る職権破棄権は本件のような場合には当然にこれを保有するものというべきである
から本件特別抗告については刑訴四一一条の準用があるものと解するのが正当であ
る。従つて原決定及び控訴棄却の決定はいずれもこれを取り消すべきである。
 よつて、刑訴四三四条四二六条二項により主文のとおり決定する。
 右は裁判官全員一致の意見である。
  昭和二六年四月一三日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

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