弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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            主         文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
            事実及び理由
第1 請求
被告が原告に対して平成15年4月9日付けでした一般廃棄物処理業及び浄化槽
清掃業の各不許可処分をいずれも取り消す。
第2 事案の概要
本件は,原告が,被告に対し,廃棄物の処理及び清掃に関する法律(ただし,本件
においては,平成15年法律第93号による改正前のもの。以下「廃棄物処理法」とい
う。)7条1項に基づき,一般廃棄物の収集及び運搬を業として行うことの許可申請
(以下「本件廃棄物処理業許可申請」という。)をし,また浄化槽法35条1項に基づ
き,浄化槽清掃業を営むことの許可申請(以下「本件清掃業許可申請」といい,「本件
廃棄物処理業許可申請」と併せて「本件各許可申請」という。)をしたところ,いずれも
不許可処分を受けた(以下,本件廃棄物処理業許可申請についての不許可処分を
「本件廃棄物処理業不許可処分」,本件清掃業許可申請についての不許可処分を
「本件清掃業不許可処分」といい,両者を併せて「本件各不許可処分」という。)ので,
それらの取消しを求めた事案である。
1 前提事実(争いのない事実及び証拠によって容易に認定できる事実)
(1) 原告は,佐屋町内で浄化槽清掃業と,し尿及び浄化槽汚泥の収集・運搬業を
営むことを計画し,平成15年3月6日,被告に対し,本件各許可申請をした(乙
1,2)。
(2) 被告は,平成15年4月9日,原告に対し,本件各許可申請について,以下の
理由により本件各不許可処分を行い(甲1,2),同月10日,原告に対して通知
した。
ア 本件廃棄物処理業許可申請に関しては,廃棄物処理法6条に基づき定めら
れた「平成15年度佐屋町一般廃棄物処理計画」(以下「15年度処理計画」と
いう。乙9)に基づき見込まれる同年度のし尿及び浄化槽汚泥の発生量が既
存の許可業者により十分処理できる量であり,したがって,既存の許可業者
の処理能力と15年度処理計画との整合性は保たれているところ,申請者に
対して新たな許可を与えることによりその整合性が保たれなくなるから,廃棄
物処理法7条3項2号に適合しないことになる。
イ 本件清掃業許可申請に関しては,浄化槽法35条3項の規定による添付書
類のうち,原告が「浄化槽の清掃に関する専門的知識,技能及び2年以上実
務に従事した経験を有していること」(浄化槽法施行規則(以下「規則」とい
う。)11条4号。以下「本件基準」という。)に該当する旨記載した書類(規則1
0条2項4号)が添付されておらず,したがって,「清掃業許可申請者の能力が
環境省令で定める技術上の基準に適合するものであること」(浄化槽法36条
1号)に適合しない。
(3) 原告は,平成15年5月30日付けで,被告に対し,本件各不許可処分を不服と
してそれぞれ異議を申し立てた(甲3,4)ところ,被告は,同年6月25日付けで,
いずれも却下決定をし(甲5,6),同月26日,原告に対して通知した。
(4) 被告は,本件第2回口頭弁論期日(平成15年12月15日)までは,本件清掃
業不許可処分の処分理由として,浄化槽法36条1号,規則11条4号の要件を
満たさないとの主張をしていたところ,本件第3回口頭弁論期日(平成16年1月
29日)において,仮定的に,原告が「その業務に関し不正又は不誠実な行為を
するおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者」(浄化槽法36条2号
ホ)に該当しないと認めることができないとの主張を追加した。
(5) 原告は,本件第4回(最終)口頭弁論期日(平成16年3月3日)において,被告
による前記処分理由の追加に対し,民訴法157条1項の時機に後れた攻撃防
御方法に当たるなどの理由で,却下すべき旨の申立てをした。
2 争点
 本件各不許可処分の適法性
(1) 本件廃棄物処理業不許可処分の適法性について
本件廃棄物処理業許可申請の内容は,廃棄物処理法7条3項2号に適合す
るものであるか。
(2) 本件清掃業不許可処分の適法性について
ア 本件清掃業許可申請は,浄化槽法36条1号,規則11条4号に適合するも
のであるか。
イ 本件清掃業許可申請は,浄化槽法36条2号ホに該当しないものであるか。
具体的には,以下の事項が問題となる。
(ア) 原告が同号ホに当たるとの被告の主張は,時機に後れた攻撃防御方法
などの理由で却下されるべきか。
(イ) 処分理由の追加,差し替えの可否
(ウ) 同号ホの該当性
(3) 本件各不許可処分に至る経緯
3 争点についての当事者の主張
(1) 本件廃棄物処理業不許可処分の適法性について
本件廃棄物処理業許可申請の内容は,廃棄物処理法7条3項2号に適合す
るものであるか。
(原告の主張)
本件廃棄物処理業許可申請の内容は,廃棄物処理法7条3項2号に適合す
るものであるから,同号に適合しないとしてなされた本件廃棄物処理業不許可
処分は,違法なものとして取消しを免れない。
ア 一般廃棄物処理業の許可申請に対する判断については,市町村長の裁量
権が幅広く認められているところ,その趣旨は,一般廃棄物の処理に関する
事務の実施は本来市町村の責務とされ,市町村は,自ら実施することが困難
な場合にこれを業者に委ねることができるとされていることから,一般廃棄物
処理業と市町村が策定する一般廃棄物処理計画との整合性を保つことにあ
る。
しかしながら,し尿及び浄化槽汚泥の収集・運搬は,浄化槽清掃業におい
ては,浄化槽の維持管理に付随する業務にすぎない上,市町村が策定する
一般廃棄物処理計画は,し尿及び浄化槽汚泥だけではなく広く一般廃棄物の
処理について定めており,特に佐屋町においては,し尿及び浄化槽汚泥の処
理がすべて業者に委ねられていることからすると,浄化槽清掃業におけるし
尿及び浄化槽汚泥の収集・運搬と,一般廃棄物処理計画との整合性を図る
必要性は低いというべきである。
しかるに,浄化槽清掃業の申請は許可され,一般廃棄物処理業の申請は
不許可とされた場合,許可申請者は,浄化槽清掃業を行うことはできるもの
の,発生したし尿及び浄化槽汚泥を収集し,最終処分場に運搬することはで
きなくなることから,浄化槽法と廃棄物処理法との整合性を保つことができな
いこととなる。
したがって,浄化槽清掃業の申請と一般廃棄物処理業の申請が同時にな
された場合に,前者の申請が浄化槽清掃業の許可要件を満たしており,かつ
後者の申請が廃棄物処理法7条3項の要件に適合している場合には,市町
村長は,特段の事情がない限り,後者の申請を許可すべきである。
イ 15年度処理計画との適合性に関する被告の主張は,以下のとおり理由が
ない。
(ア) 被告は,佐屋町におけるし尿及び浄化槽汚泥の搬出量が平成11年を 
ピークに減少していると主張するが,15年度処理計画では,その処理量を
9600キロリットルとし,平成14年度の処理量を上回る数値を予定してい
るのであるから,被告の算出根拠は不明で信用できない。むしろ,佐屋町
では,未だに下水道が完備されていない状況の下,人口も世帯数も年々増
加しているのであるから,し尿処理及び浄化槽清掃の需要は増加している
はずである。
(イ) 被告は,し尿排出量と浄化槽汚泥排出量を業者の所有するバキューム
車両の積載可能量で単純に割り算し,1か月分の排出量を4日間で処理す
ることができると主張するが,全くの机上の空論である。
すなわち,浄化槽の大きさは家屋によって異なる上,浄化槽清掃及びし
尿処理は1軒ごとに実施する性質のものであるから,バキューム車両の積
載可能量に適合した汚泥が出るとは限らず,バキューム車両が積載可能
量の汚泥等を常に積載して運搬することなどあり得ない。現場は目一杯稼
働して現状の量を処分しているのである。
(ウ) 被告は,許可業者の新規参入により業者間に過度の競争が生じ,サー
ビスの質の低下等を招くと主張するが,競争のないことが談合体質を強
め,価格をつり上げ,消費者の負担を過大にすること,サービスの質を低下
させる業者は淘汰されるのが市場原理であることを考慮すると,適度な競
争は住民の利益にこそなれ,不利益と混乱が生じるなどということはあり得
ないから,そのような事態を行政が心配することはない。
(被告の主張)
原告の主張は争う。
一般廃棄物の処理は,本来市町村が処理しなければならない固有事務であ
り,需給のバランスを維持して業者間の競争を調整することこそが市町村に課
せられた責任となるから,一般廃棄物処理業の許可は,一般廃棄物処理計画を
基準として,当該申請を許可することが一般廃棄物処理の事務を混乱なく達成
し,一般廃棄物処理計画の実現を図るために有用であるかどうかという見地か
ら,技術的,政策的に判断すべきものとされ,その判断については,市町村長の
広範な裁量に委ねられているものと解すべきであるところ,被告は,以下の事情
を考慮して本件廃棄物処理業許可申請が15年度処理計画に適合しないと判断
したものであるから,被告の政策的裁量として合理的かつ正当であり,裁量権の
濫用には当たらない。
ア 佐屋町では,農業集落排水事業,流域下水道事業などの公共下水道事業
を推進しており,し尿及び浄化槽汚泥の排出量が減少する(し尿につき平成1
0年以降,浄化槽汚泥につき平成11年以降)傾向の中,今後も同排出量を減
らす方針で一般廃棄物処理計画を策定し,一般廃棄物処理事業の縮小を計
画している。
そして,15年度処理計画では,し尿及び浄化槽汚泥の各年間排出見込量
をそれぞれ1810キロリットル及び7790キロリットル,合計9600キロリット
ルと推計しているところ,既存の許可業者(5業者)は,合わせて,積載量1.8
キロリットルのバキューム車両20台,同2.5キロリットルのバキューム車両3
台,同3.6キロリットルのバキューム車両8台を保有しているのであるから,
フル稼働した場合,佐屋町内の1か月分のし尿及び浄化槽汚泥を4日間で収
集できる計算となる。
したがって,既存の許可業者によって一般廃棄物処理事業は適切に遂行さ
れており,新規に許可業者を増やす必要性は全くない。
イ 新規に許可業者を増やす必要性が全くないにもかかわらず,一般廃棄物処
理事業の代行業者を増やすことは,従来の需給のバランスを崩して過度の競
争を生じさせ,サービスの質の低下や過度の顧客誘引などの不利益と混乱を
住民に与え,一般廃棄物処理計画の遂行を困難にするおそれが大きい。特
に佐屋町においては,昭和40年ころから,現在の許可業者がし尿及び浄化
槽汚泥の収集を行い,各業者の実績に大きな変動を生じることなく適度な競
争関係を保ちながら,住民及び町にとって十分望ましい形で一般廃棄物処理
事業を遂行してきたのであるから,上記のような危険が現実にならないように
防止し,調整することこそが市町村に課せられた責任となるのである。現に,
愛知県下において,新たに許可業者を増やした例は全く聞いていない。
原告は,適度な競争は住民にとって利益になると主張するが,し尿及び浄
化槽汚泥の処理は必ずしも日常的ではなく,専門的なサービスであるため,
一般消費者がサービスの質を比較し選別することは容易ではないから,低価
格で劣悪なサービスが横行し,住民の生活や健康に重大な結果をもたらすお
それがある。そして,いったん許可業者を増やした後では,弊害が顕在化した
場合であっても,許可を取り消して是正することは困難である。したがって,規
制緩和が求められる時代であっても,新規許可は慎重にならざるを得ない。
ウ 国においても,下水道の整備等に伴う一般廃棄物処理業等の合理化に関す
る特別措置法を制定し,下水道の整備に伴う業務量の減少による既存の業
者の経営悪化を放置することなく,これらの業者を保護するための対策をとる
ことを市町村に求めているところ,佐屋町において,新規に許可業者を増やし
て既存の許可業者の経営をさらに圧迫することは,時代に逆行する政策とな
る。
(2) 本件清掃業不許可処分の適法性について
ア 本件清掃業許可申請は,浄化槽法36条1号,規則11条4号に適合するも
のであるか。
(原告の主張)
浄化槽法36条の許可はき束裁量とされ,本件基準に適合する者の許可申
請に対しては,その余の基準に適合する限り,許可しなければならないとこ
ろ,以下のとおり,本件清掃業許可申請が本件基準に適合していたことは明
らかである。
(ア) 本件基準は,浄化槽に関する専門的知識を有することを要求している 
ところ,
a 原告は,平成8年3月ころから本件清掃業許可申請時までの6年以上,
浄化槽清掃業を営むA株式会社に勤務し,現場主任として一度も事故等
を起こすことなく稼働していたこと,
b 原告の従業員となる予定であるBは,浄化槽技術管理者認定講習会
(以下「管理者講習会」という。)を修了したほか,浄化槽管理士講習を修
了してその資格を取得していたこと,
以上の事実に照らせば,上記要求を満たすというべきである。
実際,被告は,原告に対し,添付書類として財団法人日本環境整備教育
センターの実施する浄化槽清掃技術者講習会(平成12年以前に同センタ
ーが実施した浄化槽清掃技術者認定講習会を含む。以下「技術者講習会」
という。)の修了証書を要求せず,かえって,後記のとおり,原告が被告の
担当者に対して本件基準を証する書面としてどのようなものが必要か問い
合わせたところ,担当者は,同講習会の受講は不要であり,原告が6年間
同種業者に勤務したことを示す履歴書で十分であると回答したほか,本件
清掃業許可申請を許可する方向で検討していることを明らかにし,同許可
申請に対して内諾を与えていたのである。
(イ) 被告は,本件基準に適合するためには,技術者講習会の課程を修了し
たことが必要であると主張する。
しかしながら,同講習会は,浄化槽清掃業の許可を受けて実務に携わる
者を対象とし,浄化槽清掃の実務経験が2年以上あることを受講資格とし
ているので,同講習会の修了を浄化槽清掃業の許可の要件とすることは
本末転倒である。実際,昭和60年9月27日付け衛環第137号厚生省生
活衛生局水道環境部長通知「浄化槽法の施行について」は,同講習会の
課程を修了したことを規則11条4号の要件としていたのに対し,平成13年
2月15日付け環廃対第33号環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部廃
棄物対策課浄化槽対策室長通知「環境省関係浄化槽法施行規則の一部
改正について」は,これを緩和し,同講習会の課程の修了を要件としなくな
っている。
また,規制緩和の叫ばれる昨今において,特殊法人の実施する講習会
の修了を許認可処分の要件とすることは時代錯誤も甚だしいといわざるを
得ない。したがって,同講習会の修了が本件基準に適合するための要件と
なるものでないことは明白である。
(被告の主張)
原告の主張は争う。
浄化槽清掃では,幾層にもなる汚泥を正しい手順で抜かなければ内外圧
のバランスが崩れて機器が損壊し,機器の覆蓋を完全に閉じなければ浄化槽
に落下し,汚泥や悪臭が漏れるなど,市民生活に重大な被害が及ぶおそれ
があることから,行政の監督下にある機関が実施する専門的な講習を受けた
者をもって,本件基準に適合すると扱うのが合理的である。
この点,技術者講習会は,受講資格として浄化槽の清掃実務経験を2年以
上必要とした上,4日間の清掃実務の訓練を含めて9日間にわたり,合計61
時間の教科と考査を実施するものであり,まさに浄化槽清掃技術者を養成す
る高度に専門的な講習である。
しかして,前記厚生省生活衛生局水道環境部長通知は,規則11条4号に
定める「専門的知識,技能及び相当の経験」を有する者とは厚生大臣の認定
する清掃に関する講習会の課程を修了した者であって相当の経験を有する
者をいうとし,また,前記環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部廃棄物対
策課浄化槽対策室長通知は,上記専門的知識等を有しているとの要件として
は,技術者講習会を修了していることが該当するとしている。
したがって,本件基準のうち,「浄化槽の清掃に関する専門的知識,技能」
を有していることとは,①技術者講習会を修了しているか,②同講習会の修了
者と同等レベルの専門的知識,技能を有していることのいずれかを意味する
と解すべきである。そして,上記専門的知識等は,本来,許可申請者本人が
有していなければならないものである。
しかるに,原告は,自らが平成8年からA株式会社に勤務し,主として企画
部に配属されていたことを示す履歴書を提出しているものの,実務経験の内
容が明確ではなく,何の技術的資格も有していない。また,原告は,従業員予
定者のBが管理者講習会を修了したことを示す修了証書と同人の浄化槽管
理士免状を提出してはいるものの,これらは許可申請者である原告本人の技
術的資格に関わるものではない上に,管理者講習会については,浄化槽の
保守点検(浄化槽法8条)に関する講習会であり,3日間,合計20時間の教
科及び考査という内容にすぎず,浄化槽清掃実務の研修もなく,より一般的な
浄化槽の管理に関する概括的な講習内容にすぎないから,技術者講習会の
ごとく浄化槽清掃技術に特化した専門的講習内容とはいえず,管理者講習会
の修了をもって技術者講習会の修了者と同等レベルの専門的知識,技能を
有していると認定することは到底できない。浄化槽管理士の資格及び浄化槽
管理士講習についても,その内容は,あくまでも浄化槽の保守管理に関する
必要事項を習得するためのものであり,実際の清掃実務の技術を習得させる
ものではない。
したがって,本件清掃業許可申請は本件基準に適合しない。
イ 本件清掃業許可申請は,浄化槽法36条2号ホに該当しないものであるか。
(ア) 原告が同号ホに当たるとの被告の主張は,時機に後れた攻撃防御方法
などとして却下されるべきか
(原告の主張)
被告は,前記のとおり,本件第3回口頭弁論期日に至って,本件清掃業
不許可処分の処分理由として,浄化槽法36条2号ホに該当する旨主張し
たところ,仮に,被告が,上記事由を処分理由として本件清掃業不許可処
分をしたならば,同旨の最高裁判決等の存在にかんがみ,原告は本件訴
訟の提起を断念していた可能性が高いから,被告が訴訟の終盤において
上記処分理由を主張することは,明らかに時機に後れたものであり,訴訟
上の信義則にも反するから,許されない。
(被告の主張)
原告の主張は争う。
数個の不許可事由のうち1個の不許可事由を挙げて不許可処分がなさ
れた場合,他に一切の不許可事由がないことまで判断されたものではなく,
またそれが表明されたものでもないから,訴訟において,被告が当該不許
可処分の理由として挙げた事由以外の不許可事由を主張することは,何ら
信義則に反することではない。
(イ) 処分理由の追加の可否
(原告の主張)
本件のように複数の不許可要件があるうち,1個の不許可要件を充足す
れば不許可処分が可能というケースにおいては,当該不許可事由に基づく
不許可処分の取消しが訴訟物となるから,当該不許可処分の時点におい
て他の不許可事由が存在していたとしても,裁判所が,当該不許可処分の
理由とされなかった事由によって当該不許可処分の妥当性を判断すること
は許されないというべきである。
(被告の主張)
原告の主張は争う。
原告の主張するように,審理の対象が不許可処分の理由として挙げられ
た事由のみに限定されるとすれば,その事由との関係で不許可処分が取り
消された場合でも,行政庁は,別の事由で再度不許可処分をすることがで
きるから,原告は,再度それに対して行政訴訟を提起して争う必要が生じ,
かえって,原告にとって不利益となり,行政庁にとって不合理な結果となり,
訴訟経済にも反することとなるので,不許可事由が数個ある場合には,被
告がそのすべてを主張し,裁判所の判断を仰ぐことができると解するのが
相当である。
(ウ) 浄化槽法36条2号ホの該当牲
(原告の主張)
被告の主張は争う。
(被告の主張)
一般廃棄物処理業と浄化槽清掃業の許可申請が同時になされ,前者に
ついては不許可とされた場合,当該業者は,浄化槽清掃で引き抜いた汚泥
を自ら収集し,運搬することができないため,一般廃棄物処理業の許可を
受けた他の業者との間に委託関係を有しない限り,浄化槽汚泥をその場に
放置するなど不法に処理しかねないから,浄化槽の清掃業務に関し,浄化
槽法36条2号ホに定める「不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認
めるに足りる相当な理由がある者」に当たるというべきである。
しかるところ,原告は,一般廃棄物処理業と浄化槽清掃業の許可申請を
同時にしたものであるが,浄化槽汚泥の収集・運搬について既存の許可業
者との間に委託関係を有していなかったし,既存の許可業者が原告の新規
参入に強く反対していたため,将来も委託関係を結ぶ見込みのなかったこ
とも明白であった。したがって,本件廃棄物処理業不許可処分を前提とす
る限り,原告は,浄化槽法36条2号ホの事由に当たるから,本件清掃業不
許可処分は適法である。
(3) 本件各不許可処分に至る経緯
 (原告の主張)
以下の経緯に照らせば,本件各許可申請は要件に欠けるところがなく,被告
が平成15年3月13日までは許可する方向で検討していたことは明らかであり,
それにもかかわらず,被告が本件各不許可処分をしたのは,既存の許可業者や
業界からの圧力に屈したからにほかならない。
ア 原告が,平成14年9月ころ,本件各許可申請を行うに先立ち,これに係る書
類を被告に提出したところ,被告担当者は,同年10月ころ,原告に対してバ
キューム車両を調達できれば許可を出す旨伝えてきた。
その際,原告が,被告に対し,規則11条4号の要件を証する書類としては
どのようなものを要するかを問い合わせたところ,担当者から,6年間にわた
って同種業者に勤務したことで要件を満たすとの回答を得た。
イ 原告は,平成14年10月ころから平成15年1月ころにかけて,新車のバキュ
ーム車両を調達すべく自動車販売会社との間で購入の交渉を行い,納車予
定の段階まで進んだが,突然この解約を申し込まれたため,同年2月24日,
やむなく解約に応じ,他の自動車販売会社に対して購入を打診したが,いず
れも車両のバキューム部分を製造するメーカーが原告への販売を拒絶してい
るとの理由で断られた。
ウ そこで,原告は,中古のバキューム車両を購入し,本件各許可申請をしたと
ころ,佐屋町民生部国保衛生課のC課長は,愛知県衛生協同組合から圧力
があるとの理由で同許可申請の受理を拒絶した。
原告は,これに対して抗議し,受理できない理由を書面に書くよう要求した
ところ,C課長は,名刺の裏に「愛知県衛生協同組合より原告に対し一般廃棄
物収集運搬の許可を出さないよう陳情が有りました。」と記載した。
エ その後間もなくして,原告は,被告担当者から本件各許可申請を受理する旨
の連絡を受けたことから,被告に対して同許可申請を行った。その際,原告
は,担当者から,1ないし2週間で許可が出る旨の説明を受けた。
本件各許可申請から2週間ほど経過したころ,原告は,担当者から,し尿及
び浄化槽汚泥の搬入先について,津島ではなく鍋田の処分場にしてもらいた
いとの申入れを受けたので,20パーセントを津島に搬入できれば,残りは鍋
田でもよいと提案した。その際,原告が,担当者に対し,問題になっているの
は搬入先だけで他の要件は問題ないか念押ししたところ,担当者は,本件各
許可申請の内容は問題ないと回答した上,同許可申請について「内容を審査
したところ適当でしたので許可を下ろす方向で進めている」旨記載された,被
告から海部津島環境事務組合にあてた文書(甲10)を示したので,原告は安
堵した。
オ ところが,原告は,平成15年3月下旬ころ,佐屋町の助役から申請を取り下
げるよう打診され,その2日後,被告から口頭で不許可にする旨伝えられた。
本件各不許可処分は,このような経緯で,同年4月9日付けで行われたもの
である。
 (被告の主張)
ア 原告の主張アの事実は否認する。
原告は,平成14年9月6日,本件各許可申請に係る申請書を持参し,置い
ていったが,添付すべき書類が全く付いていなかったので,被告の担当者は,
やむなく,厚生労働省の浄化槽清掃に関する講習会の修了証書が必要であ
ることを記載したメモを付けて返却した。
そして,担当者が,バキューム車両を調達すれば許可するとの発言をした
事実はない。
イ 同イの事実は知らない。
ウ 同ウの事実は否認する。
被告は,平成15年3月5日に原告から改めて提出された本件各許可申請
を受理し,実質審査を進めるうち,添付された技術上の資格を証する書面が
浄化槽法8条に関するもので,同法11条に関するものでないことが判明した
ため,原告に連絡し,このままでは許可できない旨を伝えたところ,原告は,
バキューム車両を調達すれば許可すると言ったではないかと言い張り,業者
からの圧力があったことを認めよと強く迫った。そこで,C課長が,圧力はない
が陳情があったと答えたところ,原告は,その事実を書けと迫ったので,陳情
のあった事実を名刺の裏に記載したにすぎない。
エ 同エの事実は否認する。
被告の担当者が,搬入の問題を除いて他の要件は問題がない旨回答した
事実はない。
オ 同オのうち,佐屋町の助役が本件各許可申請の取下げを打診したことは否
認するが,その余の事実は認める。
第3 当裁判所の判断
1 一般廃棄物処理業不許可処分の適法性について
(1) 地方自治法2条2項は,「普通地方公共団体は,地域における事務(中略)を
処理する。」と,同条3項は,「市町村は,基礎的な地方公共団体として,(中略)
一般的に,前項の事務を処理するものとする。(以下略)」とそれぞれ規定し,地
域における住民の福祉増進のために必要な事務の基本的な担い手が市町村で
あることを明らかにしている。
これを受けて,廃棄物処理法は,一般廃棄物の収集及び運搬は本来市町村
が自らの事業として実施すべきものであること,市町村は当該市町村の区域内
の一般廃棄物処理計画を定めなければならないことを定めている(4条1項,6
条1項)。そして,一般廃棄物処理計画には,一般廃棄物の発生量及び処理量
の見込み,一般廃棄物の適正な処理及びこれを実施する者に関する基本的事
項等を定めるものとされている(同法6条2項1号,4号)ところ,これは,一般廃
棄物の発生量及び処理量の見込みに基づいて,これを適正に処理する具体的
な実施主体を定める趣旨のものと解される。そうすると,既存の許可業者等によ
り一般廃棄物の適正な収集及び運搬が行われてきており,これを踏まえて一般
廃棄物処理計画が作成されているような場合には,市町村長は,これとは別に
された一般廃棄物収集運搬業の許可申請について審査するに当たり,当該地
域の状況にかんがみ,一般廃棄物の適正な収集及び運搬を継続的かつ安定的
に実施させるためには,既存の許可業者等のみに引き続きこれを行わせること
が相当であり,当該申請の内容は一般廃棄物処理計画に適合するものとは認
められないとの判断をすることもできるというべきである(最高裁判所平成16年
1月15日第一小法廷判決・裁判所時報1355号23頁参照)。
(2) これを本件についてみるに,証拠(乙3,9,13,14,15の1ないし3,17,1
8)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア 佐屋町においては,一般廃棄物のうち,し尿及び浄化槽汚泥の収集・運搬に
ついては,佐屋町が自ら又は委託の方法により行うのではなく,相当以前か
ら,一般廃棄物収集業の許可を受けた業者5社(D株式会社,有限会社E,
F,G有限会社,有限会社H)によって行われてきたところ,この間,その業務
の実施について住民からの特段の苦情もなかった。これら許可業者による平
成10年度から平成14年度における収集実績は,以下のとおりである(数字
は,前から順に,尿の搬出量,浄化槽汚泥の搬出量,合計搬出量である。な
お,単位は,いずれもキロリットルである。)。
(ア) 平成10年度   2241 7443 9684
(イ) 平成11年度   1928 7937 9865
(ウ) 平成12年度   1897 7745 9642
(エ) 平成13年度   1803 7787 9590
(オ) 平成14年度   1813 7521 9334
また,佐屋町内における浄化槽の設置基数は,以下のとおりである。
(ア) 平成10年    4096
(イ) 平成11年    4082
(ウ) 平成12年    3952
(エ) 平成13年    3999
(オ) 平成14年    3982
(カ) 平成15年8月末 3948
イ 佐屋町においては,西保地区,本部田・東條地区及び佐屋中央地区の3地
区で農家を対象にした農業集落排水事業が採択,整備され,西保地区につき
平成8年10月,本部田地区及び東條地区につき平成11年4月,佐屋中央地
区につき平成14年4月にそれぞれ供用開始されている。また,佐屋中央地区
及び永和台地区内の団地を対象にした生活排水処理のためのコミュニティ・
プラント事業が採択,整備され,佐屋中央地区につき平成13年10月に供用
開始され,永和台地区についても平成16年4月に供用開始の予定である。
さらに,佐屋町においては,日光川下流流域下水道の整備に合わせて,雨
水の排水区域を市街化区域全体の158ヘクタール,汚水処理区域を同区域
の149.8ヘクタールとする公共下水道の整備を内容とした都市計画(変更)
が決定されており(平成14年10月18日告示),平成15年度にはこれに係る
事業計画の認可申請をしたところ,同計画によれば,上記公共下水道は,平
成15年度から平成21年度にかけて整備,供用される予定となっている。
ウ 15年度処理計画では,平成15年1月1日現在の人口を3万0552人(世帯
数は9337戸),うちし尿くみ取り人口を3136人,浄化槽人口を2万3369人
とした上,過去の実績から佐屋町の住民1人につき,し尿くみ取り量は1日当
たり1.575リットル,浄化槽汚泥量は1日当たり0.913リットルとして計算
し,佐屋町内の一般家庭からのし尿の排出量を年間1810キロリットル,同じ
く浄化槽汚泥の排出量を年間7790キロリットル(年間合計9600キロリット
ル)と推計している。
他方,許可業者5社の保有するバキューム車両数は,1.8キロリットル車2
0台,2.5キロリットル車3台,3.6キロリットル車8台,8キロリットル車1台
及び10キロリットル車2台であるところ,1.8キロリットル車20台,2.5キロ
リットル車3台及び3.6キロリットル車8台が1台につき1日当たり3往復する
と仮定しても,収集作業を1か月当たり4日行えば上記排出量を処理すること
ができると算定した結果,し尿は月1ないし2回,浄化槽汚泥は年1ないし2
回,収集・運搬することにより処理することを計画している。
以上の事実が認められ,これによれば,佐屋町におけるし尿及び浄化槽汚泥
の排出量は,ここ数年,減少傾向を示しており,今後の人口増加を考慮しても,
公共下水道等の整備によってし尿及び浄化槽汚泥の搬出量が減少し,し尿及
び浄化槽汚泥の収集・運搬業に対する需要が縮小していくことが見込まれるか
ら,現在の許可業者5社の収集運搬能力を前提とする限り,将来的にこれらの
許可業者のみでは排出されたし尿及び浄化槽汚泥を収集・運搬することができ
ない事態に至る可能性は考え難いというべきである。
そして,既存の許可業者5社による処理体制において,料金の高額化,作業
の手抜き,不法投棄などの弊害が生じ,住民から苦情が出されたとの事実を認
めることはできないので,これらの許可業者によって佐屋町内の一般廃棄物の
収集・運搬は円滑,適正に実施されてきたと判断するのが相当であるところ,15
年度処理計画では,排出されるし尿及び浄化槽汚泥の収集・運搬業者として既
存の許可業者のみを予定し,これら許可業者の保有するバキューム車の総積
載量を基準にして,同計画において推計されたし尿及び浄化槽汚泥の排出量を
十分処理することができると予測しているが,上記の判断に照らせば,同計画の
合理性を肯認することができる。
そうすると,現在における規制緩和の流れを考慮しても,一般廃棄物の適正
な収集・運搬を継続的かつ安定的に実施させるためには,新たに原告に対して
許可を与えるよりも,既存の許可業者に引き続きし尿及び浄化槽汚泥の収集及
び運搬を行わせる方が相当であるとして,本件廃棄物処理業許可申請は15年
度処理計画に適合するものであるとは認められないとした被告の判断は許され
ないものではなく,本件廃棄物処理業不許可処分は適法というべきである。
(3) この点に関し,原告は,浄化槽法と廃棄物処理法との整合性を保つために,
当該申請が浄化槽清掃業の許可要件を満たしており,かつ廃棄物処理法7条3
項の要件に適合している場合には,特段の事情がない限り,一般廃棄物処理業
を許可すべきである旨主張するが,そもそも立論の前提を欠くというべきであっ
て採用できない。
2 本件清掃業不許可処分の適法性について
(1) 浄化槽の清掃は必然的に汚泥の発生を伴うから,それを収集し,運搬する必
要が生じるところ,浄化槽汚泥の収集・運搬業は一般廃棄物処理業に当たるこ
とから,浄化槽清掃業の許可申請者は,自ら一般廃棄物処理業の許可を取得
するか,既存の一般廃棄物処理業許可業者との間でその収集・運搬に関し業務
委託契約を締結する等の方法により,浄化槽汚泥を確実に収集し,運搬するこ
とができる体制を整えておく必要があるというべきである。そして,上記許可申請
者がかかる体制を整えていない場合には,浄化槽から引き抜かれた汚泥がそ
の場に放置されるか,あるいは不法に処理されるおそれがあるといわざるを得
ないから,当該許可申請者は,浄化槽法36条2号ホの定める「その業務に関し
不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある
者」に当たるというべきである(最高裁判所平成5年9月21日第三小法廷判決・
集民169号807頁参照)。
これを本件についてみるに,前記前提事実(2)記載のとおり,本件清掃業許可
申請は本件廃棄物処理業許可申請と同時になされ,これらに対する不許可処
分も同時になされたのであるから,原告が本件清掃業許可申請の時点はもとよ
り,本件清掃業不許可処分の時点においても一般廃棄物収集運搬業の許可を
取得していなかったことは明らかであるし,証拠(甲14,乙1)及び弁論の全趣
旨によれば,上記申請時点において,原告は既存の許可業者との間で浄化槽
汚泥の収集・運搬に関し業務委託契約を締結しておらず,さらには近い将来に
おいて同契約を確実に締結する見込みもなかったと認められる。
そうすると,原告が浄化槽汚泥を確実に収集し,運搬し得る体制を整えていた
とは認められないから,本件清掃業許可申請は,清掃業法36条2号に適合しな
いというべきである。
(2) この点に関し,原告は,①被告による浄化槽法36条2号ホの主張は,時機に
後れた攻撃防御方法に当たるなどと主張して,その却下を申し立てるとともに,
②浄化槽清掃業不許可処分の取消訴訟においては処分理由を追加することは
許されないと主張するので,以下,これについて判断する。
ア まず,民事訴訟法156条は,「攻撃又は防御の方法は,訴訟の進行状況に
応じ適切な時期に提出しなければならない。」と定めて攻撃防御方法の提出
につき適時提出主義を採用することを明らかにした上,同法157条1項は,
「当事者が故意又は重大な過失により時機に後れて提出した攻撃又は防御
の方法については,これにより訴訟の完結を遅延させることとなると認めたと
きは,裁判所は,申立てにより又は職権で,却下の決定をすることができる。」
と定め,当事者がこれに違反した場合の一種の制裁措置について規定してい
るところ,これらの規定は,行政事件訴訟法7条によって,行政訴訟にも準用
されている。
しかしながら,前記前提事実(4)記載のとおり,被告は,本件第2回口頭弁
論期日まで,本件清掃業不許可処分の処分理由として,浄化槽法36条1号,
規則11条4号の要件を欠くとの主張をした後,続く本件第3回口頭弁論期日
において,浄化槽法36条2号ホに当たるとの主張をしたものであり,かつこの
主張によって新たな証拠調べが必要になったこともなく,これに続く本件第4
回口頭弁論期日(この期日は,原告が,被告の上記主張に対して反論したい
との意向を示したことから,続行期日として指定したものである。)において弁
論終結に至っているという経緯に照らせば,被告による浄化槽法36条2号ホ
の主張が時機に後れたものであるとか,訴訟の完結を遅延させるものである
とは認められず,原告の上記申立ては理由がないというべきである。
イ また,一般に,取消訴訟の訴訟物は当該行政処分の違法一般と解される
(最高裁判所昭和49年7月19日第二小法廷判決・民集28巻5号897頁参
照)ところ,行政事件訴訟法は,取消訴訟における被告行政庁の主張の制限
に関して特段の規定を置いていないことから,行政庁は,原則として当該処分
の効力を維持するための一切の法律上及び事実上の根拠を主張することが
許されるものと解される(最高裁判所昭和53年9月19日第三小法廷判決・集
民125号69頁参照)。
この点に関し,原告は,本件清掃業不許可処分は複数の処分要件のうち1
つが充足されることを要件とする処分であるから,その取消訴訟では,被告行
政庁が処分の際に判断を示した処分事由に訴訟物の範囲が制限され,他の
処分事由に基づいて当該処分の妥当性を判断することは許されないと主張す
るところ,証拠(甲1)によれば,本件清掃業不許可処分の処分書において
は,浄化槽法36条1号に適合しないことが処分理由として記載されていること
が認められる。
そこで検討するに,一般論としては,原告の主張するような類型の処分に
おいては,複数の処分要件の全てについて充足,非充足を判断したものとは
限らないから,個々の処分要件ごとに訴訟物が異なり,したがって,行政庁の
判断した処分事由以外の処分事由を認定することはできないと解する余地が
あるとしても,浄化槽法36条1号と同条2号とは,ともに申請者自身の能力,
属性に関する要件であるから,同条1号に適合しないという判断が同条2号に
ついては審査,判断しないという判断を論理必然的に伴うことになるわけでは
ない上,本件においては,一般廃棄物処理業の許可申請と浄化槽清掃業の
許可申請が同時になされているところ,前者の許可を受けない者が原則とし
て浄化槽法36条2号ホに該当することは前掲最高裁判所平成5年9月21日
第三小法廷判決の判示するところであり,これと同旨の下級裁判所の判決も
多数存在していて,ほぼ確立した実務であると考えられるから,被告が本件
廃棄物処理業許可申請について不許可とする結論に至った際に,原告が浄
化槽法36条2号ホに該当することになることを検討しなかったとは考え難い。
また,原告も,この処分要件を全く想定していなかったわけではなく(原告自
身,上記の理由で不許可処分を受けたならば,本件訴えの提起を断念してい
た可能性が高いと自認している。),本訴において,被告がこの処分要件につ
いて主張したからといって,特段の不利益を被るとは認められない。
そうすると,本件においては,浄化槽法36条2号ホの事由について被告の
第1次的判断権が行使されていないことなどを理由に,処分理由の追加,差
し替えが許されないと解するのは相当でないし,同主張が信義則に反するも
のともいえない。
したがって,原告の上記主張は採用できない。
(3) よって,本件清掃業不許可処分は,その余について判断するまでもなく,適法
というべきである。
3 争点(3)(本件各不許可処分に至る経緯)について
原告は,被告が,本件各許可申請を許可する方向で検討していたにもかかわら
ず,既存の許可業者や業界からの圧力に屈して,本件各不許可処分を行ったもの
であるとして,その経緯をるる主張する。
しかしながら,本件各不許可処分が既存の許可業者の利益を擁護する結果をも
たらすことは否定できないとしても,そのこと自体は,その適法性について影響を与
えるものとはいい難いから,上記各判断を覆すものではない。
4 結論
以上の次第で,原告の本訴請求はいずれも理由がないので棄却し,訴訟費用
の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判
決する。
 名古屋地方裁判所民事第9部
 裁判長裁判官     加  藤  幸  雄
 裁判官舟  橋  恭  子
 裁判官横  山  真  通

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