弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中被告人に関する部分を破棄する。
     被告人を、判示第一、第二の一、三の罪につき、懲役三年以上五年以下
に処する。
     原審における未決勾留日数中八十日を右本刑に算入する。
     被告人に対し判示第二の二の罪につき、その刑を免除する。
         理    由
 本件控訴の趣意は、本件記録に綴つてある被告人本人及び弁護人谷口武彦のそれ
ぞれ作成にかかる各控訴趣意書に記載のとおり(同弁護人は控訴趣意の陳述として
被告人の控訴趣意は量刑不当のみを主張するものであると釈明した)であるから、
いずれもこれを引用する。
 論旨はいずれも原判決の量刑不当を主張するものであるが、これに対する判断に
先立ち、職権をもつて、原判決の事実の認定及び法令の適用について調査検討する
に、原判決は罪となるべき事実の第二の二として、被告人が昭和三七年一月八日豊
岡市ab番地飲食店A方において、同人所有の現金五万円を窃取した事実を認定
し、右事実について刑法第二百三十五条を適用したうえ、右罪は原判示第一、第二
の一、三の各罪と同法第四十五条前段の併合罪の関係に立つものとして、一個の主
文により、被告人を懲役四年以上六年以下に処し、右第二の二の事実についても刑
の言渡をしているのである。ところで、右判示第二の二の窃盗そのものの事実は、
原判決挙示の対応証拠により、優にこれを認めることができるのであるけれども、
さらに本件記録を精査し、原審及び当審において取り調べた証拠を検討すると、原
審が適法に取り調べたA及びBの各司法警察員に対する供述調書、当審において取
り調べた兵庫県豊岡市長作成にかかるBの「外国人登録原票記載事項」と題する書
面、除籍簿(戸主C)謄本、及び、被告人の当審公判廷における供述によれば、右
窃盗の被害者Aは中国人であるが、その妻Bは被告人の叔母(被告人の父Dの実
妹)であるところ、昭和二十一年十一月一日右Aと婚姻したものであつて、本件犯
行当時及びそれ以後引き続き右A、同Bの両名とも我国の国籍を有せず、中国の国
籍を有している者であること、右犯行当時被告人は右洪夫婦方に同居していたもの
であることが認められるのである。そこで被告人と右Aとの間に刑法第二百四十四
条第一項の適用を受けるべき親族関係があるものとすべきかどうかを判定する必要
があることにな<要旨>る。おもうに、同法条は親族間の情誼は無視し難いものとし
て、これに基く犯人と被害者間相互の心情を考慮し、同法条所定の親族間の
内部秩序に対して国家権力の干渉を差し控えるという政策的見地から出たものと解
されるのであるが、刑法は、その第一条によつていわゆる属地主義の原則をとる
他、同法第三条第十三号により窃盗罪についてはいわゆる属人主義を規定している
ことにかんがみ、なお法例第二十二条の趣旨をも勘案するときは、刑法の適用とし
ては日本人である被告人に対しては民法第七百二十五条による三親等の姻族関係に
該当する系列関係が被告人と被害者Aとの間にあるものとして刑法第二百四十四条
第一項を適用すべきであると考えられるところ、中華民国民法(民国十九年十二月
二十六日国民政府公布、同二十年五月五日施行・家庭裁判月報第八巻第四号二百二
頁参照)第四編親族第一章通則第九百六十七条ないし第九百七十一条によつても、
わが民法の三親等の姻族に該当する関係にある中国人は親族とされているものと考
えられるのである。
 右のとおりであるから、本件窃盗犯人たる被告人とその被害者(本件盗品の所有
者にして且つ占有者)たるAは、刑法第二百四十四条第一項の適用を受ける同居の
親族関係にあつたものとして、本件被告人の原判示第二の二の窃盗については、同
条によりその刑を免除すべきであるのにかかわらず、右同居の親族関係のあつた事
実を看過し、右窃盗の点についての刑の言渡をした原判決には、判決に影響を及ぼ
すことが明らかな事実の誤認引いては法令適用の誤りがあるから、同判決中被告人
に関する部分はすでにこの点において破棄を免れない。
 よつて量刑不当の論旨に対する判断を省略し、刑事訴訟法第三百九十七条第一
項、第三百八十二条、第三百八十条により、原判決中被告人に関する部分を破棄
し、同法第四百条但書により更に判決する。
 (罪となるべき事実)
 被告人は
 第一、 Eと共謀のうえ、金品を強取しようと企て、昭和三十七年七月十三日午
前零時過ぎ頃、神戸市c区de丁目f番地F教会ことG方において、同人の二男H
(当時十九歳)及び三男I(当時十五歳)の両名に対し、被告人において所携のナ
イフを示して「俺達はいま人を殺してきて警察に追われている」「お前らを殺すぐ
らいわけはない」などと申し向けて脅迫し、被告人及び右Eの両名が共同して、右
I、H両名の手足をタオル、皮バンドで縛り、靴下で同人らに猿ぐつわをするなど
してその各反抗を抑圧したうえ、右Hから現金二千円、腕時計一個及びズボン一着
(時価合計約二千円相当)を、右Iから現金千円、腕時計一個(時価約五千円相
当)を強取し
 第二、 一、昭和三十六年十月十五日、神戸市g区h町i、Jにおいて、K所有
の写真機一台(時価約七千円相当)を窃取し
 二、 昭和三十七年一月八日、豊岡市a百十一番地飲食店A方において、同居の
親族である同人所有の五万円を窃取し
 三、 同年三月五日、神戸市j区k町l丁目m番地旅館Lにおいて、M所有の男
物のオーバー一着ほか一点(時価合計約千五百円相当)を窃取し
たものである。
 (証拠の標目)
 (省略)
 (法令の適用)
 被告人の判示所為中、第一の各強盗はいずれも刑法第二百三十六条第一項、第六
十条に、第二の一ないし三の各窃盗はいずれも同法第二百三十五条に各該当すると
ころ、右各強盗は一個の行為で二個の罪名に触れる場合であるから、同法第五十四
条第一項前段、第十条により犯情の重いと認めるIに対する強盗の罪の刑に従い、
この罪と第二の一、三の各罪とは同法第四十五条前段の併合罪であるから、同法第
四十七条本文、第十条により最も重い右強盗罪の刑に同法第十四条の制限内で法定
の加重をしたうえ、犯情により同法第六十六条、第七十一条、第六十八条第三号を
適用して酌量減軽をした刑期の範囲内で処断することとするが、被告人は少年法第
二条第一項の少年であるから、同法第五十二条第一項により、被告人を懲役三年以
上五年以下に処し、刑法第二十一条により原審における未決勾留日数中八十日を右
本刑に算入し、当審における訴訟費用は刑事訴訟法第百八十一条第一項但書により
被告人に負担させないこととし、判示第二の二の窃盗は同居の親族の間において犯
したものであるから、刑法第二百四十四条第一項前段によりその刑を免除する。
 よつて主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 塩田宇三郎 裁判官 竹沢喜代治 裁判官 野間礼二)

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