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平成23年3月25日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成20年(ワ)第27220号損害賠償等請求事件
口頭弁論終結日平成22年11月1日
判決
東京都港区<以下略>
原告日本電気株式会社
同訴訟代理人弁護士高取芳宏
同神庭豊久
同大羽裕子
同一色和郎
東京都千代田区<以下略>
被告株式会社トーマジャパン
埼玉県鴻巣市<以下略>
被告A
被告ら訴訟代理人弁護士早稲本和徳
同大友良浩
同隈部泰正
同辻本恵太
同訴訟復代理人弁護士森山航洋
主文
1被告らは,原告に対し,連帯して2億6035万7332円を支払え。
2原告の被告らに対するその余の請求をいずれも棄却する。
3訴訟費用は,これを4分し,その1を原告の,その余を被告らの各負担
とする。
4この判決は,1項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
1被告らは,原告に対し,連帯して3億4769万7472円及びこれに対す
る平成20年11月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2仮執行宣言
第2事案の概要
本件は,中華人民共和国(以下「中国」という。),台湾及び中華人民共和
国香港特別行政区(以下「香港」という。)において,別紙商標権目録記載の
各商標権(以下「原告商標権」という。)を有する原告が,被告株式会社トー
マジャパン(以下「被告トーマジャパン」という。)及びその代表者である被
告Aに対し,被告らが使用した「NEC」の文字標章(以下「NEC標章」と
いう。)について,①被告らは,権限なく,NEC標章を使用し並びに訴外B
及び訴外華禮東方有限公司(以下「訴外JRオリエンタル」という。)に対し,
NEC標章の使用を許諾した(侵害行為①),②被告らは,訴外B及び訴外J
Rオリエンタルと共同して,権限なく,第三者に対し,NEC標章の使用を再
許諾し,ロイヤルティを取得した(侵害行為②),③被告らは,訴外B及び訴
外JRオリエンタル又は訴外盛業昌股份有限公司(以下「訴外盛業昌」とい
う。)と共同して,NEC標章を付した製品の製造販売に主体的に関与した
(侵害行為③)と主張して,商標権侵害に基づく損害賠償請求として,消極損
害として,ア上記侵害行為③について,偽造品の製造販売による損害26億2
319万0457円(主位的主張),イ上記侵害行為①について,商標使用料
相当額3億1398万9116円(二次的主張),又は,ウ上記侵害行為②に
ついて,商標再使用料相当額1億1930万6730円(三次的主張),及び,
積極損害として,上記ア~ウについての調査費用等2億2839万0742円
の合計額のうち,一部請求として,3億4769万7472円及びこれに対す
る本訴状送達日の翌日等である平成20年11月21日から支払済みまで民法
所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める事案である。
被告らにNEC標章の使用権限及び使用許諾権限がなかったことについて当
事者間に争いはなく(被告らは,被告トーマジャパンに上記権限がないことは,
現在では十分に理解しているが,売買基本契約に基づいて被告トーマジャパン
がNEC標章を付した商品を製造するサプライヤーの選定や原告製品の販売ル
ートの選定に関する権限があるものと誤解していたとする。),そのため,N
EC標章を付した製品の製造販売について,被告らが関与して,訴外B及び訴
外JRオリエンタルと共同して侵害行為を行ったか,それとも訴外B及び訴外
JRオリエンタルが被告らとは関係なく独自に侵害行為を行ったかが主要な争
点である。共同不法行為の要件に則していえば,被告ら故意の有無並びに訴外
B及び訴外JRオリエンタルとの共同意思の有無が主要な争点となる。その争
点と関連して,被告トーマジャパン作成名義の多くの文書について,それが被
告トーマジャパンによって作成されたものか,訴外JRオリエンタルによって
偽造されたものかが副次的な争点となっている。また,被告らは,訴外JRオ
リエンタルによる侵害行為の内容は知らないとするため,侵害行為の成否も争
点となる。その他の争点については,後記「4争点」のとおりである。
なお,上記のとおり,被告らは,被告トーマジャパンがNEC標章を付した
商品を製造するサプライヤーの選定権限等があると誤解していたとするところ
から,以下においては,被告らの権限についても判断することとする。
1前提となる事実(争いのない事実以外は,証拠を項目の末尾に記載する。な
お,原告は外国語による書証を各書証の枝番1とし,その訳文を枝番2として
提出しているが,以下においては,これらを一括して枝番なしで表記する。)
(1)当事者等(甲8,弁論の全趣旨)
ア原告は,電気通信機械器具,コンピュータその他の電子応用機械器具等
の製造販売等を業とする株式会社である。
イ被告トーマジャパンは,家庭用電気製品,家庭用電気機械器具,ディス
プレイ器具等の販売及び輸出入等を業とする株式会社である。同被告の代
表者は,被告Aである。
ウ訴外JRオリエンタルは,本店が香港に所在し,中国本土,香港及び台
湾等を中心に,家庭用電気製品等を販売することを業とする会社である。
同訴外会社の代表者は,訴外Bである。
エ訴外盛業昌は,本店が台湾に所在し,電器卸売等を業とする会社である。
同訴外会社の代表者は,訴外Bである。
オ訴外NECビューテクノロジー株式会社(以下,「訴外NECビューテ
クノロジー」という。)は,平成12年1月18日に設立された原告の関
連会社であり,映像表示装置,通信端末機器,コンピュータ周辺機器,家
庭用各種電子電器の設計,開発,製造及び販売等を業とする株式会社であ
る。同訴外会社は,原告の他の関連会社である訴外日本電気ホームエレク
トロニクス株式会社(以下「訴外NECホームエレクトロニクス」とい
う。)が,平成13年2月28日に解散決議により解散した際,その事業
を承継したものであり,平成19年4月には,商号を,NECディスプレ
イソリューションズ株式会社に変更した。
(2)原告商標権
原告は,別紙商標権目録記載のとおり,次の原告商標権を有している。
(甲31~33,405,406)。
ア中国における商標権(甲31)
(ア)登録番号第1533916号(以下「中国における原告商標
権」という。)
指定商品第9類
(コンピュータ)キーボード,レーザーディスクプレー
ヤー,サラウンド増幅器,コンピュータ周辺機器等
(以上,31の翻訳による。)
期間平成13年3月7日から平成23年3月6日まで
商標権者原告
(イ)なお,指定商品であるコンピュータ周辺機器にマウスが含まれるこ
とは,当事者間において争いがない。
イ台湾における商標権(甲32,405)
(ア)登録番号連合商標登録番号第00691680号
(正商標番号第00008530号)(以下「台湾における原告商標権
1」という。)
有効期間平成10年11月1日から平成20年10月31日まで
指定商品台湾商標法施行細則第24条第86類
スピーカー,レーザーレコード,サラウンド増幅器,カ
ラーテレビ受像機(以上,甲32の翻訳による。なお,
原告は,指定商品にレコーダーがあると主張するが,こ
れを認めるに足りる証拠はない。)
商標権者原告
(イ)登録番号連合商標登録番号第01033243号
(正商標番号第00008530号)(以下「台湾にお
ける原告商標権2」という。)
有効期間平成15年2月16日から平成20年10月31日まで
指定商品台湾商標法施行細則第49条第9類
パソコン用キーボード,パソコン用マウス,CDプレー
ヤー,電子調節器,オーディオ等(以上,甲405の翻
訳による。),カメラ及びカメラ機材,高品位テレビ及
びラジオ受信機,電気コイル等(以上,原告第11準備
書面添付の別紙の翻訳による。)
商標権者原告
(ウ)なお,(ア)の商標権の指定商品であるスピーカーにスピーカーセット
が含まれることは,当事者間において争いがない。
ウ香港における商標権(甲33,406)
(ア)登録番号第200003111AA号(以下「香港における原
告商標権という。)
登録日平成11年3月9日
(実際の登録日は,平成12年2月21日)
有効期限平成28年3月9日
指定商品第9類
電気装置・機器及び電子装置・機器,データ受信,送信,
記憶,中継及び入出力のための電気装置・機器及び電子
装置・機器,コンピュータ周辺機器及び端末機,CD
ROMドライブ,光ディスク・プレーヤー,コンパクト
・ディスク・プレーヤー,光学装置・機器,音声及び映
像の記録,中継,複製のための装置,磁気データ記憶媒
体,録音ディスク,デジタル・ビデオ・イメージ・ディ
スク及び光ディスク等(以上,甲406の翻訳によ
る。)
商標権者原告
(イ)なお,指定商品である録音ディスクにDVD-R,CD-Rが含ま
れることは,当事者間において争いがない。
(3)原告による関連会社に対するNEC標章の使用許諾(甲10~12,弁
論の全趣旨)
ア原告と訴外NECホームエレクトロニクスは,平成7年4月1日,次の
内容のNEC標章等使用許諾契約を締結した(甲11)。
(ア)原告は,同訴外会社に対し,原告商標権に基づき,NEC標章を同
訴外会社の商品及び役務について商標として使用する通常使用権を許諾
する(3条1項)。
(イ)通常使用権の許諾の対象となる商品及び役務は…同訴外会社が販売
する全商品及び同訴外会社が提供する全役務とする(3条2項)。
(ウ)同訴外会社は,第三者に対し,NEC標章等の再使用許諾を行って
はならない(7条)。
イ原告と訴外NECビューテクノロジーは,平成12年1月18日付け
(甲10)及び平成15年3月26日付け(甲12)で,NEC標章等使
用許諾契約を締結し,ア(ア)~(ウ)と同様の合意をした(3条1項,2項,
7条)。
ウ訴外NECビューテクノロジーは,訴外NECホームエレクトロニクス
が平成13年2月28日に解散決議により解散した際,その事業を承継し
た。
(4)訴外NECホームエレクトロニクスと,被告トーマジャパン間の取引の
経緯(乙1,3)
ア訴外NECホームエレクトロニクスと被告トーマジャパンは,平成11
年8月31日付けで売買基本契約(乙1)を締結し,同訴外会社が,その
商品であるアンプ内蔵スピーカー(2種類)を継続的に同被告に売り渡し,
同被告はこれを買い受けること(1条)等を合意した。
イ訴外NECホームエレクトロニクスと被告トーマジャパンは,平成11
年10月4日付けで,「覚書」(乙3)を締結し,アの売買基本契約(乙
1)の対象製品について,アンプ内蔵スピーカー(2種類)の他,FM/
AMCDシステム,VCD,バッテリー,アンプ,ポータブルCD,C
D-Rを追加した。
ウなお,訴外NECホームエレクトロニクスは,OEM方式により,複数
の外国製造業者にNEC標章を付した製品の製造供給を委託し,当該製造
業者から製品の供給を受けた上,被告トーマジャパンに販売するようにな
ったが,その際,同被告に対し,製造業者等に関して調査を依頼したこと
があった。
エ(3)ウのとおり,訴外NECホームエレクトロニクスが平成13年2月
28日に解散した後は,その事業を訴外NECビューテクノロジーが承継
した。
(5)訴外NECビューテクノロジーと被告トーマジャパン間の取引の経過
(甲13~16,19,25)
ア訴外NECビューテクノロジーと被告トーマジャパンは,平成13年8
月1日付けで売買基本契約(甲13)を締結し,同訴外会社は,その商品
(①スピーカー,②CDプレーヤー及びその関連製品,③PC周辺機器)
を継続的に被告トーマジャパンに売り渡し,同被告はこれを買い受けるこ
と(1条),契約期間は,契約締結日から1年間とし,期間満了の3か月
前までに当事者から何らの申し出がない場合は,さらに1年間これを延長
し,以後,期間満了ごとにこの例によること(20条)等を合意した。
イ訴外NECビューテクノロジーは,(4)ウと同様,OEM方式により製
造されたNEC標章を付した製品の供給を受け,これを販売していたが,
具体的には,被告トーマジャパンが紹介した台湾所在の訴外TOPWO
RLDCO.,LTD.(以下「訴外TOPWORLD」といい,代
表者は,訴外Cであるが,台湾で登記された会社ではなかった。)を通じ
て,製品の製造代金を支払うとともに,製品の供給を受け,これを被告ト
ーマジャパンに販売していた。
ウ訴外NECビューテクノロジーと被告トーマジャパンは,平成13年8
月1日付けで「覚書」(甲14)を締結し,アの売買基本契約(甲13)
に定める全事業について,平成14年8月までに収束することを合意した
(なお,覚書(甲14)には,収束する事業の範囲について,「CDプレ
ーヤーの事業」と記載されているが,同訴外会社は,平成14年4月22
日付け書面(甲15)において,また,同被告は,同年7月2日付け書面
(甲16)において,いずれも,覚書(甲14)では,アの売買基本契約
(甲13)の全事業について,収束に向けての取引限度額を定めた旨の認
識を示しているから,上記のように解するのが相当である。被告は,音楽
を聴くための機械であるMP3プレーヤーは,コンピュータ周辺機器では
なく,その後も,複数の型式で発売され,平成15年には,同製品が対象
製品に追加されたと主張するが,MP3プレーヤーは,通常の場合,PC
等を通じてデータを取得することが予定されているから,コンピュータ周
辺機器に該当すると認められ,収束する事業の内容に含まれていたと解す
るのが相当である。)。
エ訴外NECビューテクノロジーと被告トーマジャパンは,平成13年8
月1日,「覚書」(乙4)を締結し,同被告の手配により訴外NECビュ
ーテクノロジーが訴外TOPWORLDから調達し,同被告に販売する
製品については,同被告において,アフターサービス,及び,対象製品の
欠陥に起因又は関連して,人の生命,身体又は訴外NECビューテクノロ
ジーの財産に係る被害が生じ,同訴外会社が損害賠償義務を負う場合の一
切の責任を負う旨を合意した。
オ被告トーマジャパンは,訴外NECビューテクノロジーから購入した製
品については,訴外JRオリエンタルに販売していたが,平成14年4月
17日には,訴外NECビューテクノロジーと同被告間で確認書(甲1
9)が締結され,同被告が,同訴外会社と契約したCDプレーヤー及びそ
の関連製品の発売元であり,その代理店であること(1条),訴外JRオ
リエンタルが,中国本土,香港,台湾の市場において,上記製品の独占販
売等について,同被告から全権を委託され,その全責務を代行し,地域指
定総代理店と称することが承認されていること(3条)等を確認した。
カ訴外NECビューテクノロジーは,被告トーマジャパンに対し,平成1
5年4月1日付け「売買基本契約解約申入れの件」と題する書面(甲2
5)により,アの売買基本契約(甲13)20条に基づき,同契約(甲1
3),ウの覚書(甲14),エの覚書(乙4),オの確認書(甲19)に
ついて,同年7月31日をもって解約する旨の通知をした。
キ訴外NECビューテクノロジーと被告トーマジャパン間の上記各契約は,
平成15年7月31日をもって終了した。
(6)被告トーマジャパンと訴外B間の授権確認書(甲47)
ア被告トーマジャパンと訴外Bは,訴外NECビューテクノロジーと同被
告間の取引関係が継続していた時期である平成14年1月15日,次の内
容の「授権確認書」(甲47)と題する契約を締結した。
(ア)被告トーマジャパンと訴外Bは,同被告が,訴外NECビューテク
ノロジーとの契約に基づき,①スピーカー,②CDプレーヤー及びその
関連製品,③PC周辺機器に,NEC標章を冠して製造販売できる権利
を有することを確認する(1項)。
(イ)被告トーマジャパンは,訴外Bに対し,地域指定総代理店の権利を
授権する(2項)。
(ウ)(イ)の権利は,授権した地域で販売する上記商品を製造する権利を含
むものとする(3項)。
(エ)訴外Bは,販売する商品の明細(商品名,型名,数量,販売単価,
仕入単価等)を被告トーマジャパンに提示し,その事前承認を得なけれ
ばならない(5項)。
(オ)訴外Bは,被告トーマジャパンの事前承認を得た商品について,仕
入数量に仕入単価をかけた総額の7%を,授権料として同被告に支払う
(6項)。
イアの授権確認書(甲47)は,被告トーマジャパンが,上記①~③の商
品にNEC標章を付して「製造」する権利を有することを確認した上で
((ア)),訴外Bに対し,上記商品の製造及び販売権限を授権するもので
ある((イ)(ウ))。
(7)訴外JRオリエンタルにおける,原告商標権に基づくNEC標章の使用
権限の有無及びNEC標章を付した製品の製造販売等に関する契約並びに訴
外JRオリエンタルと原告(補助参加人・訴外NECビューテクノロジー)
との間の訴訟(甲20,21,306)
ア訴外Bが代表者である訴外JRオリエンタルは,次項以下のとおり,中
国,台湾,香港に所在する各社との間で,NEC標章を付した製品の協力
開発,販売について,協力契約を締結し,当該製品の製造について,製造
会社との間で,製造委託契約を締結した(なお,被告らは,次項以下の中
国,台湾及び香港の各社や,訴外JRオリエンタル名義で協力契約を締結
した事実,契約によっては,その後解約された事実,訴外JRオリエンタ
ル名義で協力利潤金を得ていた事実,製造委託契約を締結した事実等につ
いては,いずれも知らないとし,原告がその根拠として提出する書証につ
いても,署名及び(又は)押印のされていない書証を含め,不知と認否す
るものの,特段,その成立の真正を争ってはいない。しかし,念のため,
「第3当裁判所の判断」においては,それらの契約が成立していた事実
等及び協力利潤金の取得等について判断する。)。
イ訴外B又は訴外JRオリエンタルは,各社との協力契約又は製造委託契
約を締結するに当たり,現実には,NEC標章の使用について,何らの権
利を有していなかった。
この点について,訴外JRオリエンタルは,平成17年に至り,東京地
方裁判所に対し,原告を相手方として(なお,訴外NECビューテクノロ
ジーが,被告に補助参加した。),商標使用権確認請求訴訟を提起し(平
成17年(ワ)第17078号),訴外JRオリエンタルが,中国本土,
香港及び台湾において,主位的には,本件商標権に基づくNEC標章をを
付したスピーカー,CDプレーヤー及びその関連製品並びにコンピュータ
周辺機器を製造販売する権利を有することの確認を求め,予備的には,本
件商標権に基づくNEC標章と,訴外JRオリエンタルの登録商標である
「D’cube」の標章を併記したMP3プレーヤーを製造販売する権利
を有することの確認を求めたが,同裁判所は,平成20年3月19日,原
告の請求をいずれも棄却する旨の判決を言い渡した(甲20)。訴外JR
オリエンタルは,上記判決に対して控訴したが(平成20年(ネ)第10
047号),知的財産高等裁判所は,平成20年9月30日,控訴を棄却
する旨の判決を言い渡した(甲21)。同判決は,その後,確定した。
(以下「JRオリエンタル訴訟」という。)
ウなお,被告Aは,JRオリエンタル訴訟において,平成19年12月2
0日,同訴外会社側の証人として,証人尋問を受けた(甲306)。
(8)訴外JRオリエンタルの中国におけるNEC標章を付した製品の製造販
売等に関する契約
訴外Bが代表者である訴外JRオリエンタルは,次のとおり,中国に所在
する各社との間で,NEC標章を付した製品の協力開発,販売について,協
力契約を締結し,当該製品の製造について,製造会社との間で,製造委託契
約を締結した(ただし,前記のとおり,訴外JRオリエンタルと各製造業者
との間の協力契約に係る契約書の成立の真正又は契約の成立については,念
のため,台湾,香港分を含めて,後記「第3当裁判所の判断」の各該当箇
所で判断する。)。
ア訴外中山市日電數碼科技有限公司(中国広東省中山市<以下略>所在。
英語表記ZhongshanRidianDigitalTech
nologyCo.,Limited。以下,「訴外Ridian」と
いう。)関係(甲49,81~87)
(ア)協力契約(甲49)
訴外JRオリエンタルは,訴外Ridianとの間で,平成16年8
月6日付けで協力契約(甲49)を締結し,NEC標章を付した製品の
協力開発,販売に関し,次のとおり合意した(契約書の標題は「合作契
約書」とされているが,以下,他の製造会社との同種契約を含めて「協
力契約」という。)。
①契約期間は,平成16年8月6日から平成19年12月31日まで
とする(1条)。
②製品は,NECのダウンロード式MP3・MP4プレーヤー,ラジ
オ等すべての関連製品とする(3条)。
③取引プロセス等は,次のとおりである(3条,6条)。
a訴外Ridianは,訴外JRオリエンタルが承認した工場を選
択し,上記製品の生産を委託することができる。上記製品を生産す
る前に,訴外Ridianはサンプルを提供し,訴外JRオリエン
タルに審査してもらわなければならない。訴外JRオリエンタルが
すべての規格を確認し,国際バーコード,型番,シリアルナンバー
を作成した後,訴外JRオリエンタルの発注により,生産が開始さ
れる。
b上記製品は,訴外Ridianが訴外JRオリエンタルに発注し,
訴外JRオリエンタルが工場に発注する。
c上記製品の代金については,訴外Ridianと工場が,訴外J
Rオリエンタルの注文リストに基づき直接に取引を行い,その債権
に訴外JRオリエンタルは関係を有しない。
d上記製品については,訴外Ridianが,中国市場における総
代理を担当する。
④年間目標は,初年度(平成16年8月6日から平成17年12月3
1日まで)において,出荷価格ベースでダウンロード式MP3・MP
4プレーヤーのすべての関連製品で6000万人民元を下回らない
(4条)。
⑤協力利潤金は,初年度において,ダウンロード式MP3・MP4プ
レーヤーのすべての関連製品の基本利潤金は,600万香港ドルを下
回らない。訴外Ridianは,訴外JRオリエンタルに対し,契約
時に100万香港ドルを現金で支払うとともに,次の小切手を発行し,
残りの500万香港ドルを支払う。ラジオについては実際発注金額の
6%を協力利潤金として支払う(5条,別紙)。
満期日金額(香港ドル)小切手番号
平成16年9月6日200万ドル841317
同年9月5日200万ドル841320
同年6月30日15万ドル223677
同年7月30日15万ドル223678
同年8月30日15万ドル223679
同年9月30日15万ドル223680
同年10月30日15万ドル223681
同年11月30日15万ドル223682
同年12月30日10万ドル223683
上記協力契約の内容は分かりにくいが,まず訴外Ridianについ
ての契約内容をみると,最終的な販売数量につながる製品の発注の発意
は訴外Ridianがすることになっており(6条①),中国市場にお
ける販売の総代理を訴外Ridianが担当することとされている(6
条③)。また,訴外Ridianが訴外JRオリエンタルに対し製品の
売上高に応じた協力利潤金を支払うことになっている。これらの点から
みると,実質的な製造販売の主体を訴外Ridianとみることが可能
である。
他方,訴外JRオリエンタルは訴外Ridianに製造委託するとい
う契約であるから,訴外JRオリエンタルは訴外Ridianから一旦
取得する形式をとっていると考えられるものの,前記のとおり,その販
売を中国市場における総代理店となる訴外Ridianに委託しており,
自ら販売して利益を上げるという構造ではない。そして,訴外Ridi
anによる販売利益が訴外Ridianから訴外JRオリエンタルに還
流する構造となっている(6条③,5条①)。さらに,訴外Ridia
nが訴外JRオリエンタルの承認した工場の生産を委託した場合,その
注文は訴外JRオリエンタルがするものの,訴外JRオリエンタルは承
認工場との債権関係には関係を有しないもののとされている。したがっ
て,訴外JRオリエンタルは,自ら工場の選択に関与し(3条),承認
工場への発注に関与することにより生産数量を把握することができるよ
うにされているものの,製造販売による利益を直接取得するものではな
く,あくまでも協力利潤金として受け取るにすぎない(3条)。
以上のような協力契約の内容をその実質に則して考えれば,訴外JR
オリエンタルがNECの標章を付した製品の製造を訴外Ridianに
許諾することにより,訴外Ridianが製造工場へ再委託して同製品
を製造し,その製造した製品を訴外Ridianが総代理店として販売
することにより販売利益を取得し,その販売利益から訴外JRオリエン
タルに協力利潤金を支払い,結果的に,訴外JRオリエンタルがNEC
標章の許諾料に相当すると評価できる額の金員を協力利潤金の名目で取
得することができる契約であると解することができる。
(イ)訴外Ridianに対する製造委託契約(甲81)
訴外JRオリエンタルは,訴外Ridianとの間で,平成16年9
月20日付けで製造委託契約(甲81)を締結し,訴外Ridianに
対し,NECブランドのMP3プレーヤー(型番MI-R5,MI-R
7)の製造を委託した(同契約書2条には,訴外Ridianはいかな
る方法によっても訴外JRオリエンタルの製造委託する商標を製造委託
製品又は型番以外のものに使用してはならないとの条項があり,上記N
ECブランドのMP3プレーヤーとは,NEC標章を付したMP3プレ
ーヤーをいうものと解される。以下の契約における「NECブランド」
についても同様である。)。
(ウ)訴外Lidanに対する製造委託契約(甲82~87)
①訴外Ridianは,中山市理丹電器有限公司(中国広東省中山市
<以下略>所在。英語表記ZhongshanLidanEle
ctronicApplianceCo.,Ltd。以下「訴外
Lidan」という。)との間で,平成16年9月20日付けで各製
造委託契約(甲82,83)を締結し,NECブランドのMP3プレ
ーヤー(型番MI-R5,MI-R7,甲82。型番MI-R5,M
I-R5PRO,MI-R7,MI-R7PRO,甲83)の製
造を委託した。
②訴外JRオリエンタルは,訴外Lidanとの間で,平成16年1
1月25日付けで製造委託契約(甲84)を締結し,NECブランド
のMP3プレーヤー(型番MI-R930,MI-R930PR
O)の製造を委託した。
③訴外JRオリエンタルは,訴外Lidanとの間で,平成16年1
2月1日付けで製造委託契約(甲85)を締結し,NECブランドの
MP3プレーヤー(型番MI-R6,MI-R8,MI-R8PR
O)の製造を委託した。
④訴外JRオリエンタルは,訴外Lidanとの間で,平成17年1
月6日付けで製造委託契約(甲86,87)を締結し,NECブラン
ドのミニスピーカー(型番CD-J101,CD-J303,甲8
6),MP3プレーヤー(型番MI-R9,MI-R9PRO,M
I-R10,MI-R10CN,甲87)の製造を委託した。
(エ)販売授権(甲88)
訴外Ridianは,訴外上海華寧オーディオデジタル有限公司に対
し,平成17年7月1日付けの「授権書」と題する書面(甲88)によ
り,NEC標章を付したMP3プレーヤーについて,販売総代理店とし
ての権限を授権した。
イ訴外珠海躍華電子有限公司(中国広東省珠海市<以下略>所在。英語表
記ZhuhaiYuehuaElectronicsCo.Ltd。
以下,「訴外YuehuaElectronics」という。)関係
(甲50,90~97)
(ア)協力契約(甲50)
訴外JRオリエンタルは,訴外YuehuaElectronic
sとの間で,平成16年4月20日付けで協力契約(甲50)を締結し,
NEC標章を付した製品の協力開発,販売に関し,次のとおり合意した。
①契約期間は,平成16年4月20日から同年7月19日までとする
(1条)。
②製品は,NECのキーボード,マウスとする(3条)。
③取引プロセス等は,上記ア(ア)③と,おおむね同様である(3条,
6条)。
④営業目標は,最初の注文(期間は平成16年4月20日から同年7
月19日まで)において,334万人民元を下回らない(4条)。
⑤協力利潤金は,最初の注文において,20万人民元を下回らない。
訴外YuehuaElectronicsは,訴外JRオリエンタ
ルに対し,契約時に20万元を現金で支払う(5条)。
(イ)製造委託契約(甲90~97)
①訴外JRオリエンタルは,訴外珠海躍華科学技術発展有限公司(中
国広東省珠海市<以下略>所在。英語表記ZhuhaiYuehu
aTechnologyDevelopmentCo.,L
td。以下,「訴外YuehuaTechnology」とい
う。)との間で,平成16年9月8日付けで製造委託契約(甲90)
を締結し,NECブランドのコンピュータ用キーボード(型番CY-
K6080,CY-K6050,CY-K6020,CY-K600
0)の製造を委託した。
②訴外JRオリエンタルは,訴外深圳市金積嘉電子工業有限公司(中
国広東省深圳市<以下略>所在。英語表記ShenzhenJee
jaElectronicIndustryCo.,Ltd。
以下「訴外Jeeja」という。)に対し,平成16年6月10日付
けで製造委託契約(甲91)を締結し,NECブランドのコンピュー
タ用キーボード(型番K6020)の製造を委託した。
③訴外JRオリエンタルは,訴外精模電子科学技術(深圳)有限公司
(中国広東省深圳市<以下略>所在)との間で,平成16年6月10
日付けで製造委託契約(甲92)を締結し,NECブランドのコンピ
ュータ用キーボード(型番K6080)の製造を委託した。
④訴外JRオリエンタルは,訴外深圳市明意電子科学技術有限公司
(中国広東省深圳市<以下略>所在)との間で,平成16年6月10
日付けで製造委託契約(甲93)を締結し,NECブランドのコンピ
ュータ用キーボード(型番K6050)の製造を委託した。
⑤訴外JRオリエンタルは,訴外広州奥龍電子科学技術有限公司(中
国広東省広州市<以下略>所在)との間で,平成16年6月10日付
けで製造委託契約(甲94)を締結し,NECブランドのコンピュー
タ用キーボード(型番K6000)の製造を委託した。
⑥訴外JRオリエンタルは,訴外広州納普斯電子有限公司(中国広東
省広州市<以下略>所在)との間で,平成16年6月10日付けで製
造委託契約(甲95)を締結し,NECブランドのコンピュータ用マ
ウス(型番M680,M650,M600)の製造を委託した。
⑦訴外JRオリエンタルは,訴外深圳市好利得コンピュータ技術有限
公司(中国広東省深圳市<以下略>所在)との間で,平成16年6月
10日付けで製造委託契約(甲96)を締結し,NECブランドのコ
ンピュータ用マウス(型番M660,M620)の製造を委託した。
⑧訴外JRオリエンタルは,訴外珠海経済特区華爾特電子有限公司
(中国広東省珠海市<以下略>所在)との間で,平成16年6月10
日付けで製造委託契約(甲97)を締結し,NECブランドのコンピ
ュータ用マウス(型番M690)の製造を委託した。
ウ訴外中山市嘉寶電子有限公司(中国広東省中山市<以下略>所在。英語
表記ZhongshanKapoElectronicsCo.,
Ltd。以下,「訴外Kapo」という。)関係(甲51,98,99,
104)
(ア)協力契約(甲51)
訴外JRオリエンタルは,訴外Kapoとの間で,平成16年4月1
日付けで協力契約(甲51)を締結し,NEC標章を付した製品の協力
開発,販売に関し,次のとおり合意した。
①契約期間は,平成16年4月1日から平成19年5月31日までと
する(1条)。
②製品は,NECのホームシアター用スピーカー(スピーカー及びそ
の付属品),アンプリファイア,ミニステレオセット,マイクとする
(3条)。
③取引プロセス等は,上記ア(ア)③と,おおむね同様である(3条,
6条)。
④年間目標は,初年度(平成16年4月1日から平成17年5月31
日まで)において,出荷価格ベースで2000万人民元を下回らない
(4条)。
⑤協力利潤金は,初年度において,基本利潤金は人民元80万元を下
回らない。訴外Kapoは,訴外JRオリエンタルに対し,契約時に
20万元を現金で支払うとともに,残りの60万元を支払うため,次
の小切手を発行する(5条,別紙)。
満期日金額(人民元)小切手番号
平成16年6月1日6万元記載なし
同年7月1日6万元記載なし
同年8月1日6万元記載なし
同年9月1日6万元記載なし
同年10月1日6万元記載なし
同年11月1日6万元記載なし
同年12月1日6万元記載なし
平成17年1月1日6万元記載なし
同年2月1日6万元記載なし
同年3月1日6万元記載なし
(イ)製造委託契約(甲98)
訴外JRオリエンタルは,広州市雅頓電子有限公司(中国広東省広州
市<以下略>所在。英語表記GuangzhouArdenAud
ioCompanyLimited。以下「訴外Arden」とい
う。)との間で,平成15年12月15日付けで製造委託契約(甲9
8)を締結し,NECブランドのアンプリファイア(型番NKA-70
0,NKA-800,NKA-900)の製造を委託した。
(ウ)輸出授権・販売授権(甲99,104)
①訴外JRオリエンタルは,訴外中山市粤糧経貿輸出入有限公司
(中国広東省中山市<以下略>所在)との間で,平成15年12月
22日付けで輸出授権契約(甲99)を締結し,次のNECブラン
ドの製品の輸出について授権した。
a訴外Kapoに製造委託したスピーカーユニット(型番NSP
-660F,NSP-660CS,NSP-770F,NSP-
770CS,NSP-880KF,NSP-990F,NSP-
990C,NSP-990S)
b訴外Ardenに製造委託したパワーアンプ(型番NKA-7
00),スピーカーユニット(型番NKA-800,NKA-9
00)
②訴外Ardenは,訴外南京仙楽電子電器有限公司に対し,平成
19年10月1日付け授権書(甲104)を交付し,中国江蘇省代
理店として,訴外ArdenのNECブランドの製品(ミニオーデ
ィオセット,ホームシアター,サラウンドサウンドシステム)の販
売等を行う権利を付与した。
エ訴外中山市萬信電子工業有限公司(中国広東省中山市<以下略>所在。
英語表記ZhongshanWorthyElectronics
IndustryCo.,Ltd。以下,「訴外Worthy」と
いう。)関係(甲52,74,105)
(ア)協力契約(甲52,74)
①訴外JRオリエンタルは,訴外Worthyとの間で,平成16
年5月1日付けで協力契約(甲52)を締結し,NEC標章を付し
た製品の協力開発,販売に関し,次のとおり合意した。
a契約期間は,平成16年5月1日から平成19年5月31日ま
でとする(1条)。
b製品は,NECのミニCDプレーヤー(VCD,MP3機能を
搭載)とする(3条)。
c取引プロセス等は,上記ア(ア)③と,おおむね同様である(3
条,6条)。
d年間目標は,初年度(平成16年5月1日から平成17年5月
31日まで)において,出荷価格ベースで人民元1200万元を
下回らない(4条)。
e協力利潤金は,初年度において,基本利潤金は人民元144万
元を下回らない。訴外Worthyは,訴外JRオリエンタルに
対し,契約時に80万元を現金で支払うとともに,残りの64万
元を支払うために,次の小切手を発行する(5条,別紙)。
満期日金額(人民元)小切手番号
平成16年7月1日6万元記載なし
同年8月1日6万元記載なし
同年9月1日6万元記載なし
同年10月1日6万元記載なし
同年11月1日6万元記載なし
同年12月1日6万元記載なし
平成17年1月1日6万元記載なし
同年2月1日6万元記載なし
同年3月1日6万元記載なし
同年4月1日6万元記載なし
同年5月1日4万元記載なし
f当事者が本契約の規定に違反し,又は本契約の条項を履行でき
なかったときは,違反していない側は,直ちに本契約を解約し,
違反する側に損害賠償を請求することができる(16条)。
②①の協力契約は,訴外Worthyが平成16年12月1日以降,
協力利潤金を支払わなかったため,訴外JRオリエンタルにより,①
の協力契約16条に基づき,平成17年1月24日付けで解約された
(甲74)。
(イ)製造委託契約(甲105)
訴外JRオリエンタルは,中山市万信精工電子製造有限公司(中国広
東省中山市<以下略>所在。以下「訴外Worthy精工」という。)
との間で,平成16年7月15日付けで製造委託契約(甲105)を締
結し,NECブランドのポータブルプレーヤー(型番NV-800)の
製造を委託した。
(9)台湾におけるNEC標章を付した製品の製造販売等に関する契約
訴外JRオリエンタルは,次のとおり,台湾に所在する各社との間で,N
EC標章を付した製品の協力開発,販売について,協力契約を締結し,当該
製品の製造について,製造会社との間で,製造委託契約を締結した。
ア訴外喬遠國際股份有限公司(台湾台北県板橋市<以下略>所在。英語表
記ChyauYeuanInternationalCo.,Lt
d。以下,「訴外ChyauYeuan」という。)関係(甲53,5
4,103)
(ア)協力契約(甲53,78)
①訴外JRオリエンタルは,訴外ChyauYeuanとの間で,
平成15年10月1日付けで協力契約(甲53)を締結し,NEC標
章を付した製品の協力開発,販売に関し,次のとおり合意した。
a契約期間は,平成15年10月1日から平成19年4月30日ま
でとする(1条)。
b製品は,NECブランドのホームシアター用スピーカー,アンプ
リファイア,マイク(3条)とする。
c取引プロセス等は,次のとおりである(3条,6条)。
(a)訴外ChyauYeuanは,訴外JRオリエンタルが承
認した工場を選択し,上記製品の生産を委託することができる。
上記製品を生産する前に,訴外ChyauYeuanはサンプ
ルを提供し,訴外JRオリエンタルに審査してもらわなければな
らない。訴外JRオリエンタルがすべての規格を確認し,国際バ
ーコード,型番,シリアルナンバーを作成した後,訴外Chya
uYeuanが生産を始めることができる。
(b)工場が台湾以外の地域にある製品(輸入商品)は,訴外Ch
yauYeuanが訴外JRオリエンタルに発注し,訴外JR
オリエンタルが工場に発注する。
(c)工場が台湾にある製品(台湾製商品)は,訴外Chyau
Yeuanが訴外JRオリエンタルの関連企業である訴外盛業昌
に発注し,訴外盛業昌が工場に発注する。
d年間目標は,初年度(平成15年10月1日から平成17年4月
30日まで)において,出荷価格ベースで2000万新台湾ドルを
下回らない(4条)。
e協力利潤金は,初年度において,基本利潤金は新台湾ドル160
万ドルを下回らない。訴外ChyauYeuanは,訴外JRオ
リエンタルに対し,契約時に2割を現金で支払うとともに,残りの
8割を支払うための小切手を発行しなければならない。訴外Chy
auYeuanは,次の協力利潤金の小切手を,訴外盛業昌に発
行する(5条,別紙)。
満期日金額(新台湾ドル)小切手番号
平成15年10月6日16万ドルUW6216701
同日16万ドルAA0141425
平成16年4月6日9万ドルUW6216702
同日9万ドルAA0141426
同年6月6日11万ドルUW6216703
同日11万ドルAA0141427
同年8月6日11万ドルUW6216704
同日11万ドルAA0141428
同年10月6日11万ドルUW6216705
同日11万ドルAA0141429
同年12月6日11万ドルUW6216706
同日11万ドルAA0141430
平成17年2月6日11万ドルUW6216707
同日11万ドルAA0141431
②なお,上記小切手のうち,いずれも満期日が平成17年2月6日,
額面が11万ドルの小切手(UW6216707,AA014143
1)は,その後,訴外ChyauYeuanに返還された(甲7
8)。
(イ)協力契約(甲54)
訴外JRオリエンタルは,訴外ChyauYeuanとの間で,平
成17年4月1日付けで協力契約(甲54)を締結し,NEC標章を付
した製品の協力開発,販売に関し,次のとおり合意した。
①契約期間は,平成17年4月1日から平成18年3月31日までと
する(2条)。
②製品は,NECブランドのホームシアターステレオ,アンプリファ
イア,マイクとする(3条)。
③取引プロセス等は,上記ア(ア)①cと,おおむね同様である(5
条)。
④協力利潤金は,訴外JRオリエンタル又は訴外盛業鑫が工場に毎回
発注する金額の8%とし,上記製品の代金とともに訴外JRオリエン
タルに支払う。上記利潤金は,前年度の新台湾ドル160万ドル未満
部分を控除する。
(ウ)製造委託契約(甲103)
訴外盛業昌は,訴外ChyauYeuanに対し,平成15年9月
25日付けで「製造許諾書」(甲103)を交付し,NECブランドの
スピーカー,パワーアンプの製造を委託した。
イ訴外凱晉有限公司(台湾台中市<以下略>所在。英語表記,KaeJ
innInternationalCo.,Ltd。以下,「訴外K
aeJinn」という。)関係(甲55,75,76,107~11
9)
(ア)協力契約(甲55)
訴外JRオリエンタルは,訴外KaeJinnとの間で,平成15
年12月10日付けで協力契約(甲55)を締結し,NEC標章を付し
た製品の協力開発,販売に関し,次のとおり合意した。
①契約期間は,平成15年12月10日から平成19年3月31日ま
でとする(1条)。
②製品は,NECのミニCDプレーヤー,ポータブルCDプレーヤー,
卓上型CDステレオとする(3条)。
③取引プロセス等は,上記ア(ア)①c(a)と,おおむね同様である
(3条)。ただし,製品の発注方法についての合意は存しない。
④年間目標は,初年度(平成15年12月10日から平成17年3月
31日まで)において,出荷価格ベースで4000万新台湾ドルを下
回らない(4条)。
⑤協力利潤金は,初年度において,基本利潤金は新台湾ドル400万
ドルを下回らない。訴外KaeJinnは,訴外JRオリエンタル
に対し,契約時に2割を現金で支払い,8割を手形で支払うこととす
る(5条)。
(イ)販売契約(甲73,75,76)
①訴外JRオリエンタルは,訴外KaeJinnとの間で,平成1
5年2月28日付け(甲75)及び同年12月10日付け(甲76)
で各販売契約を締結し,NEC製品の販売に関し,次のとおり合意を
した。
a契約期間は,平成15年2月28日から平成20年2月28日ま
で(甲75第1条),平成15年12月10日から平成19年3月
31日まで(甲76第1条)とする。
b製品は,NECのミニCDプレーヤー,ポータブルCDプレーヤ
ー,卓上型CDステレオとする(甲75第3条,甲76第3条)。
c年間目標は,毎年(甲75第4条),初年度(期間は,平成15
年12月10日から平成17年3月31日まで。甲76第4条)に
おいて,出荷価格ベースで新台湾ドル4000万ドルを下回らない。
d販売利潤金は,毎年(甲75第5条),初年度(甲76第5条)
において,基本利潤金は新台湾ドル400万ドルを下回らない。訴
外KaeJinnは,訴外JRオリエンタルに対し,契約時に2
割を現金で支払い,残りの8割を手形で支払うこととする。
e訴外KaeJinnは,eの約定(甲76第5条)に基づき,
次の販売収益の小切手を,訴外盛業昌に発行する(別紙)。
満期日金額(新台湾ドル)小切手番号
平成15年12月31日80万ドルSA9259929
平成16年5月20日26万ドルSA9259930
同年6月20日26万ドルSA9259931
同年7月20日26万ドルSA9259932
同年8月20日26万ドルSA9259933
同年9月20日26万ドルSA9259934
同年10月20日26万ドルSA9259935
同年11月20日26万ドルSA9259936
同年12月20日26万ドルSA9259937
平成17年1月20日26万ドルSA9259938
同年2月20日26万ドルSA9259939
同年3月20日26万ドルSA9259940
同年4月20日34万ドルSA9259941
②訴外KaeJinnは,平成16年12月20日付の支払分より
ロイヤルティの支払を停止した(甲73)。
(ウ)製造委託契約(甲106~119)
①訴外JRオリエンタルは,訴外深圳大金科学技術有限公司(英語表
記DaJinTechnologyCo.,Ltd.。以下,
「訴外DaJinTechnology」という。)に対し,平
成16年2月24日付けで「商標使用同意書」と題する書面(甲10
8)を交付し,NECブランドのポータブルCDプレーヤーの製造を
委託し,委託製造に関連する商標を使用することに同意した。
②訴外JRオリエンタルは,訴外毅力電子貿易有限公司(香港九龍紅
磡民楽街<以下略>所在。以下「訴外NgaiLik」という。)
との間で,平成16年4月25日付け等で製造委託契約を締結し(甲
106,107),NECブランドのCDステレオシステム(型番N
CX-509,NCX-311,NCX-126,NCX-208),
CDポータブルプレーヤー(型番NCM32,NCM33)の製造を
委託した。
③訴外JRオリエンタルは,訴外香港得昌国際有限公司(香港葵涌利
木道<以下略>所在)に対し,平成16年8月5日付けで製造委託契
約(甲109)を締結し,NECブランドのVCD卓上型ステレオ
(型番NVD-266)の製造を委託した。
訴外JRオリエンタルは,訴外香港得昌国際有限公司(ただし,所
在地は,香港葵涌華星街<以下略>とされている。)との間で,平成
16年10月7日付けで製造委託契約(甲110)を締結し,NEC
ブランドのDVDプレーヤー(型番ZE-2001)の製造を委託し
た。
④訴外JRオリエンタルは,訴外深圳得力電子製品工場(中国広東省
深圳市<以下略>所在)に対し,平成16年8月5日付けで製造委託
契約(甲111)を締結し,NECブランドのVCD卓上型ステレオ
(型番NVD-266)の製造を委託した。
⑤訴外JRオリエンタルは,訴外恵州市誠信電子工場(中国広東省恵
州市<以下略>所在)との間で,平成16年8月5日付けで製造委託
契約(甲116)を締結し,NECブランドのDVDプレーヤー(型
番ZE-2001),DVD卓上型ステレオ(型番NDV-803
3)の製造を委託した。
⑥訴外JRオリエンタルは,訴外深圳市宏伍科信実業有限公司(中国
広東省深圳市<以下略>所在)に対し,平成16年8月5日付けで製
造委託契約(甲115)を締結し,NECブランドのDVDプレーヤ
ー(型番ZE-2001),DVD卓上型ステレオ(型番NDV-8
033)の製造を委託した。
⑦訴外JRオリエンタルは,訴外深圳市思岸実業有限公司(中国広東
省深圳市<以下略>所在)との間で,平成16年8月18日付けで製
造委託契約(甲113)を締結し,NECブランドのVCD卓上型ス
テレオ用スピーカーセット(型番NVD-266)の製造を委託した。
訴外JRオリエンタルは,訴外深圳市思岸実業有限公司との間で,
平成16年11月23日付けでも製造委託契約(甲114)を締結し,
NECブランドのDVD卓上型ステレオセット(型番NDV-803
3)の製造を委託した。
⑧訴外JRオリエンタルは,訴外琅琅デジタル科学技術有限公司(中
国広東省東莞市<以下略>所在)との間で,平成16年9月24日付
けで製造委託契約(甲117)を締結し,NECブランドのデジタル
レシーバーボックス(型番NAT-5688)の製造を委託した。
⑨訴外JRオリエンタルは,訴外深圳市華海嘉実業有限公司(中国広
東省深圳市<以下略>所在)との間で,平成16年9月24日付けで
製造委託契約(甲119)を締結し,NECブランドのデジタルレシ
ーバーボックス(型番NAT-5688)の製造を委託した。
⑩訴外JRオリエンタルは,訴外深圳宝安西郷得力電子製品工場に
(中国広東省深圳市<以下略>所在)との間で,平成16年10月7
日付けで製造委託契約(甲112)を締結し,NECブランドのDV
Dプレーヤー(型番ZE-2001)の製造を委託した。
⑪訴外JRオリエンタルは,訴外濱生電子有限公司(中国広東省仏山
市<以下略>所在)との間で,平成16年11月23日付けで製造委
託契約(甲118)を締結し,NECブランドのDVD卓上型ステレ
オ用スピーカーセット(型番NDV-8033)の製造を委託した。
ウ訴外景祺企業股份有限公司(台湾台中市<以下略>所在。英語表記Fi
neFortuneEnterpriseCo.,Ltd。以下,
「訴外FineFortune」という。)関係(甲56,57,12
0,121)
(ア)協力契約(甲56,57,73)
①訴外JRオリエンタルは,訴外FineFortuneとの間で,
平成15年12月31日付けで協力契約(甲56)を締結し,NEC
標章を付した製品の協力開発,販売に関し,次のとおり合意した。
a契約期間は,平成16年1月1日から平成19年3月31日まで
とする(1条,6条)。
b製品は,NECブランドのパソコン周辺機器であり,詳細には,
ペン型シークレットICレコーダー,フラッシュメモリ,MP3プ
レーヤー,ウェブカメラ,パソコン用TVチューナボックス,パソ
コン用スピーカー,イヤホン,マイク,延長コードとする(3条)。
c協力方式は,上記ア(ア)①cと,おおむね同様である(5条)。
d最低購買金額は,初年度において,5000万新台湾ドルとする
(6条)。
e協力利潤金は,訴外JRオリエンタル又は訴外盛業昌が工場に毎
回発注する金額の10%とし,製品代金とともに支払う。利潤金は
前年度の新台湾ドル300万元の未満部分を差し引く。初年につい
ては,訴外FineFortuneは,訴外JRオリエンタルに
対し,新台湾ドル300万ドルを支払い,契約時に新台湾ドル10
0万ドルの小切手を支払い,同時に,平成16年6月から平成17
年3月までの,毎月5日が満期日で,額面が新台湾ドル20万ドル
の小切手を10枚発行する(7条)。
②訴外JRオリエンタルは,訴外FineFortuneとの間で,
平成17年4月1日付けで協力契約(甲57)を締結し,NEC標章
を付した製品の協力開発,販売に関し,次のとおり合意した。
a契約期間は,平成17年4月1日から平成18年3月31日まで
とする(1条)。
b製品は,NECブランドのパソコン周辺機器であり,詳細には,
ペン型シークレットICレコーダー,フラッシュメモリ,MP3プ
レーヤー,ウェブカメラ,パソコン用スピーカー,イヤホン,マイ
ク,延長コードとする(3条)。
c協力方式は,上記ア(ア)①cと,おおむね同様である(5条)。
d協力利潤金は,訴外JRオリエンタル又は訴外盛業鑫が工場に毎
回発注する金額の10%とし,製品代金とともに支払う。協力利潤
金は,前年度の新台湾ドル300万ドル未満部分を差し引く(6
条)。
③訴外FineFortuneは,平成16年末までに協力利潤金
合計240万新台湾ドルを支払ったが,平成17年以降の支払分より,
支払を停止した(甲73)。
(イ)製造委託(甲120,121)
①訴外JRオリエンタルは,訴外信利電子有限公司(香港新界葵涌永
業街<以下略>所在。英語表記TrulyElectronics
ManufacturingLtd.。以下,「訴外Trul
y」という。)との間で,平成16年5月25日付けで製造委託契約
(甲120)を締結し,NECブランドのMP3プレーヤー(型番N
IC-M01(V),NIC-M04(V))の製造を委託した。
②訴外JRオリエンタルは,訴外数億国際株式有限公司(台湾台北市
<以下略>所在。以下「訴外Digitfab」という。)との間で,
平成16年7月13日付けで製造委託契約(甲121)を締結し,N
ECブランドのMP3プレーヤー(型番NIC-U01(H))の製
造を委託した。
(10)香港におけるNEC標章を付した製品の製造販売等に関する契約
訴外JRオリエンタルは,次のとおり,香港に所在する各社との間で,N
EC標章を付した製品の協力開発,販売について,協力契約を締結し,当該
製品の製造について,製造会社との間で,製造委託契約を締結した。
ア訴外宝麗雅国際有限公司(香港九龍長沙湾大南西街<以下略>所在。英
語表記PromediaInternationalLtd.。以下
「訴外Promedia」という。)関係
(ア)協力契約
訴外JRオリエンタルは,訴外Promediaとの間で,平成15
年12月10日付けで協力契約(甲58)を締結し,NEC標章を付し
た製品の協力開発,販売に関し,次のとおり合意した。
①契約期間は,平成15年12月10日から平成21年1月31日ま
でとする(1条)。
②製品は,NECのDVD-R/RW/RAM,CDR/RW,FD
とする(2条)。
③取引プロセス等は,次のとおりである(2条)。
訴外Promediaは,訴外JRオリエンタルが承認した工場を
選択し,上記製品の生産を委託することができる。上記製品を生産す
る前に,訴外Promediaはサンプルを提供し,訴外JRオリエ
ンタルに審査してもらわなければならない。訴外JRオリエンタルが
承認し,国際バーコード,型番を作成した後,生産を始めることがで
きる。
④協力利潤金は,DVD-R/RW/RAMは8%,CDR/RWは
6%,FDは5%であり,初年度の基本利潤金は最低100万米ドル
とする。訴外Promediaは,訴外JRオリエンタルに対し,契
約時に銀行手形でその5割を支払うとともに,額面が6.25万米ド
ルの小切手(満期日は,平成16年6月から平成17年1月まで,各
月10日とする。)を8枚発行し,残りの5割を支払う(4条)。
(イ)協力契約
訴外JRオリエンタルは,訴外Promediaとの間で,平成17
年2月1日付けで「確認契約書」と題する協力契約(甲59)を締結し,
次のとおり合意した。
①契約期間は,平成17年2月1日から平成18年7月31日までと
する(1条)。
②製品は,NECのDVD-R/RW/RAM,CDR/RW,FD,
MP3,CD及びCD関連製品,コンピュータ周辺機器とする(2
条)。
③取引プロセス等は,上記ア(ア)③と,おおむね同様次のとおりであ
る(2条)。
④協力利潤金は,DVD-R/RW/RAMは8%,CDR/RWは
6%,FDは5%,その他の製品は10%であり,基本利潤金は最低
60万米ドルとする。訴外Promediaは,訴外JRオリエンタ
ルに対し,契約時に銀行手形でその5割を支払うとともに,額面が3
万米ドルの小切手(満期日は,平成17年8月から平成18年5月ま
で,各月1日とする。)を10枚発行し,残りの5割を支払う(4
条)。
イ訴外高橋電子媒體有限公司(香港九龍深水捗青山道<以下略>所在。英
語表記TakahashiElectronicMediaLt
d.。以下,「訴外Takahashi」という。)関係
(ア)協力契約
訴外JRオリエンタルは,訴外Takahashiとの間で,平成1
5年12月10日付けで協力契約(甲60)を締結し,NEC製品の協
力開発,販売に関し,次のとおり合意した。
①契約期間は,平成16年3月10日から平成21年1月31日まで
とする(1条)。
②製品は,NECのDVD-R/RW/RAM,CDR/RW,FD
とする(2条)。
③取引プロセス等は,上記ア(ア)③と,おおむね同様である(2条)。
④協力利潤金は,DVD-R/RW/RAMは8%,CDR/RWは
6%,FDは5%であり,初年度において,基本利潤金は最低100
万米ドルとする。訴外Takahashiは,訴外JRオリエンタル
に対し,契約時に銀行手形でその5割を支払うとともに,額面が6.
25万米ドルの小切手(満期日は,平成16年6月から平成17年1
月まで,各月10日とする。)を8枚発行し,残りの5割を支払う
(4条)。
(イ)協力契約
訴外JRオリエンタルは,訴外Takahashiとの間で,平成1
7年4月1日付けで協力契約を締結し,NEC製品の協力開発,販売に
関し,次のとおり合意した(甲61)。
①契約期間は,平成17年4月1日から平成18年9月30日までと
する(1条)。
②製品は,NECのDVD-R/RW/RAM,CDR/RW,FD
とする(2条)。
③取引プロセス等は,上記ア(ア)③と,おおむね同様である(2条)。
④協力利潤金は,DVD-R/RW/RAMは8%,CDR/RWは
6%,FDは5%である。初年度(平成17年4月1日から平成18
年9月30日まで)において,協力利潤金は50万米ドルを下回らな
い。ただし,当該協力利潤金の徴収方式は,ヨーロッパ市場が開放さ
れてからまた協議する(3条,4条)。
(ウ)権限委任状(甲77)
訴外JRオリエンタルは,訴外Takahashiに対し,平成16
年6月1日付けで,権限委任状(甲77)を発行し,CDR,CDRW,
DVD+R,DVD-R,DVD+RW,DVD-RW及びそれらの付
属品を含むNEC標章を付した訴外JRオリエンタル製の未使用記録媒
体製品の独占的授権販売店として,訴外Takahashiを指定する
旨を定めた。
(エ)訴外Promedia及び訴外Takahashiの協力利潤金に
ついては,訴外Promediaは,平成16年末までに93万750
0米国ドルを支払ったが,平成17年1月10日支払分より,支払を停
止した(甲73)。
ウ製造委託(甲122~128)
(ア)訴外JRオリエンタルは,訴外OptodiscTechnol
ogyCorporation(台湾<以下略>所在)との間で,平
成16年3月10日付けで製造委託契約(甲122)を締結するととも
に,同社に対して同月15日付けで「委託製造書」と題する書面(甲1
24)を交付し,NECブランドのDVD-RW/DVD+RWの製造
を委託した。
(イ)訴外JRオリエンタルは,訴外UmeDiscLtd.(香港<
以下略>所在)との間で,平成16年3月10日付けで製造委託契約
(甲123)を締結し,NECブランドのDVD+/-Rの製造を委託
した。
(ウ)訴外JRオリエンタルは,訴外CMCMagneticsCo
rporationに対し,平成16年5月1日付けで「委託製造書」
と題する書面(甲125)を交付し,NECブランドのDVD-R/D
VD+Rの製造を委託した。
(エ)訴外JRオリエンタルは,訴外FMC(中国<以下略>所在)との
間で,平成16年3月10日付けで製造委託契約(甲126)を締結し,
NECブランドのCD-R/CD-RWの製造を委託した。
(オ)訴外JRオリエンタルは,訴外DataFactoryLtd.
(中国<以下略>所在)との間で,平成16年5月18日付けで製造委
託契約(甲127)を締結し,NECブランドのCDウォレット,パッ
キングCDR/DVDRの製造を委託した。
(カ)訴外JRオリエンタルは,訴外TRI-BESTTECHNOL
OGYLTD(中国<以下略>所在)との間で,平成17年4月22
日付けで製造委託契約(甲128)を締結し,NECブランドの録音デ
ィスクの製造を委託した。
(11)NEC標章を付した製品の販売,押収等(甲1,2,34~37,10
0,303,313,336~339,344~346,354,355)
ア中国関係(甲1,2,34~37,89,143,144,304,3
05)
(ア)中国では,平成17年11月11日時点において,NEC標章を付
したMP3プレーヤー(型番MI-R18)が販売されたり(甲89),
平成20年2月26日ころの時点において,NEC標章を付したコンピ
ュータキーボード(型番CY-K6080,CY-K6000)及びマ
ウス(型番M660/680)が販売されたり(甲34~37,304,
305),同年7月29日時点において,中国広東省深圳市所在の店舗
において,訴外Ardenが製造したNEC標章を付したホームシアタ
ー(型番M-730)が販売される等していた(甲1,2)。
(イ)訴外Lidanにおいては,平成17年11月30日に実施された
中国広東省中山市工商行政管理局の調査により,NEC標章を付したラ
ジオ980台,ポータブルCDプレーヤー320台が発見された。訴外
Lidanは,平成19年3月26日,中国商標法52条,53条,中
国商標法実施条例52条に基づき,商標権侵害行為の停止及び上記製品
の没収等の処分を受けた(甲143)。
(ウ)訴外Kapoにおいては,平成17年11月30日に実施された中
国広東省中山市工商行政管理局の調査により,NEC標章を付したスピ
ーカー173台が発見された。訴外Kapoは,平成19年6月5日,
中国商標法52条,53条,中国商標法実施条例52条に基づき,商標
権侵害行為の停止及び上記製品の没収等の処分を受けた(甲144)。
(エ)訴外Ridianから授権を受けた訴外上海華寧オーディオデジタ
ル有限公司は,NEC標章を付したMP3プレーヤーについて,平成1
7年6月から平成18年12月までの間,訴外宏図三胞公司において,
小売では4種類の型番のものを合計100個,卸売では7種類の型番の
ものを合計332個,それぞれ販売した(甲303)。
(オ)原告による商標権侵害訴訟の提起
①原告は,中国上海市第2中級人民法院に対し,訴外Ridian及
び訴外Lidan他2名を相手方として,商標権侵害訴訟を提起した
ところ,第1審である同裁判所は,訴外Ridian及び訴外Lid
anによる商標権侵害行為を認め,その差止及び損害賠償の支払いを
命じる判決を言い渡し,同判決は,控訴審である中国上海市高級人民
法院においても維持された(甲300,343)。
②原告は,中国北京市第1中級人民法院に対し,訴外Yuehua
Electronics等を相手方として,商標権侵害訴訟を提起し
たところ,同裁判所は,平成20年6月6日,同訴外会社による商標
権侵害を認め,その差止め及び損害賠償の支払いを命じる判決を言い
渡した(甲145)。
イ台湾関係(甲313,337~339,345,346,354,35
5,364,365)
(ア)訴外ChyauYeuan関係(甲337,345,364)
①訴外ChyauYeuanは,NEC標章を付した製品について,
「喬遠公司NEC商品奨励プラン」と題する書面(甲337,34
5)を作成し,アンプ,スピーカーセット,アルミスピーカーセット,
スピーカースタンド,有線マイクについて,それぞれ品目,型番,仕
入価格,提案小売価格,規格等の情報を一覧表形式で記載するととも
に,陳列及び出荷について,値引きの割合を記載していた。
②訴外ChyauYeuanの所在地において,平成17年12月
20日に執行された台湾高雄県政府警察局の捜査では,NEC標章の
付され,多くの製品については型番が付されたアンプ16台,アルミ
スピーカーセット72個,スピーカーセット43個,スピーカースタ
ンド,ステレオ用コード等が押収された(甲364)。
③訴外ChyauYeuanの捜査と同一日に同警察局によって執
行された関連会社の捜査においては,NEC標章の付され,型番が付
されたアルミスピーカーセンターサラウンド73箱,トールボーイス
ピーカー二本フロントセット172個,センター+サラウンドスピー
カー三本セット37箱,8インチカラオケスピーカーフロントセット
2本38個等が押収された(甲364)。
④訴外ChyauYeuanに関係する台湾桃園県亀山郷所在の倉
庫において,同じく平成17年12月20日に執行された同警察局の
捜査では,NEC標章の付され,型番が付されたアルミスピーカー8
6箱,スピーカー360箱等が押収された(甲364)。
⑤訴外ChyauYeuanの代表者であるDは,その後,台湾地
方法院検察署により,台湾商標法違反の容疑で起訴され,台湾地方法
院において,平成20年6月30日,判決において,商標権者の承諾
なく登録商標と同一の標章を,商標登録品と同一の製品に使用したと
して有罪判決を受け,控訴審である台湾智慧財産法院においても,平
成21年2月5日,有罪判決が下された(甲146,314,321,
342)。
(イ)訴外KaeJinn関係(甲313,338,339,346,
365)
①訴外KaeJinnのホームページでは,平成16年12月1日
時点において,NEC標章を付した多くの製品が,同社の販売する商
品として紹介されていた(甲339)。
②訴外KaeJinnに関係する台湾台中市所在の倉庫において,
平成17年4月26日に執行された台湾高雄県政府警察局旗山支局の
捜査では,NEC標章が付され,多くの製品については型番が付され
たポータブルCDステレオ(型番NCX-106・313台),ポー
タブルCDウォークマン(型番NCM-36・119台),DVDス
テレオシステム(型番NDV-8033・98台,NDV-266・
670台),デジタルテレビ調節器(型番NTV-5688・140
台)等,合計1563点の製品が押収された(甲313,338,3
46,365)
③訴外KaeJinnに関係する台湾高雄市所在の倉庫において,
執行された台湾高雄県政府警察局旗山支局の捜査では,NEC標章が
付され,多くの製品については型番が付されたポータブルCDステレ
オ(型番NCM-208・596個,NCX-106・2324個,
NCX-126・1004個),ポータブルCDウォークマン(型番
NCM-33・990個,NCM-36・1510個),デジタルテ
レビ調節器(型番NTV-5688・992個)等,合計7480点
の製品が押収された(甲313)
(ウ)訴外FineFortune関係(甲354,355)
訴外FineFortuneは,MP3プレーヤー等を販売してお
り,同訴外会社の所在地において,平成17年12月20に執行された
台湾高雄県政府警察局の捜査では,NEC標章が付され,型番が付され
たMP3ウォークマン10台等が押収された(甲354,355)。
ウ香港関係(甲147,弁論の全趣旨)
(ア)原告他1名は,香港特別行政区高等法院第1審に対し,訴外Tak
ahashi他1名を被告として,原告商標権の侵害を主張して訴訟を
提起したところ,同裁判所は,平成18年12月4日,損害賠償金等を
支払うよう命ずる判決をした(甲147)。
(イ)原告は,平成20年10月9日,香港特別行政区高等法院第1審に
対し,訴外NgaiLikを被告として,原告商標権の侵害を主張し
て訴訟を提起した(甲148)。
(12)被告トーマジャパンに対する訴訟(甲23,24)
ア訴外NECホームエレクトロニクス(訴外NECビューテクノロジー)
は,東京地方裁判所に対し,平成19年,被告トーマジャパンを相手方と
して,売買基本契約に基づく売買代金請求訴訟を提起した(同裁判所平成
19年(ワ)第5572号)。同裁判所は,平成20年3月28日,同被告
に対し,537万9751米ドル23セント及びこれに対する遅延損害金
の支払を命ずる請求認容判決を言い渡した。
イ被告トーマジャパンは,東京高等裁判所に対し,上記判決について控訴
したが(同裁判所平成20年(ネ)第2549号),同裁判所は,平成20
年10月16日,控訴を棄却する旨の判決を言い渡し,同判決は,その後,
確定した。
ウ被告トーマジャパンは,上記残債務について,その支払を履行していな
い。
(13)本件訴訟の提起及び準拠法等
原告は,当裁判所に対し,平成20年9月26日,被告らに対する本件訴
訟を提起した。そして,原告は,本件において,中国,台湾及び香港におけ
る,被告らによる商標権侵害という不法行為に基づく損害賠償請求をしてい
るところ,不法行為に基づき生じる効力は,加害行為の結果が発生した地の
法が準拠法となるから(法の適用に関する通則法17条),本件における準
拠法は,中国,台湾及び香港の各国の法律となり,この点については,当事
者間においても,特段の争いはない。
2争点
(1)原告商標権の指定商品と,被告製品の類否
(2)商標権侵害行為の成否
(2)-1侵害行為①の成否
(2)-2侵害行為②の成否
(2)-3侵害行為③の成否
(2)-4被告Aの責任
(3)書証の成否
(4)故意過失及び共同不法行為の意思
(5)相当因果関係
(6)損害
(6)-1各国の法規制及び損害額算定の前提
(6)-2侵害行為③により生じた損害(損害ア)(主位的主張)
(6)-3侵害行為①により生じた損害(損害イ)(二次的主張)
(6)-4侵害行為②により生じた損害(損害ウ)(三次的主張)
(6)-5費用
3争点に関する当事者の主張
(1)原告商標権の指定商品と,被告製品の類否
(原告)
ア別紙1「NEC登録商標指定商品対照表」【中国】欄記載のとおり,中
国における原告登録商標の指定商品(第9類)について,同指定商品の機
能に鑑みれば,被告らが無権限にて商標使用許諾及び再使用許諾の対象商
品とし,かつ製造販売に関与した商品(以下「被告ら関与商品」とい
う。)であるキーボード,マウス,スピーカー(ミニスピーカー,ホーム
シアター用スピーカー,スピーカーユニット),PC周辺機器(MP3プ
レーヤー,MP4プレーヤー),ラジオ,アンプ,ミニステレオセット,
マイク,CDプレーヤー(ミニCDプレーヤー(VCD/MP3機能を搭
載)),ポータブルプレーヤーは,いずれも上記指定商品と同一又は類似
する商品である。
原告が中国で提起した訴訟においても,裁判所は,スピーカーについて,
指定商品と機能,用途,購買者が重なり合うため消費者をして誤認混同を
生じさせるおそれがあるとし,MP3プレーヤーについても,指定商品と
機能が同一であるとして,上記指定商品に類似する商品であると判断して
いる。
イ別紙1「NEC登録商標指定商品対照表」【台湾】欄記載のとおり,台
湾における原告登録商標の指定商品(第9類,第86類)について,同指
定商品の機能に鑑みれば,被告ら関与商品であるスピーカー(ホームシア
ター用スピーカー,スピーカーセット,アルミスピーカーセット,VCD
卓上型ステレオ用スピーカー,DVD卓上型ステレオ用スピーカーセット,
パソコン用スピーカー),アンプ,CDプレーヤー(ミニCDプレーヤー,
ポータブルCDプレーヤー,CDポータブルプレーヤー),PC周辺機器
(MP3プレーヤー(フラッシュメモリMP3プレーヤーを含む。)),
マイク,ステレオ(ホームシアターステレオ,VCDステレオシステム,
卓上型CDステレオ,CDステレオシステム,DVD卓上型ステレオセッ
ト,DVD卓上型ステレオ),デジタルテレビ調節器,DVDプレーヤー,
デジタルレシーバーボックス,ペン型シークレットICレコーダー,パソ
コン用TVチューナーボックス,ウェブカメラ,ヘッドホン,延長コード
は,いずれも上記指定商品と同一又は類似する商品である。
被告ら関与商品であるMP3プレーヤーは,台湾において,裁判所が,
商標権侵害を構成すると判断している。
ウ別紙1「NEC登録商標指定商品対照表」【香港】欄記載のとおり,香
港における原告登録商標の指定商品(第9類)について,スピーカー,C
Dプレーヤー,DVD-R(DVD-R,DVD-RW,DVD+RW,
DVD-RAM),CD-R(CD-R,CD-RW),パッケージング
CD-R/DVD-R,録音ディスク,PC周辺機器(MP3プレーヤ
ー),フロッピーディスクは,いずれも上記指定商品と同一又は類似する
商品である。
上記指定商品に明示されていない商品であっても,その機能の同一性に
鑑みれば,被告ら関与商品は,いずれも上記指定商品と類似する商品であ
る。
(被告ら)
ア原告の主張は争う。
イ中国における原告登録商標の指定商品(第9類)について,キーボード,
マウスが上記指定商品(キーボード,コンピュータ周辺機器)と同一又は
類似する商品であることは認め,スピーカー,MP3プレーヤーについて
は,上記指定商品と同一又は類似する商品であることを争う。中国におけ
る判決内容は本件の判断に影響を与えるものではない。
ウ台湾における原告の登録商標の指定商品(第9類,第86類)について,
スピーカーセットが上記指定商品(スピーカー)と同一又は類似する商品
であることは認め,その余のアンプ,CDプレーヤー,MP3プレーヤー
については,上記指定商品と同一又は類似する商品であることを争う。台
湾における判決内容は本件の判断に影響を与えるものではない。
エ香港における原告登録商標の指定商品(第9類)について,DVD-R,
CD-Rが上記指定商品(録音ディスク)と同一又は類似する商品である
ことは認め,その余のスピーカー,MP3プレーヤーについては,上記指
定商品と同一又は類似する商品であることを争う。
(2)商標権侵害行為の成否
(2)-1侵害行為①の成否
(原告)
ア被告らは,権限なく,NEC標章を使用し,かつ訴外B及び訴外JRオ
リエンタルに対しNEC標章の使用許諾を行った。
(ア)被告らは,被告トーマジャパン名義で,訴外Bに対し,平成14年
1月15日付けで,被告トーマジャパンがNEC標章を付した製品の製
造販売権等を有しているかのような内容の授権確認書(甲47)を交付
した。
売買基本契約(甲13)による取引が終了した後も,被告らは,被告
トーマジャパン名義で,訴外JRオリエンタルに対し,平成16年1月
1日付けで,上記授権確認書(甲47)の内容を訴外JRオリエンタル
が承継する内容の製造許諾書(甲48)を交付した。
(イ)被告らは,偽造書面である訴外NECビューテクノロジーと被告ト
ーマジャパン間の平成13年8月1日付け製造許諾承認契約書(甲2
9)を根拠に,被告トーマジャパン名義で,訴外JRオリエンタルに対
し,平成14年4月30日付け(甲44),平成16年1月1日付け
(甲325),平成17年1月1日付け(甲326)で,NEC標章を
付した製品の各製造許諾書を交付した。
被告らは,甲29は,訴外JRオリエンタル又は訴外Bが被告トーマ
ジャパンの印影を偽造した偽造書面であると主張するが,訴外JRオリ
エンタル又は訴外Bが甲29を保有するに至ったのは,被告らが甲29
を訴外オリエンタルに交付したからにほかならない。そのため,訴外J
Rオリエンタルは,訴外KaeJinn,同ChyauYeuan
及び同FineFortuneからロイヤルティを受領した上で,被
告トーマジャパンにロイヤルティを支払っていたのである(甲298)。
(ウ)以上により,被告らは,権限もなしに訴外JRオリエンタル等に対
して,中国,台湾及び香港において原告が商標登録しているNEC標章
の使用許諾を行った。
(エ)なお,訴外NECビューテクノロジーが,被告らに対し,顧客から
の質問やクレーム及びアフターサービス等に直接対応するよう依頼(乙
19~22)したのは,原告のブランド及びNEC標章の信用維持のた
め,販売者としての被告らに,適切に行ってもらう必要があったためで
ある。
イ被告らの行為は,中国,台湾及び香港における原告の登録商標権を侵害
する行為である。
(ア)中国
①中国では,権限なく登録商標と同一の商標を「使用」した場合には,
商標権侵害行為に該当するところ(中国商標法52条1項,甲13
3),中国商標法上の商標の「使用」行為には,「その他の商業活動
において商標が用いられる場合」も該当し(中国商標細則3条,甲1
34),商標使用許諾行為も「その他の商業活動において商標が用い
られる場合」に該当するため,権限なく商標使用許諾を行えば,商標
権侵害行為(中国商標法第52条1項)に該当する。そして,商標権
侵害行為により侵害者は無過失責任を負う(甲385~甲387)。
よって,被告らによる無権限での訴外JRオリエンタル等に対する
NEC標章の使用許諾行為は,中国商標法上の商標権侵害行為に該当
する(中国商標法52条1項,中国商標細則3条)。
なお,中国においては,商標登録人が商標権侵害により損害を被っ
た場合,商標登録人は侵害者に対し,中国商標法56条(甲133),
又は,中国民法通則118条(甲334)のいずれにも基づいて,損
害賠償請求訴訟を提起することが可能であるが,登録商標の侵害は,
特殊な類型の不法行為と解されていることから,一般的には中国商標
法のみに基づき損倍賠償請求訴訟を提起するという運用が実務上なさ
れている。
②そして,被告らは,共同して商標権侵害行為を行ったことにより,
共同不法行為者として連帯責任を負う(中国民法通則130条。甲1
37)。
(イ)台湾
①台湾では,商標使用許諾を行う行為は,商標の「使用」行為に該当
し(台湾商標法29条2項1号又は2号),商標権者の同意なく当該
行為を行えば,商標権侵害行為を構成する(同法61条2項,甲13
8)。
よって,被告らによる無権限での訴外JRオリエンタル等に対する
NEC標章の使用許諾行為は,台湾商標法上の商標権侵害行為に該当
する(同法61条2項,29条2項1号又は2号)。
なお,台湾においては,商標権者が商標権侵害により損害を被った
場合,登録商標権者は侵害者に対し,台湾商標法61条(甲138),
又は,台湾民法184条(甲140)のいずれにも基づいて,損害賠
償請求訴訟を提起することが可能であるが,登録商標の侵害は,特殊
な類型の不法行為と解されていることから,一般的には台湾商標法の
みに基づき損倍賠償請求訴訟を提起するという運用が実務上なされて
いる。
②そして,被告らは,共同不法行為者として,連帯責任を負う(台湾
民法185条1項,甲140)。
(ウ)香港
①香港では,コモンローによって導かれる法準則が成文化された香港
商標条例が制定されており,同条例は,商標権に関する権利義務関係
を規定し,かかる規定の適用又は解釈に疑義が生じた場合には,コモ
ンローに基づき判断される。そして,所有者の同意なく香港商標条例
18条に規定する行為を行った場合には,登録商標の侵害となるもの
とされ(同条例14条2項,甲333),かかる同条例18条に規定
する行為には「商標が登録されている商品又はサービスと同一の商品
又はサービスに関して,商標と同一の標識を業として使用する場合」
が含まれる(同条例18条1項。甲142)。そして,同条例18条
5項において,同条1項に規定する商標の「使用」の内容として,
「本条の適用上,何人も,特に次の場合は,標識を使用することにな
る。(a)標識を商品又は包装に適用する場合,(b)標識の下で販売の
ために商品を提供又は展示する場合,(c)標識の下で商品を市場に出
す場合,(d)販売のために商品を提供又は展示する目的,又は商品を
市場に出す目的で,標識の下で商品を在庫する場合,(e)標識の下で
サービスを提供又は供与する場合,(f)標識の下で商品を輸入又は輸
出する場合,又は,(g)標識を商業文書又は広告に使用する場合」が
該当すると規定されているが(甲142),同条5項の記載は,柱書
きに「特に次の場合は」とされて,例示列挙であり,商標侵害行為と
なる商標の「使用」行為は状況に応じて広範なものとされている(甲
349)。また,当該商標権侵害行為は無過失責任とされており,侵
害者の主観的事情は違法行為認定にとって何ら障害とはならないもの
とされている(甲349,甲379~甲384)。
この点,無権限での商標使用許諾行為及び再使用許諾行為は,同条
例18条5項において明確に商標の「使用」行為として規定されてい
ないものの,香港の裁判例によると,商標の使用行為に該当し,香港
商標条例第18条1項に違反する商標権侵害行為であるとみなされて
いる(甲349)。すなわち,欧州諸共同司法裁判所は,Arsen
alFootballClubPlc対Reed事件(事件
番号:第[2003]Ch454(ECJ)号)において,
侵害の対象たる商標の使用が,商標登録されていた財産権を侵害する
おそれがある場合,即ち,商標の基本的機能である出所保証に影響又
は悪影響を及ぼすおそれがある場合,登録商標の侵害となる旨判断し
ており(甲388),無権限での商標使用許諾行為及び商標再使用許
諾行為は,商標の基本的機能である出所保証に悪影響を及ぼすおそれ
がある場合であるから,上記商標権侵害行為とみなされることに疑問
の余地はない。香港特別行政区高等法院も,ライセンス及びサブライ
センスに基づく登録商標を付した製品の製造販売が問題となった事案
(GuccioGucciSpA対Gucci事件(事件番号
:第[2009]5HKLRD28(CFI号))におい
て,商標使用許諾及び再使用許諾行為が商標の使用行為に該当するこ
とを前提に,被告らが商標権侵害に基づく責任を負うと認定している
(甲389)。同裁判所は,NECCorp対JROrie
ntalCoLtdetal事件(事件番号:第HCA1
947/2008号:甲148の1)においても,無権限にて原告商
標につき使用許諾及び再使用許諾を行った訴外JRオリエンタル及び
訴外Bに対し,原告勝訴の欠席判決を下しており(甲391,39
2)上記解釈を端的に示している。
よって,被告らによる無権限での訴外JRオリエンタル等に対する
NEC標章の使用許諾行為は,商標権侵害行為に該当し(同条例18
条1項,14条2項,甲142,333,349),同条例22条
(甲142)に基づき,損害賠償請求を提起することができる。
②そして,香港において,共同して違法行為を行った個人又は法人は,
コモンローにより共同不法行為者として被侵害者が被った損害につき
連帯して賠償責任を負うものとされ,かかる共同不法行為責任は,商
標権侵害事案にも同様に妥当する(甲349)から,被告らは,上記
コモンローにより共同不法行為者として連帯責任を負う。
(被告ら)
ア原告の主張する事実はいずれも否認し,法的な評価はいずれも争う。被
告らは,原告が主張する侵害行為①を行っていないから,中国商標法,台
湾商標法,香港商標条例に規定される商標権侵害行為には該当せず,した
がって,中国民法上,台湾民法,香港のコモンローによる共同不法行為者
としての連帯責任を負うこともない。
イ香港における法規制及び慣習法
(ア)香港商標条例に基づく「商標権侵害行為は無過失責任」であるとの
原告の主張は争う。甲349は,一弁護士の見解であり,また,甲34
9では,商標権者の同意又は使用許諾なく商標を使用したと判断された
場合,行為者が「必要な同意又は使用許諾を受けていたと真正かつ誠実
に信じていたこと」は,「法的責任という意味において考慮されない」
と述べられているにとどまり,その法律構成として,善意であったこと
が免責事由とはならないのか,それとも過失が推定されるのか,無過失
責任であるのかは,定かではない。
(イ)甲349の6頁によれば,原告が主張する商標使用許諾行為及び商
標再使用許諾行為は,香港の裁判例によると,香港商標条例18条1項
の商標の使用及び侵害に該当すると判断される可能性があり得るものに
すぎず,同条項に違反する商標権侵害行為であると「みなされている」
ものではない。
(ウ)甲349によれば,共同不法行為者が連帯責任を負うのは「個人又
は事業体が,他の侵害者と共に侵害の実行に関する共通の計画を意図,
幇助及び共有した場合」であるが,本件は,これに該当しない。
ウ被告らの不関与
被告トーマジャパンは,売買基本契約(甲13)に基づき,正規品しか
扱ったことはなく,訴外JRオリエンタルと取引関係にはあったが,上記
契約(甲13)終了後に,訴外JRオリエンタルが行ったと思われる偽造
品の製造販売には一切関与していない。
(ア)訴外NECホームエレクトロニクスは,OEM方式を導入するに当
たり,現地の事情に詳しい被告トーマジャパンに対して,オーディオ製
品等の現地の製造業者の選定と,商品の品質状況,商品の価格,納期等
について調査を依頼した(乙2)。そして,訴外NECビューテクノロ
ジーが,上記事業を引き継いだ後も,同被告は,現地の製造業者の選定,
製造,販売を任されていたため,現地の製造業者を調査し,同訴外会社
に紹介していた。そして,同被告は,訴外TOPWORLD(代表者
C)の関係では,同被告が紹介した製造業者の訴外TONICに対し,
訴外TOPWORLDを通じて,あるいは,直接,商品の開発や製造
の手配をし,訴外TONICが製造したNEC標章を付した製品を訴外
TOPWORLDを通じて購入していた。訴外NECビューテクノロ
ジーは,商品の開発や製造販売には直接関与しておらず,実務的な業務
のほとんどは同被告に委ね,製造代金の負担と,訴外TOPWORL
Dから売上の報告を受け,同被告に対して売掛金の請求及び回収をする
のみであった。このことは,同被告と訴外NECビューテクノロジー間
の平成13年8月1日付け「覚書」(乙4)において,同被告が製品の
購入者であるにもかかわらず,製品の保守や製造物責任を負担すると規
定されていることや,製造業者の訴外TONICが,同被告宛てに商品
の化粧箱の図案の承認と受入れを求めたこと(乙8)等も明らかである。
なお,売買基本契約(甲13)では,対象製品が拡大したため,同被
告は,訴外JRオリエンタルに対して,新たな製造業者の選定に関する
業務を再委託し,その結果,新たに製造業者として訴外COWONS
YSTEM,INC.(以下「訴外COWON」という。)が選定され,
同被告は,訴外NECビューテクノロジーから購入した製品を訴外JR
オリエンタルに販売することとなった。平成15年ころには,対象製品
として「MP3/ICレコーダー/FMSTEREOTUNER」
が加わり,訴外NEXTWAYCO.,LTD.(以下「訴外NEX
TWAY」という。)が新たな製造業者となった。訴外NECビューテ
クノロジーは,訴外COWONと訴外NEXTWAYの視察等をしてお
らず,両社が製造した製品の検品を行っただけであった。
(イ)被告トーマジャパンは,上記のとおり,売買基本契約(甲13)に
基づいて(平成15年7月末日に失効するまで),訴外TONIC東方
電子有限公司(以下「訴外TONIC」という。),訴外COWON,
訴外NEXTWAYが製造する正規品について,訴外TOPWORL
Dを通じて購入し,訴外JRオリエンタルに対して販売していたもので
あり,訴外NECビューテクノロジーも,型式認定(CDプレーヤーの
型式ZE-2001,ZE-2001(Ⅱ),MCD-303,CD-
M1000,CD-JR303,CD-J103),MPプレーヤーの
型式MP3-CD1,MIR-930,MI-R5,MI-R7)を行
い,売掛金として認識していた。そして,被告らは,上記契約(甲1
3)の失効後は(但し,同契約21条を除く。),上記製造業者に発注
したことも,販売したこともなく,偽造品の製造・販売に関わったこと
もない。被告トーマジャパンは,JRオリエンタル訴訟に関与した際,
訴外JRオリエンタルが,同被告の印鑑を偽造して作成した書面(甲2
9,48等)の存在を知るとともに,上記契約(甲13)の失効後も,
同訴外会社が偽造品の製造・販売に関わっていたことを知った。
エ授権確認書(甲47)は,被告トーマジャパンが,訴外NECビューテ
クノロジーからOEM方式によって製造された製品の製造・販売のシステ
ムに関する手配を全て依頼され,製品を独占的に購入していただけでなく,
保守サービスや製造物責任まで負っていたため,同被告が,売買基本契約
(甲13)に基づいて,NEC標章を付した製品を製造する製造業者の選
定や,製品の販売ルートの選定に関する権限があるものと誤解し,作成し
たものであるが,売買基本契約(甲13)の有効期間中に作成されたもの
で,訴外NECビューテクノロジーが正式に許諾した正規品に関するもの
であり,被告らが,偽造品の製造,販売に関与したことはない。授権確認
書(甲47)4項は,訴外Bが販売する商品について,保守サービス並び
に商標の信用維持に全責任を負うものとする旨定めて,正規品のみの取引
であることを前提としており,同授権に関しては,訴外NECビューテク
ノロジーも,平成14年4月17日付け確認書(甲19)で確認している。
本件は,訴外Bが主導する訴外JRオリエンタルが,上記の正規品の取
引に関与したことを奇貨とし,売買基本契約(甲13)解約後に,被告ら
を欺いて,被告ら及び訴外NECビューテクノロジーに無断で偽造品の製
造・販売を開始したことに起因する。
オ被告らは,原告の偽造品摘発活動に積極的に協力してきており,訴外J
Rオリエンタルに対し,売買基本契約(甲13)が解約されたことを,
「送信ずみ」と記載された書面により通知(乙10,11)しており,訴
外Bも,被告会社から同解約通知があったことを認めている(乙27)。
訴外JRオリエンタルが,連絡文書(甲296)で,売買基本契約(甲1
3)の解約に言及していることも,訴外JRオリエンタル及び訴外Bが,
上記解除を知っていたことを裏付けるものである。
カ被告Aが,台湾における裁判手続において,売買基本契約(甲13)解
約後も「JRオリエンタルの商標使用権は解約されていません。」と述べ
たのは,訴外NECビューテクノロジーによる一方的な解除の通告を承服
しているわけではない,という趣旨であり,解除後に無許可で原告商標を
付した製品を販売することが許されると考えていたわけではない。被告ト
ーマジャパンは,訴外NECビューテクノロジーに対する売買代金の支払
をしていないのも,単に支払能力の問題である。
キ後記のとおり,原告が根拠とする製造許諾承認契約書(甲29),製造
許諾書(甲44,48)は,被告トーマジャパンが保有する角印とは印影
が異なる偽造書面であり,被告らは,同書面を作成したことも,訴外JR
オリエンタルに交付したこともない。授権確認書(甲47)については,
正規品の取引に関するものであり,訴外B及び訴外JRオリエンタルが無
権限で行った偽造品の製造・販売とは全く無関係である。同訴訟における
訴外Bの証言(甲307)は,被告トーマジャパン名義の偽造文書を作成
した本件の首謀者であり,被告らに対して責任を転嫁しようとした疑いが
あるから,信用できない。
ク被告らは,売買基本契約に基づいてNEC商標の使用許諾権限や製品の
製造許諾権限を有していたとの主張はしない。ただ,前記のとおり,売買
基本契約に基づいて,被告トーマジャパンがNEC商標を付した製品を製
造するサプライヤーの選定や原告製品の販売ルートの選定に関する権限が
あるものと誤解していたにすぎない。
(2)-2侵害行為②の成否
(原告)
ア被告らは,訴外B及び訴外JRオリエンタルと共同して,中国,台湾及
び香港の企業に対し,権限なくNEC標章の使用を再許諾した。
(ア)被告らは,上記侵害行為①による訴外B及び訴外JRオリエンタル
へのNEC標章の使用許諾を行った上で,訴外B及び訴外JRオリエン
タルと共同して,訴外JRオリエンタル名義により,次のとおり,少な
くとも中国,台湾及び香港の上記企業9社との間で,それぞれ協力契約
(甲49~61)を締結して,無権限でNEC標章の再使用許諾を行い,
各社より「協力利潤金」名下の金銭(以下「本件ロイヤルティ」とい
う。)を得た。
①中国
a平成16年8月6日付けで訴外Ridianとの間で協力契約
(甲49)を締結し,同訴外会社は,本件ロイヤルティを支払った。
b平成16年4月20日付けで訴外YuehuaElectro
nicsとの間で協力契約(甲50)を締結し,同訴外会社は,本
件ロイヤルティを支払った。
c平成16年4月1日付けで訴外Kapoとの間で協力契約(甲5
1)を締結し,同訴外会社は,本件ロイヤルティを支払った
d平成20年5月1日付けで訴外Worthyとの間で協力契約
(甲52)を締結したが,平成17年1月24日付で解約された
(甲74)。
②台湾
a平成15年10月1日付け及び平成17年4月1日付けで訴外C
hyauYeuanとの間で協力契約(甲53,54)を締結し,
同訴外会社は,本件ロイヤルティを支払った(甲78)。
b平成15年2月28日付け及び平成15年12月10日付けで訴
外KaeJinnとの間で,NEC標章を付した偽造品の販売に
関する販売契約(甲75,76)を,同日付けで協力契約(甲5
5)をそれぞれ締結したが,同訴外会社は,平成16年12月20
日支払分より本件ロイヤルティの支払を停止した(甲73)。
c平成15年12月31日付け及び平成17年4月1日付けで訴外
FineFortuneとの間で,協力契約(甲56,57)を
締結したが,同訴外会社は,平成17年支払分より本件ロイヤルテ
ィの支払を停止した(甲73)。
③香港
a平成15年12月10日付け及び平成17年2月1日付けで訴外
Promediaとの間で協力契約(甲58,59)を締結したが,
同訴外会社は,平成17年1月10日支払分より本件ロイヤルティ
の支払を停止した(甲73)。
b平成15年12月10日付け及び平成17年4月1日付けで訴外
Takahashiとの間で協力契約(甲60,61)を締結した。
(イ)協力契約(甲49~61)は,被告ら,訴外B及び訴外JRオリエ
ンタルが共同して,訴外JRオリエンタル名義で,上記9社と協力し,
上記9社が選定した製造業者に対しNEC標章の使用権を授与した上
でNEC標章を付した製品を製造させ(甲49第6条等),これを上
記9社が同訴外会社を通じて仕入れることとすることで,上記9社が,
同訴外会社に対し本件ロイヤルティ(協力利潤金)を支払う(甲49
第5条)ことを約したものである。
そして,本件ロイヤルティは,上記9社が,訴外JRオリエンタルを
通じて各製造業者にNEC標章を付した製品の製造を発注した額に応じ
て,同訴外会社を受取人として支払うものであるから,上記協力契約は,
同訴外会社名義による各製造業者へのNEC標章の使用権の授与に伴い
各製造業者に生じる商標使用料支払義務を,上記9社が肩代わりするよ
うな契約ということができ,本件ロイヤルティは,実質的には,上記9
社に対してNEC標章の再使用許諾を行った対価として支払われる商標
使用料と変わりはない。
したがって,上記協力契約は,実質的には,NEC標章の再使用許諾
契約である。
(ウ)また,被告ら,訴外B及び訴外JRオリエンタルが共同して,無権
限でNEC標章の再使用許諾を行うにあたり,次のとおり,被告トーマ
ジャパン及び訴外JRオリエンタル共同名義の確認書等(甲62~71,
77)が用いられており,いずれの確認書(甲62~71)も,同訴外
会社において,NEC標章を付した商品の製造権まであるかのごとく,
同訴外会社を「的製造商」(製造業者)と記載した内容となっている。
①中国(甲62~65,67)
a被告トーマジャパン及び訴外JRオリエンタル名義の平成16年
8月10日付け及び平成16年11月18日付け確認書(甲62,
63)により,訴外Ridianに対し,権限なくNEC標章の再
使用許諾をするための授権の確認を行った。
b被告トーマジャパン及び訴外JRオリエンタル名義の2通の平成
16年5月24日付け確認書(甲64,65)により,訴外Kap
oに対し,権限なくNEC標章の再使用許諾をするための授権の確
認を行っていた。
c被告トーマジャパン及び訴外JRオリエンタル名義の平成16年
11月18日付け確認書(甲67)により,訴外Worthyに対
し,権限なくNEC標章の再使用許諾をするための授権の確認を行
っていた。
②台湾(甲66,68,69)
a被告トーマジャパン及び訴外JRオリエンタル名義の平成16年
5月24日付け確認書(甲66)により,訴外ChyauYeu
anに対し権限なくNEC標章の再使用許諾をするための授権の確
認を行っていた。
b被告トーマジャパン及び訴外JRオリエンタル名義の平成16年
5月24日付け確認書(甲68)により,訴外KaeJinnに
対し,権限なくNEC標章の再使用許諾をするための授権の確認を
行っていた。
c被告トーマジャパン及び訴外JRオリエンタル名義の平成16年
5月24日付け確認書(甲69)により,訴外FineFortu
neに対し権限なくNEC標章の再使用許諾をするための授権の確
認を行っていた。
③香港(甲70,71,77)
a被告トーマジャパン及び訴外JRオリエンタル名義の平成16年
5月24日付け確認書(甲70)により,訴外Promediaに
対し権限なくNEC標章の再使用許諾をするための授権の確認を行
っていた。
b被告トーマジャパン及び訴外JRオリエンタル名義の平成16年
10月8日付け確認書(甲71)により,訴外Takahashi
に対し権限なくNEC標章の再使用許諾をするための授権の確認を
行っていた。
cなお,訴外JRオリエンタルの名義により,訴外Takahas
hi宛てに,平成16年6月1日付けで,無権限にてNEC標章の
使用を許諾するレターを作成している(甲77)。
(エ)上記9社より受領した本件ロイヤルティは,被告Aと訴外Bが共同
し,名義上の受取人である訴外JRオリエンタルと,被告トーマジャパ
ンとが折半する取り決めとなっていた。
①訴外JRオリエンタルの会議議事録(甲72,73)によると,N
EC標章のライセンス料金の支払方法に関して,「実施料収入総額-
税金(香港の税率は17.25%)-会社の管理・販売費用-配当金
・ボーナス-積立金(準備金)で得た金額は会社と日本側がそれぞれ
50%とする」(甲72)とされている。また,訴外Promedi
aから支払われた実施料(本件ロイヤルティ)93万7500米国ド
ルの50%について,訴外JRオリエンタルが被告トーマジャパンに
領収書を要求する旨の話し合いがなされており(甲73),同被告か
らも,訴外JRオリエンタルに宛てた46万8750米国ドル分の領
収書(甲315)が出されている。
②平成16年11月19日付け送金伝票(甲298)によると,訴外
JRオリエンタルは,台湾の販売会社から本件ロイヤルティを受領し
た上で,訴外Cの妹である訴外E名義の口座を受取人口座として,被
告トーマジャパンに対し,「権利金」名目で300万台湾ドルを支払
っており(甲101,298),被告らが,侵害行為②により訴外J
Rオリエンタルが得た使用許諾料から,被告らが,その取り分を受領
していたたことを示している。上記送金伝票(甲298)は,右上部
分に「證二十」と記載され,訴外Bが,台湾における裁判手続におい
て提出した書面であり,「JRオリエンタルとトーマジャパンとの間
におけるロイヤルティの振込資料は証拠二十をご覧下さい。」(甲3
28)としているから,送金伝票(甲298)は,訴外Bが被告トー
マジャパンに「権利金」を支払ったことの証拠である。訴外JRオリ
エンタルの会計書類(乙14)と同様の体裁による平成17年1月か
ら同年3月までの同訴外会社の試算表(甲361)には,「権利金-
(TOHMAJAPAN-NEC)」として300万台湾ドルの支
出が明記されている。訴外Bも,製造許諾承認契約書を毎年被告トー
マジャパンから発行してもらう対価として「毎年費用を払う」旨を証
言(甲327)しており,上記送金が,原告商標の使用許諾料であっ
たことが推認される。
なお,訴外盛業昌(乙13)及び訴外JRオリエンタル(乙14)
の会計書類には,両社が,訴外Cから,平成16年11月19日に3
00万台湾ドルを借り入れた旨の記載があるが,上記送金が返済だと
すると,借入と返済が同日となって不自然であるし,送金伝票(甲2
98)の記載とも整合しない。
③被告らが,偽造品の製造販売に関して,ロイヤルティを訴外JRオ
リエンタルと折半して得ていたことは,訴外JRオリエンタルの元役
員の訴外F及び訴外KaeJinnの代表者の訴外Gの台湾での裁
判手続における各証言(甲312)からも明らかである。
④被告Aは,台湾での裁判手続において,売買基本契約(甲13)が
解約された後も,被告トーマジャパンと訴外JRオリエンタル間の商
標使用許諾契約は解約されていないとした上で,同訴外会社が被告ら
に対し,継続して支払いを行っていたと証言している(甲316)。
(オ)なお,被告Aは,JRオリエンタル訴訟における,訴外Bとの関係
が,友人として親しいことを認めたり,両名のそれぞれの台湾における
会社の所在地が同一であることを認めたり,トーマジャパン訴訟の訴訟
代理人は,訴外Bに紹介してもらった旨を証言し(甲306の14頁~
16頁),本件訴訟においても,平成19年12月20日当時は,未だ
訴外Bとはビジネス上の付き合いをしていたころであるとする。そして,
訴外Bも,JRオリエンタル訴訟において,それぞれの台湾における会
社の所在地が同一であることを認めたり,訴外盛業昌の副董事長に被告
Aが着任する予定であったと述べており(甲307の5~6頁),訴外
盛業昌の資金往来明細表(乙13)でも,被告Aとの間での資金のやり
とりや,各種経費を肩代わりしていたかのような表記がある。また,訴
外盛業昌の副社長としての肩書きで被告A名義の名刺(甲402)が存
在しているが,名刺は,名義人自らによる使用以外は想定できない。こ
のように,被告ら,訴外JRオリエンタル,訴外盛業昌及び訴外Bは,
緊密な連携を有していたものであり,侵害行為②及びそれらを通じた侵
害行為③に主体的に関与していたことが明らかである。
(カ)被告らは,平成15年,平成17年及び平成18年の被告トーマジ
ャパンの会社案内(甲348,乙26)の「主取扱品」欄にNECブラ
ンドの製品の製造販売と記載して,権限があるかのように明記しており,
偽造品を自ら主体となって製造販売していたこと,被告らが,売買基本
契約(甲13)が解約された平成15年7月末日以降も,当該行為を継
続していたことを示している。仮に,被告らに,無権限であったことに
ついて誤解があったとしても,かかる記載自体が,被告らの偽装的な権
限を対外的に表明する行為となり,自らの主導のもとに訴外JRオリエ
ンタル及びその他主要サブライセンシー等を用いて偽造品の製造販売を
行っていたこと(侵害行為②,③)を自認するものである。そして,平
成15年から平成18年の間,会社案内に継続して上記記載があり,同
期間に偽造品が市場に出回っていることに鑑みれば,被告らが偽造行為
を実際に行っていたことが合理的に推認される。在庫の販売という理由
付けには,合理的根拠はない。
イ被告らの行為は,中国,台湾及び香港における原告の登録商標権を侵害
する行為である。
(ア)中国
①(2)-1(原告)イ(ア)のとおり,中国では,権限なく商標使用許諾
を行えば,商標権侵害行為(中国商標法第52条1項,甲133)に
該当する。
よって,被告らによる,訴外B及び訴外JRオリエンタルと共同し
て上記中国企業に権限なくNEC標章の再使用許諾を行い,その対価
として当該企業から商標使用料を受け取った行為は,中国商標法上の
商標権侵害行為に該当する(中国商標法第52条1項,中国商標細則
第3条)。
②そして,被告らは,訴外B及び訴外JRオリエンタルと共同して商
標権侵害行為を行ったことにより,共同不法行為者として連帯責任を
負う(中国民法通則130条。甲137)。
(イ)台湾
①(2)-1(原告)イ(イ)のとおり,台湾では,商標権者の同意なく,
商標使用許諾を行えば,商標権侵害行為を構成する(同法61条2項,
甲138)。
よって,被告らによる,訴外B及び訴外JRオリエンタルと共同し
て上記台湾企業に権限なくNEC標章の再使用許諾を行い,その対価
として当該企業から商標使用料を受け取った行為は,台湾商標法上の
商標権侵害行為に該当する(同法61条2項,29条2項1号又は2
号)。
②そして,被告らは,B及び訴外JRオリエンタルとともに共同不法
行為者として,連帯責任を負う(台湾民法185条1項,甲140)。
(ウ)香港
①(2)-1(原告)イ(ウ)のとおり,香港では,無権限での商標使用再
許諾行為は,香港における裁判実務において,商標を「使用」する行
為に該当し,香港商標条例18条1項に違反する商標権侵害行為であ
るとみなされている(甲349)。
よって,被告らによる,訴外B及び訴外JRオリエンタルと共同し
て上記香港企業に権限なくNEC標章の再使用許諾を行い,その対価
として当該企業から商標使用料を受け取った行為は,「商標が登録さ
れている商品又はサービスと同一の商品又はサービスに関して,商標
と同一の標識を業として使用する場合」に該当し,商標権侵害行為に
該当する(同条例第18条1項)。
②そして,被告らは,訴外B及び訴外JRオリエンタルと共同して上
記商標権侵害行為に該当する違法行為を行っているから,コモンロー
により共同不法行為者として連帯責任を負う。
(被告ら)
ア原告の主張する事実はいずれも否認し,法的な評価はいずれも争う。被
告らは,原告が主張する侵害行為①を行っておらず,原告の主張は,前提
を誤っている。また,被告らは,原告が主張する侵害行為②を行っていな
いから,中国商標法,台湾商標法,香港商標条例に規定される商標権侵害
行為には該当せず,したがって,中国民法上,台湾民法,香港のコモンロ
ーによる共同不法行為者としての連帯責任を負うこともない。
イ被告らは,協力契約(甲49~61),販売契約(甲75,76),権
限委任状(甲77)等の当事者ではなく,また,いずれも売買基本契約
(甲13)が終了した平成15年7月31日以降に作成されたものであり,
被告らは一切関与していない。
ウ確認書(甲62~71)は,いずれも被告トーマジャパンについては,
訴外B又は訴外JRオリエンタルによる偽造書面である(乙5)。同被告
名義の印鑑が押印されている確認書(甲63,65)は,同被告が保有す
る角印の印影とは異なる(乙5)。同被告の社判も印鑑も押印されていな
い確認書(甲62,64,66~71)もあり,このような偽造又は複数
の白紙の確認書を訴外JRオリエンタルが保有していること自体,同訴外
会社が,被告らに無断で,偽造品の製造及び販売を行っていたことの証左
である。
エ被告らは,原告が主張するような金員を受領したことはない。被告Aと
訴外Bが共同し,訴外JRオリエンタルと被告トーマジャパンとがロイヤ
ルティを折半する取決めとなっていたことも立証されていない。
(ア)原告が提出する議事録(甲72,73)は,被告らは作成に関与し
ていない。議事録(甲72)には,被告らにおいて,訴外JRオリエン
タルを通じた偽造品の製造についての認識を推認させる記載は一切なく,
議事録(甲73)に記載された被告トーマジャパンによる領収書も発行
されていない。
被告トーマジャパンは,訴外JRオリエンタルに販売した正規品の販
売代金約80万米国ドルと,授権確認書(甲47)の6項の「授権料」
について,同訴外会社に支払を催促したことがあったことから,議事録
の「権利金」(甲72),「授権金」(甲73)は,いずれも上記「授
権料」(甲47)を指すものと思われる。
また,被告Aは,訴外Bから,販売店における正規品の在庫の処分が
できず(甲296参照),同被告に対する支払もできないので,在庫品
の処分に協力して欲しいと依頼されたことから,売掛金を回収するため,
在庫品処分の利益を折半するのであれば協力してもよいと回答し,訴外
Bもこれを了承したことがあった(なお,訴外Bは,その際,NECの
新製品の製造販売も行いたいと言ったが,被告Aは,訴外NECビュー
テクノロジーの了承がなければできないと回答した。)。
上記会議は,売買基本契約(甲13)の解約後のタイミングで開催さ
れており,被告らが,有効期間中,正規品の取引しかしていないことや,
協力契約(甲49~61)が,上記解約後に締結されたことからも,偽
造品とは無関係である。
(イ)訴外JRオリエンタルの試算表(甲361)における被告トーマジ
ャパンに対する権利金の記載も,「偽造品の製造販売に関して」ロイヤ
ルティが実際に被告らに支払われたことを何ら立証できていない。
(ウ)被告らは,平成16年8月1日に46万8750米国ドルを受領し
たことはなく,領収書(甲315)は偽造されたものである。
(エ)被告Aの口座(甲26)は,同被告が,訴外Bから,未払いの授権
料は,台湾ドルであれば支払ってもよい旨言われたため,台湾の自己の
預金口座宛に振り込むことを提案し作成されたものであり,偽造品とは
無関係である。なお,結局,訴外Bは,上記口座(甲26)に入金せず,
その余の被告トーマジャパンの口座にも偽造品の製造,販売で得た利益
が入金されたことはない。
(オ)被告Aが,台湾の裁判手続において,売買基本契約(甲13)解約
後も,訴外JRオリエンタルから「金銭」の支払いを受けていたと述べ
たのは,被告トーマジャパンが同訴外会社に対して有していた売掛金や
未収金のことであり,同被告も「売掛金」と「未支払いの金額」と述べ
ている(甲316)。
(カ)訴外JRオリエンタルから被告トーマジャパンに対して支払が行わ
れた事実は立証されていない。送金伝票(甲298)は,単なる会計上
の振替伝票にすぎず,仮に,送金伝票であるとしても,100万台湾ド
ルの送金時期は不明であるし(甲298の2枚目),訴外JRオリエン
タル等の資金往来明細表(乙13)及び試算表(乙14)によれば,こ
の送金は,訴外JRオリエンタルの訴外Cに対する借入金の返済に充て
られたものであり,「権利金」として支払われた事実はない(甲29
8)。
オ原告の主張する「商標使用の再許諾行為」は,いずれも,上記売買基本
契約(甲13)が平成15年7月末日に効力を失った後に,訴外B及び訴
外JRオリエンタルにより締結されたものであり,被告らは関与していな
い。原告は,被告トーマジャパン名義の多くの各契約書が第三者に印鑑を
偽造された上で作成された偽造書面であることを認識していた(乙15~
18)。また,訴外NECビューテクノロジーは,平成17年6月におい
ても,被告トーマジャパンに,顧客からの質問やクレーム,アフターサー
ビスに直接対応させるなどしており(乙19~22),原告は,被告らが
偽造品の製造販売に関与しているとは考えていなかった。
カ被告トーマジャパンの会社案内(甲348)の記載は,売買基本契約
(甲13)解除後も,在庫となっていた正規品を販売する必要があったか
らであり,「製造」の文言は,製造権限があると誤解していたからである。
平成17年2月の会社案内まで,「主仕入先」欄に訴外NECビューテク
ノロジーが記載されていたのは,適時に変更することを失念したものであ
る。
キ被告トーマジャパンが,平成16年1月28日に台湾の君悦ホテルで,
販売会社を集めて会議を行った(甲331)のは,被告Aが,訴外Bから,
NEC製品の偽造品が出回って在庫の正規品が売れないため,販売会社を
集めて,偽造品の販売状況と偽造者に対する責任を追及するための協議を
したいので出席して欲しい等と言われたためである。上記会議の通知(甲
331)は,訴外Bが文章を作成し,被告Aは署名した記憶がないので,
訴外Bから言われるままに署名した可能性はある。上記通知のファクス送
信等も,すべて訴外Bが行った。会議に出席した販売会社3社は,被告A
は,明確な記憶がないが,いずれも正規品の在庫を抱えている販売会社で
あると認識していた。被告Aは,その際,正規品と偽造品の区別に関連し
て,訴外Gから,CDに関して被告トーマジャパンが原告から許諾を受け
た範囲を尋ねられたため,CDというだけで範囲の限定はないと回答した。
被告Aは,その際,被告トーマジャパンが取り扱った商品(在庫品)は全
て原告の承認を受けた製品である旨の説明もしたが,販売会社にとってみ
れば,正規品かどうかが問題であり,在庫品かどうかの問題ではない。
(2)-3侵害行為③の成否
(原告)
ア被告らは,訴外B及び訴外JRオリエンタル又は訴外盛業昌と共同して,
以下の(ア)ないし(ウ)で具体的に述べるとおり,製造業者らにNEC標章を
付した偽造品の製造及び販売をさせた。
すなわち,被告らは,訴外B,訴外JRオリエンタル及び訴外盛業昌ら
と共同して,無権限にてNEC標章の使用許諾をし,次のとおり,中国,
台湾及び香港の企業9社及び各地の下請け製造業者等をその手足として使
うことで,NEC標章を付した偽造品を製造及び販売させた。
(ア)中国
①訴外Ridianを通じた製品の製造及び販売
a被告ら,訴外B及び訴外JRオリエンタルは共同して,訴外JR
オリエンタル名義により,訴外Ridianとの間で,平成16年
9月20日付けで委託製造契約(甲81)を締結し,訴外Ridi
anは,下請製造業者である訴外Lidanとの間で,同日付けで
製造委託契約(甲82,83)を締結した。
b被告ら,訴外B及び訴外JRオリエンタルは共同して,訴外JR
オリエンタル名義により,訴外Lidanとの間で,平成16年1
1月25日付け(甲84),同年12月1日付け(甲85)及び平
成17年1月6日付け(甲86,87)で各製造委託契約を締結し
た。
c被告らは,平成17年1月1日付けで訴外Lidanに対して,
被告トーマジャパンを許諾者とし,許諾期間を同年12月31日ま
でとする製造許諾書(甲311)を交付し,NEC標章を付した製
品(ラジオ,ポータブルCDプレーヤー,MP3プレーヤー)の製
造を直接的に委託した。
d訴外Lidanが製造したNEC標章を付した製品は,訴外Ri
dianがこれを仕入れ,販売会社に卸していた(甲49の6条
③)。訴外Ridianは,販売会社に対し,平成17年7月1日
付けで販売について授権(甲88)しており,その結果,小売店で
上記製品が販売された。
e訴外Lidanは,原告が中国中山市において提起した商標権侵
害に基づく損害賠償請求訴訟において,被告トーマジャパンと訴外
JRオリエンタルからの授権を受けて,NEC標章を付した製品を
製造したと主張した。
②訴外YuehuaElectronicsを通じた製品の製造及
び販売
a被告ら,訴外B及び訴外JRオリエンタルは共同して,訴外JR
オリエンタル名義により,訴外YuehuaElectroni
csの製造業者である訴外YuehuaTechnologyと
の間で,平成16年9月8日付けで製造委託契約(甲90)を締結
した。
b被告ら,訴外B及び訴外JRオリエンタルは共同して,訴外JR
オリエンタルの名義により,訴外YuehuaTechnolo
gyの下請製造業者である訴外Jeeja他6社との間で,いずれ
も平成16年6月10日付けで各製造委託契約を締結した(甲91
~97)。
c訴外YuehuaTechnologyらが製造したNEC標
章を付した製品は,訴外YuehuaElectronicsが
契約上訴外JRオリエンタルを通じて仕入れ,販売会社に卸してい
た(甲50)。
③訴外Kapoを通じた製品の製造及び販売
a被告ら,訴外B及び訴外JRオリエンタルは共同して,訴外JR
オリエンタルの名義により,訴外Kapoの製造業者である訴外A
rdenとの間で,平成15年12月15日付で製造委託契約を締
結した(甲98)。訴外Ardenが製造したNEC標章を付した
製品は,訴外Kapoが,訴外JRオリエンタルを通じて仕入れて
いた(甲51)。
b被告らは,訴外Kapo及び訴外Ardenに対し,いずれも被
告トーマジャパンを許諾者とする平成17年1月1日付け製造許諾
書(甲80,309)を交付し,NEC標章を付した製品(スピー
カー周辺機器)の製造を直接的に委託した。
なお,訴外Ardenは,中国南京市で原告から提起された商標
権侵害に基づく損害賠償請求訴訟において,NEC標章を付した製
品の製造・販売権限を被告トーマジャパンから直接授権されたと主
張し,上記製造許諾書(甲309)及び売買基本契約書(甲13)
の写し等を提出するとともに,被告トーマジャパンを共同被告とす
るよう申請した(甲310,329)。
c訴外Ardenは,平成19年10月1日には,販売会社に販売
のための授権書(甲104)を交付し,訴外Ardenが製造した
NEC標章を付した製品が販売会社のインターネット上で販売され
る等した。
④訴外Worthyを通じた製品の製造及び販売
a被告ら,訴外B及び訴外JRオリエンタルは共同して,訴外JR
オリエンタルの名義により,訴外Worthyの製造業者である訴
外Worthy精工との間で,平成16年7月15日付けで製造委
託契約を締結した(甲105)。
b訴外Worthy精工が製造したNEC標章を付した製品は,訴
外Worthyが,訴外JRオリエンタルを通じて仕入れていた
(甲52)。
(イ)台湾
①訴外ChyauYeuanを通じた製品の製造及び販売
a被告ら,訴外B,訴外JRオリエンタル及び訴外盛業昌は共同し
て,訴外ChyauYeuanに対し,訴外盛業昌を許諾者とす
る平成15年9月25日付け製造許諾書(甲103)を交付し,N
EC標章を付したスピーカー,パワーアンプの製造を委託した。
同書面は,売買基本契約(甲13),及び,授権確認書(甲4
7)に言及し,被告トーマジャパンにNEC標章を付した商品の製
造販売権があるかのような記載となっている。
b訴外ChyauYeuanは,NEC標章を付した製品を,訴
外JRオリエンタル又は訴外盛業昌を通じて仕入れていた(甲5
3)。
c訴外JRオリエンタルは,中国の訴外中山市粤糧経貿進出口有限
公司に対し,訴外Kapoが訴外JRオリエンタルを通じて訴外A
rdenから仕入れた製品の輸出について授権しており,訴外Ch
yauYeuanは,台湾に輸入する際の総代理店として,輸入
して販売していた(甲99,100)。
②訴外KaeJinnを通じた製品の製造及び販売
a被告ら,訴外B及び訴外JRオリエンタルは共同して,訴外JRオ
リエンタルの名義により,訴外DaJinTechnology
に対し,平成16年2月24日付けで「商標使用同意書」(甲10
8)を交付したり,訴外KaeJinnの製造業者である訴外Ng
aiLik(甲106,107)や,その他,中国及び香港の企業
9社との間で製造委託契約(甲109~119)を締結した。
b訴外NgaiLik等が製造したNEC標章を付した製品は,
訴外KaeJinnが,協力契約(甲55)に従い輸入し,台湾
の総代理店(甲75,76)として販売していた。
c訴外KaeJinnの製造業者である訴外NgaiLikの
関係者訴外Hの陳述書(甲330)には,訴外NgaiLikの
当時のマーケティングマネージャーが,平成15年12月ころ,被
告Aを通じて訴外Bを紹介されたり,被告Aと,偽造品の製造及び
販売に関して具体的な交渉を行ったこと,当該交渉を経た後に,訴
外JRオリエンタルとの間で製造委託契約(甲106,107)を
締結したこと,元請の訴外KaeJinnが,被告Aによりコン
トロールされた企業であること等が記載されている。上記陳述書
(甲330)は,宣誓の上で香港の法廷に提出された陳述書であり,
信用性は高い。このように,被告Aは,売買基本契約(甲13)の
解約後に,偽造品の製造販売に関して製造業者と交渉していた。
d被告らは,訴外KaeJinnの依頼を受けて,販売促進のた
めに平成16年7月29日付け声明文(甲295,296)を作成
したが,同訴外会社が,当時,販売していた商品は,いずれも偽造
品であり,同訴外会社の代表者の訴外G及び訴外JRオリエンタル
の元役員の訴外Fも,「在庫を販売したことは,ない」等としてい
た(甲312)。売買基本契約(甲13)の解消後も在庫の販売が
できるのであれば,の販売促進のために,声明文(甲295)を作
成する必要はなく,仮に,正規品の在庫を販売するために作成され
たとしても,声明文の内容は不自然である。
③訴外FineFortuneを通じた製品の製造及び販売
a被告ら,訴外B及び訴外JRオリエンタルは共同して,訴外JR
オリエンタルの名義により,製造業者である訴外Truly(甲1
20)との間で平成16年5月25日付けで,訴外Digitfa
b(甲121)との間で平成16年7月13日付けで,いずれも製
造委託契約を締結した。
b被告らは,訴外Digitfabに対し,被告トーマジャパンを
委託者とする平成16年3月15日付け製造委託書(甲79)を交
付し,NEC標章を付した製品(MP3プレーヤー)の製造を直接
的に委託した。
c訴外Truly及び訴外Digitfabが製造したNEC標章
を付した製品は,訴外FineFortuneが,香港の製造業
者である訴外Trulyに製造させる場合には,訴外JRオリエン
タルを通じ,台湾の製造業者である訴外Digitfabに製造さ
せる場合には,訴外盛業昌を通じて,これらを仕入れ,販売会社に
卸していた(甲56,57)。
④被告らは,売買基本契約(甲13)の解約後の平成16年1月20
日,台湾の偽造品の販売会社3社に対し,偽造品に関する権利関係を
説明するため,台湾の君悦ホテルにおいて同月28日に会議を行う旨
の招集通知を発信し(甲331),会議には,訴外Aと訴外Bが,と
もに出席した。訴外KaeJinnの代表者の訴外Gは,上記会議
の席上,被告Aに対し,CD関係製品として合法となるのはどのよう
な製品であるか質問したところ,CDと関係あるもの全てが含まれる
旨の回答を得たとしており(甲332),被告Aは,NEC標章を付
したCD関連製品(偽造品)の製造及び販売は合法であるなどと台湾
の販売会社に説明していた。
なお,一企業の代表者である被告Aが,他人に言われるがままに通
知(甲331)にサインをするとは通常考えられず,不合理な弁解で
ある。上記通知(甲331)を,原告や台湾NEC,同社が委任する
弁護士が受領した事実もない。
(ウ)香港
訴外Takahashi及び訴外Promediaを通じた製品の製
造及び販売
①被告ら,訴外B及び訴外JRオリエンタルは共同して,訴外JRオ
リエンタルの名義により,訴外Takahashi及び訴外Prom
ediaの製造業者である訴外OptodiscTechnolo
gyCorporationと,UmeDiscLimite
dとの間で,それぞれ平成16年3月10日付け及び同月15日付け
で製造委託契約(甲122~124)を締結したり,訴外CMCM
agneticsCorporationに対し,委託製造書(甲
125)を交付したり,その他3社との間で,それぞれ委託製造契合
約書を締結した(甲126~128)。
②上記訴外6社が製造したNEC標章を付した製品は,訴外Prom
edia及び訴外Takahashiが,訴外JRオリエンタルを通
じてこれを仕入れ,販売会社に卸していた(甲58~61)。
(エ)関連する事実
①被告Aは,JRオリエンタル訴訟において,「まずうちが台湾,中
国,香港でもNECの許可されている商品を製造販売はしました。こ
の前提があります。」と証言しており(甲306,13頁),無権限
で偽造品の製造・販売を主体的に行っていたことを直接的,明確に自
認した。
②被告Aは,Dに対する台湾の裁判手続において,売買基本契約(甲
13)は正式に解約されていないので,「現在でも,NEC標章を使
用する権限が自分にはあると思っている。」と述べ,訴外JRオリエ
ンタルへのNEC標章に関する使用許諾についても「終了していな
い。」と証言した(甲316)。
被告らは,被告トーマジャパンが,訴外JRオリエンタルに対し,
売買基本契約(甲13)が失効することを事前に告知した(乙10,
11)とするが,手書きで「送信ずみ」と記載されており,実際に送
信されたかは疑問である。訴外JRオリエンタルによる連絡文書(甲
296)でも,売買基本契約(甲13)の解約を「噂」と表現してお
り,二度も事前告知がされたとすると,不自然である。
③原告社員のメールや被告トーマジャパン名義の証明書等(乙15~
18)が作成されたのは,当時,原告が,偽造品の製造業者に対する
法的手続を進めていたところ,製造業者が,被告らから製造権限を与
えられたと主張したため,原告が,被告らに対し,そのような授権行
為をしていないとの回答内容を書面にして残すとともに,その公証等
を得るよう求めたものであり,原告が,被告らが偽造品の製造販売に
関与していないとの認識を持っていたことを示すものではない。
イ被告らの行為は,中国,台湾及び香港における原告の登録商標権を侵害
する行為である。
(ア)中国
①(2)-1(原告)イ(ア)のとおり,中国では,権限なく登録商標と同
一の商標を「使用」した場合には,商標権侵害に該当するところ(中
国商標法52条1項,甲133),偽造品を製造する行為は,商標を
「商品」に使用する行為に該当し(中国商標細則3条。甲134),
商標権侵害行為(中国商標法52条1項)に該当する。また,偽造品
を販売する行為は,虚偽の登録商標を付したことが分かっている商品
を販売する行為(同条2項)に該当し,商標権侵害を構成する。
②そして,被告らは,訴外B,訴外JRオリエンタル及び訴外盛業昌
とともに上記中国企業等と共同して商標権侵害行為を行ったことによ
り,共同不法行為者として連帯責任を負う(中国民法通則130条。
甲137)。
(イ)台湾
①台湾では,偽造品の製造,販売及び輸入行為は,(2)-1(原告)
イ(イ)のとおり,商標の「使用」行為に該当し(台湾商標法29条2
項1号又は2号),商標権者の同意なく当該行為を行えば,商標権侵
害行為を構成する(同法61条2項,甲138)。
②そして,被告らは,訴外B,訴外JRオリエンタル及び訴外盛業昌
とともに上記台湾企業等と共同して商標権侵害行為を行ったことによ
り,共同不法行為者として訴外B及び訴外JRオリエンタルとともに
連帯責任を負う(台湾民法185条1項。甲140)。
(ウ)香港
①(2)-1(原告)イ(ウ)のとおり,香港では,所有者の同意なく香港
商標条例18条に規定する行為を行った場合には,登録商標の侵害と
なるものとされ(同条例14条2項,甲333),かかる同条例18
条に規定する行為には「商標が登録されている商品又はサービスと同
一の商品又はサービスに関して,商標と同一の標識を業として使用す
る場合」が含まれる(同条例18条1項。甲142)。そして,同条
例第18条5項において,同条1項に規定する商標の「使用」の内容
が規定されており(甲142),偽造品を製造し,販売する行為は,
それぞれ同条例18条5項(a)標識を商品又は包装に適用する場合,
(b)標識の下で販売のために商品を提供又は展示する場合,(c)標識
の下で商品を市場に出す場合に該当する商標の使用行為となり,同条
例18条1項に違反する商標権侵害を構成する(甲142)。
②そして,被告らは,訴外B,訴外JRオリエンタル及び訴外盛業昌
とともに上記香港企業等と共同して商標権侵害行為を行ったことによ
り,コモンローにより共同不法行為者として,訴外B,訴外JRオリ
エンタル及び訴外盛業昌とともに連帯責任を負う。
(被告ら)
ア原告の主張する事実はいずれも否認し,法的な評価はいずれも争う。被
告らは,原告が主張する侵害行為①,侵害行為②を行っておらず,原告の
主張は,その前提を誤っている。また,被告らは,原告が主張する侵害行
為③を行っていないから,中国商標法,台湾商標法,香港商標条例に規定
される商標権侵害行為には該当せず,したがって,中国民法上,台湾民法,
香港のコモンローによる共同不法行為者としての連帯責任を負うこともな
い。
イ被告らは,製造委託契約書(甲81~87,90~98,103,10
5~107,109~128),授権書(甲104),商標使用同意書
(甲108),等の当事者ではなく,当該契約書等の作成,締結に関与し
たことはない。これらの契約書は,いずれも売買基本契約(甲13)が終
了した後に作成されたものであり,被告らは関与していない。
ウ被告トーマジャパンを許諾者とする製造許諾書(甲80,309,31
1),製造委託書(甲79)は,いずれも訴外B又は訴外JRオリエンタ
ルによる偽造書面である。これらの書面の押印の印影は,同被告が保有す
る印鑑の印影とは異なっている(乙23)。これらの書面も,売買基本契
約(甲13)が終了した後に作成されたものであり,被告らは作成交付し
ていない。
原告の訴外Lidanに対する訴訟判決(甲300,343)では,被
告トーマジャパンから直接授権されたことは認定されていない。原告の訴
外Ardenに対する訴訟において,同訴外会社が,被告トーマジャパン
を共同被告として追加申請した(甲310,329)ことだけでは,同被
告が直接偽造品の製造を委託したことの立証にはならない。製造許諾書
(甲309)を「被告らから交付された」という点は伝聞にすぎない。
エ被告らは,偽造品の製造販売に何ら関与していない。被告AのJRオリ
エンタル訴訟における証言(甲306,13頁)は,被告らが,正規品し
か扱ってこなかったことを明言したものである。
オ被告Aは,訴外NgaiLikの関係者(訴外H,訴外Franci
sWKCheng)に会った記憶はないから,上記訴外Hの陳述書
(甲330)記載の事実はない。同陳述書(甲330)は,再伝聞にすぎ
ず,その信用性は著しく低い。訴外JRオリエンタルと訴外NgaiL
ik間の製造委託契約(甲106,107)も,被告らは何ら関与してい
ない。
カ被告トーマジャパンの声明文(甲295)は,訴外JRオリエンタルか
ら連絡を受けて,NEC標章が付された正規品の在庫を抱えている販売店
の販売促進のために作成したものであり,「同社許諾製品の製造及び販
売」と明記している。売買基本契約(甲13)解消後も,正規品の販売が
直ちに行えなくなるものではない。
(2)-4被告Aの法的責任
(原告)
ア代表取締役としての直接的な法的責任
被告Aは,次のとおり,各国の法律又はコモンローに基づき,原告に対
し,代表取締役としての地位を利用したことに基づく直接的な個人責任を
負う。
(ア)中国
①中国では,会社の代表取締役がその「業務」に際し第三者に損害を
生じさせた場合には,当該会社が原則として責任を負うものとされて
いる(最高人民法院による中国民法一般規定の適用における若干の問
題に関する解釈58条及び最高人民法院による中国民事訴訟法の適用
における若干の問題に関する解釈42条。甲350~352,366,
367)。しかし,例外的に,当該代表取締役の行為が,代表取締役
として通常行うことが想定されている範囲を超えていれば,当該代表
取締役が会社と共同して個人責任を負う場合が生じ得る(甲352)。
裁判例(中国最高人民法院(1999)知終字第17号)は,「経
営者はその取引活動において,誠実信用の原則を遵守する義務があり,
他人の合法的権益を侵害するような手段で不正競争をしてはいけな
い。」と判示し,企業の代表者が不正競争という違法行為を行った際,
当該企業と共に代表者個人も責任を負うことを明確に判示しており
(甲393),会社の代表者による行為が,通常の業務としての基準
及び範囲を超えている場合,当該行為により当該代表者は,会社と連
帯して賠償する責任を負うこととなる。
また,当該行為には,代表取締役等が代表取締役等としての自らの
行為により第三者から受け取る金銭等を,当該代表取締役等個人の利
益のために当該代表取締役等個人の口座等において直接受領する場合
等が挙げられる(甲352)。とすれば,当該代表取締役等の行為が,
会社の利益のための代表取締役等としての行為と結合し,これらの行
為があいまって第三者に損害を生じさせたような場合には,当該代表
取締役等は,当該第三者の損害につき,当該会社と連帯して,直接的
な個人責任としての賠償責任を負うことになる(甲352)。
②本件において,被告Aは,被告トーマジャパンの代表取締役である
ところ,中国での侵害行為①~侵害行為③において,商標権侵害行為
という代表取締役等として通常行うことが想定されていない違法行為
を行い,それにより,原告に損害を生じさせている。さらに,被告A
は,かかる行為に際し,訴外B又は訴外JRオリエンタル等から自ら
の利益のために被告A個人の口座によって直接に受領している(甲2
6,73,312等)。
よって,被告Aは,本件における中国での商標権侵害行為により原
告に生じた損害につき,代表取締役としての地位を利用してその権限
を越えて違法行為を行ったことに基づき,被告トーマジャパンと連帯
して,直接的な個人責任としての賠償責任を負う。
(イ)台湾
①台湾では,会社の代表取締役等が業務遂行過程において違法行為を
行い,それにより第三者に損害を生じさせた場合,当該代表取締役等
は,会社と連帯して,当該第三者に対して直接的な個人責任としての
賠償責任を負う(台湾会社法23条2項。甲141,353)。この
ことは,代表取締役等が会社の業務遂行過程の一貫として行った行為
が,商標権侵害行為であった場合も同様である(甲353)。
②本件において,被告Aは,被告トーマジャパンの代表取締役である
ところ,台湾での侵害行為①~侵害行為③において,商標権侵害行為
という代表取締役等として通常行うことが想定されていない違法行為
を行い,それにより,原告に損害を生じさせている。
よって,被告Aは,本件における台湾での商標権侵害行為により原
告に生じた損害につき,代表取締役としての地位を利用してその権限
を越えて違法行為を行ったことに基づき,被告トーマジャパンと連帯
して,直接的な個人責任としての賠償責任を負う。
(ウ)香港
①香港では,コモンローにより,代表取締役等として通常行うことが
想定されている範囲を超えて行った代表取締役等の行為により第三者
に損害を生じさせた場合には,直接的な個人責任としての賠償責任を
負うものとされ,このことは,商標権侵害行為の場合も同様とされる
(甲349)。
香港のコモンローについては,共同不法行為に関する概念について
は,英国上院議員がC.B.S.SongsLimited&
Others対AmstradConsumerElect
ronicsPLCandAnor事件(事件番号:第[19
88]R.P.C.567号)で,「不正行為により発生した利益の
分配が共通の目的を達成するためになされた場合,それに関与した者
は,共同不法行為者とみなされる。」とした上で,「共同侵害者とは,
共通の侵害計画に基づき他の者と共謀して行為する2名以上の者を意
味する。」と判示する(甲394)。
上記の共同不法行為の概念は,MCARecordsInc.
対CharlyRecordsLtdetal事件(事
件番号:第[2002]F.S.R.26号:甲395)において,
英国控訴裁判所により適用され,被告企業の取締役の責任につき,
「個人が共同不法行為者として企業と共に負う連帯責任が,組織統制
を逸脱した個人の参加又は関与により発生した場合,個人は組織統制
を通じて不法行為を幇助した可能性があり,…連帯責任を免除される
理由はない」と判示された。また,株式会社ヤクルト本社.対Ya
kudoGroupHoldingsLimited&a
nor事件(事件番号:第[2004]2HKLRD587号:
甲396)においても,「被告2(取締役)は,自ら不法行為を実行
することを意図し,かつ,被告1(法人)をして不法行為を実行させ
るよう幇助した」として,上記基準に従い,被告2の共同不法行為者
としての責任が認められた。
このように,香港法に基づく企業の不法行為に対する取締役の責任
については,共同不法行為に関するコモンローの概念に準拠し,「当
該取締役が組織上の支配の行使を逸脱したかどうか」という基準によ
り判断されている(甲397~400)。
②本件において,被告Aは被告トーマジャパンの代表取締役であると
ころ,香港での侵害行為①~侵害行為③において,商標権侵害行為と
いう代表取締役等として通常行うことが想定されていない違法行為を
行い,それにより,原告に損害を生じさせている。
よって,被告Aは,本件における香港での商標権侵害行為により原
告に生じた損害につき,代表取締役としての地位を利用してその権限
を越えて違法行為を行ったことに基づき,被告トーマジャパンと連帯
して,直接的な個人責任としての賠償責任を負う。
イ共同不法行為
(ア)中国,台湾及び香港においては,複数の者が共同して違法行為を行
った場合,それらの者は当該違法行為により生じた損害につき連帯して
賠償責任を負う旨を定めた共同不法行為の規定又はコモンローが存在す
る(中国民法通則130条,甲137,352,台湾民法185条1項
前段,甲140,353,香港コモンロー,甲349)。
(イ)よって,本件において,中国,台湾及び香港における被告らの共同
の違法行為に関して,被告Aは,被告トーマジャパンとともに連帯して
原告に生じた損害につき賠償責任を負う。
ウ以上により,被告Aは,侵害行為①~侵害行為③において,無権限での
商標使用許諾及び商標使用再許諾行為を通じ偽造品の製造及び販売に深く
関与しており,被告トーマジャパンの代表者としての組織上の支配権行使
を逸脱した形式で違法行為に参加又は関与したという側面から,被告トー
マジャパンと連帯して直接的な個人責任を追うとともに,それらの違法行
為を被告トーマジャパン,訴外JRオリエンタル又は訴外盛業昌らととも
に行ったという側面から,被告トーマジャパンとの共同不法行為として連
帯して原告の損害を賠償すべき法的責任を負う。
(被告ら)
ア代表者としての責任
(ア)各国における代表者としての責任の規定又はコモンローの内容につ
いては,知らないが(台湾については,特段争わない。),これを前提
としても,中国について,会社の代表者による行為が,通常の業務とし
ての基準及び理解を超えている場合,そのような行為が,代表者の個人
的な行為とみなされる可能性があり,当該代表者のそのような個人的な
行為が会社代表者としての「業務」とあいまって第三者に生じさせた損
害について,当該代表者は,会社と連帯して賠償する責任を負うこと,
すなわち,直接的な個人責任としての賠償責任を負うことの法的根拠は
示されていない。
香港のコモンローについて,甲349によれば,共同不法行為者が連
帯責任を負うのは「個人又は事業体が,他の侵害者と共に侵害の実行に
関する共通の計画を意図,幇助及び共有した場合」である。
(イ)原告の主張する事実はいずれも否認し,法的な評価はいずれも争う。
被告らは,原告が主張する侵害行為①~侵害行為③を行っておらず,被
告Aが,直接的な個人責任としての賠償責任を負うことはない。被告A
は,偽造品の製造販売に関する自らの利益のために,訴外JRオリエン
タル等から,同被告個人の口座を通じて利益を受領した事実はない。
イ共同不法行為
(ア)各国における共同不法行為の規定又はコモンローの内容については,
知らない。
(イ)原告の主張する事実はいずれも否認し,法的な評価はいずれも争う。
被告らの具体的な「共同」の内容は,特定されていない。また,被告ら
は,原告が主張する侵害行為①~侵害行為③に記載された行為を行って
おらず,被告Aが,被告トーマジャパンとともに連帯して原告に生じた
損害について賠償責任を負うことはない。
(3)書証の成否
(原告)
ア侵害行為①に関し,被告らが成立を争う書証(甲29,44,48,3
25,326)は,次のとおり,いずれも真正に成立している。
(ア)製造許諾書(甲48)
①被告らが訴外JRオリエンタルに交付した被告トーマジャパン名義
の平成16年1月1日付け製造許諾書(甲48)は,真正に成立して
いる。
aJRオリエンタル訴訟における被告Aの平成19年9月28日付
け陳述書(甲132,288)では,「甲13(本件訴訟における
甲48)は,B社長が甲8の授権確認書(本件訴訟における甲4
7)に基づいて有する本件商品の製造販売権をJRが引き継いだこ
とを確認したものです。」と陳述し,自ら製造許諾書(甲48)を
作成し訴外JRオリエンタルに交付したことを認めている。
b後記のとおり,製造許諾書(甲44)の被告トーマジャパン名義
の角印による印影は,同被告所有の角印による印影であることが明
らかといえるから,これと同一の印影が認められる製造許諾書(甲
48)についても,少なくとも,同被告所有の角印が用いられたも
のと認められる。
②製造許諾書(甲48)は,訴外JRオリエンタル又は訴外Bが偽造
したとする被告らの主張は,以下のとおり,信用できない。
a被告Aは,上記のとおり,平成19年9月28日付け陳述書(甲
132,288)において,訴外JRオリエンタルに製造許諾書
(甲48)を交付したことを認めている。同陳述書(甲132)1
9頁では,被告らは訴外NECビューテクノロジーとの間における
事業を収束させることに合意していたが,その後も両者間の事業は
継続していると考えていたため,訴外JRオリエンタルとの間で製
造許諾書(甲48)を締結したとして,その作成の経緯,理由,背
景事情について具体的詳細に陳述している。
b陳述書(甲132,288)は,製造許諾書(甲48)が真正に
作成されたものであるとの誤解に基づいてその作成を自認した内容
となっているとの被告の反論は,被告らが,JRオリエンタル訴訟
と同一の代理人をトーマジャパン訴訟の訴訟代理人として委任し,
訴外B及び訴外JRオリエンタルと共同戦線を張っていたことから
すると,通用しない。自社の「会社の角印らしきものが押印されて
いた」という理由で,当該書面が真正に成立した書面であると誤解
したとする反論も不自然である。
c被告らは,JRオリエンタル訴訟における平成19年12月20
日の被告Aの証人尋問により,訴外JRオリエンタル及び訴外Bが
偽造書面を作成したり,偽造品の製造販売に関与していることを知
ったとするが,被告Aは,その後の同月25日付け陳述書(甲31
8)において,その旨の主張をしておらず,平成20年6月19日
には,Cの陳述書を翻訳(甲319)する等,訴外JRオリエンタ
ル及び訴外Bを援助している。被告らは,トーマジャパン訴訟控訴
審においても,同一の訴訟代理人を委任し,平成20年5月30日
付け控訴理由書においても,上記の主張をしていない。
d製造許諾書(甲48)の印影については,そもそも本件角印のよ
うな社印については,印鑑登録がなされている実印とは異なり,一
社において形や大きさの異なる複数の社印が存在していることは社
会通念上頻繁に見受けられるから,現在被告らが保有していると一
方的に主張する角印の印影と,各種契約書に押印された角印の印影
を比較することが無意味である。したがって,被告らが保有すると
主張する角印の印影と,同製造許諾書(甲48)に押印された角印
の印影が客観的に異なるとしても,その成立の真正を否定する理由
にはなり得ない。
e製造許諾書(甲48)と,被告らが成立の真正を認める声明文
(甲295)のレター用紙(ヘッダの字体や文字の位置関係)が異
なるとする点は,そもそもレター用紙のような業務上使用されるフ
ォーマットについては,用途に応じてレターヘッドを含めたデザイ
ンの異なる複数のレター用紙を使い分けることが,社会通念上頻繁
に見受けられる。そして,声明文(甲295)は,同じく被告らが
成立の真正を認める梱包明細(甲356)及び購入申込書(甲35
7)とも,レターヘッドのデザインが相違するから,被告ら自身も,
用途に応じてレターヘッドを含めたデザインの異なる複数のレター
用紙を使い分けていたにすぎない。
f製造許諾書(甲48)では,訴外Bの「覚」の字が「覺」と表示
されるなど,日本のワープロでは通常使用されていない漢字が用い
られ,同書証が日本国内で作成された日本文ではないとする点につ
いては,被告らが成立の真正を認める授権確認書(甲47)におい
ても,訴外Bの「覚」は「覺」と表示されているほか,「區」や
「號」等の日本のワープロでは通常文字変換されない漢字が用いら
れており,加えて,本件における被告らに関連する書面には,日本
文以外の文章や文字で記載された書面が多数存在するから,書面の
文字が通常の日本文や日本語の文字ではないという事情は,当該書
面の作成の真正を否定する理由にはならない。
台湾出身の被告Aが,日本語のみを用いるワープロを使用すると
いう前提は不合理であり,また,日本語ワープロでは返還不可能で
あっても,中国語対応変換ソフトをインストールし,中国語文字に
変換したり,ウェブサイトから中国語文字をコピーすることは,容
易である。
(イ)製造許諾承認契約書(甲29)
①訴外NECビューテクノロジーと被告トーマジャパン名義の平成1
3年8月1日付け製造許諾承認契約書(甲29)は,訴外JRオリエ
ンタル又は訴外Bが,同書面(甲29)を保有するに至ったのは,同
被告が同書面(甲29)を訴外JRオリエンタルに交付したからであ
る。訴外Bは,台湾における訴外Dの裁判手続で,その旨証言してお
り(甲327),同書面(甲29)は,同被告名義で真正に成立した
文書(訴外NECビューテクノロジーにとっては偽造文書)である。
②訴外Ardenに対する製造許諾書(甲309)は,後記のとおり,
真正に成立しているから,これに言及されている製造許諾承認契約書
(甲29)も,被告トーマジャパン名義で真正に成立した文書(訴外
NECビューテクノロジーにとっては偽造文書)である。同書面(甲
29)の印影と被告らが称するところの角印の印影との比較は,何ら
の意味もない。
③製造許諾承認契約書(甲29)は,被告らと共謀関係にある訴外J
Rオリエンタルが,自らに原告商標の使用権限があることの確認を求
めてJRオリエンタル訴訟において証拠として提出した文書である。
(ウ)製造許諾書(甲44)
①被告トーマジャパンの訴外JRオリエンタルに対する製造許諾書
(甲44)は,真正に成立した文書である(乙5)。
製造許諾書(甲48)と同(甲44)に押された被告トーマジャパ
ンの角印の印影は,目視しただけでも同一であるが,専門家の「デジ
タル・スーパーインポーズ検査」というコンピュータ検査による鑑定
によると,全て同一印影であるとの結果が得られている(甲347)。
したがって,同被告の角印の印影が,真正に成立した文書である製造
許諾書(甲48)と同一である製造許諾書(甲44)についても,成
立の真正が認められる。
②製造許諾書(甲44)は,中国広州市工商行政管理局が,訴外Ar
denに対し,平成17年11月30日に行った強制捜査で入手した
書面であるから,被告トーマジャパン名義で真正に成立した文書であ
る。
③製造許諾書(甲44)には,被告トーマジャパンの角印による印影
と,当該印影に一部重ねてされた被告Aによるサインがあるが,同被
告は,自らのサインであることを認めている。そして,仮に,上記印
影とサインの箇所のみがカットアンドペーストされたとしても,その
位置関係からすると,両者を包含する範囲の画像データを同一書面上
から一度にカットアンドペーストしたことになるから,サインが被告
A自らのサインである以上,印影も被告Aが被告トーマジャパンの角
印を用いて押印したものであることが強く推認されるから,当該印影
は,同被告所有の角印による印影であるといえる。
④製造許諾書(甲44)は,他方当事者の訴外JRオリエンタルの署
名も,その下方が,被告トーマジャパンの署名と同じ延長戦上で切れ
ているから,これらの署名は,複写又はファックス送信した際に,読
取り部分又は転写部分の範囲がずれて下方が切れてしまっただけと考
えるのが自然である。
製造許諾書(甲44)の被告トーマジャパンの「ャ」が「ゃ」と記
載されているのは,誤記でしかないと考えられる。
(エ)製造許諾書(甲325,326)
①被告トーマジャパンの訴外JRオリエンタルに対する製造許諾書
(甲325,326)は,被告トーマジャパン名義において真正に成
立している。
②JRオリエンタル訴訟と同一の代理人がトーマジャパン訴訟におい
ても訴訟代理人を務め,両訴訟において被告らと訴外B及び訴外JR
オリエンタルが共同戦線を張っていたことからすれば,訴外Bの証言
(甲327)を「単なる再伝聞」とするのは,不合理である。なお
「それは会社内部管理の問題で,印鑑は何個もあると言っていた」と
の証言(甲327)のうち,「会社」が被告トーマジャパンを指すこ
とは文脈上明らかであり,同被告が複数の角印を所有していた事実が
強く推認される。
イ侵害行為②に関し,被告らが成立を争う書証(甲62~71,315)
は,次のとおり,いずれも真正に成立している。
(ア)中国
①確認書(甲62,67)
a被告トーマジャパンと訴外JRオリエンタル名義の確認書(甲6
2,67)は,同被告について真正に成立している。
b被告Aが,訴外Bと共謀の上,原告商標権を侵害したとして台湾
において商標法違反の罪で刑事起訴されている(甲324)ことか
ら明らかなとおり,被告ら,訴外B,訴外盛業昌及び訴外JRオリ
エンタルは,共同して偽造集団を主導し違法行為を行っていた。そ
して,確認書(甲62,67)は,被告らと共謀関係にある訴外盛
業昌に対して,平成17年4月26日に行われた台湾当局による強
制捜査によって入手されたものであるから,被告トーマジャパン名
義で真正に成立した文書である(甲340)。
②確認書(甲63)
a被告トーマジャパンと訴外JRオリエンタル名義の確認書(甲6
3)に押印された同被告の角印の印影は,被告らが作成を認めてい
る製造許諾書(甲48)に認められる印影と同一であるから,確認
書(甲63)は,同被告名義で真正に成立している。
b確認書(甲63)は,訴外Ridianが,中国上海市での損害
賠償請求訴訟において,自らNEC標章の使用権限を授権されたと
主張して提出し,訴外JRオリエンタルが,NEC標章の使用権限
があることを示すために交付したと主張した。被告トーマジャパン
と訴外JRオリエンタルが共謀関係にあることを踏まえれば,確認
書(甲63)が,被告トーマジャパン名義で真正に成立したことが
強く推認される(甲341)。
③確認書(甲64)
被告トーマジャパンと訴外JRオリエンタル名義の確認書(甲6
4)は,訴外Kapoに対して,平成17年11月30日に行われた
中国中山市工商行政管理局による強制捜査によって提出され,同書面
(甲64)写しは,訴外Ardenの販売会社に対し,平成19年7
月15日に行われた中国南京市工商行政管理局による強制捜査におい
ても提出された。そして,訴外Ardenは,中国南京市での訴訟に
おいて,被告トーマジャパンから,直接NEC標章の使用許諾を受け
たと主張しているから,確認書(甲64)が,被告トーマジャパン名
義で真正に成立したことが強く推認される(甲341)。
④確認書(甲65)
a被告トーマジャパンと訴外JRオリエンタル名義の確認書(甲6
5)に押印された同被告の角印の印影は,被告らが作成を認めてい
る製造許諾書(甲48)の被告トーマジャパンの印影と同一である
から,確認書(甲65)は,同被告名義で真正に成立したものであ
る。
b確認書(甲65)は,訴外Ardenに対して,平成17年11
月30日に行われた中国広州市工商行政管理局による強制捜査によ
って入手されているから,確認書(甲65)が,被告トーマジャパ
ン名義で真正に成立した文書であることは明らかである。
(イ)台湾
確認書(甲66,68,69)
①被告トーマジャパンと訴外JRオリエンタル名義の確認書(甲66,
68)は,同被告について真正に成立している。
②上記のとおり,被告Aは,台湾で起訴されており(甲324),被
告ら,訴外B,訴外盛業昌及び訴外JRオリエンタルは,共同して本
件偽造集団を主導し違法行為を行っていた。そして,確認書(甲66,
68,69)は,被告らと共謀関係にある訴外盛業昌に対する強制捜
査によって入手されたものであるから,被告トーマジャパン名義で真
正に成立した文書である(甲340)。
(ウ)香港
確認書(甲70,71)
①被告トーマジャパンと訴外JRオリエンタル名義の確認書(甲70,
71)は,同被告について真正に成立している。
②上記のとおり,被告Aは,台湾で起訴されており(甲324),被
告ら,訴外B,訴外盛業昌及び訴外JRオリエンタルは,共同して本
件偽造集団を主導し違法行為を行っていた。そして,確認書(甲70,
71)は,被告らと共謀関係にある訴外盛業昌に対する強制捜査によ
って入手されたものであるから,被告トーマジャパン名義で真正に成
立した文書である(甲340)。
(エ)領収書(甲315)
①被告トーマジャパン名義の領収書(甲315)は,真正に成立して
いる。
②上記のとおり,被告Aは,台湾で起訴されており(甲324),被
告ら,訴外B,訴外盛業昌及び訴外JRオリエンタルは,共同して本
件偽造集団を主導し違法行為を行っていた。そして,領収書(甲31
5)は,被告らと共謀関係にある訴外盛業昌に対する強制捜査によっ
て入手されたものであるから,被告トーマジャパン名義で真正に成立
した文書である(甲340)。
ウ侵害行為③に関し,被告らが成立を争う書証(甲79,80,309,
311)は,次のとおり,いずれも真正に成立している。
(ア)製造許諾書(甲309)
①被告トーマジャパンの訴外Ardenに対する製造許諾書(甲30
9)に押印された同被告の角印の印影は,作成の真正が認められる製
造許諾書(甲48)の印影と同一であるから,真正に成立したもので
ある。なお,上記のとおり,製造許諾書(甲44,48,309)の
同被告の角印の印影は,目視だけでなく,「デジタル・スーパーイン
ポーズ検査」による鑑定によっても,全て同一印影であるとの結果が
得られている(甲347)。
②製造許諾書(甲309)は,訴外Ardenが,中国南京市での損
害賠償請求訴訟において,NEC標章を付した製品の製造販売権を被
告トーマジャパンから直接授権されたと主張し,裁判所に提出したも
のであり(甲310),同訴外会社は,同被告を共同被告とするよう
申請しているから(甲310,329),製造許諾書(甲309)は,
同被告が自ら訴外Ardenに交付した書面である。
(イ)製造許諾書(甲311)
①被告トーマジャパンの訴外Lidanに対する製造許諾書(甲31
1)に押印された同被告の角印の印影は,作成の真正が認められる製
造許諾書(甲48)の印影と同一であるから,真正に成立したもので
ある。
②製造許諾書(甲311)は,中国中山市工商行政管理局が平成17
年11月30日に行った強制捜査の後,訴外Lidanが提出した書
面である。訴外Lidan及び訴外Ridianは,中国上海市での
損害賠償請求訴訟において,訴外JRオリエンタルが,訴外Lida
nに製造権限を,訴外Ridianに販売権限を各授権したと主張し
ており,被告トーマジャパンと訴外JRオリエンタルが共謀関係にあ
ることを踏まえれば,製造許諾書(甲311)が,同被告名義で真正
に成立したことが強く推認される(甲341)。
(ウ)製造委託書(甲79)
①被告トーマジャパン名義の訴外Digitfabに対する製造委託
書(甲79)に押印された被告トーマジャパンの角印の印影は,自ら
被告トーマジャパンのものと認める角印の印影と同一であるから,真
正に成立したものである。被告らも,印影比較報告書(乙5)の12
頁において,甲79を「縦方向に伸長して両者の縦横比を合わせて重
ねると,両者の印影はほぼ同一となる」として,その旨認めている。
②上記のとおり,被告Aは,台湾で起訴されており(甲324),被
告ら,訴外B,訴外盛業昌及び訴外JRオリエンタルは,共同して本
件偽造集団を主導し違法行為を行っていた。そして,製造委託書(甲
79)は,被告らと共謀関係にある訴外盛業昌に対する強制捜査によ
って入手されたものであるから,被告トーマジャパン名義で真正に成
立した文書である(甲340)。
(エ)製造許諾書(甲80)
①被告トーマジャパンの訴外Kapoに対する製造許諾書(甲80)
に押印された同被告の角印の印影は,に押印された同被告の角印の印
影は,作成の真正が認められる製造許諾書(甲48)の印影と同一で
あるから,真正に成立したものである。
②製造許諾書(甲80)は,訴外Kapoに対して,平成17年11
月30日に行われた中国中山市工商行政管理局による強制捜査におい
て入手されており,被告トーマジャパンと訴外JRオリエンタルが共
謀関係にあることを踏まえれば,真正に成立したことが強く推認され
る(甲341)。
エ印影比較報告書(乙5,23)
そもそも角印のような社印は,印鑑登録がされる実印とは異なり,一社
において形や大きさの異なる複数の社印が存在すること自体,社会通念上
頻繁に見受けられる。訴外Bも,台湾の裁判手続において,被告トーマジ
ャパンの印鑑が一種類ではなく,被告Aから「会社内部管理の問題で,印
鑑は何個もある」と説明を受けた旨を証言している(甲327)。よって,
印影が異なる複数の押印があるということは,単に複数の角印を同被告が
保有していた,又は多方面の業務に利用していたことを証明するにすぎな
い(乙5,23)。
(被告ら)
ア侵害行為①に関する書証(甲29,44,48,325,326)は,
次のとおり,いずれも偽造文書である。
(ア)製造許諾書(甲48)
①製造許諾書(甲48)に押印された被告トーマジャパンの印影は,
印影比較報告書(乙5)のとおり,同被告の印鑑の印影と異なること
が客観的に明らかである。同被告は,平成16年7月29日付け声明
文(甲295)で,会社の角印を使用しており,正規に製造許諾書
(甲48)を作成するのであれば,あえて会社の角印を使用しない理
由はない。
②製造許諾書(甲48)は,次のとおり,訴外B又は訴外JRオリエ
ンタルが偽造した書面である。
a製造許諾書(甲48)のレター用紙は,被告トーマジャパンが作
成した声明文(甲295)のレターヘッダと比較すると,「TOHMA
JAPAN」の表記の字体が異なる,「TOHMAJAPAN」の「T]」が,
「KANDASAKUMA」の,「S」の上(甲295),「N」の上(甲4
8)に位置する,「TEL」の「T」が,「KANDASAKUMA」の,「A」の
下(甲295),「D」と「A」の中間の下(甲48)に位置するな
ど,ヘッダの字体や文字の位置関係が異なっている。
b製造許諾書(甲48)は,本店所在地が日本の被告トーマジャパ
ンが許諾する内容であるから,日本語で作成されなければ意味がな
いが,表題の「製造許諾書」の「造」,本文1行目の「株式会社ト
ーマジャパン」の「社」,本文2行目の「甲とBとの」の「覚」,
授権確認書の「権」,商標の「商」,販売の「販」,「関連商品」
の「連」,本文3行目の「生産」の「産」,成立証明文言の「本書
2通」「1通」の「通」,当事者欄の「株式会社トーマジャパン」
の「社」の各文字は,日本のワープロで変換不可能な文字である。
c本件における偽造品の製造販売等に関する書面及びその他被告ら
に関連する書面は,ほとんどが偽造文書であるから,これらの文書
に日本文以外の文章や文字が記載されていることは,何ら不自然で
はない。
③製造許諾書(甲48)は,被告Aの陳述書(甲132)によっても,
成立の真正を裏付けることはできない。
被告Aは,JRオリエンタル訴訟で陳述書(甲132)を作成し,
証言した時点では,まさか偽造書面が作成されているとは考えておら
ず,製造許諾書(甲48)も,被告トーマジャパンの会社の角印らし
きものが押印されており,同訴外会社の訴訟代理人からも,真正に成
立した証拠として示されたことから,その旨誤解し,同訴外会社の訴
訟代理人が作成した陳述書(甲132)の内容とそこで引用されてい
る書証の作成名義を精査しないままに,署名押印した。本件訴訟にお
いて,原告から,被告らが関与しない契約書等の書面が多数証拠とし
て提出され,しかも売買基本契約(甲13)の終了後に作成されたと
思われるものが多く提出されたことから,被告ら訴訟代理人の指示に
より,製造許諾書(甲48)を含めて再度確認した結果,同書面(甲
48)は作成日付が「平成16年1月1日」となっており,押印され
ている印影も被告トーマジャパンの角印の印影と客観的に異なってい
ることが判明した。同書面(甲48)の印影の印章を同被告が保有し
ていない以上,被告Aが,改めてこれを偽造書面として認識し直すこ
とは,不自然ではない。
なお,陳述書(甲132)の18頁では,単に製造許諾書(甲4
8)の内容が説明されているにすぎず,19頁の同書面(甲48)を
締結した理由も,大要「平成16年1月1日の時点においてもNEC
ビューテクノロジーとトーマジャパンとの契約関係は有効であると信
じていた」旨記載されているだけであり,同書面(甲48)が,いつ,
どこで,どのような状況で,いかなる理由(必要性)に基づいて締結
されたかという「作成経緯」については,何ら記載されていない。
(イ)製造許諾承認契約書(甲29)
①製造許諾承認契約書(甲29)に押印された被告トーマジャパンの
印影は,印影比較報告書(乙5)のとおり,同被告の印鑑の印影と異
なることが客観的に明らかである。同日付け売買基本契約(甲13)
の印影を比較しても,「株」等の字体や,外側の枠と内側の社名との
隙間の間隔が異なる。
②訴外Bは,台湾での訴外Dの裁判手続において,製造許諾承認契約
書(甲29)は,「もともと当社にある」と証言するにすぎず,被告
トーマジャパンから直接受領したとは証言していない(甲327)。
③製造許諾承認契約書(甲29)は,訴外NECビューテクノロジー
が被告トーマジャパンに製造許諾する内容の書面であり,日本語で作
成されなければ意味をなさないところ,日本国内で作成された日本文
でないことが強く推認される。
④本件は,訴外Bは,訴外JRオリエンタルの代表者となった後に,
正規品の取引に関与したことを奇貨として,被告らを欺いて,無断で
偽造品の製造販売を開始した事件であり,このことは,製造許諾承認
契約書(甲29)からも明らかである。
(ウ)製造許諾書(甲44)
①製造許諾書(甲44)に押印された被告トーマジャパンの印影は,
印影比較報告書(乙5)のとおり,同被告の印鑑の印影と異なること
が客観的に明らかである。
②製造許諾書(甲44)は,被告Aのサインの形状ではあるが,自ら
署名したものではない。被告A及びKの各署名の下端部は不自然に切
れており,パソコンでカットアンドペーストにより作成されているこ
とは,明らかである。同書面(甲44)は,そのような署名の上から,
同被告の角印とは異なる印影の印鑑を署名に重ねるように押印するこ
とにより作成することが可能である。
③製造許諾書(甲44)は,被告トーマジャパンの社名の「ャ」が
「ゃ」と誤って記載されており,偽造文書である。
(エ)製造許諾書(甲325,326)
①製造許諾書(甲325,326)に押印された被告トーマジャパン
の印影は,いずれも同被告が保有する印鑑の印影とは異なっており,
偽造書面である。
②製造許諾書(甲325,326)は,被告トーマジャパンの記名部
分及び押印部分の位置が完全に一致している(乙24)。作成時期が
異なる書面において,上記位置が完全に一致することは経験則上あり
得ないから,日付だけを変更してコピーによって作成されたことが強
く推認される。
③製造許諾書(甲48,325)は,作成日付も対象製品も同一であ
るが,形式的にも(①表題部分の「製造許諾書」の字体やフォントが
異なる,②被告トーマジャパンの記名部分の「株式会社」の「社」の
字が異なる,③訴外JRオリエンタルの記名部分の住所の表示が漢字
表記とローマ字表記で異なる,④同訴外会社の代表者の署名の有無),
内容的にも(製造許諾書(甲48)は,授権確認書(甲47)を承継
するとし,製造許諾書(甲325)は,被告トーマジャパンと訴外N
ECビューテクノロジー間の契約に基づくとしている。)異なってお
り,同時期に同一当事者間で作成されたものでないことが強く推認さ
れる。
④被告トーマジャパンは,会社の角印を1個しか保有していない。訴
外Bは,台湾の裁判手続において,製造許諾書の印鑑が異なることに
ついて「それは会社内部管理の問題で,印鑑は何個もあると言ってい
ました」と証言するが(甲327),単なる再伝聞にすぎず,信用性
がない。上記証言の「会社」が,同被告を指しているかも不明である。
⑤訴外Bは,台湾の裁判手続において,「訴外JRオリエンタルは,
被告トーマジャパンから毎年製造許諾書を受領し,その対価として金
銭を…支払っていた」旨を証言しているが(甲327),同被告は,
毎年,同訴外会社に製造許諾書を交付した事実はなく,その必要もな
い。
イ侵害行為②に関する書証(甲62~71,315)は,次のとおり,い
ずれも偽造文書である。
(ア)中国
①確認書(甲63,65)
確認書(甲63,65)に押印された被告トーマジャパンの印影は,
印影比較報告書(乙5)のとおり,同被告の印鑑の印影と異なること
が客観的に明らかである。作成も,売買基本契約(甲13)終了後で
あり,被告らは関与していない。
②確認書(甲62,64,67)
確認書(甲62,64,67)は,いずれも被告トーマジャパンの
社判も印鑑も押印されておらず,被告らの関与行為の根拠とならない。
かえって,訴外JRオリエンタルが被告らに無断でこれらの偽造書面
を作成して偽造品を製造販売していたことが推認される。
(イ)台湾
確認書(甲66,68,69)は,いずれも被告トーマジャパンの社
判も印鑑も押印されておらず,被告らの関与行為の根拠とならない。か
えって,訴外JRオリエンタルが被告らに無断でこれらの偽造書面を作
成して偽造品を製造販売していたことが推認される。
(ウ)香港
確認書(甲70,71)は,いずれも被告トーマジャパンの社判も印
鑑も押印されておらず,被告らの関与行為の根拠とならない。かえって,
訴外JRオリエンタルが被告らに無断でこれらの偽造書面を作成して偽
造品を製造販売していたことが推認される。
(エ)領収書(甲315)
領収書(甲315)は,被告トーマジャパン名下に押印がなく,訴外
B又は訴外JRオリエンタルが偽造した書面である。同書面(甲31
5)の同被告の社名部分は,「ャ」が「ゃ」と誤って記載されており,
ヘッダも,同被告が通常使用するヘッダの書体(甲295)と異なって
いる。そもそも,被告らは当該金銭を受領していない。
ウ侵害行為③に関する書証(甲79,80,309,311)は,次のと
おり,いずれも偽造文書である。
(ア)製造許諾書(甲309)
①製造許諾書(甲309)に押印された被告トーマジャパンの印影は,
同被告が保有する印鑑の印影とは異なっており,偽造書面である(乙
23)。被告らはその作成に関与しておらず,訴外Ardenに交付
した事実もない。同書面(甲309)が,本文で製造許諾承認契約書
(甲29)を引用していることは,むしろ両書面が訴外B又は訴外J
Rオリエンタルによって偽造されたことを推認させている。
②製造許諾書(甲48,309)に押された各角印の印影と同一であ
ったとしても,これらは,被告トーマジャパンの角印による印影では
ない(乙5,乙23)。製造許諾書(甲48)は,被告らが真正に成
立したと誤解し,誤解したことに合理的な理由があるから,偽造書面
であり,よって,製造許諾書(甲309)も偽造書面であることを裏
付けるにすぎない。
③訴外Ardenが,南京市における損害賠償請求訴訟において,被
告トーマジャパンを共同被告として追加申請したり,偽造書面である
製造許諾書(甲309)を提出しただけでは,同被告が訴外Arde
nに直接偽造品の製造を委託したことの立証にはならない。
④前記のとおり,訴外Bがの証言(甲327)によっても,被告トー
マジャパンの角印が複数個存在したことは何ら立証されていない。本
件は,訴外Bが,正規品の取引に関与したことを奇貨として,偽造品
の製造販売を行った事案であり,被告らの関与は認められない。
(イ)製造許諾書(甲311)
製造許諾書(甲311)は,偽造文書である。
(ウ)製造委託書(甲79)
①委託製造書(甲79)に押印された被告トーマジャパンの印影は,
印影比較報告書(乙5)のとおり,同被告の印鑑の印影と異なること
が明らかである。
②委託製造書(甲79)の原本から,縦横の比率を変えて写しを作成
した可能性も容易に想定できるとか,同書面(甲79)の印影が被告
トーマジャパン自らの社印であるとして,同書面を自ら作成したこと
を認めたに等しいとの原告の主張は,合理的根拠に基づかない推測で
ある。
(エ)製造許諾書(甲80)
委託製造書(甲79)に押印された被告トーマジャパンの印影は,印
影比較報告書(乙5)のとおり,同被告の印鑑の印影と異なることが明
らかである。
エ印影比較報告書(乙5,23,24)
(ア)被告トーマジャパンは,以前から,角印一つしか保有していない
(乙5)。
(イ)製造許諾書(甲48)の角印の印影と,製造許諾書(甲44,8
0),確認書(甲63,65)の角印の印影が同一であったとしても,
これらの印影は,被告トーマジャパンの角印による印影ではない(乙
5)。上記のとおり,製造許諾書(甲48)は,真正に成立した書面で
あると誤解したものであり,誤解したことに合理的な理由がある。
(ウ)原告の鑑定結果(甲347)において,原告が偽造書面と主張する
書面(甲44,48,309)と,被告トーマジャパンの角印の印影と
が同一であるとの結果が記載されていないことは,乙5,23,24の
証拠価値を高め,偽造書面との被告の主張を裏付けるものである。
(4)故意過失及び共同不法行為の意思
(原告)
ア被告らには,次のとおり,故意,過失及び共同不法行為の意思が認めら
れる。
(ア)被告らの行為は,悪質な故意による商標権侵害であること
①被告らの行為は,原告の商標を無権限で使用し,訴外B及び訴外J
Rオリエンタルに商標使用許諾をした上で,中国,台湾及び香港にお
ける主要サブライセンシー9社に商標使用再許諾を行い,もってそれ
らの地においてNEC標章が付された偽造品を製造販売させ,それら
再使用許諾先から,偽造品の仕入額に応じた商標使用料を得て,被告
らと訴外JRオリエンタル間で折半していたというものである。
②被告Aは,被告トーマジャパン名義で,訴外Digitfabとの
間で製造委託書(甲79)を締結したり,訴外Kapoに製造許諾書
(甲80)を交付している。また,偽造品が販売されることは当然に
予想されることである。さらに,被告Aは,JRオリエンタル訴訟に
おいて,被告トーマジャパンと訴外NECビューテクノロジー間の関
係が継続している旨述べ(甲7の17頁,甲132の19頁),NE
C標章を付した製品の製造販売に関与していることを表明している。
③かかる被告らの行為は,売買基本契約(甲13)の存在を利用して,
無権限であることを知りながら,訴外B及び訴外JRオリエンタルと
共同し,意図的に行った商標権侵害に該当する行為であり,被告らに
は,偽造品の製造販売について故意及び共同不法行為の意思がある。
(イ)被告らの行為が過失によるものでも,違法な商標権侵害となること
①中国,台湾及び香港においては,いずれも過失行為であっても商標
権侵害は成立する。
a中国においては,無権限での商標使用許諾行為は,中国商標法5
2条1項に該当する違法行為としての商標権侵害行為であり(甲1
33),同条の文言及び体裁上,侵害の成立に行為者の主観面は要
件とされていない。中国の裁判例からしても,侵害者は無過失責任
を負うことになる(甲385~387)。
b台湾においては,無権限での商標使用許諾行為は,台湾商標法6
1条2項に該当する違法行為としての商標権侵害行為であり(甲1
38),特殊な類型の不法行為であるところ,不法行為に基づく損
害賠償請求の法的根拠(台湾民法184条1項前段)によると,商
標権侵害は過失行為によっても成立する(甲140)。
c香港においては,無権限での商標使用許諾行為は,香港商標条例
18条1項に該当する違法行為としての商標権侵害行為であり(甲
142),行為者の主観面(商標権侵害事実の認識又は過失の有
無)に関わらず,成立するとされる(甲349,380,382,
383)。侵害者の"Innocence"(善意・無過失)は抗弁として考
慮されず(甲379,380),裁判例(甲381,384)にお
いても,同様である。
②商標使用許諾についての過失
a被告らは,JRオリエンタル訴訟等において自らにNEC標章の
使用許諾権限があると証言したが(甲132,306等),本件に
おいては,被告らの権限の内容について誤解があったと主張するか
ら,被告らは,本件以前においては,NEC標章の使用許諾権限に
つき無権限であるにもかかわらず,権限を有するものと過失により
間違った認識をしていた。
b売買基本契約(甲13)は,体裁上も内容上も単なる売買契約で
あり,商品の注文書(甲359)や「売掛金」との記載がある「勘
定残高確認ご依頼の件」と題する書面(甲360)等,売買契約で
あることを明確に示す書類が作成,交付されているから,商業取引
を行うものが通常なすべき注意義務をもってすれば,同契約が商標
の使用許諾権限を付与するものではないと認識することは容易であ
った。
c被告らは,本件商標権が原告にあり,使用許諾には厳格な要件の
充足及び慎重な手続の履践が必要であること(甲129~131),
原告は,訴外NECビューテクノロジーには,第三者へのNEC標
章の再使用許諾を禁止していたこと(甲10,11,7条。甲12,
8条)を認識していた(甲306等)。被告Aは,大企業ブランド
の使用許諾について厳格な厳しい基準があることも認識していた
(甲7,36頁)。
d商業取引を頻繁に業として行う者が商標使用権限を正当に有す
ると認識するためには,当該商標の商標権者に自らが使用権限を
正当に授権されているかにつき確認したり,または,正当に授権
されていることを示す契約書等を権限者との間で作成したりする
ことが通常であるところ,被告らは,NEC標章の使用権限ある
いは使用許諾権限につき原告に確認したり,原告との間で正当な
授権を示す契約書等を作成していないから,仮に,被告らが自ら
にNEC標章の使用権限あるいは使用許諾権限があると誤解した
としても,当該誤解は,被告らが商業取引を頻繁に業として行う
ものに対して通常課される注意義務を欠き,上記権限があると軽
信したものである。よって,通常課される注意義務を欠いて上記
権限があると軽信し,訴外B及び訴外JRオリエンタルにNEC
標章の商標使用許諾行為を行った被告らの行為には,少なくとも
過失が認められる。
③偽造品の製造販売についての過失
aア(ア)によると,被告らには,偽造品の製造及び販売に関し,過
失が認められる。
b仮に,被告らに誤解があった場合でも,当該誤解に基づき被告ら
が訴外BにNEC標章の使用許諾を行ったことから,訴外JRオリ
エンタルによる商標再使用許諾行為や大量の偽造品の製造販売行為
が行われた以上,被告らには過失責任が生じることが明らかである。
社会通念上,商標使用許諾を受けたとする者が,授権を示す書類
の確認をしたり,商標権者から直接的な了承や確認を得るなどの適
切な手続を経ずに,権限があるものと軽信し,当該商標を自ら使用
したり,第三者へ使用許諾したり,製品を製造販売しようとするこ
とは(特に未だ知的財産保護の文化が根付いていない所では)容易
に想定される。本件でも,NEC標章が付された偽造品が製造販売
されることは容易に想定されることであり,予見可能性がなかった
とする被告らの主張は,不合理である。
c被告らは,売買基本契約(甲13)の解約後も,NEC標章を付
した製品の製造販売を継続して行っている旨を表明した声明文(甲
295)を作成しており,結果回避義務を果たしていない(上記の
とおり,契約解除通知(乙10,11)は,手書きで「送信ずみ」
と不自然に記載されており,実際に送信されたか疑わしい。)。
イ被告Aは,上記被告トーマジャパンの行為を代表者として行うとともに,
同被告という法人格を有する存在を利用し,かつ共同することで,自らの
利益を求めて自己の行為としても行動していたものであり,被告Aには,
故意過失が認められる。
(被告ら)
ア原告の主張する事実は,いずれも否認ないし争う。中国,台湾及び香港
において,商標権侵害が過失によっても成立するとの原告の主張は不知で
ある。原告の主張する中国における法解釈は,立証されていない。
イ被告らの故意・過失
(ア)故意
①被告らが訴外Bらと共謀した事実は存在しない。原告は,被告らに
よる具体的な共謀の内容を明らかにしておらず,原告が提出する書証
は,いずれも偽造書面であり,共謀の事実を基礎付ける証拠は存在し
ない。
②本件は,訴外Bが主導する訴外JRオリエンタルが,NEC標章を
付した正規品の取引に関与したことを奇貨として,被告らを欺いて,
無断で偽造品の製造販売を行った事案であるから,被告らが故意に本
件商標権を侵害した事実はない。
(イ)過失
①被告らは,誤解により,訴外Bに対し授権確認書(甲47)を交付
したが,直ちに過失があると評価することはできない。すなわち,被
告トーマジャパンは,現地サプライヤーがOEM方式によって製造し
た原告製品について,製造販売システムに関する全ての手配を訴外N
ECビューテクノロジーから事実上一任されていたほか,原告製品を
独占的に購入し,さらに保守サービス,製造物責任まで負担していた。
そのため,被告らは,NEC標章の使用権限があると誤信したものの,
NECから製造販売の許諾を得た製品のみを取り扱っており,NEC
に無断で製品を製造販売したことはない。したがって,授権確認書
(甲47)も(6項から明らかなとおり),NECの許諾を得た製品
のみを取り扱うことが当然の前提となっており,訴外B及び訴外JR
オリエンタルもこのことを認識していた。他方,訴外Bの行為は,原
告及び被告らに無断でNEC標章を付した製品を製造販売したもので
あり,質の異なる行為であって,正規品の取引を行うために交付した
授権確認書(甲47)が,偽造品の製造販売の手段として利用される
ことを予見することは不可能である。被告らは,偽造品の製造販売に
よって,訴外B又は訴外JRオリエンタルから利益を得たこともない。
②被告トーマジャパンは,売買基本契約(甲13)が終了した後にお
いて,訴外JRオリエンタルが無権限で偽造品の製造販売をすること
のないよう防止すべき注意義務(結果回避義務)を果たした。すなわ
ち,被告トーマジャパンは,訴外NECビューテクノロジーから,平
成15年4月1日付けで,売買基本契約(甲13)の解約申入れを受
けたため(甲25),同月2日に,訴外JRオリエンタルに対して契
約解除通知(乙10)を送付して告知し,同年6月11日にも,訴外
JRオリエンタルに対し,再度,契約関係が失効することを告知した
(乙11)。なお,契約解除通知(乙10,11)が日本語で作成さ
れていることや,手書きで「送信済み」と記載されたことは,不自然
ではない。
(5)相当因果関係
(原告)
ア中国,台湾及び香港においては,行為との間に相当な範囲での因果関係
が認められる結果については,当該行為者が損害賠償等の責任を負うもの
とされており,商標権侵害においても同様とされる。
イ本件においては,相当因果関係が認められる。
(ア)因果関係
訴外B及び訴外JRオリエンタルによる上記主要サブライセンシーへ
のNEC標章の商標使用再許諾行為は,被告らが訴外B及び訴外JRオ
リエンタルに対し,NEC標章の商標使用許諾を行ったからこそ生じた
行為である。また,主要サブライセンシーらが行ったNEC標章を付し
た偽造品の製造販売行為は,訴外B及び訴外JRオリエンタルによる主
要サブライセンシーに対し,NEC標章の商標使用再許諾行為が行われ
たからこそ生じた行為である。とすれば,上記各行為の間には因果関係
が認められる。
(イ)因果関係の相当性
①特定の企業が社会的に認知された著名商標につき商標使用権限及び
第三者への商標使用許諾権限を受けた場合,ライセンス料収入による
利益を得る目的から,当該企業が他の企業に対して商標使用再許諾を
行い,その使用再許諾における被許諾者からライセンス料を得ること
は,当該企業の受けた権限の行使として当然想定される事項である。
商標を,無形財産たる知的財産権として扱う現代の経済市場において
は,当該商標使用許諾権限を最大限に利用して利益を得ようとするこ
とは,社会通念上容易に想定される事項といえる。
②また商標使用再許諾により商標の使用許諾を受けた者が,販売利益
を得る目的から,製造業者及び販売業者を利用して当該商標が付され
た製品を製造して販売することもまた,社会通念上容易に想定される
事項といえる。加えて,商標使用再許諾を受けたとするものが,適切
な権利取得手続や権利確認手続を経ずに,権限があるものと軽信して
当該商標を付した製品を積極的に製造及び販売し,これにより利益を
上げようとすることは社会通念上容易に想定される事項である。
③そして,これら商標使用再許諾行為並びに偽造品の製造販売行為に
より,当該商標の商標権者たる原告が商標侵害にかかる損害を負うこ
とも,社会通念上容易に想定される事項である。
(被告ら)
ア原告の主張は争う。
イ被告らは,あくまで原告から承認を得た正規品のみを取り扱っていたの
であり,訴外Bらが主導して行った偽造品の製造販売という行為は,質が
異なるから,被告らに予見可能性がない以上,相当因果関係は認められな
い。
ウ上記のとおり,被告トーマジャパンは,訴外Bに対し,授権確認書(甲
47)を作成交付したものの,訴外JRオリエンタルに対し,二度にわた
る契約解除通知(乙10,11)を送付したことで,売買基本契約(甲1
3)終了後に,訴外JRオリエンタルが無権限で偽造品の製造・販売を継
続することのないよう防止すべき注意義務(結果回避義務)を果たしたか
ら,被告らの行為と訴外Bらとの行為の間には相当因果関係は認められな
い。
(6)損害
(6)-1各国の法規制及び損害額算定の前提
(原告)
ア損害に関する各国の法規制
(ア)中国
①商標権侵害による損害賠償請求の根拠及び損害の推定規定
中国では,「登録商標とは,商標局が登録を許可した商標を意味し
…。商標登録人は商標使用の排他権を享有し,法律の保護を受ける」
とされ(中国商標法3条1項,甲133),登録商標を侵害した場合
には,損害賠償請求が認められる(中国民法通則118条,甲33
4)。また,その額については,「…侵害者が侵害期間中に侵害によ
って受けた利益又は被侵害者が侵害された期間中に侵害によって被っ
た損害とする」(中国商標法56条1項前段,甲133)との損害推
定規定がある。
②費用
商標権侵害により登録商標権者が被った費用については,「前記の
損害は,被侵害者が侵害行為を差し止めるために支払った適正な支出
を含む。」とされる(中国商標法56条1項前段。甲133)。また,
当該「適正な支出」には,「権利者又は委託代理人が権利侵害行為に
対して調査し,証拠を収集するための合理的な費用を含む。人民法院
は,当事者の訴訟請求及び案件の具体的状況に基づき,国の関連部門
の規定に合致する弁護士費用を賠償額に加算することができる。」
(商標に関する民事紛争案件における審理に適用される法律に関する
若干の問題についての解釈17条。甲151)とされ,弁護士費用も
含むものとされる。そして,上記「国の関連部門の規定に合致する弁
護士費用」とは,行政機関である物价局及び司法局により定められる
基準を充たす弁護士費用を指し,例えば上海市の場合,時間当たりの
報酬金額の上限が3000人民元と定められている(甲362)。
(イ)台湾
①商標権侵害による損害賠償請求の根拠及び損害の推定規定
台湾では,登録商標を侵害した場合には,損害賠償請求が認められ
ている(台湾商標法61条1項。甲138)。そして,かかる損害賠
償請求の額については,「商標権所有者は,損害賠償を請求するとき
は,金額の推定のために次に掲げる方法の1を選択することができる。
(1)…民法216条の規定に従ってすることができる。…損害額を証
明する証拠を提出できないときは,商標権所有者は,その登録商標を
使用して通常得られる利益から侵害後に同一商標によって得られた利
益を控除し,その差額を損害額として請求することができる。(2)…
商標権侵害によって得られた利益に従ってすることができる。ただし,
侵害者が費用又は必要経費に関する証拠を提出できない場合は,侵害
商品の販売総額を利益の額とみなす。(3)…侵害商品の小売価格単価
の500倍から1500倍までの金額としてすることができる。ただ
し,1500個以上の侵害商品が発見された場合は,損害賠償請求額
は,当該侵害商品に係わる販売総額を基にして算定するものとす
る。」(台湾商標法63条1項。甲138)と規定されている。台湾
実務においては,商標権侵害事案の多くの場合で(3)の方法により損
害の推定が行われている。
②費用
商標権侵害により登録商標権者が被った費用については,「法律又
は契約上別段の定めのない限り,損害賠償の範囲は,現実に被った損
害又は逸失利益に限定される。」と規定され(台湾民法216条,甲
140),かかる場合,台湾の裁判例に照らせば,裁判官の裁量のも
と,調査費用や弁護士費用等の費用に関してもかかる損害賠償の範囲
に含まれると解されている。
(ウ)香港
①商標権侵害による損害賠償請求の根拠及び損害の推定
香港では,登録商標を侵害した場合には,損害賠償請求が認められ
ている(香港商標条例22条3項,甲142)。そして,かかる損害
賠償請求の額については,権利者が被った実際の損害額を主張するこ
とに代えて,衡平原則(RulesofEquity。正義及び
公平の観点からコモンロー及び制定法を補うものとして発展した裁判
実務上の規範であり,裁判において裁判所がその裁量により必要に応
じて踏襲する。)のもと,侵害者の得た利益額を被侵害者に賠償すべ
き損害額とすることもできるものとされている(甲349)。権利者
が被った損害額を主張する場合であっても,コモンローに基づき香港
における裁判実務上の損害額の算出方法の原則の一つとして,商標の
使用料相当分を被侵害者の損害額とすることもできるものとされる。
さらに,実際に使用許諾する際の使用料の算出が困難な場合には,当
該商標を仮に使用許諾するとした場合に認められるべき使用料を各種
証拠から仮定的に導き出した額を被侵害者の損害額とすることもでき
るものとされる(甲349)。
②費用
香港では,香港法に基づく訴訟手続について規定する香港高等法院
規則4A章命令62(甲363)において,「費用」が請求できるこ
とが規定されている。当該「費用」には事務弁護士費用,法廷弁護士
費用,出費及び諸経費が含まれており,認容額については,裁判所
(具体的には費用査定を専門とする裁判所職員)の裁量に委ねられて
いる(甲349)。
裁判所が裁量により費用として具体的な金額を認定する上で,当事
者の行為などが考慮される(同命令62の5第1項参照,甲349,
363)ほか,同命令62の28第4A項において,裁判所が裁量に
より認定する上での基準である”補償基準”が設けられている(甲3
63)。当該基準は,「不当な金額あるいは,不当な理由で生じたも
のである場合を除き,”全ての費用”が認められなければならな
い。」とする基準であり(甲363~401),当然に弁護士費用が
含まれる(甲349)。
イ損害推定計算の前提となる金額
(ア)偽造品販売額について
被告らは,訴外B,訴外JRオリエンタル及び訴外盛業昌らと共同し
て,無権限にてNEC標章の再使用許諾をし,中国,台湾及び香港の企
業9社を,いわば主要サブライセンシーとして利用し,各地の下請け製
造業者等をその手足として使うことで,NEC標章を付した偽造品を製
造販売させたが,かかる行為により製造された製品のうち,現時点で把
握できている仕入額は,次のとおり,日本円に換算して少なくとも中国
において14億9041万0177円,台湾において3億6502万1
800円及び香港において1億0700万円の少なくとも総額19億6
243万1977円であり(別紙3「偽造品製造額計算表」の各地内訳
欄,合計欄参照),偽造品の販売額として認められるべきである。
なお,上記仕入額の根拠である協力契約(甲49~61)が,初年度
の出荷価格ベースでの最低額とされていること,偽造品の製造販売のな
かには,現在まで続いていたり,協力契約書等の契約期間・製造数量を
超えた取引が推測されるものなどもあり(甲1~3,34~37,43,
303,304,305等参照),また,社会通念及び市場慣習に照ら
すと,販売額は,さらに高額になることが容易に想定できるから,上記
金額は,少なくとも本件の偽造品の販売額として認められるべきである。
①中国(為替ルート1人民元=15.63円で換算する)
a訴外Ridianについて,平成16年8月6日付けで協力契約
(甲49)が締結され,同年9月20日以降,製造委託契約(甲8
1~87)が複数締結されていること,初年度取引最終日以降も,
平成19年1月3日付けで訴外Ridianの販売会社から小売店
に卸された偽造品取引リスト(甲303)が作成されていることか
ら,偽造品の販売額は,少なくとも初年度最低取引額6000万人
民元(日本円に換算して9億3795万4800円)である。
b訴外YuehuaElectronicsについて,平成16
年4月20日付けで協力契約(甲50の1)が締結され,同年6月
10日以降,製造委託契約(甲90~97)が複数締結されている
こと,製造委託契約上の製造総数の販売額は,協力契約の初回注文
最低額を大きく上回ること,平成20年2月26日の時点でも,下
請業者の偽造品が販売されていること(甲34~37,甲304,
305)から,偽造品の販売額は,少なくとも初回注文最低額33
4万人民元(日本円に換算して5221万2817円)である。
c訴外Kapoについて,平成16年4月1日付けで協力契約(甲
51)が締結され,平成15年12月15日以降,製造委託契約書
(甲80,98)が締結されている他,同月22日付けで偽造品の
輸出に関する契約(甲99)が締結されていること,平成20年7
月29日の時点でも,下請業者の偽造品が販売されていること(甲
1,2)から,偽造品の販売額は,少なくとも,協力契約(甲5
1)の初年度最低取引額2000万人民元(日本円に換算して3億
1265万1600円)である。
d訴外Worthyについて,平成16年5月1日付けで協力契約
(甲52)が締結され,同年7月15日付けで製造委託契約(10
5)が締結されていることから,偽造品の販売額は,少なくとも,
最低取引額1200万人民元(日本円に換算して1億8759万0
960円)である。
e合計9534万人民元(日本円に換算して,14億9041万0
177円)
②台湾(為替レート1新台湾ドル=3.32円で換算する)
a訴外ChyauYeuanについて,平成15年10月1日付
け及び平成17年4月1日付けで協力契約(甲53,54)が締結
され,平成15年9月25日付けで製造許諾書(甲103)が締結
されていること,平成17年12月時点で,強制捜査により偽造品
(甲100)が大量に見つかっていることから,偽造品の販売額は,
少なくとも,協力契約(甲53)の初年度最低取引額2000万新
台湾ドル(日本円に換算して6636万7600円)である。
b訴外KaeJinnについて,平成15年12月10日付けで
協力契約(甲55)が締結され,平成16年2月24日以降,製造
委託契約等(甲106~108,109~119)が複数締結され
ていることから,偽造品の販売額は,少なくとも,初年度最低取引
額4000万新台湾ドル(日本円に換算して1億3273万520
0円)である。
c訴外FineFortuneについて,平成15年12月31
日付け及び平成17年4月1日付けで協力契約(甲56,57)が
締結され,平成16年3月15日以降,複数の製造委託契約等(甲
79,120,121)が締結されていることから,偽造品の販売
額は,少なくとも,初年度最低購入額5000万新台湾ドル(日本
円に換算して1億6591万9000円)である。
d合計1億1000万新台湾ドル(日本円に換算して3億6502
万1800円)
③香港(為替レート1米国ドル=107円で換算する)
訴外Promedia及び訴外Takahashiについて,平成
15年12月10日以降,協力契約及び確認契約(甲58~61)が
締結され,平成16年3月10日以降,製造委託契約(甲122~1
28)が複数締結されていることから,偽造品の販売額は,少なくと
も,初年度最低利潤金額(ロイヤルティ)とされる100万米国ドル
(日本円に換算して1億0700万円)である。
④①~③の合計日本円に換算して19億6243万1977円
(イ)被告らの得た利益について
①売上に対する利益率を用いて算出する方法
a本件における利益率は,商標権侵害等の裁判例を分析した専門家
のレポート(甲323)のとおり,偽造品の売上額の16%に該当
する。仮に,上記各裁判例(甲323の第7頁「図表1類似裁判事
例」)のうち,侵害者の利益率を算定している事例(No.5ない
しNo.7の裁判例)のみを使用しても,売上に対する損害の比率
としては,おおよそ14%~25%程度と導き出せる。とすれば,
偽造品の売上高に対する損害額は,少なくとも16.0%を超える
ものと試算できる(原告商標権が著名ブランドであり,品質に優れ
たものとして,原告商品を原価より相当程度の売価での販売が可能
であることからすれば,最低限の利益率といえる。)。なお,同レ
ポート(甲323)は,特定の商標の現在価値を形成するに費やさ
れた費用を分析することで,それら費用を一切負担せずに当該商標
の価値だけ不法に利用しようとする侵害者が支出を免れた本来負担
すべき費用相当額を,侵害者が得た消極的利益として最低限の損害
額としうる点を含めて述べたものである。
したがって,上記偽造品の販売額を売上額として,本件利益額を
算定すると,売上額19億6243万1977円×利益率16%=
3億1398万9116円(中国において2億3846万5628
円,台湾において5840万3488円,香港において1712万
円)となる(別紙3「偽造品製造額計算表」,別紙4「偽造品製造
額に基づく計算表」の各地内訳欄及び合計欄参照。なお,立証の困
難性の救済及び損害の公平な分担の観点から,上記数値が一応の根
拠に基づく利益率であること,上記売上額が実際の偽造品販売額の
一部にすぎない数値であることから,上記金額をもって,最低限度
の合理的な利益額とされるべきである。)。
b台湾の財政部賦税署が租税賦課における算出基礎数値とする平成
12年から平成21年における営利事業毎の標準利益率等を示す資
料(甲369~378)には,各年とも「視聽電子産品製造業」
(視聴用電化製品の製造業)のうち,「音響設備」(音響機器),
「麥克風」(マイク),「揚聲器」(スピーカー),「調諧器」
(チューナー)及び「其他電子産品」等(その他の視聴用電化製
品)の製造についての「淨利率」(純利益率)が11%と記載され
ている。そして,本件の製品も,視聴用電化製品に該当するから,
被告らが得た利益率は少なくとも11%を超えるものといえる。
もっとも,上記資料と異なり,適切な商標使用料を支払わないで
無権限で製造を行う場合には,本来商標権者に支払うべき商標使用
料相当額分についても製造者が利益として得るから,被告らは,上
記11%の標準利益率(甲369~378)に商標使用料(16
%)相当額を加えた額を利益として得ていたものと推認され,被告
らの利益は,少なくとも売上額の16%を超えることは容易に推認
される。
そして,被告らは,中国及び香港においても,台湾と同様の内容
で製品の製造を行っているから,上記台湾の資料の数値は,中国及
び香港における被告らの利益率の算出資料としても用いることがで
き,よって,中国及び香港における被告らの具体的な利益率も,少
なくとも売上額の16%は下らない。
②証拠上表れている利益額の合算により算出する方法
a被告ら,訴外B及び訴外JRオリエンタルが得た利益額
被告らによるNEC標章の使用許諾,被告ら,訴外B及び訴外J
Rオリエンタルによる再使用許諾や製品製造委託という一連の行為
により,共同不法行為者たる被告ら,訴外JRオリエンタル及び訴
外Bが得た利益は,次のとおり,協力契約(甲49~61)により
訴外JRオリエンタル名義で商標使用料として得た利益である,日
本円に換算して少なくとも2億3861万3460円(中国におい
て1億1706万3328円,台湾において2123万7632円
及び香港において1億0031万2500円)である(別紙2「商
標使用料計算表」のJRオリエンタルの受領額欄参照)。
(a)中国(為替ルート1香港ドル=13.73円,1人民元=1
5.63円で換算する)
ⅰ訴外Ridianについて,平成16年8月6日付け協力契
約(甲49)に基づく訴外JRオリエンタル名義での受領額は,
600万香港ドル(日本円に換算して8235万9000円)
である。
ⅱ訴外YuehuaElectronicsについて,平成
16年4月20日付け協力契約(甲50)に基づく訴外JRオ
リエンタル名義での受領額は,20万人民元(日本円に換算し
て312万6516円)である。
ⅲ訴外Kapoについて,平成15年12月15日付け製造委
託契約(甲98)及び平成16年4月1日付け協力契約(甲5
1)等に基づく訴外JRオリエンタル名義での受領額は,80
万人民元(日本円に換算して1250万6064円)である。
ⅳ訴外Worthyについて,平成16年5月1日付け協力契
約(甲52)に基づき,平成17年1月24日に同契約が解約
されるまで,訴外JRオリエンタル名義での受領額は,122
万人民元(日本円に換算して1907万1748円)である。
ⅴ合計600万香港ドル及び222万人民元(日本円に換算し
て,1億1706万3328円)
(b)台湾(為替レート1新台湾ドル=3.32円で換算する)
ⅰ訴外ChyauYeuanについて,平成15年9月25
日付け協力契約(甲53)に基づく訴外JRオリエンタル名義
での受領額は,小切手が一部返還されたことによる減額の結果,
138万新台湾ドル(日本円に換算して457万9364円)
である。
ⅱ訴外KaeJinnについて,訴外KaeJinnは,
平成15年12月10日付け協力契約(甲55)に基づく訴外
JRオリエンタル名義での受領額は,平成16年12月20日
付け支払分以降の支払を停止するまで,262万新台湾ドル
(日本円に換算して869万4156円)である。
ⅲ訴外FineFortuneについて,平成15年12月
31日付け協力契約(甲56)に基づく訴外JRオリエンタル
名義での受領額は,平成17年支払分以降の支払を停止するま
で,240万新台湾ドル(日本円に換算して796万4112
円)である。
ⅳ合計640万新台湾ドル(日本円に換算して2123万76
32円)
(c)香港(為替レート1米国ドル=107円で換算する)
訴外Promedia及び訴外Takahashiについて,
平成15年12月10日付け協力契約書(甲58,60)に基づ
く訴外JRオリエンタル名義での受領額は,平成17年1月10
日支払分以降の支払を停止するまで,93万7500米国ドル
(日本円に換算して1億0031万2500円)である。
(d)(a)~(c)の合計日本円に換算して2億3861万346
0円
b被告らが得た利益額
被告らは,一連のNEC標章の不正な利用行為により,次のとお
り,被告ら,訴外B及び訴外JRオリエンタルが商標使用料として
得た上記利益額2億3861万3460円の50%相当額である総
額1億1930万6730円(中国において5853万1664円,
台湾において1061万8816円,香港において5015万62
50円)を利益として得たものと認められる(別紙2「商標使用料
計算表」の各地内訳の被告トーマジャパンの取り分欄参照)。
(a)中国(為替ルート1香港ドル=13.73円,1人民元=1
5.63円で換算する)
ⅰ訴外Ridianについて,被告らの取り分は,300万香
港ドル(日本円に換算して4117万9500円)である。
ⅱ訴外YuehuaElectronicsについて,被告
らの取り分は,10万人民元(日本円に換算して156万32
58円)である。
ⅲ訴外Kapoについて,被告らの取り分は,40万人民元
(日本円に換算して625万3032円)である。
ⅳ訴外Worthyについて,被告らの取り分は,61万人民
元(日本円に換算して953万5874円)である。
ⅴ合計300万香港ドル及び111万人民元(日本円に換算し
て5853万1664円)である。
(b)台湾(為替レート1新台湾ドル=3.32円で換算する)
ⅰ訴外ChyauYeuanについて,被告らの取り分は,
69万新台湾ドル(日本円に換算して228万9682円)で
ある。
ⅱ訴外KaeJinnについて,被告らの取り分は,131
万新台湾ドル(日本円に換算して434万7078円)である。
ⅲ訴外FineFortuneについて,被告らの取り分は,
120万新台湾ドル(日本円に換算して398万2056円)
である。
ⅳ合計320万新台湾ドル(日本円に換算して1061万88
16円)
(c)香港(為替レート1米国ドル=107円で換算する)
訴外Promedia及び訴外Takahashiについて,
46万8750米国ドル(日本円に換算して5015万6250
円)である。
(d)(a)~(c)の合計日本円に換算して1億1930万673
0円
③商標使用料率により算出する方法
商標使用料相当額の算出は,当該商標を使用した製品の売上額に商
標使用料率を乗じて算出する方法が一般的に認められており,商標使
用料率に関する日本の裁判例(甲323の7頁のNo.1~No.4,
No.8)は,商標権者と侵害者との関係,侵害者の悪性の度合いや
侵害の態様,被侵害登録商標の著名性や自他識別能力の高さ,品質保
証機能及び顧客吸引力など,事案毎の個別的な事情や特段の事情に応
じて,1.5%から8%と認定している。
本件のような商標権侵害という不法行為事案においては,使用料相
当額の計算については,特段不合理なものでない限り商標権者の主張
によるべきである(大阪地方裁判所平成17年12月8日判決参照)。
そして,原告商標は,世界各国に周知されている品質に優れたものと
して著名なブランドであり,そのブランド価値は相当高いこと,原告
は,NEC標章につき,原告が出資した子会社のみに対して,厳格な
内部手続きを経た場合にしか使用許諾をしないこと(甲10~12,
甲129~131等,万が一許諾することとした場合でも,NEC標
章は,原告自身を示す「基本商標」であり,その価値・重みは相当に
高く又重いものであること等からすると,原告と資本関係がなく,原
告の品質管理方針も及ばない被告らに対する許諾として,少なくとも
16%以上の商標使用料率でなければ許諾する意思はない(甲30
1)。したがって,その使用料率は国に関係なく少なくとも16%を
下らない。
したがって,具体的には,日本円に換算して少なくとも中国におい
て偽造品の販売額14億9041万0177円×商標使用料率16%
=2億3846万5628円,台湾において偽造品の販売額3億65
02万1800円×商標使用料率16%=5840万3488円及び
香港において偽造品の販売額1億0700万円×商標使用料率16%
=1712万円,総額として少なくとも3億1398万9116円と
なる(別紙3「偽造品製造額計算表」,別紙4「偽造品製造額に基づ
く計算表」の各地内訳欄及び合計欄参照)。(仮に,裁判所の最終的
な判断により,NEC標章の商標使用料率はX%であると認定された
場合には,偽造品の販売額×X%=Y円が,商標使用料の金額とな
る。)
(ウ)原告が支出した費用について
原告は,偽造品の製造販売の実態について各地弁護士等に依頼して調
査する必要に迫られ(甲1~3,34~37,43,100,305,
310,326,327等),自社のブランドイメージ及び消費者の安
全を守るための活動を余儀なくされ(甲38~42,301等),社内
調査費用,調査会社による調査費用,専門家による分析費用及び各管轄
地における弁護士費用などの多大な費用の支出をした(甲152~28
1,301)。
具体的には,少なくとも,中国において89万6050.490米国
ドル(日本円に換算して9587万7402円),台湾において84万
7774.00米国ドル(日本円に換算して9071万1818円),
並びに香港において16万1253.88米国ドル(日本円に換算して
1725万4165円)及び2454万7357円(香港における合計
費用は日本円に換算して4180万1522円)の費用相当額の損害を
被っており,その総額は別紙5合計欄記載のとおり,日本円に換算して
少なくとも2億2839万0742円である。(別紙5「費用計算表」
の各地内訳欄,合計欄参照)。
(被告ら)
ア各国の法規制について
(ア)中国
原告が主張する規定(中国商標法3条1項,56条1項前段,中国民
法通則118条)の解釈については特に争わないが,「商標に関する民
事紛争案件における審理に適用される法律に関する若干の問題について
の解釈」第17条は,弁護士費用について「国の関連部門の規定に合致
する弁護士費用」との限定があり,徒に弁護士費用が認められているも
のではない。
(イ)台湾
台湾の商標権侵害の事案の多くについて,台湾商標法第63条1項3
号の規定により損害が推定されているとの主張は,不知ないし争う。同
条によっても,侵害商品の小売価格単価の1000倍が限度とされてい
る(甲138)。また,台湾の裁判例に照らせば,裁判官の裁量のもと
費用に関しても損害賠償の範囲に含まれると解されるとの点は,不知な
いし争う。その余の規定の解釈は,特に争わない。
(ウ)香港
原告が主張する香港商標条例第22条3項の規定内容自体は争わない
が,損害賠償額,及び費用が損害に含まれるとするコモンローについて
は,不知ないし争う。「賠償額算定の原則」,「利益計算に適用される
原則」(甲349)は,解説書の記載や英国上院議員の発言内容をもと
にした一弁護士の見解にすぎない。
費用に関して,「弁護士費用」(甲349)によれば,弁護士費用の
認定は,各事件の事情に応じた裁判所の裁量に委ねられており,全ての
事件において弁護士費用が当然に敗訴者負担となるものではない。
イ損害推定計算の前提となる金額について
原告の主張する事実は,原告に損害が生じたこと,金額を含めて,不知
ないし否認する。原告が主張する損害額の算定方法が,各国の法制度に合
致しているのか,不知ないし争う。
(ア)偽造品販売額について
①協力契約(甲49~61)等の金額が,直ちに偽造品販売額とはな
らない。実際の販売額が契約書上の製造額を上回ることは,必ずしも,
社会通念,市場慣習に照らして想定できるものでもない。仮に,未だ
に偽造品が販売されていても,だれにより,どの程度販売されている
のかは不明である。
原告は,正規品の製造販売から撤退しているから,偽造品の販売に
より,原告の正規品の売上げが減少したという関係にはなく,偽造品
の販売総額が原告の損害となる法的根拠や,因果関係の存否は不明で
ある。
②中国
a訴外Ridianについて,初年度に,協力契約(甲49)の6
000万人民元の取引が行われたかは明らかではない。むしろNE
C販売量集計表(甲303)からすれば,平成17年6月から平成
18年12月までの1年7ヶ月の間に37万534人民元しか取引
されていない。
b訴外YuehuaElectronicsについて,初年度に,
協力契約(甲50)の334万人民元の取引が行われたかは明らか
でない。製造委託契約(甲90~97)に規定された偽造キーボー
ド及びマウスの製造総数15万6900個の取引が行われたかも明
らかではない。甲304からは,合計530人民元しか取引されて
いない。
c訴外Kapoについて,初年度に,製造委託契約(甲98)の2
000万人民元の取引が行われたかは明らかでない。製品(甲1)
が何台販売されたのかも明らかではない。甲2からは,3245人
民元の取引しかされていない。
d訴外Worthyについて,初年度に,協力契約(甲52)の1
200万人民元もの取引が行われたかは明らかでない。
③台湾
a訴外ChyauYeuanについて,初年度に,協力契約(甲
53)の2000万台湾ドルの取引が行われたかは明らかでない。
原告が偽造品と主張する製品(甲100)の台数も不明である。
b訴外KaeJinnについて,初年度に,協力契約(甲55)
の4000万台湾ドルの取引が行われたかは明らかでない。
c訴外FineFortuneについて,初年度に,協力契約
(甲56)の5000万台湾ドルもの取引が行われたかは明らかで
ない。
④香港
訴外Takahashi及び訴外Promediaについて,初年
度に,協力契約(甲58)の100万米国ドルものロイヤルティが支
払われた取引が行われたかは明らかでない。
(イ)被告らが得た利益について
①売上に対する利益率を用いて算出する方法について
a専門家の分析レポート(甲149,323)について
専門家の分析レポート(甲149)の信用性がないのは,分析レ
ポート(甲323)が再提出されたことから明らかである。
レポート(甲323)では,利益率が20.5%であるとされて
いるが,従前のレポート(甲149)と同様に,評価の参考として
いる判例の事案は,使用料率が問題となった事案(すべて料率が一
桁である)と利益率が問題となった事案(すべて料率が二桁であ
る)とがあり,両者は損害の算定方法が全く異なるにもかかわらず
「損害の売上に対する比率」として一括して評価しており,信用性
はない。使用料率と利益率を区別せずに,あたかも利益率も使用料
率と同じであるかのごとく混同したまま使用料率を導き出している
点で信用性に欠けるものである。
b台湾の財政部賦税署が用いる標準利益率等について
そもそも被告らは,偽造品の製造販売によって利益を得た事実は
ない。また,台湾財政部賦課税署における運用がそのまま中国及び
香港においても妥当するとの原告の主張の根拠は示されていない。
②証拠上表れている利益額の合算により算出する方法
a被告ら,訴外B及び訴外JRオリエンタルが得た利益額
原告が主張する利益額は,協力契約(甲49~61)に基づくも
のであり,合理的な根拠はない。中国,台湾及び香港の各企業から
訴外JRオリエンタルへロイヤルティが支払われたことの立証はな
い。
b被告らが得た利益額
被告らは偽造品の製造販売には関与しておらず,ロイヤルティ名
目での商標使用料相当額を受領してはいない。被告らは,中国,台
湾及び香港の各企業から支払われるロイヤルティを折半した利益も
得ておらず,訴外JRオリエンタルから被告らへの支払いを含め,
何らの立証もない。
③商標使用料率により算出する方法
原告が偽造品の製造販売を行う業者に対して商標使用の実施許諾を
することはないから,偽造品の製造額を基準に商標使用料率を乗じて
算出する方法は損害論としてはとり得ない。
原告の執行役員作成の陳述書(甲301)「少なくとも16%以上
の商標使用料率」の数値の根拠は,専門家の分析レポート(甲149,
甲301の10頁,甲323)であるが,これに信用性はない。
(ウ)原告が支出した費用について
原告が支出した費用の総額は知らない。ただし,被告らは,原告が主
張するような侵害行為を行っていないから,損害賠償責任を負うもので
はない。
(6)-2侵害行為③により生じた損害(損害ア)(主位的主張)
(原告)
原告には,侵害行為③により,次のとおりの損害が発生した。
ア中国
(ア)偽造品販売額に基づく損害額(アの主位的主張)
侵害行為③は,被告らが訴外B,訴外JRオリエンタル及び訴外盛業
昌らと共同して主導し,侵害行為①及び②を通して無権限でNEC標章
を再使用許諾し,再使用許諾を受けた中国,台湾及び香港の企業9社が,
いわば主要サブライセンシーとなって,各地の下請業者等を誘導して,
ないしいわば手足として使ってNEC標章を付した偽造品を製造販売し
たというものであり,このうち,中国の企業4社による偽造品の販売額
は,上記のとおり,日本円に換算して少なくとも14億9041万01
77円である。
中国における商標権侵害については,上記のとおり,侵害者が侵害期
間中に侵害によって受けた利益をもって,商標使用権者の損害と推定す
るものとされているところ(中国商標法56条1項前段。甲133),
本件において,偽造品の製造販売のなかには,現在まで続いているもの
や,契約内容を超えて取引がされていることが推測されるものがあるこ
とや,社会通念及び市場慣習に照らしても,証拠上の製造額を合算した
上記販売額は,実際に製造販売された全偽造品の販売額には到底及ばな
い。しかも,被告らの違法行為により,原告には,信用損害やブランド
イメージの毀損,各対応等の費用などの損害もあり,原告において,販
売額や損害額の立証に必要な具体的な事実を立証することは困難である。
したがって,本件事案の特殊性,立証の困難性の救済,知的財産制度
の健全な維持を図るため,少なくとも証拠により現れている上記偽造品
販売額は,合理的な損害の範囲及び額として,最低限の相当な損害額と
されるべきであり,上記販売額14億9041万0177円は,侵害者
が侵害期間中に侵害によって受けた利益(中国商標法56条1項前段,
甲133)に該当する。
(イ)偽造品の販売により得た利益額に基づく損害額(アの二次的主張)
仮に,(ア)が認められないとしても,中国において被告らが偽造品の
販売により得た「利益額」は少なくとも損害と推定されるから,少なく
とも上記中国における偽造品販売額14億9041万0177円に上記
利益率16%を乗じた2億3846万5628円は,侵害者が侵害期間
中に侵害によって受けた利益(中国商標法56条1項前段,甲133)
に該当する。
イ台湾について
(ア)侵害商品の小売価格単価の1500倍の金額に基づく損害額(イの
主位的主張)
①台湾においては,実務上,侵害商品の小売価格単価の500倍から
1500倍までの金額を損害額とする旨の損害推定条項により損害が
推定されている(台湾商標法63条1項3号。甲138)。本件では,
現時点で証拠により現れている偽造製品の製造額又は販売事実等は,
全ての被告らによる偽造品の製造販売の一部にすぎない。かかる事情
に鑑みれば,本件における原告の損害額としては,侵害商品の小売価
格単価の1500倍の金額が,原告の被った損害として推定されるべ
き金額といえる。
②台湾での侵害行為③においては,上記①の算定方法により損害額を
算定するため,上記台湾の企業3社による偽造品の販売につき個別に
推定される損害を算出し,上記損害推定規定(台湾商標法63条1項
3号)により推定される損害を算出する。
a訴外ChyauYeuan
強制捜査の結果,訴外ChyauYeuanが販売していたと
して押収された偽造品は,NEC標章が付されたアンプやスピーカ
ーなど15種類に渡り(甲336),各偽造品の小売価格単価は台
湾ドルで1500台湾ドルから2万2000台湾ドルまでであった
(甲337,別紙7「(ChyanYeuan)に関する偽造
品」参照)。
そして,訴外ChyauYeuanが販売していた,かかる各
偽造品の小売価格単価の合計は14万9200台湾ドルであるから,
その1500倍である2億2380万0800台湾ドル(日本円に
換算して7億4265万6099円)が原告の損害と推定される
(台湾商標法63条1項,甲138)。
b訴外KaeJinn
強制捜査の結果,訴外KaeJinnが販売していたとして押
収された偽造品は,NEC標章が付されたアンプやスピーカーなど
11種類にわたり(甲338の3頁,4頁),それら各偽造品の小
売価格単価は台湾ドルで1580台湾ドルから5990台湾ドルで
あった(甲339。別紙8「凱晉有限公司(訴外KaeJin
n)に関する偽造品」参照)。
そして,訴外KaeJinnが販売していたかかる各偽造品の
小売価格単価の合計は,同別紙の小売価格単価の合計欄記載のとお
り3万2840台湾ドルであるから,その1500倍である492
6万台湾ドル(日本円に換算して1億6346万3399円)が原
告の損害と推定される(台湾商標法63条1項。甲138)。
c訴外FineFortune
強制捜査の結果,訴外FineFortuneが販売していた
として押収された偽造品は,NEC標章が付されたMP3プレーヤ
ー6種類にわたり(甲354の3頁),それら各偽造品の小売価格
単価は,台湾ドルで2571台湾ドルから3897台湾ドルであり
(甲355。なお,本件の原告の損害額の実体に近づけるため,最
高値を選択して計算した。),また,市場で販売していたMP3プ
レーヤー1種類(型番NIC-M01(V)256MB)は,小売
価格5238台湾ドルであった(甲355の3頁)。(別紙9「訴
外FineFortuneに関する偽造品」参照)
そして,訴外FineFortuneが販売していたかかる各
偽造品の小売価格単価の合計は,同別紙の小売価格単価の合計欄記
載のとおり2万4040台湾ドルであるから,その1500倍であ
る3606万台湾ドル(日本円に換算して1億1966万0782
円)が原告の損害額として推定される(台湾商標法63条1項3号。
甲358)。
da~cの合計10億2578万0280円の損害を被ったものと
推定される。
(イ)偽造品販売額に基づく損害額(イの二次的主張)
仮に,(ア)が認められないとしても,台湾における偽造品販売額は少
なくとも損害と推定される。すなわち,侵害行為③により,台湾の企業
3社による偽造品販売額は,上記のとおり3億6502万1800円を
下らない。そして,台湾においては,商標権侵害によって得られた利益
を損害額とするが,侵害者が費用又は必要経費に関する証拠を提出でき
ない場合には侵害商品の販売総額を利益の額とみなすとされているから
(台湾商標法63条1項2号ただし書。甲138),上記偽造品販売額
たる3億6502万1800円が,原告の損害と推定される。
(ウ)偽造品の販売により得た「利益額」に基づく損害額(イの三次的主
張)
仮に,(ア),(イ)が認められないとしても,台湾において被告らが偽造
品の販売により得た利益額は少なくとも損害と推定されるから,少なく
とも上記台湾における偽造品販売額3億6502万1800円に,上記
利益率16%を乗じた5840万3488円となり,かかる利益額は,
商標権侵害によって得られた利益(台湾商標法63条1項2号本文。甲
138)に該当する。
ウ香港について
(ア)偽造品販売額に基づく損害額(ウの主位的主張)
侵害行為③により,上記香港の企業2社による偽造品販売額は,上記
のとおり,少なくとも1億0700万円である。
香港における商標権侵害に関しては,上記のとおり,衡平原則のもと,
侵害者の得た利益額を被侵害者に賠償すべき損害額とすることができる
ものとされている(甲349)。
この点,実際には,協力契約等をはるかに越える偽造品の製造販売が
行われているという本件事案の特殊性や,立証の困難性の救済,知的財
産制度の健全な維持を図るため,少なくとも上記偽造品販売額は,合理
的な損害の範囲及び額とされるべきであり,上記2社による偽造品販売
額たる1億0700万円は,衡平原則に基づく侵害者の得た利益額とし
て,原告の損害額とされるべきである(別紙6「偽造品の製造及び販売
により生じた損害」の香港の各地内訳欄参照)。
(イ)偽造品の販売により得た利益額に基づく損害額(ウの二次的主張)
仮に,(ア)が認められないとしても,香港において被告らが偽造品の
販売により得た利益額は少なくとも被告らが賠償すべき損害額とされる
から,上記香港における偽造品販売額1億0700万円に上記利益率1
6%を乗じた1712万円の利益額は,侵害者の得た利益額に該当する。
(被告ら)
ア原告の主張する事実は,いずれも否認し,法的主張は,いずれも争う。
イ被告らは,中国,台湾及び香港のいずれの国においても,原告が主張す
るような侵害行為③に記載された行為を行っていないから,損害賠償責任
を負うものではない。
ウ中国
(ア)偽造品販売額に基づく損害額について
原告が主張する偽造品販売額は,協力契約等を根拠としたものにすぎ
ず,これに合理的根拠はない。
(イ)偽造品の販売により得た利益額に基づく損害額について
原告が主張する利益率16%に合理的根拠がない。
エ台湾について
(ア)侵害商品の小売価格単価の1500倍の金額に基づく損害額につい

①台湾における商標権侵害の事案の多くについて,台湾商標法第63
条1項3号により,損害が推定されているとの主張は,不知ないし争
う。同条項によっても,侵害商品の小売単価の1000倍が限度とさ
れており(甲138),原告の主張は失当である。
②偽造品の小売単価に基づく計算について
a訴外ChyauYeuan
訴外ChyauYeuanについては,甲336の5~7頁ま
での一覧表を根拠とした場合であっても,原告主張の一覧表の「型
番」欄のうち,「5NSP-990F」及び「6NSP-99
0C」は,甲336の一覧表に記載はなく,偽造品15種類の根拠
は不明である。
また,台湾商標法第63条1項3号は,侵害商品の小売単価の最
大1000倍までと規定しているから,仮に,上記一覧表を根拠と
しても,推定される損害は最大1億4920万台湾ドルまでである。
b訴外KaeJinn
台湾商標法第63条1項3号は,侵害商品の小売単価の最大10
00倍までと規定しているから,仮に,上記一覧表を根拠としても,
推定される損害は最大3284万台湾ドルまでである。
c訴外FineFortune
訴外FineFortuneの偽造品小売価格表(甲355)の
うち,各製品小売価格中の最高値を用いることについては,本件事
案に関する「国際的で悪質な偽造集団による偽造事案である」こと
にかんがみ,「原告の損害額の実態に近似させる」ためとの原告な
一方的な印象ないし思い込みによる議論である。原告は,本件の損
害賠償額をつり上げるために,各製品小売価格中の最高値を恣意的
に用いているだけであって,原告の主張に合理的な根拠はない。
(イ)偽造品販売額に基づく損害額について
原告が主張する偽造品販売額は,協力契約等を根拠としたものにすぎ
ず,これに合理的根拠はない。
(ウ)偽造品の販売により得た「利益額」に基づく損害額について
原告の主張する利益率16%に合理的根拠はない。
オ香港について
(ア)偽造品販売額に基づく損害額(ウの主位的主張)
原告が主張する偽造品販売額は,協力契約等を根拠としたものにすぎ
ず合理的根拠はない。
(イ)偽造品の販売により得た利益額に基づく損害額(ウの二次的主張)
原告の主張する利益率16%に合理的根拠はない。
(6)-3侵害行為①により生じた損害(損害イ)(二次的主張)
(原告)
原告には,侵害行為①により,次のとおり,少なくとも総額3億1398
万9116円の損害が発生した。
ア中国
(ア)侵害行為①は,被告らが権限なく,訴外B及び訴外JRオリエンタ
ル等に対してNEC標章の使用許諾を行ったというものであるから,こ
れにより被告らが中国において得た利益は,上記支払いを免れた商標使
用料として偽造品販売額に商標使用料率16%を乗じて算出した金額2
億3846万5628円であり,かかる支払いを免れた商標使用料は,
①侵害者が侵害期間中に侵害によって受けた利益(中国商標法56条1
項後段。甲133)に該当する。
(イ)よって,侵害行為①により原告が中国で受けた損害は,2億384
6万5628円である。
イ台湾について
(ア)侵害行為①により被告らが台湾において得た利益は,上記のとおり,
支払いを免れた商標使用料として偽造品販売額に商標使用料率16%を
乗じて算出した金額5840万3488円であり,かかる支払いを免れ
た商標使用料は,②商標権侵害によって得られた利益(台湾商標法63
条1項。甲138)に該当する。
(イ)よって,侵害行為①により原告が台湾で受けた損害は,5840万
3488円である。
ウ香港について
(ア)侵害行為①により被告らが香港において得た利益は,上記のとおり,
支払いを免れた商標使用料として偽造品販売額に商標使用料率16%を
乗じて算出した金額1712万円である。また,侵害行為①において被
告らが使用許諾をしたNEC標章の香港における仮定的な商標使用料は,
香港における偽造品販売額に商標使用料率16%を乗じて算出した金額
1712万円である。かかる支払いを免れた商標使用料,又は,仮定的
な商標使用料は,上記①侵害者の得た利益額,又は②侵害の対象となっ
た商標の使用料に基づいて算出した額に該当するものであり,コモンロ
ーにより商標使用権者たる原告の損害と推定される。
(イ)よって,侵害行為①により原告が香港で受けた損害は,1712万
円である。
エ以上により,侵害行為①により原告が受けた損害は,3億1398万9
116円と算定される。
(被告ら)
ア原告の主張する事実は,いずれも否認し,法的主張は,いずれも争う。
イ被告らは,中国,台湾及び香港のいずれの国においても,原告が主張す
る侵害行為①に記載された行為を行っていない。
ウ原告が主張する商標使用料率16%に合理的根拠はない。
(6)-4侵害行為②により生じた損害(損害ウ)(三次的主張)
(原告)
原告には,侵害行為②により,次のとおり,少なくとも総額1億1930
万6730円の損害が発生した。
ア中国について
(ア)侵害者が得た利益額に基づく損害額(アの主位的主張)
侵害行為②により,被告らが,訴外B及び訴外JRオリエンタルと共
同して,中国の企業4社から得た商標使用料は,1億1706万332
8円であり,かかる商用使用料額は,①侵害者が侵害期間中に侵害によ
って受けた利益(中国商標法第56条1項後段。甲133)に該当する。
よって,侵害行為②により原告が中国で受けた損害額は,1億170
6万3328円である。
(イ)被告らの受領額に基づく損害額(アの二次的主張)
仮に,上記訴外B及び訴外JRオリエンタルとの連帯責任が認められ
ないとしても,被告らは,中国において,訴外B及び訴外JRオリエン
タルが,中国企業4社から受領した商標使用料額のうち,その50%で
ある5853万1664円を被告らの取り分として得ており,受領額は,
①侵害者が侵害期間中に侵害によって受けた利益(中国商標法第56条
1項後段。甲133)に該当し,同条項により商標使用権者たる原告の
損害と推定される。
よって,侵害行為②により原告が中国で受けた損害額は,5853万
1664円である。
イ台湾について
(ア)侵害によって得られた利益に基づく損害額(イの主位的主張)
侵害行為②により台湾の企業3社から得た商用使用料額は,2123
万7632円であり,かかる商用使用料額は,②商標権侵害によって得
られた利益(台湾商標法63条1項。甲138)に該当する。
よって,侵害行為②により原告が中国で受けた損害額は,2123万
7632円である。
(イ)被告らの受領額に基づく損害額(イの二次的主張)
仮に,上記訴外B及び訴外JRオリエンタルとの連帯責任が認められ
ないとしても,被告らは,台湾において,訴外B及び訴外JRオリエン
タルが,台湾企業3社から受領した商標使用料額のうち,その50%で
ある1061万8816円を被告らの取り分として得ており,受領額は,
商標権侵害によって得られた利益(台湾商標法63条1項。甲138)
に該当する。
よって,侵害行為②により原告が台湾で受けた損害額は1061万8
816円である。
ウ香港について
(ア)侵害者の得た利益に基づく損害額(ウの主位的主張)
香港における商標権侵害に関しては,上記のとおり,衡平原則のもと,
侵害者の得た利益額を被侵害者に賠償すべき損害額とすることもできる
ものとされている(甲349)。
ここで,侵害行為②により,被告らが,訴外B及び訴外JRオリエン
タルと共同して,香港の企業2社から得た商用使用料額は,1億003
1万2500円であり,かかる商標使用料額は,侵害者の得た利益額に
該当する。
よって,侵害行為②により原告が香港で受けた損害額は,1億003
1万2500円である。
(イ)被告らの受領額に基づく損害額(ウの二次的主張)
仮に,上記訴外B及び訴外JRオリエンタルとの連帯責任が認められ
ないとしても,被告らは,香港において,訴外B及び訴外JRオリエン
タルが,香港企業2社から受領した商標使用料額のうち,その50%で
ある5015万6250円を被告らの取り分として得ており,受領額は,
侵害者の得た利益額に該当する。
よって,侵害行為②により原告が香港で受けた損害額は,5015万
6250円である。
エ以上により,侵害行為②により原告が受けた損害は,少なくとも1億1
930万6730円である。
(被告ら)
ア原告の主張する事実はいずれも否認し,法的主張はいずれも争う。
イ被告らは,中国,台湾及び香港のいずれの国においても,原告が主張す
るような侵害行為②を行っておらず,商標使用料も受け取っていない。
ウ原告が主張する利益額は,協力契約(甲49~61)に基づくものであ
るが,同金額をもって,商標使用料額と推認することはできない。中国,
台湾及び香港の各企業から訴外JRオリエンタルへのロイヤルティの支払
い,及び,訴外JRオリエンタルから被告らへのロイヤルティの支払いに
ついては,何らの立証もない
(6)-5費用(積極損害)
(原告)
原告には,侵害行為①~侵害行為③により,次のとおり,積極損害として
合計2億2839万0742円の損害が発生した。
ア中国
原告は,被告らの侵害行為により,中国において少なくとも89万60
50.490米国ドル(日本円に換算して9587万7402円)を費用
として支出している(別紙5「費用計算表」の各地内訳欄記載参照)。原
告は,中国において事案を解明し侵害を排除するため,中国において違法
行為等の差止手続,その他行政手続や行政捜査,民事及び刑事上の法的手
続や法的措置等を行い,又はそれらの手続等に協力する必要が生じ,それ
らの行為をするために支出した相当額の弁護士費用は,合理的な費用であ
る。中国において発生した弁護士費用は,(6)-1(原告)ア(ア)②の”物
价局”及び”司法局”が定める基準を充たしており,国の関連部門の規定
に合致する弁護士費用である。
よって,かかる費用9587万7402円は,原告に生じた損害となる。
イ台湾
原告は,被告らの侵害行為により,台湾において84万7774.00
米国ドル(日本円に換算して9071万1818円)を費用として支出し
ている(別紙5「費用計算表」の各地内訳欄記載参照)。そして,中国に
おけると同様に,台湾における裁判例等に鑑みれば,本件において台湾に
おいて生じた弁護士費用の請求が当然に認められるべきである。
よって,かかる費用9071万1818円は,原告に生じた損害となる。
ウ香港
原告は,被告らの不法行為により,香港において16万1253.88
米国ドル(日本円に換算して1725万4165円)及び2454万73
57円(日本円に換算して合計4180万1522円)を費用として支出
している。(別紙5「費用計算表」の各地内訳欄記載参照)。そして,中
国,台湾と同様に,原告が請求するところの弁護士費用が不合理な費用や
金額とはならないことは明らかであり,補償基準に照らせば,原告に生じ
た全ての費用が被告らの負担とされるべきである。
よって,かかる費用4180万1522円は,原告に生じた損害となる。
(被告ら)
ア原告の主張する事実は,いずれも否認し,法的主張は,いずれも争う。
イ被告らは,中国,台湾,香港において,いずれも原告の主張する侵害行
為を行っていないので,費用に関する損害賠償責任も負わない。
ウ弁護士費用の認定は,各事件の事情に応じた裁判所の裁量に委ねられて
おり,全ての事件において弁護士費用が当然に敗訴者負担となるものでは
ない。
第3当裁判所の判断
1はじめに
本件において,原告は,各国等ごとに不法行為の各要件及びその該当性につ
いて主張するのではなく,第2「事案の概要」の4「争点」及び同5「争点に
関する当事者の主張」のとおり,不法行為の各要件ごとに各国等法及びその該
当性について主張している。しかし,当裁判所の判断においては,各国等ごと
に準拠法たる各国等法の不法行為の各要件及びその該当性について検討する。
その結果,事案の概要における争点及び当事者の主張の順序と当裁判所の判断
の順序が異なることになるが,その対応関係は明らかであって,容易に把握で
きるものである。
ところで,原告が主張する被告らの違法行為は,法の適用に関する通則法
(平成18年法律第78号)の施行日である平成19年1月1日(法の適用に
関する通則法附則1条,平成18年政令第289号)の前後にまたがり,同法
施行前においては,準拠法は法例によって決定されるところ,法例(平成11
年法律第151号による改正後のもの)11条においては「事務管理,不当利
得又ハ不法行為ニ因リテ生スル債権ノ成立及ヒ効力ハ其原因タル事実ノ発生シ
タル地ノ法律ニヨル」(1項),「前項ノ規定ハ不法行為ニ付テハ外国ニ於テ
発生シタル事実カ日本ノ法律ニ依レハ不法ナラサルトキハ之ヲ適用セス」(2
項),「外国ニ於テ発生シタル事実ガ日本ノ法律ニ依リテ不法ナルトキト雖モ
被害者ハ日本ノ法律カ認メタル損害賠償其他ノ処分ニ非サレハ之ヲ請求スルコ
トヲ得ス」(3項)とされている。一方,法の適用に関する通則法によっても,
「不法行為によって生ずる債権の成立及び効力は,加害行為の結果が発生した
地の法による。ただし,その地における結果の発生が通常予見することのでき
ないものであったときは,加害行為が行われた地の法による。」(17条),
「不法行為について外国法によるべき場合において,当該外国法を適用すべき
事実が日本法によれば不法とならないときは,当該外国法に基づく損害賠償そ
の他の処分の請求はすることができない。」(22条1項),「不法行為につ
いて外国法によるべき場合において,当該外国法を適用すべき事実が当該外国
法及び日本法により不法となるときであっても,被害者は,日本法により認め
られる損害賠償その他の処分でなければ請求することができない。」(22条
3項)とされている。上記のとおり,不法行為に関する法例と法の適用に関す
る通則法の定めはほぼ同様のものであり,これらの規定に従い,本件において
は,各国等法による不法行為の成否のほか日本法による不法行為の成否につい
ても検討すべきこととなる。
原告は,各国等における商標権侵害行為として侵害行為①ないし③を主張す
るが,損害については,侵害行為③に基づく損害を主位的な損害と主張してい
るところから,結局のところ,侵害行為③に基づく請求を主位的請求として検
討するのが相当である。
2中国における商標権侵害行為に基づく損害賠償請求の成否
(1)中国法における商標権侵害行為に基づく損害賠償請求についての法制
中国商標法においては,「商標登録人の許諾を受けずに,同一商品又は
類似商品にその登録商標と同一又は類似の商標を使用する」行為は,「登録
商標権の排他権の侵害」とされる(平成13年12月1日施行の中国商標法
52条1項。甲133)。そして,中国民法通則118条(昭和62年1月
1日施行。甲334)は,「公民及び法人の著作権,特許権,商標権,発見
権,発明権及びその他の技術的成果権が,ひょう窃,改ざん,盗用等の侵害
を受けた場合は,公民及び法人は,侵害の停止,影響の除去及び損害の賠償
を要求する権利を有する。」と定める。また,中国民法通則130条は,
「2人以上共同して権利を侵害し,他人に損害を与えた場合は,それらの者
は,連帯責任を負わなければならない。」と定める。さらに,損害額につい
ては,「…侵害者が侵害期間中に侵害によって受けた利益又は被侵害者が侵
害された期間中に侵害によって被った損害とする」(中国商標法56条1項
前段)とされる。
(2)中国における侵害行為③の成否
ア前提としての書証の成否
当事者は,侵害行為①ないし③ごとに書証の成否を検討しているが,こ
これでは,それらの書証の成否を一括して検討する。
(ア)製造許諾書(甲48)について
①被告らは,製造許諾書(甲48)に押印された被告トーマジャパン
の印影は,同被告が保有する印章の印影とは異なる等として,同書面
(甲48)の成立を争うので,この点について検討する。被告AがJ
Rオリエンタル訴訟及びトーマジャパン訴訟において,製造許諾書
(甲48)の作成に至る経緯として,陳述又は証言した内容は次のと
おりである。
a被告Aは,JRオリエンタル訴訟において作成した平成19年9
月28日付け陳述書(甲132。ただし,JRオリエンタル訴訟に
おいては甲64である。)において,平成14年1月15日付け授
権確認書(甲47。ただし,JRオリエンタル訴訟においては甲8
である。)及び平成16年1月1日付け製造許諾書(甲48。ただ
し,JRオリエンタル訴訟においては甲13である。)の作成経緯
について,次のとおり説明した。
すなわち,被告トーマジャパンは,平成12年4月初めころには,
訴外NECビューテクノロジーより,NEC標章を付したCDプレ
ーヤーを製造販売し,また第三者に製造販売させる権利を与えられ,
このことを原告も承認しているものと認識していた。そこで,被告
Aは,平成12年の終わりころ,訴外JRオリエンタルの当時の代
表者であった訴外Iに協力を求めた。その結果,訴外IがMP3の
製造販売の企画を提案してきたので,訴外NECビューテクノロジ
ーのJらと協議したところ,訴外JRオリエンタルにD’cube
という商標を使用して商品の製造販売をさせ,その製造代金を訴外
NECビューテクノロジーが支援することとなった。しかし,被告
Aは,訴外Iの営業能力に物足りなさを感じていたことから,平成
13年秋ころ,台湾で家電製品を製造販売していた訴外盛業昌の代
表取締役であり,中国福建省において家電製品の製造販売をしてい
た真光家電股份有限公司の社長でもある訴外Bと交渉するようにな
り,訴外Bの上記各社の販売ルートを利用して,中国,台湾及び香
港において,NEC標章を付した商品(売買基本契約(甲13)の
別紙に記載されたスピーカー,CDプレーヤー及びその関連製品,
PC周辺機器)を販売するように依頼し交渉した。その結果,被告
トーマジャパンと訴外B間において,平成14年1月15日付けで
授権確認書(甲47)を締結するに至り,被告トーマジャパンにお
いて,訴外NECビューテクノロジーから与えられたと認識してい
る権限に基づいて,NEC標章を付した上記商品を製造販売する権
利を自ら有することを確認するとともに,被告トーマジャパンから
訴外B個人に対し,上記NECの標章を付した商品を製造する権利
を含む地域指定総代理店の権限を授与することを確認した。その後,
訴外Bが,平成15年12月1日,訴外JRオリエンタルの経営を
行うことになったことに伴い,被告トーマジャパンと訴外JRオリ
エンタル間において,平成16年1月1日付けで製造許諾書(甲4
8)を締結し,授権確認書(甲47)に基づいて,訴外Bが保有し
ていた上記権限を,訴外JRオリエンタルが引き継ぐことを確認し
た。なお,訴外NECビューテクノロジーとの関係では,同訴外会
社は,被告トーマジャパンに対し,既に,平成15年9月末を目処
として収束計画を完了する旨連絡していたが,被告トーマジャパン
としては,同年12月になっても収束計画についての具体的な協議
が行われなかったため,訴外NECビューテクノロジーとの取引関
係が継続していると認識し,同認識に基づいて,平成16年1月1
日付けで製造許諾書(甲48)を締結した。
b被告Aは,平成19年12月20日,JRオリエンタル訴訟にお
いて,証人として証言し(甲306),また,トーマジャパン訴訟
においては,同月25日付けで陳述書(甲318。なお,トーマジ
ャパン訴訟においては乙67である。)を作成して,いずれも,被
告トーマジャパンとしては,訴外NECビューテクノロジーからN
EC標章の使用許諾を受けたと認識していたこと,被告トーマジャ
パンは,訴外JRオリエンタルに対し,NEC標章を付した商品の
製造販売を許可したことなど,アの陳述書(甲132)に沿う内容
を供述した。
②以上の被告AのJRオリエンタル訴訟及びトーマジャパン訴訟にお
ける陳述又は証言をみると,被告Aは,その陳述書(甲132)にお
いて,製造許諾書(甲48)を作成した経緯及び理由について具体的
に述べており,その内容も,被告トーマジャパンと訴外Bは,授権確
認書(甲47)により,NEC標章を付した商品の製造販売権限を訴
外Bが保有することを確認したが,訴外Bが訴外JRオリエンタルの
経営権を取得したことに伴い,製造許諾書(甲48)を締結し,同訴
外会社が,訴外Bの権限を引き継いだことを確認したとするものであ
って,同書面(甲48)の内容とも整合していること,被告トーマジ
ャパンと訴外JRオリエンタル間の取引の経緯については,上記の被
告Aの証言及び陳述書(甲306,318)もこれに沿う内容である
ことからすると,本件に関する取引の経緯として,被告Aが想定し,
取引の前提とした事実を示しているものと認められる(もっとも,こ
れらの事実がNEC標章の使用権限について,客観的に認定できる事
実と異なることは後記(イ)のとおりである。)。
そして,上記被告Aが想定し,取引の前提とした事実に照らせば,
被告Aが被告トーマジャパンの代表者として作成した形式を有する製
造許諾書(甲48)は,被告らの意思に基づいて作成されたものであ
り,真正に成立したと認めるのが相当である。
③被告らは,陳述書(甲132)には,製造許諾書(甲48)の作成
経緯が具体的に記載されていない等と主張する。しかしながら,上記
のとおり,陳述書(甲132)には,被告トーマジャパンと訴外B間
の取引の経緯や,訴外JRオリエンタルの経営権の移転という製造許
諾書(甲48)を締結した契機,授権確認書(甲47)との関係等に
ついて具体的に述べられているから,上記被告らの主張を採用するこ
とはできない。
被告らは,製造許諾書(甲48)の被告トーマジャパンの印影が,
同被告の保有する印鑑の印影(甲295)と客観的に異なること,製
造許諾書(甲48)のレターヘッダが,被告トーマジャパンが実際に
作成した書証(甲295)と書式が異なること,製造許諾書(甲4
8)には,日本のワープロでは変換不可能な文字が多数使用されてい
ること等を主張する。そして,確かに,被告らが自ら保有すると主張
する印章の印影(甲295,乙5)は,製造許諾書(甲48)の印影
と客観的に異なっていることが認められる(乙5)。しかしながら,
被告らが保有すると主張する印章の印影は,被告トーマジャパンの会
社名下の角印の印影であり,代表取締役印のように,登録等により公
証されたものではないから,上記の事情があるとしても,そのことの
みによって,上記認定を覆すには足りないというべきである。また,
製造許諾書(甲48)のレターヘッダの書式が,被告らが成立の真正
を認める書面(甲295)と異なることや,日本のワープロで変換不
可能な文字が使用されていること等の事実があるとしても,他方にお
いて,被告らが成立の真正を認める授権確認書(甲47)においては,
ヘッダのない書式が使用され,また,訴外Bの「覚」の文字において,
日本のワープロでは変換されない文字が使用されていること,被告ら
自身,本件の書証に,日本文以外の文章や文字が記載されることは不
自然ではないと主張していること等に照らすと,上記の事情のみによ
って,製造許諾書(甲48)の成立の真正が否定されるものではない
というべきである。
被告らは,上記陳述書(甲132)について,同書面を作成した当
時は,製造許諾書(甲48)に被告トーマジャパンの角印らしきもの
が押印されており,訴外JRオリエンタルの訴訟代理人からも,真正
に成立した証拠として示されたことから,その旨誤解し,上記訴訟代
理人が記載した陳述書(甲132)の内容と書証の作成名義を精査し
ないままに署名押印したが,本件訴訟で再度,精査し確認したところ,
製造許諾書(甲48)は,売買基本契約(甲13)が終了した平成1
5年7月31日以降の日付であり,押印された印影も,被告トーマジ
ャパンの角印の印影と客観的に異なることが判明したため,偽造書面
であると認識し直したと主張する。しかしながら,陳述書(甲13
2)は,被告Aが自ら署名押印しており,JRオリエンタル訴訟の証
人尋問の際も,同被告が述べたいことを記述したものに間違いないこ
とが確認されていること(甲306),上記認定のとおり,被告らは,
JRオリエンタル訴訟及びトーマジャパン訴訟において,取引の経緯
について,おおむね陳述書(甲132)と同様の内容を供述している
こと等からすると,よく精査せずに署名押印したとの被告の上記主張
は,不自然であり,これを採用することはできない。
(イ)製造許諾書(甲44),製造許諾書(甲309)について
①印影鑑定書(甲347)によると,製造許諾書(甲48),同(甲
44)及び同(甲309)にそれぞれ押印された被告トーマジャパン
の角印の印影について,デジタル・スーパーインポーズ法により検査
すると,各書面(甲44,48,309)から作成された鑑定資料の
印影のそれぞれの印影画線が合致するものと推定されることから,原
資料である各書面(甲44,48,309)の印影も,全て同一の印
影であると推定されている。また,上記のとおり,製造許諾書(甲4
8)は,真正に成立したものと認められる。したがって,製造許諾書
(甲44)及び同(甲309)は,その各角印の印影が,真正に成立
したものと認められる製造許諾書(甲48)の角印の印影と同一であ
るから,いずれも真正に成立したものと認めるのが相当である。被告
らは,被告ら代理人作成の印影比較報告書(乙5)を提出し,製造許
諾書(甲44)に押印された被告トーマジャパンの印影は,同被告の
印影と異なると主張するが,上記印影鑑定書(甲347)の内容に照
らすと,採用することができない。
②被告らは,製造許諾書(甲44)について,被告A名の署名の形状
は,同被告のものであるが,被告A及びKの署名の下端部分が不自然
に切れていることから,署名部分をカットアンドペーストし,被告ト
ーマジャパンの角印とは異なる印影の印鑑を押印して作成することが
可能であり,被告トーマジャパンの社名の「ャ」が「ゃ」と誤って記
載されていること等からしても,偽造文書である旨を主張する。
しかしながら,同書面(甲44)において,上記の被告A及びKの
署名の下端部分が直線的に切れている事実が認められるとしても,必
ずしもカットアンドペーストのみにより,このような状況になったと
認めることはできず,原告が指摘するように,コピー等の際に,同書
面の下端部分が複写の範囲から外れたこと等により,上記状況になっ
た可能性も否定できないことからすると,上記署名部分が不完全であ
るとしても,製造許諾書(甲44)の作成の真正を否定するには足り
ないというべきである。また,被告の社名に誤記があるとしても,同
様に,そのことのみによって,同書面(甲44)の作成の真正を否定
する理由とはならない。したがって,被告の上記主張を採用すること
はできない。
(ウ)製造許諾書(甲311)について
製造許諾書(甲311)には,被告トーマジャパン及び訴外Lida
nの住所,会社名,代表者名が印刷され,同被告会社名義の角印及び同
訴外会社の社判の各押印がされているところ,甲311の被告トーマジ
ャパンの角印の印影と前記のとおり真正に成立した文書と認められる甲
48,甲44,甲309の角印の印影とを比較すると両者は同一のもの
と認められる。被告らは,被告ら代理人作成の印影比較報告書(2)(乙
23)を提出し,甲309,甲311の印影が被告トーマジャパンの印
影ではないと主張するが,甲309の印影が被告トーマジャパンの角印
によるものと認められることは,前記のとおりであって,被告らの主張
は採用することができない。したがって,製造許諾書(甲311)につ
いても,真正に成立したと認めるのが相当である。
(エ)製造許諾承認契約書(甲29)について
①上記のとおり,製造許諾書(甲44,309,311)は,いずれ
も真正に成立したと認められるところ,これらの書面(甲44,30
9,311)は,その本文において,訴外NECビューテクノロジー
と被告トーマジャパンの間の平成13年8月1日に締結された「製造
許諾承認契約書」(甲29)に基づいて、被告トーマジャパンにより
作成又は交付される旨が記載されていることが認められる。また,①
「製造許諾承認契約書」(甲29)には,その本文に訴外NECビュ
ーテクノロジーにおいて,被告トーマジャパンが指定する工場でNE
C標章を付して商品を製造するために,被告トーマジャパンが当該工
場に対し「製造許諾書」を交付することを承認する旨が記載され,②
「製造許諾書」(甲44,309,311)には,被告トーマジャパ
ンが,訴外JRオリエンタル,訴外Arden又は訴外Lidanに
対し,それぞれ具体的な商品にNEC標章を付して製造することを許
諾する旨が記載されているから,製造許諾承認契約書(甲29)と製
造許諾書(甲49,309,311)は,内容的にも整合しているこ
とが認められる。したがって,製造許諾承認契約書(甲29)は,真
正に成立したものと認められる製造許諾書(甲44,309,31
1)において前提とされ,内容的にも整合するものであるから,被告
トーマジャパンについて,真正に成立したものと認めるのが相当であ
る(なお,甲29が訴外NECビューテクノロジーとの関係では偽造
された文書であることは,当事者間に争いがない。)。
②被告らは,製造許諾承認契約書(甲29)は偽造されたとして,同
書面(甲29)に押印された被告トーマジャパンの印影は,被告トー
マジャパンが保有する角印の印影とも,同書面(甲29)と同日付け
で締結された売買基本契約(甲13)の角印の印影とも異なること,
同書面(甲29)には,訴外NECビューテクノロジーの名称,住所
について誤記があり,また,日本国内で作成された日本文ではない等
不自然な点があること等を主張する。確かに,被告らが自ら保有する
と主張する印章の印影(甲295,乙5)や売買基本契約(甲13)
の印影は,製造許諾承認契約書(甲29)の印影と客観的に異なって
いることが認められる。しかしながら,前記のとおり,被告らが保有
する,又は,真正であると主張する印章の印影は,被告トーマジャパ
ンの会社名下の角印の印影であり,登録等により公証されたものでは
ないから,上記の事情があるとしても,そのことのみによって,上記
の認定を覆すには足りない。また,会社の名称や住所について誤記が
あったり,不自然な日本文が記載されているとしても,そのことによ
って,被告トーマジャパンの作成部分について,製造許諾承認契約書
(甲29)の成立の真正を否定するには足りないというべきである。
(オ)製造許諾書(甲325,326)について
①製造許諾書(甲325,326)について,原告は,訴外Bが,台
湾におけるDの刑事裁判手続において,訴外JRオリエンタルの権限
は「本院書簡24頁」に存在している同訴外会社と被告トーマジャパ
ン間の製造許諾書に由来するとし,また,毎年,訴外JRオリエンタ
ルが費用を支払うことに伴い,被告トーマジャパンにおいても,「製
造許諾書」を1部発行していたと証言したこと,また,上記両書面
(甲325,326)を含む製造許諾書の一部の印影が異なることに
ついても,被告Aから,会社内部管理の問題であり,印鑑は複数ある
旨を聴いたと証言したこと等をもって,上記両書面(甲325,32
6)は,被告トーマジャパンにより真正に作成されたと主張する。
そして,上記両書面(甲325,326)は,いずれも「製造許諾
書」と題する書面であり,作成日付が「平成16年1月1日」(甲3
25),「平成17年1月1日」(甲326),有効期限が「平成1
6年12月31日」(甲325),「平成17年12月31日」(甲
326)と,それぞれ1年ずつ異なるものの,その他の記載内容は同
一であるなど,訴外Bの上記証言に沿う部分があることが認められる。
しかしながら,訴外Bの上記証言のうち,「本院書簡24頁」の書
面が何を指すのかは,客観的には明らかでないことからすると,同証
言で言及されている「製造許諾書」が上記両書面(甲325,32
6)であるのかは不明と言わざるをえず,上記証言をもって,両書面
(甲325,326)が真正に成立したと認めるには足りない。
②製造許諾書(甲325)と製造許諾書(甲48)を比較すると,両
製造許諾書は,いずれも平成16年1月1日付けで作成された点にお
いて同一であり,かつ,当事者を被告トーマジャパンと訴外JRオリ
エンタルとする点でも同一である。したがって,このような書面が重
ねて作成される必要性について検討する。
両書面においては,甲48では本文が「株式会社トーマジャパン
(以下甲という)は,JRORIENTAL.,LTD(以下乙と
いう)に対し,甲とBとの平成14年1月15日付け「授権確認書」
を乙が承継することを認め,乙が,下記商品を,NECの商標を付け
て生産し,台湾,香港,中国大陸で販売することを許諾する。」とさ
れているのに対し,甲325の本文は「株式会社トーマジャパン(以
下甲という)は,JRORIENTAL.,LTD(以下乙とい
う)に対し,下記要件で,甲の指定する商品を,NECの商標をつけ
て生産することを許諾する。本許諾書はNECビューテクノロジー株
式会社と甲との間で平成13年8月1日に締結された「製造許諾承認
契約書」に基づき甲が乙に交付する。本許諾書(以下本書という)の
有効期間は本書記載の発行日から本書記載の有効期限までとし,本書
の更新あるいは延長はなく,本書記載の有効期間をもってその効力を
失う。」とされている。両者を比較すると,①甲48では,被告トー
マジャパンと訴外Bとの間の授権確認書(甲47)が前提とされてい
るのに対し,甲325では訴外NECビューテクノロジーとの間の
「製造許諾承認書」(甲29)が前提とされていること,②甲48で
は前提となる甲47を含めて許諾期間に限定がないのに対し,甲32
5では許諾期間が1年間に限定されていることにおいて相違する。
特に,後者の許諾期間の点は,甲48と甲325で内容的に矛盾が
あり,同日付けで,被告トーマジャパンがこのような矛盾する内容の
製造許諾書を2通作成するだけの合理的理由は証拠上明らかでない。
また,甲325が訴外Bと被告トーマジャパンとの間の授権確認書を
引用する形式をとっていないのは,甲325の書面が被告トーマジャ
パンと訴外JRオリエンタル以外の第三者に提示されることを目的と
して作成されたものとも考えられる。そして,後記訴外JRオリエン
タルと製造業者との間の協力契約書や製造委託契約書が1年以内の短
期間を契約期間とするものであることからすると,その協力契約書や
製造委託契約書を締結する際に,契約の相手方に提示するための書面
としてJRオリエンタルが独自に作成した可能性も否定できないもの
というべきである。
③以上によれば,甲325,326は真正に成立したものと認めるこ
とはできない。
(カ)確認書(甲63,65)について
①確認書(甲63,65)には,被告トーマジャパン及び訴外JRオ
リエンタルの住所,会社名,代表者名が印刷され,同被告会社名義の
角印の押印,訴外Bの署名がされるとともに,訴外Ridian(甲
63)又は訴外Kapo(甲65)の各押印がされているところ,原
告は,確認書(甲63,65)の被告トーマジャパンの角印の印影は,
製造許諾書(甲48)に押印された角印の印影と同一であると主張す
る。そして,甲63及び甲65における被告トーマジャパンの角印の
印影と前記のとおり真正に成立した文書と認められる甲48の被告ト
ーマジャパンの角印の印影とを比較すると両者は同一のものと認めら
れる。
したがって,確認書(甲63,65)は,いずれも真正に成立した
と認めるのが相当である。
②被告らは,確認書(甲63,65)は偽造されたと主張し,これら
に押印された被告トーマジャパンの印影は,被告トーマジャパンが保
有する角印の印影と異なること,確認書(甲63,65)は,売買基
本契約(甲13)が終了した平成15年7月31日以降に作成された
こと等を主張する。確かに,被告らが自ら保有すると主張する印章の
印影(乙5)は,確認書(甲63,65)の印影と客観的に異なって
いることが認められる。しかしながら,前記のとおり,被告らが保有
する,又は,真正であると主張する印章の印影は,被告トーマジャパ
ンの会社名下の角印の印影であり,登録等により公証されたものでは
ないから,上記の事情があるとしても,そのことのみによって,上記
の認定を覆すには足りない。作成日付の点も,そのことによって,確
認書(甲63,65)の成立の真正を否定するには足りないというべ
きである。
(キ)確認書(甲64)について
①確認書(甲64)には,被告トーマジャパン及び訴外JRオリエン
タルの住所,会社名,代表者名が印刷されているが,何らの署名,押
印もなく,その成立の真正を認めるに足りる証拠はない。
②原告は,確認書(甲64)は,訴外Kapo及び訴外Ardenの
販売会社に対する行政管理局による各強制捜査により入手されたこと,
訴外Ardenは,原告から提起された訴訟において,被告トーマジ
ャパンから直接授権を受けたと主張していることから,真正に成立し
たと主張するが,上記,入手の経緯や,訴外Ardenの訴訟行為の
みによって,被告トーマジャパンが確認書(甲64)を自ら作成した
と認めるには足りず,原告の上記主張を採用することはできない。
(ク)確認書(甲62,66~71)について
①確認書(甲62,66~71)については,被告トーマジャパン及
び訴外JRオリエンタルの住所,会社名,代表者名の各印刷はされて
いるが,何らの署名,押印もなく,その成立の真正を認めるに足りる
証拠はない。
②原告は,被告Aは,訴外Bと共謀の上,商標権侵害したとして,台
湾において起訴されていることや,確認書(甲62,66~71)は,
訴外盛業昌に対する強制捜査により入手された資料であるから,真正
に成立したと主張するが,これらの事実のみによって,被告トーマジ
ャパンが確認書(甲62,66~71)を自ら作成したと認めるには
足りず,原告の上記主張を採用することはできない。
(ケ)領収書(甲315)について
①領収書(甲315)については,被告トーマジャパンの住所,会社
名,代表者名の各印刷はされているが,何らの署名押印はなく,その
成立の真正を認めるに足りる証拠はない。
②原告は,被告Aは,訴外Bと共謀の上,商標権侵害したとして,台
湾において起訴されていることや,領収書(甲315)は,訴外盛業
昌に対する強制捜査により入手された資料であるから,真正に成立し
たと主張するが,これらの事実のみによって,被告トーマジャパンが
領収書(甲315)を自ら作成したと認めるには足りず,原告の上記
主張を採用することはできない。
(コ)製造委託書(甲79)について
①製造委託書(甲79)は,被告トーマジャパン(甲)が数億国際株
式有限公司(乙)にNEC標章を付したMP3プレーヤーの製造生産
を委託する内容の合意書である。
そして,同委託書の第1条では,「乙は甲の調達リストに規定され
る型番と数量に基づき生産し,無断で増産又は減産してはならな
い。」,第2条では,「乙はいかなる方法によっても甲の製造委託す
る商標を製造委託製品又は型番以外のものに使用してはならない。乙
が違反する場合,甲が被った一切の損失を賠償しなければならな
い。」とされるなど,乙(数億国際株式有限公司)が負う法的義務が
記載されている。
ところが,製造委託書(甲79)には,その末尾に,委託書作成者
として,被告トーマジャパンの名称と法定代理人及び被告トーマジャ
パン名が記載された角印の押捺はみられるものの,上記のとおりの義
務を負う数億国際株式有限公司については,その記名も押印もない。
このように,合意上の法的義務を一方当事者の記名押印がない文書
は不自然であって,被告トーマジャパンがこのような文書に自らのみ
が記名押印して作成するということもにわかには認め難い。
そうすると,製造委託書(甲79)は,真正に成立したものとは認
められないというべきである。
②原告は,印影比較報告書(乙5)によると,製造委託書(甲79)
に押印された被告トーマジャパンの角印の印影は,縦横の比率を変え
ると,同被告が保有すると主張する角印の印影と同一であることが認
められるから,同書面(甲79)は,真正に成立したと主張する。し
かしながら,同書面(甲79)においては,同被告の角印の印影は,
横長の長方形の形状をしており,このような印影を,原告の主張する
ように,縦横の比率を変えて,他の印影を比較する合理的な根拠も見
いだせないことからすると,同書面(甲79)の同被告の角印の印影
が,同被告が保有すると主張する各印の印影と同一と認めることはで
きない。
③原告は,また,被告Aは,訴外Bと共謀の上,商標権侵害したとし
て,台湾において起訴されていることや,製造委託書(甲79)は,
訴外盛業昌に対する強制捜査により入手された資料であるから,真正
に成立したと主張するが,これらの事実のみによって,被告トーマジ
ャパンが製造委託書(甲79)を自ら作成したと認めるには足りず,
原告の上記主張を採用することはできない。
(サ)製造許諾書(甲80)
製造許諾書(甲80)には,被告トーマジャパン及び訴外Kapoの
住所,会社名,代表者名が印刷され,同被告会社名義の角印及び訴外K
apoの社印の各押印がされているところ,原告は,製造許諾書(甲8
0)の被告トーマジャパンの角印の印影は,製造許諾書(甲48)に押
印された角印の印影と同一であると主張する。そして,上記甲80の角
印の印影と真正に成立したものと認められる甲48の角印の印影とを比
較すると両者は同一のものと認められる。被告らは,これらの書面(甲
48,80)の押印の印影が同一であることについては,特に争ってお
らず,被告トーマジャパンの保有する角印による印影ではない(乙5)
とするに止まる。製造許諾書(甲80)については,真正に成立したと
認めるのが相当である。
イ中国における侵害行為③の成否
(ア)以上の書証の成否を前提として,侵害行為③の成否について検討す
る。前提となる事実,第3,2(1)に認定した事実に加え,各別に掲げ
る証拠及び弁論の全趣旨によると,次の各事実が認められる。
①被告トーマジャパンと訴外NECホームエレクトロニクスとの取引
関係
a前提となる事実(4)アのとおり,被告トーマジャパンは,訴外N
ECホームエレクトロニクスとの間で,平成11年8月31日付け
売買基本契約(乙1)を締結した。そして,被告トーマジャパンは,
同契約に基づいて,訴外NECホームエレクトロニクスから,NE
C標章を付した製品を継続的に購入していた。
b前提となる事実(4)ウのとおり,訴外NECホームエレクトロニ
クスは,被告トーマジャパンに対し,製造業者等に関して調査を依
頼したことがあったが,平成12年4月ころには,同被告が紹介し
た製造業者である訴外TONICに対し,OEM方式で,NEC標
章を付したCDプレーヤー(型番ZE-2001)を製造させるこ
とになった。その後も,同年10月には,NEC標章を付したイヤ
ホーン(型番TS165-01606N)が,同年11月には,C
Dプレーヤーの新機種(型番ZE-2001Ⅱ)が,平成13年4
月には,CDプレーヤーの新機種(型番MCD-303)等がそれ
ぞれ製造された。
c被告トーマジャパンは,平成12年11,12月頃には,CDプ
レーヤーの後継商品の開発と,中国,台湾及び香港における販売に
ついて,同被告の販売店の一つである訴外JRオリエンタルの代表
者の訴外Iに協力を求めるようになった。
②被告トーマジャパンと訴外NECビューテクノロジーとの取引関係
a前提となる事実(4)エ,(5)アのとおり,その後,訴外NECホー
ムエレクトロニクスが解散したため,訴外NECビューテクノロジ
ーは,その事業を承継した。被告トーマジャパンは,同訴外会社と
の間で,平成13年8月1日付け売買基本契約(甲13)を締結し,
NEC標章を付した①スピーカー,②CDプレーヤー及びその関連
製品,③PC周辺機器を購入するようになった。しかし,被告トー
マジャパンとの取引については,訴外NECホームエレクトロニク
スとの取引の時から,取引を収束させることが検討されており,そ
のため,上記売買基本契約と同日に,訴外NECビューテクノロジ
ーと被告トーマジャパンとの間で覚書(甲14)が交わされ,両社
は,今後1000万USドル,20万台を限度としてCDプレイヤ
ー事業を収束すること,及び平成14年3月までに収束することを
努力目標とし,最長でも平成14年8月までに収束することが合意
された。
b訴外JRオリエンタルは,被告トーマジャパンの依頼に基づき,
市場を調査していたが,訴外NECビューテクノロジーは,平成1
3年11月には,訴外TOPWORLDを通じて,訴外JRオリ
エンタルが紹介した製造業者である訴外COWONに対し,OEM
方式で,NEC標章を付したMP3プレーヤー(型番MI-R93
0)を製造させて,平成14年1月から販売するようになり,その
後,同様に,訴外TOPWORLDを通じて,訴外JRオリエン
タルが紹介した製造業者である訴外NEXTWAYに対し,OEM
方式で,NEC標章を付したMP3プレーヤー(型番MI-R7)
を製造させるようになった。
c前提となる事実(5)イ,オのとおり,訴外NECビューテクノロ
ジーは,訴外TOPWORLDを通じて製造代金を支払うととも
に,製品の供給を受け,これを被告トーマジャパンに販売し,同被
告は,これを訴外JRオリエンタルに販売していた。製品は,訴外
NECビューテクノロジーの所在する日本に輸入した上で,再度,
輸出手続をとるのではなく,海外で,直接,同訴外会社の販売先で
ある被告トーマジャパンの販売会社である訴外JRオリエンタルに
引き渡されていた。また,訴外NECビューテクノロジーから訴外
TOPWORLDに支払われた製品の製造代金は,訴外JRオリ
エンタルを介して,又は,直接,同訴外会社が紹介した製造業者に
支払われる等した。そして,訴外JRオリエンタルの販売による製
品の販売代金は,被告トーマジャパンにより,製造代金に一定額を
上乗せした金額が回収され,訴外NECビューテクノロジーに送金
されていた。
d前提となる事実(5)オのとおり,訴外NECビューテクノロジー
と被告トーマジャパンは,平成14年4月17日付けで確認書(甲
19)を締結し,訴外JRオリエンタルが,中国,台湾及び香港の
市場において,同被告から商標信用維持について全権を委託され,
全責務を代行すること等が確認された。
e平成14年4月22日,訴外NECビューテクノロジーは,被告
トーマジャパンに宛てて,文書を送付したが,その文書は,「CD
プレイヤー事業収束の件」と題され,その本文には,「さて掲題の
件,貴社と売買契約を締結しております下記の商品につきましては,
当社の事業ドメインでは今後事業の拡大を見込めないことから,貴
社との間で平成13年8月13日に締結した覚書で合意した数量も
しくは売買金額を限度とし,本年8月までに製造を中止し事業を収
束することと決定致しましたので連絡申し上げます。」とされ,製
造中止対象モデルとして,「①スピーカー,②CDプレーヤー及び
その関連製品,③PC周辺機器」が挙げられた(甲15)。
f被告トーマジャパンは,上記事業収束に関する文書が送付された
直後である平成14年4月30日,訴外JRオリエンタルに対し,
NEC標章を付した商品に関する製造許諾書(甲44)を作成交付
し,同訴外会社に対し,同被告と訴外NECビューテクノロジー間
の平成13年8月1日付け製造許諾承認契約書(甲29)に基づき,
NEC標章を付した上記商品を製造することを許諾していた。
g被告トーマジャパンは,平成14年7月2日付けで,訴外NEC
ビューテクノロジー宛てに文書(甲16)を送付したが,同文書に
は,「さて,貴社と売買基本契約を締結しております全事業につき
まして平成13年8月1日付覚書にて収束に向けての取引限度額を
規定しておりますが,弊社顧客からの強い要望もあり下記ロットを
最終オーダーとして,契約を終了させて頂きたく,ご了解のほどお
願い申し上げます。また,これに伴い平成14年4月17日付確認
書にて取り交わした確認事項につきましても本最終オーダーを以っ
て終了するものとさせていただきます。」とされ,最終オーダーの
納期は平成14年7月,支払日は同年9月20日とされていた。
h被告トーマジャパンは,平成14年8月13日付けで,訴外NE
Cビューテクノロジー宛てに文書(甲17)を送付したが,同文書
には,「兼ねてより,平成14年4月22日付貴社との確認書に基
づき,中国向けオーディオ商品の販売を収束すべく当社取引先との
協議を進め,同年4月23日付けにて契約解除予告通知を送付いた
しました。しかし,この時点ではまだ本事業のNEC関連他社への
移管の可能性の話を頂いており,商品の受発注も計画に基づき粛々
と実施されていたため,無用の混乱を避けるべく中国側販売代理店
には契約解除の可能性を通告するにとどめ,具体的収束の為の日程
とその対策についての詰めを行うことは控えておりました。しかし
ながら,7月末貴社より他社への移管の可能性がなくなった旨の通
告を受け,急遽販売代理店当(ママ)を訪問し当該製品の販売中止
と契約の打切りについて協議いたしました。しかしながら,現在当
製品の販売が好調な事も有り突然の中止は代理店傘下の販売店側に
大きな混乱が予想さえる(ママ)事より,販売の継続を強く求めら
れました。又当社としてもこれによる代金回収の混乱と,特に8・
9月に集中する御社へのお支払いの資金繰りに支障をきたさないか
非常に危惧をしております。話し合いの結果代理店側としては,現
在まで真面目に事業を遂行してきた事も勘案して頂き,突然の中止
でなく,来年1月にかけて徐々に発注数量を減らし当該事業の収束
を図る事であれば了解をする旨の妥協案を提示してまいりました。
(X’masと新年商談迄)つきましては,大変恐縮には存じます
が上記ご勘案の上,NECブランド商品製販の為の売買基本契約の
他社移管が不可能となった事をご理解頂き,本契約並びに覚書類の
一部弾力的運用をお願い申し上げます。」と記載されていた。
i被告トーマジャパンは,平成14年12月4日付けで,訴外NE
Cビューテクノロジーに対し,「NECブランド商品販売収束目論
見書」と題する文書(甲18)を送付し,徐々に発注額を減らして,
平成15年8月をもって発注を終了することを提案した。
jこのように,訴外NECビューテクノロジーと被告トーマジャパ
ンは取引上の協力関係にあったものの,当初から事業は収束に向か
うことが予定されていたことから,前提となる事実(5)カ,キのと
おり,訴外NECビューテクノロジーは,被告トーマジャパンに対
し,平成15年4月1日付け「売買基本契約解約申入れの件」と題
する書面(甲25)により,売買基本契約(甲13)等を同年7月
31日をもって解約する旨の申し入れを行い,両者間の契約関係は,
同日をもって終了した。
上記「売買基本契約解約申入れの件」と題する書面(甲25)に
おいては,解約理由として,「当社においては,貴社と取引を行っ
ている事業が当社が目指す事業領域と合致しないため,平成15年
7月末までに原契約別紙に記載の製品または商品の製造を中止する
こととしたため。」とされていた。
k被告トーマジャパンは,訴外JRオリエンタルに対し,平成15
年4月2日付け書面(乙10)により,訴外NECビューテクノロ
ジーから,売買基本契約(甲13)が同年7月31日をもって失効
する旨の告知を受けたことから,同被告と訴外JRオリエンタル間
の売買基本契約も失効することを伝えるとともに,同訴外会社から
取引先に対し,NECブランド契約商品の販売の打ち切りと,契約
の失効について伝達するよう依頼した。しかし,同書面は,上記の
とおり訴外NECビューテクノロジーとの間の売買基本契約の失効
を前提とした措置を依頼したのみであり,前記(カ)の製造許諾承認
契約書(甲29)を前提とした平成14年4月30日付け製造許諾
書(甲44)の効力についてふれるものではなかった。
また,被告トーマジャパンは,訴外JRオリエンタルに対し,同
年6月11日付け書面(乙11)により,再度,同被告と同訴外会
社間の売買基本契約が失効することを伝えるとともに,同訴外会社
が発行した注文書は,今後,受領できないので,同訴外会社から取
引先に対し説明するよう依頼した。しかし,同書面も製造許諾承認
契約書(甲29)及び製造許諾書(甲44)の効力にふれるもので
なかった点は同様である。
また,訴外JRオリエンタルは,その後の平成17年8月18日
付けで,JRオリエンタルを原告とし,本件原告を被告として,商
標「NEC」(その商標権のうち,中国及び台湾に関する商標権は
本件において原告が請求する商標権と重なっている。)の使用権を
有することの確認訴訟を求めて東京地方裁判所に訴えを提起し,そ
の訴状中では,JRオリエンタルは,前記平成15年4月1日付け
「売買基本契約解約申入れの件」は本件原告が一方的に行ったもの
である,被告トーマジャパンは,台湾NECに対して抗議書を提出
し,本件解約申入れ拒絶する旨の回答をしたとし,訴状の「第4
結語」において,「以上のとおり,原告(JRオリエンタル)は,
本件商標の使用を第三者に許諾する権限を有するNECビューテク
ノロジーから,平成14年4月17日,中国本土,香港,台湾の市
場において本件商標を付した本件製品の製造販売を許諾され,本件
商標権を使用する権利を有するので,被告日本電子(日本電気の誤
記と認められる。)に対し,その確認を求めるため本件提訴をし
た。」と記載した。
この訴状中の記載は,訴外JRオリエンタルにおいては,上記訴
状の作成時点である平成17年8月18日の時点において,JRオ
リエンタルは,NEC標章の使用許諾を受け,かつ,NEC標章を
付した製品の製造販売権を有するものと認識していたとするもので
あり,その前提として,上記平成15年4月1日付けの「売買基本
契約解約申入れの件」に基づく解約申入れは効力を有しないと認識
していたとするものである。
また,訴外JRオリエンタルは上記訴状において,被告トーマジ
ャパンも上記解約申入れを拒絶する旨の回答をしたと述べていると
ころからみて,被告トーマジャパンによってされた,上記売買基本
契約失効についての通知(乙10,11)は,訴外JRオリエンタ
ルには正当な通知とは認められていないばかりか,少なくとも訴外
JRオリエンタルの立場からみれば,被告トーマジャパンも訴外J
Rオリエンタルと同様の認識を有しているとするものである。実際,
被告トーマジャパンは,平成16年7月29日付けで「声明文」と
題する書面を作成しており,それによれば,「当社はNECビュー
テクノロジー社より売買基本契約解消の申入れを受けております。
この申入れは一方的なものであり,当社はこの申入れをいまだ受諾
しておりません。当社は従前どうり同社許諾製品の製造及び販売を
継続しておりますことをここに声明いたします。」とされている。
加えて,訴外JRオリエンタルは,上記訴状において,訴外JR
オリエンタルは,本件商標の使用を第三者に許諾する権限を有する
NECビューテクノロジーから,平成14年4月17日,中国本土,
香港,台湾の市場において本件商標を付した本件商品の製造販売を
許諾され,本件商標権を使用する権利を有すると主張している。
③OEM方式で製造された製品
被告トーマジャパンは,訴外NECビューテクノロジーとの売買基
本契約(甲13)に基づき,OEM方式により,製造業者である訴外
TONIC,訴外COWON及び訴外NEXTWAYが製造したCD
プレーヤー(型式ZE-2001,ZE-2001(Ⅱ),MCD-
303,CD-M1000,CD-JR303,CD-J103)及
びMPプレーヤー(型式MP3-CD1,MIR-930,MI-R
5,MI-R7)の各取引に関与した。
④訴外NECビューテクノロジーとの取引継続中における被告トーマ
ジャパンによる訴外Bへの授権等
a前記ア(ア)①のとおり,被告Aは,訴外JRオリエンタルの代表
者である訴外Iの営業能力に物足りなさを感じていたことから,訴
外NECビューテクノロジーとの取引関係が継続していた平成13
年秋ころから,訴外盛業昌の代表者であり,中国で家電製品の製造
販売をしていた真光家電股份有限公司の社長である訴外Bに対し,
上記各社の販売ルートを利用して,中国,台湾及び香港において,
NEC標章を付した商品を販売するよう依頼した。
b上記の交渉の結果,前提となる事実(6)のとおり,被告トーマジ
ャパンと訴外Bは,平成14年1月15日付けで授権確認書(甲4
7)を締結し,同被告が,訴外NECビューテクノロジーとの間の
契約に基づき,NEC標章を付した商品(①スピーカー,②CDプ
レーヤー及びそお関連製品,③PC周辺機器)を製造販売する権利
を有することを確認するとともに,同商品を製造販売する権利を,
同被告から訴外Bに授権すること,訴外Bは,販売する商品の明細
を同被告に提示して,事前承認を受け,訴外Bは,同被告に対し,
事前承認を得た商品について,仕入数量に仕入単価をかけた総額の
7%を,授権料として同被告に支払うこと等を確認した。
⑤訴外JRオリエンタルによる訴外Bの権限の承継等
a訴外B及び訴外Kは,その後,平成15年12月1日に,訴外J
Rオリエンタルの株式を買い受け,訴外Bにおいて,同訴外会社の
経営を行うこととなった。訴外Bは,前代表者の訴外Iから,被告
トーマジャパンと訴外NECビューテクノロジー間の平成13年8
月1日付け製造許諾承認契約書(甲29)等の取引関係書類を引き
継いだ。
b被告トーマジャパンと訴外JRオリエンタルは,平成16年1月
1日付けで製造許諾書(甲48)を締結し,同被告は,訴外Bとの
間の授権確認書(甲47)の内容を訴外JRオリエンタルが承継す
ることを認めるとともに,同訴外会社が,NEC標章を付した上記
商品を製造販売することを許諾した。
c訴外NECビューテクノロジーとの間の売買基本契約(甲13)
は,既に,平成15年7月31日をもって解約され,同被告におい
ても,形式上,訴外JRオリエンタルに対し,二度にわたって,上
記解約について事前に通知していた。
しかしながら,同被告としては,前提となる事実(5)エのとおり,
訴外NECビューテクノロジーとの取引において,アフターサービ
ス及び対象製品の欠陥に起因又は関連して生じた損害に関して責任
を負う旨合意していたこと等(乙4)から,同被告にNEC標章を
付した商品の製造業者や販売ルートの選定に関する権限があるもの
と認識していたとし,上記売買基本契約(甲13)解約後も,訴外
NECビューテクノロジーから取引の収束に向けた協議がなされな
かったことから,なおも,同訴外会社との契約関係は継続している
として,同被告自身が,NEC標章を付した製品の製造許諾権限を
有するとの認識を示していたものであり,平成16年6月2日付け
で,恵州市東電科技有限公司に対してNEC標章を付した商品の製
造を許可したことがない旨記載された書面を作成の上,原告及び訴
外NECビューテクノロジーに交付した際も,同被告としては,そ
のような書面を作成したこと自体,同被告が,第三者に対し,NE
C標章を付した商品の製造を許諾する権限を有していたことを意味
するとの認識を有していた(甲132)。
⑥訴外JRオリエンタルによる協力契約及び製造委託契約の締結,並
びに被告トーマジャパンによる関与
前提となる事実(8)のとおり,訴外JRオリエンタルは,中国に所
在する各企業との間で,NEC標章を付した商品の協力開発,販売に
ついて,協力契約等を締結するとともに,当該商品の製造について,
製造会社との間で,製造委託契約等を締結した。また,被告トーマジ
ャパンは,次のとおり,製造業者のために,製造許諾書等を作成した
り,交渉に関与する等した。
a訴外Ridian関係
(a)訴外JRオリエンタルは,訴外Ridianとの間で,平成
16年8月6日付けで,ダウンロード式MP3・MP4プレーヤ
ー,ラジオ等すべての関連製品について,協力契約(甲49)を
締結した。
同契約においては,「製品項目」の項において,訴外JRオリ
エンタルがすべての規格を確認し,国際バーコード,型番,シリ
アルナンバーを作成した後,訴外JRオリエンタルの発注により
生産が開始されるものとされている。一方、実際の製造について
は,Ridianは訴外JRオリエンタルが承認した工場を選択
して,生産を委託することができるとされた。
また,委託先工場との取引方法については,「取引プロセス」
の項において,訴外Ridianが訴外JRオリエンタルに発注
し,訴外JRオリエンタルが工場に発注するものとされ,委託先
工場との取引代金は,訴外Ridianが訴外JRオリエンタル
の注文リストに基づき直接に取引を行い,その債権に訴外JRオ
リエンタルは関係を有しないものとされた。
(b)訴外JRオリエンタルは,訴外Ridianとの間で,平成
16年9月20日付け製造委託契約(甲81)により,同訴外会
社は,訴外Lidanとの間で,同日付け製造委託契約(甲8
2)により,順次,MP3プレーヤー(型番MI-R5,MI-
R7)の製造を委託した。
同契約書には,委託する製品の国際バーコード,型番が記載さ
れており,訴外JRオリエンタルの発注内容が記載されていると
ころから,上記協力契約における「製品項目」の項に関する契約
であると解される。
(c)訴外JRオリエンタルは,訴外Lidanとの間で,平成1
6年9月20日付け製造委託契約(甲83)により,MP3プレ
ーヤー(型番MI-R5,MI-R5PRO,MI-R7,M
I-R7PRO)の,同年11月25日付け製造委託契約(甲
84)により,MP3プレーヤー(型番MI-R930,MI-
R930PRO)の,同年12月1日付け製造委託契約(甲8
5)により,MP3プレーヤー(型番MI-R6,MI-R8,
MI-R8PRO)の,平成17年1月6日付け製造委託契約
(甲86)により,ミニスピーカー(型番CD-J101,CD
-J303)の,同年1月6日付け製造委託契約(甲87)によ
り,MP3プレーヤー(型番MI-R9,MI-R9PRO,
MI-R10,MI-R10CN)の各製造を委託した。
上記項83ないし87には,訴外JRオリエンタルと訴外Li
danの記名がされているが,押印はない。しかし,これらの書
面は「製造委託契約書」と題されてはいるものの,その内容から
みて,前記協力契約の「取引プロセス」の項目に定められた訴外
JRオリエンタルから委託先工場であるLidanに対する発注
の前提となる合意としての意味合いを有するものと解されるとこ
ろ,甲83ないし87の製品は,いずれも協力契約(甲49)で
合意された製品項目(NECのダウンロード式MP3・MP4プ
レーヤー,ラジオ等すべての関連製品)に含まれるものであり,
同内容の発注が訴外JRオリエンタルから訴外Lidanにされ
たものと認められる。
(d)被告トーマジャパンは,訴外Ridianに対し,同被告及
び訴外JRオリエンタル間の平成16年11月18日付け確認書
(甲63)により,同訴外会社がMP3プレーヤーの製造者かつ
総代理店であり,同訴外会社の授権に基づき,訴外Ridian
が代理店として,製品の販売等を行うことを確認した。同訴外会
社は,訴外上海華寧オーディオデジタル有限公司に対し,平成1
7年7月1日付け授権書(甲88)により,更に,MP3プレー
ヤーの販売総代理店としての権限を授権した。
(e)被告トーマジャパンは,訴外Lidanに対し,同被告を許
諾者とする平成17年1月1日付け製造許諾書(甲311)によ
り,NEC標章を付した製品(ラジオ,ポータブルCDプレーヤ
ー,MP3プレーヤー)の製造を直接的に委託した。
(f)なお,上記に製造委託されたMP3プレーヤーのうち,型番
MI-R5,MI-R7のものは,従前,訴外NECビューテク
ノロジーが,OEM方式により,製造業者に製造させていたもの
と同じ型番であった。
b訴外YuehuaElectronics関係
(a)訴外JRオリエンタルは,訴外YuehuaElectr
onicsとの間で,平成16年4月20日付けで,キーボード,
マウスについて,協力契約(甲50)を締結した。
同契約における,「製品項目」及び「取引プロセス」の内容は,
前記①aの訴外Ridianとの協力契約の内容と同様である。
(b)訴外JRオリエンタルは,訴外YuehuaTechno
logyとの間で,平成16年9月8日付け製造委託契約(甲9
0)により,NECブランドのコンピュータ用キーボード(型番
CY-K6080,CY-K6050,CY-K6020,CY
-K6000)の,訴外Jeejaとの間で,同年6月10日付
け製造委託契約(甲91)により,コンピュータ用キーボード
(型番K6020)の,訴外精模電子科学技術(深圳)有限公司
との間で,同日付け製造委託契約(甲92)により,キーボード
(型番K6080)の,訴外深圳市明意電子科学技術有限公司と
の間で,同日付け製造委託契約(甲93)により,キーボード
(型番K6050)の,訴外広州市奥龍電子科学技術有限公司と
の間で,同日付け製造委託契約(甲94)により,コンピュータ
用キーボード(型番K6000)の,訴外広州市納普斯電子有限
公司との間で,同日付け製造委託契約(甲95)により,コンピ
ュータ用マウス(型番M680,M650,M600)の,訴外
深圳市好利得コンピュータ技術有限公司との間で,同日付け製造
委託契約(甲96)により,コンピュータ用マウス(型番M66
0,M620)の,訴外珠海経済特区華爾特電子有限公司との間
で,同日付け製造委託契約(甲97)により,コンピュータ用マ
ウス(型番M690)の,各製造を委託した。
上記製造委託契約書(甲90)が協力契約の「製品項目」の項
の記載に対応したものであること及び各製造委託工場との間の製
造委託契約が協力契約の「取引プロセス」の項の発注票に該当す
るものであることは,上記①b,cと同様である。
c訴外Kapo関係
(a)訴外JRオリエンタルは,訴外Kapoとの間で,平成16
年4月1日付けで,ホームシアター用スピーカー(スピーカー及
びその付属品),アンプリファイア,ミニステレオセット,マイ
クについて,協力契約(甲51)を締結した。
同契約における,「製品項目」及び「取引プロセス」の内容は,
前記①の訴外Ridianとの協力契約の内容と同様である。
上記協力契約書(甲51)には,訴外JRオリエンタル及び訴
外Kapoの記名はあるものの,押印はない。
しかし,訴外Kapoは,平成16年12月1日の時点での同
社のホームページにおいて,ミニステレオセット等のNEC標章
を付した商品の販売広告をしていること(甲339),本件原告
を原告とし,訴外Kapo及び訴外Ardenを被告とする商標
権侵害訴訟の判決(南京市中級人民法院平成21年7月17日判
決。甲407)において,商標権侵害を前提として指定商品の類
否について検討されていること,後記(e)のとおり,訴外Kap
oは,上記協力契約の日時に近接した平成16年5月24日に被
告トーマジャパンと訴外JRオリエンタルとの間の販売代理店契
約書(甲65。対象商品は,NECホームシアター,サウンドボ
ックス(スピーカー及び関連部品),パワーアンプ,ミニ・オー
ディオセット,マイク)の3項において,訴訟JRオリエンタル
の授権に基づき上記製品の中国大陸地域における代理店として,
上記製品の販売及びアフターサービス等を行うとされ,同契約書
には訴外Kapoの押印もみられることに照らせば,上記協力契
約書(甲51)と同一の内容の契約が訴外Kapoと訴外JRオ
リエンタルの間で成立していたものと認めるのが相当である。
(b)訴外JRオリエンタルは,訴外Ardenとの間で,平成1
5年12月15日付け製造委託契約(甲98)により,アンプリ
ファイア(型番NKA-700,NKA-800,NKA-90
0)の製造を委託した。同契約書にも訴外JRオリエンタルと訴
外Ardenの記名があるのみで,押印はないが,委託製品は協
力契約(甲51)の対象製品と合致するものであり,同一の内容
の契約が両者間に成立していたものと認められる。
(c)訴外JRオリエンタルは,訴外中山市粤糧経貿輸出入有限公
司との間で,平成15年12月22日付け輸出授権契約(甲9
9)により,訴外Kapoに製造委託したスピーカーユニット
(型番NSP-660F,NSP-660CS,NSP-770
F,NSP-770CS,NSP-880KF,NSP-990
F,NSP-990C,NSP-990S)及び訴外Arden
に製造委託したパワーアンプ(型番NKA-700),スピーカ
ーユニット(型番NKA-800,NKA-900)の輸出につ
いて授権した(同授権書には,訴外JRオリエンタル及び訴外B
のものと認められる押印がある。)。
(d)訴外Ardenは,訴外南京仙楽電子電器有限公司に対し,
平成19年10月1日付け授権書(甲104)により,同訴外会
社のミニオーディオセット,ホームシアター,サラウンドサウン
ドシステムの販売権利等を付与した(同授権書には,訴外Ard
en及び訴外南京仙人楽電子電器有限公司のものと認められる押
印がある。)。
(e)被告トーマジャパンは,訴外Kapoに対し,同被告及び訴
外JRオリエンタル間の平成16年5月24日付け確認書(甲6
5)により,同訴外会社がホームシアター,サウンド・ボックス
(スピーカー及び関連部品),パワーアンプ,ミニ・オーディオ
セット,マイクの製造者かつ総代理店であり,同訴外会社の授権
に基づき,訴外Kapoが代理店として,製品の販売等を行うこ
とを確認した。
(f)被告トーマジャパンは,訴外Kapo及び訴外Ardenに
対し,同被告を許諾者とする平成17年1月1日付け製造許諾書
(甲80,309)により,NEC標章を付した商品(スピーカ
ー周辺機器)の製造を直接的に委託した。
d訴外Worthy関係
(a)訴外JRオリエンタルは,訴外Worthyとの間で,ミニ
CDプレーヤー(VCD,MP3機能を搭載)について,平成1
6年5月1日付け協力契約(甲52)を締結したが,平成17年
1月24日付けで解約された(甲74)。
甲52の契約書には,訴外JRオリエンタルと訴外Worth
yの記名があるのみであるが,真正に成立したものと認められる
甲74の文書においては,甲52と同一日(平成16年5月1
日)に協力契約が成立したことを前提として,その解約について
ふれられているところから,甲52と同一内容の契約が成立した
ものと認められる。
(b)訴外JRオリエンタルは,訴外Worthy精工との間で,
平成16年7月15日付けで製造委託契約(甲105)により,
ポータブルプレーヤー(型番NV-800)の製造を委託した
(協力契約における対象商品(ミニVDプレーヤー(VCD,M
P3機能を搭載))と製造委託契約における対象商品(ポータブ
ルプレーヤーが一致している点,両契約の作成日付の関係(協力
契約は平成16年5月1日,製造委託契約は平成16年7月15
日)からみて,甲105と同一内容の契約が成立したものと認め
られる。)。
⑦被告Aは,JRオリエンタル訴訟において,平成19年12月20
日に証人尋問を受けた際,また,台湾板橋地方裁判所において,平成
20年5月27日に実施された準備手続において,いずれも被告トー
マジャパンと訴外NECビューテクノロジー間の売買基本契約(甲1
3)の正式な解約はなされておらず,なおも,契約関係が継続してい
る旨の認識を述べた(甲306,316,322)。
また,訴外Bは,台湾の裁判手続において,平成19年1月2日に
証人尋問を受けた際,被告トーマジャパンからは,毎年製造許諾書を
交付してもらい,訴外JRオリエンタルからは,同被告に対して費用
を支払っていた旨を供述した(甲327)。
⑧NEC標章を付した商品の流通等
前提となる事実(11)アのとおり,中国において,商標権者である
原告の許諾を得ずにNEC標章を付した商品が,製造販売等されてき
た(甲1,2,34~37,303)。そして,それらが被告ら,訴
外JRオリエンタル及びその関係者以外の者により製造販売された形
跡は証拠上見当たらず,上記⑥で認定した事実によれば,それらの製
品は,被告らの関与の下に製造販売されたものと認められる。
そして,上記商品に付されたNEC標章は,中国における原告商標
権の商標とその構成が同一であると認められる。
(イ)以上の認定事実によると,被告トーマジャパンには,訴外NECビ
ューテクノロジーとの間の売買基本契約(甲13)に基づいて,同契約
別紙で定められたNEC製品についてこれを訴外NECビューテクノロ
ジーから購入して販売する権限が与えられたのみであり,自らNEC標
章を使用したり,第三者に対し,NEC標章の使用許諾をする権限があ
ったとは認められない。
すなわち,原告と訴外NECビューテクノロジーとの間の平成12年
1月18日付け「「NEC標章」使用等許諾契約書」(甲10)3条1
項においては,原告は訴外NECビューテクノロジーに対し,NEC標
章に係る原告の商標権に基づき,NEC標章を訴外NECビューテクノ
ロジーの商品及び役務について使用する通常使用権を許諾するものとさ
れたが,同契約書7条においては,訴外NECビューテクノロジーは,
第三者に対し,NEC標章の再使用許諾を行ってはならないものとされ
ていた。同契約は1年ごとに更新されたが,平成15年3月26日付け
の同契約書においても,NEC標章の再使用許諾は禁止されている(甲
12)。訴外NECビューテクノロジーにおいて,同契約に定めれた合
意,すなわち原告の意向に反してまで,被告トーマジャパンに対し,N
EC標章の使用許諾をする理由があったことを認めるに足りる証拠はな
く,訴外NECビューテクノロジーが,被告トーマジャパンに対し,N
EC標章の使用許諾をしたとは認められない。
被告らは,訴外NECビューテクノロジーが売上実績を伸ばす必要に
迫られていたと主張するが,前記(ア)の売買基本契約の収束をめぐって,
むしろ被告トーマジャパンが契約の収束時期を延期するよう再三要望し
ていた事実にかんがみれば,被告らの主張を採用することはできない。
このように,被告トーマジャパンは,訴外NECビューテクノロジー
との取引関係にあったころから,NEC標章を使用する権限及び使用許
諾する権限を有していなかったが,それにもかかわらず,訴外Bとの間
で平成14年1月15日付け授権確認書(甲47)を締結し,NEC標
章を付した商品の製造販売権を授権していたこと,平成15年7月31
日に訴外NECビューテクノロジーとの間の取引関係が終了し,同被告
から,同被告の販売会社である訴外JRオリエンタルに二度にわたって
その旨の通知を一応行ったものの,他方において,同被告において,な
おも訴外NECビューテクノロジー間の契約関係が継続している旨の認
識を示した上,平成15年12月1日以降,訴外Bが訴外JRオリエン
タルを経営するようになると,同訴外会社との間で,平成16年1月1
日付けで製造許諾書(甲48)を交付し,上記訴外Bとの授権確認書
(甲47)の内容を訴外JRオリエンタルに承継させることとして,同
訴外会社が,NEC標章を付した商品を製造販売することを許諾したこ
と,同訴外会社は,その前後頃から,中国,台湾及び香港の企業9社と
協力契約(甲49~61)を順次締結した上,各企業の製造業者との間
で製造委託契約を締結する等して,NEC標章を付した商品の製造販売
をさせるようになっていったものであり,協力契約(甲49~61)に
おいて,初年度の最低仕入額とともに,協力利潤金の最低額を定め,同
金員の支払を確保するために上記企業から小切手を差し入れさせる等し
てきたこと,上記取引においては,被告トーマジャパン自らも,中国に
おいては,上記企業に対して訴外JRオリエンタルが製造者である旨記
載した確認書を作成したり,製造業者に対して製造許諾書を作成する等
し,後記のとおり,台湾においては,製造業者と直接交渉したり,台湾
の企業3社を招集して会議を開き,訴外NECビューテクノロジーから
許諾を受けているCDには,範囲の限定がない旨を回答したり,売買基
本契約(甲13)が継続している旨を記載した書面を作成する等し,ま
た後記のとおり,香港の企業に関しては,訴外JRオリエンタルにおい
て,ロイヤルティの支払いに関して被告Aの要望について検討する等し
てきたものであり,被告ら自身,NEC標章を付した商品の製造販売に
対して,直接的な関与をしていたこと,訴外JRオリエンタルとの間で
協力契約を締結した企業の製造業者の製造したNEC標章を付した商品
が,市場において販売され,あるいは,製造業者等の元で発見されてい
ることがそれぞれ認められるから,被告らは,遅くとも被告トーマジャ
パンが訴外JRオリエンタルに対し製造許諾書(甲48)を交付した平
成16年1月1日以降は,被告らにはNEC商標の使用権限及び使用許
諾権限がないことを知りながら,訴外B及び訴外JRオリエンタルに対
するNEC標章の使用許諾を行い,さらに訴外B及び訴外JRオリエン
タルも同じく,被告トーマジャパンにはNEC標章の使用権限及び使用
許諾権限がないことを知りながら,中国,台湾及び香港の各企業に対す
るNEC標章の再使用許諾を行い,これらにより,被告ら並びに訴外B
及び訴外JRオリエンタルは共同して,故意に,中国,台湾及び香港の
製造業者にNEC標章を付した商品を製造販売させて,これらにより協
力利潤金名下に利益を得たものであって,これらの行為は,(3)で検討
する,製造販売された商品が原告の中国における商標権を侵害する限り
において,権限なく登録商標と同一の商標を使用したものとして(中国
商標法52条1項2項,中国商標細則3条),商標権侵害行為に該当し,
被告らは,訴外B,訴外JRオリエンタルとともに,共同不法行為者と
して連帯責任を負うものと認めるのが相当である(中国民法通則130
条)。なお,上記共同不法行為の成立は,中国のみならず,台湾,香港
についても同様である。また,被告A及び訴外Bの代表者としての責任
は,後記第3,12のとおりである。
この点について,被告らは,被告トーマジャパンが,現地サプライヤ
ーがOEM方式で製造した原告製品について,製造販売システムに関す
る全ての手配を訴外NECビューテクノロジーから事実上一任されてい
たほか,原告製品を独占的に購入し,さらに保守サービス,製造物責任
まで負担していたため,NEC標章の使用権限があると誤信したと主張
する。しかし,NEC標章を付した商品について,被告トーマジャパン
がこれを取り扱うことのできる権限売買基本契約書(甲13)に由来す
るものであり,確認書(甲19)に基づく地位も,「甲(訴外NECビ
ューテクノロジー)と契約したCDプレーヤー及びその関連製品」につ
いての地位であり,結局,売買基本契約書(甲13)に基づくものであ
る。そして,前記認定事実によれば,被告らは,売買基本契約書(甲1
3)に基づく契約が平成15年7月31日をもって終了したことを認識
していたものであり,それによってNEC標章の使用等についての権限
を失ったことを認識していたものである。したがって,被告らがNEC
標章の使用権限があると誤解する余地はない。被告らの主張は採用する
ことができない。
訴外JRオリエンタルの権限は,被告トーマジャパンに由来するもの
であり,他にNEC標章を使用し,使用を許諾する権限が発生する根拠
は認められないから,上記のとおり,被告トーマジャパンにNEC標章
を使用し,使用を許諾する権限が認められない以上,訴外JRオリエン
タルにもそれらの権限は認められない。訴外JRオリエンタルは被告ト
ーマジャパンに対する訴訟提起をしたり,被告トーマジャパンの了解を
得ることなく,被告トーマジャパン名義の確認書,製造委託書等の書類
を作成したことがうかがわれるなど,被告トーマジャパンと全く利害関
係が一致していたとまでは認められないが,訴外JRオリエンタルは,
売買基本契約(甲13)の終了は認識しており(乙10,11),被告
トーマジャパンがNEC標章の使用権限及び使用許諾権限がないことを
認識していたものである。たとえ被告トーマジャパンに対する訴訟提起
後に被告トーマジャパンがNEC標章の使用権限を有するような言辞を
弄するようになったとしても,被告トーマジャパンの言辞を裏付ける確
実な証拠もなしに,自己にNEC標章の使用権限が帰属すると認識して
いたと認めることはできない。したがって,訴外JRオリエンタルは被
告トーマジャパンに由来する自己の権限も売買基本契約の終了により終
了したことを認識しており,それにもかかわらず,NEC標章を付した
商品の製造販売をしたものである。
そして,被告トーマジャパンと被告JRオリエンタルは部分的には利
害関係が一致しない部分があるとしても,被告トーマジャパンが有して
いた売買基本契約(甲13)に基づく地位を,同契約が終了した後も存
続するものとして取り扱うことを前提とした取引関係を協力して作り上
げ,お互いを利用し合う意思の下で,NEC標章を付した商品の製造販
売による利益を取得したものであって,前記のとおり故意による共同不
法行為者ということができる。
(3)中国における原告商標権の指定商品と,被告らが製造販売した製品の類
否について
原告商標権の指定商品と,原告が主張する中国における被告ら関与商品との
類否について,中国商標法52条1項1号の「同一商品又は類似の商品」で
あるか否かを検討する。
ア前提となる事実(2)ア(ア)のとおり,中国における原告商標権の指定商品
(第9類)は,(コンピュータ)キーボード,レーザーディスクプレーヤ
ー,サラウンド増幅器,コンピュータ周辺機器であるところ,原告が主張
する中国における製造販売商品のうち,キーボードは,上記指定商品の
(コンピュータ)キーボードと,マウスは,上記指定商品のコンピュータ
周辺機器と,ぞれぞれ同一の商品と認められ,この点については,当事者
間においても争いはない。
イ原告が主張する製造販売商品のうち,MP3プレーヤー,MP4プレー
ヤー,ポータブルプレーヤーは,コンピュータを経由してデータを入力す
る等,コンピュータと接続することを前提とする商品であるから,上記指
定商品のコンピュータ周辺機器と同一の商品と認められる(被告らは,こ
の点を争うが,上記のとおり認めるのが相当である。)。
ウ原告が主張する製造販売商品のうち,スピーカー(ミニスピーカー,ホ
ームシアター用スピーカー,スピーカーユニット),アンプ,ミニステレ
オセット,CDプレーヤー(ミニCDプレーヤー(VCD/MP3機能を
搭載))は,通常,上記指定商品であるサラウンド増幅器と機能において
類似し,双方について,同一の営業主により製造販売されることが多いこ
とからすると,これらの被告ら関与商品にNEC標章を付すと,商標権者
である原告の製造または販売にかかる商品であると誤認されるおそれがあ
ると認められる。したがって,上記被告ら関与商品は,上記指定商品であ
るサラウンド増幅器と類似する商品と認めるのが相当である。
エ他方,原告が主張する製造販売商品のうち,ラジオ,マイクは,上記指
定商品と同一の商品ではなく,NEC標章を付しても,商標権者である原
告の製造または販売にかかる商品であると誤認されるおそれがあるとは認
められないから,上記指定商品と類似する商品でもないというべきである。
(4)侵害となる製造販売行為及び被告らの得た利益(為替レート1香港ドル
=13.73円,1人民元=15.63円で換算)
以上によれば,被告らの共同不法行為(委託を受けて製造販売した企業の
行為を含む)により製造販売されたNEC標章を付した商品のうち,平成1
6年1月1日から本件口頭弁論終結時までの間に製造販売された(中国にお
ける原告商標権の有効期間は,平成13年3月7日から平成23年3月6日
までである。)キーボード,マウス,MP3プレーヤー,MP4プレーヤー
ポータブルプレーヤー,スピーカー(ミニスピーカー,ホームシアター用ス
ピーカー,スピーカーユニット),アンプ,ミニステレオセット,CDプレ
ーヤー(ミニCDプレーヤー(VCD,MP3機能を搭載)が中国における
原告商標権の侵害となる不法行為ということなる。
ア訴外Ridian関係
前提となる事実(8)アによれば,訴外Ridianは,平成16年8月
6日以降,製造委託契約や販売授権に基づいて中国における原告商標権の
侵害品であるNEC標章を付したMP3プレーヤーを製造販売し,その協
力利潤金として訴外JRオリエンタルに,600万香港ドル(日本円に換
算して,13.73円×600万=8238万円のうち,原告主張額であ
る8235万9000円)を支払った。
イ訴外YuehuaElectronics関係
前提となる事実(8)イによれば,訴外YuehuaElectron
icsは,平成16年9月20日以降,製造委託契約に基づいて中国にお
ける原告商標権の侵害品であるNEC標章を付したキーボード,マウスを
製造販売し,その協力利潤金として訴外JRオリエンタルに20万人民元
(日本円に換算して,原告主張額である312万6516円のうち,15.
63円×20万=312万6000円)を支払った。
ウ訴外Kapo関係
前提となる事実(8)ウによれば,訴外Kapoは,平成16年4月1日
以降,製造委託契約や販売授権に基づいて中国における原告商標権の侵害
品であるNEC標章を付したホームシアター用スピーカー(スピーカー及
びその付属品),アンプリファイア,ミニステレオセットを製造販売した。
なお,このほか,訴外Kapoは,訴外JRオリエンタルに輸出授権をし
ているところ,輸出行為が中国商標法上商標の使用行為と認められるかは
明らかでないから,輸出行為を侵害行為とみることはしない。しかし,訴
外Kapoは,自ら製造し又は訴外Ardenに製造委託した製品を輸出
授権しているから,これらの製造行為を商標権侵害行為ととらえることが
可能である。訴外Kapoは,訴外JRオリエンタルに,協力利潤金とし
て80万元(日本円に換算して,原告主張額である1250万6064円
のうち,15.63円×80万=1250万4000円)を支払ったが,
その利潤金のうちには,侵害品とはならないマイクの利潤金も含まれると
考えられる。ただし,訴外Kapoにかかる捜索の結果(甲346)をみ
ると,マイクの占める割合はわずかと認められるから,その10%を減額
し,72万元(日本円に換算して,15.63円×72万=1125万3
600円)を侵害品による協力利潤金と認める。
エ訴外Worthy関係
前提となる事実(8)エによれば,訴外Worthyは,平成16年5月
1日以降,製造委託契約に基づいて中国における原告商標権の侵害品であ
るNEC標章を付したミニCDプレーヤー(VCD,MP3機能を搭載)
を製造販売し,平成17年1月24日に同契約が解約されるまでその協力
利潤金として訴外JRオリエンタルに122万元(日本円に換算して,原
告主張額である1907万1748円のうち,15.63円×122万=
1906万8600円)を支払った。
(5)損害額
訴外オリエンタルは,上記(4)のアないしエの合計額である1億1580
万7200円の協力利潤金を受け取っているが,仮に,被告ら並びに訴外B
及び訴外JRオリエンタルの共同不法行為がなければ,原告は被告らがいわ
ばその道具として使用した製造業者らにNEC標章の使用を許諾することに
より,同額の利益を得ることができたものと認められる。したがって,中国
民法通則118条により,訴外JRオリエンタルが受領した金額と同額の1
億1580万7200円が被告らの共同不法行為による原告の逸失利益(損
害額)と認められる。
(6)小括
以上により,原告は,被告らに対し,被告らの連帯債務として,中国商標
法52条1項,56条1項,中国民法通則118条,130条により,1億
1580万7200円の損害賠償を請求することができる。
3日本法における商標権侵害行為に基づく損害賠償請求の成否
被告ら並びに訴外B及び訴外JRオリエンタルによる行為が,我が国の商標
法37条の商標権侵害行為であって,共同不法行為として民法709条,71
9条により,上記2と同額の連帯責任による損害賠償債務を負う。
4中国についての結論
以上により,被告らは,連帯して,原告に対し1億1580万7200円の
損害賠償義務を負う。
5台湾における商標権侵害に基づく損害賠償請求の成否
(1)台湾における商標権侵害行為に基づく損害賠償請求についての法制
台湾においては,①登録商標の指定商品と同一の商品又はサービスについ
て登録商標と同一の商標を使用とする者,②登録商標の指定商品と類似の商
品又はサービスについて,登録商標と同一であり,そのため関係消費者に混
同を生じさせる虞がある商標を使用しようとする者,③登録商標の指定商品
と同一又は類似の商品又はサービスについて,登録商標と類似しており,そ
のため,関係消費者に混同を生じさせる虞がする商標を使用とする者は,登
録商標権所有者の同意を得なければならないものとされ,商標所有権者の同
意なく,他人の登録周知商標と同一又は類似の商標を故意に使用し,そのた
めに周知標章の名声又は識別性を減殺しているか,その商品のサービスの関
係消費者に混同を生じさせている場合には商標権の侵害が生じているものと
みなされる(台湾商標法29条2項1号,2号,62条。甲138)。そし
て,商標権所有者は,その商標権を侵害した者及び商標権を侵害したとみな
される者に対し損害賠償の請求をすることができる(台湾商標法61条1項,
2項。甲138)。
台湾においては,商標権者が商標権侵害により損害を被った場合,登録商
標権者は侵害者に対し,上記台湾商標法61条(甲138)の規定によるほ
か,台湾民法184条1項前段(甲140)の規定によっても損害賠償請求
訴訟を提起することができる。そして,共同不法行為者は連帯責任を負う
(台湾民法185条1項前段。甲140)。
(2)台湾における侵害行為③の成否
ア前提となる事実に加え,各別に掲げる証拠及び弁論の全趣旨によると,
次の各事実が認められる。
(ア)訴外JRオリエンタルによる協力契約及び製造委託契約の締結,並
びに被告トーマジャパンによる関与
前提となる事実(9)のとおり,訴外JRオリエンタルは,次の台湾の
所在する各企業との間で,NEC標章を付した商品の協力開発,販売に
ついて,協力契約等を締結するとともに,当該製品の製造について製造
会社との間で,製造委託契約を締結した。また,被告トーマジャパンは,
次のとおり,製造業者のために,製造許諾書等を作成したり,交渉に関
与する等した。なお,前記のとおり,同被告及び訴外JRオリエンタル
は,いずれも,NEC標章の使用許諾については,何らの権利を有して
いなかった。
①訴外ChyauYeuan関係
a訴外JRオリエンタルは,訴外ChyauYeuanとの間で,
平成15年10月1日付けで,NECのホームシアター用スピーカ
ー,アンプリファイア,マイクについて,協力契約(甲53)を締
結し,小切手を受領したが,その後,額面11万ドル分の小切手
(UW6216707,AA0141431)を返還した(甲7
8)。なお,甲53の協力契約第1条では,契約期間について
「(7か月の前置作業期間が含まれる)」とされており,実際に製
造販売が開始されたのは,平成16年1月1日より後のことと認め
られる。
b訴外JRオリエンタルは,訴外ChyauYeuanとの間で,
平成17年4月1日付けで,ホームシアターステレオ,アンプリフ
ァイア,マイクについて,協力契約(甲54)を締結した。
上記甲53,54の協力契約書には,訴外JRオリエンタルと訴
外ChyauYeuanの記名があるのみで,押印はない。しか
し,訴外ChyauYeuanについては,平成17年12月2
0日に実施された台湾高雄県政府警察局旗山分局による同訴外会社
の捜索によって,「NEC商品奨励プラン」と題するアンプ,スピ
ーカーセット,有線マイク等の商品の一覧表及びNECの型番を付
したNECアンプ,スピーカー,センターサラウンド+スピーカー
3本セット,スピーカースタンド,アルミスピーカーセンターサラ
ウンド,アルミ製スピーカースタンド,ポータブルCDステレオ,
ポータブルウォークマン等多数の商品が押収されており(甲337,
345,甲364),それらの商品は協力契約(甲53)の対象商
品を含むものであること,訴外ChyauYeuanの代表者D
は,平成21年2月5日,台湾知的財産裁判所刑事判決において,
NECの登録商標と同一の商標を商標所有権者の同意なく製品に使
用したとして有罪判決を言い渡されていること(甲314,32
1)等に照らすと,上記甲53及び甲54と同一の内容の契約が成
立していたものと認めるのが相当である。
c訴外盛業昌は,訴外ChyauYeuanに対し,平成15年
9月25日付け「製造許諾書」(甲103)により,スピーカー,
パワーアンプの製造を委託した(訴外盛業昌の代表者は訴外JRオ
リエンタルの代表者でもある訴外Bであり,その作成日付の関係か
らみても,上記平成15年10月1日付けの協力契約と関連して真
正に成立したものと認められる。)。
②訴外KaeJinn関係
a訴外JRオリエンタルは,訴外KaeJinnとの間で,平成
15年12月10日付けで,ミニCDプレーヤー,ポータブルCD
プレーヤー,卓上型CDステレオについて,協力契約(甲55)を
締結した。なお,甲55の協力契約第1条では,契約期間について,
「(110日間の前置作業期間が含まれる)」とされており,実際
に製造販売が開始されたのは,平成16年1月1日より後のことと
認められる。
甲55の契約書には,訴外JRオリエンタルと訴外KaeJi
nnの記名はあるものの,押印はない。しかし,KaeJinn
の代表者であるGは,平成21年3月26日,台湾高雄地方裁判所
検察署により起訴され,その犯罪事実については,訴外KaeJ
innが,訴外JRオリエンタル等を通して,平成16年8月以降,
NEC商標を付した偽造品を台湾にある商店や卸売店に訴外Kae
Jinnを営業拠点として販売していたというものであり(甲3
13,なお甲312参照),この事実に照らしてみれば,上記甲5
5と同一内容の契約が成立していたものと認められる。
b訴外JRオリエンタルは,訴外KaeJinnとの間で,平成
15年2月28日付け(甲75)及び同年12月10日付け(甲7
6)各販売契約により,NECのミニCDプレーヤー,ポータブル
CDプレーヤー,卓上型CDステレオの販売に関して合意したが,
同訴外会社は,平成16年12月20日付の支払分よりロイヤルテ
ィの支払を停止した(甲73)。なお,甲75,甲76についても,
甲55の対象製品(ミニCDプレーヤー,ポータブルCDプレーヤ
ー,卓上型CDステレオ)との同一性からみて,それらと同一内容
の契約が成立していたものと認められる。
c訴外JRオリエンタルは,訴外DaJinTechnolo
gyとの間で,平成16年2月24日付け商標使用同意書(甲10
8)により,ポータブルCDプレーヤーの,訴外NgaiLik
との間で,同年4月25日付け製造委託契約等(甲106,10
7)により,CDステレオシステム(型番NCX-509,NCX
-311,NCX-126,NCX-208),CDポータブルプ
レーヤー(型番NCM32,NCM33)の,訴外香港得昌国際有
限公司との間で,同年8月5日付け(甲109)及び同年10月7
日付け(甲110)各製造委託契約により,VCD卓上型ステレオ
(型番NVD-266)及びDVDプレーヤー(型番ZE-200
1)の,訴外深圳得力電子製品工場との間で,同年8月5日付け製
造委託契約(甲111)により,VCD卓上型ステレオ(型番NV
D-266)の,訴外恵州市誠信電子工場(甲116)及び訴外深
圳市宏伍科信実業有限公司(甲115)との間で,同日付け各製造
委託契約により,DVDプレーヤー(型番ZE-2001),DV
D卓上型ステレオ(型番NDV-8033)の,訴外深圳市思岸実
業有限公司との間で,同月18日付け製造委託契約(甲113)に
より,VCD卓上型ステレオ用スピーカーセット(型番NVD-2
66)の,同訴外会社との間で,同年11月23日付け製造委託契
約(甲114)により,DVD卓上型ステレオセット(型番NDV
-8033)の,訴外琅琅デジタル科学技術有限公司(甲117)
及び訴外深圳市華海嘉実業有限公司(甲119)との間で,同年9
月24日付け製造委託契約により,デジタルレシーバーボックス
(型番NAT-5688)の,訴外深圳宝安西郷得力電子製品工場
との間で,同年10月7日付け製造委託契約(甲112)により,
DVDプレーヤー(型番ZE-2001)の,訴外濱生電子有限公
司との間で,同年11月23日付け製造委託契約(甲118)によ
り,DVD卓上型ステレオ用スピーカーセット(型番NDV-80
33)の各製造を委託した。
上記甲106,107,109~甲119の各契約書についても,
契約者の押印はないが,上記各契約書に記載された製品についてみ
ると,甲106(NCM-208,NCM33),甲107(NC
M-208,NCM33),甲110(ZE-2001),甲11
2(ZE-2001),甲114(NDV-8033),甲115
(ZE-2001,NDV-8033),甲116(ZE-200
1,NDV-8033),甲117(NAT-5688),甲11
8(NDV-8033),甲119(NAT-5688)において
は,前記起訴状に記載された型番と同一の型番であり,このほか,
甲109(NVD-266),甲111(NVD-266),甲1
13(NVD-266)についても,前記起訴状に記載された型番
NDV-266と同一である可能性があり,これらを全体としてみ
れば,上記各契約書と同一内容の契約が成立していたものと認める
のが相当である。また,甲108についても,前記協力契約(甲5
5)の対象製品(ポータブルCDプレーヤー)と製品が同一であり,
真正に成立したものと認められる。
d被告Aは,平成15年12月ころ,訴外NgaiLikの担当
者に対して訴外Bを紹介し,両者間で,NEC標章を付した製品の
製造,流通,販売に関して交渉が開始された。同被告は,その際,
訴外JRオリエンタルが,訴外NgaiLikに対して,上記行
為の権限を再許諾できる立場にある旨を伝え,また,同月4日ころ
には,訴外Bが,訴外JRオリエンタルと訴外KaeJinn間
の協力契約(甲55)をファクシミリ送信した。被告Aと訴外Ng
aiLikの担当者は,上記平成16年4月25日付け製造委託
契約(甲106)が締結される以前も,その内容について十分に議
論を行うなどした(甲330)。なお,被告らは,訴外Ngai
Likの陳述書(甲330)は信用できないと主張するが,同人に
おいて,被告Aについて,虚偽の事実を供述する理由を認めること
もできないから,上記被告らの主張を採用することはできない。
eなお,上記に製造委託されたDVDプレーヤーのうち,型番ZE
-2001のものは,従前,訴外NECビューテクノロジーが,O
EM方式により,製造業者に製造させていたCDプレーヤーの型番
と同じ型番であった。
③訴外FineFortune関係
a訴外JRオリエンタルは,訴外FineFortuneとの間
で,平成15年12月31日付けで,パソコン周辺機器であるペン
型シークレットICレコーダー,フラッシュメモリ,MP3プレー
ヤー,ウェブカメラ,パソコン用TVチューナボックス,パソコン
用スピーカー,イヤホン,マイク,延長コードについて,協力契約
(甲56)を締結するとともに,平成17年4月1日付けで,パソ
コン周辺機器であるペン型シークレットICレコーダー,フラッシ
ュメモリ,MP3プレーヤー,ウェブカメラ,パソコン用スピーカ
ー,イヤホン,マイク,延長コードについて,協力契約(甲57)
を締結したが,平成16年12月から,協力利潤金の支払を停止し
た(甲73)。
甲57は訴外JRオリエンタルと訴外FineFortune
の記名があるのみで,押印はない。しかし,台湾高雄県政府警察局
によって,平成17年12月20日,訴外FineFortun
eにおいて実施された捜索において,NEC標章を付したMP3ウ
ォークマンが発見されていること(甲353),台湾台中地方法院
平成22年6月30日刑事判決において,訴外JRオリエンタル及
び訴外FineFortuneは,NEC標章の使用について授
権されていないのに,同商標を付したMP3プレーヤーの偽造品を
製造,輸入,販売したと認定されていることにかんがみれば,上記
甲57と同一内容の契約が成立したと認めるのが相当である。
b訴外JRオリエンタルは,訴外Trulyとの間で,平成16年
5月25日付けで製造委託契約(甲120)により,MP3プレー
ヤー(型番NIC-M01(V),NIC-M04(V))の,訴
外Digitfabとの間で,平成16年7月13日付けで製造委
託契約(甲121)により,MP3プレーヤー(型番NIC-U0
1(H))の各製造を委託した。甲120,121についても訴外
JRオリエンタルと訴外Truly又は訴外Digitfabの記
名があるのみで,押印はないが,いずれも対象製品がMP3プレー
ヤーであって,協力契約(甲57)の対象製品に含まれるものであ
ること,それぞれの契約成立時期からみて,甲120,121と同
一内容の契約が成立したものと認められる。
④被告トーマジャパンは,訴外JRオリエンタル,並びに,同訴外会
社と協力契約を締結していた台湾の企業である訴外ChyauYe
uan,訴外KaeJinn及び訴外FineFortune等
に対し,同被告と訴外NECビューテクノロジー間の売買基本契約
(甲13)の解約後である平成16年1月20日付けで通知書(甲3
31)を送付し,同月28日午後2時に台北君悦ホテル行政階会議室
において,会議を開催する旨を通知した。
同通知書(甲331)によると,会議の趣旨は,NEC模倣品の法
的責任及び正当な販売権等を有する同被告を名乗って販売権を許諾す
る者の責任を追及することとされた。また,同通知書(甲331)で
は,同被告は,訴外NECビューテクノロジーから中国,台湾及び香
港において,NECのスピーカー,CD及びCDの関連製品,PC周
辺機器及びその付属品の独占販売権を授権されているところ,最近,
台湾市場において,同被告から合法的に授権されたと偽る製品が出回
っており,悪意のあるディーラーがその販売行為を助長し,合法的な
取次販売者の権益が侵害されていること,これらの販売者は合法的な
取次販売者から警告レターを受けたにもかかわらず,販売を続けてい
ること,今回の会議を招集する目的はこの行為を明らかにし,責任を
追及することになること,今回の会議は各社の権益に関わるので,是
非出席するようお願いすること,会議の決議事項については,同被告
は厳格に実行し,合法的な取次販売者の利益を保証すること等が説明
された。
平成16年1月28日に開催された上記会議では,被告A,訴外B,
台湾の上記3社の責任者等が出席し,NECから同被告への授権及び
訴外JRオリエンタルへの許諾が確認された(甲328)。また,訴
外KaeJinnの代表者であるGは,会議において,同被告に対
し,正規品と偽造品の区別に関連して,被告トーマジャパンが訴外N
ECビューテクノロジーから許諾を受けているCD及びCDの関連製
品の範囲について質問したが,同被告は,CDというだけで範囲の限
定はないとして,CDと呼ばれる製品はどれも含まれる旨を回答した
(甲332)。
⑤訴外JRオリエンタルは,平成16年7月29日,被告トーマジャ
パンに対して連絡文書(甲296)を送付し,台湾の訴外KaeJ
innが,同月30日,台湾大手チェーンストアを訪問し,NEC標
章を付した商品の販売促進を行う予定であるが,上記ストアは,以前
から,原告からの授権の合法性,正当性について疑問を抱いており,
面会の際に,関連契約が解約されたという業界内の風聞を打ち消す有
効な書類を提出するよう訴外KaeJinnに求めているので,同
被告において,原告との契約関係が存続している旨の証明書類を提出
するよう求めた。同被告は,これに応じ,同月29日付け声明文(甲
295)を作成の上,訴外JRオリエンタルに対してファクシミリ送
信した。同被告は,声明文(甲295)により,訴外NECビューテ
クノロジーから売買基本契約(甲13)について解消の申し入れを受
けているが,一方的なものであり,同被告が受諾していないので,従
前通り,許諾製品の製造及び販売を継続している旨を発表した。
なお,同月30日には,訴外JRオリエンタルにおいて会議が開か
れ,代表者である訴外B,役員である訴外Kらが出席して,①台湾の
業者が要求している授権証明書類について,②被告トーマジャパンに
対するライセンス料金の支払方法について協議した。このうち,①に
ついては,被告トーマジャパンが,声明文(甲295)をファクシミ
リ送信してきたので,訴外JRオリエンタルにおいて,台湾の業者3
社に更に送信するが,同3社は,訴外NECビューテクノロジーが正
式に作成した,契約が存続していることを証明する書類を要求してい
ることから,訴外Bにおいて,日本側である同被告にこの点に関して
伝達する旨を述べた。また,②については,訴外Bは,同被告の被告
Aとの間で若干の合意に達しているが,(a)ライセンスの合法性が確
保されること,(b)実施料収入総額から,税金(香港の税率は17.
25%),会社の管理・販売費用,配当金・ボーナス及び積立金(準
備金)を控除した額を,訴外JRオリエンタルと被告トーマジャパン
において各50%ずつ取得すること,(c)支払時期は原則として年度
を基準とすること等に留意しなければならない旨を述べた(甲72)。
⑥訴外盛業昌は,台湾の販売会社である訴外ChyauYeuan,
訴外KaeJinn及び訴外FineFortuneから,NE
C標章を付した商品のロイヤルティを,訴外JRオリエンタルのため
に台湾で受領していたが,このうち,訴外KaeJinnは,訴外
JRオリエンタルに対して,小切手でロイヤルティを支払っており,
当初,粗利益が4億台湾ドルに到達した際には,400万台湾ドルを
ロイヤルティとして支払っていた(甲312,320)。
⑦訴外Bは,被告トーマジャパンに対して「権利金」を支払っていた
が,訴外盛業昌の役員である訴外Kも,訴外Bから,被告Aに対する
ロイヤルティの支払をする旨聞いたことがあった。実際,訴外盛業昌
は,平成16年11月9日,被告トーマジャパンに対する「権利金」
として,300万新台湾ドル(台湾土地銀行から100万新台湾ドル,
華南商業銀行から200万新台湾ドル)を,敦化銀行敦化支店のE
(同人は,TOPWORLDの代表者であるCの妹である。)名義
の口座に送金したことがあった(甲298,312,320,32
8)。
なお,被告らは,上記送金は,訴外JRオリエンタルの訴外Cに対
する借入金の返済であると主張するが,訴外盛業昌(乙13)及び訴
外JRオリエンタル(乙14)が,平成16年11月19日に,訴外
Cから300万台湾ドルを借り入れた事実があったとしても,上記送
金により,同日,返済したこととなり,不自然であること,上記送金
伝票(甲298)は,右上部に「證二十」と記載され,台湾における
裁判手続に提出されたものであり,同手続における「JRオリエンタ
ルとトーマジャパンとの間におけるロイヤルティの振込資料は証拠二
十をご覧下さい。」(甲328)との訴外Bの証言とも整合している
こと,訴外JRオリエンタルの平成17年1月から同年3月までの試
算表(甲361)には,「権利金-(TOHMAJAPAN-NE
C)」として300万台湾ドルの支出が記載されていることからする
と,上記送金は,被告トーマジャパンに対するロイヤルティであった
と認めるのが相当であるから,上記被告らの主張を採用することはで
きない。
⑧なお,平成17年3月18日に,訴外JRオリエンタルにおいて経
営会議が開かれ,代表者の訴外B,副代表の訴外Kらが出席した。会
議において,業務面では,台湾の販売会社3社が,台湾NECから授
権の正当性を疑われ,平成16年12月から訴外JRオリエンタルに
対する協力利潤金の支払を停止したことや,香港の業者である訴外P
romediaが,ヨーロッパNECから授権の正当性を疑われ,平
成17年1月10日から協力利潤金の支払を停止したことから,対応
策を協議した。また,財務面では,被告トーマジャパンが,NECに
関する実施料を被告Aの口座に振り込むよう要求したとしてその対応
を協議したり,訴外JRオリエンタルの会計上の必要から,被告トー
マジャパンに実施料の領収書を作成してもらうこと(訴外Prome
diaが支払った93.75万米ドルの50%相当額)について,訴
外Bが処理すること等が協議された。
(イ)前提となる事実(11)イのとおり,台湾において,商標権者である原
告の許諾を得ずに,NEC標章を付した商品が製造販売されてきた(甲
100,313,336~339,344~346,354,355)。
そして,それらが被告ら,訴外JRオリエンタル及びその関係者以外の
者により製造販売された形跡は証拠上見当たらず,上記(ア)①ないし⑧
で認定した事実によれば,それらの商品は,被告らの関与の下で製造販
売されたものと認められる。
そして,上記商品に付されたNEC標章は,台湾における原告商標権
1又は2の商標の構成(原告商標権1,2の構成は同一である。)とそ
の構成が同一であると認められる。
イ上記アで認定した事実及び前記第3,2(2)で認定した事実によれば,
被告らは,遅くとも被告トーマジャパンが訴外JRオリエンタルに対し製
造許諾書(甲48)を交付した平成16年1月1日以降は,被告らにNE
C標章の使用許諾権限がないことを知りながら,訴外B及び訴外JRオリ
エンタルに対する商標の使用許諾を行い,さらに訴外B及び訴外JRオリ
エンタルも同じく,被告トーマジャパンにはNEC標章の使用許諾権限が
ないことを知りながら,台湾の各企業に対するNEC標章の再使用許諾を
行い,これらにより,被告ら並びに訴外B及び訴外JRオリエンタルは共
同して,故意に,台湾の製造業者にNEC標章を付した商品を製造販売さ
せて,これらにより協力利潤金名下に利益を得たものであって,これらの
行為は,(3)で検討する,製造販売された商品が原告の台湾における商標
権を侵害するものとみなされる限りにおいて(台湾商標法29条,62
条),商標権侵害行為に該当し,被告らは,訴外B及び訴外JRオリエン
タルとともに,共同不法行為者として連帯して損害賠償責任を負うものと
認めるのが相当である(台湾商標法61条1項,2項,台湾民法184条
1項前段,185条1項前段)。
(3)台湾における原告商標権の指定商品と,被告らが製造販売した製品の類否
について
台湾では,前記のとおり,登録商標の指定商品と,同一の商品について,
登録商標と同一の商標を使用しようとする者,又は,指定商品と,類似の商
品について,登録商標と同一であり,そのため,関係消費者に混同を生じさ
せるおそれがある商標を使用しようとする者であって,商標権所有者の同意
を得ていない者は,商標権を侵害したことになる(台湾商標法61条2項,
29条1項1号,2号,甲138)旨定められているので,原告商標権の指
定商品と,原告が主張する台湾における被告ら関与商品との類否について検
討する。
ア前提となる事実(2)イ(ア),(イ)のとおり,台湾における原告商標権の指
定商品(第86類,第9類)は,スピーカー,レーザーレコード,サラウ
ンド増幅器,カラーテレビ受像機,パソコン用キーボード,パソコン用マ
ウス,CDプレーヤー,電子調節器,オーディオ,カメラ及びカメラ機材,
高品位テレビ及びラジオ受信機,電気コイルであるところ,原告が主張す
る台湾における被告ら関与商品のうち,スピーカー(ホームシアター用ス
ピーカー,スピーカーセット,アルミスピーカーセット,VCD卓上型ス
テレオ用スピーカー,DVD卓上型ステレオ用スピーカーセット,パソコ
ン用スピーカー)は,上記指定商品のスピーカーと同一の商品と認められ,
この点については,当事者間においても争いはない。
イ原告が主張する被告ら関与商品のうち,アンプは,上記指定商品である
サラウンド増幅器と機能において類似し,双方について,同一の営業主に
より製造販売されることが多いことからすると,これらの被告ら関与商品
にNEC標章を付すと,商標権者である原告の製造または販売にかかる商
品であると誤認されるおそれがあると認められる。したがって,上記被告
ら関与商品は,上記指定商品であるサラウンド増幅器と類似する商品と認
めるのが相当である(被告らは,この点を争うが,上記のとおり認めるの
が相当である。)。
ウ原告が主張する被告ら関与商品のうち,CDプレーヤー(ミニCDプレ
ーヤー,ポータブルCDプレーヤー,CDポータブルプレーヤー)は,上
記指定商品であるCDプレーヤーと同一の商品と認められる。
エ原告が主張する被告ら関与商品のうち,ステレオ(ホームシアターステ
レオ,VCDステレオシステム,卓上型CDステレオ,CDステレオシス
テム,DVD卓上型ステレオセット,DVD卓上型ステレオ),DVDプ
レーヤー,ペン型シークレットICレコーダーは,上記指定商品であるオ
ーディオと機能において同一又は類似し,双方について,同一の営業主に
より製造販売されることが多いことからすると,これらの被告ら関与商品
にNEC標章を付すと,商標権者である原告の製造または販売にかかる商
品であると誤認されるおそれがあると認められる。したがって,上記被告
ら関与商品は,上記指定商品であるオーディオと類似する商品と認めるの
が相当である。
オ原告が主張する被告ら関与商品のうち,デジタルテレビ調節器は,上記
指定商品である電子調節器と同一の商品と認められる。
カ原告が主張する被告ら関与商品のうち,ウェブカメラは,上記指定商品
であるカメラ及びカメラ機材と同一の商品と認められる。
キ原告が主張する被告ら関与商品のうち,MP3プレーヤー(フラッシュ
メモリMP3プレーヤーを含む。),マイク,ヘッドホンは,上記指定商
品であるオーディオの周辺機器として,オーディオとともに使用され,双
方について,同一の営業主により製造販売されることが多いことからする
と,これらの被告ら関与商品にNEC標章を付すと,商標権者である原告
の製造または販売にかかる商品であると誤認されるおそれがあると認めら
れる。したがって,上記被告ら関与商品は,上記指定商品であるオーディ
オと類似する商品と認めるのが相当である。
ク原告が主張する被告ら関与商品のうち,デジタルレシーバーボックス,
パソコン用TVチューナーボックスは,上記指定商品である高品位テレビ
及びラジオ受信機と同様に,テレビ受信機等として機能しており,これら
の被告ら関与商品にNEC標章を付すと,商標権者である原告の製造また
は販売にかかる商品であると誤認されるおそれがあると認められる。した
がって,上記被告ら関与商品は,上記指定商品である高品位テレビ及びラ
ジオ受信機と類似する商品と認めるのが相当である。
ケ原告が主張する被告ら関与商品のうち,延長コードは,上記指定商品と
同一の商品ではなく,NEC標章を付しても,商標権者である原告の製造
または販売にかかる商品であると誤認されるおそれがあるとは認められな
いから,上記指定商品と類似する商品でもないというべきである。
(4)侵害となる製造販売行為及び被告らの得た利益(為替レート新台湾ドル
=3.32円で換算)
以上によれば,被告らの共同不法行為(委託を受けて製造販売した企業の
行為を含む)により製造販売されたNEC標章を付した商品のうち,平成1
6年1月1日から平成20年10月31日までの間に製造販売された(台湾
における原告商標権1,2の有効期間は,平成10年11月1日又は平成1
5年2月16日から平成20年10月31日までである。)スピーカー(ホ
ームシアター用スピーカー,スピーカーセット,アルミスピーカーセット,
VCD卓上型ステレオ用スピーカー,DVD卓上型ステレオ用スピーカーセ
ット,パソコン用スピーカー),CDプレーヤー(ミニCDプレーヤー,ポ
ータブルCDプレーヤー,CDポータブルプレーヤー),DVDプレーヤー,
ペン型シークレットICレコーダー,デジタルテレビ調節器,ウェブカメラ,
MP3プレーヤー(フラッシュメモリーMP3プレーヤーを含む。),マイ
ク,ヘッドホン,デジタルレシーバーボックス,パソコン用TVチューナー
ボックスは,台湾における原告商標権を侵害する不法行為ということになる。
ア訴外ChyauYeuan関係
前提となる事実(9)アによれば,訴外ChyauYeuanは,平成
15年10月1日から平成19年4月30日までの間に,製造委託契約に
基づいて台湾における原告商標権1,2の侵害品であるNEC標章を付し
たホームシアター用スピーカー,アンプリファイア,マイクを製造販売し,
その協力利潤金として,訴外JRオリエンタルに対し,一部返還された小
切手分を除いて,平成15年10月1日から平成16年2月6日までの間
に,合計138万台湾ドル(日本円に換算して,3.32円×138万=
458万1600円のうち,原告主張額である457万9364円)を支
払った。
なお,訴外ChyauYeuanが製造販売した製品の中には,一部
訴外JRオリエンタルを通じて台湾以外の地域の工場で製造した製品があ
ると認められるが,訴外ChyauYeuanは,製造した製品を訴外
JRオリエンタルに販売していたものと認められるので,その販売行為が
商標権侵害行為となる。
イ訴外KaeJinn関係
前提となる事実(9)イによれば,訴外KaeJinnは,平成15年
12月10日から平成20年2月28日までの間に,製造委託契約に基づ
いて台湾における原告商標権1,2の侵害品であるNEC標章を付したポ
ータブルCDプレーヤー,CDステレオシステム,CDポータブルプレー
ヤー,VCD型卓上ステレオ,DVDプレーヤー,DVD型卓上ステレオ,
VCD卓上型ステレオ用スピーカーセット,デジタルレシーバーボックス
を製造販売した。もっとも,KaeJinnと訴外JRオリエンタルと
の協力契約及び販売契約における対象製品は,ミニCDプレーヤー,ポー
タブルCDプレーヤー,卓上型CDステレオとされており,この対象製品
を超える製品が製造販売されているが,協力契約3条においては,対象製
品以外の関連する製品が販売されたときは,訴外KaeJinnが優先
的販売権を有するものとされており,この条項に基づいて,当初の契約対
象製品が拡張されたものと認められる。また,協力契約に基づいて訴外J
Rオリエンタルが製造を委託した製品は,中国や香港の企業で製造された
ものであるが,その販売は訴外KaeJinnから訴外JRオリエンタ
ルに対してしたものと認められるから,その販売行為が商標権侵害行為と
なる。訴外KaeJinnは,平成15年12月10日から平成16年
12月20日支払分以降の支払を停止するまで,訴外JRオリエンタルに
対し協力利潤金として合計262万新台湾ドル(日本円に換算して,3.
32円×262万=869万8400円のうち,原告主張額である869
万4156円)を支払った。
ウ訴外FineFortune関係
前提となる事実(9)ウによれば,訴外FineFortuneは,平
成15年12月31日から平成19年3月31日までの間に,製造委託契
約に基づいてMP3プレーヤーの製造販売をし(台湾における原告商標権
1,2の侵害とならない延長コードは,協力契約の対象製品とはなってい
るが,実際に製造委託された商品はMP3のみである。),平成16年末
までに,訴外JRオリエンタルに対し,協力利潤金として合計240万新
台湾ドル(日本円に換算して,3.32円×240万=796万8000
円のうち,原告主張額である796万4112円)を支払った。
協力契約に基づいて訴外JRオリエンタルが製造委託した企業の中には
香港の企業があるが,その販売は訴外FineFortuneから訴外
JRオリエンタルに対してしたものと認められるから,その販売行為が商
標権侵害行為となる。
(5)損害額
訴外JRオリエンタルは,上記(4)のアないしウの合計額である2123
万7632円の協力利潤金を受け取っているが,仮に,被告ら並びに訴外B
及び訴外JRオリエンタルの共同不法行為がなければ,原告は被告らがいわ
ばその道具として使用した製造業者らにNEC標章の使用を許諾することに
より,同額の利益を得ることができたものと認められる。したがって,台湾
民法184条1項前段,185条1項前段により,訴外JRオリエンタルが
受領した金額と同額2123万7632円が被告らの共同不法行為による原
告の逸失利益(損害額)と認められる。
原告は,台湾においては,実務上,侵害商品の小売価格単価の500倍か
ら1500倍までの金額を損害額とする旨の損害推定条項により損害が推定
されている(台湾商標法63条1項3号。甲138)として,主位的に,侵
害商品の小売価格単価の1500倍の金額と算定される合計10億2578
万0280円をもって,原告の被った損害と推定されると主張するが,本件
において,偽造品の範囲や,乗数として1500を選択する合理性について
は,必要な主張立証がなされているとはいえない。したがって,原告の上記
主張を採用することはできない。
(6)小括
以上により,原告は,被告らに対し,被告らの連帯債務として,台湾商標
法29条2項1号,2号,61条1項,2項,62条,台湾民法184条前
段,185条前段により2123万7632円の損害賠償を請求することが
できる。
6日本法における商標権侵害行為に基づく損害賠償請求の成否
被告ら並びに訴外B及び訴外JRオリエンタルによる行為は,我が国商標
法37条の商標権侵害行為であって,共同不法行為として民法709条,7
19条により上記5と同額の連帯責任による損害賠償債務を負う。
7台湾についての結論
以上により,被告らは,連帯して,原告に対し2123万7632円の損
害賠償義務を負う。
8香港における商標権侵害に基づく損害賠償請求の成否
(1)香港における商標権侵害行為に基づく損害賠償請求についての法制
香港商標条例18条は,何人も,商標が登録されている商品又はサービ
スと同一の商品又はサービスに関して,商標と同一の標識を業として使用
する場合は,登録商標を侵害する(1項),何人も商標が登録されている
商品又はサービスと類似の商品又はサービスに関して,商標と同一の標識
を業として使用する場合,かつ,当該商品又はサービスに関する標識の使
用が,公衆の間に混同を生じさせる虞のある場合には登録商標を侵害する
(2項)と定めている(甲142)。
そして,登録商標所有者は,商標権侵害行為について損害賠償請求をす
ることができる(香港商標条例22条。甲142)。
また,香港においては,コモンローに基づき,共同で不法行為を行った
共同不法行為者は連帯して損害賠償責任を負う(甲349)。
(2)香港における侵害行為③の成否
ア前提となる事実に加え,各別に掲げる証拠及び弁論の全趣旨によれば,
次の各事実が認められる。
(ア)訴外JRオリエンタルによる協力契約及び製造委託契約の締結,並
びに被告トーマジャパンによる関与
前提となる事実(10)のとおり,訴外JRオリエンタルは,次の香港
に所在する各企業との間で,NEC標章を付した製品の協力開発,販
売について,協力契約等を締結するとともに,当該製品の製造につい
て,製造会社との間で製造委託契約等を締結した。また,被告トーマ
ジャパンは,次のとおり,製造業者のために,製造許諾書等を作成し
たり,交渉に関与する等した。なお,同被告及び訴外JRオリエンタ
ルは,いずれも,NEC標章の使用許諾については,何らの権利を有
していなかった。
①訴外JRオリエンタルは,訴外Promediaとの間で,平成1
5年12月10日付けで,DVD-R/RW/RAM,CDR/RW,
FDについて,協力契約(甲58)を締結するとともに,平成17年
2月1日付けで,DVD-R/RW/RAM,CDR/RW,FD,
MP3,CD及びCD関連製品,コンピュータ周辺機器について,協
力契約(甲59。ただし,その名称は「確認契約書」とされてい
る。)を締結した。ただし,甲58の協力契約における協力期間につ
いては,50日間の前置期間が含まれるとされており(1条),実際
に製造販売が開始されたのは,平成16年1月1日以降のことである
と認められる。
②訴外JRオリエンタルは,訴外Takahashiとの間で,平成
15年12月10日付け(甲60)及び平成17年4月1日付け(甲
61)で,DVD-R/RW/RAM,CDR/RW,FDについて,
協力契約を締結するとともに,同訴外会社に対し,平成16年6月1
日付けで,権限委任状(甲77)を発行し,CDR/RW,DVD+
R/-R/+RW/-RW及びそれらの付属品を含む訴外JRオリエ
ンタル製の未使用記録媒体製品の独占的授権販売店に指定した。甲6
0の協力契約による製造販売が実際に開始されたのが平成16年1月
1日以降と認められることは上記①と同様である。
③訴外JRオリエンタルは,訴外OptodiscTechnol
ogyCorporationとの間で,平成16年3月10日付
け製造委託契約(甲122)及び同月15日付け委託製造書(甲12
4)により,DVD-RW/DVD+RWの,訴外UmeDisc
Ltd.との間で,平成16年3月10日付け製造委託契約(甲12
3)により,DVD+/-Rの,訴外CMCMagnetics
Corporationとの間で,平成16年5月1日付けで委託製
造書(甲125)により,を交付し,NECブランドのDVD-R/
DVD+Rの,訴外FMCとの間で,平成16年3月10日付けで製
造委託契約(甲126)により,CD-R/CD-RWの,訴外Da
taFactoryLtd.との間で,平成16年5月18日付
けで製造委託契約(甲127)により,CDウォレット,パッキング
CDR/DVDRの,訴外TRI-BESTTECHNOLOGY
LTDとの間で,平成17年4月22日付け製造委託契約(甲12
8)により,録音ディスクの製造を委託し,このうち,訴外Opto
disc,同DataFactory,同TRI-BESTは台湾
又は中国の製造業者と認められるが,それらの製造委託された製品は,
香港において訴外Promedia及び訴外Takahashiから
訴外JRオリエンタルに販売されているから,香港での商標権侵害行
為と認められる。
上記甲58ないし61についても,契約書には訴外JRオリエンタ
ルと訴外Promedia又は訴外Takahashiの記名がある
のみで,押印はない。しかし,被告Aは,NEC標章を付した商品の
製造販売を企画し,実際に下請業者のTONICにNEC標章を付し
たCDプレーヤーZE-2001を7000台製造させ,香港の大平
物流(香港)有限公司に販売したと陳述している(甲132)。また,
訴外Bも東京地裁平成17年(ワ)第17078号事件の本人尋問にお
いて,訴外JRオリエンタルが香港でNEC標章を付したMP3を販
売していたと供述している。加えて,本件原告及び訴外NECビュー
テクノロジーを原告とし,訴外Takahashiらを被告とする香
港特別行政区高等法院の平成18年12月4日判決は,訴外Taka
hashiらに損害賠償の支払いを命じているが,これは原告の商標
権侵害を理由とするものと推認される。
これらの事情及び前記中国及び台湾とほぼ同一内容の契約書である
ことに照らすと,甲58ないし61と同一内容の契約が成立したもの
と認めることができる。
また,甲121ないし128についても,訴外JRオリエンタルと
委託先企業の記名があるのみで押印はないが,甲58ないし61の協
力契約書等における対象製品(DVD-R/RW/RAM,CDR/
RW,FLOPPYDISK,NECのMP3,NECのCD及び
CD関連製品,NECのコンピュータ周辺機器)と甲121ないし1
28において訴外JRオリエンタルが製造を委託した製品(MP3プ
レーヤー,DVD-RW/DVD+RW,DVD+/-R,CD-R
/CD-RW,CDWallet/PackingCDR&D
VDR,RecordableDisc)とは内容が一致してい
ることや,協力契約と製造委託契約の先後関係からみて,各製造委託
契約書と同一内容の契約が成立したものと認められる。
(イ)前提となる事実(11)ウのとおり,香港において,商標権者である原告
の許諾を得ずに,NEC標章を付した商品が製造販売等されてきた。そ
して,それが被告ら,訴外JRオリエンタル及びその関係者以外の者に
より製造販売された形跡は証拠上見当たらず,上記aないしcで認定し
た事実によれば,それらの製品は,被告らの関与の下に製造販売された
ものと認められる。
そして,前記中国,台湾において付されたNEC標章の態様及び甲3
84によれば,香港において,上記商品に使用されたNEC標章は香港
における原告商標権の商標とその構成が同一であると認められる。
イ上記アで認定した事実及び前記第3,2(2)で認定した事実によれば,
被告らは,遅くとも被告トーマジャパンが訴外JRオリエンタルに対し製
造許諾書(甲48)を交付した平成16年1月1日以降は,被告らにはN
EC標章の使用権限がないことを知りながら,訴外B及び訴外JRオリエ
ンタルに対するNEC標章の使用許諾を行い,さらに訴外B及び訴外JR
オリエンタルも同じく,被告トーマジャパンにはNEC標章の使用許諾権
限がないことを知りながら,香港の各企業に対するNEC標章の使用許諾
を行い,これらにより,被告ら並びに訴外B及び訴外JRオリエンタルは
共同して,故意に,香港の製造業者にNEC標章を付した製品を製造販売
させて,これらにより協力利潤金名下に利益を得たものであって,これら
の行為は,(3)で検討する,製造販売された商品が香港における商標権を
侵害する限りにおいて,商標が登録されている商品又はサービスと同一又
は類似の商品又はサービスについて,商標と同一の標章を業として使用し,
かつ,当該商品又はサービスに関する標章の使用が公衆の間に混同を生じ
させる虞がある場合として,香港における原告商標権(登録日平成11年
3月9日,有効期限平成28年3月9日)を侵害する行為といえる(香港
商標条例18条1項,2項)。したがって,被告らは,訴外B及び訴外J
Rオリエンタルとともに,共同不法行為者として連帯して損害賠償責任を
負うものと認めるのが相当である(香港商標条例22条及びコモンロー)。
(3)香港における原告商標権の指定商品と,被告らが製造販売した製品の類否
について
香港における原告商標権の指定商品と,原告が主張する香港における被告
ら関与商品との類否について検討する。
ア前提となる事実(2)ウ(ア)のとおり,香港における原告商標権の指定商品
(第9類)は,電気装置・機器及び電子装置・機器,データ受信,送信,
記憶,中継及び入出力のための電気装置・機器及び電子装置・機器,コン
ピュータ周辺機器及び端末機,CDROMドライブ,光ディスク・プレ
ーヤー,コンパクト・ディスク・プレーヤー,光学装置・機器,音声及び
映像の記録,中継,複製のための装置,磁気データ記憶媒体,録音ディス
ク,デジタル・ビデオ・イメージ・ディスク及び光ディスクであるところ,
原告が主張する香港における被告ら関与商品のうち,DVD-R(DVD
-R,DVD+R,DVD-RW,DVD+RW,DVD-RAM),C
D-R(CD-R,CD-RW),パッケージングCD-R/DVD-R,
録音ディスクは,上記指定商品である録音ディスク,デジタル・ビデオ・
イメージ・ディスク及び光ディスクと同一の商品と認められ,この点につ
いては,当事者間においても争いはない。
イ原告が主張する被告ら関与商品のうち,スピーカーは,上記指定商品で
あ電気装置・機器と同一の商品と認められる(被告らは,この点を争うが,
上記のとおり認めるのが相当である。)。
ウ原告が主張する被告ら関与商品のうち,CDプレーヤーは,上記指定商
品であるコンパクト・ディスク・プレーヤーと同一の商品と認められる。
エ原告が主張する被告ら関与商品のうち,フロッピーディスクは,上記指
定商品である磁気データ記憶媒体と同一の商品と認められる。
オ原告が主張する被告ら関与商品のうち,MP3プレーヤーは,コンピュ
ータを経由してデータを入力する等,コンピュータと接続することを前提
とする商品であるから,上記指定商品のコンピュータ周辺機器と同一の商
品と認められる(被告らは,この点を争うが,上記のとおり認めるのが相
当である。)。
(4)侵害となる製造販売行為及び被告らの得た利益(為替レート1米国ドル=
107円で換算)
以上によれば,被告らの共同不法行為(委託を受けて製造販売した企業の
行為を含む)により製造販売されたNEC標章を付した商品のうち,平成1
6年1月1日から本件口頭弁論終結時までの間に製造販売された(香港にお
ける原告商標権の有効期間は,平成11年3月9日(又は平成12年2月2
1日)から平成28年3月9日までである。)DVD-R(DVD-R,D
VD+R,DVD-RW,DVD+RW,DVD-RAM),CD-R(C
D-R,CD-RW)は,香港における原告商標権を侵害する不法行為とい
うことになる。
そして,前提となる事実(10)ア,イによれば,訴外Promediaは,
平成16年末までに,訴外Promedia及び訴外Takahashiの
協力利潤金93万7500米国ドル(日本円に換算して,107円×93万
7500=1億0031万2500円)を,訴外JRオリエンタルに支払っ
たが,平成17年1月10日支払分より,支払を停止した(甲73)。
(5)損害額
訴外JRオリエンタルは,上記(4)の1億0031万2500円の協力利
潤金を受け取っているが,仮に,被告ら並びに訴外B及び訴外JRオリエン
タルの共同不法行為がなければ,原告は,被告らがいわばその道具として使
用した製造業者らにNEC標章の使用を許諾することにより,同額の利益を
得ることができたものと認められる。したがって,香港商標条例18条1項,
2項,22条,コモンローにより,訴外JRオリエンタルが受領した金額と
同額の1億0031万2500円が被告らの共同不法行為による原告の逸失
利益(損害額)と認められる。
(6)小括
以上により,原告は,被告らに対し,被告らの連帯債務として,香港商標
条例18条1項,2項,22条,コモンローにより,1億0031万250
0円の損害賠償を請求することができる。
9日本法における商標権侵害行為に基づく損害賠償請求の成否
被告ら並びに訴外B及び訴外JRオリエンタルによる行為は,我が国の商標
法37条の商標権侵害行為であって,共同不法行為として民法709条,71
9条により上記8と同額の連帯責任による損害賠償債務を負う。
10香港についての結論
以上により,被告らは,連帯して,原告に対し1億0031万2500円の
損害賠償義務を負う。
11侵害行為①,②についての判断の要否
原告は,侵害行為③による損害を損害についての主位的主張とし,侵害行為
①により生じた損害を損害についての二次的主張,侵害行為②により生じた損
害を損害についての三次的主張としており,これは,結局のところ,侵害行為
③による損害賠償請求を主位的請求とし,その他の請求を予備的請求とするも
のにほかならない。
そして,後記のとおり,侵害行為③により被告らが負うべき損害賠償義務の
額は2億3735万7332円となるところ,原告が第二次的な損害として主
張する侵害行為①による損害については,原告が利益額を16%として算出し
ているが,原告がその根拠として挙げる甲149,323を参照しても,利益
額はせいぜい10%にとどまると考えるのが相当であり,そうすると,原告の
主張する売上額19億6243万1977円の全額が認められたとしても,そ
の利益額は1億9624万3197円にとどまり,上記侵害行為③による損害
額を下回る。したがって,侵害行為②について判断する必要はない。また,侵
害行為②による損害額として原告が主張する額は1億1930万6730円で
あるところ,この額は,上記侵害行為③による損害額を下回っているから,侵
害行為②についても判断する必要がない。
12被告Aに対する請求について
(1)中国
ア中国の弁護士作成の宣誓書(甲352)によれば,会社の代表者による
行為が,通常の業務としての基準及び理解を超えている場合(とりわけ,
当該代表者が,個人的な利益のために,会社の口座を通してではなく,自
らの口座を通して第三者から金銭を直接受け取った場合など),そのよう
な行為は代表者の個人的な行為とみなされる可能性があるとされる。そし
て,代表者が個人責任を負う要件とされる「通常の業務としての基準及び
理解を超えている場合」場合として,個人的な利益のために第三者から金
銭を直接受け取った場合が例示されているものの,それ以外にどのような
場合がそれに該当するかは明らかでない。
しかし,中華人民共和国最高裁判所の判決には,取引相手方会社の金銭
を横領した事案について,会社の取引上の地位に取って代わり,不当に経
営利益を獲得したものとして損害賠償を認めたものがある(甲393)。
そうすると,中国においては,上記例示されているような事案について,
会社の代表者の行為が「通常の業務としての基準及び理解を超えている場
合」として,代表者が個人責任を負う場合であるとの法解釈が存在するも
のということができる。
イこれを本件についてみると,被告Aは,前記2ないし10のとおり,原
告から被告トーマジャパンに各国におけるNEC商標権の使用権限が許諾
されていないことを知りながら,訴外JRオリエンタルに商標の使用を許
諾するなどして原告に損害を被らせたものであって,その行為は,正常な
取引活動の枠を大きく外れ,「通常の業務としての基準及び理解を超えて
いる場合」として,中国法上,原告に対し,個人としての損害賠償責任を
負うものと解される。
ウそうすると,被告Aは,中国法に基づいて,原告に対し,共同不法行為
者として,被告トーマジャパンと同額の損害賠償責任を負う(中国民法通
則130条)。
(2)台湾
ア台湾会社法23条2項には,「法人責任者が,職務遂行の過程において
適用法例に違反し,第三者に損害を与えた場合,かかる法人責任者は,
かかる第三者が負った損害につき連帯して責任を負う」と定められてい
る(甲141)。
イ被告Aは,被告トーマジャパンの「法人責任者」に該当するものと解
され,被告トーマジャパンによるNEC標章を付した製品の製造販売とい
う職務遂行の過程において,台湾商標法29条2項1号,2号,62条に
違反し,正常な取引活動を逸脱し,第三者である原告に損害を与えたもの
である。したがって,被告は,台湾法上,個人としての損害賠償責任を負
う。
ウそうすると,被告Aは,台湾法に基づいて,原告に対し,共同不法行為
者として,被告トーマジャパンと同額の損害賠償責任を負う(台湾民法1
85条1項前段)。
(3)香港
ア香港では,コモンロー上,取締役は,企業の組織統制を逸脱した個人の
参加又は関与により第三者に損害を与えた場合には,取締役は企業と連帯
して損害賠償責任を負うものと解されている(甲349,394,39
5)。
イ被告Aは,トーマジャパンの代表取締役であり,被告Aがした前記2な
いし10の行為は,企業の組織統制を逸脱した個人の参加又は関与である
と認められる。
ウそうすると,被告Aは,香港コモンローに基づいて,原告に対し,共同
不法行為者として,被告トーマジャパンと同額の損害賠償責任を負う。
(4)原告は,被告Aの行為が我が国法上の注意義務(会社法330条,民法6
44条及び会社法355条)に違反すると主張する。これは,これらの注意
義務の違反により,第三者である原告に対する損害賠償義務を負うというも
のであるから,その実質は,会社法429条に定める取締役の第三者責任
(同法が施行された平成18年5月1日より前の行為については,平成17
年法律第87号による改正前の商法266条の3)を主張するものと解され
る。そして,前記被告Aの行為は,取締役がその職務を行うについて悪意又
は重大な過失に基づいて行われたものであって,被告Aは,上記会社法42
9条又は商法266条の3に基づいて,原告に対し,上記2ないし10で認
定した額と同額の損害賠償責任を負い,被告トーマジャパンとの共同不法行
為者として連帯責任を負うものと解される(民法709条,719条)。そ
して,この点は,訴外JRオリエンタルの代表者であるBについても同様と
解される。
(5)以上によれば,被告Aは,原告に対し,被告トーマジャパンと連帯して2
億3735万7332円の損害賠償義務を負う。
13費用について
(1)中国商標法56条1項は,「商標使用の排他権を侵害する賠償の額は侵
害者が侵害期間中に侵害によって受けた利益又は被侵害者が侵害された期間
中に侵害によって被った損害とする。前記の損害は,被侵害者が侵害行為を
差し止めるために支払った適正な支出を含む。」とされている(甲133)。
そして,最高人民法院審判委員会の「商標に関する民事紛争案件における審
理の適用される法律に関する若干の問題について」17条1項(甲151)
では,「商標法56条1項に規定する,権利侵害行為の制止のために支払う
合理的な支出には,権利者又は委託代理人が権利侵害行為に対して調査し,
証拠を収集するための合理的な費用を含む。」とされている。台湾「法律又
は契約上別段の定めのない限り,損害賠償の範囲は,現実に被った損害又は
逸失利益に限定される。」(台湾民法216条。甲140),「損害賠償請
求は,民法216条の規定に従ってすることができる。」(台湾商標法63
条1項)とされている。ここにいう現実に被った損害には,不法行為と相当
因果関係のある費用も含むと解するのが合理的である。香港高等法院規則4
A章命令62は,費用に関して裁判所が裁量権を行使するとしている。これ
らの各規定等によれば,中国,台湾,香港の各国法等により,商標権侵害に
より登録商標権者が支出した調査費用,弁護士費用等の費用についても,相
当な範囲で損害賠償の範囲に含まれるものとされていると解される。
そして,本件訴訟の経緯及び甲第152号証ないし甲第281号証によれ
ば,相当と認められる費用の額は,上記8ないし10で認定した損害賠償額
の総額2億3735万7332円の約1割に当たる2300万と認められる。
(2)そして,本件において,我が国の民法で認められる弁護士費用,調査費
用等の額は,被告らの不法行為と相当因果関係の範囲内にある損害であって,
上記(1)と同じく,2300万円と認めるのが相当である。
そして,これらの費用についても,被告トーマジャパンと被告Aは,既に
判断した各国等法及び日本法に基づいて連帯して損害賠償責任を負う。
14総括
以上をまとめると,被告らは,連帯して原告に対し,中国,台湾及び香港の
損害額の合計である2億6035万7332円の損害賠償支払義務を負う。
遅延損害金については,各国等法におけるその根拠を見出すことができない
ので付さないこととする。
第4結論
以上により,原告の請求は,被告らに対し,連帯して2億6035万733
2円の支払を求める範囲で理由があるから,その限度で認容し,その余の請求
は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官大須賀滋
裁判官菊池絵理
裁判官坂本三郎は,転官により,署名押印することができない。
裁判長裁判官大須賀滋
(別紙)
商標権目録
1中国における商標権(甲31)
登録番号第1533916号
指定商品第9類
(コンピュータ)キーボード,レーザーディスクプレーヤー,サ
ラウンド増幅器,コンピュータ周辺機器
(以上,31の翻訳による。)
期間平成13年3月7日から平成23年3月6日まで
商標権者原告
商標の構成は,商標権目録別紙記載1のとおりである。
2台湾における商標権(甲32,405)
(1)登録番号連合商標登録番号第00691680号
(正商標番号第00008530号)
有効期間平成10年11月1日から平成20年10月31日まで
指定商品台湾商標法施行細則第24条第86類
スピーカー,レーザーレコード,サラウンド増幅器,カラーテ
レビ受像機(以上,甲32の翻訳による。なお,原告は,指定
商品にレコーダーがあると主張するが,これを認めるに足りる
証拠はない。)
商標権者原告
商標の構成は,商標権目録別紙記載2(1)のとおりである。
(2)登録番号連合商標登録番号第01033243号
(正商標番号第00008530号)
有効期間平成15年2月16日から平成20年10月31日まで
指定商品台湾商標法施行細則第49条第9類
パソコン用キーボード,パソコン用マウス,CDプレーヤー,
電子調節器,オーディオ(以上,甲405の翻訳による。),
カメラ及びカメラ機材,高品位テレビ及びラジオ受信機,電気
コイル(以上,原告第11準備書面添付の別紙の翻訳によ
る。)
商標権者原告
商標の構成は,商標権目録別紙記載2(2)のとおりである。
3香港における商標権(甲33,406)
登録番号第200003111AA号
登録日平成11年3月9日
(実際の登録日は,平成12年2月21日)
有効期限平成28年3月9日
指定商品第9類
電気装置・機器及び電子装置・機器,データ受信,送信,記憶,
中継及び入出力のための電気装置・機器及び電子装置・機器,コ
ンピュータ周辺機器及び端末機,CDROMドライブ,光ディ
スク・プレーヤー,コンパクト・ディスク・プレーヤー,光学装
置・機器,音声及び映像の記録,中継,複製のための装置,磁気
データ記憶媒体,録音ディスク,デジタル・ビデオ・イメージ・
ディスク及び光ディスク(以上,甲406の翻訳による。)
商標権者原告
商標の構成は,商標権目録別紙記載3のとおりである。

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