弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を広島高等裁判所に差戻す。
         理    由
 被告人本人の上告趣意は事実誤認乃至単なる法令違反の主張であつて上告適法の
理由とならない。
 弁護人依光昇の上告趣意は違憲をいうが、その実質は事実誤認乃至単なる法令違
反の主張に帰し刑訴四〇五条に定める上告理由にあたらない。
 案ずるに第一審判決は「被告人は昭和二十三年八月十六日頃山口県玖珂郡a町役
場において予ねて同町役場収入役Aが同町工事請負人Bから同町の土木委員その他
町会議員等顔役の人に対する慰労金として金五千円を受取りこれを同町役場収入役
補助員Cをして保管させていたのであるが、右金員を引出すについて予め同町土木
委員長D及び同町会議長E等の諒解を得て居らないのに右Cに対して『自分はD、
Eの諒解を得ているから五千円を渡して貰いたい』旨申欺いて同人をしてその旨誤
信させ因つて即時同人から現金五千円の交付を受けて騙取したものである。」と判
示して被告人に対し刑法詐欺罪に関する規定を適用して有罪の判決をしたのである
が、右の判示事実だけでは詐欺罪が成立するものと断ずることは出来ない。蓋右D、
E両名の諒解を得なければ右金員を引出すことが出来ない場合、或は少くとも右の
諒解が無ければ右Cは本件金員の交付をしなかつたであろうとの事実が無ければ、
被告人が判示の如き詐言を弄したとしてもそれだけで詐欺罪が成立するものではな
いからである。そして原審における控訴趣旨においては右の点を指摘して(控訴趣
旨における字句は右とは異るけれども右の点を指摘して居ることは間違いない)第
一審判決の理由不備を主張して居るのであるからその主張は正に理由があり、原審
はこの点について第一審判決を破毀して差戻判決をするか或は自ら右の点について
事実の取調をしなければならなかつた筈である。しかるに原審は右理由不備の主張
に対し「原判示事実により、a町収入役Aが工事請負人Bから、同町の土木委員、
町会議員等の一部に対する慰労金として金五千円を受取り、収入役補助員Cに保管
させていたこと、被告人が右金員をCから受取るにあたり、同町土木委員長D、町
会議長Eの諒解をえていないのにこれらの者の諒解をえていると申欺いたことを知
りうる。これによれば右五千円の保管者は収入役でありその補助員であつて、その
金員の用途が土木委員、町会議員等に対する慰労であることから、右金員を引出す
為めにはその代表者である土木委員長D、町会議長Eにその了解が必要であつたも
のと認められる。原判文簡ではあるが、右D、Eの氏名の上にその肩書を記載して
右事実を表現しているものというべく、原判示金員と右両名との関係に所論のよう
な違法があるとはいえない。論旨は理由がない。」と判示して、これを一蹴したの
である。しかし第一審判決が「D、Eの氏名の上にその肩書(土木委員長、町会議
長)を記載した」ことで、右金員を引出すにD、Eの諒解が必要であつたとの事実
を表現したものとは到底認められないのみならず、前記原判示前段記載の様な事実
だけでD、E両名の諒解が無ければ引出すことが出来ないものであつたとの事実を
推断することは許されない。なおまた原判決においても「被告人はその結果工事請
負人Bの委託の趣旨には多少とも沿う方法を講じたものであり」と判示して居るの
であるが、これは如何なる事実を指すものであろうか。これがもし被告人の主張の
様に引出された金はBの委託の趣旨に沿うて使用されたということならば或はこの
点においても罪を構成しない場合(例えば不法領得の意思がないというが如き)で
あるかも知れない。要するに原判決は被告人の行為が罪を構成するか否かの鍵とな
るべき点につき審理不尽又は理由不備の違法あり、刑訴第四一一条を適用して破毀
すべきものといわなければならない。
 よつて刑訴四一一条一号四一三条本文に従い主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官全員一致の意見である。
  検察官 大場十郎出席
  昭和二九年八月二四日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    本   村   善 太 郎

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