弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人江見盛秀の上告理由第一点について。
 B知事が、都内において公衆浴場営業を許可するか否かにつきその裁量権を行使
するには、所論の如く、右許可申請に係る浴場設置予定場所の周辺区域における既
設浴場の数、人口の密度を考慮すべきであるとすることは、まことに妥当である。
 しかしながら、かゝる考慮のみを以つて足るものとすべきではない。原判示東京
都条例は、営業許可申請に係る公衆浴場新設予定場所と既設公衆浴場との距離を二
〇〇メートルに保つべきことを要求して居る。たゞ同条例は、都知事において、土
地の状況、予想利用者数その他を考慮し、公衆浴場の設置が公衆衛生上必要である
と認めたときにのみ、必ずしも右制限に依らないものとして居るものである。
 而して、本件記録及び原判決によれば、原審は、本件営業許可申請に係る公衆浴
場の設置予定場所より二〇〇メートルの距離内三箇所に、既設公衆浴場の存在する
事実を適法に確定し、右公衆浴場設置予定場所が、右都条例の要求する公衆浴場設
置場所配置の基準に適合しない旨を判示し、更に原審は、この見地より本件公衆浴
場営業が右制限に依るべき必要がないか否か及び右営業許可申請に対する都知事の
不許可処分の適当であるか否かに関し、原判示の事実関係の下において、仮に上告
人の申請に係る本件浴場営業を許可する余地、全くないとはなし得ず、またこの申
請に対し、都知事の本件不許可処分につき、当、不当の問題があつたとしても、こ
の処分を以つて社会観念上著しく妥当を缺き、都知事の裁量権の限界を逸脱した違
法の処分とはなし得ない旨判示して居ること明かであり、これによつて原審は、本
件公衆浴場営業の許可申請が、右都条例所定の前記公衆浴場新設制限に依ることを
必要としない場合に、必ずしも該当しない旨をも、自ら判断して居ることを窺える。
以上の原審の判断は、これを正当となすべきであつて、原判決に所論の違法はない。
論旨は、独自の見解に立つて原判決を非難するに外ならぬ。
 論旨は、理由がない。
 同第二点について。
 昭和二四年訴外Dが、本件申請に係る公衆浴場設置予定場所と同町であつて、こ
れと程遠からぬa丁目b番地において公衆浴場営業の許可を受け、昭和二五年これ
より二〇〇メートルを距てた場所に公衆浴場E湯の営業許可があつたこと及び右D
が、同人に対する右許可後、右c町a丁目b番地においてその営業を開始して居ら
ないこと、所論の通りであつたとしても、これを以つて直に、本件公衆浴場営業許
可申請が、所論の如くに、右都条例の要求する公衆浴場設置場所配置の基準に適合
するものとなすべき証左となり、或は右申請が、これを許可するに適当な条件を具
備して居るとなすべき証左であるとは、到底考えられない。この点に関する原判示
の趣旨が上告人の主張を排斥したものであるからとて、採証法則に違反するものと
はなし得ない。論旨は畢竟、独自の見解に立つて原判決を非難するに帰着する。
 論旨は、理由がない。
 同第三点について。
 証拠調の範囲、限度を定めることは、事実審である原審の裁量に委ねられた事項
である。原審において所論鑑定申請を却下したのは、原審が、鑑定をまつまでもな
く、他の証拠資料により所論主張に対する判断をなし得るものとした為であると解
すべく、従つて原審が上告人の所論鑑定申請を採用しなかつたからとて、これに所
論の違法があるものとはいえない。論旨は結局、証拠調に関する原審の裁量を非難
するに過ぎぬ。
 論旨は、これを採用し得ない。
 同第四点について。
 原審は、原判決挙示の証拠により、上告人において、昭和三〇年二月一八日都知
事に対し、本件浴場営業許可申請と同一内容の申請をなし、同年一〇月二八日附で
不許可となつたにも拘らず、昭和三一年二月一三日都知事に対し、更に本件浴場営
業許可申請をなした事実、都知事としては、本件浴場営業許可申請と同一内容の申
請につき既に調査をなし、所論諮問機関の答申を得て、この申請に対し不許可処分
をなしたのであつて、その調査の結果と本件浴場営業許可申請当時の状況との相違
を調査検討しても、本件浴場営業許可申請に対する許否の決定に影響を及ぼす程の
新事情を見出し得なかつたので、前申請に対する処分と同様、浴場配置の適正を缺
くとの理由により、本件浴場営業許可申請に対し不許可処分をなしたものであると
の事実を認定して居り、この事実認定は、これを是認し得る。而も右認定の意味す
る所も、極めて明白であつて、これに所論の如き不明の迹はない。論旨は結局、事
実審である原審の専権に委ねられた事実の認定を非難するものであるに帰する。
 論旨は、これを採用し得ない。
 同第五点について。
 本件浴場営業許可申請に関する都知事の文書である所論書証に、右許可申請の許
否についての調査の結果が詳細に記載せられて居らないとしても、これ等とその他
の証拠とによつて、その調査のなされた事実を認定するに妨げないのみならず、仮
に所論書証のみによつては、調査の十分なることが認め得られないとしても、右書
証とその他の証拠とにより認められた事実関係よりする結論において、右調査の上
本件不許可処分がなされ、而もこれに違法がないと認めた以上、この処分を取消す
判決をなすべき何等の理由はない。原判決も亦これと同趣旨に出て居るのであつて
これに所論の違法はない。
 論旨は、理由がない。
 同第六点について。
 都知事は、公衆浴場常業の為、許可申請があれば、これにつき調査をなし、所論
都条例所定の諮問機関に諮問し、その答申を得た上、許否の処分をなすを以つて足
るのであつて、その答申に拘束せられるものではない。而して、原判決によれば、
原審は、本件浴場営業許可申請についても、右の手続を履践した上、本件不許可処
分をなした事実を認定して居る。されば、原審において、右不許可処分につきなさ
れた諮問及び答申の事項を、これ以上詳細に亘つて明かにした上、右不許可処分の
当否を判断することを要するものではない。したがつて原審に所論の違法はない。
 論旨は、理由がない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    高   橋       潔
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐

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