弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人A、同B、同C、同D、同E、同F、同G、同H、同I、同Jの弁護人青
柳盛雄、同小沢茂、同佐藤義彌連名の上告趣意第一点について。
 所論は、憲法三七条および同八二条違反をいうが、第一審裁判所が、所論のよう
に被告人らおよび傍聴人を威圧する目的で警察官による法廷警備および傍聴人の制
限を行つたとの事実は、これを認めるべき資料がない。所論は、原判示にそわない
独自の主張を前提とするものであつて、上告適法の理由とならない。
 同第二点について。
 所論は、憲法三七条違反をいうが、弁護人の数の制限を非難する点は、原審にお
いて主張判断を経ない訴訟手続に関する主張であり、公判期日変更申請の不許可を
非難する点は、第一審の訴訟手続に関する非難であつて、原判決に対する論難でな
く、また第一審裁判官小池二八に対する忌避申立が訴訟を遅延させる目的のみでな
されたものとして却下されたことは、記録上明らかであつて、同裁判官が不公平な
裁判をする虞があつたものと認めるべき資料はないから、所論違憲の主張は、いず
れも上告適法の理由とならない。
 同第三点について。
 憲法二二条二項の外国移住の自由には、外国へ一時旅行する自由を含むものと解
すべきであるが、外国旅行の自由といえども、興制限のままに許されるものではな
く、公共の福祉のために合理的な制限に服するものと解すべきことは、当裁判所の
判例(昭和二九年(オ)第八九八号、同三三年九月一〇日大法廷判決、民集一二巻
一三号一九六九頁)とするところであり、また当裁判所の判例(昭和二九年(あ)
第三八九号、同三二年一二月二五日大法廷判決、刑集一一巻一四号三三七七頁)の
趣旨によれば、出入国管理令六〇条は、出国それ自体を法律上制限するものではな
く、単に出国の手続に関する措置を定めたものであり、事実上かかる手続的措置の
ために外国旅行の自由が制限せられる結果を招来するような場合があるとしても、
出入国の公正な管理を行う目的を達成する公共の福祉のため設けられたもので、憲
法二二条二項に違反するものではないと解すべきであり、旅券法の運用の違憲を云
為して出入国管理令六〇条の違憲を主張する所論は、採るをえない。
 同第四点について。
 所論は、憲法三一条違反をいうが、実質は、単なる法令違反の主張であつて、適
法な上告理由に当らない。
 被告人Aの上告趣意について。
 憲法三七条一項にいわゆる公平な裁判所の裁判とは、組織と構成において偏頗の
虞のない裁判所の裁判を意味すること、当裁判所の判例(昭和二二年(れ)第一七
一号、同二三年五月五日大法廷判決、刑集二巻五号四四七頁)とするところであつ
て、第一審裁判所が右にいわゆる公平な裁判所でないと認めるべき資料はないから、
第一審判決が公正な裁判でないと主張する所論は理由がなく、出入国管理令六〇条
が憲法二二条二項に違反しないことは、弁護人らの上告趣意第三点につき説明した
とおりであるから、憲法の同条項違反の論旨も採用できない。その余の論旨は、旅
券の発給に関する政府の措置に対する非難であつて、原判決に対する論難でないか
ら、上告適法の理由とならない。
 被告人Cの上告趣意について。
 出入国管理令が憲法に違反するものでないことは、弁護人らの上告趣意第三点に
つき説明したとおりであり、その余の論旨は、単なる法令違反の主張であつて、適
法な上告理由に当らない。
 被告人D、同Eの各上告趣意について。
 出入国管理令六〇条が憲法に違反するものでないことは、弁護人らの上告趣意第
三点につき説明したとおりであるから、所論違憲の主張は、いずれも理由がない。
 被告人Fの上告趣意について。
 論旨第一点および第二点は、政府の旅券発給拒否に対する非難であつて、原判決
に対する論難でなく、同第三点は、出入国管理令の違憲をいうが、憲法のどの条項
に違反するかを具体的に示さないから、いずれも適法な上告理由に当らない。
 被告人Gの上告趣意について。
 論旨第一は、憲法三七条違反をいうが、同条一項にいわゆる公平な裁判所の裁判
とは、組織と構成において偏頗の虞のない裁判所の裁判を意味すること、前記当裁
判所の判例(昭和二二年(れ)第一七一号、同二三年五月五日大法廷判決)とする
ところであつて、他の相被告人との間に量刑上の差異があつたとしても、これがた
め公平な裁判所の裁判でないとはいえないから、この点に関する論旨は理由がない。
論旨のその余の部分は、原審の認定にそわない独自の主張を前提とする違憲の主張
であつて、上告適法の理由とならない。
 同第二は、政府の渡航制限を非難するものであつて、原判決に対する論難でない
から、上告適法の理由とならない。
 被告人Kの上告趣意について。
 所論は、違憲をいう点もあるが、実質は、単なる法令違反の主張であつて、適法
な上告理由に当らない。
 被告人Iの上告趣意について。
 所論のうち、政府の旅券発給拒否を非難する部分は、原判決に対する論難でなく、
出入国管理令の違憲をいう点は、憲法のどの条項に違反するかを明示せず、その余
の部分は、単なる法令違反の主張であつて、いずれも適法な上告理由に当らない。
 被告人Jの上告趣意について。
 出入国管理令が憲法に違反するものでないことは、弁護人らの上告趣意第三点に
つき説明したとおりであるから、論旨は理由がない。
 また刑訴四一一条一号ないし三号を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
  昭和三七年六月八日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助

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