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平成15年(行ケ)第372号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成16年1月13日
判    決
原   告      有限会社新津
訴訟代理人弁理士   大 塚   忠
被   告      株式会社ブリヂストン
訴訟代理人弁護士   竹 田   稔
同          川 田   篤
訴訟代理人弁理士   小 栗 久 典
主    文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 原告
(1)特許庁が無効2003-35083号事件について平成15年7月11日
にした審決を取り消す。
(2)訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告
 主文と同旨
第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
  原告は,発明の名称を「空気入りタイヤとそれを製造する加硫成型用金型」
とする特許(特許第2779765号,平成6年3月18日出願(以下「本件出
願」といい,この出願に係る願書に添付された明細書と図面とを併せて「本件明細
書」という。甲第2号証は,これらの内容を示す特許公報である。),平成10年
5月15日設定登録。以下「本件特許」という。請求項の数は2である。)の特許
権者である。
  被告は,平成15年3月7日,本件特許を請求項1及び2のいずれに関して
も無効にすることについて,審判を請求した。特許庁は,これを,無効2003-
35083号事件として審理し,その結果,平成15年7月11日,「特許第27
79765号の請求項1に係る発明及び請求項2に係る発明についての特許を無効
とする。」との審決をし,その謄本を,同月23日,原告に送達した。
2 特許請求の範囲
(1)請求項1
  未走行空気入りタイヤの接地表面に於て,断面形状が均一にコントロール
された最大1mm以下,最小30ミクロン以上の微細凹凸高さをもつ山形(3a,3
b),カマボコ形(3c,3d),台形(3e,3f)の単一形状群及び,それら
の複数形状の混合配列,分布で,1平方センチメートル当りの凹凸数が,25個又
は25列以上あることを特徴とする冬用及びオールシーズン用タイヤと,それを製
造する加硫用金型。
(2)請求項2
  タイヤ加硫時,ゴム表面に転写されるタイヤ製造用金型の均一にコントロ
ールされた形状をもつ微細凹凸の加工方法は,石膏,砂,セラミック,ダイキャス
ト金型等の鋳造用鋳型に凹凸を前もって加工する方法又は,鋳造後に金型の金属表
面に機械加工,電食(EDM)加工,エッチング加工,ショットブラスト等,いづ
れかの方法で加工することを特徴とする請求項1のタイヤ製造用金型。
 (以下,それぞれ,「本件発明1」,「本件発明2」という。)
3 審決の理由
  審決の理由は,別紙審決書の写し記載のとおりである。要するに,本件特許
は,請求項1及び2のいずれに関しても,平成6年法律第116号による改正前の
特許法(以下「旧特許法」という。)36条4項並びに5項1号及び2号に規定す
る要件を満たしていない出願に対してなされたものであるから,同法123条1項
4号に該当するので,これを無効とする,というものである。
  具体的に,審決は,以下のような理由を述べている。
(1)本件発明1は,冬用及びオールシーズン用タイヤとそれを製造する加硫用
金型と特定され,この冬用及びオールシーズン用タイヤについて,「未走行空気入
りタイヤの接地表面に於て,断面形状が均一にコントロールされた最大1mm以下,
最小30ミクロン以上の微細凹凸高さをもつ山形(3a,3b),カマボコ形(3
c,3d),台形(3e,3f)の単一形状群及び,それらの複数形状の混合配
列,分布で,1平方センチメートル当りの凹凸数が,25個又は25列以上ある」
もの,と特定される。
  しかし,本件明細書の「【発明の詳細な説明】」(以下「本件説明」とい
う。)には,タイヤの接地表面において,最大1mm以下で最小30ミクロン以上の
微細凹凸高さを持つ冬用及びオールシーズン用タイヤについての記載はなく,1平
方センチメートル当りの凹部や凸部の数に係るものが,25個又は25列以上ある
冬用及びオールシーズン用タイヤについての記載もなく,さらに,これら冬用及び
オールシーズン用タイヤを製造する加硫用金型も記載されてない。
  本件発明2は,「タイヤ製造用金型の均一にコントロールされた形状をも
つ微細凹凸の加工方法は,石膏,砂,セラミック,ダイキャスト金型等の鋳造用鋳
型に凹凸を前もって加工する方法又は,鋳造後に金型の金属表面に機械加工,電食
(EDM)加工,エッチング加工,ショットブラスト等,いづれかの方法で加工す
る」請求項1のタイヤ製造用金型,と特定される。
  しかるに,本件説明には,タイヤ製造用金型の均一にコントロールされた
形状をもつ微細凹凸の加工方法は,石膏,砂,セラミック,ダイキャスト金型等の
鋳造用鋳型に凹凸を前もって加工する方法又は,鋳造後に金型の金属表面に機械加
工,電食(EDM)加工,エッチング加工,ショットブラスト等,いづれかの方法
で加工することについての記載はない。
  したがって,本件出願は,旧特許法36条5項1号の要件を満たしていな
い。
(2)本件発明の請求項1には,冬用及びオールシーズン用タイヤと,これを製
造する加硫用金型とが記載されている。前者は,自動車等の構成部材であり,後者
は前者を製造するのに用いられるものである。これらは,実施の態様を異にし,そ
の目的や効果,構成は,それぞれの発明に応じて存在する。発明の構成に欠くこと
のできない事項は明確に区分される。
  これらを一つの項に記載している本件発明1の特許請求の範囲の記載は,
特許を受けようとする発明の構成に欠くことのできない事項のみが記載された項に
区分されている,とはいえない。
  また,「未走行空気入りタイヤの接地表面に於て,断面形状が均一にコン
トロールされた最大1mm以下,最小30ミクロン以上の微細凹凸高さをもつ山形
(3a,3b),カマボコ形(3c,3d),台形(3e,3f)の単一形状群及
び,それらの複数形状の混合配列,分布で,1平方センチメートル当りの凹凸数
が,25個又は25列以上ある」,という部分の,凹凸数の技術的意義も不明であ
る。
  凹部と凸部は,一方が存在すれば他方が必ず存在するという関係にあるか
ら,凹部又は凸部の一方のみに注目してこれを計数することは可能であるものの,
「凹凸数」との記載では,これを,凹部又は凸部の如何なるものを対象として計数
し,把握するべきかが不明なのである。
  したがって,本件出願は,旧特許法36条5項2号の要件を満たしていな
い。
(3)前記のとおり,本件発明1の,「凹凸数」の技術的意味は不明であり,そ
して,これが如何なるものか説明する記載は本件説明中に存在しない。そうする
と,「未走行空気入りタイヤの接地表面に於て,断面形状が均一にコントロールさ
れた最大1mm以下,最小30ミクロン以上の微細凹凸高さをもつ山形(3a,3
b),カマボコ形(3c,3d),台形(3e,3f)の単一形状群及び,それら
の複数形状の混合配列,分布で,1平方センチメートル当りの凹凸数が,25個又
は25列以上ある」との技術的意味は,本件説明に照らしても不明である。本件説
明は,当業者がその実施をできる程度に,発明の効果,構成及び効果が記載されて
いるものではない。
  したがって,本件出願は,旧特許法36条4項の要件を満たしていない。
第3 原告の主張の要点
1 審決に対する認否
  審決中,「以上のことからすると,本件発明1及び2は,本件説明(判決
注・本件明細書中の「【発明の詳細な説明】」を指し,本判決の「本件説明」と同
義である。)に記載したものとはいえないから,本件出願は,平成6年改正前特許
法(平成6年法律第116号による特許法改正前のものをいう。以下同じ。)第3
6条第5項第1号に規定する要件を満たさないものである。」(6頁23行目~2
6行目),「c.以上のことから,本件出願は,平成6年改正前特許法第36条第
5項第2号に規定する要件を満たさないものである。」(7頁33行目~34行
目),「したがって,本件説明には,その発明の属する技術の分野における通常の
知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に,発明の目的,構成及
び効果が記載されていないから,本件出願は,平成6年改正前特許法第36条第4
項に規定する要件を満たさないものである。」(8頁6行目~9行目),との部分
はいずれも争う。
  その余の部分はすべて認める。
2 審決取消事由
  原告は,平成15年10月29日,本件明細書の訂正をすることについて審
判の請求を行った(甲第5号証)。この訂正が認められれば,審決は,結果とし
て,本件明細書の記載事項の認定を誤ったことになる。
第4 被告の主張の要点
  原告の先行自白は,すべて援用する。
  原告の訂正審判請求は,その内容から,認められないことが明らかである。
第5 当裁判所の判断
  原告主張の審決取消事由は,主張自体失当であることが明らかである。他に
も,審決には,取消しの事由となるべき誤りは認められない。そこで,原告の本訴
請求を棄却することとし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴
訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第6民事部
裁判長裁判官  山  下  和  明
裁判官  設  樂  隆  一
裁判官  高  瀬  順  久

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