弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1 被告は,原告に対し,1200万円及びこれに対する平成17年2月5日から支払済
みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
4 この判決は,第1項に限り仮に執行することができる。
事実
第1 当事者の求めた裁判
1 請求の趣旨
(1)被告は,原告に対し,1200万円及びこれに対する平成17年2月5日から支払
済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(2)主文第3,4項に同旨。
2 請求の趣旨に対する答弁
(1)原告の請求を棄却する。
(2)訴訟費用は原告の負担とする。
第2 当事者の主張
1 請求原因
(1)被告は,生命保険事業である簡易保険を取扱うものであり,原告は,訴外Aの
妻である。
(2)訴外Aと被告は,平成14年2月13日,次の内容の特別終身保険契約(以下
「本件保険契約」という。)を締結した。
 保険種類   《ながいきくん(おたのしみ型)》特別終身保険
 保険証書番号   B号
 被保険者   訴外A
 保険金受取人   死亡保険金  原告
生存保険金  訴外A
 保険金額   600万円
但し,効力発生日から1年6箇月経過後不慮の事故で
死亡したときは1200万円。
(3)訴外Aは,平成16年7月3日,C村D漁港(以下「本件漁港」という。)において,
海に落ちて死亡した。
(4)よって,原告は被告に対し,本件保険契約に基づき,保険金請求権として120
0万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日である平成17年2月5日から
支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。
2 請求原因に対する答弁
 請求原因(1)及び(2)は認め,(3)は不知。
理由
第1 請求原因(1)及び(2)は当事者間に争いがない。
第2 請求原因(3)
1 いずれも成立に争いがない甲第3ないし25号証,原告本人尋問の結果によると,
以下の事実を認めることができる。
(1)訴外Aの失踪の経緯
ア 訴外Aは,平成16年7月3日13時過ぎに釣りに出かけたが,同年7月4日
の昼になっても訴外Aは帰宅しなかった。訴外Aに対しては,携帯電話等に
よる連絡もとることができず,原告は,同年7月6日,訴外Aの捜索願を警察
に提出した。
イ 同年7月7日,本件漁港において,訴外Aの乗用車が発見された。乗用車中
の訴外Aの遺留品中には,訴外Aの携帯電話,車と家の鍵の束,釣り竿,及
び長靴はなかった。
ウ 本件漁港付近で,訴外Aの捜索が1週間にわたって行われ,同月7日,8日
の2日間については,E消防組合,F海上保安部及び訴外Aの勤務先である
G店によって,ダイバーやヘリコプター等を使用した捜索がなされたが,訴外
Aは発見されなかった。
(2)訴外Aの下腿部の発見
ア 平成16年8月30日,本件漁港において,人の右下腿部が発見された。発
見された足は,指先の根本からくるぶし上5~6cmまで靴下をはいているの
で見えないが,ほぼ骨のみであり,くるぶしのあたりに肉片が一部ついてお
り,骨は折れたり食いちぎられたりした様子はなかった。
イ 上記の人の右下腿部は,H警察署がDNA鑑定を行ったところ,訴外Aのもの
と認められた。
(3)訴外Aの生活状況
 訴外Aには,仕事上特にトラブルや悩みを抱えていた事実,また,大きな借金
を抱えているような経済的な苦境にあった事実,女性関係でのトラブル等の私生
活上の悩みを抱えていた事実の,いずれも窺われない。
2 以上の事実を前提にすると,訴外Aは,平成16年7月3日ころ,本件漁港におい
て,自身の過失により海に落ち,そのころ,死亡したものと認められる。
(1)仮に,訴外Aが生存しているとすれば,右下腿部を失った状態で生存しているこ
とになる。しかし,このような事実が存する可能性は,可能性として考えられるに
過ぎず,現実的ではないといわざるを得ない。
ア 発見された右下腿部の状況からすれば,右下腿部は海中を彷徨った挙げ句
に,打ち上げられ,たまたま発見されたというべきである。
イ 第1に,訴外Aが右下腿部を切断するに至った時期が,海中を漂流中であっ
た場合には,海中を漂流中に右下腿部を切断した訴外Aが生存できた可能性
は,ほとんど想定できない。なお,現実的な可能性としては,むしろ,訴外Aの
死後,右下腿部が切断された可能性が高いといえる。
ウ 第2に,右下腿部が海中を漂流するに至る前に切断されるに至った場合,す
なわち,訴外Aの右下腿部が地上で切断されて海に投げ込まれた場合である
が,これについては,そのような事実が存在したことを現実的に想定すること
ができない。失踪する人間が,わざわざ自分の右下腿部を切断し海に投げ込
むことは,このようなことを行うべき何らの合理的理由はなく,ほぼあり得ない
であろう。
(2)したがって,訴外Aは,海中に落ち,漂流中に死亡するに至ったと推認するのが
相当である。
3 訴外Aが海中に落ちた事由の中で,不慮の事故と評価されないものとして,同人
の自殺によるものが考え得るが,上記のように,自殺の可能性を窺わせるような事
情は訴外Aには存しない。以上によれば,同人の死亡は不慮の事故のよるもので
あることもまた推認するのが相当である。
4 なお,被告は,保険金支払いの事由として,失踪宣告,認定死亡等の公証行為が
必要であることを主張するが,これらの制度は,ある者の生死が不明の場合に,生
存している関係者の利益のために死亡したものと扱うものであり,これらによらなけ
られば死亡の事実が認定できないというものではない。
第3 遅延損害金の法定利率について
 簡易生命保険法1条によると,被告の簡易生命保険事業は非営利事業であると
認められるので,遅延損害金の利率について,商法514条に基づく商事法定利率
の適用はなく,民法404条が適用されるというべきである。
第4 以上のとおりであるから,原告の請求は,被告に対し,本件保険契約に基づく保険
金請求権として1200万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日である平成1
7年2月5日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を
求める限度で理由があるので,これを認容し,その余の請求は,理由がないので
棄却し,訴訟費用の負担について民事訴訟法64条ただし書,61条,仮執行宣言
について同法259条1項を適用して,主文のとおり判決する。
札幌地方裁判所民事第5部
裁判官   馬  場  純  夫

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