弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人浜田次雄の上告理由について
 一 本件は、被上告人の上告人に対する貸金債務が時効により消滅したことを理
由として、被上告人がその不存在確認を求める事件である。原審の確定した事実関
係は、次のとおりである。
 1 上告人の亡夫D(以下「D」という。)は、被上告人に対し、昭和四八年一
月一〇日から同年六月五日までの間、五回にわたり、合計二七五〇万円を貸し渡し
た(弁済期は、内金一〇〇〇万円につき昭和五〇年四月末日、内金一七五〇万円に
つき昭和五元年四月末日)。
 2 Dは、昭和五一年一一月二二日、右金銭消費貸借契約に基づく債権(以下「
本件貸金債権」という。)の内金一〇〇〇万円を被保全債権として、被上告人所有
の原判決別紙物件目録記載(一)ないし(五)の各不動産に対する仮差押命令(以
下「本件仮差押え」という。)を得て、同月二五日、仮差押えの登記を了した。
 3 Dは、昭和五四年、被上告人に対し、本件貸金債権について支払を求める本
案訴訟を提起し(京都地方裁判所昭和五四年(ワ)第五九二号貸金請求事件)、昭
和五五年三月一八日、Dの請求どおり、二七五〇万円及び内金一〇〇〇万円に対す
る昭和五〇年五月一日から、内金一七五〇万円に対する昭和五一年五月一日から、
各支払済みまで年三割の割合による遅延損害金の支払を命ずる判決(以下「本件判
決」という。)が言い渡され、同年四月三日ころ、本件判決は確定した。
 4 原判決別紙物件目録記載(一)及び(二)の各不動産について、昭和五五年
一〇月、Dの申立てにより、本件判決を債務名義として、強制競売手続が開始され、
その後、昭和五七年一〇月一四日ころ、Dが配当を受けたことによって右手続は終
了した。
 5 原判決別紙物件目録記載(三)ないし(五)の各不動産については、仮差押
えの登記が存しており、本件仮差押命令の執行保全の効力が、仮差押命令の取消し、
申請の取下げ等によって消滅した事実はない。
 6 Dは、平成五年九月三〇日に死亡し、相続により上告人が本件貸金債権を承
継した。
 7 被上告人は、平成六年一月一一日、本件訴訟を提起し、本件貸金債権につき、
消滅時効を援用した。
 二 原審は、右事実関係の下において、次のとおり判示して、本件仮差押えの被
保全債権につき、消滅時効の完成を肯定して、被上告人の債務不存在確認請求を認
容すべきものとした。
 1 時効中断事由としての不動産仮差押えの手続は、仮差押えの登記と仮差押命
令の債務者への送達とが終わった時に終了し、その時から新たな時効が進行を開始
するというべきであり、仮に、そうでないとしても、仮差押え後、被保全債権につ
いて本案の勝訴判決が確定した場合には、仮差押えによる時効中断の効力は、確定
判決の時効中断の効力に吸収され、判決確定後一〇年の時効期間の経過により右債
権は消滅すると解すべきである。
 2 本件貸金債権については、本件仮差押えの登記及びその直後に終了したと推
認される仮差押命令の被上告人への送達により、いったん中断された時効が進行を
開始し、本案訴訟提起により再び時効が中断されて(そうでないとしても、その時
まで本件仮差押えによる時効中断の効力が存続した後)、昭和五五年四月三日ころ、
本件判決の確定により時効が進行を開始し、その後、同年一〇月、原判決別紙物件
目録記載(一)及び(二)の各不動産に対する差押えによって時効が中断し、昭和
五七年一〇月一四日ころ、右執行手続が終了した後、新たに時効が進行を開始し、
その後一〇年を経過することにより、時効が完成した。
 三 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次の
とおりである。
 1 仮差押えによる時効中断の効力は、仮差押えの執行保全の効力が存続する間
は継続すると解するのが相当である(最高裁昭和五八年(オ)第八二四号同五九年
三月九日第二小法廷判決・裁判集民事一四一号二八七頁、最高裁平成二年(オ)第
一二一一号同六年六月二一日第三小法廷判決・民集四八巻四号一一〇一頁参照)。
けだし、民法一四七条が仮差押えを時効中断事由としているのは、それにより債権
者が、権利の行使をしたといえるからであるところ、仮差押えの執行保全の効力が
存続する間は仮差押債権者による権利の行使が継続するものと解すべきだからであ
り、このように解したとしても、債務者は、本案の起訴命令や事情変更による仮差
押命令の取消しを求めることができるのであって、債務者にとって酷な結果になる
ともいえないからである。
 また、民法一四七条が、仮差押えと裁判上の請求を別個の時効中断事由と規定し
ているところからすれば、仮差押えの被保全債権につき本案の勝訴判決が確定した
としても、仮差押えによる時効中断の効力がこれに吸収されて消滅するものとは解
し得ない。
 2 これを本件についてみると、前記の事実関係によれば、原判決別紙物件目録
記載(三)ないし(五)の各不動産については、本件仮差押えの執行保全の効力が
現在まで存続しているのであるから、本件仮差押えの被保全債権について時効は中
断しているものといわなければならない。したがって、以上と異なり、右債権につ
いて消滅時効の完成を肯定した原判決の判断には、法令の解釈適用を誤った違法が
あり、その違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は理由が
あり、原判決は破棄を免れない。そして、本件仮差押えの被保全債権の残存額につ
いて、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととする。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    千   種   秀   夫
            裁判官    園   部   逸   夫
            裁判官    尾   崎   行   信
            裁判官    元   原   利   文
            裁判官    金   谷   利   廣

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛