弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役四月に処する。
         理    由
 本件控訴の趣意は、水戸地方検察庁下妻支部検察官検事清水孝一提出の控訴趣意
書に記載されたとおりであるから、これを引用する。
 一 控訴趣意一(法令適用の誤りの主張)について。
 <要旨>所論は、原判決は、原判示第二の酒酔い運転の罪と業務上過失傷害の罪を
観念的競合の関係にあるとし、これと同第一の無免許運転の罪、同第三の一
の救護義務違反の罪及び同第三の二の報告義務違反の罪が併合罪であるとして、右
の酒酔い運転の罪と業務上過失傷害の罪につき一罪として業務上過失傷害の罪の刑
で処断することとしたうえ禁錮刑を選択し、無免許運転の罪につき罰金刑を、救護
義務違反の罪及び報告義務違反の罪につき懲役刑をそれぞれ選択して併合罪の加重
をし、主文の刑を言い渡しているが、酒酔い運転の罪は業務上過失傷害の罪と併合
罪の関係にあり、他方無免許運転の罪とは観念的競合の関係にあると解すべきであ
るから、原判決は法令の適用を誤つている。そして、右の酒酔い運転の罪と無免許
運転の罪は一罪として重い酒酔い運転の罪の刑で処断すべきところ、原判決は無免
許運転の罪につき罰金刑を選択して主文の刑を言い渡しているから、原判決は処断
刑でない罪につき刑の言渡しをしたことになり、原判決の法令適用の誤りは判決に
影響を及ぼすことが明らかであるというのである。
 そこで検討すると、原判示第一の無免許運転の罪と同第二の酒酔い運転の罪と
は、一個の車両運転行為が同時に右両罪に該当する場合であるから観念的競合の関
係にあると解すべきであり、他方右の酒酔い運転の罪とその運転中に行なわれた業
務上過失傷害の罪とは、酒に酔つた状態で運転したことが本件過失の内容をなして
いる場合であるけれども、社会的見解上は別個のものと評価すべきであるから、右
両罪は併合罪の関係にあると解すべきである。従つて、原判決には所論の指摘する
とおり法令の適用に誤りがある。そこで、さらに右の誤りが判決に影響を及ぼすこ
とが明らかであるか否かについて考えるに、原判決の見解に従つて法令を適用する
と、無免許運転の罪についてだけ罰金刑を選択したのであるから、その処断刑は、
四年六月以下の懲役と五万円以下の罰金となるが、仮りに無免許運転の罪について
懲役刑を選択した場合は、その処断刑は、四年六月以下の懲役となる。これに対
し、前記のとおり正当に法令を適用すると、その処断刑は、観念的競合の関係にあ
る無免許運転の罪と酒酔い運転の罪につき科刑上の処理をしたうえ、これについて
罰金刑を選択した場合は、四年六月以下の懲役(業務上過失傷害の罪については原
判決と同じく禁錮刑を選択する。)と五万円以下の罰金となり、懲役刑を選択した
場合は、四年六月以下の懲役となる。以上によれば、罪数についていずれの見解を
とつても処断刑に変りがないことになる。そうとすると、原判決の法令適用の誤り
は、いまだ判決に影響を及ぼすことが明らかであるとはいえないから、論旨は理由
がない。
 二 控訴趣意二(量刑不当の主張)について。
 所論は、原判決は被告人を懲役七月及び罰金三万円に処したうえ右懲役刑につい
て刑の執行を猶予したが、本件犯情にかんがみると右の量刑は著るしく軽きに失し
不当であるというのである。
 そこで記録を調査し、当審における事実取調べの結果を併せて考察するに、本件
は、被告人が無免許でしかも酒に酔つた状態で軽四輪自動車を運転し、酔いのため
に前方注視が困難になつたのに運転を中止せず、そのまま運転を継続した過失によ
り、道路の左側で車を停めてタイヤを交換していた被害者を約九・五メートルに近
づいて発見し右転把したが間に合わず、自車を同人に衝突させて転倒させ、同人に
対し加療約一〇日間を要する腰部等の打撲傷を負わせる交通事故を起こしたのに、
同人を救護する義務をつくさずかつ法所定の事項を警察官に報告しなかつたもので
ある。そして被告人が車を運転することになつたのは、車を運転していた友人が酩
酊したためであるが、被告人らは車を運転しているのに自制することなく飲酒を重
ねたものであり、また帰宅するためには他にいくらも方法があつたのであるから、
本件運転の動機に格別酌むべき事情があつたとはいえない。しかも被告人は運転時
呼気一リツトルにつき一・〇〇ミリグラム以上のアルコールを保有していたもので
その酔いの程度は高く、走行距離も九キロメートルに及んでいる。このような事案
の性質・態様のほか、被告人が本件の一ヶ月前に無免許運転幇助の罪で罰金一万円
に処せられていることを考え合わせると、被告人の刑責は重く、被告人の年齢、反
省の態度等被告人に有利な事情を十分斟酌しても、原判決が右懲役刑につき刑の執
行を猶予したのは量刑軽きに失し不当であると判断される。それで論旨は理由があ
る。
 よつて、刑訴法三九七条一項、三八一条により原判決を破棄し、同法四〇〇条但
書に従い当裁判所においてさらに次のとおり裁判をする。
 原判決が確定した事実に法令を適用すると、原判示第一の所為は道路交通法一一
八条一項一号、六四条に、同第二の所為中酒酔い運転の所為は同法一一七条の二第
一号、六五条一項に、業務上過失傷害の所為は刑法二一一条前段、罰金等臨時措置
法三条一項一号に、同第三の一の所為は道路交通法一一七条、七二条一項前段に、
同第三の二の所為は同法一一九条一項一〇号、七二条一項後段にそれぞれ該当する
が、右の無免許運転の所為と酒酔い運転の所為は一個の行為で二個の罪名に触れる
場合であるから、刑法五四条一項前段、一〇条により一罪として重い酒酔い運転の
罪の刑で処断することとしたうえ懲役刑を選択し、業務上過失傷害罪については禁
錮刑を、原判示第三の一及び二の各罪については懲役刑をそれぞれ選択し、以上は
同法四五条前段の併合罪なので、同法四七条本文、一〇条により最も重い原判示第
三の一の罪の懲役刑に法定の加重をし、その刑期の範囲内で前記の情状を考量して
被告人を懲役四月に処することとする。
 よつて、主文のとおり判決をする。
 (裁判長裁判官 寺尾正二 裁判官 丸山喜左エ門 裁判官 田尾健二郎)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛