弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
本件即時抗告を棄却する。
理由
1本件即時抗告の趣意は,主任弁護人B及び弁護人Cが提出した即時抗告申立書に記載
されたとおりであるから,これを引用する。
所論は,要するに,弁護人は,検察官に対し,刑訴法316条の20に基づいて,○1被害者A
の人柄,生前の生活を述べた者,被害者Aからいじめを受けた者の供述録取書等,○2被害
者Aの人柄,生前の生活,被害者Aからいじめ等を受けたあるいは受けそうになった者が
いるかどうかについて聞き込みを実施した結果を記載した捜査報告書及び○3被害者Aの前
科前歴に関する捜査報告書について証拠開示の請求を行ったところ,検察官は,これらを
不開示としたので,原裁判所に対し,上記各書面の開示命令を求めて裁定請求申立てを行
ったところ,原裁判所は,弁護人の主張との関連性に乏しいなどとして棄却したが,原決
定は,余りに関連性を厳しくとらえすぎていて,公判前整理手続の制度目的に照らし広く
証拠開示を認めるという趣旨に反するものであるなどと主張して,原決定を取り消し,上
記各書面について開示命令を求める,というのである。
2しかしながら,記録を調査して検討すると,原決定の判断は相当として是認できる。
すなわち,弁護人は,被告人が,小学校4年生のころ,中学校1年生の被害者Aから受け
た性的暴力が本件各犯行の動機となり,その性的暴力によってPTSDの症状を呈していた,
被害者が平成13年に強制わいせつ罪で刑事裁判を受けたことを知って恨みが強まったなど
と主張しているところ,本件では,被害者Aとの関係では,被害者A殺害の計画性の有無
及び殺意の強さ,被告人がPTSDに罹患しているか,罹患しているとすれば責任能力の有無,
被告人がPTSDに罹患しているとすれば,それが犯行動機の形成に与えた影響の有無及び程
度が争点とされており,前記主張はこれらの前提事実に関するものであるが,上記のよう
な本件の争点や弁護人の主張内容からすれば,原決定説示のとおり,被告人が被害者Aか
ら受けた性的暴力の具体的な内容及び,特に,これに対する被告人のその当時及びその後
の成長過程をも通じた受け止め方が問題とされるのであり,被害者Aの生前の生活状況,
被告人以外の者に対するいじめ等の有無や内容は,○3の点を含め,被告人の受けた性的暴
力の態様,程度を推認させるものがあるとしても,関連性に乏しく,その年月の経過とも
併せみればなおさらであり,このような関連性の程度その他弁護人立証予定の被告人の防
御の準備のために当該開示をすることの必要性の程度,内容と,他方で,事柄の性質上,
当該開示によって生じるおそれがある関係者の名誉,プライバシーへの影響などの弊害の
内容,程度等を比較考量すると,開示が相当とは認められないから,原決定の判断は相当
として是認できる。
その他,所論が種々主張する点を踏まえて検討しても,上記判断を左右する点は認めら
れない。
3よって,本件即時抗告は理由がないから,刑訴法426条1項後段により,これを棄却す
ることとし,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官・田中亮一,裁判官・髙木順子,裁判官・小池健治)

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