弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 弁護人小林右太郎及同豊川重助功の上告趣意第一点について。
 論旨第一に引用の諸判例はいずれも買収共謀者間において金員の授受があつた場
合についての判例である。然るに本件においては買収共謀の事実は第一審判決の認
定していないところである。そして論旨引用の証拠によつても必らずしも買収共謀
の事実を認定しなければならないものではないから所論は事実誤認の主張に帰し論
旨引用の判例は本件に適切でない。
 次ぎに論旨第二に引用の判例はいずれも投票買収の為め金員の交付を受けた選挙
運動者が更らに其の金員を他の選挙運動者又は選挙人に供与又は交付した場合につ
いての判例である。然るに本件で認定されている事実は第一審判決判示のとおりで
あつて、被告人等が投票買収の為め金員の交付を受けたものであることは認定され
ていないのである。さすれば論旨引用の判例は本件に適切ではなく、所論は結局事
実誤認の主張に帰し、適切な上告理由に当らない。
 同第二点について。
 諭旨は訴訟法違反、量刑不当の主張で適法な上告理由に当らない。
 弁護人三根谷実蔵及び同中村忠純の上告趣意第一点について。
 論旨は違憲をいうがその実質は単なる訴訟法違反の主張に過ぎないから適法の上
告理由に当らない。(原判決が違法でないことは当裁判所屡次の判例とするところ
である。昭和二六年(あ)第二九四三号、同二八年八月七日第二小法廷決定、集七
巻八号一六七九頁参照)。
 同第二点について。
 論旨は単なる訴訟法違反、事実誤認の主張であつて適法な上告理由に当らない。
 同第三点について。
 自白を補強する証拠は、これによつて自白の真実であることが肯認され得るもの
である限り、共同被告人の供述でも差支えないことは既に当裁判所の判例とすると
ころである。(昭和二三年(れ)第一一二号、同年七月一四日大法廷判決、集二巻
八号八七六頁、昭和二三年(れ)第七七号、同二四年五月一八日大法廷判決、集三
巻六号、七三四頁)。
 従つて論旨前段の違憲の主張は採用し難く又記録上被告人等の自白が任意のもの
でないとは認められないから論旨後段の違憲の主張は其の前提を欠くものである。
 同第四点について。
 論旨は弁護人小林右太郎及同豊川重助の上告趣意第一点の第一と同趣旨に帰する。
従つて其の採用し難いことも既に説明したとおりである。
 なお、記録を調べても本件につき刑訴四一一条を適用すべき事由ありとは認めら
れない。
 よつて刑訴四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
  昭和二九年七月一六日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎

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