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平成23年8月30日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成21年(ワ)第8390号特許権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日平成23年5月17日
判決
ドイツ連邦共和国プラッハ<以下略>
原告アイピーコムゲゼルシャフトミットベ
シュレンクテルハフツングウントコ
ンパニーコマンディートゲゼルシャフト
訴訟代理人弁護士片山英二
同服部誠
訴訟代理人弁理士小林純子
同加藤志麻子
同萩原誠
補佐人弁理士黒川恵
同蟹田昌之
東京都港区<以下略>
被告イー・モバイル株式会社訴訟承継人
イー・アクセス株式会社
訴訟代理人弁護士窪田英一郎
同柿内瑞絵
同乾裕介
同今井優仁
同野口洋高
同中岡起代子
同熊谷郁
訴訟代理人弁理士三木友由
同宗田悟志
主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1被告は,別紙物件目録記載の伝送方法(伝送サービス)を使用してはならな
い。
2被告は,別紙物件目録記載の携帯電話を輸入,販売してはならない。
3被告は,前項記載の携帯電話を廃棄せよ。
4被告は,原告に対し,1億5100万円及びこれに対する平成21年4月9
日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
1事案の要旨
本件は,後記2ア記載の特許権を有する原告が,訴訟承継前被告イー・モ
バイル株式会社(以下「イー・モバイル」という。)及び被告による別紙物件
目録1ないし4記載の携帯電話(以下「被告各製品」と総称し,同目録1記載
の携帯電話を「被告製品1」,同目録2記載の携帯電話を「被告製品2」など
という。)の輸入及び販売並びに被告各製品を用いた添付ファイル付きメール
の伝送サービス(以下「被告方法」という。)の使用が上記特許権の侵害に当
たる旨主張して,被告に対し,特許法100条1項及び2項に基づき,被告方
法の使用,被告各製品の輸入及び販売の差止め並びに被告各製品の廃棄を求め
るとともに,特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。
2争いのない事実等(証拠の摘示のない事実は,争いのない事実又は弁論の全
趣旨により認められる事実である。)
当事者
ア原告は,移動電話通信サービスに係る技術の活用を業とするドイツ国法
人である。
イイー・モバイルは,電気通信事業法に基づく電気通信事業,電気通信に
関する機器の開発,製造及び販売等を目的とする株式会社であった。
イー・モバイルは,本件訴訟が提起された後の平成23年3月31日,
被告に吸収合併され,被告がその債権債務を包括承継した。
原告の特許権
アドイツ国法人ローベルトボツシユゲゼルシヤフトミツトベシ
ユレンクテルハフツング(以下「ボツシユ社」という。)は,平成11
年10月16日,発明の名称を「伝送フレーム及び伝送フレームを有する
無線ユニット」とする発明について特許出願(優先権主張日平成10年1
2月8日・優先権主張国ドイツ,特願2000-587547号。以下「本
件出願」という。)をし,平成19年8月24日,特許第4001718
号として特許権の設定登録(請求項の数12)を受けた(以下,この特許
を「本件特許」,この特許権を「本件特許権」という。)。
原告は,平成20年4月28日,ボツシユ社から,本件特許権を譲り受
け,同年5月14日,その旨の本件特許権の移転登録が経由された。
イ本件出願に係る願書に添付した明細書(以下,図面を含めて「本件明細
書」という。)の特許請求の範囲の請求項1及び11の記載は,次のとお
りである(以下,請求項1に係る発明を「本件発明1」,請求項11に係
る発明を「本件発明2」といい,これらを「本件各発明」と総称する。)。
「【請求項1】少なくとも2つのデータフィールド(15,20,25,
30)が含まれるメッセージ信号(5)を伝送する伝送方法であって,
前記メッセージ信号(5)の第1のデータフィールド(15)に第1の
データフォーマットのデータを含め,第2のデータフィールド(20)
に該第1のデータフォーマットとは異なる第2のデータフォーマット
のデータを含める工程と,前記第1のデータフィールド(15)内に前
記メッセージ信号(5)全体の構成を表す第1の識別子(35)を挿入
する工程と,前記第1の識別子(35)に前記データフィールド(15,
20,25,30)の数,データフィールドの大きさ,又はデータフォ
ーマットの少なくともいずれか1つに関する情報を含める工程とを含
むことを特徴とするメッセージ信号の伝送方法。」
「【請求項11】少なくとも2つのデータフィールド(15,20,2
5,30)が含まれるメッセージ信号(5)を伝送する通信装置(60,
65,70)であって,前記メッセージ信号(5)の第1のデータフィ
ールド(15)に第1のデータフォーマットのデータを含め,第2のデ
ータフィールド(20)に該第1のデータフォーマットとは異なる第2
のデータフォーマットのデータを含める手段と,前記第1のデータフィ
ールド(15)内に前記メッセージ信号(5)全体の構成を表す第1の
識別子(35)を挿入する手段と,前記第1の識別子(35)に前記デ
ータフィールド(15,20,25,30)の数,データフィールドの
大きさ,又はデータフォーマットの少なくともいずれか1つに関する情
報を含める手段とを含むことを特徴とする通信装置。」
ウ本件各発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,各構成
要件を「構成要件A」,「構成要件B」などという。)。
本件発明1
A少なくとも2つのデータフィールド(15,20,25,30)が
含まれるメッセージ信号(5)を伝送する伝送方法であって,
B前記メッセージ信号(5)の第1のデータフィールド(15)に第
1のデータフォーマットのデータを含め,第2のデータフィール
ド(20)に該第1のデータフォーマットとは異なる第2のデータフ
ォーマットのデータを含める工程と,
C前記第1のデータフィールド(15)内に前記メッセージ信号(5)
全体の構成を表す第1の識別子(35)を挿入する工程と,
D前記第1の識別子(35)に前記データフィールド(15,20,
25,30)の数,データフィールドの大きさ,又はデータフォーマ
ットの少なくともいずれか1つに関する情報を含める工程とを含む
ことを特徴とする
Eメッセージ信号の伝送方法。
本件発明2
F少なくとも2つのデータフィールド(15,20,25,30)が
含まれるメッセージ信号(5)を伝送する通信装置(60,65,7
0)であって,
G前記メッセージ信号(5)の第1のデータフィールド(15)に第
1のデータフォーマットのデータを含め,第2のデータフィール
ド(20)に該第1のデータフォーマットとは異なる第2のデータフ
ォーマットのデータを含める手段と,
H前記第1のデータフィールド(15)内に前記メッセージ信号(5)
全体の構成を表す第1の識別子(35)を挿入する手段と,
I前記第1の識別子(35)に前記データフィールド(15,20,
25,30)の数,データフィールドの大きさ,又はデータフォーマ
ットの少なくともいずれか1つに関する情報を含める手段とを含む
ことを特徴とする
J通信装置。
エ本件明細書の「発明の詳細な説明」には,以下のような記載がある(甲
2。図1及び2については,別紙本件明細書の図面を参照)。
「ショートメッセージを伝送するためのショートメッセージサービスが
公知である。ショートメッセージサービスとは,通信ネットワークの加
入者に,予めこのネットワークと通信コネクションを確立する必要なく
ショートメッセージを送信するものである。これは特に移動無線システ
ムにおいて重要であり,その理由は,このシステムにおいては加入者は
頻繁に接続不能になるためである。この場合,到来したショートメッセ
ージは通信ネットワークのネットワークプロバイダによって記憶され,
それより後の時点にアドレス指定された加入者宛に伝達される。加入者
は自分宛のショートメッセージの着信を知らされるので,そのショート
メッセージをネットワークプロバイダからダウンロードできる。」(段
落【0002】),「ショートメッセージサービスの一例として,GS
M標準(GlobalSystemforMobileCommunications)によるショート
メッセージサービス(SMS)がある。このショートメッセージサービ
スは,160個までの7ビットASCIIテキスト記号(American
StandardCodeforInformationInterchange)を用いたショートメッ
セージを伝送するための伝送フレームを予め定めている。」(段落【0
003】),「より長いテキストの伝送は,ショートメッセージをつな
ぎ合わせることで可能となる。このショートメッセージサービスによ
り,簡単な移動無線端末機器によってもショートメッセージの作成と読
み取りが可能となる。このGSM標準においてはショートメッセージの
テキスト伝送しか行われないので,音声データや画像データ等のバイナ
リデータの伝送においては,これらのデータをテキストフォーマットに
変換し,その受信後に再度バイナリフォーマットに変換し直さなくては
ならない。」(段落【0004】)
「それに対し,独立請求項の構成を有する本発明の伝送フレームおよび
本発明の通信装置の利点は,メッセージ信号の第1のデータフィールド
に第1のデータフォーマットのデータが含まれ,第2のデータフィール
ドに第1のデータフォーマットとは異なる第2のデータフォーマット
のデータが含まれ,第1のデータフィールド内にメッセージ信号全体の
構成を表す第1の識別子が挿入され,第1の識別子にデータフィールド
の数,データフィールドの大きさ,又はデータフォーマットの少なくと
もいずれか1つに関する情報が含まれるという点である。これにより,
種々異なるデータを含むショートメッセージを,唯一の伝送フレームに
おいて伝送できる。このようにして,例えばテキストデータ,音声デー
タ,画像データ等の種々異なる媒体を簡単に一つのショートメッセージ
に統合することができるため,マルチメディア・ショートメッセージを
形成することができる。」(段落【0005】),「さらに有利には,
これらのデータフィールドを互いに並べることにより,テキストデー
タ,音声データ又は画像データを有する個々のデータフィールド又は媒
体のデータを簡単に分離したりダウンロードすることが可能になる。こ
れにより,ショートメッセ-ジの実際に必要な部分だけを通信ネットワ
ークのネットワークプロバイダからダウンロードすればよいので,伝送
容量の節減が可能となる。」(段落【0007】),「特に有利なのは,
第1のデータフィールドにショートメッセージの構成及び/又は内容
を表す第1の識別子を設けるという点である。これにより,ショートメ
ッセージの宛先として指定された加入者は,通信ネットワークのネット
ワークプロバイダからアドレス指定された加入者に向けた第1のデー
タフィールドのみの伝送により,特に容易にショートメッセージの構成
及び/又は内容について知ることができる。その後この情報に基づき,
アドレス指定された加入者の側で,このショートメッセージのどの部分
又はデータフィールドを通信ネットワークのネットワークプロバイダ
からダウンロードしたいかを決定することができる。」(段落【000
9】)
「図1において,60は通信ネットワーク10の第1の加入者を,65
は第2の加入者を示す。この通信ネットワーク10は,特に無線通信ネ
ットワーク,例えば移動無線ネットワークとして構成されている。この
第1の加入者60と第2の加入者65は,それぞれ通信機器として,特
に,例えば移動無線装置,業務用無線装置,携帯無線装置等として構成
されている。また図1においては,通信ネットワーク10のネットワー
クプロバイダ70が記載されており,これも同様に通信機器,特にとし
て構成することができる。」(段落【0016】),「図2に,このよ
うなショートメッセージ5の構成を図示する。ここでショートメッセー
ジ5は,伝送フレーム1において第2の加入者65からネットワークプ
ロバイダ70に伝送される。この伝送フレーム1には,第1のデータフ
ィールド15,第2のデータフィールド20,場合によっては第3のデ
ータフィールド25と第4のデータフィールド30が含まれる。第1の
データフィールド15には,ショートメッセージ5の構成を表す第1の
識別子35が含まれる。さらに第1のデータフィールド15には,ショ
ートメッセージ5の内容を表す第2の識別子40が設けられている。こ
れらの第1の識別子35と第2の識別子40を,ショートメッセージ5
の構成及び/又は内容を表す唯一の識別子にまとめることもできる。さ
らに第1のデータフィールド15には,第1のデータフォーマットのデ
ータが格納されている。第2のデータフィールド20には,第1のデー
タフォーマットとは異なる第2のデータフォーマットのデータが格納
されている。必要に応じて設けられるその他のデータフィールド25,
30にも同様にデータが格納されており,そのデータフォーマットは第
1のデータフィールド15又は第2のデータフィールド20のデータ
フォーマットと異なったものとすることもできるが,必ずしもそうする
必要はない。2つよりも多くのデータフィールドが伝送フレーム1内に
設けられていれば,それらのデータフィールドのうち少なくとも2つの
データフィールドの中にそれぞれ異なるフォーマットのデータが格納
されており,伝送フレーム1の中のこれらのデータフィールドの位置は
問題にならない。」(段落【0018】),「第1の識別子35は,シ
ョートメッセージ5の中のデータフィールド15,20,25,30の
数に関する記載を含むことができる。付加的又は選択的に第1の識別子
35は,データフィールド15,20,25,30の中に格納されたデ
ータのデータフォーマットに関する記載を含むことができる。付加的又
は選択的に,データフィールド15,20,25,30の大きさに関す
る記載も第1の識別子35の中に含めることができる。また第2の識別
子40は,データフィールド15,20,25,30の中に格納された
データのデータ形式に関する記載を含むことができる。従って第2の識
別子40は,例えば一つのデータフィールドの中に音声データが格納さ
れているのか,又は画像データが格納されているかということに関する
記載を含むことができる。」(段落【0020】)
被告の行為
ア被告各製品においては,メール機能として「EMnetメール」を利用
することができる。EMnetメールは,被告が提供するマルチメディア
メッセージングサービス(MMS)である。
MMSは,ショートメッセージサービス(SMS)を拡張してマルチメ
ディアデータを送受信できるようにしたものであり,第3世代モバイルネ
ットワークの標準化団体である3GPPの作成した標準仕様に準拠した,
テキストデータ,画像データ等の異なる形式のデータ(マルチメディアデ
ータ)を含むメールを送受信できるメッセージングサービスをいい,又は
このメッセージングサービスで送受信される当該メールをいう(なお,当
該メールは「MMSメッセージ」という場合もある。)。
被告方法は,被告各製品を用いたEMnetメールの伝送サービスであ
る。
イイー・モバイルは,平成20年3月28日から被告製品4について,同
年7月19日から被告製品3について,同年10月10日から被告製品1
について,同年12月20日から被告製品2についてそれぞれ輸入,販売
を開始し,これに伴い被告各製品のそれぞれにつき順次被告方法の提供を
開始した。その後,平成23年3月31日以降は,イー・モバイルを吸収
合併した被告が,被告各製品の輸入及び販売並びに被告方法の提供を行っ
ている。
3争点
本件の主な争点は,被告方法及び被告各製品が本件各発明の技術的範囲に属
するか否か(争点1),原告による本件各発明に係る本件特許権の行使が特許
法104条の3第1項により制限されるかどうか(争点2),原告が本件明細
書の請求項2及び12に係る発明に係る本件特許権の侵害の事実を請求原因
として追加し,訴えの追加的変更をすることが許されるかどうか,これが許さ
れるとした場合には,被告方法及び被告各製品が上記発明の技術的範囲に属す
るか否か(争点3),被告が賠償すべき原告の損害額(争点4)である。
第3争点に関する当事者の主張
1争点1(本件各発明の技術的範囲の属否)について
原告の主張
ア被告各製品を用いたEMnetメールの使用態様
EMnetメールの作成,送受信
被告各製品を用いたEMnetメールの作成,送受信の操作の概要
は,次のとおりである。別紙物件説明書は,被告製品2を用いてEMn
etメールを作成及び送信し,被告製品1を用いてこれを受信した使用
例である。
aメールの作成,送信
EMnetメール画面で「新規作成」を選択し,次いで「EMn
etメール」を選択する。
①スライド1上に「宛先」,「件名」を入力し,「ファイルの追
加」をクリックし,画像,動画,サウンドなどを添付し,テキス
トを入力する。
②添付ファイル付きメッセージを追加したい場合には,別のスラ
イド(スライド2)を開き,同様に画像,動画,サウンドなどを
添付し,テキストを入力する。同様の手順で,スライドを更に追
加することができる。
上記のように作成したEMnetメールを送信する。
bメールの受信
受信したEMnetメールは,受信側で次のように表示される。
例えば,スライド1,2の添付ファイルとして,画像及びサウンド
を添付した場合(別紙物件説明書の使用例),まず,スライド1に添
付された画像及びテキストが,サウンドの再生と同期して一体的に表
示される。次いで,サウンドの再生終了後自動的に,スライド2に添
付された画像及びテキストがサウンドの再生と同期して一体的に表
示される。
EMnetメールの構造
a別紙物件説明書の使用例で送信されたEMnetメール(以下「被
告メール」という。)の解析結果(甲13)によれば,被告メールの
メッセージ信号全体は,別紙1に示すように,「HTTPHEA
DER」,「MMSHEADER」,「JPEG1」,「MIDI」,「T
EXT1」,「JPEG2」,「AUDIO」,「TEXT2」,「U
n-knownDATA」,「SMILBODY」で構成されて
いる。
被告メールのメッセージ信号全体のうち,「メッセージ本体(BO
DY)」は,別紙1の「JPEG1」から「SMILBODY」
までの領域をいい,メッセージの内容に関するデータといえるもの
は,「JPEG1」,「MIDI」,「TEXT1」,「JPEG2」,「A
UDIO」,「TEXT2」及び「SMILBODY」の七つの領
域(ただし,網掛けした制御レコードを除く。)である。
他方,別紙1の「HTTPHEADER」と「MMSHEAD
ER」は,ヘッダー部であり,「メッセージ本体(BODY)」では
ない。
b「SMILBODY」には,SMIL(synchronizedmultimedia
integrationlanguage)で記述された,どのマルチメディアをどのよ
うに表示するかという情報が含まれている。
別紙1の「SMILBODY」のフォーマット情報(以下「S
MILフォーマット情報」という。)は,別紙2のとおりである(甲
9)。SMILフォーマット情報には,「jpg」,「mid」,「a
mr」等のデータフォーマットに関する情報が含まれている。
受信された被告メールが前記bのとおりスライドショー形式で
表示されるのは,SMILフォーマット情報によるものである。
イ構成要件の充足
被告方法及び被告各製品における「第1のデータフィールド」及び「第
1のデータフォーマットのデータ」(構成要件B,C,G,H)
a「データフィールド」とは,文字通り「データ」が含まれた「フィ
ールド」である。本件各発明は,「メッセージ信号」について「少な
くとも2つのデータフィールドが含まれる」(構成要件A,F)と規
定しているところ,これらの「データ」は,「メッセージ本体の内容,
構成に関連したデータ」でなければならないが,テキスト,音声又は
画像等のメッセージ本体の構成要素(コンテンツ)そのものに関する
データに限定されるものではない。
もっとも,本件明細書の段落【0014】には,「…この第1のデ
ータフィールドに格納されたデータは,通信ネットワークの全ての加
入者によって読み取り可能なデータフォーマットの中に存在する。」
との記載があるが,ここでいう「加入者」は,人間ではなく,いわゆ
る「移動局」のことをいい,上記「データ」を人間が判読できる「テ
キスト,音声又は画像等」に限定することの根拠になるものではな
い。「加入者」が「移動局」を意味することは,本件明細書中に,「第
1の加入者60が聞くことができない状態にある場合,即ち音声デー
タの処理や再生が不可能である場合」(段落【0031】)との記載
があることや,「第1の加入者60は記述された伝送フレーム1にお
けるショートメッセージ5を受信し,これを場合によっては保存する
及び/又は視覚的及び/又は聴覚的に再生する。」(段落【0035
】)等の記載から明らかである。
また,本件明細書の段落【0013】の「例えばこのデータフィー
ルドを用いて伝送されたデータを再生する際,より高い再生可能性が
得られる。」との記載は,データフィールドに含まれるデータが,伝
送されたデータの中身だけでなく,伝送されたデータを正確に再現す
る再生の仕方(表示の仕方等)に関するものを含むことを意味してい
る。
b被告メールのメッセージ信号における「SMILフォーマット情
報」は,メッセージに含まれるマルチメディアファイルをどのように
再生させるか(言い換えれば,マルチメディアメッセージをどのよう
にプレゼンテーションするか)という情報に関するデータであるか
ら,「メッセージ本体の内容,構成に関連したデータ」であるといえ
る。
そうすると,「SMILフォーマット情報」を含むフィールドは,
本件各発明における「データフィールド」であるから,「第1のデー
タフィールド」にほかならない。
そして,「SMILフォーマット情報」は,SMILアプリケーシ
ョン特有のデータ形式を有しており,他のデータフィールドのデータ
形式(text,audio,image等)とは異なっているこ
と,「SMILフォーマット情報」を含むフィールドには,データフ
ォーマットの情報(mid,jpg,amr等)を含み,これにより
メッセージ信号全体の構成を表す識別子が挿入されていることから
すると,被告メールのメッセージ信号における「SMILフォーマッ
ト情報」は,本件各発明の「第1のデータフィールド」に関連した要
件(構成要件BないしD,GないしI)をすべて充足するというべき
である。
cこの点に関し,被告は,後記のとおり,本件各発明の「第1のデ
ータフィールド」における「データ」とは,テキストデータ,音声
データ,画像データ等のメッセージ内容を構成するデータを意味す
るものと解すべきところ,被告メールにおけるSMILフォーマッ
ト情報は,「第1のデータフィールド」に該当しない旨主張する。
しかし,前記aで述べたとおり,本件各発明の「データフィール
ド」における「データ」は,「メッセージ本体の内容,構成に関連
したデータ」でなければならないが,テキスト,音声又は画像等の
メッセージ本体の構成要素(コンテンツ)そのものに関するデータ
に限定されるものではないから,被告の上記主張は,その前提を欠
くものであり,失当である。
また,被告は,後記のとおり,本件各発明の「第1のデータフィ
ールド」は,最初に伝送されるデータフィールドを意味するものと
解すべきところ,被告メールにおけるSMILフォーマット情報が
含まれるデータフィールドは,最初に伝送されるものではないか
ら,「第1のデータフィールド」に該当しない旨主張する。
しかし,本件各発明の効果は,「第1のデータフィールドによっ
て,メッセージの構成及び(又は)内容を知ることができる」とい
うものであるところ,この効果を奏するために必要な「第1のデー
タフィールド」の要件について,本件各発明の特許請求の範囲(請
求項1及び11)は,「第2のデータフィールド(20)には,該
第1のデータフォーマットとは異なる第2のデータフォーマット
のデータを含める」(構成要件B,G),「第1のデータフィール
ドに対して第1の識別子が挿入される」(構成要件C,H),「第
1の識別子にデータフィールドの数,データフィールドの大きさ,
又はデータフォーマットの少なくともいずれか1つに関する情報
を含める」(構成要件D,I)と規定しており,「第1のデータフ
ィールド」につき,それ以上の限定を付加すべき必要はない。
また,本件各発明において,データフィールドに付した「第
1」,「第2」という数字は,データフィールドの配列順序ではな
く,データフィールドを区別するための便宜上の呼び名でしかな
く,そのことは,本件明細書の段落【0018】に「…2つよりも
多くのデータフィールドが伝送フレーム1内に設けられていれば,
それらのデータフィールドのうち少なくとも2つのデータフィー
ルドの中にそれぞれ異なるフォーマットのデータが格納されてお
り,伝送フレーム1の中のこれらのデータフィールドの位置は問題
にならない。」と記載されていることからも明らかである。
さらに,被告は,原告が本件出願の審査過程において,審査官の
拒絶理由通知に対して提出した意見書(乙1)で,本件各発明は第
1のデータフィールドが最初に伝送される旨述べた点を被告主張
の限定解釈の根拠として挙げるが,原告が,審査過程において,「第
1のデータフィールドの第1に識別子によってメッセージ信号全
体の構成および/または内容を受信機で最初に知ることができま
す。」と述べたのは,単に本件各発明の利点の一つを述べたにすぎ
ないものであり,被告主張の根拠となるものではない。
したがって,被告の上記主張は理由がない。
さらに,被告は,後記のとおり,「第1のデータフォーマット」
の「データ」と「識別子」とは別物であると解すべきところ,被告
方法及び被告各製品のSMILフォーマット情報を含むデータフ
ィールドでは,「データ」と「識別子」が区別できないから,「第
1のデータフィールド」に該当しない旨主張する。
しかし,「識別子」は,何らかの識別をするために用いられる「情
報」にすぎず,当該識別の役割を果たすことができれば,その挿入
のされ方については何ら制限などないというのが当業者の技術常
識であるから,「データ」と「識別子」は明確に区別される必要は
ないといえる。また,第1のデータフィールドに含まれる「データ」
自体,情報の一種であることからして,技術的にみて,これが「第
1の識別子」とは「別の物」として区別できなくてはならないなど
という理由はない。
また,本件明細書の段落【0026】,【0027】に示されて
いるのは,単なる実施例であるから,そこで,「識別子」がデータ
フィールドの「データ」と区別されている例が示されているからと
いって,本件各発明においては,常に「第1のデータフォーマット
のデータ」と「第1の識別子」が区別されなければならないとはい
えない。
したがって,被告の上記主張は理由がない。
「メッセージ信号全体の構成を表す第1の識別子」(構成要件C,H)
の意義
a本件各発明の特許請求の範囲及び本件明細書の発明の詳細な説明
の記載(段落【0020】,【0026】,図2及び3等)を参酌す
ると,本件各発明の「メッセージ信号全体の構成を表す第1の識別子」
にいう「メッセージ信号全体の構成」とは,「メッセージを送る際に,
送信される信号全部」を意味するものではなく,「メッセージ信号に
おけるデータフィールド全体の構成」をいうものと解すべきである。
そして,ここにいう「データフィールド」とは,「メッセージ本体
の内容,構成に関連したデータを含むフィールド」を意味するものと
解すべきであるから(前記a),本件各発明の「メッセージ信号全
体の構成を表す第1の識別子」とは,「メッセージ信号におけるデー
タフィールド(メッセージ本体の内容,構成に関連したデータを含む
フィールド)全体の構成を表す第1の識別子」をいうものと解するの
が相当である。
したがって,メッセージ信号に本件各発明でいう「データフィール
ド」以外のフィールドが含まれていたとしても,「第1の識別子」は,
その構成まで示す必要はない。
bしかるところ,前記bのとおり,被告メールにおけるSMILフ
ォーマット情報には,添付されるマルチメデイアのデータフォーマッ
トの情報(mid,jpg,amr等)が含まれており,これらの情
報は,メッセージ信号におけるデータフィールド全体の構成を表して
いるといえるから,SMILフォーマット情報内に「第1の識別子」
が挿入されているといえる。
したがって,被告方法及び被告各製品は,構成要件C,Hを充足す
る。
cこの点に関し,被告は,後記のとおり,本件各発明の「メッセージ
信号全体の構成を表す第1の識別子」にいう「メッセージ信号全体」
とは,ヘッダー部分を含むメッセージ信号全体であると解すべきとこ
ろ,被告メールにおけるSMILフォーマット情報には,別紙1の
MMSHEADERについての情報が含まれていないから,SMI
Lフォーマット情報内に本件各発明の「メッセージ信号全体の構成を
表す第1の識別子」が存在しない旨主張する。
しかし,被告メールにおけるMMSHEADERは,「MMSメ
ッセージを送受信するための制御データ部全体」であって,「メッセ
ージ本体(BODY)」とは異なるヘッダー部であり,「メッセージ
本体の内容,構成に関連したデータ」(換言すると,「再生されるメ
ッセージの内容,中身に関係したデータ」)を含むものではないか
ら,「メッセージ信号全体」に含まれない。
したがって,被告の上記主張は理由がない。
ウ小括
以上によれば,被告方法及び被告各製品は,本件各発明の構成要件をす
べて充足するから,その技術的範囲に属する。
被告の主張
ア被告各製品を用いたEMnetメールの使用態様
被告各製品においては,EMnetメールの「MMSHEADER」
を含むヘッダー部分が,シグナリングチャネルを介して受信端末にまず伝
送され,メッセージがあったことが通知され,次にデータチャネルを介し
てメッセージ内容全文がダウンロードできる構成となっている。
そして,被告各製品においては,受信端末で送受信モードを手動に設定
することにより,ヘッダー部分が送信され,題名と差出人の情報が表示さ
れた後,全文受信するかどうかを受信者が決定し,残りのメッセージ内容
全文をダウンロードするような方法を採用することも可能である。しか
し,この手動モードにおいても,メッセージ内容全文をダウンロードする
かどうかのみの指定しかできず,メッセージに含まれる画像や音声のデー
タをそれぞれ別々に選択してダウンロードすることはできない。
イ構成要件の非充足
以下に述べるとおり,被告方法及び被告各製品には,本件各発明の「第
1のデータフィールド」及び「第1の識別子」が存在しないので,構成要
件B,C,D,G,H,Iを充足せず,その技術的範囲に属さない。
「第1のデータフィールド」(構成要件B,C,G,H)の不存在
a本件各発明の技術的意義
本件各発明は,伝送容量が限定されているシグナリングチャネルを
介してテキストデータのみの伝送を行っていたショートメッセージ
を利用して,テキストデータ以外の音声,画像といったマルチメディ
アデータを一つのショートメッセージに統合して伝送すること及び
その際に伝送容量を削減することを課題とし,この課題を解決するた
めの構成として,受信端末が再生できないようなデータや,ユーザの
関心のないデータを伝送しないようにするため(本件明細書の段落【
0005】,【0007】,【0021】),テキストデータ,音声
データ,画像データをそれぞれのデータフィールドに分けて伝送する
という構成(構成要件B,G)を採用し,かつ,第1のデータフィー
ルドに,メッセージ信号全体の構成を示す第1の識別子を設ける構
成(構成要件C,D,H,I)を採用したものである。
このように本件各発明においては,テキストデータ,音声データ,
画像データをそれぞれのデータフィールドに分けて伝送する構成を
採用したことにより,テキストデータ,音声データ又は画像データを
有する個々のデータフィールドを簡単に分離したり,ダウンロードす
ることが可能となり,ショートメッセージの実際に必要な部分だけを
通信ネットワークプロバイダからダウンロードすればよくなり,伝送
容量の節減が可能となるという効果を奏し(本件明細書の段落【00
05】,【0007】),また,ショートメッセージの全体の構成(メ
ッセージ信号全体の構成)を示す第1の識別子を第1のデータフィー
ルドに設けることにより,受信端末に第1のデータフィールドのみを
伝送すれば,受信端末のユーザは容易にショートメッセージの構成に
ついて知ることができ,ショートメッセージのうちどのデータフィー
ルドを通信ネットワークのネットワークプロバイダからダウンロー
ドしたいかを決定することができ,伝送容量を削減できるという効果
を奏している(段落【0007】,【0009】)。
b「第1のデータフィールド」の意義
本件各発明の「第1のデータフィールド(15)」は,「第1の
データフォーマットのデータ」を含むものであるところ(構成要件
B,G),「データフィールド」に含まれる「データ」は,テキス
トデータ,音声データ,画像データ等のメッセージ内容を構成する
データである。
本件各発明は,前記aで述べたように,テキストデータ,音声デ
ータ又は画像データの個々の異なる媒体を簡単に一つのショート
メッセージに統合するために,テキスト,音声又は画像をそれぞれ
のデータフィールドに含ませ,個々のデータフィールド又は媒体の
データを簡単に分離したり,ダウンロードしたりすることを可能に
したものであり,本件明細書の実施例にも,「データフィールド」
に含まれる「データ」としては,加入者に対して表示又は再生され
るメッセージ内容の構成要素そのものであるテキストデータ,音声
データ又は画像データのみが開示され(段落【0021】,【00
24】,【0026】ないし【0028】,【0031】,【00
33】等),他のデータについては全く記載がない。
したがって,「第1のデータフィールド」に含まれる「第1のデ
ータフォーマットのデータ」とは,メッセージ内容を構成するデー
タを意味する。
この点に関し,原告は,「第1のデータフィールド」における「デ
ータ」とは,「メッセージ内容を構成するテキスト,音声又は画像
のデータ」に限定されるものではなく,「メッセージ本体の内容,
構成に関連したデータ」を含む旨主張するが,本件明細書において,
そのような解釈を示唆する記載は一切ない。
本件各発明の「第1のデータフィールド」は,ネットワークプロ
バイダが受信端末からの要求を受けて,他のフィールドの伝送より
も前に,最初に伝送されるデータフィールドを意味する。
このことは,本件明細書の段落【0009】,【0021】の記
載や,ボツシユ社が本件出願過程で審査官の拒絶理由通知に対して
提出した平成19年6月27日付け意見書(乙1)で「2.本発明
の利点」として,「第1のデータフィールドの第1の識別子によっ
て,メッセージ信号全体の構成および/または内容を受信機で最初
に知ることができます。」と述べて,「第1のデータフィールド」
が「最初に」伝送されるものである旨主張していることから明らか
である。
この点に関し,原告は,データフィールドに付した「第1」,「第
2」は,データフィールドの配列順序ではなく,データフィールド
を区別するための便宜上の呼び名でしかない旨主張するが,第1の
データフィールドが,第2のデータフィールドよりも後に伝送され
たのでは,受信端末の使用者が,ショートメッセージのどのデータ
フィールドを選択するかの決定をすることが不可能となってしま
い,メッセージ信号全体の構成や内容を受信機で最初に知ることも
不可能となってしまうのであるから,失当である。原告の指摘する
本件明細書の段落【0018】は,データを送る順番は問題ではな
く,少なくとも最初に送られる「第1のデータフィールド」に第1
の識別子が含まれていればよいということを述べているにすぎな
い。
次に,請求項1及び11には,「第1のデータフィールド(15)
に第1のデータフォーマットのデータを含め」(構成要件B,
G),「前記第1のデータフィールド(15)内に…第1の識別子(3
5)を挿入する」(構成要件C,H)との記載がされていることか
ら明らかなように,第1のデータフィールドには「データ」に加え
て,「識別子」を挿入しているのであるから,「データ」と「識別
子」は特許請求の範囲の記載上も別の物と扱われている。
また,実施例においても,識別子(第2の識別子)は,データフ
ィールドに含まれるデータに関する情報を示すもの(本件明細書の
段落【0019】等)という使い方をしており,「データ」と「識
別子」は別の物として扱っている。
したがって,「第1のデータフィールド」に含まれる「データ」
と「識別子」は別の物であるから,同じ情報が,データであり,同
時に識別子となることはありえない。
この点に関し,原告は,本件明細書の段落【0023】,【00
33】に,「識別子」が「データ」として記載されていることを理
由に,「第1のデータフォーマット」の「データ」と「識別子」が
同じでもよい旨主張する。しかしながら,これらの記載は,「第1
のデータフィールド」の「データ」と「識別子」が共通であること
を示したものではなく,単に識別子をデータと呼んだにすぎないも
のであり,実施例においても,「第1のデータフォーマット」の「デ
ータ」としてテキスト,音声又は画像が示され,「識別子」は,識
別子以外のこれらのデータのデータフィールドの数,データの大き
さ,データフォーマットを示しており(例えば,本件明細書の段落
【0026】,【0027】),「データ」と「識別子」とは別に
扱っているのであるから,原告の主張は理由がない。
c被告メールにおけるSMILフォーマット情報
被告メールにおけるSMILフォーマット情報は,別紙2から明ら
かなように,テキストデータ,音声データ,画像データ等のメッセー
ジ内容を構成するデータを有していない。
また,被告方法及び被告各製品においては,SMILフォーマット
情報が伝送される前に,「MMSHEADER」を含むヘッダー部
分が受信端末に伝送され,SMILフォーマット情報が最初に伝送さ
れるものでもない。
さらに,被告方法及び被告各製品のSMILフォーマット情報を含
むデータフィールドでは,「データ」と「識別子」が区別できない。
以上によれば,被告メールにおけるSMILフォーマット情報を含
むフィールドは,「第1のデータフィールド」に該当しない。
「第1の識別子」(構成要件C,D,H,I)の不存在
a請求項1及び11には,「メッセージ信号(5)全体の構成を表す
第1の識別子(35)」,「第1の識別子(35)に前記データフィ
ールド(15,20,25,30)の数,データフィールドの大きさ,
又はデータフォーマットの少なくともいずれか1つに関する情報を
含める」との記載があることからすると,「第1の識別子(35)」
は,メッセージ信号に含まれるすべてのデータフィールドの数,ある
いはそれぞれのデータフィールドの大きさ,又はそれぞれのデータフ
ォーマットを示すものであると解すべきである。
b前記cのとおり,被告メールにおけるSMILフォーマット情報
を含むフィールドは「第1のデータフィールド」に該当しないが,仮
にこれが「第1のデータフィールド」に該当すると解釈したとしても,
SMILフォーマット情報には,別紙1のMMSHEADERに
ついての情報は全く含まれておらず,MMSHEADERをも含め
たデータフィールドの数,データフィールドの大きさ又はデータフォ
ーマットに関する情報が含まれていないから,「メッセージ信号全体
の構成を表す第1の識別子」が存在しない。
したがって,被告方法及び被告各製品においては,本件各発明の「第
1の識別子」が存在しない。
ウ小括
以上のとおり,被告方法及び被告各製品は,構成要件B,C,D,G,
H,Iを充足しないから,本件各発明の技術的範囲に属さない。
したがって,原告主張の被告による本件各発明に係る本件特許権の侵害
の主張は理由がない。
2争点2(本件各発明に係る本件特許権に基づく権利行使の制限の成否)につ
いて
被告の主張
本件各発明に係る本件特許には,以下のとおりの無効理由があり,特許無
効審判により無効とされるべきものであるから,特許法104条の3第1項
の規定により,原告は,被告に対し,本件各発明に係る本件特許権を行使す
ることはできない。
ア無効理由1(乙2に基づく新規性の欠如)
本件各発明は,以下のとおり,本件出願の優先日前に頒布された刊行物
である乙2(特開平10-326235号公報)に記載された発明と同一
であるから,本件各発明に係る本件特許には,特許法29条1項3号に違
反する無効理由(同法123条1項2号)がある。
特許の新規性の判断は,優先権主張がされた後の出願の国の法律に従っ
て判断されるところ,日本においては,新規性は日時で判断されているか
ら,優先権の基礎となっている第一国出願の日時を基準に新規性が判断さ
れる(乙11)。
本件出願の優先権主張の基礎となった出願は,ドイツ出願(優先権主張
番号19856440.6号)であるところ,このドイツ出願は,フ
ァクシミリでされており,その出願の日時は,当該ファクシミリのヘッダ
ー部分及びフッター部分の記載(乙12)に照らし,1998年12月8
日15時54分あるいは同日16時であり,いずれにせよ同日15時54
分以降に出願されたものである。そして,ドイツ時間の15時54分は,
日本時間の午後11時54分に対応する。
しかるところ,乙2は,平成10年(1998年)12月8日午前9時
に出願公開されているから(乙3),乙2は,本件出願の優先権出願の基
礎となったドイツ出願(同日午後11時54分)より前に頒布された刊行
物であるといえる。
a乙2の段落【0001】,【0020】ないし【0023】,図5
及び6(別紙乙2記載の図面参照)によれば,乙2には,①音情報と
文字・イメージ情報の付随部を複数設けたメッセージを伝送する方法
及びこれを伝送する通信装置が記載され,②音のデータフォーマット
を有する音情報を最初に含め,次の付随情報部に音のデータフォーマ
ットとは異なるデータフォーマットを持つ文字情報又はイメージ情
報を含める工程及び手段,③音情報を含むデータフィールド内に「付
随情報多重数」を挿入する工程及び手段が開示されている。
乙2記載の伝送方法及び通信装置においては,音声信号のみの場
合,音声信号に文字情報が付加された場合,音声信号に文字情報及び
イメージ情報が付加された場合が想定されており,音声信号のみの場
合は,付随情報識別コードから始まる識別情報部が付加されない状態
の信号となり,文字情報又はイメージ情報が付加された場合には,付
随情報識別コード,付随情報長,表示座標軸,付随情報部からなる文
字情報又はイメージ情報を表示するためのデータが付加される。
乙2記載の音情報,付随情報ありなしビット,付随情報多重数はひ
とまとまりの単位のデータとして本件各発明の「第1のデータフィー
ルド」に,付随情報識別コード,付随情報長,表示座標軸,付随情報
部はひとまとまりの単位のデータとして「第2のデータフィールド」
に,付随情報多重数は「メッセージ信号全体の構成を表す第1の識別
子」にそれぞれ相当する。付随情報多重数は,メッセージ信号に音情
報以外の文字やイメージ情報等の付随情報がいくつ存在するかを示
す情報であるから,「データフィールドの数」に関する情報である。
以上によれば,乙2記載の伝送方法及び通信装置は,「少なくとも
2つのデータフィールド(15,20,25,30)が含まれるメッ
セージ信号(5)」を伝送する伝送方法及びこれを伝送する通信装置
であって(構成要件A,E,F,J),上記②の工程及び手段は,「前
記メッセージ信号(5)の第1のデータフィールド(15)に第1の
データフォーマットのデータを含め,第2のデータフィールド(20)
に該第1のデータフォーマットとは異なる第2のデータフォーマッ
トのデータを含める」工程及び手段(構成要件B,G)に当たり,上
記③の工程及び手段は,「前記第1のデータフィールド(15)内に
前記メッセージ信号(5)全体の構成を表す第1の識別子(35)を
挿入する」工程及び手段(構成要件C,H)に当たるとともに,「前
記第1の識別子(35)に前記データフィールド(15,20,25,
30)の数,データフィールドの大きさ,又はデータフォーマットの
少なくともいずれか1つに関する情報を含める」工程及び手段(構成
要件D,I)に当たるといえる。
bそうすると,本件各発明は,乙2記載の伝送方法及び通信装置と同
一であるから,新規性が欠如している。
イ無効理由2(乙4に基づく新規性の欠如)
本件各発明は,以下のとおり,本件出願の優先日前に頒布された刊行物
である乙4(米国特許第5,802,314号明細書)に記載された発明
と同一であるから,本件各発明に係る本件特許には,特許法29条1項3
号に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。
乙4には,①「画像,音声,テキスト,その他のタイプの情報をひと
つのメッセージ」に送信する方法において,メッセージを「1又はそれ
以上のページ」に分けて伝送すること(カラム1の20行~22行,カ
ラム7の51行,図3A(別紙乙4記載の図面参照)),②ヘッダブロ
ック64に,送信者,受信者,伝送媒体及び電話番号,日付,メッセー
ジの時間を含ませ,異なるタイプのデータをページZに含める工程及び
手段(カラム7の52行~58行,図3A),③ヘッダブロック64にマ
ルチメディアメッセージに含まれるページ数を挿入する工程及び手
段(カラム7の58行~59行,図3A)が開示されている。
乙4記載の伝送方法及び通信装置において,送信者,受信者,伝送媒
体及び電話番号,日付,メッセージの時間を含ませるヘッダブロックは
本件各発明の「第1のデータフィールド」に,ページZは「第2のデー
タフィールド」に,ページ数は「メッセージ信号全体の構成を表す第1
の識別子」にそれぞれ相当する。ページ数は,メッセージにいくつのペ
ージが含まれるかを示す情報であるから,「データフィールドの数」に
関する情報である。
以上によれば,乙4記載の伝送方法及び通信装置は,「少なくとも2
つのデータフィールド(15,20,25,30)が含まれるメッセー
ジ信号(5)」を伝送する伝送方法及びこれを伝送する通信装置であっ
て(構成要件A,E,F,J),上記②の工程及び手段は,「前記メッ
セージ信号(5)の第1のデータフィールド(15)に第1のデータフ
ォーマットのデータを含め,第2のデータフィールド(20)に該第1
のデータフォーマットとは異なる第2のデータフォーマットのデータ
を含める」工程及び手段(構成要件B,G)に当たり,上記③の工程及
び手段は,「前記第1のデータフィールド(15)内に前記メッセージ
信号(5)全体の構成を表す第1の識別子(35)を挿入する」工程及
び手段(構成要件C,H)に当たるとともに,「前記第1の識別子(3
5)に前記データフィールド(15,20,25,30)の数,データ
フィールドの大きさ,又はデータフォーマットの少なくともいずれか1
つに関する情報を含める」工程及び手段(構成要件D,I)に当たると
いえる。
そうすると,本件各発明は,乙4記載の伝送方法及び通信装置と同一
であるから,新規性が欠如している。
ウ無効理由3(乙15に基づく新規性の欠如)
本件各発明は,以下のとおり,本件出願の優先日前に頒布された刊行物
である乙15(Bosch「GeneralisedStructureforaMultimediaMessaging
Service」(訳文・ボツシユ社作成の「マルチメディアメッセージングサ
ービスの一般化された構成」と題する文献))に記載された発明と同一で
あるから,本件各発明に係る本件特許には,特許法29条1項3号に違反
する無効理由(同法123条1項2号)がある。
乙15は,ボツシユ社が1998年(平成10年)12月2日から3
日にドイツ国ハノーバーで開催されたETSI(欧州電気通信標準化機
構)標準化委員会の会議で頒布した刊行物である。
乙15には,次のような記載がある。
a「概要」において,ショートメッセージサービス(SMS)の普及
に伴い,SMSサービスを利用して,複数の異なるメディアのデータ
を有するマルチメディアメッセージングサービス(MMS)に拡張す
ることが重要であること,SMSを利用したMMSを行うには異なる
性能を持つターミナル間で互換性を有するように,MMSを標準化す
ることが不可欠であり,互換性のためには,ターミナルが処理可能な
メッセージ部分のみを受信することができるように,コンテンツのタ
イプや大きさといった充分な情報を提供することが重要であること
が述べられている(原文1頁5行~17行,訳文1頁本文1行~末
行)。
b「一般化された構成」において,SMS(テキスト),FAX,ス
ピーチ,オーディオ,イメージ,ビデオといった複数の異なるメディ
アをマルチメディアコンテンツに統合していることが述べられてい
る(原文1頁20行~21行,訳文2頁本文2行~5行)。
c図1(別紙乙15記載の図面参照)は,これらのSMS(テキスト),
FAX,スピーチ,オーディオ,イメージ,ビデオは,それぞれ異な
るフォーマットのデータとなっており,それぞれが独立してデータフ
ィールドを構成していることを示している。
d最初に送信されるSMSの部分に,その後に続くFAX,スピーチ,
オーディオ,イメージ,ビデオのタイプや大きさを示す内容情報が挿
入されている(原文1頁20行~21行,訳文2頁本文2行~5行)。
この内容情報は,マルチメディアメッセージに含まれるFAX,スピ
ーチ,オーディオ,イメージ,ビデオのタイプ(フォーマット)や大
きさを含み,メッセージ信号全体の構成を表しており,また,それぞ
れの情報を含むものであるから,それぞれの情報の数を示したものと
なっている。
eこのような構成としたことにより,ターミナルのユーザが,この内
容情報に基づいてマルチメディアメッセージをダウンロードしたい
か,どの部分をダウロードしたいか等を決定することができるという
効果が得られることが述べられている(原文2頁5行~10行,訳文
3頁3行~8行)。
上記によれば,乙15には,SMS(テキスト),FAX,スピー
チ,オーディオ,イメージ,ビデオといった複数の異なるメディアをマ
ルチメディアコンテンツに統合してメッセージを伝送する方法又は装
置が記載され,SMS(テキスト),FAX,スピーチ,オーディオ,
イメージ,ビデオがそれぞれデータフィールドを構成しているから,こ
の装置又は方法は,「少なくとも2つのデータフィールド(15,20,
25,30)が含まれるメッセージ信号(5)」を伝送する伝送方法及
びこれを伝送する通信装置(構成要件A,E,F,J)に当たるといえ
る。
そして,乙15には,前記b及びcのとおり,第1のデータフィー
ルドに,テキストメッセージからなるSMSを含め,第2のデータフィ
ールドに,テキストとは異なるフォーマットのFAX,スピーチ,オー
ディオ,イメージ,ビデオのデータを含める工程及び手段が記載されて
いる。この工程及び手段は,「メッセージ信号(5)の第1のデータフ
ィールド(15)に第1のデータフォーマットのデータを含め,第2の
データフィールド(20)に該第1のデータフォーマットとは異なる第
2のデータフォーマットのデータを含める」工程及び手段(構成要件B,
G)に当たるといえる。
また,乙15には,前記dのとおり,「SMSの部分に,その後に
続くFAX,スピーチ,オーディオ,イメージ,ビデオのタイプや大き
さを示す内容情報を挿入する」工程及び手段が記載されている。この工
程及び手段は,「前記第1のデータフィールド(15)内に前記メッセ
ージ信号(5)全体の構成を表す第1の識別子(35)を挿入する」工
程及び手段(構成要件C,H)に当たるとともに,「前記第1の識別子(3
5)に前記データフィールド(15,20,25,30)の数,データ
フィールドの大きさ,又はデータフォーマットの少なくともいずれか1
つに関する情報を含める」工程及び手段(構成要件D,I)に当たると
いえる。
そうすると,本件各発明は,乙15記載の伝送方法及び通信装置と同
一であるから,新規性が欠如している。
エ無効理由4(乙13に基づく新規性の欠如)
本件各発明は,以下のとおり,本件出願の優先日前に頒布された刊行物
である乙13(国際公開第97/16919号公報)に記載された発明と
同一であるから,本件各発明に係る本件特許には,特許法29条1項3号
に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。
乙13には,①テキスト,グラフィックス,イメージを含むメッセー
ジ信号を,衛星を介してファクシミリターミナル間で通信するための装
置及び方法(原文12頁6行~15頁17行,19頁9行~22頁22
行,訳文3頁15行~6頁9行),②FIG.14(別紙乙13記載の
図面参照)に示すように,固定ファクシミリターミナル24が,PST
N22を介して第3のファクシミリインタフェースユニット(FIU)
20に接続され,FIU20は,固定地上局18及び衛星16を介して
メッセージ信号を含む信号を移動地上局に伝送すること(原文12頁6
行~20行,訳文1頁本文1行~11行),③メッセージ信号は,FI
U20の伝送制御ユニット38によって生成され,先頭部分750と,
テキストヘッダ部分762と,文字部分764と,座標データ部分77
2と,ベクトルグラフィックスデータ774と,イメージ領域座標78
2と,イメージデータ784とを含むこと(原文21頁12行~22頁
22行,訳文5頁6行~9行),④FIG.12(別紙乙13記載の図
面参照)に示すように,第1のデータフィールドには,テキスト部分7
60が含まれており,Lempel-Zivアルゴリズムに基づきテキ
スト圧縮されたデータとなっていること(原文20頁9行~18行,訳
文4頁8行~15行),⑤第2のデータフィールドには,グラフィック
ス(例えば,FIG.13のG1に示されるようなグラフ)のラインベ
クトルを再現するためのデカルト座標又は極座標を与えるベクトルグ
ラフィックスデータ774が含まれており,テキスト部分とは異なるデ
ータフォーマットのデータとなっていること(原文20頁9行~18
行,訳文4頁8行~15行),⑥先頭部分750に,メッセージ信号に
含まれるテキスト,グラフィックス及びイメージの領域数の情報,及び
用いられている圧縮のタイプ(例えばテキストのみ,テキスト及びグラ
フィックス,又はテキスト,グラフィックス及びイメージ)の情報を含
ませること(原文1頁12行~22頁22行,訳文5頁6行~6頁9行)
が開示されている。
乙13では,メッセージ信号は,テキスト,グラフィックス,イメー
ジといった内容ごとのひとかたまりのデータを構成しており,先頭部分
750,テキストヘッダ部分762及び文字部分764のそれぞれがデ
ータフィールドであるといえる。先頭部分750に含まれる領域数の情
報及び圧縮のタイプは,本件各発明の「メッセージ信号全体の構成を表
す第1の識別子」に相当し,また,この領域数の情報はデータフィール
ドの数に関する情報,圧縮のタイプはデータフォーマットに関する情報
である。
以上によれば,乙13記載のメッセージ信号の伝送方法及び通信装置
は,「少なくとも2つのデータフィールド(15,20,25,30)
が含まれるメッセージ信号(5)」を伝送する伝送方法及びこれを伝送
する通信装置であって(構成要件A,E,F,J),上記④及び⑤のと
おり,第1のデータフィールドに,テキストデータからなるテキスト部
分760を含め,第2のデータフィールドにベクトルグラフィックスデ
ータ774を含める工程及び手段は,「前記メッセージ信号(5)の第
1のデータフィールド(15)に第1のデータフォーマットのデータを
含め,第2のデータフィールド(20)に該第1のデータフォーマット
とは異なる第2のデータフォーマットのデータを含める」工程及び手
段(構成要件B,G)に当たり,上記⑥のとおり,先頭部分750に,
メッセージ信号に含まれるテキスト,グラフィックス及びイメージの領
域数の情報,及び用いられている圧縮のタイプを挿入する工程及び手段
は,「前記第1のデータフィールド(15)内に前記メッセージ信号(5)
全体の構成を表す第1の識別子(35)を挿入する」工程及び手段(構
成要件C,H)に当たるとともに,「前記第1の識別子(35)に前記
データフィールド(15,20,25,30)の数,データフィールド
の大きさ,又はデータフォーマットの少なくともいずれか1つに関する
情報を含める」工程及び手段(構成要件D,I)に当たるといえる。
そうすると,本件各発明は,乙13記載の伝送方法及び通信装置と同
一であるから,新規性が欠如している。
オ無効理由5(進歩性の欠如)
仮に無効理由1ないし4が認められないとしても,本件各発明は,乙2,
4ないし7,13及び15記載の発明に基づいて,当業者が容易に想到す
ることができたものであるから,本件各発明に係る本件特許には,特許法
29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。
原告の主張
ア無効理由1に対し
被告は,本件出願の優先権主張の効果は,優先権主張の基礎となった
ドイツ出願の日時が基準となることを前提に,乙2が公開された日は本
件出願の優先日と同日であるが,その公開された時間がドイツ出願のさ
れた時間よりも前であるから,乙2は本件出願の優先日より前に頒布さ
れた刊行物に当たる旨主張する。
しかし,パリ条約における優先権主張の効果は,優先期間の満了前ま
での間に他の同盟国においてされた後の出願等によって不利な取扱い
を受けないというものであり(パリ条約4条B),当該優先期間は,最
初の出願の日から開始する(パリ条約4条C(2))とされているだけ
である。このようにパリ条約の優先期間の開始には「日」単位の概念し
かないから,被告の上記主張は,「日時」が基準となることを前提とし
ている点において誤りがあり,乙2は本件出願の優先日より前に頒布さ
れた刊行物に当たるものとはいえない。
被告は,乙2に音情報を含むデータフィールド内に,付随情報多重数
を挿入する工程及び手段が記載され,また,乙2記載の音情報,付随情
報ありなしビット,付随情報多重数はひとまとまりの単位のデータとし
て本件各発明の「第1のデータフィールド」に,付随情報識別コード,
付随情報長,表示座標軸,付随情報部はひとまとまりの単位のデータと
して「第2のデータフィールド」に,付随情報多重数は「メッセージ信
号全体の構成を表す第1の識別子」にそれぞれ相当する旨主張する。
しかし,乙2には,①従来技術において,「音声情報のみの伝送,文
字情報のみの伝送およびイメージ情報のみの伝送とをそれぞれ独立し
て送信するようにしていた」が(段落【0002】),音声情報と文字
情報及びイメージ情報との時間的な同調は難しいという問題があった
ため,「音情報,すなわち音声を含めた音楽等の音に関する情報と文字
情報およびイメージ情報を略同時に伝送することのできる文字及びイ
メージ情報多重化方式及びその情報多重化装置を提供」するものである
こと(段落【0005】),②具体的には,「音情報を格納するフレー
ムに当該音情報に係る文字またはイメージ情報を付随させる」ように
し,かつ,「受信される音情報を格納するフレームに当該音情報に係る
文字またはイメージ情報を格納するフレームが付随しているときには
これら文字またはイメージ情報を音情報から分割」して,出力するよう
にしたもの(請求項1)であり,その分割は,付随情報部単位で行われ
ていること(図1及び6),③「音情報を格納するフレーム」,「文字
またはイメージ情報を格納するフレーム」とは,図6に示された「音情
報」,「付随情報部」を意味することが開示されている。
上記①ないし③によれば,乙2記載の発明においては,「音情
報」,「付随情報部」そのものが個々のフレームを構成し,これらのフ
レームが,本件各発明の「データフィールド」に相当することは明らか
であるから,被告が主張するように「音情報,付随情報ありなしビット,
付随情報多重数」の組,「付随情報識別コード,付随情報長,表示座標
軸,付随情報部」の組をそれぞれ「データフィールド」であると解釈す
ることはできない。
そうすると,乙2記載の発明において,「音情報」のフレームを本件
各発明の「第1のデータフィールド」に対応させたとしても,当該デー
タフィールドには「メッセージ信号全体の構成を表す第1の識別
子」(構成要件C,H)は含まれていないというべきであるから,被告
の上記主張は理由がない。
したがって,本件各発明は乙2記載の発明と同一であるとはいえな
い。
以上によれば,被告主張の無効理由1は理由がない。
イ無効理由2に対し
被告は,乙4記載の発明における伝送されるメッセージの構造が図3
Aに示されたものであることを前提に,本件各発明は乙4記載の発明と
同一である旨主張する。
しかし,乙4の図3Aに示されているのは,「マルチメディア・メッ
セージを保存するためのフォーマット」(乙4のカラム4の56行~5
8行,カラム7行の29~31行目),すなわち,装置内でマルチメデ
ィア・メッセージがどのように記憶されているかということであって,
伝送されるメッセージの構造ではない。また,乙4を全体としてみても,
伝送されるメッセージの構造の開示はない。
また,被告は,図3Aに示されたヘッダブロック64が,本件各発明
の「第1のデータフィールド」で,ページZが,本件各発明の「第2の
データフィールド」であるとして,あたかもヘッダブロック64とペー
ジZをつなげたものが,伝送されるメッセージ信号の構造であるかのよ
うな主張をする。
しかし,ヘッダブロック64には,「STATUS」情報,すなわ
ち,「既読」,「未読」あるいは「送信予定」のような,保存されたメ
ッセージに特有の情報であって,かつ,これを添付したまま送受信する
はずのない情報が含まれており,ヘッダブロック64とページZをつな
げたものは,伝送されるメッセージ信号の構造にはなりえない。
したがって,本件各発明は乙4記載の発明と同一であるとの被告の主
張は,その前提を欠くものであって,失当である。
以上によれば,被告主張の無効理由2は理由がない。
ウ無効理由3に対し
乙15には,UMTSマルチメディアメッセージングサービスに係る
構成として,①SMS,FAX,スピーチメール,オーディオメール,
イメージメールなどを「マルチメディアコンテナ」(MMC)という形
式に統合すること,②MMCには,ペイロードのタイプやサイズや能力
を示す,コンテナ単位の横断的な内容関連情報(CAI)が埋め込まれ
ていること,③MMCの前置部分であるSMSにおいては,コンテナ単
位の内容関連情報(CAI)から導出されるMMCの内容のテーブルが
ネットワークに運ばれ,次いでメッセージタイプや長さなどに関する情
報を含むMMSの前置部分がターミナルに送られること,④SMSが,
通知及び内容情報に限られていること(以上,1頁15行~19行,2
頁1行~2行,図1)が記載されている。
a被告は,乙15記載の発明におけるSMS(テキスト)が本件各発
明の「第1のデータフィールド」に相当する旨主張する。
しかし,乙15において,MMC部分が,「ペイロード」(ヘッダ
ー部分を除いたメッセージ本体。甲14)と説明されていることから
すると,乙15において「SMS」と称されているものはヘッダーで
あり,このことは,乙15に「通知と内容情報をSMSに限定する」
との記載があることとも一致する。そうすると,乙15の「SMS」
には,「メッセージ本体の内容,構成に関連したデータ」(あるい
は「テキスト,音声又は画像等のメッセージ内容を構成するデータ」)
は含まれていないと解されるから,本件各発明の「第1のデータフィ
ールド」には当たらない。
したがって,被告の上記主張は失当である。
b次に,乙15の「SMS」に含まれるのは,コンテナ単位の内容関
連情報(CAI)から導出されるMMCの内容のテーブルであり,「メ
ッセージの長さ」の情報は,個々のデータフィールドの大きさに関す
る情報であるとはいえない。
また,乙15においては,マルチメディアに関し,オーディオ,イ
メージなど,情報の種類としての説明しかされていないことからする
と,「メッセージタイプ」は,データ形式に関する情報でしかなく,
データフォーマットに関する情報とはいえない。
以上によれば,乙15記載の発明は,「第1のデータフィールド」内
に「識別子」を挿入する工程及び手段(構成要件C,H)を有しておら
ず,また,識別子に「データフィールドの数,データフィールドの大き
さ又はデータフォーマットの少なくともいずれか1つに関する情報」を
工程及び手段(構成要件D,I)を有していないというべきであるから,
本件各発明は乙15記載の発明と同一であるとはいえない。
したがって,被告主張の無効理由3は理由がない。
エ無効理由4に対し
被告は,乙13のFIG.12(国内公表公報(甲15)では図12)
における先頭部分750,テキストヘッダ部分762及び文字部分76
4をつなげた領域が,本件各発明の「第1のデータフィールド」に相当
する旨主張する。
しかしながら,先頭部分750は,「従来のファクシミリシグナリン
グデータ」,テキスト760(文字部分764)は,ファクシミリデー
タのテキスト部分由来のデータであって,これらは互いに何ら関連して
いないデータであるから,先頭部分750,テキストヘッダ部分762
及び文字部分764をつなげた領域(すなわちヘッダとテキストをつな
げた領域)をもって,「第1のデータフィールド」であるということは
できない。
したがって,乙13記載の発明には「第1のデータフィールド」は存
在せず,被告の上記主張は失当である。
以上によれば,本件各発明は乙15記載の発明と同一であるとはいえ
ないから,被告主張の無効理由4は理由がない。
オ無効理由5(進歩性の欠如)に対し
被告主張の無効理由5は,本件各発明が進歩性を欠如することについて
具体的理由を述べるものとはいえないから,その主張自体理由がない。
3争点3(訴えの追加的変更の可否,請求項2及び12に係る発明の技術的範
囲の属否)について
原告の主張
被告による被告各製品の輸入及び販売並びに被告方法の使用は,以下のと
おり,本件明細書の特許請求の範囲の請求項2及び12に係る発明に係る本
件特許権の侵害に当たるので,これを請求原因として追加主張し,訴えを追
加的に変更する。
ア本件明細書の特許請求の範囲の請求項2及び12の記載は,次のとおり
である(以下,請求項2に係る発明を「本件発明3」,請求項12に係る
発明を「本件発明4」という。)。
「【請求項2】前記データフィールド(15,20,25,30)の各
々に,該データフィールド(15,20,25,30)に特有の識別子(4
5,50,55,75)を挿入する工程と,前記特有の識別子(45,
50,55,75)の各々に相当するデータフィールド(15,20,
25,30)の構成又は内容の少なくともいずれか1つに関する情報を
含める工程とを含む,請求項1記載の方法。」
「【請求項12】前記データフィールド(15,20,25,30)の
各々に,該データフィールド(15,20,25,30)に特有の識別
子(45,50,55,75)を挿入する手段と,前記特有の識別子(4
5,50,55,75)の各々に相当するデータフィールド(15,2
0,25,30)の構成又は内容の少なくともいずれか1つに関する情
報を含める手段とを含む,請求項11記載の通信装置。」
イ本件発明3及び4を構成要件に分説すると,次のとおりである。
本件発明3
K前記データフィールド(15,20,25,30)の各々に,該デ
ータフィールド(15,20,25,30)に特有の識別子(45,
50,55,75)を挿入する工程と,
L前記特有の識別子(45,50,55,75)の各々に相当するデ
ータフィールド(15,20,25,30)の構成又は内容の少なく
ともいずれか1つに関する情報を含める工程とを含む,
M請求項1記載の方法。
本件発明4
N前記データフィールド(15,20,25,30)の各々に,該デ
ータフィールド(15,20,25,30)に特有の識別子(45,
50,55,75)を挿入する手段と,
O前記特有の識別子(45,50,55,75)の各々に相当するデ
ータフィールド(15,20,25,30)の構成又は内容の少なく
ともいずれか1つに関する情報を含める手段とを含む,
P請求項11記載の通信装置。
ウ被告メールの解析データを甲6の27頁の説明に照らして再度検討し
た結果,別紙1の「Un-knownDATA」とされていた部分
は,「SMILBODY」の制御レコード部であると理解するのが正し
いことが明らかとなった。
そうすると,被告メールの構造は,別紙1のとおりとなる(斜線で示
した部分が,データフィールドにおける制御レコード部である。)。
そして,各データフィールドの制御レコード部には,データフィールド
の構成,内容に関する情報がそれぞれ含まれている(甲13の添付資料参
照)。これらの情報は制御レコードに含まれて識別できるようになってい
るから,各データフィールドには,これらの情報を含む識別子がそれぞれ
存在しているといえる。
したがって,上記各識別子は,本件発明3及び4の「データフィールド
に特有の識別子」(構成要件L,O)に該当するから,被告方法は構成要
件K,L,Mを,被告各製品は構成要件N,O,Pをそれぞれ充足する。
エ以上によれば,被告方法及び被告各製品は,本件発明3及び4の構成要
件をすべて充足するから,本件発明3及び4の技術的範囲に属する。
したがって,被告による被告各製品の輸入及び販売並びに被告方法の使
用は,本件発明3及び4に係る本件特許権の侵害に当たる。
被告の主張
原告は,平成23年3月25日付け原告第7準備書面をもって,本件発明
3及び4(請求項2及び12)に係る本件特許権の侵害の事実を請求原因に
追加して主張し,訴えの追加的変更を行った。
しかしながら,原告の上記訴えの追加的変更は,専門委員を関与させた技
術説明会を経た本件各発明(請求項1及び11)に係る本件特許権の侵害の
有無に関する審理を終えた後にされたものであり,本件の訴訟手続の中で,
新たに本件発明3及び4に係る本件特許権の侵害の有無に関する審理を行
うとなると,構成要件の充足論及び特許の無効論についての双方の主張の提
出に加えて,再度の技術説明会の必要性が見込まれるなど,著しく訴訟手続
を遅滞させることとなることは明らかである。
したがって,原告の主張する請求原因の追加は不当であり,上記訴えの追
加的変更は許されない。
4争点4(原告の損害額)について
原告の主張
ア特許法102条3項に基づく損害額
イー・モバイルは,平成20年5月14日(ボツシユ社から原告への本
件特許権の移転登録日)から平成21年3月16日(本件訴訟提起の日)
までの間,被告各製品を販売し,その売上高は15億円を下らない。
また,上記期間内においてイー・モバイルが被告方法を実施したことに
よる売上高は,15億2000万円を下らない。
そして,本件各発明についての特許法102条3項にいう「特許発明の
実施に対し受けるべき金銭の額」は,被告各製品及び被告方法による売上
高の5%を下らない。
したがって,上記期間に係るイー・モバイルの本件特許権侵害による原
告の損害額は,1億5100万円((15億円+15億2000万円)×
5%)を下らない。
イまとめ
以上によれば,原告は,イー・モバイルを吸収合併した被告に対し,本
件特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償として1億5100万円及び
これに対する不法行為の後であり,かつ,訴状送達の日の翌日である平成
21年4月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損
害金の支払を求めることができる。
被告の主張
原告の主張は争う。
第4当裁判所の判断
1本件各発明に係る請求
本件の事案に鑑み,まず,争点2(本件各発明に係る本件特許権に基づく権
利行使の制限の成否)の被告主張の無効理由3(乙15に基づく新規性の欠如)
から判断することとする。
被告は,本件各発明は,本件出願の優先日前に頒布された刊行物である乙1
5に記載された発明と同一であって,本件各発明に係る本件特許には特許法2
9条1項3号に違反する新規性欠如の無効理由(無効理由3)があり,特許無
効審判により無効にされるべきものであるから,同法104条の3第1項の規
定により,原告は,本件特許権を行使することができない旨主張する。
乙15の記載事項
ア乙15(Title「GeneralisedStructureforaMultimediaMessaging
Service」,訳文・表題「マルチメディアメッセージングサービスの一般
化された構成」)は,本件特許の出願人であるボツシユ社が作成し,19
98年(平成10年)12月2日及び3日にドイツ国ハノーバー市で開催
されたETSI(欧州電気通信標準化機構)標準化委員会の会議で提示さ
れた文書の写しであり(乙16,弁論の全趣旨),本件出願の優先日(同
月8日)前に外国において頒布された刊行物である。
乙15には,次のような記載がある。
「概要
SMS(ショートメッセージサービス)が徐々に普及するのに伴い,
UMTS内での快適なマルチメディア拡張が重要であることが認め
られている。マルチメディアに関する前回の合同SMG1,4,12
会議において,このサービスは,ストアアンドフォワード方式と適切
な通知とを組み合わせた,異なるタイプの情報の非リアルタイム転送
を意味すると理解されることが大枠で合意された。
GSM内のSMSサービスで達成された成功を継続させるために
は,異なる性能をもつターミナル間での互換性のサポート方法につい
て,UMTSマルチメディアメッセージングサービス(MMS)を標
準化することが不可欠である。この目的のため,ターミナルは,ター
ミナルが処理可能なメッセージ部分のみを受信するように,充分な情
報(例えば,コンテンツのタイプおよび大きさ)が提供されなければ
ならない。非常に簡単なテキストのみのターミナルであってもこの情
報を使用することができるという要求は,MMS内でのSMSの固有
の使用を示唆するものである。この文脈において,さらなる作業のた
めの議論のベースを提供することを目的として,次の一般化された構
成が提案されている。」(訳文1頁5行~末行)
「一般化された構成
MMSは記憶して転送する形の伝送方式の基本原理に従うべきで
ある。さらに,このメカニズムを使用する全てのサービス,例えばS
MS,FAX,スピーチメール,オーディオメール,イメージメール,
ビデオメールなど,をひとつの一般化されたアウトライン,即ち「マ
ルチメディアコンテナ」(MMC)に統合すると有利である。このコ
ンテナは,異なるメディアのデータを任意に組み合わせたものを,例
えばペイロードのタイプやサイズや能力を示す埋め込まれた内容関
連情報(CAI)と共に運ぶ。したがって,MMSは単なるメールサ
ービスではなく,むしろ既存のおよび新たな非リアルタイムサービス
をカバーする新たな要素である。
図1は,MMSの可能な構成を提案する。例えば単純なスピーチタ
ーミナルやPDAなどの異なるタイプのターミナルクラス間にある
種の互換性を提供するために,SMSがMMCの前置部分を形成する
ような形でGSM型のSMSをMMSの一部としうる。MMSがSM
SのみであればMMCは存在しない。そうでなければSMSはCAI
から導出されるMMCの内容のテーブルを運ぶ。発呼側によるMMS
の送信後,それはネットワークに記憶される。誰にでも分かる通知メ
カニズムを可能とするために,メッセージタイプや長さなどに関する
情報を含むMMSの前置部分がターミナルに送られる。通知と内容情
報をSMSに限定することで,シンプルなターミナルタイプのユーザ
にも,MMSをダウンロードしたいか,およびMMSのどの部分をダ
ウンロードしたいかを決めるのに必要な全ての情報が提供されるで
あろう。次にターミナルの性能との関係で選択が行われる。したがっ
て,MMSまたはその一部をダウンロードするか,削除するか,後の
ダウンロードのために記憶するか(例えば,必要な性能が得られた場
合),もしくは他のアドレスに転送するか,をユーザが決めることが
できる。」(訳文2頁1行~3頁8行)
「要約
標準化されたMMSの必要性についてまず概略を述べ,一般化され
た構成を提案した。一般化は,SMS,ファックス,ボイスメールお
よびその他のマルチメディア拡張などのあらゆる種類の非リアルタ
イムサービスのために同じ仕組みを用いることと理解されるべきで
ある。この構成は,異なるターミナル間での互換性を提供し,現行の
SMSに対して,SMSがMMSの固有の部分であるような方法で提
供することをさらに目的としている。」(訳文3頁9行~末行)
イ前記アの乙15の記載内容及び図1(別紙乙15記載の図面参照)を総
合すれば,乙15には,①GSM型のSMSの普及に伴い,UMTS内で
これをマルチメディアに拡張することが重要であり,そのサービスは,ス
トアアンドフォワード方式と適切な通知とを組み合わせた,異なるタイプ
の情報の非リアルタイム転送を意味するものと理解されること,②異なる
性能を持つターミナル間での互換性をサポートするには,UMTSマルチ
メディアメッセージングサービス(MMS)を標準化することが不可欠で
あり,その標準化のため,乙15においてMMSの一般化された構成を提
案するものであること,③この「一般化されたMMSの構成」は,図1に
示すように,「MMC」,「CAI」,「SMS」を含み,「MMC」(マ
ルチメディアコンテナ)は,FAX,スピーチメール,オーディオメール,
イメージメール,ビデオメールなど異なるタイプのメディアのデータが任
意に組み合わされたもの(図1では,「Fax」,「Voice」,「I
mage」,「Video」の四つの直方体が「MMC」を構成するもの
として示されている。)であり,「CAI」は,ペイロードのタイプやサ
イズや能力を示す埋め込まれた内容関連情報であり,「SMS」は,GS
M型のSMSがMMSの一部として「MMC」の前置部分を形成したもの
であり,「SMS」内には「CAI」から導出される「MMCの内容のテ
ーブル」が含まれていること,④この「MMCの内容のテーブル」には,
ペイロードのメッセージタイプや長さなどに関する情報が含まれること,
⑤上記「一般化されたMMSの構成」を採用したMMSの伝送方式におい
ては,発呼側によるMMSの送信後,それがネットワークに記憶され,ま
ず,MMSの前置部分である「SMS」が受信側のターミナルに送られる
ことにより,シンプルなターミナルタイプのユーザにおいても,MMS又
はその一部をダウンロードするか否かを決めるのに必要なすべての情報
が提供され,次に,ユーザは,ターミナルの性能との関係で,MMS又は
その一部をダウンロードし,あるいは削除したり,他のアドレスに転送す
ることなどの選択が可能となることが開示されているものと認められる。
そして,上記①ないし⑤における「GSM型のSMS」は,デジタル携
帯電話の通信方式の規格の一つであるGSM方式によりテキストデータ
をメッセージデータとして送信するサービスを,「UMTS」は,ヨーロ
ッパにおける第3世代移動通信システムの規格をそれぞれ意味すること
は,当業者にとって自明であるといえる。
以上によれば,乙15には,GSM型のSMSをマルチメディアに拡張
した「一般化されたMMSの構成」を採用したMMSの伝送方法及びその
伝送方法を用いた通信装置が記載されていることが認められる。
乙15記載の伝送方法及び通信装置と本件各発明との同一性の有無
ア本件発明1との対比
a前記イのとおり,乙15記載の伝送方法は,図1(別紙乙15記
載の図面参照)に示すような「一般化されたMMSの構成」を採用し
たMMSの伝送方法であり,MMSはメッセージ信号であるから,乙
15記載の伝送方法は,「メッセージ信号の伝送方法」(構成要件E)
である。
この「一般化されたMMSの構成」には,「SMS」にGSM型の
SMSのデータ(テキストデータ),「MMC」(マルチメディアコ
ンテナ)にFAX,スピーチメール,オーディオメール,イメージメ
ール,ビデオメールなど異なるタイプのメディアのデータが含まれて
おり(前記イ③),これらのデータは,タイプの違いに対応してデ
ータフォーマットも異なり,それぞれが他と識別されるデータフィー
ルドに含まれていると理解されるから,乙15記載の伝送方法は,構
成要件Aの「少なくとも2つのデータフィールドが含まれるメッセー
ジ信号を伝送する伝送方法」に相当し,「少なくとも2つのデータフ
ィールド」にデータフォーマットが異なるデータをそれぞれ含める工
程(構成要件B)を有するものと認められる。
b前記イ④のとおり,「一般化されたMMSの構成」中の「SMS」
内に含まれる「MMCの内容のテーブル」には,ペイロードのメッセ
ージタイプや長さなどに関する情報が含まれている。
しかるところ,ペイロードとは,ヘッダー部分を除いたデータ本体
をいい,データの大きさを「ペイロード長」ということ(甲14(I
T用語辞典e-Words))に照らすならば,上記の「ペイロー
ドのメッセージタイプや長さなどに関する情報」にいうペイロード
の「長さ」とは,データ本体の大きさを意味し,これは「データフィ
ールドの大きさ」に相当するものと理解される。
また,「MMCの内容のテーブル」を含む「SMS」が受信者側の
ターミナルに送られることにより,シンプルなターミナルタイプのユ
ーザにおいても,MMSをダウンロード又はその一部をダウンロード
するか否かを決めるのに必要なすべての情報が提供されること(前記
イ④,⑤)に照らすならば,上記の「ペイロードのメッセージタイ
プや長さなどに関する情報」にいうペイロードの「メッセージタイプ」
とは,ペイロードを構成する各データ本体のデータの種類を意味する
ものであり,このデータの種類は,テキスト,音声,画像などの内容
で区分されるが,更に同一の区分のものも固有のフォーマット(「デ
ータフォーマット」)ごとに細分化されること(例えば,画像データ
は,jpeg,gifなどの固有のフォーマットごとに種類が分かれ
る。)からすれば,ペイロードの「メッセージタイプ」は,各データ
本体のデータの種類(「データフォーマット」を含む。)をいうもの
と理解される。
したがって,「MMCの内容のテーブル」は,MMCを構成する各
データフィールドの「データフィールドの大きさ」や「データフォー
マット」に関する情報(構成要件D)を含み,これらを識別する「識
別子」に相当するものと認められる。
ところで,この「MMCの内容のテーブル」は,「SMS」内に含
まれているものであるが,「SMS」は,GSM型のSMSがMMS
の一部を構成したものであるから,「SMS」を構成するデータフィ
ールドの大きさやデータフォーマットは,GSMの規格のものである
ことは自明である。
そうすると,「SMS」についてはそのデータフィールドの大きさ
やデータフォーマットを示さなくとも,「MMCの内容のテーブル」
を示すことにより,MMSのメッセージ信号全体に含まれるデータフ
ィールドの大きさやデータフォーマットを把握することができると
いうべきであるから,「MMCの内容のテーブル」は,「メッセージ
信号全体の構成を表す第1の識別子」(構成要件C)に相当し,ま
た,「MMCの内容のテーブル」を含む「SMS」のデータフィール
ドが「第1のデータフィールド」(構成要件B,C)に相当するもの
と認められる。
さらに,「MMC」を構成するオーディオメール,イメージメール,
ビデオメールなどのメディアの各データフィールドは,「SMS」の
データフィールドとは異なるデータフォーマットのデータを含むも
のであるから,そのいずれかが「第2のデータフィールド」(構成要
件B)に相当するものと認められる。
以上によれば,乙15には,乙15記載の伝送方法が,「第1のデ
ータフィールドに第1のデータフォーマットのデータを含め,第2の
データフィールドに該第1のデータフォーマットとは異なる第2の
データフォーマットのデータを含める工程」(構成要件B),「前記
第1のデータフィールド内に前記メッセージ信号全体の構成を表す
第1の識別子を挿入する工程」(構成要件C),「前記第1の識別子
に前記データフィールドの数,データフィールドの大きさ,又はデー
タフォーマットの少なくともいずれか1つに関する情報を含める工
程」(構成要件D)を含むことが実質的に開示されているものと認め
られる。
c前記a及びbによれば,乙15記載の伝送方法は,構成要件Aない
しEの構成をすべて備えているものということができるから,本件発
明1と実質的に同一であるものと認められる。
これに対し原告は,①乙15の「SMS」は,ヘッダーであり,「メ
ッセージ本体の内容,構成に関連したデータ」(あるいは「テキスト,
音声又は画像等のメッセージ内容を構成するデータ」)は含まれていな
いから,「第1のデータフィールド」には当たらない,②乙15の「S
MS」に含まれるMMCの内容のテーブルの「メッセージの長さ」の情
報は,個々のデータフィールドの大きさに関する情報であるとはいえな
いし,また,マルチメディアに関し,オーディオ,イメージなど,情報
の種類としての説明しかされていないことからすると,MMCの内容の
テーブルの「メッセージタイプ」は,データ形式に関する情報でしかな
く,データフォーマットに関する情報とはいえないことからすると,乙
15記載の伝送方法は,「第1のデータフィールド」内に「識別子」を
挿入する工程(構成要件C)及び識別子に「データフィールドの数,デ
ータフィールドの大きさ又はデータフォーマットの少なくともいずれ
か1つに関する情報」(構成要件D)を含める工程をいずれも有してい
ないから,本件各発明は乙15記載の伝送方法と同一ではない旨主張す
る。
しかしながら,乙15の「一般化されたMMSの構成」中の「SMS」
は,GSM型のSMSがMMSの一部として「MMC」の前置部分を形
成したものであること,GSM型のSMSがGSM方式によりテキスト
データをメッセージデータとして送信するサービスを意味することは,
前記イのとおりであるところ,乙15中には,「SMSがMMCの前
置部分を形成するような形でGSM型のSMSをMMSの一部としう
る。MMSがSMSのみであればMMCは存在しない。そうでなければ
SMSはCAIから導出されるMMCの内容のテーブルを運ぶ。」(訳
文2頁13行~15行)との記載があり,この記載は,「SMS」には,
テキストデータのメッセージ内容が含まれることを前提に,MMCが存
在する場合には,「SMS」内に,テキストデータのメッセージ内容と
ともに,MMCの内容のテーブルを含めることを述べた趣旨のものと解
されることに照らすならば,乙15の「SMS」には,テキストデータ
のメッセージ内容が含まれているといえるから,「SMS」がヘッダー
であって「メッセージ本体の内容,構成に関連したデータ」を含まない
との原告の上記①の主張は,採用することができない(なお,原告は,
乙15に「通知と内容情報をSMSに限定する」(訳文3頁2行)との
記載があることを「SMS」が「メッセージ本体の内容,構成に関連し
たデータ」を含まないことの根拠の一つとして指摘するが,上記記載部
分は,MMSのうち,まず「SMS」の部分のみが受信側のターミナル
に送られることを説明したものにすぎず,上記①の主張の根拠となるも
のではない。)。
また,「MMCの内容のテーブル」に含まれる「ペイロードのメッセ
ージタイプや長さなどに関する情報」の意義は,前記bで述べたとお
りであり,これに反する原告の上記②の主張は,採用することができな
い。
したがって,本件各発明は乙15記載の伝送方法と同一ではないとの
原告の主張は,その前提を欠くものであり,理由がない。
イ本件発明2との対比
乙15記載の通信装置は,乙15記載の伝送方法を用いたものであると
ころ,前記アのとおり,乙15記載の伝送方法が構成要件AないしEの構
成をすべて備えていること,本件発明2の構成要件FないしJは,「伝送
方法」を「通信装置」と,「工程」を「手段」としている点以外は,構成
要件AないしEと同一の構成のものであることに照らすならば,乙15記
載の通信装置は,構成要件FないしJをすべて備えているものということ
ができるから,本件発明2と実質的に同一であるものと認められる。
まとめ
以上によれば,本件各発明は,乙15記載の伝送方法及び通信装置と実質
的に同一であって,新規性を欠くものというべきであるから,本件各発明に
係る本件特許には,特許法29条1項3号に違反する無効理由(同法123
条1項2号)があり,特許無効審判により無効とされるべきものと認められ
る。
したがって,原告は,特許法104条の3第1項の規定により,被告に対
し,本件各発明に係る本件特許権を行使することができない。
よって,その余の点について判断するまでもなく,原告の本件各発明に係
る本件特許権に基づく差止請求及び廃棄請求並びに本件特許権侵害の不法
行為に基づく損害賠償請求は,いずれも理由がない。
2本件発明3及び4に係る請求
被告は,原告は,平成23年3月25日付け原告第7準備書面をもって,
本件発明3及び4(請求項2及び12)に係る本件特許権の侵害の事実を請
求原因に追加して主張し,訴えの追加的変更を行ったが,上記訴えの追加的
変更は,著しく訴訟手続を遅滞させることとなるものであり,不当であって
許されない旨主張する。
ア本件の審理の経過は,次のとおりである。
原告は,平成21年3月16日,被告による被告方法の使用,被告各
製品の輸入及び販売が本件各発明(請求項1及び11)に係る本件特許
権の侵害に当たる旨を請求原因として主張し,本件訴訟を提起した。
本件は,平成21年5月14日の第1回口頭弁論期日において弁論準
備手続に付された後,受命裁判官による弁論準備手続で争点整理手続が
進められ,平成22年6月14日の第6回弁論準備手続期日において,
受命裁判官は,当事者双方に対し本件各発明に係る本件特許権の侵害の
有無(本件各発明の技術的範囲の属否,本件各発明に係る本件特許の無
効事由の有無等のいわゆる侵害論)に関する争点についての主張立証が
ほぼ完了したことを確認した上で,次回の弁論準備手続期日に,専門委
員関与の下に,当事者双方がこれまで行った侵害論をまとめてプレゼン
テーション形式によって口頭で説明するいわゆる技術説明会を実施し,
その技術説明会を経た上で,侵害論に関する暫定的心証を開示し,本件
特許権の侵害による損害の有無及び損害額(いわゆる損害論)に関する
争点についての審理に入るかどうかを判断する訴訟進行とする方針で
ある旨述べ,当事者双方は,これを了承した。
平成22年7月26日の第7回弁論準備手続期日において,専門委員
3名及び裁判所調査官1名の立会いの下で,技術説明会が実施された。
当事者双方は,技術説明会終了後,技術説明会の内容を踏まえた侵害論
に関する補充の主張があれば,次回の弁論準備手続期日前の同年9月6
日までに準備書面を提出する旨述べた(なお,原告は,これと併せて,
同日までに,被告準備書面に対する反論の準備書面を提出する旨述べ
た。)。
平成22年9月22日の第8回弁論準備手続期日において,原告から
提出のあった同月6日付け原告第6準備書面の陳述がされた後,受命裁
判官は,侵害論に関する暫定的心証を開示し,本件については損害論の
審理に入らない方針である旨述べた上で,双方に対し,和解による解決
が可能かどうかを検討するよう求めた。
その後,第9回以降の弁論準備手続期日において,和解協議等が行わ
れたが,結局,双方の合意に至らなかったため,受命裁判官は,本件の
侵害論の審理が既に尽くされ,かつ,訴訟が裁判をするのに熟したもの
と判断し,平成23年2月9日の第12回弁論準備手続期日において,
次回弁論準備手続期日に弁論準備手続を終結する方針である旨述べた。
同期日において,原告は,同年3月25日までに,本件発明3及び4(請
求項2及び12)に係る本件特許権の侵害の事実の主張を追加すること
によって,請求原因を追加的に変更する訴えの追加的変更を行う旨述
べ,被告は,同年4月11日までに,原告が行う訴えの追加的変更につ
いての意見を述べる準備書面を提出する旨述べた。
その後,原告は,同年3月25日付け原告第7準備書面を提出して,
上記の訴えの追加的変更を行った。
平成23年4月18日の第13回弁論準備手続期日において,原告
は,前記の原告第7準備書面を陳述し,被告は,原告による訴えの追
加的変更は訴訟手続を著しく遅滞させるものであって,許されない旨の
準備書面(同月11日付け被告準備書面)を陳述した。その上で,受
命裁判官は,同期日において,弁論準備手続を終結した。
その後,同年5月17日の第2回口頭弁論期日において,本件口頭弁
論が終結された。
イ以上を前提に検討するに,原告が原告第7準備書面をもって行った訴え
の追加的変更は,本件各発明(請求項1及び11)に係る本件特許権の侵
害の事実の主張に加えて,本件発明3及び4(請求項2及び12)に係る
本件特許権の侵害の事実の主張を新たに請求原因に追加するものであり,
請求原因を変更する訴えの変更(民事訴訟法143条1項本文)に当たる
ものといえるところ,本件の審理の経過によれば,上記訴えの追加的変更
は,本件各発明に係る本件特許権の侵害論の審理が完了し,原告の本件各
発明に係る請求について裁判をするのに熟した後にされたものであるこ
とは,明らかである。
そして,請求項2及び12がそれぞれ請求項1及び11を引用する形式
のものであること(前記第3の3ア及びイ)からすれば,本件発明3及
び4に係る本件特許権の侵害論の審理は,本件各発明に係る本件特許権の
侵害論の審理と共通する部分があり,その主張立証を利用できる面がある
とはいえるものの,一方で,請求項2及び12に特有の構成要件(構成要
件K,L,N,P)が存在することに照らすならば,原告が追加した本件
発明3及び4に係る本件特許権の侵害の事実に関する請求原因の審理を
行うとなれば,上記構成要件の充足の有無,本件発明3及び4に係る本件
特許の無効事由の有無に関する新たな双方の主張立証や,再度の専門委員
関与の下における技術説明会の実施の要否の検討などが必要となり,更に
審理に相当の期間を要することになるものと認められる。
加えて,原告においては,平成21年5月14日の第1回口頭弁論期日
から平成22年6月14日の第6回弁論準備手続期日までの間に,本件発
明3及び4(請求項2及び12)に係る本件特許権の侵害の事実の主張を
請求原因に追加することについて特段の支障がなかったこと,その他本件
の審理の経過に顕れた諸般の事情を考慮すると,上記訴えの追加的変更
は,本件の訴訟手続を著しく遅滞させることになるものであり,不当であ
るといわざるを得ない。
以上によれば,本件発明3及び4(請求項2及び12)に係る本件特許権
の侵害の事実を請求原因に追加した訴えの追加的変更は,本件の訴訟手続を
著しく遅滞させることになるものであって,民事訴訟法143条1項ただし
書の場合に当たる不適法なものであるから,これを却下することとする。
3結論
以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求(本件
各発明に係る請求)は理由がないからいずれも棄却することとし,主文のとお
り判決する。
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官大鷹一郎
裁判官大西勝滋
裁判官上田真史
(別紙)物件目録
以下の商品名(機種番号)の携帯電話及びこれらの携帯電話を用いた添付フ
ァイル付きメールの伝送サービス
1TouchDiamondTM
(S21HT)
2DualDiamond(S22HT)
3EMONSTERlite(S12HT)
4EMONSTER(S11HT)

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