弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を広島高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 被告人本人および弁護人藤野稔の各上告趣意は、事実誤認、単なる法令違反の主
張であり、弁護人鈴木惣三郎の上告趣意は、単なる法令違反の主張であつて、いず
れも刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。
 しかしながら、所論にかんがみ職権で調査すると、原判決は、以下に述べるとお
り、刑訴法四一一条一号により破棄を免れない。
 原判決が認定判示した犯罪事実は、「被告人は、昭和三八年一一月一七日ごろ、
広島市a町字bc、d番のe)A商店南側空地において、情を知らないBをして人
夫数名を使用させ、同地所在のC所有にかかるトタン葺平屋建倉庫二棟(一六坪お
よび一・五坪の各一棟)を取り壊させ、もつて他人の建造物を損壊したものである。」
というのであり、同判決は、右所為は緊急避難ないし自救行為にあたるとの被告人
の主張を斥け、刑法二六〇条前段を適用して被告人を有罪としたのであるが、自救
行為の点はしばらくおき、緊急避難の主張についてこれを斥ける理由として判示す
るところをみると、原判決は、証拠により、大要、「昭和三七年一〇月ごろ、Dは
被告人の経営するE株式会社から右土地を買い受け、その周囲に金網を張り、D所
有地なる立札をしたところ、Cが右土地を自己の所有であると主張し、右金網等を
撤去し、昭和三八年八月ごろ、右土地に本件トタン葺倉庫二棟を建設したので、被
告人は右Dから善後策を講ずるよう求められ、同年八月から一〇月までの間内容証
明郵便をもつてCや同人から右倉庫の建設を請け負つたFに対し再三右倉庫の撤去
を要求したが、同人らがこれに応じなかつたため、ついに自らこれを取り壊して撤
去しようと決意して本件所為に及んだ」ことが認められるとし、「右認定の事実に
徴し、被告人の右損壊行為が刑法三七条一項にいわゆる『自己又ハ他人ノ生命、身
体、自由若クハ財産ニ対スル現在ノ危難ヲ避クル為メ已ムコトヲ得サルニ出テタル
行為』に該当するものとはとうてい認め難」いというのである。
 ところで、右のごとき判示によつては、被告人の所為のいかなる点がいかなる理
由で刑法三七条一項の判示部分に該当しないとされたものであるのかを知ることが
できないのであるが、その趣旨を忖度するに、判文に照らし、判示Cの所為が同条
項にいう危難にあたらないとしたものというよりは、危難が現在せず、または被告
人の所為がやむをえないものでないというもののごとく解せられる。そして、本件
緊急避難の主張が、右倉庫建設による本件土地の不法占拠をもつて危難というもの
であるならば、その建設は既に終了している点において危難の現在性は失われてお
り、また土地の占有妨害排除のためには他に採るべき方法があつて、たやすく実力
行使に出た被告人の所為はいまだやむをえないものではないということもできよう。
しかしながら、本件において被告人が一審以来主張するところは、判示C、Fらの
所為は、被告人の経営する分譲地の一角に、名ばかりの「倉庫」を設け、これに暴
力団の看板を立てて不穏なふん囲気を醸成し、分譲地の売行きをそこね、既に契約
した者のうちにも解約する者を生じ、よつて被告人の会社を倒産の危機に瀕するに
いたらしめたもの、すなわち被告人の営業に対する威力業務妨害的行為であつて、
被告人は、かかる現在の危難を避けるため、やむなく本件所為に出でたに過ぎない、
というのであり、記録上、この主張にそうがごとき事情も、ある程度うかがわれな
いではなく、もし、被告人の主張するごとくであるならば、場合によつては、被告
人の所為が罪とならず、あるいはその刑を減軽免除すべきこともありうるところで
ある。
 してみれば、前記のごとく判示するのみで、たやすく被告人の緊急避難の主張を
斥けた原判決には、審理不尽、理由不備の違法があるに帰し、右違法が判決に影響
するこというまでもなく、これを破棄しなければ著しく正義に反するものと認める。
 よつて、刑訴法四一一条一号により原判決を破棄し、同法四一三条本文により事
件を原裁判所である広島高等裁判所に差し戻すこととして、裁判官全員一致の意見
で、主文のとおり判決する。
 検察官 木村喜和公判出席
  昭和四七年六月一三日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    坂   本   吉   勝
            裁判官    田   中   二   郎
            裁判官    下   村   三   郎
            裁判官    関   根   小   郷
            裁判官    天   野   武   一

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