弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 弁護人坂本建之助、同河原正和、同藤井博盛の上告趣意は、事実誤認、単なる法
令違反、量刑不当の主張であつて、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。
 所論に鑑み職権で調査すると、本件第一審判決は、本件業務上横領の所為につき、
郵便局長として公金保管の責任を負つていた一審相被告人Aを懲役二年に処し、裁
判確定の日より、四年間、右刑の執行を猶予している反面、身分がないが本件業務
上横領に加功した被告人Bを懲役二年の実刑に処する旨を判示し、量刑事情につき
相被告人Aと被告人Bとの関係、本件各犯行についての両名の役割などを説明した
後、「右の事情に加え、本件横領金のうち費消された金(金七六〇万円は費消され
ずに郵政監察官に返還された)の殆んどは、前記両会社の債務の返済や経営資金、
Cの第二会社の設立資金、預金者に対するリベート等に充てられ、被告人A自身の
個人的用途に充てられたものは殆んどないこと、しかも右費消された横領金は、被
告人Aにおいてその全額を弁償していること、被告人Aは本件後前記郵便局長を罷
めたのは勿論、現在養家を離れて謹慎の生活を送つており、相当な社会的制裁を受
けていること、一方被告人Bは、現在D教会の役員として真面目な生活をしている
ことは認められるが、被告人Aに対する前記債務の弁済に努力している跡を見出す
ことができないこと等本件証拠に顕れた諸般の事情を考慮すると、本件業務上横領
の罪につき主導的役割を果したと認められる被告人Bに対しては実刑も止むを得な
いものと考えられ、被告人Aに対しては情状により、刑の執行を猶予するのが相当
であると思料し主文掲記のとおりの刑の量定をした次第である。」と判示している。
 而して、原審においては、弁護人は、被告人Bに対し懲役二年の実刑を科した第
一審判決の量刑は重きに失するから刑の執行を猶予されたい旨主張し、原審第一回
公判において、第一審判決後の刑の量定に影響を及ぼすべき情状に関し、「金六〇
〇万円と宅地を被害弁償のため提供した事実を立証するため」との立証趣旨で、弁
護士大槻龍馬相被告人A連名の嘆願書と題する書面の取り調べを請求し、検察官は
これを証拠とすることに同意し、証拠として右の書面の取り調べがなされたことは、
原審第一回公判調書の記載上明らかである。そして、右書面には大槻龍馬が「大阪
弁護士会所属弁護士で、大阪地方裁判所に係属していたA氏に対する業務上横領被
告事件の弁護人に選任されていた関係上、第一審判決後A氏の代理人としてBに対
する債権回収に当つているものである。」「B氏は……債務の弁済について誠意を
示し、このほど、大和郡山市ab番地のc所在宅地二三九・九八平方米(時価四、
四四六、五〇〇円相当)を代物弁済として、又金六〇〇万円の内入弁済としてそれ
ぞれ提供されたのでこれを受領しました。」旨の記載がある。右立証趣旨を参酌す
れば、前記記載は、被告人Bが時価四四四万円以上の土地をAに提供したほか、金
六〇〇万円の提供をもなした趣旨のものとも読めるのであり、右の書面に記載のあ
る金六〇〇万円の弁済の点について、その事実の存在を否定したり、また、その記
載に信用性がないことを証する証拠の取り調べが原審公判でなされた形跡は記録上
全く見当らない。しかるに原判決は、「当審における事実取調の結果をも考慮する
と、被告人は当審において時価金四四四万円以上の宅地をAに提供して、同人に対
する債務の一部を返済していることが認められるので、この原判決後の情状を考慮
すると、本件は固より刑の執行を猶予すべき事犯とは考えられないけれども、原判
決の量刑は刑期の点において若干重過ぎるものと思料される。論旨は理由がある。」
と判示し、第一審判決中被告人Bに関する有罪部分を破棄し、自判して被告人Bを
懲役一年六月に処しているが、前記書面に記載のある金六〇〇万円の弁済の点につ
いては、全く言及していない。原判決の「債務の一部を弁済していることが認めら
れる」との判示に鑑れば、原審は、六〇〇万円の弁済の点にりいての前記書面の記
載を看過したか、若しくは、その記載部分を措信していないものと思料されるので
ある。金六〇〇万円の債務の弁済がなされているとすれば、Aに対し被告人Bが求
償に応ずべき債務の全部が返済されたことになる事実関係にあると認められる本件
においては、金六〇〇万円の弁済の有無は、第一審判決後の情状についての重要な
事実であり、量刑に重大な影響を及ぼす事実であるのであるから、その事実を看過
したり、もしくは、何ら反証がないのに、その事実についての前記記載を措信せず、
時価金四四四万円以上の宅地を代物弁済として提供した限度において債務の一部が
返済されているにとどまると認定している原判決には、刑の量定に影響を及ぼすべ
き情状に関する重大な事実の誤認がある疑があり、これを破棄しなければ、著しく
正義に反するものと認められる。
 よつて刑訴法四一一条三号により原判決を破棄し、さらに審理を尽くさせるため、
同法四一三条本文により本件を原裁判所に差戻すこととし、裁判官全員一致の意見
で主文のとおり判決する。
 検察官山室章 公判出席
  昭和四七年二月一七日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岸       盛   一
            裁判官    岩   田       誠
            裁判官    大   隅   健 一 郎
            裁判官    藤   林   益   三
            裁判官    下   田   武   三

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