弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人浜口重利の上告理由第一、二点について。
 賃借人が賃貸人の承諾を得ないで第三者をして賃借物を使用させた場合において
も、賃借人の当該行為が賃貸人に対する背信的行為と認めるに足らない特段の事情
がある場合においては、賃貸人は、民法六一二条二項により契約の解除をなし得な
いこと、当裁判所屡次の判例の趣旨とするところである(昭和二五年(オ)第一四
〇号同二八年九月二五日第二小法廷判決民集七巻九七九頁、昭和二八年(オ)第一
一四六号同三〇年九月二二日第一小法廷判決民集九巻一二九四頁、昭和二九年(オ)
第五二一号同三一年五月八日第三小法廷判決民集一〇巻四七五頁)。そして原審の
認定した一切の事実関係(殊に、本件賃貸借成立の経緯、本件家屋の所有権は上告
人にあるが、その建築費用、増改築費用、修繕費等の大部分は被上告人B1が負担
していること、上告人は多額の権利金を徴していること、被上告人B1が共同経営
契約に基き被上告人B2に使用させている部分は、階下の極く一小部分であり、こ
こに据え付けられた廻転式「まんじゅう」製造機械は移動式のもので家屋の構造に
は殆ど影響なく、右機械の取除きも容易であること、被上告人B2は本件家屋に居
住するものではないこと、本件家屋の階下は元来店舗用であり、右転貸に際しても
格別改造等を行なつていないこと等)を綜合すれば、被上告人B1が家屋賃貸人た
る上告人の承諾を得ないで被上告人B2をして本件家屋の階下の一部を使用させた
ことをもつて、原審が家屋賃貸人に対する背信的行為と認めるに足らない特段の事
情があるものと解し、上告人のした本件賃貸借契約の解除を無効と判断したのは正
当である。所論引用の判例は、本件と事情を異にし、本件に適切でない。論旨は、
理由がない。
 同第三点について。
 被上告人B1が上告人の承諾を得ないで被上告人B2をして賃借家屋の一部を使
用させていることが、本件の場合、上告人に対する背信的行為と認めるに足りない
特段の事情がある場合とみるべきこと、前記のとおりであるから、被上告人B2の
占有はこれを不法のものということはできないのであり、したがつて、原審が、被
上告人B2は右占有使用を上告人に対抗することを得るものと判断したのは結局正
当である。論旨は理由がない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助

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