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平成31年(行ヒ)第97号公務員に対する懲戒処分取消等請求事件
令和2年7月6日第一小法廷判決
主文
原判決中上告人敗訴部分を破棄する。
前項の部分につき,被上告人の控訴を棄却する。
控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。
理由
上告代理人藤原正廣の上告受理申立て理由について
1本件は,兵庫県姫路市の市立中学校(以下「本件中学校」という。)の教諭
であった被上告人が,顧問を務める同校柔道部(以下,単に「柔道部」ということ
がある。)における部員間の暴力行為を伴ういじめの事実を把握しながら,受傷し
た被害生徒に対し,受診に際して医師に自招事故による旨の虚偽の説明をするよう
指示したこと等を理由に,任命権者である兵庫県教育委員会(以下「県教委」とい
う。)から停職6月の懲戒処分(以下「本件処分」という。)を受けたため,本件
処分は重きに失するなどと主張して,上告人を相手に,その取消しを求めるととも
に,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求める事案である。
2関係法令等の定め及び原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおり
である。
(1)アいじめ防止対策推進法8条は,学校及び学校の教職員は,当該学校に在
籍する児童又は生徒がいじめを受けていると思われるときは,適切かつ迅速にこれ
に対処する責務を有する旨を定めている。
また,同法12条は,地方公共団体は,その地域の実情に応じ,当該地方公共団
体におけるいじめの防止等のための対策を総合的かつ効果的に推進するための基本
的な方針を定めるよう努めるものとしており,これを受けて,上告人及び姫路市に
おいてそれぞれ基本方針が定められている。このうち兵庫県いじめ防止基本方針
は,「いじめを受けている児童生徒及び保護者への支援」として,「いじめを受け
ている児童生徒を守るとともに,心配や不安を取り除き,解決への希望や自分に対
する自信を持たせる。」などとしている。また,姫路市いじめ防止基本方針は,
「いじめの兆候を発見した時は,これを軽視することなく,早期に適切な対応をす
ることが大切である。いじめを受けている児童生徒の苦痛を取り除くことを最優先
に迅速な指導を行い,問題の解決に向けて学年及び学校全体で組織的に対応するこ
とが重要である。」などとしている。
イ地方公務員法29条1項は,職員が同法等に違反した場合(1号),職務上
の義務に違反し,又は職務を怠った場合(2号)及び全体の奉仕者たるにふさわし
くない非行のあった場合(3号)においては,これに対し懲戒処分として戒告,減
給,停職又は免職の処分をすることができる旨を定めている。また,同法32条
は,職員は,その職務を遂行するに当たって,上司の職務上の命令に忠実に従わな
ければならない旨を,同法33条は,職員は,その職の信用を傷つけ,又は職員の
職全体の不名誉となるような行為をしてはならない旨をそれぞれ定めている。
職員の懲戒の手続及び効果に関する条例(昭和38年兵庫県条例第31号。以下
「本件懲戒条例」という。)は,減給は,6月以下の期間,給料の月額の10分の
1以下に相当する額を給与から減ずるものとし(4条),停職は,その期間を6月
以下とし,停職者は,その職を保有するが職務に従事せず,停職の期間中いかなる
給与も支給されないものとしている(5条)。
なお,県教委は,懲戒処分についての処分基準を定めていない。
(2)ア被上告人は,昭和57年4月,上告人の公立学校教員に採用され,平成
20年4月,本件中学校に赴任して,教諭として保健体育の授業を担当するととも
に,柔道部の顧問を務めていた。本件中学校柔道部は,被上告人の指導の下,多く
の大会で優秀な成績を収め,全国優勝をしたこともあったため,入部を希望する生
徒は多く,親元を離れ,被上告人の教え子であったFの自宅に下宿して共同生活を
送りながら本件中学校に通う部員もいた。
イ柔道部員のA,B及びCは,平成27年4月,本件中学校に入学し,3年生
で同部の主力選手のD,2年生のEらと共に,F宅に下宿していた。D及びEは,
A,B及びCに対し,その入学当初から日常的に,自らの残した食べ物等を食べさ
せ,食べ切れずに嘔吐したら暴行を加える,手,足,腹等に香水をかけ,気化した
香水にライターで火を付ける,二の腕等をエアガンで撃つなどの暴力行為に及んで
いた。このほか,A,B及びCは,D及びEからそれぞれ個別に殴る,蹴るなどの
暴力を受けていた。
ウD及びEは,同年7月7日,本件中学校内において,柔道部の練習が始まる
前の午前7時頃から,こもごも,Aの顔面を殴り,長さ約1mの物差しでAの頭,
顔及び身体を10回以上たたき,平手で顔面を数回殴打したほか,みぞおちを数回
蹴るなどの暴行を加え,Aに全治1か月を要する胸骨骨折を含む傷害を負わせた
(以下,この事件を「本件傷害事件」という。)。
エ本件傷害事件の後,柔道部副顧問のG教諭に問いただされたAは,階段から
落ちたなどと説明したが,受傷状況等から虚偽と見抜かれ,D及びEから暴行を受
けたことを認めた。G教諭は,同日午前8時頃には被上告人に連絡し,被上告人と
共にAの受傷状況を確認した。被上告人は,Aを一旦下宿先に帰宅させた後,D及
びEから事情を聴取し,本件傷害事件の経緯と加害行為の詳細並びにA,B及びC
に対する継続的な暴力行為の内容をノートに記録した上,そのコピーをG教諭に渡
した。
オFの妻は,Aの様子を見て整形外科を受診させるべきであると考え,同日午
後3時頃にAを連れて本件中学校に赴いた。被上告人は,Aが受診することを了承
したが,A及びG教諭に対し,「階段から転んだことにしておけ。」と述べ,Aに
は「分かったな。」と念を押すとともに,懇意の医師に連絡すると告げた上,同医
師に電話をかけ,階段で転んだ生徒がこれから向かうと伝えた。Aは,同日午後5
時頃に受診し,A及びG教諭は,同医師に階段で転んでけがをした旨の説明をし
た。同医師は,Aの症状につき全治1か月を要する胸骨骨折と診断した。
カG教諭は,同日午後6時頃,学年全体の生徒指導担当の教諭に本件傷害事件
を報告し,H校長も同教諭から伝達された教頭を通じて報告を受けた。
本件中学校は,同月9日,本件傷害事件について姫路市教育委員会(以下「市教
委」という。)に報告するとともに,第1回校内いじめ対応会議を行った。
キ被上告人は,本件傷害事件の当日中に,A,D及びEの各保護者に連絡して
説明したほか,柔道部員を集めて本件傷害事件について伝え,翌日から同月18日
まで柔道部の練習を休みにし,練習再開後も,D及びEを練習に参加させず,校内
のトイレ掃除等の奉仕活動をさせた。また,被上告人は,A,B及びCの各保護者
に対し,本件傷害事件について報告し,このような事態を招いたことを謝罪した。
(3)アH校長及び教頭は,平成27年7月10日,被上告人に対し,本件傷害
事件の重大性等に鑑み,翌日に行われる中播地区総合体育大会にD及びEが出場す
ることを自粛するよう指導した。D及びEは同大会に出場しなかったが,本件中学
校柔道部が優勝し,兵庫県中学校総合体育大会(以下「県大会」という。)への出
場資格を得た。
イその後,H校長は,柔道部の保護者会,A,D及びEの各保護者との話合い
等において,今後の試合にDを出さないと発言したが,自身も柔道経験者であるA
の父が反対し,Dを試合に出してほしいと訴えた。H校長は,結局,Dの県大会へ
の出場を認め,本件中学校柔道部は同大会で準優勝し,近畿中学校総合体育大会
(以下「近畿大会」という。)への出場資格を得た。
ウH校長は,近畿大会に出場する選手としてDを登録することを一旦了承した
が,同月29日,市教委からDを近畿大会に出場させてはならないとの指示を受
け,被上告人に対し,職務命令として,Dを出場させないよう伝えた。これに対
し,被上告人は,県大会は出場できて近畿大会がなぜ出場できないのか,納得でき
ないなどと反発した。
被上告人は,同年8月4日,上記職務命令に従わず,近畿大会の団体戦にDを出
場させ,本件中学校柔道部が優勝した。G教諭から報告を受けてこのことを知った
H校長は,被上告人に対し,Dを出場させたのは残念である旨を伝えたが,被上告
人は,いじめであれば何でも出場辞退させるのか,処分や指導は覚悟の上だ,自分
は命懸けでやっているなどと抗議した。
(4)ア被上告人が本件中学校に赴任した後,柔道部のために,卒業生や保護者
等から洗濯機,乾燥機,冷蔵庫,トレーニング機器等(以下「本件物品」とい
う。)が寄贈され,校内に設置されていたほか,地元企業からはトレーニングハウ
スが寄贈されたが,平成24年4月に本件中学校に赴任したH校長は,当時は学校
運営に支障がないと判断し,被上告人に撤去を求めることはなかった。
イH校長は,平成26年12月以降,被上告人に対し,本件物品の撤去を複数
回指示したが,被上告人はその後も新たな物品を搬入した。被上告人は,寄贈者に
説明して了解を得るため平成27年9月頃まで撤去を待ってほしい旨及び校長から
も寄贈者に説明をしてほしい旨を申し出たが,H校長はこれに応じなかった。H校
長は,本件傷害事件後も複数回にわたり撤去を指示したが,洗濯機1台が撤去され
ただけであった。
ウ市教委は,その後,本件物品及びトレーニングハウスにつき学校の備品とし
て認められない物として指摘し,教育長は,同年10月20日付けで,施設管理に
係る改善指示書をH校長に交付した。被上告人は,同指示書において期限とされた
同年11月20日までに本件物品及びトレーニングハウスを撤去した。
(5)県教委は,相応の処分を求める旨の市教委からの内申を受け,平成28年
2月23日,地方公務員法29条1項及び本件懲戒条例5条の規定により,懲戒処
分として被上告人を同月24日から6月間停職とする旨の本件処分をした。被上告
人に交付された処分説明書には,懲戒理由として,被上告人が以下の行為をした旨
の記載がある。
平成27年7月7日,顧問を務める柔道部の部員間の暴力行為を伴ういじめの事
実を把握しながら,被害生徒の受診時に「階段から転んだことにしておけ。」と,
虚偽の説明をするよう指示し(以下,このことを「本件非違行為1」という。),
同年8月4日,加害生徒の近畿大会への出場を禁止する旨の校長の職務命令に従わ
ず同生徒を出場させた(以下,このことを「本件非違行為2」という。)。また,
部活動で使用していた校内の設置物に係る校長からの繰り返しの撤去指示に長期間
対応しなかった(以下,このことを「本件非違行為3」という。)。
(6)市教委は,平成28年4月1日,被上告人について,姫路市の他の市立中
学校への配置換えをした。被上告人は,本件処分に係る停職期間が満了する前の同
年6月30日をもって辞職した。
3原審は,上記事実関係等の下において,要旨次のとおり判断し,本件処分の
取消請求を認容するとともに,国家賠償請求を一部認容した。
(1)アAを診察した医師が,A及びG教諭による虚偽の説明をたやすく信用し
たとは考え難く,これによりAが適切な治療を受けられなかったという事情も認め
られない。また,被上告人が,G教諭に対し,本件傷害事件についてH校長等に報
告することを妨げるような行動をとったなどの事情は認められず,本件非違行為1
は,本件中学校としての組織的対応に支障を来す結果をもたらすものではなかっ
た。そうすると,本件非違行為1の悪質性の程度がそれほど高いとはいい難い。
イ本件非違行為2については,一旦はDの近畿大会への出場を認めながらこれ
を撤回したH校長の一貫性を欠く指示に容易に納得できなかった被上告人の心情に
も理解し得る側面がないではない。また,被上告人には3年生のDにとって最後の
大きな大会となる近畿大会には出場させてやりたいとの思いもあったこと,被害生
徒であるAの保護者等がDの出場を支持していたこと等,酌むべき事情もある。
ウ本件非違行為3については,本件物品を撤去するには寄贈者らに対する説明
等が必要であり,直ちに撤去することは困難であったといい得る上,被上告人から
寄贈者に対する説明等を行うことを求められながらこれに応じようとしなかったH
校長の対応にも問題があるなど,被上告人にも酌むべき事情がある。
(2)県教委は,懲戒処分についての処分基準を定めないまま,処分を11段階
(減給及び停職については各3段階のみ)に画一的に区分して,何らかの加重をす
る場合には直ちに上位に区分する方法を採っており,このような方法が合理的であ
るとはいい難い。そして,本件非違行為1は減給が相当であり,これにそれぞれ戒
告が相当である本件非違行為2及び3を併合し,かつ,被上告人には生徒への体罰
により減給(10分の1)1月の懲戒処分を受けた前歴があることを勘案しても,
減給よりはるかに重い処分である停職を選択すること自体,社会通念上裁量権の範
囲を逸脱するものというほかなく,まして,免職に次いで重い停職6月とすること
が,県教委の合理的な裁量の範囲内にあるものとは考えられない。
4しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次
のとおりである。
(1)公務員に対する懲戒処分について,懲戒権者は,諸般の事情を考慮して,
懲戒処分をするか否か,また,懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択するかを
決定する裁量権を有しており,その判断は,それが社会観念上著しく妥当を欠いて
裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したと認められる場合に,違法となるもの
と解される(最高裁昭和47年(行ツ)第52号同52年12月20日第三小法廷
判決・民集31巻7号1101頁,最高裁平成23年(行ツ)第263号,同年
(行ヒ)第294号同24年1月16日第一小法廷判決・裁判集民事239号25
3頁等参照)。
(2)アAは,柔道部の上級生であるD及びEによる継続的ないじめの被害に遭
い,さらに,本件傷害事件により明らかな傷害を負うに至っている。ところが,被
上告人は,本件中学校の教諭及び柔道部の顧問として,同事件を機にこれらの事実
を把握しながら,A及びG教諭に対し,受診に際して医師に自招事故によるもので
あるとの事実と異なる受傷経緯を説明するよう指示した上,自らも医師に連絡して
虚偽の説明をするなどしている。このような被上告人の言動は,柔道部が大会を目
前に控えている状況の下,その活動に支障を生じさせないため,主力選手らによる
不祥事が明るみに出ることを免れようとする意図をうかがわせ,A及びG教諭に
は,部員又は副顧問としてこれに沿った行動をとるよう命ずるものと受け取られる
ものである。このことは,被害生徒であるAの心情への配慮を欠き,また,G教諭
が校長等に報告することを暗に妨げるものともいうことができるのであって,いじ
めを受けている生徒の心配や不安,苦痛を取り除くことを最優先として適切かつ迅
速に対処するとともに,問題の解決に向けて学校全体で組織的に対応することを求
めるいじめ防止対策推進法や兵庫県いじめ防止基本方針等に反する重大な非違行為
であるといわざるを得ない。さらに,Aは重い傷害を負っていたのであるから,医
師による適切な診断及び治療を受ける必要があったが,被上告人の上記言動は,医
師に実際の受傷経緯が伝えられることを妨げ,誤った診断や不適切な治療が行われ
るおそれを生じさせるものであったというべきである。結果的に,Aが誤った診断
等をされることはなく,また,G教諭が報告したことにより本件中学校等における
組織的な対応に支障が生ずることはなかったとしても,被上告人の上記言動が重大
な非違行為であることが否定されるものではない。
このように,被上告人による本件非違行為1は,いじめの事実を認識した公立学
校の教職員の対応として,法令等に明らかに反する上,その職の信用を著しく失墜
させるものというべきであるから,厳しい非難は免れない。
イまた,本件傷害事件やそれまでの一連のいじめにおけるDの行為は重大な非
行であり,そのような行為に及んだDについて,教育的見地から,柔道部員として
対外試合に出場することを禁ずることは,社会通念に照らしても相当であって,こ
のことは,近畿大会が3年生のDにとって最後の大きな大会となることや,被害生
徒であるAの保護者等がDの出場を支持していたことを考慮しても異ならない。し
たがって,H校長がDを近畿大会に出場させないよう被上告人に命じたことは,職
務命令として正当であったというべきであり,これに従わずDを同大会に出場させ
た被上告人による本件非違行為2は,本件傷害事件等の重大性を踏まえた適切な対
応をとることなく,校長による職務命令に反してまで柔道部の活動や加害生徒であ
るDの利益等を優先させたものであって,その非違の程度は軽視できない。
ウさらに,本件非違行為3は,柔道部が優秀な成績を挙げるために,学校施設
の管理に関する規律や校長の度重なる指示に反したものであり,本件非違行為1及
び2と共に,生徒の規範意識や公正な判断力等を育むべき立場にある公立学校の教
職員にふさわしくない行為として看過し難いものといわざるを得ない。
エ以上のとおり,本件処分の理由とされた一連の各非違行為は,その経緯や態
様等において強い非難に値するものというほかなく,これが本件中学校における学
校運営や生徒への教育,指導等に及ぼす悪影響も軽視できない上,上告人や姫路市
の公立学校における公務への信頼をも損なわせるものであり,非違行為としての程
度は重いといわざるを得ない。他方で,原審が被上告人のために酌むべき事情とし
て指摘する点は,必ずしもそのように評価できるものではなく,これを殊更に重視
することは相当でないというべきである。
(3)県教委は,懲戒処分についての処分基準を定めておらず,処分を11段階
に区分し,減給及び停職については各3段階としているというのであるが,そのこ
とにより適切な処分の量定の選択が妨げられるものということはできない。また,
上告人の主張するように,本件非違行為1を最も重大なものとしてその処分の量定
を選択した上,本件非違行為2及び3の存在等を加重事由として最終的な処分の量
定を決定することも,それ自体が不合理であるとはいえない。
そして,本件処分は,本件懲戒条例の下では免職に次ぐ相当に重い処分であり,
また,処分の量定に関する上告人の主張には,個々の加重事由の考慮方法が形式的
に過ぎるなど,直ちに首肯し難い点もあるものの,前記のような一連の各非違行為
の非違の程度等を踏まえると,被上告人に対する処分について,県教委が停職6月
という量定を選択したことが,社会観念上著しく妥当を欠くものであるとまではい
えず,県教委の判断が,懲戒権者に与えられた裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを
濫用したものということはできない。
(4)以上によれば,本件処分が裁量権の範囲を逸脱した違法なものであるとし
た原審の判断には,懲戒権者の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った違法がある
というべきである。
5以上のとおり,原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の
違反がある。論旨は理由があり,原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。そし
て,前記事実関係等の下においては,本件処分にその他の違法事由も見当たらず,
被上告人の請求はいずれも理由がないというべきであり,これらを棄却した第1審
判決は正当であるから,上記部分につき被上告人の控訴を棄却すべきである。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官木澤克之裁判官池上政幸裁判官小池裕裁判官
山口厚裁判官深山卓也)

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