弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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            主     文
       本件抗告中相手方a町に関する部分を却下する。
       その余の本件抗告を棄却する。
       抗告費用は抗告人の負担とする。
            理     由
 本件抗告中相手方a町に関する部分について
 本件抗告許可申立理由書には,相手方a町に関する抗告理由の記載がないから,
本件抗告中相手方a町に関する部分は,不適法としてこれを却下すべきである。
 その余の相手方らに対する抗告代理人加瀬野忠吉,同松井健二,同大林裕一,同
永井一弘の抗告理由について
 1 記録によれば,本件の経緯は次のとおりである。
 (1) 本件の本案訴訟(岡山地方裁判所平成11年(行ウ)第20号産業廃棄物
処理施設設置不許可処分取消請求事件)は,抗告人が,岡山県知事に対し,廃棄物
の処理及び清掃に関する法律(平成9年法律第85号による改正前のもの。以下「
廃棄物処理法」という。)15条に基づいてした岡山県和気郡a町b字c所在の土
地を設置予定地とする廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(平成9年政令第
353号による改正前のもの)7条14号ハ所定の産業廃棄物のいわゆる管理型最
終処分場(以下「本件施設」という。)の設置許可申請に対して同知事から受けた
不許可処分(以下「本件不許可処分」という。)について,その取消しを請求する
行政訴訟である。
 (2) 本案訴訟において,相手方ら(相手方a町を除く。以下同じ。)は,本件
施設の設置予定地を水源とする水道水ないし井戸水を飲料水等として使用しており
,本件施設が設置されればその生命,健康が損なわれるおそれがあるなどと主張し
て,民訴法42条に基づき,被告を補助するため補助参加を申し出たところ,抗告
人はこれに対して異議を述べた。
 2 原々審は,相手方らの申出に係る補助参加を許す旨の決定をし,原審も,同
決定に対する抗告人の抗告を棄却した。その理由の要旨は,本案訴訟において被告
が敗訴した場合には,本件施設が建設され,その操業により,相手方らの生命,身
体の安全が脅かされるおそれが生じることなどから,相手方らは,民訴法42条所
定の「訴訟の結果について利害関係を有する第三者」に当たるというにある。
 3 本件の本案訴訟において本件不許可処分を取り消す判決がされ,同判決が確
定すれば,岡山県知事は,他に不許可事由がない限り,同判決の趣旨に従い,抗告
人に対し,本件施設設置許可処分をすることになる(行政事件訴訟法33条2項)。
ところで,廃棄物処理法15条2項2号は,産業廃棄物処理施設である最終処分場
の設置により周辺地域に災害が発生することを未然に防止するため,都道府県知事
が産業廃棄物処理施設設置許可処分を行うについて,産業廃棄物処理施設が「産業
廃棄物の最終処分場である場合にあっては,厚生省令で定めるところにより,災害
防止のための計画が定められているものであること」を要件として規定しており,
同号を受けた廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(平成10年厚生省令第
31号による改正前のもの)12条の3は,災害防止のための計画において定める
べき事項を規定している。また,廃棄物処理法15条2項1号は,産業廃棄物処理
施設設置許可につき,申請に係る産業廃棄物処理施設が「厚生省令(産業廃棄物の
最終処分場については,総理府令,厚生省令)で定める技術上の基準に適合してい
ること」を要件としているが,この規定は,同項2号の規定と併せ読めば,周辺地
域に災害が発生することを未然に防止するという観点からも上記の技術上の基準に
適合するかどうかの審査を行うことを定めているものと解するのが相当である。そ
して,人体に有害な物質を含む産業廃棄物の処理施設である管理型最終処分場につ
いては,設置許可処分における審査に過誤,欠落があり有害な物質が許容限度を超
えて排出された場合には,その周辺に居住する者の生命,身体に重大な危害を及ぼ
すなどの災害を引き起こすことがあり得る。このような同項の趣旨・目的及び上記
の災害による被害の内容・性質等を考慮すると,同項は,管理型最終処分場につい
て,その周辺に居住し,当該施設から有害な物質が排出された場合に直接的かつ重
大な被害を受けることが想定される範囲の住民の生命,身体の安全等を個々人の個
別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むと解するのが相当である。した
がって,【要旨】上記の範囲の住民に当たることが疎明された者は,民訴法42条
にいう「訴訟の結果について利害関係を有する第三者」に当たるものと解するのが
相当である。
 以上の見地から考えると,本件施設から排出される有害物質により水源が汚染さ
れる事態が生じた場合に,これにより住民が直接的かつ重大な被害を受けることが
想定される範囲は,いまだ証拠をもって確定されているとはいえないものの,原審
が適法に確定した事実関係によれば,相手方らにつき上記の疎明があったといえな
くはないから,相手方らが民訴法42条にいう「訴訟の結果について利害関係を有
する第三者」に当たるとした原審の判断に違法があるとはいえず,結論においてこ
れを是認することができる。論旨は採用することができない。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 濱田邦夫 裁判官 金谷利廣 裁判官 上田豊三 裁判官 藤田
宙靖)
(別 紙)

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