弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
原判決を次のとおり変更する。
控訴人に対し被控訴人Aは金一万六六六六円、被控訴人Bは金三万三三三三円、
および、それぞれ右金員に対する昭和二四年一一月一〇日以降支払済みに至るまで
年五分の割合による金員を支払うことを命ずる。
控訴人に対し被控訴人Aは金二万円、被控訴人Bは金四万円、および、それぞれ
右金員に対する昭和二四年一一月一〇日以降支払済みにいたるまで年五分の割合に
よる金員を支払うことを命ずる。
控訴人その余の請求を棄却する。
訴訟費用中被控訴人A、同Bに関する分は第一、二審を通じてこれを十二分し、
その一づつを右各被控訴人の負担、その余を控訴人の負担とし、被控訴人C、同
D、同Eに関する分は第一、二審とも控訴人の負担とする。
この判決は、被控訴人A、同Bに関する控訴人勝訴部分に限り、控訴人において
房江に対しては金一万二〇〇〇円、多恵に対しては金二万四〇〇〇円の担保を供す
るときは、それぞれ仮に執行することができる。
         事    実
 控訴人は「原判決を取消す。控訴人に対し被控訴人Aは金一九万一六六五円、被
控訴人Bは金三八万三三三二円、被控訴人Cは金一万六六六六円、被控訴人Dは金
三万三三三三円、被控訴人Eは金六万円、および、それぞれ右金員に対する昭和二
四年一一月一日以降完済に至るまで年五分の割合による金員を支払うことを命ず
る。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人等の負担とする。」との判決並びに仮執行
の宣言を求め、被控訴人A、同B、同C、同D訴訟代理人および被控訴人Eはそれ
ぞれ「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求め
た。当事者双方の事実上の陳述並びに証拠の提出、援用、認否は、控訴人において
「控訴人は医を業とするもので訴外亡F、同G及び被控訴人Eとは単に診療上知合
つた間柄にすぎず、本件金員も株式会社三井銀行(当時帝国銀行)勤務の訴外Hの
紹介と懇願とにより貸付けたものであり、殊に右Fは近畿鉄道(当時関西急行)株
式会社の塗装部勤務と称していたので同人がペンキ塗装業をいとなんでいたことは
全く知らなかつたものである。」と述べ原審における被告本人H(同人に対しては
控訴取下げ)、被控訴本人A(いずれも第二回)及び控訴本人の供述を援用すると
述べ、被控訴人Eにおいて、同被控訴人は昭和二四年九月当時は玩具卸商であつた
と述べ、原審における同被控訴本人の供述を援用したほかは、いずれも原判決事実
摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。
         理    由
 第一、請求原因一及び四について、
 当裁判所は、請求原因一の訴については原判決理由一枚目表一二行目以下二枚目
表一一行目までに記載せられたのと同一の理由、また請求原因四の訴については原
判決理由四枚目裏一四行目以下五枚目裏一行目までに記載せられたのと同一の理由
により、いずれも控訴人の請求は失当であると考えるのでここに右判決理由を引用
する。
 第二、請求原因二について、
 一、 訴外Gが昭和二九年二月二七日死亡し、被控訴人C、同Dが相続したこ
と、および、訴外Fが昭和二八年九月二一日死亡し被控訴人A、同Bが相続したこ
とはいずれも当事者間に争いがない。
 二、 控訴人は訴外Gが昭和二四年一〇月五日控訴人より金五万円を借受けその
交付をうけたと主張するが本件全証拠によつてもこれを認めることはできない。も
つとも原審における控訴本人の供述によれば、訴外Fが右日時頃Gの代理人と称し
て控訴人方を訪れ同人に対し、自分が連帯保証人になるから右Gに金五万円を利息
月三分、弁済期同日より一ケ月後の約旨で貸してやつて欲しい旨申出たので控訴人
はこれを承諾し即日金五万円をFに交付したことが認められるがFがGより右代理
権を付与されていたと認むべきなんらの証拠もない。したがつて控訴人がGとの間
に右消費貸借が成立したことを前提としてその相続人たる被控訴人C、同Dに対し
てなす本請求はその理由がないものというべきである。
 <要旨>三、 よつて右事実にもとずく被控訴人A、同Bに対する請求につき考え
るのに、他人の代理人として金銭消費貸借契約をなし且つ自らその連帯保証
をする旨約した者は特段の事情なき限り相手方に対し、右代理権がなかつたことを
理由として、相手方と本人との間に右金銭消費貸借が成立せず、したがつて自らの
連帯保証債務もまた成立しなかつたものであると主張しえない関係にあると解する
のが相当である。けだし、このことは無権代理行為が故意になされた場合について
は、相手方に責むべき点がない限り、信義誠実の原則上当然であるのみならず、過
失により右代理権ありと信じ又は単に代理権を証明しえない場合についても、連帯
保証債務は附従性の有無の点を除いては主債務と同一内容の債務であり、且つ民法
第一一七条によれば無権代理人は、同条第二項の特別の場合を除き、相手方の請求
により自ら履行の責に任ずる地位にあるのであるから右附従性を理由として自ら負
担することを約した債務の成立を否認することをえないと解するのを相当とするか
らである。而して本件において右特段の事情は認められないから被控訴人A、同B
はFの相続人として同人が前記行為により控訴人に対し負担した債務をその相続分
に応じ履行すべき義務があるといわなければならない。而して右相続分は、AがF
の妻でありBが子であることは同被控訴人等において明らかに争わないのでこれを
自白したものと看做すべくよつてAについては三分の一、Bについては三分の二で
あり、したがつて、控訴人が同被控訴人等に対し本件貸金五万円及びこれに対する
弁済期後である昭和二四年一一月一〇日以降支払済みに至るまで約定利率の範囲内
である年五分の割合による遅延損害金をそれぞれ三分の一及び三分の二づつ支払う
ことを求める本請求はその理由あるものというべきである。
 第三、請求原因三について、
 一、 控訴人は被控訴人Eが昭和二四年九月八日頃控訴人より金六万円を借受け
その交付をうけたと主張するが、本件全証拠によつてもこれを認めることはできな
い。もつとも原審における控訴本人の供述によれば、訴外Fが右日時頃被控訴人E
の代理人と称して控訴人方を訪れ同人に対し、自分が連帯保証人になるから右被控
訴人に金六万円を利息月三分、弁済期同日より一ケ月後の約旨で貸してやつて欲し
い旨申出たので控訴人はこれを承諾し即日金六万円をFに交付したことが認められ
るが、Fが被控訴人Eより右代理権を付与されていたと認めるに足る証拠はなく、
かえつて原審における同被控訴本人の供述によれば同被控訴人がFに右代理権を付
与した事実はないことが認められる。すると、控訴人が被控訴人Eに対し同人との
間にその主張のごとき金銭消費貸借が成立したとしてなす本請求はその理由がない
ものというべきである。
 二、 よつて、右事実にもとずく被控訴人A、同Bに対する請求につき考えるの
に、当裁判所は前記第二の三に述べたのと同様の理由により同被控訴人等は控訴人
がFに交付した金員の支払義務を免れないと解するものであり、よつて控訴人が同
被控訴人等に対し本件貸金六万円及びこれに対する弁済期後である昭和二四年一一
月一〇日以降支払済みに至るまで約定利率の範囲内である年五分の割合による遅延
損害金を、被控訴人Aは三分の一、同Bは三分の二づつ支払うことを求める本請求
はその理由あるものとすべきである。
 以上の次第で本訴請求中控訴人主張請求原因一及び四にもとづく請求はいずれも
これを棄却し、同二及び三にもとづく請求は被控訴人C、同D、同Eに対する分は
棄却し被控訴人A、同Bに対する分は、いずれもこれを認容すべきであるから原判
決を右のとおり変更することとし民事訴訟法第八九条、第九六条、第九三条、第一
九六条にしたがい主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 加納実 裁判官 沢井種雄 裁判官 加藤孝之)

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