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平成15年(行ケ)第488号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成15年12月17日
判    決
原    告      A   
       同訴訟代理人弁護士鈴 木 勝 利
同丸 山 恵一郎
同大 野 徹 也
同佐 野 知 子
同崔   宗 樹
同訴訟代理人弁理士河 野   昭
同訴訟復代理人弁理士穂 坂 道 子
被    告      帝人ファイバー株式会社
同訴訟代理人弁理士三 原 秀 子
同           鈴 木 雅 彦
同           尾 仲 理 香
主    文
     1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30
日と定める。
 事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
 1 原告
(1) 特許庁が取消2002-30666号事件について平成15年6月30日
にした審決を取り消す。
(2)訴訟費用は被告の負担とする。
 2 被告
主文第1,2項と同旨
第2 前提となる事実(証拠を掲記したもの以外は当事者に争いがない。)
1 特許庁における手続の経緯
  (1)ア 帝人株式会社(以下「帝人」という。)は,「メンデル」の片仮名文字
と「MENDEL」の欧文字を上下2段に横書きしてなり,商標法施行令1条別表
第25類の「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳
着,水泳帽,和服,エプロン,靴下,スカーフ,手袋,ネクタイ,ずきん,帽子,
靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除
く。),草履類,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定
商品とする登録第3232197号商標(平成5年9月20日登録出願。平成8年
12月25日設定登録。以下「本件商標」という。)の商標権者であった。
イ 帝人は,カーク株式会社(以下「カーク社」という。)との間で「商標
使用における契約」(以下「本件契約」という。)を締結し,カーク社に対し,平
成13年3月1日から平成16年2月末日まで,本件商標の通常使用権を許諾し
た。被告は,平成14年4月1日,帝人のポリエステル衣料繊維事業部門が分社化
され発足した会社であるところ,帝人から本件商標権の譲渡を受け,同年4月8
日,その旨の移転登録を受けるとともに,帝人とカーク社との間の本件契約におけ
る通常使用権許諾者の地位を承継した(甲1,2,乙1,2,3の(1),(2),4,
弁論の全趣旨)。
  (2) 原告は,平成14年6月11日,特許庁に対し,被告を被請求人として,
本件商標の登録を商標法50条の規定により取り消すことについて審判を請求し
た。
    そして,上記審判請求の予告登録が同年7月3日にされた(甲1)。
  (3) 特許庁は,原告の上記請求を取消2002-30666号事件として審理
を行った上,平成15年6月30日,「本件審判の請求は,成り立たない。」とす
る審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は同年7月10日に原告に送
達された。
 2 本件審決の理由の要旨
(1) 通常使用権者による本件商標の使用の有無について
本件契約によれば,本件商標の使用は,カーク社が製造・加工し,日本国
内で販売する「ドレスシャツ」(以下「本件使用商品」という。)に限るものとさ
れている。
  被告(被請求人)提出の証拠から認められる事実を総合すると,カーク社
は,帝人との間で締結した本件契約に基づき,品番「ME3312503」の本件
使用商品に関し,2001年(平成13年)2月5日に上海昭文工貿発展有限公司
に対し,本件使用商品に付されるラベル,織りネーム等を各1万8480枚発注
し,当該ラベル,織りネーム等を「錦超」に出荷させることを指示したこと,当該
ラベルには別紙の(1)の商標(以下「ラベル商標」という。),織りネームには別紙
の(2)の商標(以下「織りネーム商標」といい,ラベル商標と併せて「本件使用商
標」という。)が表示されていること,一方で,カーク社は,同年2月2日ころ,
「錦超」に対し,本件使用商品1万8480枚を加工指図書に基づいて製造するよ
う依頼したこと,そして,同年5月9日ころ,上記ラベル,織りネームを付し,本
件使用商品の1万7632枚が,香港所在の「KIRK(H.K.)CO.,LT
D.」(カーク(H.K.)カンパニー・リミテッド)を介してカーク社に引き渡
されたことが推認される。そして,本件使用商品を包装するビニール製包装用袋に
は本件使用商標及び「形態安定シャツ」の文字が表示されている。
  そうすると,本件商標の通常使用権者であるカーク社は,本件審判の請求
の登録日(平成14年7月3日)前3年以内に日本国内の市場において取引する目
的をもって,本件使用商品に本件使用商標を使用したものということができる。
  (2) 本件使用商標が本件商標と社会通念上同一の商標であるか否かについて
 ア 本件商標は,前記のとおり,「メンデル」の片仮名文字と「MENDE
L」の欧文字を上下2段に横書きしてなるものであり,その構成中の片仮名文字部
分は,欧文字部分の読みを表したと理解される程度のものであって,これより「メ
ンデル」の称呼が生ずることが明らかである。また,「MENDEL」の文字部分
からは,「メンデルの法則」を発見したオーストリアの植物学者が想起されるもの
である。
 イ 本件使用商標の要部は,ラベル商標及び織りネーム商標のいずれも「M
ENDEL」の文字部分であり,これにより「メンデル」の称呼が生ずるものであ
り,「メンデルの法則」を発見したオーストリアの植物学者が想起されるものとい
える。
 ウ したがって,本件使用商標は,本件商標と呼称,観念を同じくするもの
であるから,本件商標と社会通念上同一の範囲内の商標と認められる。
  (3) 以上のとおりであるから,被告(被請求人)は,本件商標の通常使用権者
であるカーク社が本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,本件商標
と社会通念上同一と認められる商標を本件商標の指定商品中の本件使用商品に使用
していたことを証明したというべきである。
したがって,本件商標は,商標法50条の規定により,その登録を取り消
すことはできない。
第3 当事者の主張
1 原告の主張
(1) 本件商標の不使用
 ア 通常使用権者は,商標の通常使用権の設定行為で定めた範囲内におい
て,指定商品について登録商標を使用する権利を有するものであり,設定行為で定
めた範囲外については,通常使用権に基づく使用とはいえない。商標法50条1項
に基づく取消審判における「使用」の要件を満たす行為は,通常使用権者の使用に
ついては,その設定行為で定めた範囲内でのみ認められるべきものである。
 イ 日本国内での販売の有無
  本件契約において,カーク社の通常使用権の範囲は,カーク社が製造・
加工し日本国内で販売する商品に限られている(2条)。
  しかし,カーク社は,本件審決の認定するように,上海昭文工貿発展有
限公司に対し,本件使用商品(ドレスシャツ)に付されるラベル,織りネーム等を
各1万8480枚発注するなどしているが,本件使用商品を日本国内で販売した事
実はない。
  したがって,仮にカーク社が本件使用商標を使用したものとしても,本
件契約に基づく通常使用権の範囲外であり,商標法50条1項にいう「使用」には
当たらない。
 ウ 本件使用商標の使用期間
  また,本件契約において,カーク社の通常使用権の有効期間は,平成1
3年3月1日から平成16年2月末日までと限られている(10条)。
  しかるに,本件審決の認定するとおり,カーク社が上海昭文工貿発展有
限公司に対し,本件使用商品に付されるラベル,織りネーム等を各1万8480枚
発注し,また,カーク社が「錦超」に対し,本件使用商品1万8480枚を加工指
図書に基づいて製造するよう依頼したのは,いずれも2001年(平成13年)2
月であり,したがって,かかる発注及び加工指示を行ったことについては,カーク
社の上記通常使用権の有効期間外の行為であり,商標法50条1項に該当するかど
うかの判断の対象外である。
  (2) 本件使用商標が本件商標と社会通念上同一の商標といえるか否か
ア 本件使用商標は,本件商標と社会通念上同一の商標ではない。
   すなわち,本件商標は,「メンデル」の片仮名文字と「MENDEL」
の欧文字を上下2段に横書きしてなるものである。
   これに対し,本件使用商標は,①「MENDEL」の欧文字,②これら
の文字の並ぶ方向と平行に文字の上下に1本ずつ合計2本記された細線であって,
これらの文字の横幅よりも若干長い細線,及び③これらの文字と重なる位置に前記
細線と直交する方向に記された合計8本の太線であって,これらの文字の縦幅より
も長い太線によって構成されており,これらの文字と線から成る各構成要素は,ま
とまりよく配されており,全体が図案化した一つの商標として成立している。
   このような図案化された本件使用商標は,本件商標と類似する商標とい
うことはできても,外観上同一視することはできず,本件商標と「同一」ないし
「社会通念上同一」の商標ということはできない。
 イ したがって,カーク社が使用する本件使用商標は,本件商標と社会通念
上同一の商標ではない。
  (3) 以上より,本件においては,本件審判請求の登録前3年以内に日本国内に
おいて,商標権者又は通常使用権者等が本件商標をその指定商品のいずれかについ
て使用していたことの証明はなされていない。
2 被告の主張
本件商標については,本件審判の請求の登録前3年以内に,本件商標の通常
使用権者がその指定商品について使用したことが被告により証明されており,した
がって,本件商標は,商標法50条1項の要件に該当するものではない。
(1) 本件使用商標の使用について
   ア 本件商標権の通常使用権者であるカーク社が,本件使用商標を表示した
「ラベル」,「織りネーム」が付され,本件使用商標が表示された「包装用袋」に
包装された本件使用商品(ドレスシャツ)を,日本国内において,本件審判の請求
の登録前3年以内に販売したことは合理的に認められ,本件審決のこの点に関する
認定に誤りはない。
 イ 通常使用権の有効期間内の使用について
     原告は,上記ラベル,織りネーム等の発注の日付け及び加工指図書の発
行の日付けが本件契約に基づく通常使用権の有効期間外であるから,カーク社がか
かる発注及び加工指示を行ったことについては,商標法50条1項 にいう「使
用」に該当するかどうかの判断の対象外である旨主張する。
   しかし,本件審決の判断するとおり,一般的に,商標の使用許諾に関す
る契約を締結した場合に,商標使用者の取扱いに係る商品に使用許諾を受けた商標
を使用するには,本件のように,当該商標を表示したラベル,織りネーム等の発
注,使用に係る商品の生産等の依頼をし,その商品に当該商標を表示して販売する
までには相当に準備期間を要するものであるところ,上記有効期間前に上記ラベル
等の発注や上記商品の製造をしたことをもって,上記判断の対象外であるとする原
告(請求人)の主張は,取引の実情を無視したものであり,失当といわざるを得な
い。
なお,カーク社が販売した本件使用商品(上記ラベル,織りネームが付さ
れたもの)は2001年(平成13年)5月9日に輸入され,同年6月6日に出荷
され,本件使用商品についての売上伝票は同年6月10日に発行されている。
     よって,本件使用商標がカーク社により上記通常使用権の有効期間内に
使用されたことは明白である。
(2) 本件使用商標と本件商標との社会通念上の同一性
    本件使用商標は,「MENDEL」の文字と図形とからなるものである
が,図形部分は背景的なものであって,中央に大きく書された「MENDEL」の
文字部分に比べ看者に強い印象を与えるものとはいえないから,本件使用商標の要
部は「MENDEL」の文字部分にある。
    そうすると,本件使用商標は,その要部である「MENDEL」の文字部
分より「メンデル」の称呼が生ずるものであって,「メンデルの法則」を発見した
オーストリアの植物学者が想起される。したがって,本件使用商標は,本件商標と
称呼,観念を同じくするものであるから,たとえ多少の外観上の差異があるとして
も,本件商標と社会通念上同一の範囲内の商標と認められる。
    この点に関する本件審決の認定は正当である。
第4 当裁判所の判断
1 商標法50条によれば,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用
使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての登録商
標の使用をしていないときは,何人も,その指定商品等に係る商標登録を取り消す
ことについて審判を請求することができ,同審判請求があった場合においては,そ
の審判請求に係る指定商品等についてその登録商標の使用をしていないことについ
て正当な理由があることを被請求人が明らかにした場合を除き,その請求の登録前
3年以内に日本国内において商標権者等のいずれかがその請求に係る指定商品等の
いずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り,
その指定商品等に係る登録商標は取消しを免れないとされている。そして,同条1
項は,同条にいう「登録商標」の使用には,「書体のみに変更を加えた同一の文字
からなる商標,平仮名,片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するもので
あって同一の称呼及び観念を生ずる商標,外観において同視される図形からなる商
標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標」の使用を含む旨規定
している。
   なお,商標とは,標章,すなわち文字,図形,記号若しくは立体的形状若し
くはこれらの結合又はこれらと色彩の結合であって,業として商品を生産し,証明
し,又は譲渡する者がその商品について使用をするもの等をいい(商標法2条1
項),また,商標法で標章について「使用」とは,商品又は商品の包装に標章を付
する行為,商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し,引き渡し,譲渡若し
くは引渡しのために展示し,又は輸入する行為等をいう(同条3項(平成14年法
律第24号による改正前のもの))とされている。
   本件の争点は,本件商標の通常使用権者であるカーク社が,本件審判請求の
登録(平成14年7月3日)前3年以内に本件商標の指定商品に該当すると認めら
れる使用商品(ドレスシャツ)について,本件商標を使用していたと認められるか
否かである。そこで,以下この点に関して判断する。
 2 本件商標の使用の有無について
  (1) 証拠(甲2,4,5,6の(1),(2),乙2,5ないし10,11の(1)な
いし(3),12の(1)ないし(3))及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められ
る。
 ア カーク社は帝人から本件商標の通常使用権の許諾を受け,被告は帝人か
ら使用権許諾者としての地位を承継したものであるところ,本件契約において,そ
の通常使用権の範囲は,カーク社が,製造,加工し日本国内で販売する本件使用商
品(ドレスシャツ)に限るものとされている。
 イ カーク社は,2001年(平成13年)2月2日付け加工指図書によ
り,「錦超」に対し,品番「ME3312503」,ブランド「MENDEL」,
混率「ポリエステル65 綿35」の本件使用商品を,納期を同年4月20日とし
て,合計1万8480枚加工するよう依頼した。
   ウ カーク社は,2001年(平成13年)2月5日付け発注書により,上
海昭文工貿発展有限公司に対し,本件使用商品に付される,商標を「MENDE
L」,品番を「ME3312503」とする「織りネーム」,「下げ札」(ラベル
を意味するものと認められる。),「洗濯絵表示(2B-2)」等を,納期を同年
3月10日(出荷),出荷先を「錦超」として,それぞれ1万8480pcs.ずつ発
注した。
この「織りネーム」には織りネーム商標が表示され,「下げ札」(ラベ
ル)にはラベル商標が表示されるものとされていた。
 エ 「錦超」は,上記織りネーム及びラベルが付された品番「ME3312
503」の本件使用商品(メンズシャツ(形態安定))を香港所在の「KIRK
(H.K.)CO.,LTD.」(カーク(H.K.)カンパニー・リミテッド)
に納品し,「KIRK(H.K.)CO.,LTD.」は,2001年(平成13
年)5月5日,カーク社に対し,上記の品番「ME3312503」の本件使用商
品1万7632枚を,中国上海から神戸に向けて船積みし輸出した。
 オ カーク社は,2001年(平成13年)6月,株式会社ダイエーから品
名「ME3312503」の本件使用商品の発注を受け,倉庫管理会社である株式
会社エコーセンターを通じ,上記商品を株式会社ダイエーの各店舗に向け出荷し
た。その内訳は,同年6月6日に合計2640枚,同月7日に合計3456枚,同
月8日に合計7248枚である。
カ カーク社は,品番「ME3312503」の本件使用商品について,ラ
ベル商標が表示されたラベルと織りネーム商標が表示された織りネームを付し,こ
れを本件使用商標が付されたビニール製包装用袋に包装して上記のとおり販売した
ものである。
(2) 前記(1)の認定事実によれば,本件商標の通常使用権者であるカーク社
は,2001年(平成13年)6月,本件使用商品に本件商標を付して,これを日
本国内で販売していたものと認められ,これに反する証拠はない。しかして,本件
使用商品が本件商標の指定商品に属することは明らかである。
 原告は,カーク社が上海昭文工貿発展有限公司に対し,本件使用商品に付
される上記ラベル,織りネーム等を各1万8480枚発注し,また,カーク社が
「錦超」に対し,本件使用商品1万8480枚を加工指図書に基づいて製造するよ
う依頼したのは,いずれも2001年(平成13年)2月であり,したがって,か
かる行為は,本件契約に基づく通常使用権の有効期間外の行為であり,商標法50
条1項にいう「使用」に該当するかどうかの判断の対象外である旨主張する。しか
しながら,本件商標を表示したラベル,織りネームが付された本件使用商品が完成
され,カーク社によりこれらが販売された時期は,上記通常使用権の有効期間内で
あるから,上記発注,加工指示の日が上記有効期間外の行為であったとしても,そ
のことは,本件商標がその通常実施権者であるカーク社により使用されたとの上記
認定を左右するものではない。
3 本件使用商標と本件商標との社会通念上の同一性の有無 
(1) 本件商標は,「メンデル」の片仮名文字と「MENDEL」の欧文字とを
上下2段に横書きしてなるものであるが,その構成のうち欧文字の「MENDE
L」の語は,英語読みで「メンデル」と発音するものと解されるところ,現在の我
が国における外国語使用の実情にかんがみれば,商標が欧文字等外国語で表示され
ている場合,その外国語は通常英語風の発音により称呼されるものと認められるか
ら,「MENDEL」の語も一般には「メンデル」と発音されるのが自然であると
考えられる。
    また,我が国において,「MENDEL」(メンデル)が,メンデルの法
則を発見した植物学者として広く知られていることは公知の事実であり,「MEN
DEL」の語は上記植物学者を想起させるものである。
    上記認定事実によれば,我が国において「MENDEL」の語は,一般の
取引者及び需要者には,「メンデル」と称呼され,また,メンデルの法則を発見し
たオーストリアの植物学者を想起させるものである。そして,本件商標は,「ME
NDEL」の欧文字が一般的に上記のとおりの称呼,観念を生ずるものであること
を前提に,「MENDEL」の語の上段にその一般的な称呼である「メンデル」の
文字を付加したものと認めるのが相当である。
(2)ア一方,本件使用商標のうちラベル商標は,別紙の(1)のとおり,「ME
NDEL」の文字,「YOURFAVORITEONEINMATERIAL/ANDDESIGN」の文字及び図
形を組み合わせた構成よりなるものであるところ,本件審決の認定するとおり,そ
の構成中の「YOURFAVORITEONEINMATERIAL/ANDDESIGN」の文字部分は,極めて
小さな文字で書かれ,その内容も,商品の品質を一般的に表現するにとどまるもの
であり,また,その図形部分も単なる背景であって,中央に大きく記載された「M
ENDEL」の文字部分と対比して取引者及び需要者に強い印象を与えるものとは
いえないから,ラベル商標の要部は「MENDEL」の文字部分にあると認めるの
が相当である。
   イ また,本件使用商標のうち織りネーム商標も,別紙の(2)のとおり,「M
ENDEL」の文字と図形を組み合わせた構成よりなるものであるところ,その図
形部分は単なる背景的なものであって,中央に大きく記載された「MENDEL」
の文字部分と対比して取引者及び需要者に強い印象を与えるものとはいえないか
ら,その要部は「MENDEL」の文字部分にあると認めるのが相当である。
   ウ そうすると,本件使用商標は,いずれもその要部である「MENDE
L」の文字部分より,「メンデル」の称呼が生ずるものであって,「メンデルの法
則」を発見したオーストリアの植物学者が想起されるものといえる。
  (3) 前記(1),(2)の説示から明らかなとおり,「メンデル」の片仮名文字と
「MENDEL」の欧文字とを上下2段に横書きしてなる本件商標と,本件使用商
標の要部である「MENDEL」とは,称呼,観念を同じくするものであり,外観
も類似していると認められるから,社会通念上,本件使用商標の使用は,本件商標
の使用と同一視できるものと認めるのが相当である。
4 以上によれば,本件商標の通常使用権者であるカーク社は,本件審判請求の
登録前3年以内に本件商標をその指定商品に属する本件使用商品に使用していたこ
とを証明したものというべきである。
   これと同旨の本件審決の判断は相当であり,原告が取消事由として主張する
ところは理由がない。
よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとお
り判決する。
 東京高等裁判所第3民事部
   裁判長裁判官北  山  元  章
  裁判官  青  栁     馨
   裁判官 沖  中  康  人
(別紙)

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