弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人本田由雄、同横田静造の上告趣意第一点について。
 しかし、賄賂罪における「職務」に関してなした原判決の解釈は正当であり、所
論引用の判例と相反する判断をしたものではない。論旨は理由がない。
 同第二点について。
 論旨中には、判例違反をいう部分があるが、原判決は、事実上及び法律上の判断
を加えた上、本件金二万円の交付がAの職務に関する不法な報酬であると断じた趣
旨であることが明らかであるから、原判決は、毫も論旨引用の判例と相反するもの
ではない。その余の論旨は、原判決は法令の解釈を誤り事実を誤認したものである
というに帰し、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。のみならず所論公団が、所論
輸入実務取扱業者に対し輸入実務委託契約上の権利を行使することは、一面におい
て私法上の権利行使であると同時に、他面において公団の法令上の権利行使である
と認められるとすることは、当裁判所が昭和二七年(あ)第四八七一号被告人A外
一名に対する贈収賄被告事件の判決中に説示したとおりである。又、公団と所論下
請業者との関係についても、下請業者は公団に対する輸入実務取扱業者の契約上の
義務に関する履行補助者であるから、輸入実務委託契約上公団と下請業者との間に
直接の法律関係を生ずるような特段の定がない場合でも、間接的には公団の輸入実
務委託契約上の権利に服するものというべく、従つて、所論Aが公団B支所棉花課
長として下請業者を監督指導することは同人の職務自体には属しないとしても、そ
の職務と密接な関係を有し同人の職務に関するものと解するを相当とすることも、
右判決に示されているとおりである。なお、原判決の維持した第一審判決挙示の所
論Aの検察官に対する第一回及び第三回各供述調書の各抄本(その余の所論謄本又
は抄本は、本件で証拠とされていない)並びにCの検察官に対する第一回供述調書
は、刑訴三二一条一項二号の要件を備えており、被告人の司法警察員に対する第一
回供述調書は、第一審で被告人がこれを証拠とすることに同意した書面であること
が窺われるから、同判決がこれらを証拠としたことに違法はない。されば論旨は、
いずれも採用に由なきものである。
 同第三点について。
 所論は、事実誤認、法令違反の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らな
い。また記録を調べても本件につき同四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
  昭和三二年二月二二日
     最高裁判所第二小法廷
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    池   田       克
 裁判長裁判官栗山茂、裁判官谷村唯一郎は各退官につき署名押印することができ
ない。
            裁判官    小   谷   勝   重

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