弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

       主   文
原判決を破棄する。
本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
       理   由
 上告人の上告受理申立て理由について
1 本件は,フジ興産株式会社(以下「フジ興産」という。)の従業員であった上
告人が,懲戒解雇されたため,当時のフジ興産の代表者であった被上告人A外3名
に対し,違法な懲戒解雇の決定に関与したとして,民法709条,商法266条の
3に基づき,損害賠償を請求する事案である。
2 原審が確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1) フジ興産は,化学プラント・産業機械プラントの設計,施工を目的とする
株式会社であり,大阪市αに本社を置くほか,平成4年4月,門真市に設計請負部
門である「エンジニアリングセンター」(以下「センター」という。)を開設し
た。センターにはセンター長の下に設計者が勤務しており,同6年当時のセンター
長は被上告人Bであった。上告人は,同5年2月,フジ興産に雇用され,センター
において設計業務に従事していた。
(2) 同6年6月15日当時,フジ興産の取締役は,被上告人A,同C及び同B
であり,被上告人Aは代表取締役であった。
(3) フジ興産は,昭和61年8月1日,労働者代表の同意を得た上で,同日か
ら実施する就業規則(以下「旧就業規則」という。)を作成し,同年10月30
日,大阪西労働基準監督署長に届け出た。旧就業規則は,懲戒解雇事由を定め,所
定の事由があった場合に懲戒解雇をすることができる旨を定めていた。
(4) フジ興産は,平成6年4月1日から旧就業規則を変更した就業規則(以下
「新就業規則」という。)を実施することとし,同年6月2日,労働者代表の同意
を得た上で,同月8日,大阪西労働基準監督署長に届け出た。新就業規則は,懲戒
解雇事由を定め,所定の事由があった場合に懲戒解雇をすることができる旨を定め
ている。
(5) フジ興産は,同月15日,新就業規則の懲戒解雇に関する規定を適用し
て,上告人を懲戒解雇(以下「本件懲戒解雇」という。)した。その理由は,上告
人が,同5年9月から同6年5月30日までの間,得意先の担当者らの要望に十分
応じず,トラブルを発生させたり,上司の指示に対して反抗的態度をとり,上司に
対して暴言を吐くなどして職場の秩序を乱したりしたなどというものであった。
(6) 上告人は,本件懲戒解雇以前に,被上告人Bに対し,センターに勤務する
労働者に適用される就業規則について質問したが,この際には,旧就業規則はセン
ターに備え付けられていなかった。
3 以上の事実関係の下において,原審は,次のとおり判断して,本件懲戒解雇を
有効とし,上告人の請求をすべて棄却すべきものとした。
(1) フジ興産が新就業規則について労働者代表の同意を得たのは平成6年6月
2日であり,それまでに新就業規則がフジ興産の労働者らに周知されていたと認め
るべき証拠はないから,上告人の同日以前の行為については,旧就業規則における
懲戒解雇事由が存するか否かについて検討すべきである。
(2) 前記2(3)の事実が認められる以上,上告人がセンターに勤務中,旧就
業規則がセンターに備え付けられていなかったとしても,そのゆえをもって,旧就
業規則がセンター勤務の労働者に効力を有しないと解することはできない。
(3) 上告人には,旧就業規則所定の懲戒解雇事由がある。フジ興産は,新就業
規則に定める懲戒解雇事由を理由として上告人を懲戒解雇したが,新就業規則所定
の懲戒解雇事由は,旧就業規則の懲戒解雇事由を取り込んだ上,更に詳細にしたも
のということができるから,本件懲戒解雇は有効である。
4 しかしながら,原審の判断のうち,上記(2)は,是認することができない。
その理由は,次のとおりである。
 【要旨1】使用者が労働者を懲戒するには,あらかじめ就業規則において懲戒の
種別及び事由を定めておくことを要する(最高裁昭和49年(オ)第1188号同
54年10月30日第三小法廷判決・民集33巻6号647頁参照)。そして,
【要旨2】就業規則が法的規範としての性質を有する(最高裁昭和40年(オ)第
145号同43年12月25日大法廷判決・民集22巻13号3459頁)ものと
して,拘束力を生ずるためには,その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知さ
せる手続が採られていることを要するものというべきである。
 原審は,フジ興産が,労働者代表の同意を得て旧就業規則を制定し,これを大阪
西労働基準監督署長に届け出た事実を確定したのみで,その内容をセンター勤務の
労働者に周知させる手続が採られていることを認定しないまま,旧就業規則に法的
規範としての効力を肯定し,本件懲戒解雇が有効であると判断している。原審のこ
の判断には,審理不尽の結果,法令の適用を誤った違法があり,その違法が判決に
影響を及ぼすことは明らかである。論旨は理由がある。
5 そこで,原判決を破棄し,上記の点等について更に審理を尽くさせるため,本
件を原審に差し戻すこととする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 福田博 裁判官 北川弘治 裁判官 亀山継夫 裁判官 梶谷玄
 裁判官 滝井繁男)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛