弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
本件即時抗告を棄却する。
理由
1本件即時抗告の趣意は,主任弁護人A及び弁護人Bが提出した即時抗告申立書に記載
されたとおりであるから,これを引用する。
所論は,要するに,弁護人らは,検察官に対し,刑訴法316条の15第1項8号に基づいて,
被告人について作成された取調べ状況記録書面の全てについて証拠開示の請求を行ったと
ころ,検察官は,取調べ状況等報告書52通について,取調べ状況を明らかにするために必
要な部分のみの抄本を開示するとして一部のみしか開示せず,警察官作成の取調べ状況報
告書37通中の「逮捕又は勾留の理由となっている犯罪事実に係る不開示希望被疑者供述調
書作成事実」の有無及び通数欄と,検察官作成の取調べ状況等報告書15通中の「被疑者等
がその存在及び内容の開示を希望しない旨の意思を表明した被疑者供述調書等作成の事
実」の有無及び通数欄(以上,いずれも当該欄を「本件不開示希望欄」といい,なお,本
件取調べ状況報告書及び取調べ状況等報告書を「本件取調べ状況等報告書」という。)を
不開示としたので,原裁判所に対し,本件取調べ状況等報告書52通全ての部分の開示命令
を求めて裁定申立てを行ったところ,原裁判所は,これを不相当として棄却したが,これ
は,開示の必要性と開示に伴う弊害の判断を誤った違法なものであるから,原決定を取り
消し,更に相当の裁判を求める,というのである。
2そこで,記録を調査して検討すると,所論の指摘を検討しても,原決定の判断は相当
として是認できる。
すなわち,本件の経過は所論指摘のとおりであり,また,本件取調べ状況等報告書中不
開示とされた部分は本件不開示希望欄である。
しかして,原決定は,まず,本件取調べ状況等報告書は,刑訴法316条の15第1項8号に規
定されている書面に該当すると認められ,その性質上,検察官が証拠請求している被告人
の検察官調書及び警察官調書の証明力を判断する上で重要性を有すると認められるが,本
件では,○1本件不開示希望欄以外の本件取調べ状況等報告書は全て開示されているから,
弁護人らが,本件不開示希望欄の記載内容について,被告人自身から聴取して確認するこ
とが十分可能であり,また,○2弁護人らから本件不開示希望欄の記載が被告人の供述調書
の証明力を判断する上で重要であることをうかがわせる特段の事情は主張されていないか
ら,本件不開示希望欄を開示すべき重要性,必要性は高いとはいえない,とする。
これに対し,所論は,不開示希望欄の開示は,取調べの全容を把握するためには不可欠
な情報であり,調書作成の有無を全て把握することで,被告人の供述調書の証明力の判断
が初めてなし得るのであるから,本件不開示希望欄の開示は極めて重要であり,必要性が
高いところ,原決定は,本件取調べ状況等報告書それ自体が,被告人の供述調書の証明力
判断において重要なものであることを認めつつ,不開示希望欄については重要性,必要性
が高いとはいえないとする判断自体首肯しがたいとし,被告人の記憶は,長期間の身体拘
束により混乱や混同が生じている可能性が高いのであり,○1のようにいうのは,人間心理
を無視したものである,また,刑訴法が被告人について作成された取調べ状況記録書面の
全てを開示することを原則としている以上,○2のような主張をしなければならないいわれ
はない,などと主張する。
しかしながら,被告人が供述調書等の作成に応じていながらあえて不開示を希望する場
合は,通常少ないと思われる上,被告人側の何らかの特殊事情によるものでもあるし,不
開示を希望するにあたっては一定の手続もなされるのであるから,長期間の拘束がなされ
ていたとしても,通常,不開示希望欄に記載される事項に関し,記憶に混乱や混同を来す
とはいえず,原決定説示のとおり被告人自身から聴取して確認することが十分可能である
というべきである。また,刑訴法316条の15第1項該当証拠は,一般的に証拠開示の対象と
することが適当とされるものではあるが,具体的な開示に当たっては,特定の検察官請求
証拠の証明力を判断する上で重要と認められるものについて,その重要性の程度その他開
示の必要性の程度と開示によって生じるおそれのある弊害の内容,程度を勘案し,相当と
認めるときになされるのであるから,本件のように被告人から聴取,確認することが十分
できる事柄について,さらに○2のような主張がなされていないことを考慮することは不当
とはいえず,所論の非難は当たらない。
さらに,原決定は,本件不開示希望欄を開示すると,不開示希望供述調書の有無等が明
らかになり,供述者や関係者の安全やプライバシーが侵害されたり,捜査の秘密の保持に
支障を来すなどの弊害が生ずるおそれがあるとする点に関し,所論は,不開示希望欄の情
報の開示が上記弊害を発生するのか理解できないというが,これは,前者の開示がひいて
後者の発生のおそれにつながることを指摘するものであり,是認できる。また,所論は,
関係者等の安全やプライバシー侵害の点については,被告人自身の取調べに関するもので
ある以上これを考慮する必要がなく,捜査の秘密保持の支障の点については,これまで取
調べ状況が争われ,問題化してきた反省に立って本規定等が制定されている以上,取調べ
状況を可視化する限度で後退することを当然の前提としているから,かかる理由は当たら
ないなどというが,原決定指摘の弊害が生じるおそれがあることは否定できないし,その
他所論がいうところは開示の必要性等との比較衡量において検討すべきものである。
そして,以上指摘の点に照らすと,本件不開示希望欄の開示の重要性,必要性の程度と,
開示によって生ずるおそれのある弊害の内容程度を比較衡量して,本件不開示希望欄の開
示が相当であるとは認められないとした原決定の判断は相当であり,違法な点は認められ
ない。
3よって,本件即時抗告は理由がないから,刑訴法426条1項後段により,これを棄却す
ることとし,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官・田中亮一,裁判官・髙木順子,裁判官・小池健治)

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