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平成21年(あ)第2078号強盗殺人,同未遂被告事件
平成24年7月24日第三小法廷判決
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人三浦繁樹,同根本健三郎の上告趣意のうち,死刑制度に関して憲法13
条,31条,36条違反をいう点は,死刑制度が憲法のこれらの規定に違反しない
ことは当裁判所の判例(最高裁昭和22年(れ)第119号同23年3月12日大
法廷判決・刑集2巻3号191頁,最高裁昭和26年(れ)第2518号同30年
4月6日大法廷判決・刑集9巻4号663頁,最高裁昭和32年(あ)第2247
号同36年7月19日大法廷判決・刑集15巻7号1106頁)とするところであ
るから,理由がなく,その余は,事実誤認,単なる法令違反,量刑不当の主張であ
って,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
なお,所論に鑑み記録を調査しても,刑訴法411条を適用すべきものとは認め
られない。
付言すると,本件は,被告人が,共犯者と共謀の上,深夜,住宅街の路上に
おいて,帰宅途中の中国人女性留学生(当時24歳)からバッグを強奪し,逃走し
ようとした際,被告人を取り押さえようとした男性(当時34歳)に対し,被告人
において,殺意をもって,骨そぎナイフを下方から腹部に向けて1回突き上げ,左
大腿部切創の傷害を負わせ,その直後に,被告人を追い掛けてきた上記女性に対
し,殺意をもって,その胸部,腹部等を同ナイフで突き刺して失血死させ,そ
の約7年半後に,夜間,飲食店の入るビルの共同トイレにおいて,会社員の男性
(当時30歳)に対し,金品を強奪する目的で刃物を突き付けるなどして脅迫した
ところ,男性が応じなかったため,殺意をもって,その胸部等を数回突き刺して失
血死させた,という強盗殺人2件,同未遂1件の事案である。
被告人は,仕事を辞めて競馬等にのめり込み,怠惰な生活を送る中で,生活費や
遊興費に窮し,共犯者と強盗を計画しての犯行に及び,その後,逃亡,潜伏生活
の挙げ句,再び仕事を辞めて金銭に窮すると,又しても刃物を用いての強盗を決意
し,単独での犯行に及んでおり,各犯行の経緯及び動機に酌量すべき事情は認め
られない。いずれの犯行も,あらかじめ凶器を準備して金品を奪えそうな相手を物
色するなど,強盗については計画性が認められる上,その殺害態様は,残虐かつ冷
酷で,人命軽視の性向が顕著にみられる。何ら落ち度のない2名の被害者の生命を
奪い,1名の被害者に軽からぬ傷害を負わせたという結果は,誠に重大である。被
告人の凶行により最愛の娘や息子を奪われた両親らは,悲痛な心情を吐露し,その
処罰感情はしゅん烈である。また,被告人は,相当以前のものとはいえ,刃物等の
凶器を使った強盗致傷,強盗等の罪による前科を有しており,更生の可能性を見い
だすことは困難である。
そうすると,各殺害自体は計画的ではないこと,強盗目的を隠して虚偽の申告を
しているとはいえ,の犯行の1週間後に自ら警察に出頭し,その早期解明に寄与
していること,本件各犯行に及び被害者らを死亡又は負傷させたことについて被告
人なりに反省の態度を示し,被害者らやその遺族への謝罪の意思を表していること
など,被告人のために酌むべき事情を十分考慮しても,その刑事責任は極めて重大
であり,原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑は,当裁判所もこれを是認せざ
るを得ない。
よって,刑訴法414条,396条,181条1項ただし書により,裁判官全員
一致の意見で,主文のとおり判決する。
検察官大平泰公判出席
(裁判長裁判官寺田逸郎裁判官田原睦夫裁判官岡部喜代子裁判官
大谷剛彦裁判官大橋正春)

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