弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を原裁判所へ差戻す。
         理    由
 本件控訴の趣意は被告人Aの弁護人後藤吾郎並に被告人B及び同被告人の弁護人
近藤勝各提出にかかる控訴趣意書に記載の通りであるからここにこれを引用する。
 よつて記録を精査するに、原裁判所が被告人等に対する窃盗被告事件につき審理
を為し昭和三十一年六月四日その判決の言渡をしたことは原審第三回公判調書の記
載により明らかである。然るにその判決書を見出し得ないことは両弁護人所論指摘
の通りであり他に判決書が存在することを窺い知る何等の証左もないから原審に於
ては判決の言渡をしたのみで遂に判決書は作成されなかつたものと認めるの外はな
い。而して判決の言渡をしたときは地方裁判所家庭裁判所又は簡易裁判所に於ては
上訴の申立がなく且つ判決宣告の日から十四日以内に判決書の謄本の請求がない場
合にいわゆる調書判決となることができる以外判決書を作らなければならないこと
は刑事訴訟規則第二百十九条第五十三条の明定するところであるのみならず、判決
書の存在しないことに<要旨>より原審が果して如何なる内容の判決をしたのかこれ
を知ることができないのである。従つて原審が判決書を作成しなかつたこと
は訴訟手続に法令の違反があり且つその違反が判決に影響を及ぼすことが明らかで
あるから原判決は破棄を免れず弁護人の論旨は理由がある。
 よつて被告人Bの控訴趣意に対する判断を為すまでもなく原判決は刑事訴訟法第
三百九十七条第一項第三百七十九条によりこれを破棄し、同法第四百条本文により
本件を原裁判所に差し戻すことにする。
 よつて主文の通り判決する。
 (裁判長判事 坂本徹章 判事 塩田宇三郎 判事 渡辺進)

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