弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人高岡次郎の上告理由第一点及び第二点について。
 上告人は、本訴において、訴外D或いは被上告人Bの所有と自陳する本件土地に
つき、耕作権ないし採草放牧権を有するとし、右権利の確認及び右権利に基く土地
の引渡を求めているのであるが、その理由は、専ら、右D及びBが上告人を世帯主
とする世帯の一員であるため、農地法第二条第五項により、上告人は右土地につき
所有権を有するものとみなされるというにある。
 しかし、農地法二条五項は、原判決も判示する如く、農地法の適用にあたつて「
自作」、「小作」の区別を要する場合に、これを決定する基準を定めたものに過ぎ
ないのであつて、右以外の場合でも、世帯員が所有権その他の権利を有する農地又
は採草放牧地であるというだけの理由で、当然世帯主がその土地につき所有権その
他の権利を有するものとみなすとの定めをしたものでないと解されるから、上告人
の本訴請求は主張自体失当たることを免れず、従つて原審が、農地法二条五項に関
する判断を示しただけで、それ以上、上告人主張事実の内容に立入つた判断を示さ
ずに上告人の請求を排斥したからといつて、なんらの違法は認められない。所論は
右法条に対する独自の見解を前提として原判決に所論の違法あるものの如くいうも
のであるから採用し得ない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    高   木   常   七
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    入   江   俊   郎

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