弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人松永芳市、同浦田仙造の上告理由第一、二点について。
 所論は、審理不尽、理由不備、法律解釈の誤りをいう部分もあるが、畢竟、原審
がその裁量の範囲内において適法にした証拠の取捨判断ならびに事実の認定を非難
するにすぎず、上告適法の理由とし難い。
 同第三、四点について。
 原判決が主文第三項に「控訴人等は被控訴人に対し別紙第一目録記載の建物を収
去してその敷地たる別紙第二目録記載の宅地を明渡すべし」と表示していることは
所論のとおりである。しかし、本件記録に徴すれば、右にいわゆる「控訴人等」と
あるのは、「控訴人A1」とすべきものを書き誤つたものであることが明白であり、
このような原判決の表示の誤謬は更正決定を申し立てることにより是正できるから、
所論は上告適法の理由とし難い。
 同第五点について。
 訴外Dが訴外Eから本件建物を買い受けた所論経緯につき原判決が言及しなかつ
たからといつて、判断遺脱の違法があるとはいえない。所論は採用できない。
 同第六点について。
 上告人A1が訴外株式会社F相互銀行から本件建物を買い受け、これを所有する
ことによつて、敷地である本件土地を占有していることおよび上告人A2、同A3
が本件建物に居住して、本件土地を占有していることは、当事者間に争いのない事
実として原審の確定判示したところである。所論は、叙上原判示事実に添わない事
実を前提として、原判決に所論の違法があるごとくいうものであり、採用できない。
 同第七点について。
 本件建物中原判示にいわゆる「附属」の木造瓦葺平家建居宅建坪一〇坪が、増築
にかかるもので、基本建物の従としてこれに附合した物であるか否かは、原審にお
いて主張判断を経ていない事実であるから、当審において審究すべきかぎりでなく、
この点を云為する所論は採用できない。
 同第八点について。
 原審は、本件土地の所有権に基づく被上告人の本訴請求は、上告人らにおいて本
件土地を占有すべき正権原を有することを認めることができない以上、正当として
これを認容すべきものとしたのであつて、原判決が、叙上に付加して、仮りに被上
告人と上告人A1間にいわゆる一時的使用貸借が成立したとしても、右契約の終了
に基づき、同上告人において本件土地明渡等の義務を負うにいたつたと判示した部
分のごときは、判決に影響のない蛇足的な判断にすぎないというべきである(本件
において、被上告人が使用貸借終了に基づく明渡等の義務を訴訟物として主張した
形迹はない)。されば、該判示部分につき違憲をいう所論は採用に値しない。
 同第九点について。
 所論は、要するに、訴外株式会社F相互銀行から本件建物を買い受けたのは訴外
Dであつて、上告人A1は単なる所有名義人にすぎず、同上告人を含む上告人ら三
名の本件建物およびその敷地たる本件土地に対する関係は、本件建物の真の所有者
たるDの履行補助者であるにすぎないから、Dが本件土地につき被上告人から設定
を受けた所論のごとき使用権の終了しない以上、上告人らに対する本訴請求は理由
がないとする見地から、原審が該使用権の主張を釈明しなかつたのは違法であると
いうに帰する。しかし、上告人らが所論のごとき履行補助者にすぎないとする点は、
明らかに原判示に添わない事実に依拠する独自の見解というべく、所論はすでにこ
の点において前提を欠き、失当といわなければならないのみならず、原審は、上告
人A1が被上告人との間に本件土地の使用につきなんらの契約も締結しなかつたと
認定したのであるから、それ以上に、所論のごとき使用権につき上告人らに釈明を
する余地も必要もなかつたものというべきである。所論は採用できない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助

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