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裁判例


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平成16年3月31日判決言渡
平成13年(ワ)第25931号損害賠償請求事件
判決
主文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は,原告らの負担とする。
事実及び理由
第1 請求の趣旨
被告は,原告らに対し,それぞれ5999万1409円及びこれに対する平成
11年3月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,原告らの長女であるAが,被告が開設していたB病院(現C病院)
(以下「被告病院」という。)において死亡したところ,原告らが,被告に対し,
被告病院においては,①Aの痰詰まり等による呼吸停止に備えて十分な対応をとら
なかった,②Aが心肺停止に陥った際に適切な対応をとらなかった過失があるとし
て,不法行為に基づき,それぞれ5999万1409円の損害賠償及びこれに対す
るA死亡の日である平成11年3月24日から支払済みまで民法所定の年5分の割
合による遅延損害金の請求をしている事案である。
 1 争いのない事実等
(1)ア 原告Dは,A(昭和42年4月4日生)の父であり,原告Eは,Aの母
である(争いのない事実,甲C2)。
イ 被告は,東京都西東京市ab丁目c番d号において,被告病院を開設し
ている(争いのない事実)。
ウ 被告病院脳外科のF医師及び内科のG医師は,被告病院において,Aの
治療に携わっていた者であり,H看護師は,被告病院において,Aの看護に携わっ
ていた者である(争いのない事実,乙A5ないし7,証人G,同H)
(2) Aは,かねてからてんかん治療のため,抗けいれん剤を服用していたが,
平成10年9月20日(以下,平成10年を表すときは,年を記載しない。)午後
3時ころから,数回にわたって全身けいれん発作を起こしたため,原告らは,同日
午後8時30分ころ,Aを車で被告病院に連れて行った。Aは,被告病院を受診
し,そのまま被告病院に入院した(乙A1,原告E本人)。
(3) 別紙診療経過一覧表中の診療経過欄のうち,下線の引かれていない各記載
部分は,当事者間に争いがなく,青字の部分は裁判所が証拠欄記載の証拠によって
認定した事実であり,それらによれば,本件診療経過の要旨は以下のとおりであ
る。
ア Aは,同日午後8時30分ころ,被告病院の集中治療室に入院したが,
集中治療室入室直後の意識レベルはジャパンコーマスケール(JapanComaScale)Ⅲ
-300(以下単に数字だけで表示する。)であり,気管内挿管を施行されるとと
もに,IVH(経中心静脈栄養法)カテーテルを挿入された。
イ 9月26日,Aの意識レベルは,Ⅰ-3に回復し,被告病院は,Aに対
し,経管栄養を開始した。
ウ 被告病院は,10月3日,Aに対し,気管切開術を施行した。同月5
日,Aは,集中治療室から東館3階病棟に転室し,同月13日,内科に転科した。
エ Aは,11月4日,経口からの水分摂取を開始し,同月6日,プリン,
ヨーグルト等おやつの摂取を開始し,同月13日,気切カニューレを高研型(カフ
なし)に変更した。
オ また,同月30日には,経管栄養から経口摂取(7分粥食)へ変更し,
12月5日から,常食へ変更した。
カ Aは,同月15日午前5時ころに,心肺停止に陥ったが,心臓マッサー
ジ及びアンビューバッグによる人工呼吸を施行された結果,自発呼吸を再開した。
Aは,その後は集中治療室で治療を受けていたが,平成11年3月24日午後6時
10分,再度心停止状態に陥り,同日午後7時19分,死亡した。
2 争点
(1) 被告病院が,Aの痰詰まり又は誤嚥による呼吸停止に備えて十分な対応処
置を取ることを怠った過失の有無
(2) 被告病院が,Aの心電図モニターがフラットになっていることが判明した
後に適切な対応を怠った過失の有無
(3) 因果関係(判断の必要がなかった。)
(4) 損害額(判断の必要がなかった。)
3 争点についての主張
争点に関する当事者の主張は,別紙争点整理表記載のとおりである。
第3 当裁判所の判断
1 診療経過等
前記第2,1に認定した事実,別紙診療経過一覧表における当事者間に争い
のない事実及び裁判所が認定した事実に加えて,下記の証拠によれば,Aに対する
診療経過等につき,以下の事実が認められる。
(1)ア Aは,幼少のころから精神の発達が遅延し,16歳のころからは,てん
かん治療のため,I病院やJクリニックを受診し,抗けいれん剤の投与を受けてい
たが,1箇月に1回程度けいれん発作を起こしていた。Aは,9月20日午後3時
ころから,10回から13回ほど,全身けいれん発作を起こし,顔面にチアノーゼ
が生じ,呼吸状態が不良になったため,同日午後8時30分,原告らの車で被告病
院に運ばれた。被告病院搬送時,Aの意識レベルは,Ⅲ-100(ジャパンコーマ
スケールでは,意識レベルを3段階に分類し,グレードⅠは刺激しないでも覚醒し
ている状態,グレードⅡは刺激で覚醒する状態,グレードⅢは刺激をしても意識が
覚醒しない状態であり,グレードⅢ-100は痛み刺激を払いのけるような動作を
する状態である。)
であり,被告病院は,Aを意識障害を伴うけいれん重積状態と診断し,同病院に緊
急入院させ集中治療室管理とした。
なお,Aについては,集中治療室管理から10月13日内科に転科する
まで,被告病院脳外科のFが主治医となっていた(甲A1,乙A1,B1,証人
G,原告E本人)。
イ Aは,同日,集中治療室に入室した後,意識レベルがⅢ-300(痛み
刺激にも反応しない)に低下し,舌根は沈下し,喀痰の排出及び吸引が困難であっ
たため,被告病院は,Aに気管内挿管を行い,IVHカテーテルを挿入した。その
後,Aの意識レベルは,Ⅱ-30(痛み刺激を加えつつ,呼びかけを繰り返すと,
かろうじて開眼する状態)ないしⅢ-100まで回復した(乙A1,2,B1)。
ウ Aは,同月21日には意識レベルがⅠ-3(刺激しないでも覚醒してい
るが,名前,生年月日が言えない状態)まで回復し,けいれん発作もみられなかっ
たため,同月22日,被告病院は,気管内挿管を止めてチューブを抜去したが,A
は自力で痰を喀出できず,被告病院が痰の吸引を行うも痰が取れず,咽頭喘鳴が強
くなり,低酸素状態になったため,被告病院は再び気管内挿管を行った。Aは,そ
の後も,痰の吹き出しが多く,血圧も低い状態で推移していたので,被告病院は,
引き続き集中治療室においてAの観察を続けた。被告病院は,同月26日からAに
経管栄養を始めたが,Aは,同月27日に,けいれん発作を2回起こし,被告病院
は,挿管チューブを長い間入れておけないこと,Aの痰の流出が極めて多く,口腔
からの吸引だけでは痰
を取りきれず閉塞するおそれもあったことから,痰を容易に吸引できるように,A
に対し,気管内挿管を止めて気管切開術を施行する方針を立てたものの,原告らか
ら承諾を得られずこれを見合わせていたが,10月3日,原告らを説得して,Aに
対し,気管切開術を行い気管カニューレを挿入した(乙A1,2,B1)。
エ 被告病院の看護師らは,Aの入院期間中のほぼ毎日,口腔と気管カニュ
ーレの両方からAの痰を吸引しつつ,挿入孔を消毒してY字ガーゼを交換し,週1
回から2回気管カニューレの交換を行い,ネブライザー(エアロゾール吸入療法)
を1日4回施行し,痰が吸引できないときには,体位交換やタッピング(5本の指
先を合わせ,指先で胸背部を軽打することによって,気管支内に詰まった痰を気管
側に誘導し,痰の排出を促す手法)等の手法を併用するなどして,痰を出しやすく
することもあった。被告病院の看護師らは,痰の吸引以外にも,Aの病室を訪れる
たびに,痰の状態や呼吸状態や顔色,尿が出ているかなどを確認していた(甲B
5,乙A1,2,6,8,証人H,同G)。
(2)ア 被告病院は,10月5日,Aが重篤期を乗り越え,症状が安定したと判
断し,Aを集中治療室から一般病棟である被告病院の東館3階に転室させた。A
は,一般病棟に転室した後も,ほとんどの日に,粘性のある多量の痰の吹き出しが
あり,しばしば発熱や徐脈が見られ,39度を超える高熱が生じたこともあった
(乙A1,6)。
イ Aは,同月13日,原告らの希望もあり,被告病院の脳外科から内科へ
と転科し,Gが担当医師となった(乙A1,7,証人G)。
ウ 同月22日及び同月24日,Aの痰に血液が混入しているのが相次いで
認められたので,Gは,肺炎の発症を疑い,同月24日から,肺炎治療のためにセ
フォメシンの投与を開始し,同月26日,胸部及び腹部のX線撮影を施行した結
果,同月27日右下肺の肺炎と診断し,投薬をセフォメシンからハロスボア及びミ
ノベンに切り替えた。その後も,Aには,たびたび血液混入痰が確認されたが,同
年11月2日以降には,血液混入痰の喀出は収まり,体温の上昇もみられず,肺炎
も軽快するに至った(乙A1,8)。
エ Aは,10月31日,ベッド上でのリハビリを始めた。また,被告病院
に入院してからは点滴と経管栄養で栄養を摂取していたが,11月4日からは,経
口による水分摂取を開始し,同月7日ころからおやつが開始され,プリン,ヨーグ
ルト等誤嚥のおそれが小さく,誤嚥による危険が比較的小さい食品類が,むせ込ま
ないで食べられるようになった。Gは,同月10日,被告病院耳鼻咽喉科のK医師
に対し,Aの咽喉頭に麻痺が生じていないかについて検査を依頼し,同日,K医師
は,内視鏡を用いてAの検査をしたところ,声帯が動いているのを確認し,神経麻
痺はないとの診断をした。Gは,同月13日,K医師の診断等に基づいて,Aが万
一誤嚥しても自ら吐き出す力があると判断して,Aの気管カニューレを,カフ付き
カニューレからカフな
しカニューレへと変更した(乙A1,7,証人G)。
オ 同月12日,Aに血液混入痰が確認され,同月13日,Aの右肺に再び
肺炎が生じていたことが確認されたが,その後も体温の上昇はみられず平熱を保
ち,Aは,ラジオを聞くなどしており活気がみられた。同月19日と同月20日午
前6時にも血液混入痰が確認されたが,同日午前7時の痰にはほとんど血液の混じ
りがなく,以後12月15日にAが心肺停止に陥るまで,血液混入痰は確認されな
かった(乙A1)。
カ Gは,同月27日,喀痰培養検査の結果,AがMRSAに罹患している
と診断し,翌日からタゴシッドの投薬を開始した。Gは,12月9日から,Aに対
し,バンコマイシンの投与を開始したところ,同月10日,Aの顔面が紅潮したの
で,バンコマイシンの使用を中止し,メロパンに切り換えた(乙A1,7,証人
G)。
キ Aの食事は,11月30日には7分粥食へ,12月5日には常食へと変
更された。Aの食欲は良好であり,同日から同月15日まで,ほとんどの日に,食
事のほぼ全量を摂取し,椅子に座ることもできるようになった。また,11月の終
わりごろからは,被告病院の看護師に対し,ときおり笑顔を見せて,手を振るよう
にもなった(乙A1,7,証人G)。
(3)ア 12月14日から15日にかけての,被告病院東館3階の夜間当直は,
H及びL看護師の2名であり,1号室から10号室がHの,11号室から16号室
がLの担当であった。Aの病室は,6号室でHの担当であった(乙A4,5,6,
証人H)。
イ 同月14日,Aは,夕食を喉に詰まらせて吐いてしまい,痰の吹き出し
もあったものの,呼吸は平静であり,ラ音も軽度であり,自尿も認められ,夕食も
すべて食べ,アルバムを胸の上に置いて,看護師に対し指で説明するなどしていた
(甲A3,乙A1,原告E本人,証人H)。
ウ Hが,同日午後6時ころ,Aの病室を訪室したところ,Aの体温は36
度8分と平熱であったが,痰の噴き出しが認められ,痰のからみがあったので,痰
の吸引を行った(乙A1,5,H)。
エ Hが,同日午後9時ころ,Aの病室を訪室したところ,Aの体温は37
度6分と上昇していたので,クーリングを行った(乙A1,5,証人H)。
オ Hは,同月15日午前0時ころ,Aの体温を測るためにAの病室を訪室
し,Aの体温を計測したところ,Aの体温は37度6分であった(乙A1,証人
H)。
 なお,原告らは,看護記録(乙A1)には同日午前0時に訪室した旨の
記載はなく,したがって,Hは,同日午前0時に訪室していないと主張するが,証
拠(乙A1,証人H)によれば,体温表には同日午前0時のAの体温が記録されて
いること,Hは,同日午前0時3分にAの体温を測ったという証言をしていること
が認められ,これらの事実によれば,Hが,同時刻にAの病室を訪室したことは認
められる。
カ 同日午前3時ころ及び4時30分ころに,HがAの病室を訪室したとこ
ろ,Aは特に異状を示すことなく眠っており,心拍数も60台と安定しており,痰
の吸引を行ったところ,通常と同じような白色の粘調の痰が引けた(乙A1,6,
証人H)。
なお,証人Hは,夜間のAの観察状況について,痰を引くために30分
か1時間おきに訪室していたと証言をしている。しかし,証拠(乙A1,証人H)
によれば,同日の看護記録には,同日午前3時及び4時30分にAを観察したこと
を示す記載しかないこと,Hは,看護記録等の記載について,観察して異状がなけ
れば転記しないようにしているものの,同日の記録については,Aの心停止が発生
する前の段階の観察内容は重要な情報だと考え,異状がなかったこと及び観察した
時刻について,同日の夜勤が明けた午前10時ころに控えのメモから転記したと証
言していること,Hは,急変後駆けつけた当直医に対し,午前0時,3時,4時3
0分と問題がなかったことを告げたと証言していることが認められる。
以上によると,Hは,少なくとも同日においては,体温表及び看護記録
に記載されたとおり,同日午前0時ころ,午前3時ころ及び午前4時30分ころの
3回,Aの病室を訪室したことは認められるが,それ以外の時刻に訪室した事実を
いまだ認めることはできない。
(4)ア Hは,同日午前4時40分ころから,被告病院の東館3階の各個室を回
っておむつ交換を行っていたところ,個室の患者のおむつの交換を終わって廊下に
出たときに,ナースステーションの方で心電図のアラームが鳴っているのに気付
き,同日午前5時ころ,ナースステーションに向かったところ,Aの心電図モニタ
ーの波形がフラット(真っ直ぐ)になっていた(乙A1,6,証人H)。
イ Hは,Aの病室に向かい,Aの様子を見ると,Aの顔色はいつもと変わ
りがなく,チアノーゼも現れておらず,眠っているように見えたので,まずAの体
に装着してあった心電図モニターの電極が外れていないか確認したところ,外れて
いなかった。次に,Aの手をとって脈を確かめようとしたものの,脈が触れないよ
うに感じ,痰を引くと声をかけながらAの呼吸を確認したところ,呼吸が止まって
いることに気づき,痰や異物が詰まっているのではないかと考え痰を引いたが,痰
も引けず,痰を引くときにいつもあったAからの拒否反応もなく,瞳孔の散大も認
められた(乙A1,6,証人H)。
ウ そこで,Hは,Aの急変を認識し,すぐに廊下に出てLを大声で呼び,
Lに当直医への連絡と心電図モニターの搬入を指示し,自らは,ナースステーショ
ンの隣にある処置室から,アンビューバッグ等が搭載されている救急カートを,A
の病室に運び入れ,Aの心臓マッサージを開始し,Lは,同日の当直医であったM
医師に連絡した後,ナースステーションから,心電図モニターのモニターをAの病
室に運び入れた(乙A1,4,6,証人H)。
オ M医師は,Aの病室に到着した後,Hに対し,アンビューバックを使用
して人工呼吸を行うことと点滴のラインを取ることを指示し,自らはAの心臓にボ
スミンの注射を行い,Hと交互に,心臓マッサージと人工呼吸とを施行した(乙A
1,6,証人H)。
カ Aは,同日午前6時10分ころ,自発呼吸を取り戻し,酸素飽和度は9
8%を示し,血圧も収縮期圧が110,拡張期圧が60と正常範囲に戻ったので,
しばらく経過観察を行ったが,意識が回復しないので,同日午前10時55分から
呼吸循環管理のため集中治療室へ転室した(乙A1,7,証人G)。
キ Gは,同日午前7時30分ころ,原告らに対し,Aが心停止に陥り,心
肺蘇生術により心拍,呼吸共に回復したが,低酸素のため全身にダメージがあるこ
と,12月15日におけるAの急変の原因については,窒息,痰詰まりの可能性等
が疑われるが,現時点では明確なことは分からないことなどを説明した(乙A1,
7,証人G)。
ク Gは,現時点においては,窒息であれば,普通は血中酸素濃度が落ち
て,顔面,体全体が紫色になるチアノーゼの状態で発見されるが,チアノーゼがな
かったこと,急変時には痰も引けず,体の表面には異物がなく,看護師が吸引チュ
ーブを入れた時には抵抗なく入ったこと,着衣の乱れがなく,暴れたりした形跡が
なかったことからすると,Aが窒息だったのかどうか疑問が残ると考えていること
を陳述(乙A7)ないし証言している。
(5) Aは,12月15日の急変以後,集中治療室で治療を受けていたが,脈拍
数の高い状態が続き,意識は回復せず,平成11年3月24日午後6時10分,心
停止状態に陥り,同日午後7時19分,多臓器不全のため死亡した(争いのない事
実,乙A1)。
2 争点(1)(被告病院が,Aの痰詰まり又は誤嚥による呼吸停止に備えて十分な
対応処置をとることを怠った過失の有無)について
(1) カフ付きカューレについて
原告らは,被告病院において,Aの痰詰まりや誤嚥を防止するため,カフ
付きカニューレの使用を継続すべき義務があったにもかかわらず,カフなしカニュ
ーレに変更した過失があると主張するので,以下検討する。
ア 証拠(乙A7,証人G)によれば,以下の事実が認められる。
(ア) カニューレのカフは,カニューレの先端の部分に全周にわたって付

ている小さな風船をふくらませることによって,患者の肺の部分と口腔
部とを完全に遮断し,口からの食物や嘔吐による異物等の肺への侵入を防ぐという
役割がある。
(イ) 一般に,カフ付きカニューレについては,カフの風船が患者の気管
内の組織,粘膜等に接触することにより刺激を与え,痰が多くなるとともに,カフ
により気管内の組織,粘膜等を損傷する危険性が高いから,気管切開により呼吸管
理をしている患者については,誤嚥等の危険性がないことを確認しながら,患者の
負担を軽減し,患者への侵襲を少なくするために,カフ付きカニューレからカフな
しカニューレへ変更し,最終的には,気管切開による呼吸管理を離脱するという過
程を踏むことが望ましい。
(ウ) カフ付きカニューレからカフなしカニューレに変更する場合は,カ
フがないことで,万が一患者が食物等を誤嚥することがあっても,自らの力で,食
物等を吐き出すことができる力を持っていることを確認することが必要である。
イ 前記アによれば,誤嚥物を自ら吐き出す力があると確認された場合,カ
フ付きカニューレからカフなしカニューレへと変更することは,患者の負担を軽減
させるための有効な措置であることが認められるところ,前記1(2)エに認定したと
おり,Aは,プリンやヨーグルト等おやつ類であればむせ込むことなく食べられる
ようになっていたこと,Gは,Aに被告病院耳鼻咽喉科を受診させた結果,Aには
咽喉頭の麻痺は生じておらず,万一誤嚥しても自ら吐き出す力があると判断したこ
と,Gはこれらの事実に基づいてカフなしカニューレへと変更したことが認められ
る。
以上によれば,被告病院がカフなしカニューレからカフなしカニューレ
に変更したことは,Aを気管切開による呼吸管理状態から回復させるための過程に
おける,合理的な措置であったというべきであり,カフ付きカニューレの装着を継
続する義務を怠ったとする原告らの主張は理由がない。
ウ なお,原告らは,人証調べ後に,被告病院は,カフなしカニューレに変
更した場合,看護師自身が食事の世話を行うべきであったにもかかわらず,これを
怠った過失があると主張するが,かかる義務の存在を基礎づける事実については何
らこれを裏付ける証拠はなく,また,原告らが主張する上記過失とAが12月15
日に心肺停止に陥ったこととの因果関係についても,本件全証拠によるもこれを認
めることはできないといわざるをえないから,この点に関する原告らの主張も理由
がない。
(2) 観察について
原告らは,被告病院において,Aの痰詰まりや誤嚥を防止するため,ある
いは,痰詰まりや誤嚥の際には直ちに対処できるように,頻繁にAの観察をすべき
義務があったにもかかわらず,極めて不十分な頻度の観察しかしなかった過失があ
ると主張するので,以下検討する。
ア 前記1(2)アエオ,(3)イの事実及び証拠(甲C3,乙A1,6,証人
H,原告本人)によれば,Aは,気管切開による呼吸管理になってからも,痰の吹
き出しが多く,頻回に痰の除去を行う必要がある患者であったこと,Aは体調が回
復するに従って,体動も活発になり,気管に入っているカニューレや鼻から胃に入
っているマーゲンチューブを自分で抜去することがあったこと,Hは,12月14
日の当直看護につく際,日勤の看護師からAに取り付けていた尿を取るための管を
抜いたこと,相変わらず痰は多いことの引き継ぎを受けるとともに,原告EからA
が夕食を喉に詰まらせて吐いたことを聞き,誤嚥に注意をすべきことを認識してい
たことが認められる。
そして,Hは,上記のAの症状からして,昼の時間帯は30分に1回,
夜の時間帯は30分ないし1時間に1回の割合でAの症状を観察する必要があり,
実際にも巡回を行っていたと証言する。
イ 以上によれば,被告病院においては,Aの痰詰まりや誤嚥を防止するな
どのために,夜間においては30分ないし1時間に1回の割合でAの状態を観察す
べき義務があったと認められる。
ところで,前記1(3)ウないしカのとおり,Hが12月14日及び15日
の夜間にAの状態を観察したとして認定できるのは,同月14日午後6時ころ,午
後9時ころ,同月15日午前0時ころ,午前3時ころ,午前4時30分ころの5回
であって,上記に認定した,夜間には30分ないし1時間に1回の割合でAを観察
すべき義務という点からすると,不十分なものであったといわざるを得ない。
ウ しかしながら,前記1(3)カ,(4)アに認定したとおり,Hが12月15
日午前4時30分ころにAの様子を見た時点では,Aは特に異状を示すことなく眠
っており,Aの痰を引くこともでき,脈拍も安定していたことが認められ,HがA
の異状を認識したのは,その約30分後に過ぎない同日午前5時ころのことである
から,そうすると,同日午前4時30分ころから同日午前5時ころにAの容態が急
変するまでのわずか30分ほどの間に,被告病院の看護師がAの病室を訪室しなか
ったことが,違法であるとすることはできないし,また,本件全証拠によるも,被
告病院の看護師による同日午前4時30分ころ以前の不十分なAの観察がAの急変
の原因になったと認めることはできず,原告らが主張する過失とAの急変との因果
関係についても認めるこ
とはできない。
(3) 夜間の人員配置について
原告らは,被告病院において,Aの痰詰まりや誤嚥を防止するため,ある
いは,痰詰まりや誤嚥の際には直ちに対処できるように,痰を吸引するための人員
配置をするべき義務があったにもかかわらず,これを怠った過失があると主張する
ので,以下検討する。
ア 証拠(甲A2,B5,乙A5,証人N)及び弁論の全趣旨によれば,以
下の事実が認められる。
(ア) 12月15日当時の,健康保険法及び厚生省告示によれば,被告病

の東館3階の入院患者の看護類別加算は,特1類のB加算であり,この
加算を採用した場合,患者と看護師,准看護師及び看護補助者の比率が3対1以上
であることが必要となる。
(イ) 被告病院の東館3階には,同日,Aも含めて42名の患者が入院し
ていたところ,常勤の看護師及び准看護師が合計17名配置されており,夜勤者は
2名配置されていた。
(ウ) 現実では,前記(ア)において定められた基準の人員より多くの看護
師を
配置したり,看護補助者を導入している病院もあるが,どのくらいの数
の病院がどのくらい余分の看護師を配置しているかは定かではなく,夜勤者の人数
も含めた被告病院の人員配置は,看護類別加算特1類のB加算によっている限りで
は問題なく,通常許されないような看護体制であるとはいえない。
イ 以上によれば,被告病院の人員配置は前記ア(ア)の基準を満たしている

とが認められ,本件全証拠によるも,前記基準を超えて看護師を配置する
ことが,平成10年当時の医療水準であったと認められず,また,同月15日に,
夜間の人員を増員すべきであったという特別の事情も認められない。
ウ 以上によれば,被告病院が,前記ア(イ)の定員を超えた人員配置をしな
かったことが違法であるということはできず,この点に関する原告らの主張は理由
がない。
(4) サチュレーションモニターについて
原告らは,被告病院において,Aの痰詰まりによる呼吸停止を防止するた
め,サチュレーションモニターを装着する義務があったにもかかわらず,これを怠
った過失があると主張するので,以下検討する。
ア 下記の証拠によれば,以下の事実が認められる。
(ア) サチュレーションモニターとは,パルスオキシメーターとも呼ば
れ,
指尖,趾尖あるいは耳朶に取り付けたクリップ状のプローベによって経
皮的に動脈血酸素飽和度を測定する機械であり,酸素飽和度を知るという意味にお
いては,心電図モニターよりもサチュレーションモニターの方が適している(甲B
6,乙B4,証人G)。
(イ) サチュレーションモニターについて,モニターとしての長所は,即
時性,連続性,非侵襲性,低価格であり,呼吸不全患者の呼吸管理においては必須
かつルーチンのモニターとなっており,その長所をうまく活用する状況としては,
動脈血ガス値が急激に変化するあるいは不安定な場合,吸入酸素が低下,あるいは
その可能性のある場合(ウィーニングの途中,気管内吸引,気管挿管と抜管,航空
機での患者運送)との記載がある平成15年に出版された文献が存在する(甲B
6)。
(ウ) 患者に装着したサチュレーションモニター本体に,測定結果が表示
される方式のサチュレーションモニター(以下「簡易式サチュレーションモニタ
ー」という。)は,その測定結果を病室において確認することができるにとどま
り,測定するスタッフがその病室内にいない限り,数値を確認できない(乙A9,
証人H,同G)。
(エ) ナースステーションのモニターに有線で接続し,酸素飽和度が一定

数値になった時に,ナースステーションのモニターからアラームが鳴る
よう設定することによって,患者の酸素飽和度を常時監視することができるサチュ
レーションモニター(以下「遠隔式サチュレーションモニター」という。)が存在
する(乙A8,9,証人G)。
(オ) 当時,簡易式サチュレーションモニターは,被告病院の東館3階に
はなかったが,循環器科の医師が個人で買って保有していたので,Aに急変が起き
た12月15日午前6時15分,その簡易式サチュレーションモニターを借りてA
に対し装着された(乙A6,8,9,証人G,同H)。
(カ) 被告病院においては,遠隔式サチュレーションモニターは,当時か
ら現在に至っても,集中治療室にしか常設されていない。
(キ) 心電図モニターは,患者の心拍数を計測し,管理するための装置で
あり,Aに対しては,午後9時から午前9時の夜間帯にかけて装着されており,徐
脈(心拍数55を下回った場合)又は頻脈(心拍数140を上回った場合)が生じ
た場合,ナースステーションに設置されたモニターからアラームが鳴るように設定
されていた(乙A1,8,9,証人G)。
(ク) 気道に異物が詰まって閉塞した場合,酸素飽和度が低下するととも
に,大量の酸素を吸入するために心肺に負荷がかかり,頻脈となる。その後,心肺
がその負荷に耐えられなくなれば,心筋の力が弱り,徐脈となる(証人G)。
(ケ) 被告病院の東館3階のナースステーションに設置されていた心電図
モニターが異状を感知すると,持続的な音が鳴り,その音量は,ナースステーショ
ンを挟んで反対側の小児病棟にも届く音であり,どの病室にいても,病室のドアを
閉めた状態であっても,モニター音は聞こえる(証人H)。
イ そこで,被告病院が,Aに対し,サチュレーションモニターを装着すべ
き義務について検討する。
(ア) まず,簡易式サチュレーションモニターの装着について検討する
に,
前記ア(ウ)に認定したとおり,患者に対し,簡易式サチュレーションモ
ニターを装着したとしても,病室にいない限り,患者の急変を認識することはでき
ないことが認められる。
そうすると,12月15日の時点で,Aに簡易式サチュレーションモ
ニターを装着していたとしても,被告病院の看護師が,12月15日に,Aに生じ
た急変を認識することはできなかったというべきであるから,簡易式サチュレーシ
ョンモニターを装着していなかったこと及び病棟に備え付けていなかったことをも
って,違法とすることはできないし,Aの急変及び死亡との因果関係についても認
めることはできない。
なお,Nは,簡易式サチュレーションモニターは平成10年ころには
小さな病院でも既に使用されており,簡易式サチュレーションモニターを装着し
て,Aの酸素状態を把握しておけば,もう少し先手の対応ができたかもしれないと
証言ないし陳述(甲B2)している。しかし,一方で,Nは,被告病院の看護体制
と12月15日にAの容態が急変したこととの因果関係について断定できないとし
ている(甲B2)ことに加えて,Nの証言ないし陳述は,本件記録をすべて検討し
た結果に基づくものではなく,12月15日までの看護記録,Hの陳述書(乙A
6)並びに被告病院の東館3階の看護婦勤務予定及び実施表(乙A5)だけを検討
して,過去の経験事例から類推して述べているにすぎないこと(甲B2,証人
N),先手の対応として何を行う
べきかについても具体的に述べていないことなどの事情をかんがみると,上記証言
及び陳述は,経験豊富な看護師が考える理想的な看護という観点から,12月15
日にAの容態が急変したという事実から振り返った結果,Aの急変を予防するため
の万全の措置について言及したものにすぎないと考えられ,前記認定を左右するも
のではない。
また,その他簡易式サチュレーションモニターを装着することによっ
てAの急変を予測し,防止し得たと認めるに足りる的確な証拠もない。
(イ) 次に,遠隔式サチュレーションモニターの装着について検討する
に,前記ア(カ)に判示したところによれば,被告病院には,平成10年当時,遠隔
式サチュレーションモニターは一般病棟にはなく,集中治療室にしかなかったこと
が認められる。
ところで,Gは,平成10年当時は,サチュレーションモニター自体
が一般的に普及し始めた時期で,その有用性自体も確立しておらず,サチュレーシ
ョンモニターが,機械の精度の信用性も含めて,一般病院レベルで使用可能となっ
たのは,ここ2,3年のことであると陳述(乙A8)ないし証言し,Nにおいて
も,遠隔式サチュレーションモニターの普及度及びこれを一般病棟に備え付ける義
務の有無については言及できないという証言をしており,その他遠隔式サチュレー
ションモニターを一般病棟においても備え付けることが平成10年当時の医療水準
として確立されていたと認めるに足りる的確な証拠もない。
そうすると,本件全証拠をもってしても,一般的な病院の一般病棟に
おいて遠隔式サチュレーションモニターを備え付けることが,平成10年当時の医
療水準として確立されていたと認めることはできないから,遠隔式サチュレーショ
ンモニターが被告病院の一般病棟に備え付けられていなかったことが違法であった
とはいえない。
(ウ) さらに,Aを遠隔式サチュレーションモニターが備え付けられてい
た集中治療室において看護すべきであったかを検討するに,前記1(2),(3)アイに
よれば,Aは,集中治療室から一般病棟に移った後も,痰が多く,発熱がありラ音
や喘鳴もしばしば認められたものの,呼吸も平静でラ音も軽度であり,点滴と経管
栄養から経口摂取に変えられ,12月5日ころからは常食となって食欲も良好であ
り,同月14日にはアルバムを見て看護師に指で説明する状態になるなど意識状態
も回復していたのであるから,Aについて集中治療室で管理する必要があったとは
到底認められない。Nも,Aを集中治療室に入れる必要性については否定する証言
をしている。
以上によれば,被告病院が,Aを遠隔式サチュレーションモニターが
備え付けられている集中治療室において看護すべき義務も認められない。
 (エ) なお,前記ア(キ)(ク)(ケ)に認定したとおり,Aには,被告病院の
一般病
棟に入院していた当時には午後9時から午前9時にかけて心電図モニタ
ーが付けられていたところ,患者が低酸素状態を起こした場合,それに伴って頻脈
が生じ,心電図モニターはこの頻脈に反応してアラームを鳴らし,それによって病
室の外にいる看護師が急変を察知することができるのであるから,被告病院におい
ては,Aに対し,心電図モニターを装着していたことで十分な措置をとっていたと
認められる。
以上によれば,被告病院において,Aに対し,サチュレーションモニ
ターを装着する義務があったとは認められず,原告らの主張は理由がない。
(5) 以上によれば,争点(1)に関する原告らの主張は,いずれも認められな
い。
3 争点(2)(被告病院が,Aの心電図モニターがフラットになっていることが判
明した後に適切な対応を怠った過失の有無)について
(1) 前記1(4)アないしウに認定したとおり,Hは,Aの心電図モニターのア
ラームに気付いてAの病室に行った際,まず,Aの体に装着してあった心電図モニ
ターの電極が外れていないか確認したこと,次に,Aの手をとって脈を確かめ,痰
を引くと声をかけながらAの呼吸を確認し,さらには痰を引いたこと,Aの脈が確
認できず,呼吸が止まっており,瞳孔の散大も認められたので,Hは,Aの急変を
認識し,すぐに廊下に出てLを大声で呼び,Lに当直医の連絡と心電図モニターの
Aの病室への移動を指示し,自らは,ナースステーションの隣にある処置室から,
アンビューバッグ等が搭載されている救急カートを,Aの病室に運び入れてAの心
臓マッサージを開始したこと,Lは,同日の当直医であったM医師に連絡した後,
ナースステーションか
ら,心電図モニターのモニターをAの病室に運び入れたことが認められる。
(2) 原告らは,被告病院において,Hが,Aの心電図モニターがフラットにな
っていることに気付いてAの病室を訪室した後,即刻,自発呼吸を回復させるため
の蘇生措置をとるべきであったにもかかわらず,電極がAの体から外れていないこ
とを確認した後に蘇生措置を開始した過失があったと主張する。
  しかしながら,前記1(3)カ,(4)イ認定の各事実及び証拠(乙A6,証人
H)によれば,Aは,12月14日午前3時及び4時30分のいずれにおいても,
特に異状を示すことなく眠っており,心拍数も60台と安定しており,痰の吸引を
行ったところ,通常と同じような白色の粘調の痰が引けたこと,Hが同月15日午
前5時ころにAの心電図モニターがフラットになっていることに気付いてAの病室
を訪室した際にも,Aの顔色はいつもと変わりがなく,チアノーゼも現れておら
ず,Aは眠っているように見えたこと,患者に取り付けた心電図モニターは患者の
体動や患者自身が取り外すことにより外れることがあり,その際にも心電図モニタ
ーのアラームが鳴ること,Aは体動が多い患者であり,気管カニューレを抜いた
り,心電図モニターの電極
を外したりしたことがあったことが認められるのであり,かかる事実からすると,
Hが心電図モニターがフラットになっていることに気付いてAの病室に行った際,
まずAに装着された心電図モニターの電極が外れていないか否かを確認したこと
は,やむを得ない行動であって,これを過失と評価することはできないといわなけ
ればならない。
(3) また,原告らは,心停止後の蘇生措置は3分以内に着手することが必要で
あり,本件では,Aの心停止の発見までに,既に5分以上経過していたことが明ら
かであったのだから,1秒でも早く心臓マッサージを施行するべきであり,Hらが
心電図モニターを運び入れた後に心臓マッサージを開始したのは過失であると主張
する。
しかしながら,前記(1)のとおり,Hは,Aの急変を認識し,すぐに廊下に
出てLを大声で呼び,Lに当直医の連絡と心電図モニターのAの病室への移動を指
示し,自らは,ナースステーションの隣にある処置室から,アンビューバッグ等が
搭載されていた救急カートを,Aの病室に運び入れてAの心臓マッサージを開始
し,Hから指示を受けたLが当直医であったM医師に連絡した後,心電図モニター
をAの病室に運び入れたのであり,原告らの主張は,そもそも前提を欠き認めるこ
とはできない。
なお,証拠(証人G)によれば,アンビューバッグは,脳に酸素を送るた
めに直ちに必要となるものであることが認められ,この事実によれば,Hがアンビ
ューバッグ等が搭載されていた救急カートを,Aの病室に運び入れてAの心臓マッ
サージを開始したことは適切な措置であったと認められる。
(3) 以上によれば,争点(2)についての原告らの主張も理由がない。
4 よって,その余の点について判断するまでもなく,原告らの請求はいずれも
理由がないからこれを棄却し,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第34部
裁判長裁判官  前 田 順 司
裁判官  池 町 知 佐 子
裁判官  筈 井 卓 矢

争点整理表
 
1 被告病院が,Aの痰詰まり又は誤嚥による呼吸停止に備えて十分な対応処置
を取ることを怠った過失の有無
(原告らの主張)
(1) Aの12月14日までの状態
 Aは,9月20日午後3時ころから軽いけいれんを起こしては止むという
ことを何度か繰り返したので,午後8時ころ,自家用車で被告病院に行った。しか
し,被告病院の対応は極めて遅く,Aは,午後8時30分ころになってやっと脳波
検査室に入室できたが,そのころのAの様子は急変してぐったりした状態であっ
た。Aは,けいれん重積状態との診断で,一週間の予定で被告病院に入院すること
になり,集中治療室に入った。
 しかし,Aの意識レベルの悪化は,風邪による一時的なものであり,翌日
には,Aは,面会にきた原告Eを見てにっこり笑ったり,原告Eが手を握ると泣き
顔になったり,意識ははっきりしていたが,それまで痰は出なかったのに急に痰が
多くなった。
 原告らは,F医師から,Aの痰が多く窒息の危険があることを理由に気管
切開術の施行を促されて,やむなくこれに応じ,Aは,同術を受けたが,術後も相
変わらず痰が多く,しかも,逆に感染症にかかりやすくなり,肺炎になった上,M
RSAにも罹患した。
Aは,痰が極めて多いため,常時誰かが付き添って痰を頻繁に吸引しなけ
れば痰がたまって呼吸ができなくなる危険のある状態であったので,昼間は毎日原
告らが付き添って痰が多くなると看護師を呼んで吸引してもらっていた。その上,
Aは,時々てんかんにより夜間けいれんを起こしていたため,夜間に痰が詰まって
窒息する心配があったので,原告らは,夜間の付添いを申し出たが,被告病院に拒
否された。
12月12日,被告病院は,Aに対し,MRSA治療のために,テストを
しないで,それまで使用していたものとは別の抗生物質に変えたため,副作用によ
りAの全身が真赤になり,あわてて担当医を呼ぶ事態となり,これを機に翌13日
から,Aは,急激に体力を失い元気がなくなった。
同月14日,Aは,食べ物を喉に詰まらせ,原告Eが看護師を呼ぶととも
に,Aの喉に指を入れて吐かせた。この日はAの痰がいつもより多く,原告Eは,
通常は面会時間終了の午後8時に病室を出るところ,Aの様子が心配で午後10時
まで付き添っていた。
(2) 被告病院において,Aに対しとるべきであった処置
 ア カニューレについて
カニューレには,カフ付きのものとカフなしのものとがある。カニュー
レのカフは,誤嚥防止のために,カニューレと気管の間の隙間を風船を膨らませて
埋める装置であり,誤嚥による死亡を防止するためには必要なものである。
Aは,入院当初から痰が非常に多く,気管切開による呼吸管理にした後
も痰は相変わらず多く,痰が絡んで呼吸停止に至る可能性も十分にあった。その
上,食事,菓子等を誤嚥するおそれが十分にあり,他方,Aには自力で吐き出す力
はなかったため,誤嚥物による窒息の可能性も十分にあった。
したがって,被告病院は,このような状態のAに対して,痰詰まりや誤
嚥を防止するため,カフ付きのカニューレの使用を継続すべきであった。
仮に,被告病院において,カフなしカニューレに変更するのであれば,
誤嚥を生じないように食事の世話は必ず看護師が行うなどするべきであった。
イ 観察について
前記アのとおり,Aは,痰が多く,痰を詰まらせたり,食物,菓子等を
誤嚥して,呼吸停止になるおそれがあった。このほか,Aは,てんかんによるけい
れん発作がいつ生じるか分からない状態であった。また,Aは,マーゲンチューブ
やカニューレをしばしば自分で抜くことがあった。
その上,被告病院は,Aに対し,途中からカフなしカニューレに変更し
ていたのであるから,痰詰まり又は誤嚥の際には直ちに対処することのできる体制
を作っておく必要があった。
したがって,被告病院は,このような状態のAに対し,痰詰まりや誤嚥
を防止するため,あるいは,痰詰まりや誤嚥の際には直ちに対処できるように,頻
繁にAの観察をするべきであった。
ウ 夜間の痰吸引のための人員配置について
Aは,痰が非常に多く,常時痰を頻繁に吸引しなければ痰がたまって呼
吸ができなくなる危険のある状態であった。そして,この状態は基本的に夜間でも
同様であった。
その上,Aはいつてんかんによるけいれんを起こすか分からない状態に
あり,実際に,夜間けいれんを起こしていた。
そこで,原告らは,本来は被告病院の義務であるが,昼間は絶えず付き
添ってAの痰が多くなると看護師を呼んで吸引をしてもらっていた。他方,被告病
院は,原告らに対して,夜間付添いを認めなかったのであるから,被告病院は,A
に対し,夜間痰を吸引するための人員を配置するべきであった。
エ サチュレーションモニターについて(心電図モニターのみでは不足であ
ることを含む。)
心電図モニターのアラームは,呼吸停止が起こった直後に鳴るのではな
く,誤嚥あるいは痰詰まりのため,肺に酸素が十分に供給されなくなり,血中酸素
濃度が低下して,心電図モニターに設定されたアラームの鳴る数値になって初めて
アラームが鳴り,異変を気づかせるものであり,誤嚥からアラーム作動まで30分
かかることもある。
サチュレーションモニターとは,血流を感知する指輪状の器具を指に装
着して血液中の酸素飽和度を測るもので,低酸素状態になり心停止の危険が生ずる
とナースステーションの警報ブザーが鳴るという装置である。サチュレーションモ
ニターは,人工呼吸管理や呼吸不全進行中の場合には設置が不可欠とされている。
Aは,前述のように,痰が非常に多く,痰がたまって呼吸ができなくな
る危険のある状態にあった。
その上,被告病院は,夜間は原告らの付添いを認めず,他方,Aの観察
に必要な人員を配置することもなかったのであるから,せめて,被告病院は,この
ような状況においては,Aに対して,痰詰まりによる呼吸停止を防止するため,サ
チュレーションモニターを設置すべきであり,かつ,心電図モニターと同様に,ナ
ースステーションでアラームが鳴るような設備をしておくべきであったし,サチュ
レーションモニターを保有していなかったのであれば,買いそろえておくべきであ
った。
(3) 被告病院がAに対して前記処置を怠ったこと
被告病院は,Aに対し,まず,11月13日から,Aの呼吸停止の危険性
に変わりはないにもかかわらず,前記(2)アの処置を怠り,カフなしカニューレを使
用するようになり,看護師が食事の世話をすることも怠った。
次に,夜間には,痰詰まり等による呼吸停止の危険が常にあったにもかか
わらず,看護師は,食事の後と原告らが呼んだ時の,1日に4,5回程度訪室した
だけであり,Aに対し,極めて不十分な頻度の観察しか行わず,(2)イの処置を怠っ
た。
また,Aは,夜間でも常時痰の吸引が必要な状態であったにもかかわら
ず,原告らの常時付添いの申出を拒否しながら,被告病院において,夜間十分な人
員の看護師を配置することなく,勤務の看護師を2名しか配置せず,(2)ウの処置を
怠った。
そして,呼吸停止の際に心電図モニターだけのアラームでは結果回避のた
めの機能を果たし得ないにもかかわらず,心電図モニターしか設置せず,(2)エの処
置を怠った。
(4) 結論
  以上により,被告病院には,Aの痰詰まり又は誤嚥による呼吸停止に備え
て十分な対応処置をとることを怠った過失がある。
(被告の主張)
(1) Aの12月14日までの状態
9月20日の入院当時のAは,全身ケイレン発作を10ないし13回起こ
しており,顔面はチアノーゼで,呼吸状態不良という状態であり,入院直後の意識
レベルはⅢ―100であった。
被告病院は,入院当初,Aに対し,経口挿管による人工呼吸管理をしてい
たが,長期間の経口挿管は,口腔内及び気道を傷つける危険が高いことから,当時
の担当医師の判断により,10月3日,気管切開術を施行し,気管切開による人工
呼吸管理に変更された。
その後,被告病院の適切かつ懸命な治療と看護の結果,Aの体力は徐々に
回復し,Aは,11月7日ころからプリン,ヨーグルト等誤嚥のおそれの小さいも
のを食べ始め,同月30日には7分粥食へ,12月1日には常食へ変更になった。
被告病院においては,痰による気道閉塞に対する処置としては,①ネブラ
イザーを施行し,②痰の吸引の際には体位交換とタッピングを行い,③毎日1回以
上の挿入孔の消毒とY字ガーゼの交換を行い,④週1回から2回のカニューレの交
換を行うなど,Aの気道内を正常に保つための処置をとっていた。
(2) Aに対してとった処置
ア カニューレをカフ付きからカフなしへ変更したこと
  カフは,気管内の粘膜を損傷する危険が高いことから,患者に食物等を
誤嚥しても吐き出す力がある場合は,カフなしカニューレに変更するべきである。
  前記(1)の気管切開当時は,Aに対し,食物等の誤嚥防止のため,カフ付
きカニューレを使用していたが,担当医師は,カフなしカニューレへの変更するこ
とを考え,11月10日,Aの喉咽頭に麻痺がないかを耳鼻科の診察により確認し
たところ,耳鼻科の診察の結果は,麻痺はないというものであった。また,当時,
Aは,原則として点滴により栄養を摂っていた。そこで,担当医師は,Aが食物等
を誤嚥する可能性は小さく,また,万が一誤嚥があったとしても,自ら吐き出す力
があると考え,同月13日,Aのカニューレをカフ付きからカフなしへ変更した。
イ 看護師の巡回による観察
被告病院入院中のAの特徴としては,痰が異常に多いことで,これは経
口挿管による人工呼吸管理をしていた入院当初から,気管切開術による人工呼吸管
理となった以降も変わらなかった。それゆえに,担当看護師は,昼夜を問わず,A
の巡回の際には,痰が噴出していないかを確認するとともに,頻繁に吸引を施行し
ていた。
ウ 夜間の人員配置
10月13日から12月15日までの間,Aが入院していた内科病棟で
は,当直看護師が2名いた。当直の看護師は,原則として仮眠を取らず,緊急事態
が発生した場合もすぐに対処できるようにしながら,患者の巡回や介護用オムツの
交換,体位交換等をしていた。
エ 心電図モニターによる観察
Aは,入院当初より,夜間(午後9時より翌朝午前9時),心電図モニ
ターを装着していた。モニタリングの結果は,ナースステーションに設置されたモ
ニターに無線で送られ,心拍数が1分間に140を上回った場合及び55を下回っ
た場合にアラーム音が鳴るように設定されていた。
これによって,当直看護師は,夜間でも,Aの心拍の様子を観察するこ
とができていたし,ナースステーションにいない間も,Aに急変が生じれば,すぐ
にそれを察知することができた。
(3) 前記処置が適切であって原告ら主張の各処置は不要であったこと
原告らは,Aにサチュレーションモニターを装着すべきであったと主張す
るが,サチュレーションモニターは,当時のAのように,心疾患も抱えておらず,
体力も回復しつつある患者については,通常装着しない。Aの心拍の様子は,前
記(2)エで主張したとおり,心電図モニターの装着により十分観察できていたもので
ある。
なお,当時,被告病院には,集中治療室のオールマイティモニター本体に
有線で接続するサチュレーションモニターしかなく,一般病棟には,酸素飽和度が
低下した場合にアラームで警告するというような装置はなかった。全国的にみて,
一般病院としては,同じような環境であり,被告病院の設備が特に不十分であった
ということはない。
(4) 結論
被告病院は,Aの痰詰まり又は誤嚥による呼吸停止に備えて十分な対応処
置をとっており,被告病院の対応に過失は一切ない。
2 被告病院が,Aの心電図モニターがフラットになっていることが判明した後
に適切な対応を怠った過失の有無
(原告らの主張)
(1) 発見した看護師がとるべきであった対応
Aは,就寝中に体動が激しかったわけではなく,また,心電図モニターの
電極が体から外れることはめったにある事態ではない。
したがって,心電図モニターがフラットになっている以上,これを発見し
た看護師は,直ちにAの呼吸の有無を確認し,呼吸がなければすぐに宿直医に連絡
をとるべきであった。
(2) その後に行われるべき処置
一般的に,心停止から5分を超えると不可逆的な神経細胞障害が始まり,
20分を超えると神経機能の回復はほぼ絶望的となるので,心停止後の蘇生措置の
実施は,3分以内に着手することが必要である。
しかるに,本件では,Aの心停止の発見までに,既に5分以上経過してい
たことが明らかであるから,被告病院は,即刻自発呼吸のための蘇生措置をとるべ
きであった。
(3) 被告病院が前記各処置を怠ったこと
被告病院の担当看護師は,Aの心電図モニターがフラットになっているの
を認識してから,Aの病室に行き,就寝中にはあまり外れることが考えられないに
もかかわらず,まず,電極が体から外れていないかを確認し,それから,痰の吸引
を確認して初めて瞳孔散大,脈及び呼吸の停止を発見したのであり,前記(1)の直ち
にAの呼吸の有無を確認し,呼吸がなければすぐに宿直医に連絡をとるべき処置を
怠った。
被告病院においては,Aに対し,即刻の蘇生措置が必要であり,心電図モ
ニターの運び入れなどはその後ですればよいことであるにもかかわらず,心電図モ
ニターを運び入れるという余分な行動をとったものであり,その結果として,同日
午前5時に呼吸停止を確認した後,同日午前6時10分の自発呼吸回復までに1時
間以上かかったものであり,(2)の即刻自発呼吸のための蘇生措置をとるべきことを
怠った。
(4) 結論
以上により,被告病院には,Aの心電図モニターがフラットになっている
ことが判明した後に適切な対応を怠った過失がある。
(被告の主張)
(1) 被告病院の看護体制並びに被告病院の担当看護師及び医師らが実際にとっ
た対応
ア 12月14日から15日にかけての被告病院の看護体制
被告病院の看護体制は,前記1(被告の主張)(2)イ及びウのとおりであ
る。
Aは,前記1(被告の主張)(2)イで主張したとおり,痰の多い患者であ
ったこと,また,急変が生じた前夜である同月14日より介護用オムツを使うよう
になったこと及び同日の夕食時に食べ物を吐いてしまったことから,当直担当看護
師は,当夜は,特に頻回に観察をしようとしていた。
イ 被告担当看護師及び医師らが実際に取った対応
担当看護師が,当夜の午前3時ころ及び午前4時30分ころに,確認し
たAの様子は,特に変わったところはなく,心拍数も60代と安定していた。
その後,担当看護師は,午前4時40分ころより,担当患者の介護用オ
ムツの交換と体位交換に回り,廊下に出た際,Aの心電図モニターのアラームが鳴
っているのに気付き,ナースステーションにモニターを確認するために行った。同
モニターを見ると,フラット(平坦)になっていたことから,Aの病室へ様子を見
に行った。Aの様子は,通常と変わりなかったことから,担当看護師は,心電図の
電極が外れていないか確認し,次に,脈及び呼吸を確認したところ,脈は触れず呼
吸もなかった。そして,痰の吸引を施行したが,痰も引けなかった。
そこで,担当看護師は,もう一人の当直看護師を呼びに行くとともに,
当直医に連絡し,心電図のモニター部分や救急カートを病室に運び,心臓マッサー
ジを施行し始めた。
当直医が到着した後,担当看護師は,当直医にカルテを示すとともに,
Aの様子を口頭で伝えた。そして,当直医と担当看護師とで,Aに対し,交互に人
工呼吸と心臓マッサージを施行したところ,午前6時10分ころ,自発呼吸と心拍
が再開した。
そこで,ベンチレーターによる人工呼吸に変更し,主治医に引き継い
だ。
(2) 前記対応が適切であったこと
患者に呼吸停止,心拍停止というような急変が生じた際には,まず心電図
の電極や,脈,呼吸を確認することで患者の状態を正確に把握するよう努め,次
に,心拍と呼吸の再開を目指し,心臓マッサージと人工呼吸を施行するということ
が基本である。
担当看護師及び当直医の前記(1)イの対応は,患者の状態を把握し,心拍と
呼吸の再開を目指すという極めて基本的に忠実な対応であり,いずれも至極適切で
ある。
(3) 結論
以上より,Aの心電図モニターがフラットになっていることが判明した後
に被告病院の担当看護師及び当直医がとった対応は,いずれも極めて適切であり,
被告の対応に過失は一切ない。
3 因果関係
(原告らの主張)
Aは,痰詰まりによる呼吸停止により,一旦は呼吸が回復したものの,長時
間の心停止によりいわば植物状態という重篤な障害が生じ,多臓器不全により死亡
した。この結果は,前記1,2に主張した被告病院の過失がなければ,生じなかっ
たものである。
したがって,被告病院が痰詰まり又は誤嚥による呼吸停止に備えて十分な対
応を怠った過失又は被告病院がAの心電図モニターがフラットになっていることが
判明した後に適切な対応を怠った過失と,Aの死亡結果との間には,因果関係が存
在する。
(被告の主張)
 そもそも,前記1,2(被告の主張)に記載したとおり,被告の対応には一
切過失がない。
 加えて,Aに急変が生じたのは,12月15日早朝であり,Aが死亡したの
は,平成11年3月24日であって,その間実に3箇月以上が経過している。
 したがって,原告ら主張の各過失とAの死亡との間に因果関係はない。
4 損害額
(原告らの主張)
(1) 慰謝料         金3000万円
Aは,軽いけいれん状態が続いたため被告病院を受診し,一週間後には退
院予定であったところ,本来症状を改善,治癒すべき被告病院の医師らの重大な過
失により死に至ったものであり,31歳という将来あるAの無念を多少とも慰謝す
るには少なくとも金3000万円以上をもってするのが相当である。
(2) 逸失利益金6098万2819円
(計算)
 死亡時年齢    31才
 就労可能年数   67才-31才=36年
 ライプニッツ係数 年利2%で計算すると,25.488842とな
る。
 年間収入     当時無職者のため,賃金センサス平成10年・全産
業女子労働者・全年齢平均
金341万7900円
 生活費控除    30%
(3) 原告らの相続
(1),(2)について,Aの死亡により,原告らが2分の1ずつ相続した。
(4) 原告ら独自の慰謝料各金1000万円
Aは,原告らの唯一人の子供であって,文字どおりかけがえのない宝であ
り,原告らの生きがい,命そのものであった。原告らがAの死亡によって被った精
神的苦痛は計り知れず,これを多少なりとも慰謝するには,独自にそれぞれ金10
00万円をもってするのが相当である。
(5) 葬儀費用    金150万円(原告ら75万円ずつ負担)
(6) 弁護士費用金750万円(原告ら375万円ずつ負担)
(7) 合計 金1億1998万2819円
(被告の主張)
争う。
別紙診療経過一覧表(省略)

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