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平成15年(ワ)第2644号 損害賠償請求事件
口頭弁論終結日 平成17年1月24日
判      決
     原      告    アビリット株式会社
     訴訟代理人弁護士    大場正成
同尾崎英男
同嶋末和秀
同飯塚暁夫
     被      告    有限会社リックコーポレーション
     訴訟代理人弁護士   杉本進介
主      文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は,原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
 被告は,原告に対し,金5875万円及びこれに対する平成15年2月19
日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は,原告が被告に対し,被告によるパチスロ遊技機の製造販売が原告の
有する後記特許権の専用実施権の侵害に当たるとして,不法行為に基づく損害賠償
(訴状送達日の翌日からの民法所定年5分の割合による遅延損害金を含む。)を求
めた事案である。
1 争いのない事実
(1) 当事者
 原告は,パチスロ遊技機,パチンコ遊技機関連製品等の製造及び販売等を
目的とする株式会社である。
 被告は,パチスロ遊技機を含む遊技機の製造及び販売等を目的とする有限
会社である。
(2) 原告の特許権
 原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,その特許請求の範囲の
請求項1記載の発明を「本件発明」という。)の専用実施権(以下「本件専用実施
権」という。)を有する。
特許番号        特許第2126128号
発明の名称       スロツトマシン
出願日         昭和60年11月27日
特許権設定登録日    平成9年1月28日
特許請求の範囲     別紙特許公報の該当欄記載のとおり
専用実施権設定登録日  平成14年2月7日
専用実施権の範囲
地域 日本全国
期間 本件特許権の存続期間満了まで
内容 全範囲
(3) 本件発明の構成要件
 本件発明の構成要件は,次のとおりに分説できる。
A 周面に複数個の絵柄が配列された複数のドラムと,
B 各ドラムを個別に駆動および停止させる駆動機構と,
C 前記駆動機構が各ドラムを一斉始動させることに応答して抽選を実行
する抽選手段と,
D 前記抽選手段による抽選が当たったときボーナスゲームへ移行させる
ための特定の絵柄配列が有効な停止ライン上に揃うよう前記駆動機構による各ドラ
ムの停止動作を制御する停止制御手段とを有するスロツトマシンにおいて,
E 前記抽選手段による抽選結果を遊技者(特許請求の範囲には,「遊戯
者」と記載されているが,「遊技者」の誤記と認められるので,以下では,本件明
細書に「遊戯者」と記載されていても,すべて「遊技者」と表記する。)へ報知す
るための報知手段と,
F 前記抽選手段による抽選が当たったとき前記報知手段を作動させ,ボ
ーナスゲームへ移行させるための特定の絵柄配列が有効な停止ライン上に揃うまで
前記報知手段の作動を継続させる報知制御手段とを具備して成る
G スロツトマシン。
(4) 被告の行為
 被告は,業として,別紙物件目録記載の2種類のスロットマシン(以下,
「イ号製品」及び「ロ号製品」といい,両者を合わせて「被告製品」という。)を
製造,販売した。
(5) 構成要件充足性
 被告製品は,本件発明の構成要件A,B,E及びGを充足する。
2 争点
(1) 被告製品は,構成要件Cを充足しないが,本件発明と均等か。
(2) 被告製品は,構成要件Dを充足するか。
(3) 被告製品は,構成要件Fを充足するか。
(4) 本件特許権には,明らかな無効理由があるか。
(5) 原告の損害額は,いくらか。
3 争点に関する当事者の主張
(1) 争点(1)(均等の成否)について
(原告の主張)
 本件発明の構成要件Cにおいては,「前記駆動機構が各ドラムを一斉始動
させることに応答して抽選を実行する抽選手段」と規定しているのに対し,被告製
品における抽選手段は,始動レバーの操作後,ドラムの一斉始動より前に抽選を実
行するから,被告製品は,構成要件Cに該当しない。しかし,以下に述べるよう
に,被告製品は,本件発明と均等である。
ア 均等論
(ア) 第1要件(差異が本件発明の本質的部分に関しないこと)
 本件発明は,ゲーム開始操作後に機械内部で抽選処理を行い,当選し
た場合にボーナス入賞の絵柄配列が揃いやすいようドラムの停止を制御する方式の
スロットマシンにおいて,当選を遊技者に報知するところに特徴があり,それが本
件発明の本質的部分である。これに対し,本件発明(構成要件C)と被告製品との
文言上の差異は,抽選を行うタイミングが,ドラムの回転開始後か(本件発明),
それとも始動レバー操作とドラムの回転開始の間か(被告製品)という点にあるに
すぎない。
 したがって,本件発明と被告製品の相違は,本件発明の本質的部分に
関するものではない。
(イ) 第2要件(置換可能性)
 本件発明と被告製品の相違部分が被告製品の構成に置換されても,本
件発明の特徴的構成(当選が遊技者に報知され,報知が継続すること)に何ら影響
を及ぼすものではなく,作用効果は同一であるから,置換可能性がある。
(ウ) 第3要件(置換容易性)
 被告製品における抽選手段は,被告が独自に設計を行ったのではな
く,原告や他のスロットマシンメーカーと同様の設計を採用した結果にすぎないか
ら,被告製品の製造時において,被告製品のように置換することは容易であった。
(エ) 第4要件(公知技術から自明でないこと)
 本件発明は,公知技術に対して進歩性があり,また,被告製品の置換
された構成も公知技術から自明と評価される内容ではない。
(オ) 第5要件(包袋禁反言など特段の事情のないこと)
 本件特許の出願手続には,原告が被告製品の置換に対して均等の主張
を行うことが妨げられるような特段の事情は存在しない。
イ 小括
 被告製品は,本件発明の構成要件C以外の全ての構成要件を充足し,か
つ,本件発明と相違する部分についてもいわゆる均等の五要件を満たすから,本件
発明の技術的範囲に属する。
(被告の主張)
 被告製品は,以下のとおり,本件発明と均等とはいえない。
ア 第1要件について
 被告製品と本件発明とは,構成要件Cだけではなく,後記(2),(3)のと
おり,構成要件D及びFにおいても異なっており,被告製品は,本質的部分におい
て本件発明と相違する。
イ 第3要件について
 被告製品と本件発明とは,構成要件C,D及びFが異なっており,その
相違部分の置換は容易ではない。
ウ 第4要件について
 本件発明は,後記(5)のとおり,公知技術に対し進歩性がなく,また,被
告製品も公知技術から自明なものである。
(2) 争点(2)(構成要件Dの充足性の有無)について
(原告の主張)
ア 構成要件Dの「揃うよう」の意義
 本件発明は,スロットマシンにおいて,ボーナス当選をしていても,ボ
ーナス絵柄が揃わないために,ボーナス当選を知らない遊技者が途中でゲームを止
めたり,他のゲーム機に移ってしまったりすることがあるという問題を解消するこ
とを目的とするものであり,ボーナス当選をしてもボーナス絵柄が直ちに揃わない
ことがあることが当然の前提となっている。このような本件発明の趣旨及び本件明
細書の発明の詳細な説明の記載に照らせば,構成要件Dの「特定の絵柄配列が有効
な停止ライン上に揃うよう前記駆動機構による各ドラムの停止動作を制御する」に
おける「揃うよう」とは,「揃いやすいように」という意味に解釈すべきである。
イ 充足性
 被告製品においては,ボーナス当選をした場合は,していない場合に比
べてボーナス図柄が揃いやすいように,CPUによりドラムの停止操作を制御して
いる。
 したがって,被告装置は,構成要件Dを充足する。
(被告の主張)
ア 構成要件Dの「揃うよう」の意義
 構成要件Dの「揃うよう」制御するとは,特定の絵柄配列が揃うように
ドラムの停止動作を操作することであり,「揃わない」場合も含まれるような操作
を意味するものではない。すなわち,「揃うよう」にと「揃いやすいように」と
は,明らかに意味が異なるのであり,「揃うよう」の意義を,「揃わない」場合を
も含む「揃いやすいように」と解釈することは許されない。
イ 非充足性
 被告製品は,抽選処理により内部当たり(ボーナス当選)すると,特定
の図柄配列(ボーナス図柄)が揃いやすいように,CPUにより回胴停止操作を制
御している。すなわち,被告製品においては,内部当たり(ボーナス当選)する
と,内部当たり(ボーナス当選)していない場合よりも特定の図柄配列(ボーナス
図柄)が揃いやすく制御されるが,内部当たり(ボーナス当選)をするだけで,必
ず特定の図柄(ボーナス図柄)が停止ライン上に揃うように制御しているわけでは
ない。
 したがって,被告製品は,特定の絵柄配列が「揃うよう」ドラムの停止
動作を制御するものではないから,構成要件Dを充足しない。
(3) 争点(3)(構成要件Fの充足性の有無)について
(原告の主張)
ア 構成要件Fの「抽選が当たったとき」の意義
 構成要件Fの「抽選が当たったとき」とは,「抽選が当たったとき直ち
に」という意味ではなく,「当選が当たった場合に」を意味するものと解釈すべき
である。
イ 充足性
 被告製品においては,遊技者に当選を報知させる方法が,「報知タイプ
1」と「報知タイプ2」の2通りある(別紙物件目録の4,(2)参照)が,いずれ
も,構成要件Fの「抽選が当たったとき」を充足する。
 すなわち,前記のとおり,本件発明の目的は,ボーナス当選を知らない
遊技者がゲームを途中で止めたり,ゲーム機を変更したりしてしまうことを防止す
ることにあるが,この目的を達成するためには,少なくとも,報知タイプ1のよう
に,当該ゲームの終わる前に報知すれば十分であることは明らかである。当該ゲー
ムは既に行われており,遊技者がその結果を確認せずにゲームを止めることはない
からである。
 また,報知タイプ2は,次のサイクルのゲームの開始直後に報知するも
のであるから,ボーナス当選のあった当該ゲームだけでゲームを止めてしまう遊技
者は,報知タイプ2の報知を受けないことになる。しかし,スロットマシンの1ゲ
ームのサイクルは,一般に5秒ないし7秒程度の短い時間で実行され,これが何回
も繰り返して行われるものであるから,遊技者がボーナス当選したゲームでゲーム
を止めてしまう確率は低いといえる。したがって,被告製品の報知タイプ1のよう
に,当選した当該ゲームの終わる前に報知を行う場合はもちろん,報知タイプ2の
ように,当選したゲームの次のゲームサイクルの開始直後に当選の報知を行って
も,本件発明の目的を十分達成できる。
 このように,被告製品においては,ボーナス当選した当該ゲームにおい
て,あるいは,遅くとも次のゲームの始動レバー操作の時点で,報知手段を作動さ
せているから,「抽選が当たったとき」に報知手段を作動させるものであり,か
つ,ボーナス絵柄が揃うまでその作動が継続する。
 したがって,被告製品は,構成要件Fを充足する。
(被告の主張)
ア 構成要件Fの「抽選が当たったとき」の意義
 構成要件Fの「抽選が当たったとき」とは,「抽選が当たったとき直ち
に」を意味するものと解釈すべきである。
イ 非充足性
 被告製品は,抽選処理を行った後,内部当たり(ボーナス当選)か否か
を判断し,内部当たり(ボーナス当選)の場合は,報知タイプ1か報知タイプ2か
の選択がなされる。その後,減算カウンタの値が0か否かを判別し,0であれば減
算カウンタをスタートさせ,その後回胴回転を開始する。さらに,回胴回転停止ボ
タンが操作されると,対応するドラムの停止制御がなされ,全ドラムが停止された
か否かの判別がなされる。そして,これらの処理の後,報知タイプ1の場合は,こ
こで報知手段が作動される。
 しかし,報知タイプ2の場合は,ここでも報知手段は作動されず,当該
ゲームの中において報知手段は作動されない。そして,次回ゲームのメダル投入処
理,BETボタン処理,精算ボタン処理を経て,回胴回転始動装置が押されるま
で,報知手段は作動しない。すなわち,当該ゲームが終了しても,遊技者には内部
当たり(ボーナス当選)の報知がされず,その時点でメダルがなくなったり,これ
までずっと当たりがなかったことから,今回のゲームも当たらなかったと考えて,
ゲームを止めてしまうことが生じ得る。この場合は,本件発明の「この発明によれ
ば,遊技者は,器体内での抽選結果を報知手段の作動により知ることができるか
ら,抽選が当たったのを知らずに途中でゲームを止めたり,他のマシンに移ったり
することがなくなり,ボーナスゲームの楽しみを確実に享受し得,遊技者へのサー
ビスを向上できる。」との効果もないことになる。
 したがって,被告製品は,「抽選が当たったとき」に報知手段を作動さ
せるものではないから,構成要件Fを充足しない。
(4) 争点(4)(明らかな無効理由の有無)について
(被告の主張)
ア 特許法29条の2について
 本件発明に係る特許出願(以下「本件特許出願」という。)の日より前
の実用新案登録出願に係る実開昭61-191081号公報(乙3)には,入賞リ
クエスト信号が発生したことに応答して作動する表示装置が設けられ,ゲーム中に
同信号が発生すると,同表示装置が同信号の発生を報知する考案が記載されてお
り,この考案は本件発明と同一であるから,本件発明は,特許法29条の2の規定
により特許を受けることができない。
イ 特許法29条2項について
 特開昭59-186580号公報(乙4)に記載された発明(以下「乙
4発明」という。)は,マイクロコンピュータの利用により,電子的に統括制御さ
れたスロットマシンに関する発明である。同公報には,スロットマシンにおいて,
発生させた乱数をテーブルメモリのデータと照合し,その照合結果に応じてリール
の停止制御を行うこと,すなわち,内部当たりを行うことが記載されており,乙4
発明は,本件発明の構成要件AないしD及びGを備えている。
 また,特開昭58-177679号公報(乙5)に記載された発明(以
下「乙5発明」という。)は,スロットマシン等の機械の動作の停止状態によって
優劣を競う遊技機器に関し,特に機器の動作中に各停止時の優勢の状態をプレイヤ
ーに指示するようにした遊技機器に関する発明である。同公報には,スロットマシ
ンのようなゲーム機において,動作中の状態の優勢の表示を行う指示手段を設け,
プレイヤーに認識されることが記載されている。
 さらに,特開昭56-36983号公報(乙6)に記載された発明(以
下「乙6発明」という。)は,弾球遊技機における効果音発生装置に関する発明で
ある。同公報には,入賞時などに異なる効果音を発することが記載されている。
 乙4ないし乙6の各公報は,いずれも本件特許出願前に頒布された刊行
物であり,本件発明は,これらの刊行物に記載された発明に基づいて,当業者が容
易に発明することができたから,特許法29条2項により特許を受けることができ
ない。
ウ 特許法29条1項1号又は2号について
 米国のスロットマシンとは別に,いわゆるパチスロといわれる我が国の
スロットマシンの歴史は,昭和50年代に0号機と呼ばれるものが登場したのが始
まりである。当初のパチスロ遊技機が0号機と呼ばれているのは,昭和60年に
「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(風営法)が改正され,そ
の後,パチスロ遊技機は保安電子通信技術協会(保通協)の型式認定を受けること
になり,それを1号機と呼んだので,その型式認定を受ける前のものを0号機と呼
んだことに由来する。
 ところで,0号機及び当初1号機においては,内部当たり(抽選当た
り)の場合に,パチスロ遊技機本体の集中端子板からの内部当たり信号を受けて,
パトライトというライトを点滅させて遊技者に告知を行うことが一般的であった。
すなわち,原告が本件発明の本質的部分であると主張する,パチスロ遊技機におい
て内部当たり(抽選当たり)を遊技者に告知することは,本件特許出願前の0号機
及び当初1号機において一般的に行われていた。
 したがって,本件発明は,その出願前に公然知られた発明又は公然実施
された発明であり,特許法29条1項1号又は2号により特許を受けることができ
ない。
(原告の主張)
ア 特許法29条の2について
 乙3記載の考案に係るスロットマシンにおいては,内部抽選に当選し,
かつ,「7-7-7」のシンボルの組み合わせが揃ったときにボーナスゲームが開
始するところ,内部抽選に当選したことにより入賞リクエスト信号が発生すると,
表示ランプ16が点灯し,リクエスト信号が発生し,ボーナスゲームとなるシンボ
ルの組み合わせが得やすいようにドラム(リール)が停止制御される状態になって
いることを表示する。しかし,表示ランプが点灯するのは,当該1ゲームのみであ
り,次のゲームまでは点灯を継続しないから,ボーナス絵柄が揃うまで報知を継続
するものではない。
 したがって,乙3記載の考案は,本件発明の構成要件Fを備えていなか
ら,特許法29条の2の無効理由は成り立たない。
イ 特許法29条2項について
(ア) 乙5発明について
 乙5発明は,非熟練遊技者のアシストをするための指示手段を設ける
ことにより,技量による結果の不平等を少なくしようとする遊技機の発明であり,
乙5発明における「指示手段」は,本件発明の「報知手段」(内部当たりを報知す
るもの)とは全く異なる。すなわち,スロットマシンにおいては,高速で回転する
3つのリール(ドラム)を停止ボタンを押して停止させるところ,熟練遊技者はリ
ールを所望の位置で停止させることができるのに対し,非熟練遊技者にはそれが困
難であることから,乙5発明は,各表示窓の上部に設けた指示用ランプを点灯させ
るなどし(指示手段),その瞬間にストップボタンを押せば,当たり役が揃うよう
に構成して,非熟練遊技者のアシストをするというものである。
 したがって,乙5発明は,本件発明の構成要件E及びFを備えていな
い。
(イ) 乙6発明について
 乙6発明は,パチンコなどの弾球遊技機の遊技の興趣を高めるための
効果音の発生装置の発明にすぎず,乙6発明の「効果音」は,本件発明の「報知手
段」(内部当たりを報知するもの)とは全く異なる。すなわち,乙6発明は,パチ
ンコなどの弾球遊技機において,「遊技状態に適した電子音で効果音を発生でき,
音響的効果を増大でき,遊技者の弾球遊技をより一層楽しくすることができるなど
の効果」を奏するものであり,当該効果音は,内部当たりを報知するものではな
い。
 したがって,乙6発明は,本件発明の構成要件E及びFを備えていな
い。
(ウ) 小括
 よって,本件発明は,乙4発明ないし乙6発明に基づき,当業者が容
易に発明することができたものではない。
ウ 特許法29条1項1号又は2号について
 被告の主張を争う。本件特許出願の日である昭和60年11月27日よ
り前に,パチスロ遊技機の0号機及び1号機において,パトライトにより内部当た
りを遊技者に報知していたことは,否認する。
(5) 争点(5)(原告の損害額)について
(原告の主張)
ア イ号製品の製造販売による損害
 被告は,本件専用実施権の登録日である平成14年2月7日から同年1
2月末日までに,イ号製品を,少なくとも4100台,1台当たり25万円以上で
販売した。その製造販売行為は,本件専用実施権を侵害するところ,本件専用実施
権の実施により原告が受け取るべき実施料相当額は,1台当たり,少なくとも販売
金額の5%に相当する1万2500円である。
 したがって,イ号製品について原告が請求し得る損害金の合計額は,5
125万円となる。
  12,500円×4,100台=51,250,000円
イ ロ号製品の製造販売による損害
 被告は,遅くとも平成14年3月1日よりロ号製品の製造販売を開始
し,同年12月末日までに,少なくとも600台を1台当たり25万円以上で販売
した。
 したがって,ロ号製品について原告が請求し得る損害金の合計額は,7
50万円となる。
  12,500円×600台=7,500,000円
ウ 小括
 よって,原告は,被告に対し,上記損害の合計額である5875万円及
びこれに対する本件訴状送達の日の翌日である平成15年2月19日から支払済み
まで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(被告の主張)
 原告の主張を争う。
第3 当裁判所の判断
1 争点(3)(構成要件Fの充足性の有無)について
(1) 本件明細書の記載
 本件明細書の発明の詳細な説明には,以下の記載がある(甲3)。
ア 発明の技術分野
 「この発明は,複数のドラムを一斉始動させた後,停止ボタンによりこ
れらを停止させた際,停止ライン上に並ぶ各ドラムの絵柄が所定の配列をとるか否
かによりゲームの勝負を決定するスロツトマシンに関する。」(2欄3行~7行)
イ 発明の背景
 「従来のスロツトマシンは,全てのドラムを一斉回転させた後,遊技者
が適当なタイミングで停止ボタンを順次押操作することにより,対応するドラムが
順次停止するよう構成してあり,絵柄表示窓の停止ライン上に所定の絵柄が並んだ
とき,これを入賞となして,所定配当率のメダルを放出させている。また近年のス
ロツトマシンでは,ゲームの興趣と期待感とを一層向上させるため,入賞の中でも
ある特定の絵柄配列が成立したとき,通常のゲームとは別に,高配当のメダルの払
出しが期待できるゲーム(これを「ボーナスゲーム」という)ができるように工夫
されている。この場合に,従前のスロツトマシンでは,ドラムの始動に応じて,器
体内の回路で抽選処理を行い,この抽選が当たったとき,ボーナスゲームにかかる
絵柄配列が停止ライン上に揃い易いようにドラム駆動源の動作を制御している。
 ところが,器体内での抽選結果は遊技者にとっては全く不明であるた
め,抽選が当たっていても,ボーナスゲームにかかる絵柄配列が直ちに有効ライン
上に揃わなければ,遊技者は途中でゲームを止めたり,或いはゲーム対象の機械を
変更したりすることがあり,遊技者へのサービスに欠けるという問題があった。」
(2欄9行~3欄5行)
ウ 発明の目的
 「この発明は,上記問題を解消するためのものであって,器体内での抽
選結果を遊技者に報知することにより,遊技者へのサービス向上を実現したスロツ
トマシンを提供することを目的とする。」(3欄7行~10行)
エ 発明の効果
 「この発明によれば,遊技者は,器体内での抽選結果を報知手段の作動
により知ることができるから,抽選が当たったのを知らずに途中でゲームを止めた
り,他のマシンに移ったりすることがなくなり,ボーナスゲームの楽しみを確実に
享受し得,遊技者へのサービスを向上できる。しかも報知手段はボーナスゲームへ
移行させるための特定の絵柄配列が揃うまで作動を継続させるから,遊技者は抽選
当りの効果がボーナスゲームにかかる絵柄配列が揃うまで享受し得ることを認識で
き,その間,大きな期待をもって毎回のゲームを楽しむことができる。またゲーム
結果とは別に,抽選結果への期待度も高まるから,従来のスロツトマシンにない新
たなゲームの興趣を遊技者に付与できる」(3欄27行~41行)
(2) 構成要件Fの「抽選が当たったとき」の意義
ア 上記の本件明細書の記載によれば,ドラムの始動に応じて,機器内の回
路で抽選処理を行い,この抽選が当たったとき,ボーナスゲームにかかる絵柄配列
が停止ライン上に揃いやすいようにドラム駆動源の動作を制御していた従来のスロ
ットマシンにおいては,機器内での抽選結果が遊技者に不明であるため,抽選が当
たっていても,ボーナスゲームに係る絵柄配列が直ちに有効ライン上に揃わなけれ
ば,遊技者は途中でゲームを止めたり,あるいはゲーム機を変更したりすることが
あり,遊技者へのサービスに欠けるという問題があったこと,本件発明は,この問
題を解決課題とし,機器内での抽選結果(当選)を遊技者に報知することにより,
遊技者へのサービス向上を実現したスロットマシンを提供することを目的とするも
のであること,本件発明に係るスロットマシンは,上記のような従来のスロットマ
シンにおいて,抽選手段による抽選結果(当選)を遊技者に報知するための「報知
手段」(構成要件D)及び抽選手段による「抽選が当たったとき」報知手段を作動
させ,ボーナスゲームへ移行させるための特定の絵柄配列が有効な停止ライン上に
揃うまで前記報知手段の作動を継続させる「報知制御手段」(構成要件F)を備え
ることにより,「遊技者は,抽選が当たったのを知らずに途中でゲームを止めた
り,他のマシンに移ったりすることがなくなり,ボーナスゲームの楽しみを確実に
享受でき,しかも,遊技者は,抽選当りの効果がボーナスゲームにかかる絵柄配列
が揃うまで享受し得ることを認識でき,その間,大きな期待をもって毎回のゲーム
を楽しむことができ,また,ゲーム結果とは別に,抽選結果への期待度も高まるか
ら,従来のスロットマシンにない新たなゲームの興趣を遊技者に付与できる」とい
う効果を奏するものであること,以上の事実が認められる。
イ 上記認定のとおり,本件発明が,「報知手段」(構成要件D)及び「報
知制御手段」(構成要件F)により上記のような発明の効果を奏するものであるこ
とからすれば,報知制御手段が報知手段を作動させる「抽選手段による抽選が当た
ったとき」とは,「抽選が当たったとき直ちに」か,遅くとも抽選を実行した当該
ゲーム中で各ドラムが停止する以前の時期を意味するものと解するのが相当であ
る。
 これに対し,原告は,「抽選が当たったとき」とは「抽選が当たったと
き直ちに」ではなく,「抽選が当たった場合に」を意味するものと解釈すべきであ
ると主張する。しかしながら,そのように報知手段が作動する時期に関する限定の
ない解釈を採るとすると,当該ゲームが完全に終了した後に抽選が当たったことを
報知する構成も本件発明に含まれることとなり,遊技者が報知される以前に途中で
ゲームを止めたり他のマシンに移ったりする事例が生じ,本件発明における上記効
果を奏しない場合が含まれることとなるから,上記主張は採用することができな
い。
(3) 構成要件Fの充足性の有無
ア 被告製品の構成
 別紙物件目録によれば,被告製品は,次の構成を有することが認められ
る。
(ア) 被告製品は,ボーナスゲームができるスロットマシンであり,機器
内にボーナスゲームに係る抽選手段,及び,抽選が当たったときのボーナス当選
を,報知ランプの点滅により遊技者に報知する報知手段を備えている。被告製品の
報知手段には,報知タイプ1と報知タイプ2があり,これをゲームの進行に従った
被告製品の制御動作として見ると,次のとおりとなる。
① メダルを投入し(遊技メダル貯留装置を使用しないで遊技する場
合),又はBETボタンを操作してゲームを開始し,回胴回転始動装置が押される
と(図1-6及び図2-6のST2,以下では,単に「ST2」などと表記す
る。),前回ボーナス当選し,ST6で報知タイプ2であった場合は,ここで報知
ランプを点滅する(ST-3)。
② その後,抽選処理(ST4)を行い,ボーナス当選となった場合に
は(ST-5),報知タイプ1か報知タイプ2かが選択される(ST6)。
③ 次に,減算カウンタの値が0か否かを判別し(ST7),0であれ
ばまずST9に進み,減算カウンタをスタートさせ(ST9),その後回胴回転を
開始する(ST8)。減算カウンタの値が0でないときは,ループにより減算カウ
ンタの値が0になるまでST7を繰り返す。
④ 回胴回転停止ボタンが操作されると(ST10),対応するドラム
の停止制御がなされる(ST11)。その後,全ドラムが停止されたか判別し(S
T12),全ドラムが停止されていなければ,ST10に戻り,全ドラムが停止す
るまで繰り返される。この時,ボーナス当選している場合は,ボーナス図柄が揃い
やすいように,CPUにより回胴停止操作を制御する。
⑤ 全ドラムが停止した後,入賞判定処理がされ(ST14),入賞に
よるメダル払出しがあるか否かの判定により(ST15),払出しがある場合はメ
ダルの払出しがされ(ST16),払出しがない場合はそのまま素通りする。
⑥ 以上のST14,ST15,ST16の各ステップの後に,ST6
で選択された報知方式が報知タイプ1である場合は,ここで報知ランプを点滅する
(ST13)。
⑦ さらに,入賞図柄がボーナス図柄か否かを判別し(ST17),ボ
ーナス図柄でない場合は,ST1からの処理に戻る。ボーナス図柄の場合は,報知
ランプが消灯し(ST18),ボーナスゲームに移行する(ST19)。
(イ) 以上のとおり,被告製品における報知タイプ1は,ボーナス当選を
した当該ゲームの全ドラムが停止しただけではなく,その後の入賞判定処理,メダ
ル払出し有無の判定及びその後の払出し処理(入賞の場合)を行った後に報知ラン
プの点滅を開始するものであり,報知タイプ2は,ボーナス当選をしたゲームの次
のゲームにおいて,メダル投入処理,BETボタン処理の後,回胴回転始動装置が
押された直後に報知ランプの点滅を開始するものである。
イ 構成要件Fへの属否
 上記のとおり,被告製品は,ボーナス当選をしたゲームについて,入賞
判定処理,メダル払出し有無の判定及びその後の払出し処理(入賞の場合)が行わ
れた後,当該ゲームが終了した時点で(報知タイプが1の場合),又は,ボーナス
当選をしたゲームの次のゲームが開始された直後(報知タイプが2の場合)に報知
手段を作動させるものである。したがって,抽選が当たったとき直ちに報知手段を
作動させるものではなく,また,当該ゲームで各ドラムが停止する以前に報知手段
を作動させるものでないことも明らかである。
 なお,原告は,報知タイプが1の場合について,報知手段が作動する時
点では未だゲームが終了していないかのように主張するが,ボーナス当選をしたゲ
ームについて,全ドラムが停止し,入賞判定処理,メダル払出し有無の判定及びそ
の後の払出し処理(入賞の場合)が行われた時点で,次のゲームをスタートさせる
ことができる以上,遅くともこの時点でボーナス当選をした当該ゲームは終了した
と解するのが相当であり,報知タイプ1の場合は,その後に報知ランプが点滅する
のであるから,上記主張を採用する余地はない。
 また,原告は,スロットマシンの1ゲームのサイクルが短く何回も繰り
返して行われるものであるから,遊技者がボーナス当選したゲームでゲームを止め
てしまう確率は低く,報知タイプ2のように,当選したゲームの次のゲームサイク
ルの開始直後に当選の報知を行っても,本件発明の目的を十分達成できる旨主張す
る。しかしながら,遊技者が,抽選が当たったのを知らずに途中でゲームを止めた
り,他のマシンに移ったりする問題があることは,原告自身が本件明細書におい
て,本件発明が解決すべき課題として指摘するところであり,遊技者がボーナス当
選したゲームでゲームを止めてしまう確率は低いとする上記主張は,この明細書の
指摘と相反し上記解決課題の存在を否定するものであって,到底,採用することが
できない。
 したがって,被告製品は,「抽選手段による抽選が当たったとき報知手
段を作動させ」るものではないから,構成要件Fを充足しない。
2 結論
 以上の次第で,原告の請求は,その余の点につき判断するまでもなく理由が
ないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
    東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官  清  水     節
 裁判官      髙  田  公  輝
   裁判官榎戸道也は,填補のため署名押印することができない。
         裁判長裁判官      清  水     節
(別 紙)
物  件  目  録
1.製品名
   イ号製品は,型式名「ブルーラグーン-30」と称する回胴式遊技機であ
る。
   ロ号製品は,型式名「クウケン-30」と称する回胴式遊技機である。
2.図面の説明
図1-1 イ号製品の本体正面写真
   図1-2 イ号製品の本体内部写真
   図1-3 イ号製品の遊技機内部の各回胴の回胴図柄写真
   図1-4 イ号製品の正面外部構造図
   図1-5 イ号製品の制御装置のブロック図
   図1-6 イ号製品のCPUの動作制御を説明するためのフローチャート
図2-1 ロ号製品の本体正面写真
   図2-2 ロ号製品の本体内部写真
   図2-3 ロ号製品の遊技機内部の各回胴の回胴図柄写真
   図2-4 ロ号製品の正面外部構造図
   図2-5 ロ号製品の制御装置のブロック図
   図2-6 ロ号製品のCPUの動作制御を説明するためののフローチャート
3.構成及び動作の説明
(1)構成  
  ① 遊技機正面外部の中部パネルは,表面に凹凸がなく,回胴上の図柄を識別
するための窓が形成されている。遊技機内部には,図1-3の回胴図柄が巻き付け
られた3個の回胴(左から第1回胴,第2回胴,第3回胴)が一列に配列されてい
る。回胴停止時に窓を通じて視認できる図柄の数は,1つの回胴につき5個であ
り,そのうち中央の3個は完全な形で,最上部と最下部のものは,それぞれ図柄の
一部が視認でき,全部で5×3の15個である(図1-1,図2-1)。
  ② 中部パネル左側には,遊技メダル投入枚数表示ランプ1,2及び3が上か
らそれぞれ3,2,1,2,3の順で並んでおり,その下には遊技開始表示ランプ
が,さらにその下には右側に1BETボタンと左側に2BETボタンがそれぞれ配
置されている。
 また,中部パネルの窓下部には,左から遊技メダル貯留枚数表示器,遊技
補助表示器,遊技メダル払出枚数表示器がそれぞれ横一列に並んでおり,遊技メダ
ル貯留枚数表示器の下にはMAXBETボタンが,遊技メダル払出枚数表示器の右
側には遊技メダル投入口がそれぞれ設けられている。
 さらに,中部パネルの最下段には,左から回胴回転始動装置,第1回胴用
停止ボタン,第2回胴用停止ボタン,第3回胴用停止ボタン,投入メダル詰まり返
却ボタン,精算ボタン,ドアキーがそれぞれ配置されている。
  ③ 中部パネル右側には役物連続作動装置作動時入賞回数表示LEDが縦一列
に並んでおり,その右側には,上からチャンス表示ランプ,遊技中止表示ランプ,
再遊技表示ランプ,遊技メダル貯留表示ランプ,遊技メダル払出表示ランプ,遊技
メダル投入表示ランプがそれぞれ配置されている。
  ④ 上部パネルの最上部には,入賞の表示や役物連続作動装置の作動等を表示
するための,3種類の遊技状態表示ランプが合計5個(A1-aが1個,A1-b
が2個,A1-cが2個)横一列に配置されている。
(2)操作(その1-遊技メダル貯留装置を使用しないで遊技する場合)  
  ① 遊技メダル投入
 遊技メダルセレクター(CG:投入された遊技メダルを選別する為のユニ
ット)が遊技メダル受付状態となっている場合は,遊技メダル投入口(A3-c)
より遊技メダルを1~3枚投入することができる。
 3枚を超えて投入すると,4枚目からの遊技メダルは遊技メダル払出口
(A5-a)から受け皿(A5-c)へ返却される。
   ア 遊技メダルを1枚投入すると,遊技メダル投入音が鳴り,遊技メダル投
入枚数表示ランプ1(A2-a)が点灯し回胴回転始動装置(A3-d)が受付可
能となる。
   イ 遊技メダル2枚を投入すると,遊技メダル投入音が鳴り,遊技メダル投
入枚数表示ランプ2(A2-b)が点灯する。
   ウ遊技メダル3枚を投入すると,遊技メダル投入音が鳴り,遊技メダル投
入枚数表示ランプ3(A2-c)が点灯し遊技メダルセレクター(CG)が遊技メ
ダル返却状態になる。
  ② 回胴回転
 規定枚数の遊技メダルを投入後,回胴回転始動装置(A3-d)を操作す
ると,回胴(BG)が回転する。但し,精算ボタン(A3-f),停止ボタン(A
3-e),1BETボタン(A3-h),2BETボタン(A3-i),又はMA
XBETボタン(A3-j)のいずれかを操作している状態では,回胴回転始動装
置(A3-d)を操作しても回胴(BG)は回転しない。
   ア 回胴回転始動装置(A3-d)を操作すると,回胴(BG)が3個同時
に回転を始める。
   イ 遊技メダルセレクター(CG)は遊技メダル返却状態となる。
   ウ 前回の遊技で回胴(BG)が回転を始めてから4.1秒経過していない
場合に,回胴回転始動装置(A3-d)を操作すると,回胴(BG)は回転しな
い。
 前回の遊技で回胴(BG)が回転を始めてから4.1秒経過後に回胴
(BG)が3個同時に回転を始める。
   エ 回胴(BG)が回転を始めると,回胴(BG)のすべてが正常回転して
いるかを検出し,停止ボタン(A3-e)の操作が受付可能な状態となる。
 なお,回胴(BG)のすべてが正常回転していることが検出されない場
合は,正常回転するまで,停止ボタン(A3-e)の操作が受付可能な状態にはな
らない。
   オ 回胴回転始動装置(A3-d)を操作した後から,回胴(BG)がすべ
て停止するまでの間に遊技メダル投入口(A3-c)より投入された遊技メダル
は,遊技メダル払出口(A5-a)から受け皿(A5-c)へ返却される。
  ③ 回胴回転の停止
 回胴(BG)を任意に選択し,それに対応した停止ボタン(A3-e)を
操作することにより,回胴(BG)を停止させることができる。ただし,精算ボタ
ン(A3-f),回胴回転始動装置(A3-d),停止ボタン(A3-e),1B
ETボタン(A3-h),2BETボタン(A3-i),又はMAXBETボタン
(A3-j)のいずれかを操作している状態では,停止ボタン(A3-e)を操作
しても回転中の回胴(BG)を停止させることはできない。
   ア 停止ボタン(A3-e)が操作されると,対応した回胴(BG)が停止
する。
   イ 残りの回転しているいずれかの回胴(BG)も同様に回胴(BG)を任
意に選択し,停止ボタン(A3-e)を操作して停止させる。   
 ウ 回胴(BG)に対応した停止ボタン(A3-e)を同時に2個以上操作
した場合,一番早い方の回胴(BG)1個だけが停止する。
 停止ボタン(A3-e)を操作し続けた場合は,残りの停止ボタン(A
3-e)を操作しても対応する回胴(BG)は停止しない。
  ④ 図柄の入賞判定
 回胴(BG)がすべて停止したときに,投入した遊技メダル枚数に応じた
有効ライン上で入賞及び作動に係る図柄組合せの判定を行う。
   ⅰ 遊技メダル1枚投入時は中央の1ラインが有効ラインとなる。
   ⅱ 遊技メダル2枚投入時は中央,上段,下段の3ラインが有効ラインとな
る。
   ⅲ 遊技メダル3枚投入時は中央,上段,下段,斜めの5ラインが有効ライ
ンとなる。
 投入した遊技メダル枚数に応じた有効ライン上に,入賞に係る図柄の組合
せが表示された場合は次のアが実行され,表示されなかった場合は次のイが実行さ
れる。
   ア 入賞に係る図柄の組合せが表示された場合
   (ア)遊技メダル払出口(A5-a)から受け皿(A5-c)へ遊技メダル
を払出す。
   (イ)遊技メダル払出し中(遊技メダルの払出終了まで)に遊技メダル投入
口(A3-c)より投入された遊技メダルは,遊技メダル払出口(A5-a)から
受け皿(A5-c)へ返却される。
   (ウ)遊技メダル払出しが終了すると,遊技メダルセレクター(CG)は遊
技メダル受付状態になる。
   (エ)遊技メダル投入の状態に移る。
   (オ)入賞に係る図柄の組合せが重複した場合でも,遊技メダルの払出し枚
数は15枚を超えない。
   イ 入賞に係る図柄の組合せが表示されなかった場合
(ア)遊技メダルセレクター(CG)は遊技メダル受付受状態になる。
   (イ)遊技メダル投入の状態に移る。
(3)操作(その2-遊技メダル貯留装置を使用して遊技する場合)  
  ① 遊技メダルの貯留
 遊技メダル貯留装置は,遊技メダル投入口(A3-c)から規定枚数を超
える遊技メダルを投入した場合,又は入賞により遊技メダルが払出される場合に,
遊技メダルを最高50枚まで貯留し,1BETボタン(A3-h),2BETボタ
ン(A3-i),又はMAXBETボタン(A3-j)の操作で,貯留されている
遊技メダルを投入するための装置である。
   ア 遊技メダル貯留枚数表示器(A2-m)のデジタル表示が点灯している
場合は,遊技メダル貯留装置を使用している状態であることを示している。
 遊技メダル貯留枚数表示器(A2-m)のデジタル表示が消灯している
場合は,精算ボタン(A3-f)を操作することで遊技メダル貯留装置を起動させ
ることができる。
 遊技メダル貯留装置を起動させると,遊技メダル貯留枚数表示器(A2
-m)に,「0」が表示され,遊技メダル貯留装置が使用できる状態となる。
   イ 遊技メダル投入口(A3-c)より投入された遊技メダルは,4枚目か
ら投入するごとに遊技メダル貯留装置に貯留され,遊技メダル貯留枚数表示器(A
2-m)に貯留された遊技メダル枚数がデジタル表示される。
   ウ 遊技メダルセレクター(CG)が遊技メダル返却状態の場合は,遊技メ
ダル投入口(A3-c)より投入された遊技メダルは,遊技メダル払出口(A5-
a)から受け皿(A5-c)へ返却され,遊技メダル貯留装置には貯留されない。
  ② 貯留されている遊技メダルの投入
   ア 遊技メダル貯留装置を使用し遊技メダルが貯留されている状態で,遊技
メダルセレクター(CG)が受付状態のとき,1BET(A3-h),2BETボ
タン(A3-i),又はMAXBETボタン(A3-j)を操作することにより,
貯留されている遊技メダル枚数以内及び規定枚数以内の遊技メダルの投入を行うこ
とができる。
   (ア)1BETボタン(A3-h)は1枚の遊技メダルを遊技するための投
入ボタンである。
 1BETボタン(A3-h)を操作すると,遊技メダルを1枚投入し
た状態となり,遊技メダル貯留枚数表示器(A2-m)にデジタル表示されている
遊技メダル貯留装置内の遊技メダル枚数が1減算されてデジタル表示される。但
し,遊技メダル投入口(A3-c)から遊技メダルを1枚投入するか,1BETボ
タン(A3-h)を操作して1枚の遊技メダルで遊技ができる状態の場合は,1B
ETボタン(A3-h)を操作しても貯留されている遊技メダルは投入されない。
   (イ)2BETボタン(A3-i)は2枚の遊技メダルで遊技をするための
投入ボタンである。
 2BETボタン(A3-i)を操作すると,遊技メダルを2枚投入し
た状態となり,遊技メダル貯留枚数表示器(A2-m)にデジタル表示されている
遊技メダル貯留装置内の遊技メダル枚数が2減算されてデジタル表示される。但
し,遊技メダル投入口(A3-c)から遊技メダルを2枚投入するか,2BETボ
タン(A3-i)を操作して2枚の遊技メダルで遊技ができる状態の場合は,2B
ETボタン(A3-i)を操作しても貯留されている遊技メダルは投入されない。
   (ウ)MAXBETボタン(A3-j)は3枚の遊技メダルで遊技をするた
めの投入ボタンである。
 MAXBETボタン(A3-j)を操作すると,遊技メダルを3枚投
入した状態となり,遊技メダル貯留枚数表示器(A2-m)にデジタル表示されて
いる遊技メダル貯留装置内の遊技メダル枚数が3減算されてデジタル表示される。
但し,遊技メダル投入口(A3-c)から遊技メダルを3枚投入するか,MAXB
ETボタン(A3-j)を操作して3枚の遊技メダルで遊技ができる状態の場合
は,MAXBETボタン(A3-j)を操作しても貯留されている遊技メダルは投
入されない。
   (エ)遊技メダル貯留枚数表示器(A2-m)にデジタル表示されている遊
技メダル貯留装置内の遊技メダル枚数より多い対応枚数の投入ボタンを操作した場
合は,貯留されている遊技メダルがすべて投入される。
   イ 役物遊技の場合は規定枚数が1枚のため,1BETボタン(A3-
h),2BETボタン(A3-i),又はMAXBETボタン(A3-j)のいず
れを操作しても貯留されている遊技メダルは1枚だけ投入される。
   ウ 遊技メダルセレクター(CG)が受付不可の場合は,1BETボタン
(A3-h),2BETボタン(A3-i),又はMAXBETボタン(A3-
j)のいずれを操作しても貯留されている遊技メダルは投入できない。
  ③ 入賞に係る図柄の組合せが表示された場合
   ア 入賞によって払出される遊技メダルは,遊技メダル貯留装置を使用して
いる状態で,貯留されている遊技メダル枚数が50枚未満の場合,遊技メダル貯留
装置に合計50枚まで貯留される。
 このとき,遊技メダル貯留枚数表示器(A2-m)は,貯留した遊技メ
ダル枚数を加算してデジタル表示をする。
   イ 払出される遊技メダルを遊技メダル貯留装置に貯留している途中に,貯
留されている遊技メダル枚数が50枚になった場合,残りの払出し枚数分の遊技メ
ダルは,遊技メダル払出口(A5-a)から受け皿(A5-c)へ払出される。
  ④ 遊技メダル貯留装置の精算
   ア 遊技メダル貯留装置を使用して遊技メダルが貯留されている場合に,精
算ボタン(A3-f)を操作すると,遊技メダル貯留装置に貯留されている遊技メ
ダルの精算となり,貯留されている遊技メダルを遊技メダル払出口(A5-a)か
ら受け皿(A5-c)へ払戻しされる。
 なお,自動精算有りモードに設定されている場合は,役物連続作動増加
装置の作動終了後,自動的に貯留されている遊技メダルを精算する。
   イ 遊技メダル貯留装置に貯留されている遊技メダルが精算されると,遊技
メダル貯留枚数表示器(A2-m)にデジタル表示されている遊技メダル枚数を1
枚払戻すごとに1ずつ減算してデジタル表示する。
   ウ 貯留されている遊技メダルを払戻している間は,遊技メダルセレクター
(CG)は遊技メダル返却状態になる。
 このとき,遊技メダル投入口(A3-c)から投入された遊技メダルは
遊技メダル払出口(A5-a)から受け皿(A5-c)へ返却される。
   エ 貯留されている遊技メダルの精算が終了すると,自動的に遊技メダル貯
留装置は解除される。
 なお,自動精算有りモードに設定されている場合の役物連続作動増加装
置の作動終了後においては,貯留されている遊技メダルの精算が終了しても遊技メ
ダル貯留装置は解除されない。
  ⑤ 遊技メダル貯留装置の解除
   ア 遊技メダル貯留装置を使用している場合に,精算ボタン(A3-f)を
操作すると,遊技メダル貯留装置を解除する。
   イ 遊技メダル貯留装置を解除するときに遊技メダルが貯留されている場合
は,遊技メダル貯留装置の精算を行ってから,遊技メダル貯留装置を解除する。
   ウ 遊技メダル貯留装置を解除すると,遊技メダル貯留枚数表示器(A2-
m)のデジタル表示は消灯し,遊技メダル貯留装置を使用しない状態となる。
4.制御動作の説明
 図1-5および図2-5に記載されているように,主基板(MBD-01)上
のCPUは以下の信号の出し入れを行っている。まず,操作スイッチ及び表示ラン
プ基板(SWL-01)を介して,投入メダルセンサー信号①,投入ボタン信号1
(1BET)⑥,投入ボタン信号2(2BET)⑦,投入ボタン信号3(MAXB
ET)⑧,回胴回転始動装置信号⑤,第1回胴回転停止装置信号②,第2回胴回転
停止装置信号③,第3回胴回転停止装置信号④,及び精算ボタン信号⑧が与えら
れ,逆に,遊技状態表示ランプ信号,メダル投入許可コイル信号,回胴停止
ボタンLED信号,スピーカ1信号を出している。また,配線中継基板(IN
T-01)を介して,第1回胴センサー信号⑩,第2回胴センサー信号⑪,第3回
胴センサー信号⑫が与えられ,逆に,第1回胴図柄表示ランプ信号,第1回
胴モーター信号,第2回胴図柄表示ランプ信号,第2回胴モーター信号
,第3回胴図柄表示ランプ信号,第3回胴モーター信号を出してい
る。
 以上の信号の出し入れに関する,CPUの具体的な制御動作は,図1-6及び
図2-6に示されているように,以下のとおりである。 
(1)まず,メダル投入があると(遊技メダル貯留装置を使用しないで遊技する場
合),遊技メダル投入処理(ST1-1)を行い,次のBETボタン処理(ST1
-2)へ移る。メダル投入がない場合は,遊技メダル投入処理を素通りして次のB
ETボタン処理(ST1-2)へ移る。BETボタン処理(ST1-2)では,1
BETボタン,2BETボタン,またはMAXBETボタンの操作があると(遊技
メダル貯留装置を使用して遊技する場合),それぞれに対応したBETボタン処理
(ST1-2)を行い,次の精算ボタン処理(ST1-3)へ移る。いずれのBE
Tボタンも操作されていない場合(遊技メダル貯留装置を使用しないで遊技する場
合)は,BETボタン処理(ST1-2)を素通りして次の精算ボタン処理(ST
1-3)へ移る。精算ボタン処理(ST1-3)では,精算可能な場合は精算処理
が行われ,精算可能でない場合はそのまま素通りする。
 精算ボタン処理(ST1-3)後,回胴回転始動装置が押されないと(ST
2),その場でループを形成するのではなく,メダル投入処理(ST1-1)の前
まで戻る。回胴回転始動装置が押されると(ST2),前回ボーナス当選しST6
で報知タイプ2であった場合は,ここで報知ランプを点滅する(ST-3)。
(2)その後抽選処理(ST4)を行い,ボーナス当選となった場合には(ST-
5),報知タイプ1か報知タイプ2かの選択がなされる(ST6)。
 ボーナス当選とは,原告が指摘するとおり,ボーナスゲームに移行するチャ
ンスを得る当選のことである(実際にボーナスゲームに移行するためには,さらに
ボーナス図柄が揃うことが必要(ST17)である。)。
 なお,報知タイプが2種類あることも原告指摘のとおりであるが,その内容
は,厳密には原告指摘のものとは異なる。
 報知タイプ1:当該ゲームの全ドラム停止だけではなく,その後入賞判定処
理,メダル払い出し有無の処理を行った後で,報知ランプの点滅を開始するもの。
 報知タイプ2:次回のゲームのメダル投入処理,BETボタン処理後,始動
レバー操作直後に報知ランプの点滅を開始するもの。
(3)次に,減算カウンタの値が0か否かを判別し(ST7),0であればまずS
T9に進み,減算カウンタをスタートさせ(ST9),その後回胴回転を開始する
(ST8)。減算カウンタの値が0でないときは,ループにより減算カウンタの値
が0になるまでST7を繰り返す。
(4)更に,回胴回転停止ボタンが操作されると(ST10),対応するドラムの
停止制御がなされる(ST11)。その後,全ドラムが停止されたか判別し(ST
12),全ドラムが停止されていなければ,ST10に戻り,全ドラムが停止する
まで繰り返される。この時,ボーナス当選している場合は,ボーナス図柄が揃いや
すいように,CPUにより回胴停止操作を制御している。
(5)全ドラムが停止した後,入賞判定処理がなされ(ST14),入賞によるメ
ダル払い出しがあるか否かの判定により(ST15),払い出しがある場合はメダ
ルの払い出しがなされ(ST16),払い出しがない場合はそのまま素通りする。
(6)以上のST14,ST15,ST16の各ステップの後に,ST6で選択さ
れた報知方式が報知タイプ1である場合は,ここで報知ランプを点滅する(ST1
3)。
(7)さらに,入賞図柄がボーナス図柄か否かを判別し(ST17),ボーナス図
柄でない場合は,ST1からの処理に戻る。ボーナス図柄の場合は,報知ランプが
消灯し(ST18),ボーナスゲームに移行する(ST19)。
    
            以 上
図1-1図1-2図1-3図1-4番号の説明図1-5図1-6図2-1図2-2
図2-3図2-4番号の説明図2-5図2-6

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